(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033672
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】水処理用浄化紙及び水処理装置
(51)【国際特許分類】
D21H 21/14 20060101AFI20240306BHJP
D21H 17/67 20060101ALI20240306BHJP
C02F 1/72 20230101ALI20240306BHJP
C02F 1/30 20230101ALI20240306BHJP
【FI】
D21H21/14 Z
D21H17/67
C02F1/72 101
C02F1/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137407
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古川 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】高城 敏己
(72)【発明者】
【氏名】杉田 澄雄
(72)【発明者】
【氏名】磯 賢一
【テーマコード(参考)】
4D037
4D050
4L055
【Fターム(参考)】
4D037AA01
4D037AB02
4D037BA16
4D050AA01
4D050AB11
4D050BB01
4D050BC06
4D050BC09
4D050BD02
4L055AA02
4L055AA03
4L055AA05
4L055AA06
4L055AA08
4L055AC09
4L055AF09
4L055AF10
4L055AF14
4L055AF17
4L055AF33
4L055AF50
4L055AG08
4L055AG09
4L055AG15
4L055AG18
4L055AG19
4L055AH01
4L055AH09
4L055AH17
4L055AH18
4L055AH37
4L055AH50
4L055FA11
4L055GA50
(57)【要約】
【課題】太陽光や紫外線の長期間照射による形状劣化を抑制することができる水処理用浄化紙及び水処理装置を提供する。
【解決手段】水処理用浄化紙は、有機物の紙と、紙と混合した、無機物の光触媒と、紙に含有するシランカップリング剤と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物の紙と、
前記紙と混合した、無機物の光触媒と、
前記紙に含有するシランカップリング剤と、を有する、
水処理用浄化紙。
【請求項2】
前記紙は、セルロース繊維、セルロースナノファイバー、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、レーヨン、ビニロン、針葉樹パルプ、広葉樹パルプ、古紙パルプ、リンターパルプ、ケナフパルプ、バガスパルプ、バンブーパルプ、わら、麻、コウゾ、ミツマタ、木綿、ヨシ、バナナのいずれかである、
請求項1に記載の水処理用浄化紙。
【請求項3】
前記光触媒は、酸化チタン、酸化タングステン、チタン酸ストロンチウム、硫化亜鉛、硫化カドミウム、バナジン酸ビスマス含有酸化チタン、二酸化ケイ素のいずれかである、
請求項1に記載の水処理用浄化紙。
【請求項4】
容器本体と、
前記容器本体に固定された、光透過性を有する板と、
前記板から光が入射する位置であり、かつ前記容器本体と前記板との間に固定された浄化体と、を有し、
前記浄化体は、請求項1から3いずれか1項に記載の水処理用浄化紙で形成されている、水処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光触媒を利用した水処理用浄化紙及び水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、酸化チタン(TiO2)等の光触媒を利用した水処理装置が提案されている(特許文献1および2等)。酸化チタンを利用した水処理装置では、酸化チタンが紫外線を受けることでその表面に活性酸素(ヒドロキシラジカルやスーパーオキサイドアニオン)が発生し、この活性酸素が、処理水に含まれている有機物を二酸化炭素や水に酸化分解することで、処理水が浄化される。ヒドロキシラジカルは、紫外線により酸化チタンの表面の電子が励起して生じた正孔に、処理水中や空気中に存在する水酸化物イオンなどから電子が奪われて生じる。スーパーオキサイドアニオンは、励起した電子が処理水中や空気中に存在する酸素と結合して生じる。
【0003】
特許文献3には、光触媒を利用した水処理装置で使用する浄化紙に関して、有機物であるセルロース繊維自体が酸化チタンで分解されるという問題点を解決するために、無機物(シリカ等)が担持されたパルプ繊維(セルロース繊維)を、酸化チタンを担持させる支持体として用いたものが記載されている。この無機物は、水溶状態でパルプスラリーと混在された後に水不溶化されることで、パルプ繊維と強固に結びつき、その表面に酸化チタンを凝集析出させるとともに、パルプ繊維の酸化チタンによる劣化を抑制する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-244440号公報
【特許文献2】特開2012-217922号公報
【特許文献3】特許第3254345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献3に記載の浄化紙は、無機物の酸化チタンを有機物の繊維に定着させた構造体であり、無機物と有機物との結びつきが弱い。このため、太陽光や紫外線による長期間の照射をし続けると、酸化チタンによる分解で浄化紙の形状が劣化し、浄化体の交換時期が早くなってしまう可能性がある。
【0006】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、太陽光や紫外線の長期間照射による形状劣化を抑制し、浄化体の交換時期を長くすることができる水処理用浄化紙及び水処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る水処理用浄化紙は、有機物の紙と、前記紙と混合した、無機物の光触媒と、前記紙に含有するシランカップリング剤と、を有する。
【0008】
水処理用浄化紙は、シランカップリング剤を含有することにより、無機物と結合する基が無機物である酸化チタン等と、有機物と結合する基が有機物であるセルロース繊維等にそれぞれ結合し、無機物と有機物との結びつきがより一層強くなる。
【0009】
本開示の一態様に係る水処理装置は、容器本体と、前記容器本体に固定された、光透過性を有する板と、前記板から光が入射する位置であり、かつ前記容器本体と前記板との間に固定された浄化体と、を有し、前記浄化体は、前記水処理用浄化紙で形成されている。
【0010】
水処理装置の構成要素である浄化体は、シランカップリング剤を含有する水処理用浄化紙で形成されているため、無機物と有機物との結びつきがより一層強くなることで、水処理用浄化紙の耐久性が向上し、太陽光や紫外線による形状劣化が生じにくくなり、浄化体の交換時期を長くすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、太陽光や紫外線の長期間照射による形状劣化を抑制し、浄化体の交換時期を長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施形態の水処理装置を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態の水処理装置の構成部品を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、水処理用浄化紙を示す拡大図である。
【
図5】
図5は、浄化体を製造する手順を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、形状劣化加速試験の結果を示すグラフである。
【
図7】
図7は、形状劣化加速試験後の形状劣化した水処理用浄化紙の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本開示を実施するための形態につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本開示が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0014】
<水処理装置の構成>
水処理装置の構成について、
図1から
図3を参照して説明する。
図1は、実施形態の水処理装置を示す斜視図である。
図2は、実施形態の水処理装置の構成部品を示す斜視図である。
図3は、
図1のA-A断面図である。
図1から
図3に示すように、水処理装置10は、容器本体1と、浄化体2と、板3と、を有している。
【0015】
図1に示すように、水処理装置10は、光源50から照射された紫外線を浄化体に照射させて装置内の水を浄化する装置である。光源50の光は、太陽光であってもよい。
【0016】
図2に示すように、容器本体1は、上側が開いて開口を有する直方体状の浅い箱体である。容器本体1は、底板(下板)11と二対四枚の側板12、側板13、側板14、側板15を有している。
【0017】
対をなす側板12、13は、底板11をなす長方形の短辺から立ち上がる、短冊状の側板である。対をなす側板14、15は、底板11をなす長方形の長辺から立ち上がる、短冊状の側板である。
【0018】
図2に示すように、側板12の端部に、貫通穴(液体導入口)12aが設けられている。
図3に示すように、側板13の端部に、貫通穴(液体導出口)13aが設けられている。貫通穴(液体導出口)13aは、貫通穴12aの対角に位置している。
【0019】
図2に示すように、液体導入管18が、貫通穴12aに挿入され、液体導入管18の穴が貫通穴12aに固定されている。
図3に示すように、液体導出管19が、貫通穴13aに挿入され、液体導出管19の穴19aが貫通穴13aに固定されている。
【0020】
浄化体2は、ジャバラ状に折られている。
図4は、水処理用浄化紙を示す拡大図である。
図4に示すように、水処理用浄化紙100は、紙20であるセルロース繊維と、光触媒30である酸化チタンと、を有する。水処理用浄化紙100の紙20には、シランカップリング剤40が含侵されている。
図4に示す水処理用浄化紙100が折り曲げられて、
図1から
図3に示す浄化体2が形成される。
【0021】
板3は、容器本体1の開口側を覆って設けられている。容器本体1と板3とで容器が構成され、板3はこの容器の上板である。板3は光透過性を有する、ガラスの板である。板3は、光透過性を有していれば、樹脂板でもよい。
【0022】
ジャバラの伸縮方向H1(
図2に表示)の両端部を除き、ジャバラの斜面は、谷折り線から山折り線に向かう第一斜面21と、山折り線から谷折り線に向かう第二斜面22とを有する。ジャバラの伸縮方向一端部の斜面は、第一斜面21と平行な一端部斜面21aであり、伸縮方向他端部の斜面は第二斜面22と平行な他端部斜面22aである。
【0023】
浄化体2の山折り線の部分を下側から支持する複数個の円錐状突起16が、容器本体1の底板11に
図2に示す配置で固定されている。
図3に示す浄化体2の谷折り線の部分を上側から支持する複数個の円錐状突起31が、板3に固定されている。複数個の円錐状突起31は、組立状態で、側板14に沿って配置されている4行の各21個の円錐状突起16の間に一つずつ配置されるように、板3に固定されている。円錐状突起16、31は、円錐の尖端部が少し切り落とされた形状を有し、大径部(底面部)が底板11および板3に固定されている。
【0024】
図2に示すように、側板14、15の内面に、三角形の支持板17が21枚ずつ固定されている。支持板17は二等辺三角形であり、底辺の面が底板11側に配置され、等辺の斜面17a、17bが浄化体2の支持面となる。支持板17の一方の斜面17aとその隣の支持板17の他方の斜面17bとにより、V字状凹部17cが形成されている。板3には、下面(容器本体1と対向させる面)の側板14、15側となる両端部に、二等辺三角形の支持板32が20枚ずつ固定されている。板3の支持板32は、容器本体1の各V字状凹部17cに、僅かな隙間を介して嵌まる寸法および配置で固定されている。
【0025】
水処理装置10を組み立てる際には、まず、浄化体2を容器本体1内に入れて、底板11の円錐状突起16で浄化体2の山折り線の部分を下側から支持する。また、浄化体2の折り線に沿った方向の両端部を支持板17の斜面17a、17bに載せる。次に、容器本体1の上に板3を載せて、円錐状突起31で浄化体2の谷折り線の部分を上側から支持する。また、浄化体2の折り線に沿った方向の両端部に支持板32を載せて、この両端部を支持板17の斜面17a、17bと支持板32の斜面とで挟む。
【0026】
次に、板3と容器本体1の底板11とを、複数箇所に設置された挟持部品で挟む。これにより、
図3に示すように、浄化体2の斜面で、容器の内部に形成された空間が複数の平行な流路(上側流路41および下側流路42)に区画される。また、浄化体2のジャバラの山折り線が板3に接触し、谷折り線が底板11の内面に接触した状態になる。
【0027】
また、浄化体2には、
図1および
図2に示すように、ジャバラの折り線に沿った方向H2(
図2に表示)の一端部に、第二斜面22および他端部斜面22aを貫通する第一穴23、23aが設けられ、他端部に第一斜面21および一端部斜面21aを貫通する第二穴24、24aが設けられている。第一穴23および第二穴24により、隣り合う上側流路41および下側流路42が接続される。これにより、容器内に、複数の上側流路41および下側流路42からなるジグザグの連続した流路が設けられる。この流路の上流側に側板12が配置され、下流側に側板13が配置されている。
【0028】
図3に示すように、板(上板)3と一端部斜面21aと側板(第一側板)12とにより、上流端流路43が設けられている。また、板(上板)3と他端部斜面22aと側板(第二側板)13とにより、下流端流路44が形成されている。上流端流路43とこれに隣接する下側流路42が、一端部斜面21aの第二穴24aで接続されている。下流端流路44とこれに隣接する下側流路42が、他端部斜面22aの第一穴23aで接続されている。
【0029】
これにより、水処理装置10の容器内に、側板12の貫通穴(液体導入口)12aから側板13の貫通穴(液体導出口)13aに向かう、ジグザグの連続した長い流路が設けられる。
【0030】
また、円錐状突起16および支持板17は、下側流路42内の第一穴23および第二穴24から外れた位置に存在し、円錐状突起31および支持板32は、上側流路41内の第一穴23および第二穴24から外れた位置に存在する。
図1では、上側流路41の流れをF41、下側流路42の流れをF42、上流端流路43の流れをF43、下流端流路44の流れをF44で示す。
【0031】
<浄化体の製法>
次に、浄化体の製造手順を簡単に説明する。
図5は、浄化体を製造する手順を示すフローチャートである。
【0032】
図5に示すように、浄化体2は、平板状の水処理用浄化紙100を作製する工程(ステップS101)と、得られた浄化紙を抄紙する工程(ステップS102)と、得られた浄化紙の切断穴開け工程(ステップS103)と、切断穴開け工程後の浄化紙を折り畳む工程(ステップS104)で得ることができる。
【0033】
水処理用浄化紙100は、紙の表面だけでなく内部も含めた全体で、セルロース繊維の表面に酸化チタン微粒子を混合し、アミノ系樹脂が入った酸性ラテックス分散水を入れて攪拌し、スラリーを得る(ステップS101)。
【0034】
酸化チタンとしては、例えば、Evonik Degussa社製のP25(平均粒径30nm)を使用し、セルロース繊維:酸化チタン=2:1以上、セルロース繊維:酸化チタン=20:1以下の比率(質量比)で混合する。
【0035】
酸性ラテックス分散水の製法としては、具体的には、まず、水にpH調整剤としてアンモニアを添加してアルカリ性にする。このアルカリ水にラテックス(接着剤)を添加して分散させる。得られたラテックス分散水にpH調整剤として硫酸アルミニウムを添加して酸性にする。ラテックスの配合量はスラリーの固形分全体の3質量%となる量、アミノ系樹脂の配合比は、セルロース繊維100質量部に対して3質量部とする。
【0036】
次に、ステップS101で得られた水処理用浄化紙100に抄紙薬品を入れて攪拌する(ステップS102)。
【0037】
抄紙薬品としては、pH調整剤、セルロース繊維同士を結合する接着剤(ラテックス等の水に溶解しにくいもの)、定着剤、湿潤紙力増強剤、歩留まり向上剤(アクリルアミド等)を混合する。
【0038】
攪拌後、スラリーを抄紙機で抄紙する(ステップS102)。つまり、スラリー(紙料+水)を網に載せて、水を落とすことにより紙料をシート状にする工程と、シート状の紙料をローラでプレスする工程と、乾燥機で乾燥する工程を行う。
【0039】
ステップS102において、例えば、製紙用薬品を加えて抄紙された浄化紙の厚さは0.1mm以上0.7mm以下とする。
【0040】
本実施の形態では、紙20としてセルロース繊維を用いたが、セルロース繊維以外に、セルロースナノファイバー(CNF:Cellulose Nano Fiber)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、レーヨン、ビニロン、針葉樹パルプ、広葉樹パルプ、古紙パルプ、リンターパルプ、ケナフパルプ、バガスパルプ、バンブーパルプ、わら、麻、コウゾ、ミツマタ、木綿、ヨシ、バナナのいずれかを使用してもよい。
【0041】
本実施の形態では、光触媒30として酸化チタンを用いたが、酸化チタン以外に、酸化タングステン、チタン酸ストロンチウム、硫化亜鉛、硫化カドミウム、バナジン酸ビスマス含有酸化チタン、二酸化ケイ素のいずれかを使用してもよい。
【0042】
なお、光触媒30として酸化チタンを用いることで、酸化タングステンを用いた場合よりも高い水処理能力が得られる。また、酸化チタンにはアナターゼ結晶とルチル結晶があるが、アナターゼ結晶の酸化チタンを用いる方がより高い水処理能力が得られる。さらに、水との接触面積を増やすために、酸化チタン微粒子の粒径は小径であることが好ましい。
【0043】
ステップS102において、シート状の紙料をローラでプレスして、乾燥機で乾燥した後、シランカップリング剤40(信越化学工業株式会社製 KMB-503)を含侵させ、浄化紙と混合して、乾燥機で乾燥する。なお、乾燥前にシランカップリング剤40を含侵させてから乾燥機で乾燥してもよい。
【0044】
シランカップリング剤40の構造式は以下の化1によって示される。シランカップリング剤40は、シリコンを主成分とする溶剤であり、一方に無機物と結合する基と、他方に有機物と結合する基とを有する構造体である。
【0045】
【0046】
シランカップリング剤40としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2-(3、4-エポキシシクロヘキシル エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1、3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3-ウレイドプロピルトリアルコキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物のいずれかを使用してもよい。
【0047】
次に、得られた水処理用浄化紙100を所定寸法に切断して第一穴23、23aおよび第二穴24、24aを形成する(ステップS103)。
【0048】
(ステップS104)
次に水処理用浄化紙100を、容器の深さより少し大きな幅でジャバラ状に折り畳んだ後、しっかりとした折れ線をつけるために加圧する。加圧された水処理用浄化紙100は、折れ目がついた浄化体2となる。
【0049】
<使用方法、動作>
水処理装置10を使用する際には、液体導入管18から処理対象の水(処理水)を導入して、板3側から浄化体2に光源50からの紫外線を照射する。処理水の導入にはポンプを使用する。これに伴い、処理水は、液体導入管18から液体導入口12aを介して上流端流路43に入り、一端部斜面21aに沿って流れた(
図1の流れF43)後、第二穴24aから隣の下側流路42に入る。下側流路42に入った処理水は、第一斜面21および第二斜面22に沿って流れた(
図1の流れF42)後、第一穴23から隣の上側流路41に入る。上側流路41に入った処理水は、第一斜面21および第二斜面22に沿って流れた(
図1の流れF41)後、第二穴24から隣の下側流路42に入る。
【0050】
このように、液体導入管18から導入された処理水は、第一斜面21および第二斜面22に触れながら、ジグザグに長い距離を流れて、最後は第一穴23aから下流端流路44に入る。そして、他端部斜面22aに沿って流れた(
図1の流れF44)後、貫通穴13aから液体導出管19に入り、水処理装置10の外に導出される。この流れの間、処理水が浄化体2にしみ込み、処理水に含まれている有機物が、酸化チタンの光触媒作用で生じた活性酸素により分解される。つまり、処理水が酸化チタンの光触媒作用で浄化される。そして、浄化された水が、水処理装置10の外に導出される。
【0051】
液体導出管19は、液体導入管18の対角に位置しているため、液体導出管19が長手方向に液体導入管18に対向して位置している場合よりも、液体導入管18から液体導出管19に入るまでの距離が長くなり、液体導入管18から導入された処理水は、流れやすくなる。
【0052】
水処理装置10によれば、ジャバラ状の浄化体2を用いたことで、平板状の浄化体を用いた場合と比較して、紫外線が当たる面積が大きくなり、処理水と浄化体2との接触面積も大きくなる。つまり、体積当たりの受光面積および水接触面積を大きくできる。
【0053】
また、板3から入射した紫外線は、浄化体2の第一斜面21および第二斜面22で反射が繰り返されるため、紫外線の入射角度が変化しても第一斜面21および第二斜面22の両方に紫外線が当たる。よって、紫外線の光源の光として太陽光を用いた場合でも、太陽光の入射角度の変化に伴う触媒作用の低下が抑制される。
【0054】
さらに、浄化体2の第一斜面21、第二斜面22、一端部斜面21a、および他端部斜面22aに、第一穴23、23aおよび第二穴24、24aを設けたことで、深さの浅い容器に、連続した長い流路が形成される。
【0055】
また、水処理装置10は、処理水を、浄化体2の紙面に対して垂直に通過させるのではなく、浄化体2の紙面に沿って平行に移動させるため、浄化体2に目詰まりが生じにくい。また、処理水を導入するためのポンプに動力損失が生じないため、水処理装置10は、エネルギーロスが低く、寿命が長い装置である。
【0056】
また、水処理装置10では、容器を容器本体1と板(上板)3とに分けているため、挟持部品による挟持を解除して板3を外せば、浄化体2を容易に取り替えることができる。
【0057】
また、浄化体2は紙製であるため折り曲げや穴開けが容易である。浄化体2は低コストで製造できるため、安価なものとなる。
【0058】
また、水処理装置10では、容器本体1の底板11と板3とにそれぞれ、水流を妨害しないような形状および配置で設けた円錐状突起16、31により、浄化体2の山折り線の部分および谷折り線の部分が支持されている。よって、底板11が水平から傾いた状態になった場合でも、水の重さで浄化体2が撓んだり、容器本体1の下方になった部分(下流側)に浄化体2がずれたりすることが防止できる。つまり、傾斜状態でも、水を適切に流すことで浄化作用を最大限に発揮させることができる。
【0059】
さらに、水処理装置10では、容器本体1の底板11と板3とにそれぞれ設けた支持板17、32により、浄化体2の端部が挟んで支持されているため、処理水が、上述のジグザグの流路から外れて側板14、15に沿って流れることが防止できる。これにより、浄化作用を最大限に発揮させることができる。
【0060】
なお、上側流路41(上流端流路43および下流端流路44を含む)では、板3を透過した紫外線が、直接、第一斜面21、第二斜面22、一端部斜面21a、および他端部斜面22aの流路側の面に照射されるため、酸化チタンの光触媒作用が直ちに生じる。これに対して、下側流路42では、浄化体2を透過して第一斜面21、第二斜面22、一端部斜面21a、および他端部斜面22aの流路側の面に至った紫外線により、酸化チタンの光触媒作用が生じる。
【0061】
よって、上側流路41を流れている時と下側流路42を流れている時を比較すると、下側流路42を流れている時の方が、処理水の浄化速度(処理水に含まれている有機物が酸化チタンの作用で分解される速度)が低い。底板11の内面を紫外線の反射率が高い面(光沢面など)とすることで、下側流路42における処理水の浄化速度を高めることができる。
【0062】
なお、円錐状突起16、31と支持板17、32を併用することが好ましいが、円錐状突起16、31は設けていなくてもよい。
【0063】
浄化体2内の酸化チタンは、浄化体2の表面から内部に入り裏面に至る紫外線と接触して、触媒作用を発揮する。浄化体2が白いほど、表面からの紫外線反射率が高く、裏面に至る紫外線量が少なくなるため、下側流路42での浄化効率は低下する。
【0064】
酸化チタンとしては、アナターゼ結晶の含有率が高く、平均粒径が10nm程度の酸化チタン微粒子を使用することが好ましい。これにより、浄化体2による浄化効果が高くなる。
【0065】
処理水に酸素を入れてから液体導入管18に導入すると、活性化酸素として、処理水中に含まれている水酸化物イオンに由来するヒドロキシラジカルと、空気中に含まれている酸素に由来するスーパーオキサイドアニオンだけでなく、処理水に混合された酸素に由来するスーパーオキサイドアニオンも生じるため、高い浄化能力が得られる。
【0066】
処理水への酸素混合方法としては、処理水に細かい気泡(ナノバブルなど)を入れる方法、処理水を細かい水滴にして液体導入管18に導入する方法が挙げられる。
【0067】
水処理装置10では、容器の上板として光透過性材料からなる板3を用いているが、紫外線など(波長400nm未満光)の透過率が高い合成樹脂材料からなる板材を用いてもよい。光透過率の高い樹脂としては、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂やアクリル樹脂が挙げられる。また、下側から紫外線を照射する場合は、底板(下板)11を光透過性材料からなるものとする。
【0068】
なお、第一斜面21、第二斜面22、一端部斜面21a、および他端部斜面22aに、第一穴23、23aおよび第二穴24、24aを設けず、流路(上側流路41、下側流路42、上流端流路43、下流端流路44)毎に、側板14、15に液体導入口および液体導出口を設けて、各流路を独立に使用してもよい。
【0069】
浄化体2の水処理用浄化紙100の紙20は、シランカップリング剤40を含有しているため、無機物と有機物との結びつきがより一層強くなる。このため、浄化体2は、太陽光や紫外線による形状劣化が生じにくく、浄化体2の交換時期を長くすることができる。
【0070】
(評価例)
本実施形態の効果を評価する指標として、水処理用浄化紙の形状劣化の程度を判断する、後述する形状保持度合により評価した。
【0071】
<シランカップリング剤の滴下>
図4に示した水処理用浄化紙100の両面に、シランカップリング剤40(KMB-503 信越化学工業株式会社製、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシランを使用)を滴下し、ホットプレート内に設置する。加熱乾燥の条件は、温度110℃、時間90分間とし、1日以上、静置し乾燥させる。
【0072】
水処理用浄化紙100は、シランカップリング剤40の入った容器に直接入れて、シランカップリング剤40に含侵させてもよい。
【0073】
滴下量は、水処理用浄化紙10cm2当たり1ml程度で、濃度は、原液100%である。
【0074】
なお、加熱乾燥するための装置として、ホットプレートを使用したが、それ以外に断熱容器など上から蓋をして加熱乾燥できる装置を使用してもよい。
【0075】
<形状劣化の加速試験>
まず、シランカップリング剤40を含有しない水処理用浄化紙及びシランカップリング剤40を含有する水処理用浄化紙をそれぞれ10mm×10mmの大きさに切り取る。切り取った試験片はそれぞれ、シランカップリング剤40を含有しない水処理用浄化紙の試験片1Aと、シランカップリング剤40を含有する水処理用浄化紙の試験片1Bとする。試験片の表面に紫外線(UV)光を照射して、水処理用浄化紙の形状劣化を促進させるための加速試験を実施した。試験装置としては、小型Xe耐光試験機(東洋精機製作所製 Atlas SUNTEST XLS+)を使用した。照射条件は、UV照度60W/m2、照射時間300hである。また、UVナノインプリント装置(SCIVAX X-100U)を使用して、同様の試験を実施した。なお、太陽光を2.5か月間照射し続ける試験に相当する。
【0076】
<形状保持度合の算出方法>
形状保持度合は以下の数式(1)によって示される。
【0077】
【0078】
まず、上述の形状劣化の加速試験用に用意した、試験片1Aと試験片1Bについて、それぞれ重量Aを測りで測定する。次に、人差し指の第一関節から先の面で試験片を削れなくなるまで擦り続ける。最後に、試験片の重量Bを測りで測定する。数式(1)により、形状保持度合を算出する。
【0079】
<試験結果>
図6は、形状劣化加速試験の結果を示すグラフである。
図6に示すように、シランカップリング剤40を含まない試験片1Bの場合は、0.8か月相当期間、紫外線光を照射し続けると、形状保持度合が52.9%となるまで劣化した。一方、シランカップリング剤40を含有した試験片1Aの場合は、0.8か月相当期間、紫外線光を照射し続けると、形状が5.3%まで劣化した。
【0080】
図7は、加速試験後の形状劣化した水処理用浄化紙の写真である。
図7に示すように、円形の試験片101を擦ると、形状劣化した水処理用浄化紙が剥離して、剥離片102が生じる。
【0081】
上述の試験結果より、試験片1Aと、試験片1Bとを比較すると、試験片1Aは、シランカップリング剤40を含有することにより、0.8か月相当期間、紫外線光を照射し続けても、42.4%まで形状劣化を抑制する効果が得られた。
【符号の説明】
【0082】
100 水処理用浄化紙
20 紙
30 光触媒
40 シランカップリング剤
2 浄化体