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特開2024-33682真空ポンプ寿命予測装置及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033682
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】真空ポンプ寿命予測装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01M 13/045 20190101AFI20240306BHJP
   G01M 13/028 20190101ALI20240306BHJP
   G01H 13/00 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
G01M13/045
G01M13/028
G01H13/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137420
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100176072
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 功
(74)【代理人】
【識別番号】100169225
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 明
(72)【発明者】
【氏名】池田 淳
(72)【発明者】
【氏名】松井 豊勝
(72)【発明者】
【氏名】西村 仁志
【テーマコード(参考)】
2G024
2G064
【Fターム(参考)】
2G024AD03
2G024BA12
2G024CA13
2G024EA06
2G024FA04
2G024FA06
2G024FA15
2G064AA12
2G064AB01
2G064AB02
2G064AB11
2G064BA02
2G064CC43
2G064DD08
2G064DD14
(57)【要約】
【課題】真空ポンプの寿命を容易に予測する真空ポンプ寿命予測装置を提供する。
【解決手段】真空ポンプ10Bの作動中の振動を検出する振動加速度センサにより検出されたデータを取得するデータ取得部11と、取得部11により取得されたデータに基づき、真空ポンプ10Bの固有振動周波数の基準値からのシフト量(変化量)を計算するシフト量計算部13と、シフト量計算部13により計算された変化量に基づき、真空ポンプ10Bの寿命を推論する推論部16と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空ポンプの作動中の振動を検出する振動加速度センサにより検出されたデータを取得する取得部と、
前記取得部により取得された前記データに基づき、前記真空ポンプの固有振動周波数の基準値からの変化量を計算する計算部と、
前記計算部により計算された前記変化量に基づき、前記真空ポンプの寿命を推論する推論部と、
を備える真空ポンプ寿命予測装置。
【請求項2】
学習用の真空ポンプの固有振動周波数の基準値からの変化量と、前記学習用の真空ポンプの状態情報と、に基づき、前記寿命を予測するための学習を行う学習部を更に備え、
前記推論部は、前記学習部による学習結果と、前記計算部により計算された前記変化量とに基づき、前記寿命を推論する、
請求項1に記載の真空ポンプ寿命予測装置。
【請求項3】
前記状態情報の入力をユーザから受け付ける受付部を更に備え、
前記学習部は、前記受付部により前記状態情報の入力を受け付ける度に前記学習を行い、
前記推論部は、前記学習部により前記学習が行われる度に、前記学習部による学習結果と、前記計算部により計算された前記変化量と、に基づき、前記寿命を推論する、
請求項2に記載の真空ポンプ寿命予測装置。
【請求項4】
前記推論部により推論した前記寿命を出力する出力部を更に備える、
請求項1~3の何れか一項に記載の真空ポンプ寿命予測装置。
【請求項5】
真空ポンプの作動中の振動を検出する振動加速度センサと通信可能なコンピュータを、
前記振動加速度センサにより検出されたデータを取得する取得部、
前記取得部により取得された前記データに基づき、前記真空ポンプの固有振動周波数の基準値からの変化量を計算する計算部、
前記計算部により計算された前記変化量に基づき、前記真空ポンプの寿命を推論する推論部、
として機能させるためのプログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空ポンプ寿命予測装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
真空ポンプは、使用していくうちに劣化していくことから、取り換えやオーバーホールが必要となる。この取り換えが必要となるまでの期間、又は、オーバーホールが必要となるまでの期間を「寿命」という。しかしながら、作業者はこの寿命を事前に把握することができない。
【0003】
そこで下記特許文献1には、真空ポンプの寿命を予測する装置が開示されている。この特許文献1に記載の装置では、真空ポンプの寿命を予測するための基準の指標値をプロセス条件ごとに予め決めておき、真空ポンプの状態量から求めた寿命の指標値とプロセス条件に対応する基準の指標値との差異に基づき、真空ポンプの寿命を予測する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-285974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1においては、無数にあるプロセス条件それぞれに対応する基準の指標値を予め決定しておかなければならない。また、付着物の蓄積により真空ポンプの状態量が変化することも考慮しなければならない。このように、特許文献1に記載の装置では、真空ポンプの寿命を予測することが容易ではないという問題がある。
【0006】
そこで本発明は、真空ポンプの寿命を容易に予測することができる、真空ポンプ寿命予測装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の第一態様に係る真空ポンプ寿命予測装置は、真空ポンプの作動中の振動を検出する振動加速度センサにより検出されたデータを取得する取得部と、前記取得部により取得された前記データに基づき、前記真空ポンプの固有振動周波数の基準値からの変化量を計算する計算部と、前記計算部により計算された前記変化量に基づき、前記真空ポンプの寿命を推論する推論部と、を備える。
【0008】
また、本発明の第二態様では、学習用の真空ポンプの固有振動周波数の基準値からの変化量と、前記学習用の真空ポンプの状態情報と、に基づき、前記寿命を予測するための学習を行う学習部を更に備え、前記推論部は、前記学習部による学習結果と、前記計算部により計算された前記変化量とに基づき、前記寿命を推論する。
【0009】
また、本発明の第三態様では、前記状態情報の入力をユーザから受け付ける受付部を更に備え、前記学習部は、前記受付部により前記状態情報の入力を受け付ける度に前記学習を行い、前記推論部は、前記学習部により前記学習が行われる度に、前記学習部による学習結果と、前記計算部により計算された前記変化量と、に基づき、前記寿命を推論する。
【0010】
また、本発明の第四態様では、前記推論部により推論した前記寿命を出力する出力部を更に備える。
【0011】
また、本発明の第五態様に係るプログラムは、真空ポンプの作動中の振動を検出する振動加速度センサと通信可能なコンピュータを、前記振動加速度センサにより検出されたデータを取得する取得部、前記取得部により取得された前記データに基づき、前記真空ポンプの固有振動周波数の基準値からの変化量を計算する計算部、前記計算部により計算された前記変化量に基づき、前記真空ポンプの寿命を推論する推論部、として機能させる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る真空ポンプ寿命予測装置及びプログラムによれば、真空ポンプの寿命を容易に予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第一実施形態に係る真空ポンプ寿命予測装置の機能構成の一例を概略的に示す図である。
図2図1の真空ポンプ寿命予測装置のハードウェア構成の一例を概略的に示すブロック図である。
図3図1の周波数解析部によるFFT処理の結果の一例を示すグラフである。
図4図1の学習部により学習された結果を示すグラフである。
図5】本発明の第一実施形態に係る真空ポンプ寿命予測装置による学習時の動作を説明するフローチャートである。
図6】本発明の第一実施形態に係る真空ポンプ寿命予測装置による推論時の動作を説明するフローチャートである。
図7】本発明の第二実施形態に係る真空ポンプ寿命予測装置において記憶される統計回帰モデルの一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら本発明の複数の実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては極力同一の符号を付して、重複する説明は極力省略する。
【0015】
===第一実施形態===
まず、第一実施形態について説明する。
【0016】
《構成》
まず、第一実施形態に係る真空ポンプ寿命予測装置の概略構成について説明する。図1は、第一実施形態に係る真空ポンプ寿命予測装置の機能構成の一例を概略的に示すブロック図である。
【0017】
図1に示すように、真空ポンプ寿命予測装置1は、真空ポンプ10に設置された振動加速度センサ21,22,23により検出されたデータに基づき所定の処理を行うことで、真空ポンプ10の寿命を予測するものである。第一実施形態において、真空ポンプ寿命予測装置1は、真空ポンプ10の寿命を予測するための学習を行うとともに、学習結果に基づき真空ポンプ10の寿命の推論を行う。以下、学習時に用いる真空ポンプ10と推論時に用いる寿命予測対象の真空ポンプ10とを区別して説明するために、必要に応じて、学習時に用いる真空ポンプ10を「学習用の真空ポンプ10A」とし、推論時に用いる真空ポンプ10を「予測対象の真空ポンプ10B」として説明する。学習用の真空ポンプ10Aと、予測対象の真空ポンプ10Bとは、例えば同じ型である。
【0018】
真空ポンプ寿命予測装置1は、振動加速度センサ21,22,23、PC41、表示装置31等とそれぞれ通信可能に接続されており、これらの各構成の動作を制御する情報処理装置である。図2は、図1の真空ポンプ寿命予測装置1のハードウェア構成の一例を概略的に示すブロック図である。
【0019】
図2に示すように、真空ポンプ寿命予測装置1は、制御装置2、通信装置3、及び、記憶装置4を備えている。制御装置2は、CPU(Central Processing Unit)5、及び、メモリ(主記憶装置)6を主に備えて構成される。CPU5は、真空ポンプ寿命予測装置1の各種構成を制御する。メモリ6は、例えば真空ポンプ寿命予測装置1における処理の実行に必要な各種プログラム等を記憶する。
【0020】
制御装置2は、CPU5がメモリ6あるいは記憶装置4等に格納された所定のプログラムを実行することにより、各種の機能構成として機能する。この機能構成の詳細については後述する。当該プログラムは、真空ポンプ寿命予測装置1の内部に配置された記憶装置4に記憶されてもよく、真空ポンプ寿命予測装置1の外部の記憶装置等に記憶されてもよい。また、当該プログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供してもよく、インターネット等のネットワーク経由でインストールする形式で提供してもよい。
【0021】
通信装置3は、外部の装置と通信するための通信インターフェース等で構成される。通信装置3は、例えば、振動加速度センサ21,22,23、PC41、及び、表示装置31との間で各種の情報を送受信する。
【0022】
記憶装置4は、ハードディスク等で構成される補助記憶装置である。この記憶装置4は、制御装置2における処理の実行に必要な各種プログラム、各種の情報、及び、処理結果の情報を記憶する。
【0023】
なお、真空ポンプ寿命予測装置1は、専用又は汎用のコンピュータ等を用いて実現することができる。また、図2は、真空ポンプ寿命予測装置1が有する主要なハードウェア構成の一部を示しているに過ぎず、真空ポンプ寿命予測装置1は、コンピュータが一般的に備える他の構成を備えることができる。
【0024】
図1に戻り、真空ポンプ寿命予測装置1は、機能構成として、データ取得部11、周波数解析部12、シフト量計算部13、学習部14、学習記憶部15、データ挿入部15A、推論部16、閾値設定部17、閾値記憶部18、及び、表示指令部19を備えている。
【0025】
データ取得部11(取得部)は、真空ポンプ10(学習用の真空ポンプ10A、予測対象の真空ポンプ10B)の作動中の振動を検出する振動加速度センサ21,22,23により検出されたデータを取得する。振動加速度センサ21,22,23は、真空ポンプ10に作業者等によって設置される。振動加速度センサ21,22,23は、それぞれ、互いに直交する三軸(X軸、Y軸、Z軸)方向の振動加速度であって、三軸方向それぞれについて、真空ポンプ10の作動中の振動を検出する。
【0026】
データ取得部11は、振動加速度センサ21,22,23によりそれぞれ検出した、真空ポンプ10の作動中の各振動加速度データを取得し、これらをA/D変換する。なお、A/D変換された振動加速度データは、図示しないPLC(Programmable Logic Controller)のデータレジスタに書き込まれる。更には、外付けのPC41のデータ記憶部42(ハードディスク)にもCSVファイルとして記憶されるようにしてもよい。データ取得部11により取得されA/D変換された振動加速度データは、周波数解析部12に出力される。
【0027】
周波数解析部12は、データ取得部11により取得された振動加速度データについて周波数解析を行う。具体的には、周波数解析部12は、データ取得部11にてA/D変換された各振動加速度データに対して、周波数解析、すなわちFFT(Fast Fourier Transform)処理を行い、振幅スペクトル値又はパワースペクトル値(以下、単に「スペクトル値」と呼称する)を求める。なお、周波数解析部12は、PC41のデータ記憶部42に記憶された振動加速度データが入力された場合においても、データ取得部11から振動加速度データが入力された場合と同様の処理を行うものとする。周波数解析部12による解析結果は、シフト量計算部13に出力される。
【0028】
図3は、図1の周波数解析部12によるFFT処理の結果の一例を示すグラフである。図3の例では、周波数解析部12が、Y軸方向の振動加速度センサ22から取得した振動加速度データに対して、FFT処理を行った結果の一例を示す。図3の横軸は、周波数[Hz]を示し、図3の縦軸は、スペクトル値(ここでは、振幅スペクトル値)を示す。図3のグラフA~グラフDは、真空ポンプ10の使用年数がそれぞれ異なる場合のデータである。グラフAは、真空ポンプ10が新設状態すなわち使用年数0年の場合を示す。グラフBは、真空ポンプ10の使用年数が0より大きい第一所定年数の場合を示す。グラフCは、真空ポンプ10が第二所定年数(ただし、第一所定年数<第二所定年数)の場合を示す。グラフDは、真空ポンプ10が寿命直前(使用年数が第二所定年数よりも大きい第三所定年数)の場合を示す。
【0029】
図3に示すように、真空ポンプ10の使用年数に応じて412Hz付近のピーク周波数が異なっており、使用年数が長いものほど当該ピーク周波数が上方(紙面上右側)にシフトしている。ここで、ピーク周波数は、振幅スペクトル値が所定値以上のピークとして現れる周波数を示し、412Hz付近のピーク周波数は、特定の真空ポンプが有する固有の振動周波数(以下、「固有振動周波数」と呼称する)である。
【0030】
シフト量計算部13(計算部)は、データ取得部11により取得されたデータに基づき、真空ポンプ10の固有振動周波数の基準値からの変化量を計算する。具体的には、シフト量計算部13は、データ取得部11により取得された振動加速度データに基づき周波数解析部12により求めたスペクトル値に基づき、真空ポンプ10の固有振動周波数の基準値(例えば新設状態のときの値)からの変化量(以下、「シフト量」と呼称する)を計算する。
【0031】
この計算手順の一例を説明する。シフト量計算部13は、まず、周波数解析部12からの出力により、新設状態の真空ポンプ10の固有振動周波数に対応するピーク周波数の近傍(例えば固有振動周波数の±数Hz)にある真空ポンプ10の上位N数のピーク周波数を取得する。次に、シフト量計算部13は、この上位N数のピーク周波数について、スペクトル値を重みとした加重平均値を求める。そして、シフト量計算部13は、このようにして求めた加重平均値と、新設状態の真空ポンプ10の固有振動周波数の値との差を、シフト量として求める。なお、上位N数が0である場合には、学習部14及び推論部16において真空ポンプ10が寿命を迎えたと判定される。
【0032】
また、固有振動周波数の低調波あるいは高調波の近傍にピーク周波数が出る場合がある。このような場合にも、上述した、固有振動周波数(412Hz)付近にピーク周波数が出る場合と同様、シフト量計算部13が、この低調波あるいは高調波の近傍にある上位N数のピーク周波数を取得し、シフト量計算部13が、この上位N数のピーク周波数について、スペクトル値を重みとした加重平均値を求め、シフト量計算部13が、このようにして求めた加重平均値と、この低調波あるいは高調波の値との差を、シフト量として求める。
【0033】
そしてシフト量計算部13は、この計算結果を、学習時には学習部14へ、推論時には推論部16へ、それぞれ出力する。
【0034】
なお、説明のため、図3では、Y軸方向の振動加速度センサ22が検出したY軸方向の振動加速度データに基づく解析結果を示しているが、実際には、シフト量計算部13は、X軸方向及びZ軸方向の振動加速度センサ21,23が検出した各方向の振動加速度データに基づきシフト量を計算する。シフト量計算部13は、これらX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向の各シフト量に対して三次元幾何学的距離を計算することで、1つのシフト量を求める。
【0035】
この三次元幾何学的距離は、例えば、ユーグリッド距離、マンハッタン距離、マハラノビス距離、チェビシェフ距離、あるいはミンコフスキー距離のいずれかを用いて計算することができる。
【0036】
学習部14は、学習用の真空ポンプ10Aの固有振動周波数の基準値からの変化量と、学習用の真空ポンプ10Aの状態情報と、に基づき、真空ポンプ10Bの寿命を予測するための学習を行う。具体的には、学習部14は、閾値設定部17により設定された閾値(真空ポンプ10Aの状態情報に基づき設定された閾値)を学習ラベル(目的変数)とし、シフト量計算部13から出力されたシフト量を説明変数として、真空ポンプ10Aの劣化度とシフト量との関係を機械学習する。また、学習部14は、データ挿入部15Aにより学習記憶部15に出力された学習データを用いて当該機械学習を行ってもよい。
【0037】
図4は、図1の学習部14により学習された結果の一例を示すグラフである。図4のグラフの横軸は、三次元幾何学的距離にて計算されたシフト量[Hz]、図4のグラフの縦軸は経年劣化度[年]を示す。この経年劣化度は、真空ポンプ10の劣化状態に対応した使用相当年数を示す。例えば、「経年劣化度が5年」であれば、「使用年数5年相当の劣化度」という意味である。図4においては、破線の丸印で示される曲線状のグラフが、学習部14による学習結果としての機械学習回帰モデルを示し、推論部16による推論に用いられる。なお、図4における実線の丸印は、実測値を示している。
【0038】
また、学習部14は、閾値設定部17により閾値が設定される度に(ユーザによる状態情報の入力を受け付ける度に)上記学習を行う。すなわち、学習部14は、閾値設定部17において閾値が再設定されたときには、元の閾値をこの再設定後の閾値に変更して再学習する。また、学習部14は、データ挿入部15Aにより学習記憶部15に出力された学習データが変更される度に上記学習を行ってもよい。学習部14による学習結果は、学習記憶部15に出力される。
【0039】
学習記憶部15は、学習部14による学習結果を記憶する。学習記憶部15は、学習部14により再学習される度に記憶する学習結果の内容を更新する。また、学習記憶部15は、データ挿入部15Aによって出力(インポート)された機械学習用の学習データを記憶する。
【0040】
データ挿入部15Aは、真空ポンプ寿命予測装置1の外部から収集した学習データを、学習記憶部15に出力する。この学習データは、新設状態又は様々な劣化状態(使用年数)の複数の学習用の真空ポンプ10Aから収集され、例えば互いに対応付けられた使用年数及びシフト量の情報である。この学習データ収集のための測定装置は、ポータブル型の測定装置であることが好ましい。
【0041】
推論部16は、シフト量計算部13により計算されたシフト量に基づき、真空ポンプ10Bの寿命を推論する。より詳しくは、推論部16は、学習部14による学習結果と、予測対象の真空ポンプ10Bについてシフト量計算部13により計算されたシフト量と、に基づき、真空ポンプ10Bの経年劣化度または寿命を推論する。
【0042】
ここで、経年劣化度を推論する意味について説明する。ユーザは自身で真空ポンプ10Bの実際の使用年数を把握することはできる。仮に真空ポンプ10Bが正常な状態で作動し続けていれば、経年劣化度と実際の使用年数とが略一致するため、経年劣化度を求めなくても実際の使用年数に基づきユーザは真空ポンプ10Bのおおよその寿命を予測することができる。しかし、実際には真空ポンプ10Bが正常な状態で作動し続けない場合もあり、この場合、経年劣化度と実際の使用年数とが異なることから、ユーザが実際の使用年数から真空ポンプ10Bの寿命を適切に予測することは難しい。第一実施形態では、推論部16によって経年劣化度を求めることで、真空ポンプ10Bの寿命を高精度に予測することができる。
【0043】
具体的には、推論部16は、例えば学習記憶部15に記憶された機械学習回帰モデル(図4参照)に基づき、真空ポンプ10Bの寿命を推論することができる。推論部16は、この機械学習回帰モデルにおいて、グラフが収束する直前の経年劣化度を限界寿命Mとし、当該限界寿命Mに対応するシフト量を限界シフト量Lと定義する。限界寿命Mとは、使用年数が0年の新設状態の真空ポンプ10Bの最大寿命である。次に、推論部16は、この機械学習回帰モデルにおいて、真空ポンプ10Bについてシフト量計算部13により計算されたシフト量に対応する経年劣化度を特定する。そして、推論部16は、限界寿命Mと、特定した経年劣化度と、に基づき、現時点での真空ポンプ10Bの寿命(現時点を基準とした取り換えやオーバーホールが必要となるまでの期間)を決定する。
【0044】
推論部16は、例えば限界寿命Mと経年劣化度との差分によって現時点での真空ポンプ10Bの寿命を算出することができる。例えば、限界寿命Mが22年であり経年劣化度が10年であった場合には、現時点での真空ポンプ10Bの寿命は、12年であると算出される。この推論部16によって算出される寿命は、実際の使用年数よりも経年劣化が進んでいた場合に、実際の使用年数から想定される寿命(例えば、実際の使用年数が3年であり限界寿命Mが22年である場合には19年と想定される。)よりも短い。なお、推論部16は、シフト量が限界シフト量L以上である場合(特定した経年劣化度が限界寿命M以上である場合)には、真空ポンプ10Bが寿命を迎えたものと判定する。
【0045】
また、推論部16は、学習部14により学習が行われ、学習記憶部15に記憶される学習結果が更新される度に、その学習結果、及び、シフト量計算部13により計算されたシフト量に基づき、(過去の推論に遡って再計算を行い)予測対象の真空ポンプ10Bの経年劣化度または寿命を推論し、推論結果を更新する。推論部16による推論結果は、表示指令部19に出力される。
【0046】
閾値設定部17(受付部)は、学習用の真空ポンプ10Aの状態情報の入力をユーザから受け付ける。閾値設定部17は、ユーザが、真空ポンプ10Aの状態情報を入力可能なユーザインターフェースを有する。閾値設定部17は、当該ユーザインターフェースからユーザが入力した当該状態情報に基づき、学習部14による学習の基準となる条件としての閾値を自動的に計算して設定し、閾値記憶部18に出力する。状態情報は、真空ポンプ10Aの経年による状態を示す情報であって、例えば、真空ポンプ10Aの使用年数、製造年月日、オーバーホールの年月日等が挙げられる。学習の基準となる条件としての閾値は、例えば真空ポンプ10Aの使用年数である。例えばユーザが状態情報として使用年数を入力した場合は、入力された使用年数がそのまま当該閾値として用いられる。また、例えばユーザが状態情報として製造年月日を入力した場合は、現実の年月日との差を計算することにより得られた使用年数が当該閾値として用いられる。なお、閾値設定部17は、ユーザ自身から当該閾値の入力を受け付け、受け付けた当該閾値をそのまま設定してもよい。
【0047】
閾値設定部17は、ユーザにより状態情報の入力を受け付ける度、閾値を設定変更する。ユーザが状態情報の入力を再度行う場合としては、例えば、学習させる真空ポンプ10Aの数を追加した場合や、先に入力した状態情報に比して実際の劣化状態が良くなかったことが分かった場合に状態情報を入力し直す場合等が挙げられる。
【0048】
閾値記憶部18は、閾値設定部17により計算された閾値を記憶する。
【0049】
表示指令部19(出力部)は、推論部16にて推論された、測定対象の真空ポンプ10Bの経年劣化度または寿命を表示する表示指令を、表示装置31に出力する。表示指令部19は、推論部16による推論結果(経年劣化度または寿命)が更新される度に、更新された推論結果を表示する表示指令を出力する。表示装置31は、グラフィカルユーザインターフェース(画面)を有し、表示指令部19から出力された表示指令に従って、経年劣化度または寿命を表示する。表示装置31は、表示指令が出力される度(推論結果が更新される度)に、表示内容を更新する。なお、表示指令部19は、表示指令に限らず、例えばスピーカ等の音出力装置(図示略)に対して、推論結果を音声として出力する音出力指令を出力するものとしてもよい。
【0050】
《学習時の処理》
次に、真空ポンプ寿命予測装置1による学習時の処理について、図5のフローチャートを用いて説明する。
【0051】
(ステップSP1)
閾値設定部17が、ユーザにより入力された真空ポンプ10Aの状態情報に基づき、学習部14による学習の基準となる条件としての閾値(使用年数)を設定する。その後、処理は、ステップSP2の処理へ移行する。
【0052】
(ステップSP2)
ユーザの操作により、真空ポンプ寿命予測装置1の測定開始ボタン(図示略)が押されることで測定を開始する。その後、処理は、ステップSP3の処理へ移行する。
【0053】
(ステップSP3)
データ取得部11が、振動加速度センサ21,22,23によってそれぞれ検出された真空ポンプ10Aの作動中の各振動加速度データを取得し、これらをA/D変換する。その後、処理は、ステップSP4の処理へ移行する。
【0054】
(ステップSP4)
周波数解析部12が、ステップSP3の処理においてデータ取得部11により取得及びA/D変換された各振動加速度データに対して、FFT処理を行い、スペクトル値を求める。その後、処理は、ステップSP5の処理へ移行する。
【0055】
(ステップSP5)
シフト量計算部13が、ステップSP4の処理において求められたスペクトル値に基づき、真空ポンプ10Aについてのシフト量を計算する。その後、処理は、ステップSP6の処理へ移行する。
【0056】
(ステップSP6)
学習部14が、ステップSP5の処理において計算されたシフト量と、ステップSP1の処理において設定された閾値(使用年数)と、に基づき、真空ポンプ10Aの経年劣化度とシフト量との関係を機械学習する。その後、処理は、ステップSP7へ移行する。
【0057】
(ステップSP7)
学習部14は、ユーザの操作により条件の変更があったか否かを判定する。条件の変更としては、ユーザの入力によって閾値設定部17により閾値が再設定されたことを含む。当該判定が肯定判定された場合には、処理はステップSP8の処理へ移行し、当該判定が否定判定された場合には、処理はステップSP9の処理へ移行する。
【0058】
(ステップSP8)
学習部14が、ステップSP7の処理において変更された条件に基づき再学習する。その後、処理は、ステップSP9の処理へ移行する。
【0059】
(ステップSP9)
学習部14が、ユーザの操作により、真空ポンプ寿命予測装置1の測定終了ボタン(図示略)押されたか否かを判定する。当該判定が肯定判定された場合は、図5のフローチャートの処理が終了し、当該判定が否定判定された場合は、処理はステップSP3の処理へ移行する。
【0060】
《推論時の動作》
次に、真空ポンプ寿命予測装置1による推論時の処理について、図6のフローチャートを用いて説明する。
【0061】
(ステップSP11)
ユーザの操作により、真空ポンプ寿命予測装置1の測定開始ボタン(図示略)がONとなり測定を開始する。その後、処理は、ステップSP12の処理へ移行する。
【0062】
(ステップSP12)
データ取得部11が、振動加速度センサ21,22,23によって検出された真空ポンプ10Bの作動中の各振動加速度データを取得し、これらをA/D変換する。その後、処理は、ステップSP13の処理へ移行する。
【0063】
(ステップSP13)
周波数解析部12が、ステップSP12の処理においてデータ取得部11により取得及びA/D変換された各振動加速度データに対して、FFT処理を行い、スペクトル値を求める。その後、処理は、ステップSP14の処理へ移行する。
【0064】
(ステップSP14)
シフト量計算部13が、ステップSP13の処理において求められたスペクトル値に基づき、真空ポンプ10Bについてのシフト量を計算する。その後、処理は、ステップSP15の処理へ移行する。
【0065】
(ステップSP15)
推論部16が、ステップSP14において計算されたシフト量、及び、図5のステップSP6の処理における学習部14による学習結果に基づき、真空ポンプ10Bの経年劣化度及び寿命を推論する。その後、処理は、ステップSP16の処理へ移行する。
【0066】
(ステップSP16)
表示指令部19が、ステップSP16の処理において推論された、真空ポンプ10Bの経年劣化度または寿命を表示する表示指令を、表示装置31に出力し、表示装置31がこれを表示する。その後、処理は、ステップSP17の処理へ移行する。
【0067】
(ステップSP17)
推論部16が、ユーザの操作により条件の変更があったか否かを判定する。条件の変更としては、ユーザの入力によって閾値設定部17により閾値が再設定されたことや、データ挿入部15Aから学習記憶部15へ学習データが追加されたこと等を含む。当該判定が肯定判定された場合は、処理はステップSP18の処理へ移行し、当該判定が否定判定された場合は、処理はステップSP12の処理へ移行する。
【0068】
(ステップSP18)
学習部14が、ステップSP17の処理において変更された条件に基づき再学習する。その後、処理は、ステップSP19の処理へ移行する。
【0069】
(ステップSP19)
推論部16が、ステップSP18の処理において再学習された結果に基づき、真空ポンプ10Bの使用年数及び寿命を再推論(推論結果を更新)する。その後、処理は、ステップSP20の処理へ移行する。
【0070】
(ステップSP20)
表示指令部19が、ステップSP19の処理において再推論された、真空ポンプ10Bの経年劣化度または寿命を表示する表示指令を、表示装置31に出力し、表示装置31がこれを再表示(表示更新)する。その後、処理は、ステップSP12へ移行する。
以上が第一実施形態に係る真空ポンプ寿命予測装置1の処理の説明である。
【0071】
《作用効果》
第一実施形態では、真空ポンプ10Bの作動中の振動を検出する振動加速度センサ21,22,23により検出されたデータを取得するデータ取得部11(取得部)と、データ取得部11により取得されたデータに基づき、真空ポンプ10Bの固有振動周波数の基準値からのシフト量(変化量)を計算するシフト量計算部13(計算部)と、シフト量計算部13により計算された変化量に基づき、真空ポンプ10Bの寿命を推論する推論部16と、を備える。
【0072】
この構成によれば、真空ポンプ10Bの固有振動周波数の基準値からの変化量に基づき、真空ポンプ10Bの寿命を推論することができる。真空ポンプ10Bの固有振動周波数は、種々のプロセス条件に対して一定であるため、従来技術のようにプロセス条件毎に複数の基準値を設ける必要がなく、真空ポンプ10Bの寿命を容易に予測することができる。
【0073】
また、第一実施形態では、学習用の真空ポンプ10Aの固有振動周波数の基準値からのシフト量(変化量)と、学習用の真空ポンプ10Aの状態情報とに基づき、寿命を予測するための学習を行う学習部14を更に備え、推論部16は、学習部14による学習結果と、シフト量計算部13により計算されたシフト量とに基づき、寿命を推論する。
【0074】
この構成によれば、学習用の真空ポンプ10Aについてのシフト量及び使用状態に基づく学習結果から真空ポンプ10Bの寿命を推論するので、寿命を高精度で予測することができる。
【0075】
また、第一実施形態では、状態情報の入力をユーザから受け付ける閾値設定部17(受付部)を更に備え、学習部14は、閾値設定部17により状態情報の入力を受け付ける度に学習を行い、推論部16は、学習部14により学習が行われる度に、学習部14による学習結果と、シフト量計算部13により計算されたシフト量と、に基づき、寿命を推論する。
【0076】
この構成によれば、ユーザにより状態情報(使用年数等)の入力を受け付ける度に再学習し、再学習される度に再学習された結果に基づいて真空ポンプ10Bの寿命を推論することができる。よって、ユーザの入力に応じて動的に学習及び推論を行うことができ、ユーザの利便性の向上を図ることができる。
【0077】
また、第一実施形態では、推論部16により推論した寿命を出力する表示指令部19(出力部)を更に備える。
【0078】
この構成によれば、推論した寿命を外部の表示装置31に出力して可視化したり、音声として出力したりすることにより、ユーザに寿命を認識させることができる。
【0079】
また、第一実施形態に係るプログラムは、真空ポンプ10Bの作動中の振動を検出する振動加速度センサ21,22,23と通信可能なコンピュータとしての真空ポンプ寿命予測装置1を、真空ポンプ10Bの作動中の振動を検出する振動加速度センサ21,22,23により検出されたデータを取得するデータ取得部11(取得部)、データ取得部11により取得されたデータに基づき、真空ポンプ10Bの固有振動周波数の基準値からのシフト量(変化量)を計算するシフト量計算部13(計算部)、シフト量計算部13により計算された変化量に基づき、真空ポンプ10Bの寿命を推論する推論部16、として機能させる。
【0080】
この構成によれば、真空ポンプ10Bの固有振動周波数の基準値からの変化量に基づき、真空ポンプ10Bの寿命を推論することができる。真空ポンプ10Bの固有振動周波数は、種々のプロセス条件に対して一定であるため、従来技術のようにプロセス条件毎に複数の基準値を設ける必要がなく、真空ポンプ10Bの寿命を容易に予測することができる。
【0081】
===第二実施形態===
次に、第二実施形態に係る真空ポンプ寿命予測装置について説明する。第二実施形態は、学習部14において上記同様の機械学習回帰に加えて統計回帰を用いる点で、第一実施形態と異なる。なお、以下では、第一実施形態と重複する記載は極力省略し、異なる部分を中心に説明する。以下で説明しない第二実施形態に係る真空ポンプ寿命予測装置の構成及び機能は、第一実施形態に係る真空ポンプ寿命予測装置1の構成及び機能と同様である。
【0082】
第二実施形態においては、統計用の真空ポンプについて予め取得した統計回帰モデルを記憶する統計記憶部を更に備える。この統計回帰モデルは、例えば、統計用の真空ポンプについての固有振動周波数の基準値からのシフト量(変化量)と、当該真空ポンプの経年劣化度との対応関係を示すデータである。この統計回帰モデルは、統計用の真空ポンプについての固有振動周波数の基準値からのシフト量と、当該統計用の真空ポンプについての使用年数(状態情報)と、の実測値に基づく回帰分析によって算出される。
【0083】
図7は、第二実施形態に係る真空ポンプ寿命予測装置において記憶される統計回帰モデルの一例を示すグラフである。図7のグラフの横軸は、固有振動周波数の基準値からのシフト量[Hz]、図7のグラフの縦軸は経年劣化度[年]を示す。図7においては、破線で示される放物線状のグラフが、統計回帰モデルを示し、推論部16による推論に用いられる。なお、図7における実線の丸印は、実測値を示している。
【0084】
推論部16は、統計回帰モデルを用いて寿命を推論する場合には、例えば図7に示すような統計回帰モデルにおいて、真空ポンプ10Bについてシフト量計算部13により計算されたシフト量に対応する経年劣化度を特定する。例えば、推論部16は、特定した経年劣化度と予め設定された限界寿命との差分を、現時点での真空ポンプ10Bの寿命として決定することができる。
【0085】
以上、第二実施形態に係る真空ポンプ寿命予測装置1においても、第一実施形態同様、真空ポンプ10Bの固有振動周波数の基準値からの変化量に基づき、真空ポンプ10Bの寿命を容易に予測することができる。
【0086】
===変形例===
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。すなわち、上記の具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。また、前述した実施形態及び後述する変形例が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【0087】
例えば、第一実施形態及び第二実施形態では、振動加速度センサ21,22,23を用いて三軸方向の振動加速度データをそれぞれ検出するものとしたが、1つの振動加速度センサで一方向の振動加速度データを検出するようにしてもよい。その場合、シフト量計算部13では三次元幾何学的距離の計算は省略する。
【0088】
また、第一実施形態及び第二実施形態では、周波数解析部12にて求められた各スペクトル値に基づき、真空ポンプ10の固有振動周波数の基準値(新設状態のときの値)からのシフト量を計算するものとしたが、新設状態における固有振動周波数の絶対値で正規化したピーク周波数の相対値を計算し、これをシフト量の代わりに用いて、学習部14の学習及び推論部16の推論を行うようにしてもよい。
【0089】
また、第一実施形態及び第二実施形態では、表示指令部19(出力部)が、表示装置31や音出力装置に対して指令を出力するものとしたが、PLCの特定レジスタやデバイスに書き込む形であってもよい。
【0090】
また、第一実施形態では学習部14が機械学習を行う例を説明したが、この機械学習については、第一実施形態で説明したような教師あり学習に限らず、教師無し学習であってもよい。
【0091】
また、推論部16による寿命の推論方法として、第一実施形態では、機械学習回帰モデルを用いた方法ついて説明し、第二実施形態では、統計回帰モデルを用いた方法について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、機械学習回帰モデルと統計回帰モデルとを適宜組み合わせて用いて寿命を推定してもよい。また、推論部16は、シフト量に所定の閾値を設定し、シフト量計算部13により計算されたシフト量と当該閾値とを比較することによって寿命を推定してもよい。
【符号の説明】
【0092】
1…真空ポンプ寿命予測装置(コンピュータ)、10…真空ポンプ、11…データ取得部(取得部)、13…シフト量計算部(計算部)、14…学習部、16…推論部、17…閾値設定部(受付部)、19…表示指令部(出力部)

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7