(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033651
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】車両用横転防止装置
(51)【国際特許分類】
B62D 37/02 20060101AFI20240306BHJP
F28F 1/32 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
B62D37/02 Z
F28F1/32 A
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137366
(22)【出願日】2022-08-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-11-01
(71)【出願人】
【識別番号】594126377
【氏名又は名称】土橋 義英
(72)【発明者】
【氏名】土橋 義英
(57)【要約】
【課題】 本発明は車両が横風を受けた時、風の力を低減するためのスリットを車両側面に設けることで横転しにくくするための、車両用横転防止装置を提供する。
【解決手段】 長辺を水平にし短辺を斜めに傾けた細長い片を、間隔を置いて垂直方向に並べてスリットを形成し、且つ、前記スリットの上方向に隙間があいている側を車両の側面方向に配置するが、前記スリットを形成する片と車両の側面との間に隙間を有することを特徴とするものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長辺を水平にし短辺を斜めに傾けた細長い片を、間隔を置いて垂直方向に複数以上配置してスリットを形成し、且つ、前記スリットの上方向に隙間があいている側を車両の側面方向に配置するが、前記スリットを形成する片と車体の側面との間に隙間を有することを特徴とする車両用横転防止装置。
【請求項2】
前記スリットを形成する片を熱交換器で使われる冷媒の放熱板としいて用いる請求項1の車両用横転防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長辺を水平にし短辺を斜めに傾けた細長い片を、間隔を置いて垂直方向に配置してスリットを形成し、且つ、前記スリットの上方向に隙間があいている側を車両の側面方向に配置するが、前記スリットを形成する片と車体の側面との間に隙間を有することを特徴とする車両用横転防止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の横風による車両横転防止の技術としては、車体に丸みを帯びさせせる方法や、車体の姿勢を制御する方法や、車両上部にダウンフォースを得るための板を展開する方法や、車体側面をブラインドのように開閉し風が当たる面積を減少させる方法があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-76732
【特許文献2】特開2015-33872
【特許文献3】特開2017-19298
【特許文献4】特開2020-157882
【特許文献5】CN-U-216232630
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は車両が横風を受けた時、風の力を低減するためのスリットを車両の両側面に設けることで横に押される力を減じ、車両が横転しにくくするための、車両用横転防止装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、車両用横転防止装置において請求項1に係るものは、長辺を水平にし短辺を斜めに傾けた細長い片を、間隔を置いて複数以上垂直方向に配置して多数のスリットを形成する。そして、前記スリットの上方向に隙間があいている側を車両の側面方向に配置するが、前記スリットを形成する片と車両の側面との間に隙間を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、以上説明したように構成されており、以下に記載されるような効果を有する。 請求項1に係る仕組みを用いた場合、横風の力を低減させることができる。長辺を水平にし短辺を斜めに傾けた細長い片を、間隔を置いて複数以上垂直方向に配置して多数のスリットを形成し、前記スリットの上方向に隙間があいている側を車両の側面方向に配置するが、前記スリットを形成する片と車体の側面との間に隙間を有する。このような仕組みにすることで横風がスリットを通り抜ける際に、横方向への抗力の一部が下方向へのダウンフォースになるため横転しにくくすることができる。またスリットは車両の両側面に配置する。
【0007】
車両が走行した時、正面に正圧が発生し後面に負圧が発生するように、横風においても、横風を受ける反対側に負圧が発生する。横風を受けた場合の負圧とは主に風が車両の上面から乖離するときに発生する空気の渦によるものである。車両は一定以上の横風を受けた時、タイヤの接地面の摩擦力が強いので、車両は横滑りはせずにタイヤの接地面を支点にして横転してしまう。車体が高い車両は正圧と負圧がかかる最大位置も高くなり、テコの原理によってより横転しやすくなる。車両用横転防止装置はスリットを通った風は上方向に流れ、車両側面の上部から吹き出す。これによって車両上面を流れる風の速度を弱めることができ、横風を受けた際に反対側に発生する負圧を低減させることで、車両をより横転しにくくする。
【0008】
本発明のスリットが多数ある構造が、特許文献5と似ているいるように見えるが、特許文献5はスリットが縦に出来る構造なのでダウンフォースを利用することを想定していない。また、ブレードを開くことによって風が当たる面積を低減させると記述しているので、隙間を作って横風を反対側に吹き抜けさせる構造であり、本発明と異なる構造であることが分かる。
【0009】
請求項2に係る仕組みを用いた場合、前記スリットを形成する片を熱交換器で使われる冷媒の放熱板として用いることにより、車両の機器を冷却することで走行性能を低下を防ぐことができる。
【0010】
前記スリットを形成する片は、車両の空気抵抗を増大させるので燃費や電費の効率を低下させてしまう。そこで、前記スリットを形成する片に熱伝導率の良い素材を使い放熱板として用いる。熱交換器からの冷媒を前記スリットを形成する片によって空気冷却することにより、エンジン、バッテリー、モーターなどの温度を効率的に下げ、温度上昇からおきる性能低下を防ぐことができ、燃費や電費を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】発明を実施するための形態を示す斜視図である。
【
図2】発明を実施するための形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための形態を
図1、
図2に基づいて説明する。
図1はトラックの荷物室(2)の側面に車両用横転防止装置(1)を設けたものである。図では片側しか描かれていないが、車両用横転防止装置(1)は基本的に車両の両側面に取り付けるものである。また当発明は主にトラックの荷物室に用いることを想定している。
【0013】
図2は
図1の車両用横転防止装置(1)のみを表した図である。多数の細長い片(4)を横向きして支柱(5)に等間隔で取り付けられている。ただし、全ての細長い片は車体側の辺より、外側の辺が下になるように斜めになっている。支柱(5)の断面は円形でも構わない。既存のトラックの荷物室に取り付けることも可能であるが、側面に波板を用いている荷物室への取り付けは適していない。
【実施例0014】
実施例1を
図3を基に説明する。
図3は荷物室(2)と、片(4)、支柱(5)を分かりやすく簡略化した斜視図である。荷物室(2)の側面に支柱(5)が2本設けられ、2本の支柱(5)には片(4)が等間隔に3枚取り付けられている。ただし、片(4)と荷物室(2)の間には風を受け流すための隙間が設けられている。また、片(4)は強度を上げるために曲げてもよい。
【0015】
実施例2を
図4を基に説明する。
図4は車両用横転防止装置を設けた荷物室(2)を簡略化した斜視図である。荷物室(2)の左右の角に支柱(5)が4本設けられ、支柱(5)の間には片(4)が横向きに6枚取り付けられている。全ての細長い片は車体側の辺より、外側の辺が下になるように斜めになっている。支柱(5)の上端には桁A(7)が設けられ、支柱(5)の下端には桁B(7)がもうけられている。桁A(7)は上方に風を吹き上げるために荷物室(2)との間に吹上口(27)が必要であるが、荷物室(2)の下端に位置する桁B(7)は荷物室(2)との間に風を通す必要がないので、桁B(7)と荷物室(2)の間に隙間がなくても問題ない。車両用横転防止装置を設けた荷物室を一から設計する場合、車両用横転防止装置はフレームの役割を有することもできるので、荷物室の側面は幕を張るだけでよいと思われる。
【0016】
実施例3を
図5を基に説明する。
図5は風の流れを表した概略図である。荷物室(2)から向かって斜め下向きに配置された6枚の辺(4)によって、風(8)が進行方向を変え、荷物室(2)と片(4)の間の空間に流れ、荷物室(2)の上方へ吹き出していく。風(8)が斜め下向きに配置された片(4)に当たるとダウンフォースが発生し、また、荷物室(2)の上方へ吹き出す風(8)は荷物室(2)の上面を流れる風の威力を弱めるので、風が吹きつける反対側に発生する負圧を押さえることができ、車両を横転しにくくする。
【0017】
実施例4を
図6を基に説明する。片(4)の端に軸(11)が設けられ、軸(11)の端には歯車(9)が設けられている、ラック(10)は下に移動すると歯車(9)および軸(11)が回転し、片(4)が開き隙間が生じる。車両用横転防止装置は横風による横転を防止する反面、空気抵抗を生み出す。それを減じるために片(4)の角度を可変にできる仕組みを用い、横風が無い場合は片(4)を閉じておく手段もある。特許文献5と似ているいるように見えるが、本発明は特許文献5と異なり、片(4)を開いても、荷物室の側面があるので風が当たる面積は減少しない。
【0018】
実施例4を
図7、
図8、
図9を基に説明する。実施例4は幕(12)によって片(4)からなるスリット部分を覆い隠す仕組みである。
図7は幕(12)が巻き取られ、スリット部分が露出して、吹上口(27)が開いている状態である。
図8は幕(12)で覆われスリット部分が隠され、吹上口も閉じられた状態である。
図9は幕(12)で覆われた状態の概略を横面図にしたものである。巻軸(14)から繰り出された幕(12)はガイド(15)により方向を転じ正面と上方の穴を覆い隠している。幕(12)を引きあげるときはケーブルなどで上から引っ張る仕組みを設けてもよい。
【0019】
実施例5を
図10、
図11、
図12を基に説明する。
図10において、熱交換器(16)の冷媒排出口(17)から伸びるパイプ(19)は、左右に分岐し、それぞれのパイプ(19)は各右側面の片(22)と各左側面の片(23)に接着されており、また、それぞれのパイプ(19)は前方から後方へ上下を繰り返して伸ばされている。そして後方に達したパイプ(19)は冷媒吸入口(18)へ戻る。また、冷媒排出口(17)付近には弁A(20)と弁B(21)があり、冷媒の流れる経路を切り替えることができる。これにより、直射日光が当たり冷却効率が悪い側には冷媒を流さないことも出来る。また、両方同時に使用することも可能である。またパイプ(19)を片を固定するための支柱として用いたり、車両や荷物室のフレームとして用いてもよい。
【0020】
図11は
図8に吸気口(25)を設けたものである。バイクや航空機のエンジンにカウリングがあるように空冷の放熱板は覆いをした方が冷却効率がよい。そこで、幕(12)をカウリングとして用い、前方に吸気口(25)を設ける。吸気口(25)は網でおおわれている。
【0021】
図12は上面図である。荷物室(2)の両側に車両用横転防止装置兼冷却部が設けられている。左右の車両用横転防止装置兼冷却部の上面には吹上口がそれぞれ4つ設けられ、前方には吸気口(25)が設けられ、後方には排気口(26)が設けられている。またキャビン(3)は吸気口(25)の吸気の妨げにならないような形状が望ましい。車両の冷却装置として巨大すぎる仕組みかもしれないが、冷凍車などには極めて有用と思われる。