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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033671
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】基板処理方法および基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20240306BHJP
【FI】
H01L21/304 651M
H01L21/304 648G
H01L21/304 651B
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137401
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 悠太
(72)【発明者】
【氏名】宮本 泰治
(72)【発明者】
【氏名】溝端 一国雄
(72)【発明者】
【氏名】内田 翔太
(72)【発明者】
【氏名】尾辻 正幸
【テーマコード(参考)】
5F157
【Fターム(参考)】
5F157AA09
5F157AB02
5F157AB16
5F157AB33
5F157AB45
5F157AB49
5F157AB51
5F157AB64
5F157AB90
5F157AC03
5F157AC15
5F157CB14
5F157CB24
5F157CE07
5F157CE28
5F157CF34
5F157CF40
5F157DA21
5F157DB32
(57)【要約】
【課題】パターン倒壊を確実に抑制することができる基板処理方法および基板処理装置を提供する。
【解決手段】洗浄処理後の基板Wに処理液ノズル30から一定量のIPAを供給する。予備乾燥によってIPAの液面レベルが徐々に低下し、IPAの液面が基板Wに形成されたパターンのピラーの上端と一致したときにフラッシュランプFLから基板Wの表面にフラッシュ光を照射して残留するIPAを瞬間的に蒸発させる。照射時間が極めて短く強度の強いフラッシュ光を照射することによって、パターンに毛管力が作用し始めてからパターンが倒壊するまでに要する倒壊時間よりもパターンに毛管力が作用し始めてから処理液を基板Wの表面から除去するまでに要する乾燥時間の方が短時間となる。アスペクト比が大きなパターンであってもパターン倒壊を確実に抑制することができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターンが形成された基板を乾燥させる基板処理方法であって、
前記基板の表面に処理液を供給する供給工程と、
前記基板の表面に光を照射して当該表面を加熱することによって前記処理液を蒸発させる光照射工程と、
を備え、
前記光照射工程では、前記パターンに毛管力が作用し始めてから前記パターンが倒壊するまでに要する倒壊時間よりも前記パターンに毛管力が作用し始めてから前記処理液を前記基板の表面から除去するまでに要する乾燥時間の方が短時間であることを特徴とする基板処理方法。
【請求項2】
請求項1記載の基板処理方法において、
前記光照射工程では、前記基板の表面にフラッシュランプからフラッシュ光を照射することを特徴とする基板処理方法。
【請求項3】
請求項2記載の基板処理方法において、
前記光照射工程では、前記パターンにおける隣り合うピラーの間のピラー間隔に応じて照射するフラッシュ光のエネルギーを調整することを特徴とする基板処理方法。
【請求項4】
請求項3記載の基板処理方法において、
前記光照射工程では、前記ピラー間隔が狭くなるほど照射するフラッシュ光のエネルギーを大きくすることを特徴とする基板処理方法。
【請求項5】
請求項2記載の基板処理方法において、
前記光照射工程では、波長400nm以下の光をカットしたフラッシュ光を照射することを特徴とする基板処理方法。
【請求項6】
請求項1記載の基板処理方法において、
前記光照射工程では、前記基板の表面にレーザー光を照射することを特徴とする基板処理方法。
【請求項7】
請求項1記載の基板処理方法において、
前記処理液は、イソプロピルアルコールであることを特徴とする基板処理方法。
【請求項8】
パターンが形成された基板を乾燥させる基板処理装置であって、
前記基板を保持する基板保持部と、
前記基板の表面に処理液を供給する処理液供給部と、
前記基板の表面に光を照射して当該表面を加熱することによって前記処理液を蒸発させる光照射部と、
を備え、
前記パターンに毛管力が作用し始めてから前記パターンが倒壊するまでに要する倒壊時間よりも前記パターンに毛管力が作用し始めてから前記処理液を前記基板の表面から除去するまでに要する乾燥時間の方が短時間であることを特徴とする基板処理装置。
【請求項9】
請求項8記載の基板処理装置において、
前記光照射部は、前記基板の表面にフラッシュ光を照射するフラッシュランプを有することを特徴とする基板処理装置。
【請求項10】
請求項9記載の基板処理装置において、
前記パターンにおける隣り合うピラーの間のピラー間隔に応じて前記フラッシュランプから照射するフラッシュ光のエネルギーを調整することを特徴とする基板処理装置。
【請求項11】
請求項10記載の基板処理装置において、
前記ピラー間隔が狭くなるほど前記フラッシュランプから照射するフラッシュ光のエネルギーを大きくすることを特徴とする基板処理装置。
【請求項12】
請求項9記載の基板処理装置において、
前記光照射部と前記基板保持部との間に設けられ、前記フラッシュランプが出射するフラッシュ光から波長400nm以下の光をカットするフィルターをさらに備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項13】
請求項8記載の基板処理装置において、
前記光照射部は、前記基板の表面にレーザー光を照射することを特徴とする基板処理装置。
【請求項14】
請求項8記載の基板処理装置において、
前記処理液は、イソプロピルアルコールであることを特徴とする基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細なパターンが形成された基板を乾燥させる基板処理方法および基板処理装置に関する。処理対象となる基板には、例えば、半導体基板、液晶表示装置用基板、flat panel display(FPD)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、または、太陽電池用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体デバイスの製造工程では、半導体基板(以下、単に「基板」と称する)に対して洗浄、成膜、熱処理等の種々の処理プロセスが行われている。そのような処理プロセスの一つに、ウェット洗浄等が行われた濡れた基板を乾燥させる乾燥プロセスがある。
【0003】
また、近年の微細化の進展にともなって、基板にはアスペクト比の大きなナノ構造物パターンが形成されることもある。乾燥プロセスにおいては、このようなアスペクト比の大きなナノ構造物が倒壊するという課題がある。乾燥プロセス工程にてナノ構造物が倒壊する主たる原因は、基板に付着した液体が乾燥する過程でナノ構造物に作用する毛管力(capillary force)であることが判明している。この課題に対して最も一般的に採られている対策は乾燥時の処理液として表面張力の小さな液体を用いることであり、典型的にはIPA(イソプロピルアルコール)が使用されている。毛管力は液体の表面張力に依存するため、IPAのような表面張力の小さな液体を乾燥時の処理液として用いることによって、ナノ構造物パターンに作用する毛管力を小さくしてパターン倒壊を抑制することが可能となる。
【0004】
一方、特許文献1には、洗浄処理後の基板に対してフラッシュランプからフラッシュ光を照射することによって、水分を瞬間的に蒸発させてパターン倒壊を防止する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-19158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、IPAのような表面張力の小さな液体を用いたとしても、表面張力が0にはならないため、パターンに作用する毛管力を低減するには限界がある。また、フラッシュ光照射によって乾燥処理を行った場合にも、特にアスペクト比が15を超えるような次世代型のナノ構造物パターンでは十分にパターン倒壊を防ぐことは困難である。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、パターン倒壊を確実に抑制することができる基板処理方法および基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、パターンが形成された基板を乾燥させる基板処理方法において、前記基板の表面に処理液を供給する供給工程と、前記基板の表面に光を照射して当該表面を加熱することによって前記処理液を蒸発させる光照射工程と、を備え、前記光照射工程では、前記パターンに毛管力が作用し始めてから前記パターンが倒壊するまでに要する倒壊時間よりも前記パターンに毛管力が作用し始めてから前記処理液を前記基板の表面から除去するまでに要する乾燥時間の方が短時間であることを特徴とする。
【0009】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明に係る基板処理方法において、前記光照射工程では、前記基板の表面にフラッシュランプからフラッシュ光を照射することを特徴とする。
【0010】
また、請求項3の発明は、請求項2の発明に係る基板処理方法において、前記光照射工程では、前記パターンにおける隣り合うピラーの間のピラー間隔に応じて照射するフラッシュ光のエネルギーを調整することを特徴とする。
【0011】
また、請求項4の発明は、請求項3の発明に係る基板処理方法において、前記光照射工程では、前記ピラー間隔が狭くなるほど照射するフラッシュ光のエネルギーを大きくすることを特徴とする。
【0012】
また、請求項5の発明は、請求項2から請求項4のいずれかの発明に係る基板処理方法において、前記光照射工程では、波長400nm以下の光をカットしたフラッシュ光を照射することを特徴とする。
【0013】
また、請求項6の発明は、請求項1から請求項5のいずれかの発明に係る基板処理方法において、前記光照射工程では、前記基板の表面にレーザー光を照射することを特徴とする。
【0014】
また、請求項7の発明は、請求項1から請求項6のいずれかの発明に係る基板処理方法において、前記処理液は、イソプロピルアルコールであることを特徴とする。
【0015】
また、請求項8の発明は、パターンが形成された基板を乾燥させる基板処理装置において、前記基板を保持する基板保持部と、前記基板の表面に処理液を供給する処理液供給部と、前記基板の表面に光を照射して当該表面を加熱することによって前記処理液を蒸発させる光照射部と、を備え、前記パターンに毛管力が作用し始めてから前記パターンが倒壊するまでに要する倒壊時間よりも前記パターンに毛管力が作用し始めてから前記処理液を前記基板の表面から除去するまでに要する乾燥時間の方が短時間であることを特徴とする。
【0016】
また、請求項9の発明は、請求項8の発明に係る基板処理装置において、前記光照射部は、前記基板の表面にフラッシュ光を照射するフラッシュランプを有することを特徴とする。
【0017】
また、請求項10の発明は、請求項9の発明に係る基板処理装置において、前記パターンにおける隣り合うピラーの間のピラー間隔に応じて前記フラッシュランプから照射するフラッシュ光のエネルギーを調整することを特徴とする。
【0018】
また、請求項11の発明は、請求項10の発明に係る基板処理装置において、前記ピラー間隔が狭くなるほど前記フラッシュランプから照射するフラッシュ光のエネルギーを大きくすることを特徴とする。
【0019】
また、請求項12の発明は、請求項9から請求項11のいずれかの発明に係る基板処理装置において、前記光照射部と前記基板保持部との間に設けられ、前記フラッシュランプが出射するフラッシュ光から波長400nm以下の光をカットするフィルターをさらに備えることを特徴とする。
【0020】
また、請求項13の発明は、請求項8から請求項12のいずれかの発明に係る基板処理装置において、前記光照射部は、前記基板の表面にレーザー光を照射することを特徴とする。
【0021】
また、請求項14の発明は、請求項8から請求項13のいずれかの発明に係る基板処理装置において、前記処理液は、イソプロピルアルコールであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
請求項1から請求項7の発明によれば、パターンに毛管力が作用し始めてからパターンが倒壊するまでに要する倒壊時間よりもパターンに毛管力が作用し始めてから処理液を基板の表面から除去するまでに要する乾燥時間の方が短時間であるため、アスペクト比が大きなパターンであってもパターン倒壊を確実に抑制することができる。
【0023】
特に、請求項4の発明によれば、ピラー間隔が狭くなるほど照射するフラッシュ光のエネルギーを大きくするため、倒壊時間よりも乾燥時間の方を確実に短くすることができ、パターン倒壊をより確実に抑制することができる。
【0024】
特に、請求項5の発明によれば、波長400nm以下の光をカットしたフラッシュ光を照射するため、基板にダメージを与えるのを抑制することができる。
【0025】
請求項8から請求項14の発明によれば、パターンに毛管力が作用し始めてからパターンが倒壊するまでに要する倒壊時間よりもパターンに毛管力が作用し始めてから処理液を基板の表面から除去するまでに要する乾燥時間の方が短時間であるため、アスペクト比が大きなパターンであってもパターン倒壊を確実に抑制することができる。
【0026】
特に、請求項11の発明によれば、ピラー間隔が狭くなるほどフラッシュランプから照射するフラッシュ光のエネルギーを大きくするため、倒壊時間よりも乾燥時間の方を確実に短くすることができ、パターン倒壊をより確実に抑制することができる。
【0027】
特に、請求項12の発明によれば、光照射部と基板保持部との間に設けられ、フラッシュランプが出射するフラッシュ光から波長400nm以下の光をカットするフィルターをさらに備えるため、基板にダメージを与えるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明に係る基板処理装置を搭載した枚葉式洗浄装置の内部のレイアウトを説明するための図解的な平面図である。
図2】本発明に係る基板処理装置の要部構成を示す側面図である。
図3】処理ユニットにおける処理手順を示すフローチャートである。
図4】基板に形成されたパターンを示す図である。
図5】IPAが供給された直後の基板の状態を示す図である。
図6】IPAの液面がピラーの上端と一致したときの基板の状態を示す図である。
図7】IPAの液面レベルに差が生じた状態を示す図である。
図8】パターン倒壊の状態を示す図である。
図9】乾燥速度とパターン倒壊率との相関を示す図である。
図10】ピラー間隔と必要な充電電圧との相関関係を登録した変換テーブルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。以下において、相対的または絶対的な位置関係を示す表現(例えば、「一方向に」、「一方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」、「同軸」、など)は、特に断らない限り、その位置関係を厳密に表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる範囲で相対的に角度または距離に関して変位された状態も表すものとする。また、等しい状態であることを示す表現(例えば、「同一」、「等しい」、「均質」、など)は、特に断らない限り、定量的に厳密に等しい状態を表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる差が存在する状態も表すものとする。また、形状を示す表現(例えば、「円形状」、「四角形状」、「円筒形状」、など)は、特に断らない限り、幾何学的に厳密にその形状を表すのみならず、同程度の効果が得られる範囲の形状を表すものとし、例えば凹凸または面取りなどを有していてもよい。また、構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、「有する」、といった各表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的表現ではない。また、「A、BおよびCのうちの少なくとも一つ」という表現には、「Aのみ」、「Bのみ」、「Cのみ」、「A、BおよびCのうち任意の2つ」、「A、BおよびCの全て」が含まれる。
【0030】
図1は、本発明に係る基板処理装置を搭載した枚葉式洗浄装置100の内部のレイアウトを説明するための図解的な平面図である。枚葉式洗浄装置100は、基板Wを1枚ずつ順次に洗浄する装置である。処理対象となる基板Wはシリコンの円板形状の半導体基板である。なお、図1および以降の各図においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数を誇張または簡略化して描いている。
【0031】
枚葉式洗浄装置100は、基板Wの表面に薬液およびリンス液を吐出して表面洗浄処理を行った後、基板Wの乾燥処理を行う。上記の薬液としては、例えば、エッチング処理を行うための液、または、パーティクルを除去するための液などが含まれ、具体的には、SC-1液(水酸化アンモニウムと過酸化水素水と純水との混合溶液)、SC-2液(塩酸と過酸化水素水と純水との混合溶液)、バッファードフッ酸(BHF)、または、希フッ酸(DHF)などが用いられる。また、リンス液としては、典型的には純水が用いられる。以下の説明では、薬液、リンス液および有機溶剤などを総称して「処理液」とする。
【0032】
枚葉式洗浄装置100は、複数の処理ユニット1,101と、ロードポートLPと、インデクサロボット102と、主搬送ロボット103と、制御部90とを備える。
【0033】
ロードポートLPには、枚葉式洗浄装置100で処理される複数枚の基板Wを収容するキャリアCが載置される。未処理の基板Wを収容したキャリアCは無人搬送車(AGV、OHT)等によって搬送されてロードポートLPに載置される。また、処理済みの基板Wを収容したキャリアCも無人搬送車によってロードポートLPから持ち去られる。
【0034】
キャリアCは、典型的には、基板Wを密閉空間に収納するFOUP(front opening unified pod)である。キャリアCは、その内部に形設された複数の保持棚によって複数の基板Wを水平姿勢(基板Wの主面の法線が鉛直方向に沿う姿勢)で鉛直方向に一定間隔で積層配列した状態で保持する。キャリアCの最大収容枚数は、25枚または50枚である。なお、キャリアCの形態としては、FOUPの他に、SMIF(Standard Mechanical Inter Face)ポッドや収納した基板Wを外気に曝すOC(open cassette)であっても良い。
【0035】
インデクサロボット102は、スライド移動、旋回動作、および、基板Wを保持するハンドの進退移動を可能に構成されている。インデクサロボット102は、キャリアCと主搬送ロボット103との間で基板Wを搬送する。インデクサロボット102は、未処理の基板WをキャリアCから取り出して主搬送ロボット103に渡す。また、インデクサロボット102は、処理済みの基板Wを主搬送ロボット103から受け取ってキャリアCに収納する。
【0036】
主搬送ロボット103は、旋回動作、昇降動作、および、基板Wを保持するアームの進退移動を可能に構成されている。主搬送ロボット103は、インデクサロボット102から受けとった基板Wを処理ユニット1または処理ユニット101のいずれかに搬入する。また、主搬送ロボット103は、基板Wを処理ユニット1または処理ユニット101のいずれかから搬出した基板Wをインデクサロボット102に渡す。また、主搬送ロボット103は、処理ユニット1と処理ユニット101との間で基板Wを搬送することもある。例えば、主搬送ロボット103は、処理ユニット101から搬出した基板Wを処理ユニット1に搬入する。
【0037】
処理ユニット101は、1枚の基板Wに対して洗浄処理を行う。処理ユニット1は、1枚の基板Wに対して乾燥処理を行う。本実施形態の枚葉式洗浄装置100には、処理ユニット101または処理ユニット1が合計で12個搭載されている。具体的には、それぞれが3個の処理ユニット(処理ユニット101または処理ユニット1)を鉛直方向に積層してなるタワーが4つ主搬送ロボット103の周囲を取り囲むように配置されている。図1では、3段に重ねられた処理ユニットのうちの1段が概略的に示されており、1個の処理ユニット1と3個の処理ユニット101とが主搬送ロボット103の周囲を囲むように配置されている。なお、枚葉式洗浄装置100における処理ユニットの数量は、12個に限定されるものではなく、適宜変更されてもよい。
【0038】
次に、枚葉式洗浄装置100に搭載された処理ユニット1について説明する。本発明に係る基板処理装置である処理ユニット1は、洗浄処理後の基板Wの乾燥処理を行う。図2は、処理ユニット1の要部構成を示す側面図である。処理ユニット1は、主として、処理チャンバー10と、回転保持部20と、処理液ノズル30と、光照射部50と、制御部90とを備える。
【0039】
処理チャンバー10は中空の筐体である。処理チャンバー10の内側に、回転保持部20および処理液ノズル30等が設けられる。基板処理時には、処理チャンバー10は処理対象となる基板Wを収容する。
【0040】
処理チャンバー10には、図示省略の搬出入口が設けられている。その搬出入口はシャッターによって開閉される。搬出入口が開放されている状態にて、主搬送ロボット103による処理チャンバー10に対する基板Wの搬入および搬出が行われる。基板Wの処理中は搬出入口は閉鎖される。
【0041】
回転保持部20は、スピンチャック22およびスピンモータ25を備える。スピンチャック22は、基板Wを水平姿勢にて保持する基板保持部である。本実施形態におけるスピンチャック22は、真空吸着式のチャックである。スピンチャック22は、基板Wの下面の中央部を吸着保持する。なお、スピンチャック22は、挟持式のメカニカルチャックなどの他の形態のチャックであってもよい。
【0042】
スピンチャック22は、基板Wの直径よりも小さな径の円板形状を有する。基板Wの下面がスピンチャック22に吸着保持された状態では、基板Wの周縁部が、スピンチャック22の外周端よりも外側にはみ出ている。
【0043】
スピンチャック22は、スピン軸27を介してスピンモータ25と連結される。すなわち、スピンモータ25のスピン軸27の上端がスピンチャック22の下面中央部に接続される。スピンチャック22に基板Wが吸着保持されている状態にてスピンモータ25がスピン軸27を回転させると、鉛直方向に沿った回転軸A1まわりで水平面内にて基板Wおよびスピンチャック22が回転する。
【0044】
スピンチャック22の周囲を囲むようにカップ40が設けられる。カップ40は円筒形状を有しており、カップ40の上部は上に向かうほどスピンチャック22に近付くように傾斜している。ただし、カップ40の上端部分の内径は基板Wの直径よりも大きい。カップ40の上端はスピンチャック22に保持された基板Wの高さ位置よりも高い。従って、スピンモータ25によって回転される基板Wから遠心力によって飛散した液体はカップ40によって受け止められて回収される。カップ40によって回収された液体はカップ40の底部に設けられた排液管45から排出される。なお、カップ40は、回収口を目的別に複数設けた多段構造のものであっても良い。
【0045】
処理液ノズル30は、水平方向に延びる棒状のノズルアーム31の先端に取り付けられている。ノズルアーム31は、鉛直方向に延びるアーム支持軸32に支持されている。アーム支持軸32は、ノズル駆動部33に接続されている。ノズル駆動部33は、鉛直方向に沿った回転軸A2まわりでアーム支持軸32を回動させる。ノズル駆動部33がアーム支持軸32を回動させると、ノズルアーム31が旋回動作を行い、処理液ノズル30がカップ40よりも外方の待機位置とスピンチャック22に保持された基板Wの上方の処理位置との間で円弧軌道に沿って移動する。
【0046】
また、ノズル駆動部33は、アーム支持軸32およびノズルアーム31を昇降移動させる。これにより、処理液ノズル30は鉛直方向に沿って上下にも移動する。
【0047】
処理液ノズル30には、図示を省略する処理液供給源から処理液が送給される。処理液ノズル30は、送給された処理液を下方に向けて吐出する。処理液ノズル30が基板Wの上方の処理位置にて処理液を吐出することにより、基板Wの表面に処理液が供給される。本実施形態では、処理液ノズル30が処理液としてIPA(イソプロピルアルコール)を基板Wに供給する。
【0048】
光照射部50は、処理チャンバー10の上部に配置される。光照射部50は、複数本のキセノンフラッシュランプFLからなる光源と、その光源の上方を覆うように設けられたリフレクタ52と、を備えて構成される。なお、光照射部50は、処理チャンバー10の上方に処理チャンバー10とは別体のランプハウス内に設けられても良い。
【0049】
複数のフラッシュランプFLは、それぞれが長尺の円筒形状を有する棒状ランプであり、それぞれの長手方向が回転保持部20に保持される基板Wの主面に沿って(つまり水平方向に沿って)互いに平行となるように平面状に配列されている。よって、フラッシュランプFLの配列によって形成される平面も水平面である。
【0050】
キセノンフラッシュランプFLは、その内部にキセノンガスが封入されその両端部にコンデンサーに接続された陽極および陰極が配設された円筒形状のガラス管(放電管)と、該ガラス管の外周面上に付設されたトリガー電極とを備える。キセノンガスは電気的には絶縁体であることから、コンデンサーに電荷が蓄積されていたとしても通常の状態ではガラス管内に電気は流れない。しかしながら、トリガー電極に高電圧を印加して絶縁を破壊した場合には、コンデンサーに蓄えられた電気がガラス管内に瞬時に流れ、そのときのキセノンの原子あるいは分子の励起によって光が放出される。このようなキセノンフラッシュランプFLにおいては、予めコンデンサーに蓄えられていた静電エネルギーが0.1ミリセカンドないし100ミリセカンドという極めて短い光パルスに変換されることから、ハロゲンランプ等に比べて極めて強い光を照射し得るという特徴を有する。すなわち、フラッシュランプFLは、0.1ミリセカンドないし100ミリセカンドの照射時間にてフラッシュ光を照射する。
【0051】
また、リフレクタ52は、複数のフラッシュランプFLの上方にそれら全体を覆うように設けられている。リフレクタ52の基本的な機能は、複数のフラッシュランプFLから出射されたフラッシュ光を下方の側に反射するというものである。リフレクタ52はアルミニウム合金板にて形成されており、その表面(フラッシュランプFLに臨む側の面)はブラスト処理により粗面化加工が施されている。
【0052】
複数のフラッシュランプFLのそれぞれには電源ユニット60から電力供給がなされる。電源ユニット60は、コンデンサーやコイル等を備える。電源ユニット60は、予め設定された電圧をコンデンサーに印加して電荷を蓄積し、フラッシュ光照射時には当該コンデンサーに蓄積した電気をフラッシュランプFLに供給する。
【0053】
フラッシュランプFLから照射されるフラッシュ光のエネルギーは、電源ユニット60のコンデンサーに蓄えられたエネルギーによって規定される。静電容量Cのコンデンサーに充電電圧Vにて充電を行ったときに当該コンデンサーに蓄えられるエネルギーはCV/2となる。静電容量Cはコンデンサーに固有の定数であるため、コンデンサーに蓄えられるエネルギーは充電電圧Vによって調整することができる。なお、電源ユニット60にIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)を設け、そのIGBTによってフラッシュランプFLに流れる電流の波形を規定することにより、フラッシュランプFLの発光時間を調整するようにしても良い。
【0054】
光照射部50と回転保持部20との間には光学フィルター70が設けられる。光学フィルター70は、フラッシュランプFLが出射するフラッシュ光から波長400nm以下の紫外光をカットする。
【0055】
制御部90は、枚葉式洗浄装置100に設けられた種々の動作機構を制御する。制御部90は、処理ユニット1の動作も制御する。制御部90のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同様である。すなわち、制御部90は、各種演算処理を行う回路であるCPU、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAMおよび制御用ソフトウェアやデータなどを記憶しておく記憶部91(例えば、磁気ディスクまたはSSD)を備えている。制御部90は、回転保持部20のスピンモータ25やノズル駆動部33と電気的に接続されており、これらの動作を制御する。
【0056】
制御部90の記憶部91には変換テーブル93が格納されている。変換テーブル93には、基板Wに形成されたパターンにおけるピラー間隔とフラッシュランプFLに印加する充電電圧との相関関係が登録されている。制御部90は、変換テーブル93から求められた充電電圧Vにてコンデンサーを充電するように電源ユニット60を制御する。なお、変換テーブル93を用いた制御についてはさらに後述する。
【0057】
次に、枚葉式洗浄装置100に搭載された処理ユニット1の処理動作について説明する。図3は、処理ユニット1における処理手順を示すフローチャートである。本実施形態にて処理対象となる基板Wにはナノ構造物パターンが形成されている。
【0058】
図4は、基板Wに形成されたパターンを示す図である。基板Wの基体部81は、平坦なシリコンの円板形状の部材である。基板Wの基体部81の表面には細長い円柱形状のピラー85が多数立設されてナノ構造物パターンを構成している。本実施形態においては、例えば、円柱形状のピラー85の直径dは30nmであり、高さhは600nmである。すなわち、ナノ構造物パターンにおけるアスペクト比は20となる。また、例えば、隣り合うピラー85の間のピラー間隔pは60nmである。このような複数のピラー85が立設されてなるナノ構造物パターンが形成された基板Wが枚葉式洗浄装置100に搬入されて処理に供される。
【0059】
図3に戻り、処理ユニット1での処理に先立って処理ユニット101による基板Wの洗浄処理が行われる(ステップS1)。まず、インデクサロボット102がロードポートLPのキャリアCから1枚の未処理の基板Wを取り出して主搬送ロボット103に渡し、主搬送ロボット103が受け取った基板Wを処理ユニット101に搬入する。処理ユニット101では基板Wの表面洗浄処理が行われる。具体的には、回転する基板Wの表面に薬液を供給してパーティクルを除去する洗浄処理を行った後、その基板Wの表面に純水を供給してリンス処理を行う。処理液を用いた洗浄処理が終了した基板Wが主搬送ロボット103によって処理ユニット101から搬出されて処理ユニット1に搬入される。洗浄処理が終了した直後の基板Wには処理液が付着しているため、処理ユニット1にて基板Wの乾燥処理を行うのである。なお、処理ユニット101では洗浄処理後の基板Wを高速回転させて振り切り乾燥を行うようにしても良いが、この場合も完全には水分を基板Wから取り除くことはできないため処理ユニット1を用いた乾燥処理が必要となる。
【0060】
主搬送ロボット103は、洗浄処理後の基板Wを処理チャンバー10内に搬入してスピンチャック22に保持させる(ステップS2)。スピンチャック22は、搬入された基板Wの下面中央部を吸着して基板Wを水平姿勢で保持する。
【0061】
基板Wがスピンチャック22に保持された後、処理液ノズル30がカップ40よりも外方の待機位置から基板Wの上方の処理位置にまで移動する。また、スピンモータ25による基板Wの回転を開始する。続いて、処理液ノズル30が基板Wの表面に処理液を供給する(ステップS3)。本実施形態においては、処理液ノズル30は、処理液としてIPA(イソプロピルアルコール)を供給する。処理液ノズル30は、1cmあたり20μlのIPAを基板Wの表面に供給する。IPAの表面張力は水の表面張力よりも小さく、IPAが供給されることによって基板Wに付着していた水分はIPAに置換される。所定量のIPAを供給した後、処理液ノズル30は処理位置から再び待機位置に戻る。
【0062】
図5は、IPAが供給された直後の基板Wの状態を示す図である。IPAが供給された直後の時点では、IPAの液面がピラー85の上端よりも高い。すなわち、複数のピラー85の全体がIPAの液中に没している。このように、複数のピラー85の全体がIPAの液中に存在している状態では、隣り合うピラー85間にメニスカスが形成されないため、毛管力も発生していない。従って、複数のピラー85に作用する応力はなく、ピラー85が変形して倒壊することもない。なお、処理ユニット101での洗浄処理中もピラー85の全体が処理液中に存在していることとなるためパターン倒壊のおそれはない。
【0063】
IPAが供給された基板Wが回転することによって、基板Wの表面全体にIPAが薄く拡がって塗布されることとなる。また、基板Wの回転にともなう遠心力によって、ピラー85の上端よりも上方のIPAの一部が基板Wから飛散する。これにより、基板Wの予備乾燥が進行することとなる(ステップS4)。予備乾燥とは、ピラー85の上端よりも上方のIPAの一部を除去することである。本実施形態では、基板Wの回転にともなうIPAの飛散とIPAの蒸発とによって予備乾燥が行われる。予備乾燥が行われる期間は、遅くともIPAの液面がピラー85の上端以上となっている間である。なお、予備加熱としては、例えば温風を基板Wに吹き付けることによってIPAの蒸発を促進するようにしても良い。或いは、自然乾燥のみによってIPAを蒸発させる予備乾燥としても良い。
【0064】
予備乾燥によってIPAの液面は徐々に下がり、やがてIPAの液面がピラー85の上端と一致するようになる。図6は、IPAの液面がピラー85の上端と一致したときの基板Wの状態を示す図である。ピラー85の上端と一致する高さ位置にまでIPAの液面レベルが低下した時点で隣り合うピラー85間にメニスカスが形成される。メニスカスが形成されると、そのメニスカスを挟む両側のピラー85に毛管力が作用する。
【0065】
本実施形態においては、IPAの液面がピラー85の上端と一致した時点でフラッシュランプFLが基板Wの表面にフラッシュ光を照射する(ステップS5)。照射時間が0.1ミリセカンド以上100ミリセンド以下(本実施形態では、5ミリセカンド)と極めて短く、かつ、強度の強いフラッシュ光を基板Wに照射することによって、基板Wの表面が瞬間的に強く加熱されて当該表面に残留しているIPAに非常に大きな熱エネルギーが与えられる。基板Wの表面に残留しているIPAを蒸発させるのに必要な蒸発熱量以上の熱エネルギーを瞬間的に与えることによって、IPAが一瞬で蒸発して基板Wが乾燥される。すなわち、毛管力によってパターンが倒壊するよりも早くIPAを蒸発させることにより、パターンを倒壊させることなく基板Wを乾燥させることができるのである。なお、フラッシュ光の照射を行うときには、処理液ノズル30はカップ40よりも外方の待機位置に位置するとともに、基板Wの回転は停止している。
【0066】
基板Wの乾燥処理が終了した後、主搬送ロボット103は、処理チャンバー10から基板Wを搬出する(ステップS6)。その後、基板Wは主搬送ロボット103からインデクサロボット102に渡されてキャリアCに戻される。
【0067】
本実施形態においては、IPAの液面がピラー85の上端と一致してメニスカスによる毛管力がパターンに作用し始めた時点でフラッシュ光を照射して残留するIPAを瞬間的に蒸発させている。フラッシュ光を照射しなかった場合、IPAの液面がピラー85の上端と一致した時点以降においては、毛管力に起因した相互作用による液面の移動が支配的となる。そうすると、図7に示すように、ピラー85間によって液面レベルに差が生じることとなる。IPAの液面がピラー85の上端と一致した時点以降においても液面レベルが均一であるのが理想的なのであるが、そのようにはならず、必ず液面レベルに差が生じる。
【0068】
液面レベルが均一であれば、各ピラー85に周囲から作用する毛管力も均一となり、ピラー85が変形することはない。しかし、図7に示すような液面レベルの差が生じると、各ピラー85に作用する毛管力のバランスが崩れ、ピラー85が変形することとなる。そして、ピラー85の変形の程度が大きくなると、図8に示すように、ピラー85が隣のピラー85に接触してパターン倒壊に至るのである。
【0069】
そこで本実施形態においては、毛管力に起因した相互作用によって液面レベルに差が生じる速度よりも早い速度でIPAが蒸発するようにフラッシュ光照射を行っている。換言すれば、照射時間が極めて短く強度の強いフラッシュ光を照射することによって、パターンに毛管力が作用し始めてからパターンが倒壊するまでに要する倒壊時間よりもパターンに毛管力が作用し始めてから処理液を基板Wの表面から除去するまでに要する乾燥時間の方が短時間となるようにしているのである。なお、パターンが倒壊するときとは、ピラー85が変形して隣のピラー85に接触するときである。
【0070】
このように、毛管力に起因した相互作用によって液面レベルに差が生じる速度よりも早い速度で基板Wを乾燥させることにより、アスペクト比が大きな次世代型のナノ構造物パターンであってもパターン倒壊を確実に抑制することができる。
【0071】
図9は、乾燥速度とパターン倒壊率との相関を示す図である。同図中、バツ印で示すのはIPAのみの自然乾燥であり、乾燥速度は最も遅く、パターン倒壊率も高い。四角印で示すのは、IPAに常温の窒素ガスを吹き付けた場合であり、乾燥速度は自然乾燥よりは少し速くなるものの、倒壊率は同程度に高い。一方、三角印で示すのは、IPAに対して通常の加熱を行った場合であり、乾燥速度は相当に速くなるものの、倒壊率は依然として高い。これに対して、丸印は、本実施形態のようにIPAに対してフラッシュ光照射を行った場合であり、乾燥速度は極めて高く、パターン倒壊率は低くなる。
【0072】
また、本実施形態においては、パターンにおける隣り合うピラー85の間のピラー間隔pに応じてフラッシュ光のエネルギーを調整している。上述のように、本実施形態では、パターンに毛管力が作用し始めてからパターンが倒壊するまでに要する倒壊時間よりもパターンに毛管力が作用し始めてから処理液を基板Wの表面から除去するまでに要する乾燥時間の方が短時間となるようにフラッシュ光を照射している。パターンが倒壊するまでに要する倒壊時間は、ピラー85が変形を開始してから隣のピラー85に接触するまでに要する時間であり、ピラー間隔pが小さくなるほど短くなる。従って、ピラー間隔pが狭くなるほど、乾燥時間もより短くする必要があり、照射するフラッシュ光のエネルギーを大きくしなければならない。具体的には、ピラー間隔pが狭くなるほど、電源ユニット60のコンデンサーに印加する充電電圧Vを大きくする。
【0073】
図10は、ピラー間隔pと必要な充電電圧Vとの相関関係を登録した変換テーブル93を示す図である。ピラー間隔pと必要な充電電圧Vとの相関関係については、予め実験またはシミュレーション等によって求め、それに基づいて変換テーブル93を作成しておく。作成した変換テーブル93は制御部90の記憶部91に格納する(図2参照)。図10に示すように、変換テーブル93には、ピラー間隔pが狭くなるほど必要な充電電圧Vが大きくなる相関関係が登録されている。
【0074】
制御部90は、基板Wに形成されているパターンにおけるピラー間隔pに対応する充電電圧Vを変換テーブル93から読み出し、その充電電圧Vにてコンデンサーを充電するように電源ユニット60を制御する。このようにすれば、基板Wに形成されているパターンにおけるピラー間隔pに応じた適正なエネルギーのフラッシュ光が照射されることとなり、上述の倒壊時間よりも乾燥時間の方を短くすることができ、パターン倒壊を確実に抑制することができる。なお、パターンにおけるピラー間隔pは、例えば処理レシピに記述しておけば良い。
【0075】
また、本実施形態においては、フラッシュ光から波長400nm以下の光をカットする光学フィルター70を設けている。フラッシュランプFLから出射された光が光学フィルター70を透過するときに、フラッシュ光から波長400nm以下の光が取り除かれる。従って、基板Wの表面には波長400nm以下の紫外光が除去されたフラッシュ光が照射されることとなる。波長400nm以下の紫外光は化学的な作用が顕著であり、そのような波長400nm以下の光をフラッシュ光からカットすることにより、極めて強い強度のフラッシュ光がパターンにダメージを与えるのを抑制することが可能となる。
【0076】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この発明はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態においては、処理液としてIPAを基板Wに供給していたが、これに限定されるものではなく、他の種類の処理液を供給するようにしても良い。例えば、処理液ノズル30から処理液として純水を基板Wに供給し、その後フラッシュ光を照射して純水を蒸発させるようにしても良い。もっとも、純水に比較してIPAは蒸発熱が低く表面張力も小さいため、上記実施形態のようにIPAを用いる方がより小さいエネルギーのフラッシュ光で基板Wを乾燥させることができ、かつ、パターンも倒壊しにくい。
【0077】
また、上記実施形態においては、IPAが塗布された基板WにフラッシュランプFLからフラッシュ光を照射して倒壊時間よりも短い乾燥時間を実現していたが、これに代えて、基板Wの表面にレーザー光を照射するようにしても良い。レーザー光も照射時間が極めて短く、かつ、強度が強い。よって、IPAが塗布された基板Wにレーザー光を照射するようにしても、倒壊時間よりも乾燥時間の方を短くすることができ、パターン倒壊を抑制することができる。
【0078】
また、上記実施形態においては、IPAの液面がピラー85の上端と一致した時点でフラッシュ光を照射していたが、IPAの液面がピラー85の上端と一致するよりも前に基板Wの表面にフラッシュ光を照射するようにしても良い。すなわち、IPAの液面がピラー85の上端よりも高い状態にて基板Wにフラッシュ光を照射するようにしても良い。この観点からは、上記実施形態の予備乾燥は必須の工程ではなく、予備乾燥を行うこと無くフラッシュ光を照射することも可能である。但し、この場合、基板Wの表面に残留しているIPAの液量が多くなり、それを完全に蒸発させるのに必要な蒸発熱量が上記実施形態よりも大きくなるため、その蒸発熱量以上の熱エネルギーを与えるためにフラッシュ光のエネルギーをより大きくする必要がある。従って、上記実施形態のように、IPAの液面がピラー85の上端と一致した時点でフラッシュ光を照射するのが最も好適である。
【0079】
また、上記実施形態においては、処理ユニット101で基板Wの洗浄処理を行い、処理ユニット1で乾燥処理を行っていたが、1つの処理ユニットで洗浄処理および乾燥処理の双方を行うようにしても良い。具体的には、例えば、処理ユニット1に洗浄液を吐出する洗浄液ノズルをさらに設け、処理ユニット1内で基板Wの洗浄処理と乾燥処理とを連続して行うようにしても良い。
【符号の説明】
【0080】
1,101 処理ユニット
10 処理チャンバー
20 回転保持部
22 スピンチャック
25 スピンモータ
30 処理液ノズル
33 ノズル駆動部
40 カップ
50 光照射部
60 電源ユニット
70 光学フィルター
90 制御部
85 ピラー
93 変換テーブル
100 枚葉式洗浄装置
FL フラッシュランプ
W 基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10