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  • 特開-小口径管縦割り装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033657
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】小口径管縦割り装置
(51)【国際特許分類】
   B23D 21/02 20060101AFI20240306BHJP
   B23D 33/02 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
B23D21/02 B
B23D33/02 A
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137372
(22)【出願日】2022-08-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】516291664
【氏名又は名称】若狭原子力技術シニアコンサルティング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】肥田 善雄
(72)【発明者】
【氏名】大野 高治
【テーマコード(参考)】
3C051
【Fターム(参考)】
3C051AA05
3C051BB03
(57)【要約】
【課題】内面が放射性物質で汚染されている可能性のある小口径管の汚染測定や除染を効率的に行い、放射性廃棄物を少なくするため、切断面にかえり(バリ)が無い状態で、効率的に長尺の小口径管を軸方向に縦割り切断する。
【解決手段】小口径の配管や熱交換器の伝熱管(以下小口径管等)を軸方向に連続して縦割り切断する装置であって、内装ローラー保持器に保持された相互に接する1対の内装ローラーと、それの外側に接して1対の駆動回転ナイフ刃が180度対向して配置され、小口径管等を内装ローラーに被せるように挿入すると、小口径管等は駆動回転ナイフ刃の回転により送りこまれると同時に、駆動回転ナイフ刃が小口径管等に食い込み、連続して縦割り切断する。駆動回転ナイフ刃の押し付け力は内装ローラーで支えられるため小口径管等の変形は無く、内装ローラーが回転するため小口径管等はスムーズに送られる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置フレームに1本の支持腕で片持ち状に固定された棒状の内装ローラー保持器に、保持器の軸線と垂直な同一平面上で軸線が平行で且つ相互に接触しながら回転できるように保持された1対の内装ローラーと、その1対の内装ローラーの軸線と同一平面上で平行な軸線を持ち、外側から内装ローラーに接するように180度対向して配置された1対の動力によって駆動される駆動回転ナイフ刃を有する装置であって、小口径管を内装ローラーに被せるように挿入すると、駆動回転ナイフ刃の駆動力によって小口径管を内装ローラー保持器の軸線に沿って支持腕の方向に送り込むとともに、駆動回転ナイフ刃が小口径管に食い込むことによって縦割り切断する構造を特徴する小口径管縦割り装置
【請求項2】
駆動回転ナイフ刃と一体で回転し、駆動回転ナイフ刃の小口径管への食い込み量を制限するとともに、外周部が小口径管に接して小口径管を送る駆動力を増加させる構造の駆動スリーブを装着した、請求項1の小口径管縦割り装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
原子力発電所の廃炉作業では大量の廃棄配管や熱交換器が発生する。これらのうち小口径の配管や熱交換器の伝熱管(以下小口径管等と記す)においては内面に付着した放射性物質による汚染状況の測定や放射性物質の除染が困難なため、放射性廃棄物として処分せざるを得ないことが想定される。本発明はこれら小口径管等の内面の放射性物質による汚染状況の測定と除染を効率的に行うために、小口径管等を軸方向に縦割り切断する小口径管縦割り装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、小口径配管を縦割り切断する装置として、バンドソーを用いたものや円形チップソーを用いたものが知られているが、いずれも切り粉や粉じんが発生し、放射性物質に汚染されたものに対しては粉じん対策が必要になり、処理速度も遅い。また、楔形のナイフ刃を用いたものも知られているが、耐久性に課題がある。本発明は切り粉も出ず、処理速度が速く、耐久性もある円形ナイフ刃を用いた小口径管縦割り装置に関するものである。
【0003】
従来、円形ナイフ刃を用いて2重管や3重管の外側管を軸方向に縦割りする装置が知られている。(例えば、特許文献1参照。)ただし、この装置は外側から円形ナイフ刃を配管に押し付けた状態で配管を軸方向に移動させることで円形ナイフ刃を配管に食い込ませ、これを繰り返して縦割り切断する構造で、これを中空の配管やチューブに適用すると円形ナイフ刃の押し付け力で配管が変形し、切断できない可能性がある。
【0004】
また、配管を固定し、対向する1対の円形ナイフ刃とそれに挟まれた中子から構成される切断部を配管に押し込むことで配管の変形を防ぎつつ配管外側に位置する円形ナイフ刃で配管を縦割り切断する装置が知られている。(例えば、特許文献2参照。)この装置は中子が配管と接しながら移動するため押込み抵抗が大きく、小口径管等への適用は困難である。
【0005】
また、あらかじめ配管内部に挿入された軸棒と共に配管を対向して設置される1対の回転刃に送り込み、軸棒によって配管の変形を阻止しつつ縦割り切断する方法が知られている。(例えば、特許文献3参照。)この方法は、1本ごとに軸棒を配管に挿入する必要があり、長尺の配管には適用できない。
【0006】
また、配管を順次狭隘となった対抗するローラー間に押し込み、配管を偏平に変形させその頂点の曲率半径の小さくなった部分に円形ナイフ刃を押し付け、円形ナイフ刃の押し付け力による配管の変形を最小限にして縦割り切断する方法が知られている。(例えば、特許文献4参照。)この装置は押し込み力が強大な為、座屈の可能性がある小口径管等には適用が困難である。
【0007】
また、薄肉の小口径管材に180度対向した位置に切込み傷をつけ、その傷が頂点になるように対向するモーター駆動のローラーで偏平に押し潰し、その頂点で円形ナイフ刃で連続的に縦割り切断する装置が知られている。(例えば、特許文献5参照。)この装置では縦割り切断面にかえり(バリ)が発生し、その状況によっては放射性物質による汚染の測定や除染がし難くなる可能性がある。
【0008】
従来、小口径配管を縦割り切断する装置として、多段回転刃による管材縦割り切断装置が知られている。(例えば、特許文献6参照。)これは油圧シリンダを用いて管材を切断部へ押し出し、管の内側に挿入される回転刃と外側の補助ローラーによって管を縦割りに切断する装置である。この装置では管の内側に回転刃ユニットが挿入されるため、構造が複雑になり且つ回転刃に油圧シリンダによる押し出し力がかかるためその強度に課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭62-282812
【特許文献2】特許6359597
【特許文献3】特許6990630
【特許文献4】特許6471289
【特許文献5】特許6446701
【特許文献6】実開平4-92718
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
円形ナイフ刃を使用した配管の縦割り装置においては、円形ナイフ刃の押し付け力による配管の変形をいかに抑制するかが課題となってきた。従来の小口径配管の縦割り装置は配管内部に変形抑制用の中子や軸棒を挿入したもの、変形を抑制するために配管を押し潰して曲率半径の小さくなった頂点部分で縦割り切断するものがあるが、小口径管等に対しては座屈の課題や作業性の課題や切断面のかえり(バリ)の課題があった。
【0011】
小口径管等の縦割り装置には、放射性物質による汚染の測定や除染の支障になるような切断面のかえり(バリ)が無いこと、小口径薄肉の小口径管等を扱えること、長尺の小口径管等も扱えること、切り粉や粉じんが発生しないこと、短時間で効率的に縦割り切断できることが必要である。
【0012】
本発明は、上記課題に鑑みて、長尺の小口径管等を縦割り切断面に放射性物質による汚染の測定や除染の支障となるかえり(バリ)のない状態で縦割り切断する、小口径管縦割り装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、縦割り切断に小口径管等の外側から180度対向する1対の回転ナイフ刃を使用し、回転ナイフ刃の押し付け力による小口径管等の変形を防止するため、小口径管等の内側に1対の反力受けローラーを挿入する構造とすることで、長尺の小口径管等を短時間に効率よく連続的に縦割り切断するために発明されたものである。
【0014】
内装ローラー保持器に、保持器の軸線と垂直な平面上で軸線が平行で相互に接触しながら回転できるように保持された1対の内装ローラーと、その1対の内装ローラーの軸線と同一平面上で平行な軸線を持ち、外側から内装ローラーに接するように180度対向して配置された1対の駆動回転ナイフ刃を有する装置であって、小口径管等を内装ローラーに被せるように挿入することによって、駆動回転ナイフ刃の駆動力で小口径管等を内装ローラー保持器の軸線に沿って送りつつ縦割り切断する構造を持つ。
【発明の効果】
【0015】
本発明を使用することにより、通常では内面の放射性物質による汚染状況の測定や放射性物質の除染が困難な小口径管等を、放射性物質で汚染された切り粉を発生させずに長尺の小口径管等を連続的に高速で縦割り切断でき、効率的な測定、除染を行うことにより、放射性廃棄物の大幅な削減ができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】小口径管縦割り装置の原理図である。
図2】小口径管縦割り装置の切断部の概念図である。
図3】小口径管縦割り装置の一例を示す正面図である。
図4】手回し式小口径管縦割り装置の一例を示す正面図である。
図5】手回し式小口径管縦割り装置の一例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下本発明を実施するための形態を説明する。
【0018】
図1は本発明を適用した小口径管縦割り装置の一例の縦割り切断原理を説明するための原理図である。また、図2は小口径管縦割り装置の切断部の概念図である。
【0019】
内装ローラー支持腕に片持ちで支持された内装ローラー保持器に保持された相互に接する1対の内装ローラーと、それの外側に接して1対の駆動回転ナイフ刃が配置され、小口径管等を内装ローラー支持腕の反対方向から内装ローラーに被せるように挿入すると、小口径管等は駆動回転ナイフ刃の回転により内装ローラー支持腕の方向に送りこまれると同時に、駆動回転ナイフ刃が小口径管等に食い込み、連続して縦割り切断する。小口径管等が縦割り切断されることにより、内装ローラー支持腕に衝突することは無い。
【0020】
駆動回転ナイフ刃の小口径管等の管壁に対する押し付け力は管壁を通して内装ローラーに伝達される。同様に反対側の駆動回転ナイフ刃からの押し付け力も内装ローラーに伝達され、180度対向した押し付け力がお互いに接している1対の内装ローラーを圧縮することになる。内装ローラーは金属製で圧縮変形は微小であることから、小口径管等の管壁は駆動回転ナイフ刃の押し付け力によって変形することなく縦割り切断されることになる。
【0021】
1対の内装ローラーは相互に接しながら回転できるように内装ローラー保持器に保持されており、駆動回転ナイフ刃の回転力により小口径管等が内装ローラー支持腕の方向に送られてもその管壁の内側に接触しながら回転することで小口径管等の送りに対する抵抗力は微小である。また同様に内装ローラー保持器及び内装ローラー支持腕に加わる力も小さい。
【0022】
駆動回転ナイフ刃に一体化した駆動スリーブを取り付けることもできる。これは厚肉の小口径管等において、駆動回転ナイフ刃を多段に配置して順次食い込み量を増やして最終的に縦割り切断する場合、180度対向した各々の駆動回転ナイフ刃の食い込み量を同一にするために有効である。更にこの駆動スリーブの円周面と小口径管等の外面の摩擦力が小口径管等を送る駆動力になる。
【実施例0023】
図3に本発明の実施例の正面図を示す。180度対向した駆動回転ナイフ刃1a、1bがフレーム8に固定されている。これらは駆動モーター6a、6bにより駆動される。この駆動回転ナイフ刃に接して内装ローラー3a、3bが内装ローラー保持器4に保持される。内装ローラーは1対でも良いし、複数対でも良い。この内装ローラー保持器は薄い板状の内装ローラー支持腕5を介してフレーム8に固定される。内装ローラー保持器の断面は縦割りされる小口径管等の内径より小さくする必要がある。小口径管等の中心線が180度対向した駆動回転ナイフ刃の中心に来るようガイドローラー7a、7bを設けても良い。
【0024】
また、図3に示す小口径管縦割り装置において、厚肉の小口径管等を縦割りするため駆動回転ナイフ刃及び内装ローラーを多段に装備しても良い。小口径管等の入り口側から順次食い込み量が増すように駆動回転ナイフ刃と内装ローラーの間隙を減少させ、最終段では間隙を0とすることで、厚肉の小口径管等の縦割り切断ができる。
【0025】
図4図5は手回し式小口径管縦割り装置の一例を示す正面図と側面図である。駆動回転ナイフ刃1aに手動ハンドル9が取り付けられており、ハンドルを回すことにより伝達歯車10a、10bを介して駆動回転ナイフ刃1a、1bが回転する。内装ローラーを1対あるいは2対とすることで直線状の小口径管等のみではなく、湾曲した小口径管等や熱交換器のUチューブの縦割りにも対応できる。
【符号の説明】
【0026】
P 小口径管
1a 駆動回転ナイフ刃
1b 駆動回転ナイフ刃
2a 駆動スリーブ
2b 駆動スリーブ
3a 内装ローラー
3b 内装ローラー
4 内装ローラー保持器
5 内装ローラー支持腕
6a 駆動モーター
6b 駆動モーター
7a ガイドローラー
7b ガイドローラー
8 フレーム
9 手動ハンドル
10a 伝達歯車
10b 伝達歯車
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2022-12-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
装置フレームに1本の支持腕で片持ち状に固定された棒状の内装ローラー保持器に、その内装ローラー保持器の軸線と垂直な同一平面上で軸線が平行で且つ相互に接触しながら回転できるように保持された1対の内装ローラーと、その1対の内装ローラーの軸線と同一平面上で平行な軸線を持ち、外側から内装ローラーに接するように180度対向して配置された1対の駆動回転ナイフ刃を有する装置であって、小口径管を内装ローラーに被せるように挿入すると、駆動回転ナイフ刃の駆動力によって小口径管を内装ローラー保持器の軸線に沿って支持腕の方向に送り込むとともに、駆動回転ナイフ刃が小口径管に食い込むことによって縦割り切断する構造を特徴する小口径管縦割り装置