(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003363
(43)【公開日】2024-01-15
(54)【発明の名称】表示制御装置及び表示制御方法
(51)【国際特許分類】
H04N 7/18 20060101AFI20240105BHJP
B60R 1/28 20220101ALI20240105BHJP
【FI】
H04N7/18 J
B60R1/28 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102448
(22)【出願日】2022-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】000001487
【氏名又は名称】フォルシアクラリオン・エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 友教
【テーマコード(参考)】
5C054
【Fターム(参考)】
5C054CA04
5C054CC02
5C054EA05
5C054FC12
5C054FD07
5C054FE25
5C054FE26
5C054FF03
5C054HA30
(57)【要約】
【課題】車両の進行方向が変化した場合にも車両周辺の情報を的確に提供すること。
【解決手段】車両の周辺を撮像した画像の表示を制御する表示制御装置であって、前記車両の後側方を撮像した画像を表示する表示部と、前記車両の後側方に存在する物体を検知する物体検知部と、前記車両のステアリング角度を検出するステアリング角検出部と、前記物体検知部が検知範囲内に物体を検知すると、前記車両の後側方を撮影した画像の表示範囲を第1の範囲から第2の範囲へ変更する表示範囲変更部と、を備え、前記物体検知部の検知範囲は、前記ステアリング角度に応じて変化することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の周辺を撮像した画像の表示を制御する表示制御装置であって、
前記車両の後側方を撮像した画像を表示する表示部と、
前記車両の後側方に存在する物体を検知する物体検知部と、
前記車両のステアリング角度を検出するステアリング角検出部と、
前記物体検知部が検知範囲内に物体を検知すると、前記車両の後側方を撮影した画像の表示範囲を第1の範囲から第2の範囲へ変更する表示範囲変更部と、
を備え、
前記物体検知部の検知範囲は、前記ステアリング角度に応じて変化する
ことを特徴とする表示制御装置。
【請求項2】
前記車両のステアリング角度が所定の角度以上であるとき、前記物体検知部は内輪側の検知範囲を外輪側の検知範囲よりも大きくすることを特徴とする請求項1に記載の表示制御装置。
【請求項3】
前記物体検知部は、前記車両の後側方を撮像した画像に対して前記検知範囲を設定し、前記検知範囲を対象とする画像認識によって前記物体を検知し、
前記表示範囲変更部は、前記車両の後側方を撮像した画像の一部を前記表示範囲とすることを特徴とする請求項1に記載の表示制御装置。
【請求項4】
前記第2の範囲は、前記第1の範囲よりも大きく、前記第1の範囲と前記物体検知部により検知された物体の像とを含むことを特徴とする請求項1に記載の表示制御装置。
【請求項5】
前記第1の範囲は、前記車両に対して位置関係が規定され、
前記第2の範囲は、前記物体検知部が検知した物体に対して位置関係が規定されることを特徴とする請求項1に記載の表示制御装置。
【請求項6】
前記ステアリング角度が減少するとき、前記ステアリング角度の変化量に応じて前記検知範囲を縮小することを特徴とする請求項1に記載の表示制御装置。
【請求項7】
表示制御装置が、
車両の後側方を撮像した画像を取得するステップと、
前記車両の後側方を撮影した画像の第1の範囲を表示範囲として表示部に表示するステップと、
前記車両のステアリング角度を検出するステップと、
前記ステアリング角度に応じた検知範囲で、前記車両の後側方に存在する物体を検知するステップと、
前記車両の後側方に存在する物体を検知した場合に、前記車両の後側方を撮影した画像の表示範囲を第1の範囲から第2の範囲へ変更するステップと
を含むことを特徴とする表示制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示制御装置及び表示制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の周辺をカメラで撮像し、撮像結果として得られた画像を車内のディスプレイに表示することで、ドラミラーやフェンダーミラーに対応する機能を提供する電子ミラーシステムが知られている。
例えば、特許文献1には、「走行時に後方車両の接近を容易に確認することができ、右左折時等において車両周辺の歩行者や自転車等の接近の有無や程度の把握を確実に行うことができる車両用後側方画像表示装置を提供する」、「車両用後側方画像表示装置1は、車両の後側方を撮像する左カメラ10L、右カメラ10Rと、車両の一部を含む第1の撮像範囲に対応する画像からなる第1の後側方画像を生成する左画像生成部30L、右画像生成部30Rと、車両の一部を含む第2の撮像範囲に対応する画像を圧縮した第2の後側方画像と、車両から離れる方向に第2の撮像範囲と連続した第3の撮像範囲に対応する画像からなる周辺画像とを生成する左画像生成部32L、右画像生成部32Rと、第1の後側方画像と第2の後側方画像・周辺画像のいずれかを表示対象として所定のタイミングで切り替える切替タイミング判定部40と、左表示部60L、右表示部60Rとを備えている。」との記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術では、障害物の検知結果、方向指示器の動作状態、操舵角の状態に基づいて、画像として表示する範囲を変更可能である。
しかしながら、右左折のように車両の進行方向が大きく変化する状況下では、検出すべき障害物が自車両の方向転換により検知範囲から外れる場合がある。この問題を、左折時を例に説明する。左折時に車両の左後方から接近する物体は、巻き込みの可能性のある重要な検知対象である。車両は、自車両の左後方を検知範囲とすることで、車両が左に曲がり始める前であれば、巻き込む可能性のある物体を検知できる。その後、車両が左に転回を始めると、巻き込む可能性のある物体が接近する方向が自車両の左後方の検知範囲から外れる。
【0005】
このように、車両を基準とした検知範囲は、進行方向の変化によって道路に対して相対的に変動し、重要な検知対象物を見落とす可能性がある。このような問題は、特に鋭角な交差点の通過時に顕著である。
【0006】
そこで、本発明では、車両の進行方向が変化した場合にも車両周辺の情報を的確に提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、代表的な本発明の表示制御装置の一つは、車両の周辺を撮像した画像の表示を制御する表示制御装置であって、前記車両の後側方を撮像した画像を表示する表示部と、前記車両の後側方に存在する物体を検知する物体検知部と、前記車両のステアリング角度を検出するステアリング角検出部と、前記物体検知部が検知範囲内に物体を検知すると、前記車両の後側方を撮影した画像の表示範囲を第1の範囲から第2の範囲へ変更する表示範囲変更部と、を備え、前記物体検知部の検知範囲は、前記ステアリング角度に応じて変化することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、車両の進行方向が変化した場合にも車両周辺の情報を的確に提供できる。上記した以外の課題、構成及び効果は以下の実施の形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】表示範囲調整機能の処理手順を示すフローチャート。
【
図4】表示範囲調整機能の動作の具体例についての説明図(その1)。
【
図5】表示範囲調整機能の動作の具体例についての説明図(その2)。
【
図6】ステアリング角度の変化と検知範囲の大きさの変化の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施例について図面を用いて説明する。
【実施例0011】
図1は、実施例1の表示制御装置の説明図である。車両10は、左右のドアミラーに対応する位置にそれぞれカメラを備えており、左後側方と右後側方を撮像可能である。車両10に搭載された表示制御装置20は、カメラが撮像した画像を車室内外の表示部に表示することで、ドアミラーに相当する電子ミラーの機能を提供する。
【0012】
図1では、車両10は、右後側方について撮像範囲G0を撮像している。表示制御装置20は、撮像範囲G0の画像から、表示範囲G1の画像を切り出して、右のドアミラーに対応する画像として表示する。
【0013】
さらに、表示制御装置20は、後側方の物体を検知し、その検知結果に応じて表示範囲を変更可能である。物体の検知は、任意の方法を使用可能であるが、本実施例1では、撮像範囲G0に検知範囲を設定し、検知範囲の画像について画像処理を行うことで物体を検知する例を説明する。
【0014】
表示制御装置20は、検知範囲に所定の物体を検知したならば、その物体が表示されるよう表示範囲を変更する。具体的には、表示範囲G1より大きく、表示範囲G1と所定の物体の像の双方を含む範囲を表示範囲G2とする。所定の物体とは、例えば自動二輪車、自転車、歩行者などである。表示制御装置20は、これらの物体を検知すべき所定の物体として登録し、画像処理によって検知を行う。
【0015】
このように、表示範囲G1と所定の物体とを含むよう拡大した表示範囲G2を設定することで、表示制御装置20は、ドアミラーとしての機能を維持しつつ、所定の物体について情報提供することができる。
【0016】
ここで、表示制御装置20は、車両10の状態に応じて検知範囲を変化させる。具体的には、車両10が直進する時は直進時の検知範囲Dr1を設定し、車両10が右折するときには、右後側方の検知範囲を直進時に比して大きくした検知範囲Dr2を設定する。同様に、車両10が左折するときには、左後側方の検知範囲を直進時に比して大きくした検知範囲を設定する。右左折の判定は、例えばステアリング角度に基づいて行う。
【0017】
このように右左折時に検知範囲を大きくすれば、車両10が曲がり始めた場合にも、検知すべき物体の方向、特に右左折に巻きまれる物体が接近する方向をより広く検知範囲に含めることができる。
【0018】
右左折などを完了し、直進に戻るときには、表示制御装置20は、検知範囲を元に戻す。直進時に過度に大きい検知範囲を設定し、その検知結果を含むよう表示を行うと、不要な情報を提供することになるからである。すなわち、表示制御装置20は、右左折時には直進時よりも拡大した検知範囲Dr2で物体検知を行って、その範囲内で検知した物体を表示するように表示範囲の拡大を行う。一方、直進時には右左折時よりも狭い検知範囲Dr1で物体検知を行って、その範囲内で検知した物体を表示するように表示範囲の拡大を行う。このように、表示制御装置20は、検知範囲内で物体を検知しないときは表示範囲を拡大しないことで、検知範囲内に歩行者などの注意が必要な対象がいないにも関わらず表示範囲が拡大されて運転者が煩わしく感じることを減らすことができる。
【0019】
図2は、表示制御装置20の構成を示す構成図である。表示制御装置20は、カメラ11L、カメラ11R、駆動制御ユニット13などと接続する。駆動制御ユニット13は、車両の加減速制御、操舵制御、方向指示器制御などを行うユニット群である。
【0020】
表示制御装置20は、ディスプレイ21、入力受付部22、車両状態検知部23及び制御部24を有する。制御部24は、例えばCPU(Central Processing Unit)であり、物体検知部31及び表示範囲変更部32としての機能を実現する。
【0021】
カメラ11Rは、車両10の周囲のうち、右後方の画像を撮像する。カメラ11Lは、車両10の周囲のうち、左後方の画像を撮像する。
ディスプレイ21は、ディスプレイ21Rとディスプレイ21Lを含む。例えば、ディスプレイ21Rとディスプレイ21Lは別体でもよく、1つのディスプレイ上に右後方の画像と左後方の画像を表示するものでもよい。
ディスプレイ21Rは、右後方の画像を表示する表示部である。ディスプレイ21Rは、例えば右フロントピラーに配置する。
ディスプレイ21Lは、左後方の画像を表示する表示部である。ディスプレイ21Lは、例えば左フロントピラーに配置する。
【0022】
入力受付部22は、ディスプレイ21R及びディスプレイ21Lに表示する画像を調整する操作の入力を受け付ける。入力受付部22は、運転席に着座したユーザが操作可能な位置に配置する。例えば、入力受付部22は、ディスプレイ21Rに対応付けて配置したタッチパネルとすることが好適である。
【0023】
車両状態検知部23は、車両10の状態を検知する。車両状態検知部23には、速度検出部41、ステアリング角検出部42、方向指示器状態検出部43などが含まれる。速度検出部41は、車両10の走行速度を検知する。例えば、速度計の値を取得すればよい。ステアリング角検出部42は、車両10のステアリング角度を検出する。ステアリング角度は、例えば操舵制御ユニットから取得すればよい。例えば、ステアリング角検出部42は、時刻T0におけるステアリング角度ST0を取得して不図示の記憶部へ記憶し、時刻T0よりも後の時刻T1におけるステアリング角度ST1を取得して不図示の記憶部へ記憶し、既に記憶されたステアリング角度ST0を上書きする。例えば、ステアリング角がいわゆるゼロポジション(回転していない状態)と比較してどの程度回転したかに関する情報を時刻と対応付けて記憶する。また、ステアリング角検出部42は、タイヤの舵角を取得しても良い。この場合、タイヤが所謂ゼロポジションと比較してどの程度傾けられたかに関する情報を時刻と対応付けて記憶する。すなわち、ステアリング角検出部42は、車両10が直進方向に対してどれだけの角度で進行するかを示す実舵角を検知してもよいし、ステアリングハンドルをどれだけ回転させる操作を行ったかを示す操作舵角を検知してもよい。ここでは、操作舵角をステアリング角として説明を行う。方向指示器状態検出部43は、方向指示器(ウィンカーランプ)の状態を検出する。
【0024】
物体検知部31は、車両10の後側方に存在する物体を検知する。具体的には、物体検知部31は、車両10の後側方を撮像した画像に対して検知範囲を設定し、検知範囲を対象とする画像認識によって物体を検知する。
【0025】
物体検知部31の検知範囲は、ステアリング角度に応じて決定する。一例として、車両10のステアリング角度が所定の角度以上であるとき、物体検知部31は内輪側の検知範囲を外輪側の検知範囲よりも大きくする。例えば、物体検知部31は、時刻T0におけるステアリング角ST0を時刻T1におけるステアリング角ST1から引くことでステアリング角の変化量を算出し、算出されたステアリング角の変化量の絶対値が所定の値以上であるとき、内輪側の検知範囲を外輪側の検知範囲よりも大きくする。例えば、時刻T1から時刻T0を引いた値が正であれば、ステアリングが時刻T0と比較して左に回転していると判断できる。反対に、この値が負であれば、ステアリングが時刻T0と比較して右に回転していると判断できる。物体検知部31は、ステアリング角度に代えてタイヤの舵角を用いて同様の処理を行っても良い。このように、車両10のステアリング角度に応じてステアリング角度ごとに異なる検知範囲を設定することで、車両が旋回し始めたときは注意が必要な物体を広範囲で検知することができると共に、車両が旋回を終えかけて交差点を過ぎ去るときは注意が必要ではない物体を検知しないことができる。
【0026】
表示範囲変更部32は、物体検知部31が検知範囲内に物体を検知すると、車両10の後側方を撮影した画像の表示態様を変更する。例えば、車両10の後側方を撮影した画像の表示範囲を第1の範囲から第2の範囲へ変更する。便宜上、第1の範囲を表示範囲G1、第2の範囲を表示範囲G2とする。このように、表示変更部32は、検知範囲Dr1及びDr2内で物体を検知しないときは表示範囲を第1の範囲から第2の範囲へ変更しないことで、検知範囲内に歩行者などの注意が必要な対象がいないにも関わらず表示範囲が拡大されて運転者が煩わしく感じることを減らすことができる。
【0027】
表示範囲G1と表示範囲G2は、カメラ11が撮像した画像の一部である。そして、表示範囲G2は、表示範囲G1よりも大きく、表示範囲G1と物体検知部31により検知された物体の像とを含む。
【0028】
このように、制御部24は、物体検知部31による検知範囲を変化させ、その検知範囲に所在する物体を表示可能とする表示範囲調整機能を実現する。この表示範囲調整機能は、右左折のように車両10の進行方向が大きく変化する状態を想定したものである。そのため、車両の速度が十分に小さい規定の範囲内となった場合に表示範囲調整機能を開始する。
【0029】
また、進行方向がどの程度変わるかを事前に特定することは困難であるため、ステアリング角度が所定の角度以上となった場合には、検知範囲を最大化(例えば撮像範囲全体)としてもよい。一方、方向転換後にステアリング角度が戻るときには、ステアリング角度が戻る方向の変化量に応じて検知範囲を徐々に小さくすればよい。
【0030】
また、表示範囲調整機能が想定する物体は、直進時には危険がなく、進行方向を変えたときに巻き込みなどの危険を生じる物体である。そこで、物体を検知しただけではなく、ウィンカーランプの点灯やハンドル操作のように、運転者が進路を変える意思を示したことを条件に表示範囲G2を設定してもよい。
【0031】
表示範囲調整機能の終了は、例えば、ウィンカーランプの消灯、ステアリング角度が戻ったことなどを条件として判定すればよい。
【0032】
図3は、表示範囲調整機能の処理手順を示すフローチャートである。まず、物体検知部31は、車両10が走行中である場合に(ステップS101)、規定の速度で走行しているか否かを判定する(ステップS102)。規定の速度は、例えば、右左折の準備として減速した状態を検知できるように定める。車両10が規定の速度でなければ(ステップS102;No)、ステップS101に戻る。
【0033】
車両10が規定の速度で走行中であるならば(ステップS102;Yes)、物体検知部31は、表示範囲調整機能の動作を開始し(ステップS103)、ステアリング角度に応じて検知範囲を変更する(ステップS104)。
【0034】
物体検知部31が、検知範囲の画像から対象物を検知すると(ステップS105)、表示範囲変更部32は、車両の進行方向に対する左右方向のうち、物体検知部31によって対象物が検知されている側へのウィンカーがオンであるか否かを判定する(ステップS106)。ウィンカーがオンでなければ(ステップS106;No)、表示範囲変更部32は、車両の進行方向に対する左右方向のうち、物体検知部31によって対象物が検知されている側へのハンドル操作が行われているかを判定する(ステップS107)。ハンドル操作の有無は、例えばステアリング角検出部42の検出結果を用いて判定すればよい。ハンドル操作が行われていなければ(ステップS107;No)、ステップS101に戻る。
【0035】
ウィンカーがオンであるか(ステップS106;Yes)、ハンドル操作が行われている場合(ステップS107;Yes)、表示範囲変更部32は、検知した対象物が含まれるように表示領域を拡大する(ステップS108)。
【0036】
ステップS108の後、物体検知部31は、表示範囲調整機能の終了条件が成立したか否かを判定する。終了条件としては、ウィンカーランプが消灯したこと、ステアリング角度が所定の角度未満であること、などを用いることができる。終了条件が成立していなければ(ステップS109;No)、ステップS104に戻る。終了条件が成立したならば(ステップS109;Yes)、処理を終了する。
【0037】
図4及び
図5は、表示範囲調整機能の動作の具体例について左折時を例に説明する図である。右折時の表示範囲調整機能を理解する際は
図4及び
図5の左右を反転させて理解すればよい。
図4(1)に示した状態では、車両10は、直進している。この時、ハンドルH1の操作角度は略ゼロであり、車両10の直進方向に対する進行方向の角度(実舵角)も略ゼロである。また、車両10は、左右の後側方を撮像範囲G0で撮像し、表示範囲G1の画像を表示している。さらに、車両10は、直進時用の検知範囲Dr1で物体検知を行う。
また、
図4及び
図5におけるステアリング角度の変化と検知範囲の大きさの変化を時系列で示したものが
図6である。
図6に示したステアリング変化51は、ステアリング角検出部42が取得したステアリング角度を縦軸にプロットし、横軸に時刻をプロットしたもので、ステアリング角度が時間経過に伴ってどのように変化するかを模式的に示す。
図6に示した検知範囲変化52は、物体検知部31がステアリング角度の変化に応じて設定した検知範囲の大きさを縦軸にプロットし、横軸に時刻をプロットしたもので、検知範囲の大きさが時間経過に伴ってどのように変化するかを模式的に示す。
図4(1)の状態では、ステアリング角度が略ゼロであることから検知範囲の大きさは直進時用の検知範囲から変化していないことがステアリング変化51及び検知範囲変化52からわかる。
【0038】
その後、
図4(2)の状態に移行する。この状態では、ハンドルH1が左に切られている。この結果、車両10にステアリング角が生じ、表示制御装置20は、左側の検知範囲を直進時の検知範囲Dr1よりも広い検知範囲Dr2に設定する。このとき、検知範囲Dr2は撮像範囲G0全体でもよい。なお、
図4(2)の状態において、検知範囲Dr1が検知範囲Dr2へ拡大されたとしても、検知範囲内に対象物を検出しないときは表示範囲は表示範囲G1のままであり、検知範囲内に対象物が検出されたときに表示範囲が拡大されて表示範囲G2に設定される。
図6のステアリング変化51において、
図4(2)の期間ではステアリング角度が正方向に増加したことから、ステアリングは左方向に回転したとわかる。この時、検知範囲変化52にも記載されたように、物体検知部31は車両10が左折を開始したと判断し、検知範囲が検知範囲Dr1よりも大きい検知範囲Dr2に設定する。
その後、
図4(3)の状態では、ハンドルH1の操作角度が維持され、車両10は左に旋回している。このとき、左側の検知範囲は拡大したままである。仮に、
図4(3)の状態で検知範囲が直進時と同一であれば、左折で巻き込む物体の接近する方向が検知範囲から外れる。しかし、検知範囲を拡大したことにより、左折で巻き込む物体の接近する方向が検知範囲に含まれている。
【0039】
その後、
図5(4)の状態に移行する。この状態でも、ハンドルH1の操作角度が維持され、車両10は左に曲がっている。このとき、左側の検知範囲は拡大したままである。しかし、車両10の左旋回がさらに進むと、左折で巻き込む物体の接近する方向は拡大した検知範囲から外れはじめる。
もし
図4(3)と
図5(4)の状況において、ハンドルH1がさらに左方向へ回転されてステアリング角度が左方向にさらに変化したとしても、検知範囲は検知範囲Dr2のままである。
図6のステアリング変化51において、
図4(3)、
図5(4)の期間ではステアリング角は変化せず、検知範囲変化52においても検知範囲の大きさが検知範囲Dr2に維持されていることが分かる。
【0040】
その後、
図5(5)の状態に移行する。この状態では、ハンドルH1が左折時とは反対の右方向に回転されている。表示制御装置20は、ハンドルH1が左折時とは反対の右方向に回転されることによって生じるステアリング角の変化量に合わせて、徐々に検知範囲を縮小する。例えば、ステアリング角が右方向に変化に一次関数的に比例して検知範囲が縮小されても良いし、指数関数的に縮小されても良い。また、舵角が戻される方向への回転を検知したときに直ちに検知範囲の縮小を開始するのではなく、数百ミリ秒程度の待機時間を設け、その後緩やかに検知範囲を縮小してもよい。
図6のステアリング変化51において、
図5(5)の期間ではステアリング角が負の方向に変化して減少したことから、ステアリングが右方向に回転したと分かる。この時、例えば検知範囲変化52のようにステアリング角が負の方向に変化して減少しているとき、ステアリング角の減少に伴って検知範囲を検知範囲Dr2から縮小する。また、ステアリング角が変化しないときは検知範囲の縮小を止めてその時の検知範囲を維持してもよい。
図5(5)の状態では、車両10が左折をほぼ完了して交差点を走り去る方向に移動し始めているため、内輪側の歩行者等を検知する必要性が左折を始めた時点よりも相対的に低い。したがって、車両のハンドルH1が左折時とは反対の右方向に回転された量に比例して検知範囲が徐々に狭められる。
【0041】
その後、
図5(6)の状態に移行する。この状態では、車両10の左折が完了し、車両10は直進している。この時、ハンドルH1の操作角度は略ゼロであり、車両10のステアリング角度も略ゼロである。また、車両10は、左右の後側方を撮像範囲G0で撮像し、表示範囲G1の画像を表示している。さらに、車両10は、直進時用の検知範囲で物体検知を行う。
図6のステアリング変化51において、
図5(6)の期間では、車両10のステアリング角は略ゼロポジションであるため、変化は0である。したがって、検知範囲の大きさは検知範囲Dr1に設定される。
【0042】
これまでの説明では、物体を検知した場合に表示範囲を拡大する例を説明したが、表示範囲の大きさを維持して表示範囲を移動させてもよい。
【0043】
図7は、右折時を例とした表示範囲の移動について説明する図である。左折時に表示範囲を移動させる例を理解するときは、
図7の左右を反転させて理解すればよい。
図7では、車両10は、右後側方について撮像範囲G0を撮像している。表示制御装置20は、撮像範囲G0の画像から、表示範囲G1の画像を切り出して、右のドアミラーに対応する画像として表示する。
【0044】
表示制御装置20は、検知範囲に所定の物体を検知したならば、その物体が表示されるよう表示範囲を変更する。具体的には、検知した物体を中心とした表示範囲G2を設定する。表示範囲G2は、表示範囲G1と大きさが同じである。表示範囲G1は、車両10に対して位置関係が規定されているが、表示範囲G2は、検知した物体に対して位置関係が規定されている。
【0045】
このように、表示範囲を移動させることで、物体を十分な大きさで表示することができる。また、表示範囲の大きさを維持することで、表示範囲G1と同じ距離感で物体との位置関係を把握することができる。一方、ドアミラーとしての機能は低下するため、ドアミラー自体やドアミラーに相当する表示を別途設けてもよい。
なお、車両10の状態に応じて検知範囲を変化させる点は
図1と同様である。
【0046】
上述してきたように、開示の表示制御装置20は、車両10の周辺を撮像した画像の表示を制御する表示制御装置であって、前記車両10の後側方を撮像した画像を表示する表示部としてのディスプレイ21と、前記車両の後側方に存在する物体を検知する物体検知部31と、前記車両のステアリング角度を検出するステアリング角検出部42と、前記物体検知部が検知範囲内に物体を検知すると、前記車両の後側方を撮影した画像の表示範囲を第1の範囲から第2の範囲へ変更する表示範囲変更部32と、を備え、前記物体検知部の検知範囲は、前記ステアリング角度に応じて変化する。
このため、車両の進行方向が変化した場合にも車両周辺の情報を的確に提供できる。
【0047】
また、開示の表示制御装置20では、前記車両のステアリング角度が所定の角度以上であるとき、前記物体検知部31は内輪側の検知範囲を外輪側の検知範囲よりも大きくする。
このため、右左折における巻き込み事故を回避できる。
【0048】
また、前記物体検知部31は、前記車両の後側方を撮像した画像に対して前記検知範囲を設定し、前記検知範囲を対象とする画像認識によって前記物体を検知し、前記表示範囲変更部は、前記車両の後側方を撮像した画像の一部を前記表示範囲とする。
このため、撮像した画像を検知と表示に効率よく利用できる。
【0049】
また、一例として、前記第2の範囲は、前記第1の範囲よりも大きく、前記第1の範囲と前記物体検知部により検知された物体の像とを含む。
このようにすれば、ドアミラーとしての機能を維持しつつ、検知した物体について情報提供することができる。
【0050】
また、一例として、前記第1の範囲は、前記車両に対して位置関係が規定され、前記第2の範囲は、前記物体検知部が検知した物体に対して位置関係が規定されてもよい。
このようにすれば、検知した物体について重点的に情報提供を行うことができる。
【0051】
また、開示の表示制御装置20は、前記ステアリング角度が減少するとき、前記ステアリング角度の変化量に応じて前記検知範囲を縮小することを特徴とする。
このため、検知範囲を状況に合わせて縮小させることができる。
【0052】
なお、本発明は上記の実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、構成の削除に限らず、構成の置き換えや追加も可能である。
【0053】
例えば、実施例では、検知範囲を撮像範囲や表示範囲とは独立に設定する場合を示したが、検知範囲を撮像範囲や表示範囲と対応させてもよい。例えば、直進時には表示範囲G1と検知範囲を一致させ、右左折時には撮像範囲と検知範囲を一致させてもよい。
【0054】
また、実施例では、画像処理で物体を検知する場合を例示したが、レーダやソナー等のセンサを用いてもよい。
また、画像処理による物体検知に際しても、パターンマッチングによる物体の種別の認識、時系列の画像の比較による物体の速度と距離の認識など、任意の手法を用いることができる。さらに、高速で直進時には他車両と自動二輪車を検知し、右左折時には自動二輪車、自転車及び歩行者を検知するなど、状況に応じて検知対象を異ならせてもよい。
また、複数の物体を検知した場合には、その全てを表示するように表示範囲G2を設定してもよいし、距離や速度から選択した1の物体を表示するように表示範囲G2を設定してもよい。
【0055】
また、実施例では、車載の表示制御装置20を例に説明を行ったが、車両10の遠隔操作のための端末に適用してもよい。
【0056】
また、実施例では、物体検知部31が検知範囲内に物体を検知すると、表示範囲変更部32が表示範囲を拡大する例を説明したが、表示範囲を拡大することに代えて、またはこれに加えて、検知範囲内に物体を検知したら表示部22に表示される画像内に含まれる物体を強調して表示してもよい。例えば、強調表示の例として、画像内に含まれる物体を囲ったマーク等が考えられる。この場合でも、検知範囲は
図6に記載したようにステアリング角に応じて拡大縮小される。例えば、表示範囲を常に表示範囲をG1またはG2としておき、検知範囲をステアリング角に応じて拡大縮小し、検知範囲内に物体が検出されると物体を強調表示することも可能である。
このようにすることで、運転者が注意を向ける必要性が低いにもかかわらず物体が強調表示されて煩わしく感じることを減らすことができ、運転者が注意を向ける必要性が高いときはより広い範囲において物体を検知することができる。
10:車両、11:カメラ、13:駆動制御ユニット、20:表示制御装置、21:ディスプレイ、22:入力受付部、23:車両状態検知部、24:制御部、31:物体検知部、32:表示範囲変更部、41:速度検出部、42:ステアリング角検出部、43:方向指示器状態検出部