(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033641
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】複合容器の製造方法及び複合容器用の紙複合原反
(51)【国際特許分類】
B31B 50/59 20170101AFI20240306BHJP
B65D 8/04 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
B31B50/59
B65D8/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137352
(22)【出願日】2022-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 孝行
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 実
(72)【発明者】
【氏名】和田 潔
【テーマコード(参考)】
3E061
3E075
【Fターム(参考)】
3E061AA06
3E061AB09
3E061AB18
3E061BB12
3E061CA21
3E075AA10
3E075BA07
3E075CA01
3E075DC18
3E075DC37
3E075DC44
3E075DD30
3E075DD45
3E075GA03
3E075GA04
(57)【要約】
【課題】本発明は、複合容器の製造方法及び複合容器用の紙複合原反に関し、紙複合原反に表裏面からエンボスを形成することで、製造後の容器10の反りや皺の発生を低減できるようしたものである。
【解決手段】紙層52を含む原反40を、金型に60載置して、型締めし、前記金型60に設けられた成型溝部に溶融樹脂を射出して前記原反40の端部に樹脂部30を形成する複合容器10の製造方法であって、前記原反40は複数の凹凸を有する。前記複数の凹凸は、表側から裏側に向かって凹んだ複数の表側のエンボス43と、裏側から表側に向かって凹んだ複数の裏側のエンボス72とを含む。前記表側のエンボス43と、前記裏側のエンボス72とが、交互に並ぶ。前記金型60は、前記原反40における前記複数の凹凸を有する領域に対応し、前記領域の厚みよりも深さが浅い載置凹部61を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙層を含む原反を、金型に載置して、型締めし、前記金型に設けられた成型溝部に溶融樹脂を射出して前記原反の端部に樹脂部を形成する複合容器の製造方法であって、
前記原反は複数の凹凸を有する、複合容器の製造方法。
【請求項2】
前記複数の凹凸は、表側から裏側に向かって凹んだ複数の表側のエンボスと、裏側から表側に向かって凹んだ複数の裏側のエンボスとを含む、請求項1に記載の複合容器の製造方法。
【請求項3】
前記表側のエンボスと、前記裏側のエンボスとが、交互に並ぶ、請求項2に記載の複合容器の製造方法。
【請求項4】
前記金型は、前記原反における前記複数の凹凸を有する領域に対応し、前記領域の厚みよりも深さが浅い載置凹部を有する、請求項1に記載の複合容器の製造方法。
【請求項5】
前記載置凹部は、前記複数の凹凸を有する領域に対応する、請求項4に記載の複合容器の製造方法。
【請求項6】
前記原反を、前記載置凹部において前記領域の表裏面から押圧することで、伸張させる、請求項4に記載の複合容器の製造方法。
【請求項7】
型締めした前記金型における前記原反の伸張量と、型開き後の前記樹脂部の収縮量とが等しくなるように、前記領域の厚み及び前記載置凹部の深さが調整されている請求項6に記載の複合容器の製造方法。
【請求項8】
紙層を有する原反の端部に樹脂部が形成された複合容器であって、
前記原反は、複数の凹凸を有する、複合容器。
【請求項9】
前記複数の凹凸は、表側から裏側に向かって凹んだ複数の表側のエンボスと、裏側から表側に向かって凹んだ複数の裏側のエンボスとを含む、請求項8に記載の複合容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合容器の製造方法及び複合容器用の紙複合原反に関し、紙複合原反に表裏面からエンボスを形成することで、製造後の容器の反りや皺の発生を低減できるようしたものである。
【背景技術】
【0002】
従来、紙と樹脂成形品とを用いてなる複合容器としては、例えば紙ブランクを射出成形金型内に挿入し、樹脂と紙ブランクとを一体成形してなる複合容器およびその製造方法が知られている(例えば、特許文献1の段落「0003」並びに
図1参照)。
従来の容器では、ブランクが紙のみからなるものである場合に、複合容器に内容物を収納した後、紙ブランクが内容物から蒸発する水分を吸収して紙ブランクに反りを生じることがある(例えば、特許文献1の段落「0023」参照)。
この反りの発生を防止するために、従来の容器では、枠材と紙ブランクとを接合する前の段階で、紙ブランクを予め湿潤状態とする工程を設けていた(例えば、特許文献1の段落「0024」参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1では、上記のように紙ブランクスを予め湿潤状態とする工程が必要であり、煩雑であるという問題点があった。
そこで、本発明は従来の問題点を解決するためになされたものであり、複合容器を複数の凹凸を設けた原反を用い、射出成型により樹脂部を形成した場合、射出成型後に樹脂部が収縮したとしても、容器の反りや皺の発生を低減できるようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る複合容器の製造方法は、紙層を含む原反を、金型に載置して、型締めし、前記金型に設けられた成型溝部に溶融樹脂を射出して前記原反の端部に樹脂部を形成する複合容器の製造方法であって、前記原反は複数の凹凸を有する、ことを特徴とする。
【0006】
また、本発明の一態様に係る複合容器の製造方法は、前記複数の凹凸は、表側から裏側に向かって凹んだ複数の表側のエンボスと、裏側から表側に向かって凹んだ複数の裏側のエンボスとを含む、ことを特徴とする。
本発明の一態様に係る複合容器の製造方法は、前記表側のエンボスと、前記裏側のエンボスとが、交互に並ぶ、ことを特徴とする。
【0007】
本発明の一態様に係る複合容器の製造方法は、前記金型は、前記原反における前記複数の凹凸を有する領域に対応し、前記領域の厚みよりも深さが浅い載置凹部を有する、
ことを特徴とする。
また、本発明の一態様に係る複合容器の製造方法は、前記複数の凹凸を有する領域に対応する、ことを特徴とする。
【0008】
本発明の一態様に係る複合容器の製造方法は、前記原反を、前記載置凹部において前記領域の表裏面から押圧することで、伸張させる、ことを特徴とする。
本発明の一態様に係る複合容器の製造方法によれば、型締めした前記金型における前記原反の伸張量と、型開き後の前記樹脂部の収縮量とが等しくなるように、前記領域の厚み及び前記載置凹部の深さが調整されている、ことを特徴とする。
【0009】
本発明の一態様に係る複合容器は、紙層を有する原反の端部に樹脂部が形成された複合容器であって、前記原反は、複数の凹凸を有する、ことを特徴とする。
本発明の一態様に係る複合容器は、前記複数の凹凸は、表側から裏側に向かって凹んだ複数の表側のエンボスと、裏側から表側に向かって凹んだ複数の裏側のエンボスとを含む、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様に係る複合容器の製造方法によれば、射出成型で形成された樹脂部が収縮しても、原反に設けた複数の凹凸が収縮を緩和するため、複合容器のそりや皺の発生を低減することができる。
本発明の一態様に係る複合容器の製造方法によれば、エンボスを表裏面に設けることにより、表裏のいずれへのそりや皺の発生を低減できる。
本発明の一態様に係る複合容器の製造方法によれば、エンボスを交互に設けることにより、全体においてそりや皺の発生を低減できる。
本発明の一態様に係る複合容器の製造方法によれば、載置凹部により、原反を伸張させることができ、射出成型後の樹脂部の収縮をより緩和することができ、そりや皺をより低減できる。
本発明の一態様に係る複合容器の製造方法によれば、前記領域をより均等に伸張させることができ、そりや皺をより低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係わり、複合容器の斜視図である。
【
図2】
図1に示す複合容器の一部を構成する容器本体の展開した平面図である。
【
図3】
図1に示す複合容器の一部を構成する射出樹脂部の斜視図である。
【
図7】
図6に対応し、紙複合原反を両金型の間に位置させた状態の金型の一部断面図である。
【
図8】
図7に対応し、金型を型締めし、樹脂を射出した状態の一部断面図である。
【
図9】
図8に対応し、金型を型開きし、紙複合原反と射出樹脂部とを取り出した状態の一部断面図である。
【
図10】
図9に対応し、紙複合原反が樹脂収縮した状態の一部断面図である。
【
図11】従来の成形方法を説明するための紙複合原反の一部断面図である。
【
図12】本発明の第2の実施形態に係わり、複合容器の成形方法を説明するための一部断面図である。
【
図14】本発明の第3の実施形態に係わり、射出樹脂部の平面図である。
【0012】
(実施形態)
本発明の実施形態について、以下に図面を参照して説明する。
ここで、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各部の厚みの比率等は、現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内であって、種々の変更を加えることができる。
【0013】
(複合容器10)
複合容器10は、
図1に示すように、容器本体20と、容器本体20と一体になった射出樹脂部(樹脂部)30と、を備える。複合容器10は、正面から見て、台形形状を成し、幅狭に底部部分11と、底部部分11から上方に向かって徐々に幅広に広がった胴部部分12と、胴部部分12の上方に位置し、胴部部分12の上部に連結する幅広の口元部分13とから構成されている。なお、複合容器10を、例えば下方に向かってすぼまった四角錐台形に形成したが、これに限定されず、例えば下方に向かってすぼまった三角錐台形や、五角錐台形、円錐台形に形成しても良い。
【0014】
(容器本体20)
容器本体20は、
図2に示すように、容器本体20を展開した状態の形状を大判のシートから打ち抜いて形成される紙複合原反40を利用して製造される。
容器本体20は、略長方形の底部21と、底部21の四辺にそれぞれ連接する4個の胴部22とを備える。なお、胴部22を、4個に分割したが、これに限定されず、胴部22は1個~3個となるように容器本体20を展開しても良い。
【0015】
(射出樹脂部30)
射出樹脂部30は、
図3及び
図5に示すように、容器本体20の底部21を縁取る四角形の枠型の底部31と、底部31の各角部から上方に斜めに広がりながら延び、容器本体20の4個の胴部22を縁取る4本の柱部32と、4本の柱部32の上端部を相互に連結する四角形の枠型の口元部33とを備える。なお、射出樹脂部30は、積層シート50の端部に形成される。
(紙複合原反40)
紙複合原反(原反)40は、紙層を含み、例えば積層シート50から構成されている。
【0016】
(積層シート50)
積層シート50は、
図4に示すように、容器本体20の外側となる部分から順に、(1)外側樹脂コート層51と、(2)紙層52と、(3)内側樹脂コート層53と、(4)ガスバリア層54とを順に積層した4層から構成している。各層の詳細については後述する。なお、各層を、(1)~(4)の4層から構成したが、これに限定されず、(4)ガスバリア層54を省いても良いし、或いは(1)~(4)以外に、強靭化付与層、印刷インキ層等の他の層を設けても良い。
【0017】
(外側樹脂コート層51)
外側樹脂コート層51は、射出成型樹脂と熱溶着可能な樹脂膜から構成されている。
外側樹脂コート層51は、厚みが例えば2μm~200μmの範囲で、望ましくは5μm~100μmが良い。
外側樹脂コート層51の厚みが、2μm未満の場合、射出樹脂材料との接着強度が十分に得られず、複合容器10としての強度が不十分で落下した時や取扱い時に割れてしまう可能性がある。
また、外側樹脂コート層51の厚みが、逆に200μmを越えると、樹脂使用量が多くなってしまい、積層シート50を紙製とした本来の目的を果たさない可能性がある。
外側樹脂コート層51は、素材として、PE、PP、PET、EMAA、EAA、PMMA、POM、PBT、PA等の熱可塑性樹脂が少なくとも1種以上含まれることが必要である。
樹脂膜の形成方法はフィルム貼り、ウェット・押出等の各種コーティングが使用可能である。
【0018】
(紙層52)
紙層52は、紙製の積層シート50のベース層である。
紙層52は、厚みが例えば50μm~900μmの範囲で、望ましくは100μm~600μmが良い。
紙層52の厚みが50μm未満だと、紙製の積層シート50の剛性が低く、
図7、
図8を用いて後述する金型60a,60bの規定位置にインサートできないおそれがある。また、紙層52の厚みが、逆に900μmを超えると、剛性が強くなりすぎ、紙の反発で金型60a,60bの中に入らないおそれがある。
【0019】
(内側樹脂コート層53)
内側樹脂コート層53は、外側樹脂コート層51と同様に、射出成型樹脂と熱溶着可能な樹脂膜から構成されている。
内側樹脂コート層53は、その厚みが例えば10μm~200μmの範囲で、望ましくは30μm~100μmが良い。
内側樹脂コート層53の厚みが10μm未満の場合には、射出樹脂材料の収縮に樹脂膜が負けてしまい、外側樹脂コート層51や内側樹脂コート層53、或いは溶着部にクラックが発生し、気密性を損なわれたり、複合容器10の強度が低下したりするおそれがある。
【0020】
また、内側樹脂コート層53の厚みが、逆に200μmを越えると、樹脂使用量が多くなってしまい、積層シート50を紙製とした本来の目的を果たさないおそれがある。
内側樹脂コート層53は、素材として、PE、PP、PET、EMAA、EAA、PMMA、POM、PBT、PA等の熱可塑性樹脂が少なくとも1種以上含まれることが必要である。
内側樹脂コート層53の樹脂膜の形成方法は、フィルム貼り、ウェット・押出等の各種コーティングが使用可能である。
また、内側樹脂コート層53は、外側樹脂コート層51の樹脂組成と必ずしも、同一である必要はなく、異ならせても良い。
【0021】
(ガスバリア層54)
ガスバリア層54は、食品や医薬品の包装に必要とされる品質を保全するための要求物性の一つであり、ガス透過度ともいわれ、ガスの透過しにくさのことをいう。
例えば、ポリエチレンや無延伸ポリプロピレン(CPP)のガスバリア性は低く、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)やポリスチレンではガスバリア性が高い。
これら合成樹脂のガスバリア性を向上させるためには、アルミ箔、アルミ蒸着フィルム、透明蒸着フィルム、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、エチレンビニルアルコール共重合樹脂(EVOH、エバール)などをあわせて組み込んだ多層構成のフィルムにする必要がある。
【0022】
(複合容器10の製造方法)
上記構成を有する複合容器10の製造方法について、
図6~
図11を用いて説明する。
まず、本製造方法の説明に先立ち、紙複合原反40について説明する。紙複合原反40には、複数の凹凸が設けられている。具体的には、紙複合原反40には、
図6に示すように、表側から裏側に向かって凹んだ複数の表側のエンボス43と、裏側から表側に向かって凹んだ複数の裏側のエンボス44とを交互に並ぶように形成されている。これらエンボス43、44は、紙複合原反40を打ち抜く前の積層シート50にプレス成形により予め形成しておいても良いし、或いは、紙複合原反40に打ち抜いた後でプレス成形により形成しても良い。エンボス43,44は断面が矩形に形成され、紙複合原反40の長さ方向に沿って、開口面から底部に向かって幅が徐々に狭まった断面台形形に形成されている。なお、エンボス43,44の形状は、特に限定されるものではなく、例えば円形等であってもよい。さらに、紙複合原反40におけるエンボス43,44が形成された面と反対側に、例えば、エンボス43,44に対応するように突出した凸部があってもよい。
【0023】
図6又は
図7について、紙複合原反40の厚さに対する半球形のエンボス43,44の開口径や深さは、例えば紙複合原反の厚さ1000μm~3000μmに対して、エンボスの直径2000μm~15000μmであることが好ましい。例えば、下限値と上限値は、開口径に対しては厚みより大きくなる。紙厚みに対してはボス形状形成するのに外周側で厚み分の斜め傾斜面形成されるので、最低厚み原反厚みの2倍、最大で5倍であることが好ましい。深さに関しては、原反厚みの0.5倍~2倍であることが好ましい。
【0024】
また、紙複合原反40の厚さは、例えば1000μm~3000μmに設定している。エンボス43,44の開口幅(言い換えると、エンボス43,44が円形の場合は直径、エンボス43,44が矩形である場合は一辺の長さ)は、2000μm以上であることが好ましく、小さすぎる場合には、紙複合原反40が伸張しにくい場合がある。一方、エンボス43,44の開口幅は、15000μm以下であることが好ましく、大きすぎる場合には、紙複合原反40におけるしわやそりを抑制する効果が低い場合がある。また、紙複合原反40の厚さは、例えば、端部の厚さを基準とし、表裏面に凸部がある場合には、凸部の高さの最大値を足した値とする。
【0025】
(金型60)
つぎに、
図7を用いて、本製造方法に用いられる金型60について説明する。
金型60は、
図7に示すように、紙複合原反40をインサートし、容器本体20と一体になった射出樹脂部30を形成するインサートインジェクション用のものである。金型60は、同図において、上下に位置する一対の金型60a,60bから構成される。上下の金型60a,60bの対向間隔内に紙複合原反40がはまり込む。また、金型60a,60bは紙複合原反40のエンボス43,44が形成された部分(領域)の厚みより深さを浅く形成した載置凹部61を有する。さらに、金型60a,60bは、載置凹部61の両端部に連続して位置し、紙複合原反40の底部21となる部分(例えば底部部分11)及び胴部22となる部分(例えば胴部部分12)の各端部がそれぞれ入り込み、射出された樹脂が注入されて射出樹脂部30を形成する成型溝部62を有する。
【0026】
また、載置凹部61の深さは、例えば500μm~6000μmに設定している。この載置凹部61の深さは、例えば、紙複合原反40の中央部分において紙複合原反40の厚さよりも小さく設定されることが好ましく、例えば紙複合原反40の厚さの0.5倍~2倍であることが好ましい。これにより紙複合原反40を効果的に伸張させることができる。
【0027】
(製造方法)
図7~
図10を用いて、本製造方法について、次の工程に分けて説明する。
第1の工程は、
図7に示すように、両金型60a,60bの間の載置凹部61に紙複合原反40を置き、両金型60a,60bを型締めし、載置凹部61の内面により紙複合原反40のエンボス43,44が形成された部分を表裏面から押圧することで、紙複合原反40を伸張させる工程である。
【0028】
第2の工程は、
図8に示すように、紙複合原反40を伸張させた状態を維持したまま、成型溝部62内に樹脂を射出して紙複合原反40の各端部40a,40bに射出樹脂部30を形成する工程である。
なお、実際には、金型60a,60b間に紙複合原反40を載置した際には、成型溝部62内には、互いに接合されることになる紙複合原反40の各端部(例えば、
図3に示した隣り合った二つの胴部22,22のそれぞれの端部)が同時に位置し、それら各端部同士が射出樹脂部30によって接合される。
図7、
図8では、本願発明の作用効果を判りやすくするために、一の端部のみを成型溝部62内に描いている。
【0029】
第3の工程は、
図9に示すように、射出樹脂部30を形成後、両金型60a,60bを型開きして容器本体20及び射出樹脂部30を備える複合容器10を取り出す工程である。
図9について、紙複合原反40の厚さに対する矩形のエンボス43,44の開口径や深さは、載置凹溝部の深さ500μm~6000μmで、矩形の場合も、1辺が原反厚みの2倍~5倍で、深さは、原反厚みの0.5倍~2倍であることが好ましい。
【0030】
容器本体20を取り出すと、樹脂の収縮が始まる。このとき、樹脂の収縮量と、容器本体20の長さ(厚み)の戻り量とを合わせることで、容器本体20が元の形状に戻る。
通常の紙複合原反40をそのままインサート成形すると、射出樹脂部の収縮によって、
図11に示すように中央凸になる。このため、樹脂の領域を増加することで、中央凸の変形を抑制していた。しかし、樹脂の領域を増加すると、樹脂量が増加してしまうという弊害がある。
【0031】
本製造方法を用いることで、
図10に示すように、射出樹脂部30が収縮しても、紙複合原反40も元の厚みに戻ることで中央凸の変形を抑制でき、従って、中央の変形を抑制するために射出樹脂部に用いる樹脂の量を増加させる必要が無く、複合容器10としての樹脂量の使用量を抑制できる。
また、本製造方法によれば、両金型60a,60bの載置凹部61に紙複合原反40を置いて型締をしたときの当該紙複合原反40の伸張量と、型開き後の射出樹脂部30の収縮量とが等しくなるように、エンボス43,44が形成された部分の厚み及び載置凹部61の深さを調整できる。
【0032】
(第2の実施形態に係る複合容器10の製造方法)
図12,13を用いて、第2の実施形態に係る複合容器10の製造方法について説明する。
まず、本製造方法の説明に先立ち、紙複合原反40について説明する。紙複合原反40には、エンボス70として、表側から裏側に向かって半球形に凹んだ複数の表側のエンボス71と、裏側から表側に向かって半球形に凹んだ複数の裏側のエンボス72とを交互に並ぶように形成しておく。なお、
図12,13では、エンボス70、エンボス72を形成した面が凹んでいるが、この凹みに対応するよう反対側の面が突出し凸部となっていてもよい。
【0033】
本製造方法に用いられる金型60について説明すると、先に
図6~
図11の説明図を用いて説明した金型60と同様に複合容器10の内外に位置する一対の金型60a,60から構成され、対向面には載置凹部61と成型溝部62とを形成する。
そして、両金型60a,60bの間の載置凹部61には、紙複合原反40を置き、両金型60a,60bを型締めし、載置凹部61の内面により紙複合原反40のエンボス71,72が形成された部分を表裏面から押圧することで、紙複合原反40を伸張させる。
【0034】
そして、紙複合原反40を伸張させた状態を維持したまま、成型溝部62内に樹脂を射出して紙複合原反40の各端部40a,40bに射出樹脂部30を形成する。
図12,13に示す状態は、紙複合原反40を伸張させた状態を維持したまま、射出樹脂部30を形成した状態である。
その後、両金型60a,60bを型開きし、紙複合原反40を取り出し、紙複合原反40を収縮させ、複合容器10を製造する。
【0035】
(エンボスのバリエーション)
エンボス43,44として、断面台形形を例示したが、これに限らず、
図12,13に示すように、半球形に形成して良いし、又、図示しないが、例えば四角形や幾何学形の凹凸形状に形成しても良い。さらに、エンボス43,44としては、図示しないが、輪郭形成する罫線押しで、四角形状の突起を形成し、突起を凸部として、輪郭の内部を突起より低い凹部としても良い。
【0036】
(第3の実施形態に係る複合容器10)
図14を用いて、複合容器10の第3の実施の形態について説明する。
本実施の形態は、容器本体20の底部21を、射出樹脂部30で縁取りしないことを特徴とする。
本実施の形態によれば、
図5に示す容器本体20と比較し、容器本体20の底部21を縁取りしないことで、射出樹脂部30の底部31を省くことができ、樹脂の使用量を減少できる。
なお、上記の各実施形態では、底部と胴部とを有する容器について説明したが、容器の形態は特に限定されるものではない。上記容器としては、原反の端部に射出樹脂部が形成されるものであればよく、例えば、原反の端部に射出樹脂部を形成した蓋体であってもよい。
【0037】
(実施形態の特徴点と効果)
実施形態の特徴点と効果とは、次の通りである。
(第1の特徴点)
第1の特徴点は、少なくとも紙層52と熱可塑性樹脂を含む樹脂層(例えば外側樹脂コート層51,内側樹脂コート層53)とが積層された積層シート50から形成され且つ底部21と底部21に連接する胴部22とを有する容器本体20と、底部21と胴部22との間を接合するとともに容器本体20と一体になった射出樹脂部30と、を備える複合容器10の製造方法であって、容器本体20を形成する積層シート50製の紙複合原反40に、表側から裏側に向かって凹んだ複数の表側のエンボス43と、裏側から表側に向かって凹んだ複数の裏側のエンボス44とが交互に並ぶように形成しておき、対向間隔内に紙複合原反40がはまり込み、紙複合原反40のエンボス43,44が形成された部分の厚みより深さを浅く形成した載置凹部61と、載置凹部61の両端部に連続して位置し、紙複合原反40の底部21となる部分(例えば底部部分11)及び胴部22となる部分(例えば胴部部分12)の各端部がそれぞれ入り込み、射出された樹脂が注入されて射出樹脂部30を形成する成型溝部62と、を有するインサートインジェクション用の一対の金型60a,60bを用意し、両金型60a,60bの間の載置凹部61に紙複合原反40を置き、両金型60a,60bの型締めをし、載置凹部61の内面により紙複合原反40のエンボス43,44が形成された部分を表裏面から押圧することで、紙複合原反40を伸張させ、紙複合原反40を伸張させた状態を維持したまま、成型溝部62内に樹脂を射出して紙複合原反40の各端部に射出樹脂部30を形成し、その後、両金型60a,60bを型開きして容器本体20及び射出樹脂部30を備える複合容器10を取り出す。
【0038】
(第1の特徴点の効果)
第1の特徴点によれば、紙複合原反40の表裏面にエンボス43,44をそれぞれ形成し、射出樹脂部30の成形時に、紙複合原反40を一旦伸張させることで、その後に樹脂収縮したとしても、紙複合原反の長さと厚みとが初期状態に戻ることを利用し、製造後の複合容器10の反りや皺の発生を低減できる。
また、第1の特徴点によれば、エンボス43,44は成形時に一旦伸張し、その後、伸縮しても元の形状に戻ることで、エンボス43,44により複合容器10の表面を装飾できる。
さらに、第1の特徴点によれば、複合容器10の表面のエンボス43,44により、複合容器10の内部の温度に直接触れないで、複合容器10を掌握することができ、熱さや冷たさを緩和できる。
【0039】
(第2の特徴点)
第2の特徴点は、両金型60a,60bの載置凹部61に紙複合原反40を置いて型締をしたときの当該紙複合原反40の伸張量と、型開き後の射出樹脂部30の収縮量とが等しくなるように、エンボス43、44が形成された部分の厚み及び載置凹部61の深さが調整されている。
(第2の特徴点の効果)
第2の特徴点によれば、両金型60a,60bの載置凹部61に紙複合原反40を置いて型締をしたときの当該紙複合原反40の伸張量と、型開き後の射出樹脂部30の収縮量とが等しくなる時間を、一定に保持することができ、複合容器10の製造を容易にできる。
【0040】
(第3の特徴点)
第3の特徴点は、少なくとも紙層52と熱可塑性樹脂を含む樹脂層(例えば外側樹脂コート層51,内側樹脂コート層53)とが積層された積層シート50から形成され且つ底部21と底部21に連接する胴部22とを有する容器本体20と、底部21と胴部22との間を接合するとともに紙複合原反40と一体になった射出樹脂部30とを備える、複合容器10の容器本体20を形成するための積層シート50製の紙複合原反40であって、表側から裏側に向かって凹んだ複数の表側のエンボス43と、裏側から表側に向かって凹んだ複数の裏側のエンボス44とが交互に並ぶように形成され、それらエンボス43,44が形成された部分の厚みは、当該紙複合原反40から複合容器10を形成する際に用いられるインサートインジェクション用の金型60a,60bにおけるエンボス43,44が形成された部分を挟み込む載置凹部61の深さよりも厚い。
(第3の特徴点の効果)
第3の特徴点によれば、金型60a,60bにより、容器本体20を伸張でき、製造後の複合容器10の反りや皺の発生を低減できる。
【符号の説明】
【0041】
10 複合容器
11 底部部分
12 胴部部分
13 口元部分
20 容器本体
21 底部
22 胴部
30 射出樹脂部
30a 一端部
30b 他端部
31 底部
32 柱部
33 口元部
40 紙複合原反
40a 端部
40b 端部
41 底部
42 胴部
43 表側のエンボス
44 裏側のエンボス
50 積層シート
51 外側樹脂コート層
52 紙層
53 内側樹脂コート層
54 ガスバリア層
60 金型
60a 金型
60b 金型
61 載置凹部
62 成型溝部
70 エンボス
71 表側のエンボス
72 裏側のエンボス