(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033689
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】保護管
(51)【国際特許分類】
H02G 9/02 20060101AFI20240306BHJP
H02G 1/10 20060101ALI20240306BHJP
F16L 57/00 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
H02G9/02
H02G1/10
F16L57/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137436
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】505091167
【氏名又は名称】北勢工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084375
【弁理士】
【氏名又は名称】板谷 康夫
(74)【代理人】
【識別番号】100142077
【弁理士】
【氏名又は名称】板谷 真之
(72)【発明者】
【氏名】北山 秀晴
【テーマコード(参考)】
3H024
5G352
5G369
【Fターム(参考)】
3H024AA04
3H024AB02
3H024AC03
5G352EA07
5G369AA19
5G369BA04
5G369BB02
5G369DC05
5G369DC09
(57)【要約】
【課題】保護管において、ケーブル等の線状体に容易に取り付けることができて作業性が良いものとする。
【解決手段】保護管1は、一対の半割管体2の凹面側を互いに対向するよう配設させて成る。半割管体2は、半円筒状に形成された直管部3と、直管部3の後端の小径接続部4と、前端の大径接続部5と、一対の半割管体2を互いに係合させる係合部6と、を有し、係合部6は、大径接続部5の一縁部に設けられた突出部7と、大径接続部5の他縁に設けられた突出部7を保持する保持部8と、を有する。保持部8は、対向する半割管体2の突出部7を囲うように保持する鉤状部80を有し、突出部7の前後面を保持することなく開放している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の半割管体の凹面側を互いに対向するよう配設させて成る保護管であって、
前記半割管体は、半円筒状に形成された直管部と、前記直管部の後端に設けられ該直管部よりも拡径した小径接続部と、前記直管部の前端に設けられ他の前記保護管の前記小径接続部と連結する大径接続部と、対向する前記大径接続部との接合面の外縁に設けられて前記一対の半割管体を互いに係合させる係合部と、を有し、
前記係合部は、前記大径接続部の一方の縁部に設けられた突出部と、前記大径接続部の他方の縁部に設けられ前記対向する半割管体の前記突出部を保持する保持部と、を有し、
前記突出部は、前記接合面に対し正方向の高さ差を持った第1面と、前記第1面と平行な第2面と、前記突出部の前面を成す第3面と、前記突出部の後面を成す第4面と、これら第1面~第4面と直交し前記突出部の突出端面を成す第5面と、を有し、
前記保持部は、前記対向する半割管体の前記突出部の前記第1面、前記第2面及び前記第5面を囲うように保持する鉤状部を有し、前記第3面及び前記第4面を保持することなく開放していることを特徴とする保護管。
【請求項2】
前記第1面及び前記第3面は、前方湾曲面により繋がれており、
前記第2面及び前記第4面は、後方湾曲面により繋がれていることを特徴とする請求項1に記載の保護管。
【請求項3】
前記保持部は、前記対向する半割管体の前記突出部を前記鉤状部に導き、前記対向する半割管体の前記後方湾曲面と摺接する傾斜片を有することを特徴とする請求項2に記載の保護管。
【請求項4】
前記半割管体は、対向する前記直管部との接合面の外縁に設けられた複数の係止突起を有し、
前記係止突起は、前記直管部の一方の縁部に該直管部の長手方向に沿って2つ、前記直管部の他方の縁部に1つ設けられ、
前記一対の半割管体が連結されるとき、前記直管部の一方の縁部に設けられた前記2つの係止突起によって、前記直管部の他方の縁部に設けられた前記1つの係止突起の前面及び後面が挟持されることを特徴とする請求項1に記載の保護管。
【請求項5】
前記直管部の一方の縁部に設けられた前記2つの係止突起のうち、前方に設けられた前記係止突起は、後方に設けられた前記係止突起よりも幅長に形成されていることを特徴とする請求項4に記載の保護管。
【請求項6】
前記一対の半割管体は、互いに同じ形状であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の保護管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブル等の線状体を覆って保護する保護管に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、島から島への通信用又は電力用の伝送路として、海底に敷設又は埋設されたケーブルが用いられている。このようなケーブルは、一般的に、海流や波に流されることによる岩礁等への接触、或いは、往来する船舶の船底や船舶から下ろされた錨等への接触による損傷を防ぐために、保護管により覆われて保護されている。
【0003】
このような保護管は、例えば、対を成す半割管体を対向配置させて成る円筒状に形成される。保護管をケーブルに取り付けるには、ケーブルの側周を一側及び他側から覆うように一対の半割管体を配置し、これら半割管体同士をボルトにより互いに固定する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したような保護管では、ボルトにより一対の半割管体同士を固定する作業に大きな手間が掛かり、作業性が良いとは言えない。例えば、泥地やヘドロが多い海底等、海水の透明度が低い環境下では、海中の作業者は殆ど手さぐりでの作業を余儀なくされることもあり、ボルトのねじ込みが困難になることがある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するものであって、ケーブル等の線状体に容易に取り付けることができて作業性が良い保護管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、一対の半割管体の凹面側を互いに対向するよう配設させて成る保護管であって、前記半割管体は、半円筒状に形成された直管部と、前記直管部の後端に設けられ該直管部よりも拡径した小径接続部と、前記直管部の前端に設けられ他の前記保護管の前記小径接続部と連結する大径接続部と、対向する前記大径接続部との接合面の外縁に設けられて前記一対の半割管体を互いに係合させる係合部と、を有し、前記係合部は、前記大径接続部の一方の縁部に設けられた突出部と、前記大径接続部の他方の縁部に設けられ前記対向する半割管体の前記突出部を保持する保持部と、を有し、前記突出部は、前記接合面に対し正方向の高さ差を持った第1面と、前記第1面と平行な第2面と、前記突出部の前面を成す第3面と、前記突出部の後面を成す第4面と、これら第1面~第4面と直交し前記突出部の突出端面を成す第5面と、を有し、前記保持部は、前記対向する半割管体の前記突出部の前記第1面、前記第2面及び前記第5面を囲うように保持する鉤状部を有し、前記第3面及び前記第4面を保持することなく開放していることを特徴とする。
【0008】
上記保護管において、前記第1面及び前記第3面は、前方湾曲面により繋がれており、前記第2面及び前記第4面は、後方湾曲面により繋がれていることが好ましい。
【0009】
上記保護管において、前記保持部は、前記対向する半割管体の前記突出部を前記鉤状部に導き、前記対向する半割管体の前記後方湾曲面と摺接する傾斜片を有することが好ましい。
【0010】
上記保護管において、前記半割管体は、対向する前記直管部との接合面の外縁に設けられた複数の係止突起を有し、前記係止突起は、前記直管部の一方の縁部に該直管部の長手方向に沿って2つ、前記直管部の他方の縁部に1つ設けられ、前記一対の半割管体が連結されるとき、前記直管部の一方の縁部に設けられた前記2つの係止突起によって、前記直管部の他方の縁部に設けられた前記1つの係止突起の前面及び後面が挟持されることが好ましい。
【0011】
上記保護管において、前記直管部の一方の縁部に設けられた前記2つの係止突起のうち、前方に設けられた前記係止突起は、後方に設けられた前記係止突起よりも幅長に形成されていることが好ましい。
【0012】
上記保護管において、前記一対の半割管体は、互いに同じ形状であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の保護管によれば、一方の半割管体の突出部が、他方の半割管体の保持部の鉤状部で囲われた状態となるので、一対の半割管体の上下方向の位置ズレを規制することができる。また、突出部の第1面が半割管体の接合面に対して高さがあるので、これらの段差によって形成される壁部が鉤状部と当接することにより、左右方向の位置ズレを規制することができる。更に、一対の半割管体を前後方向には規制していないので、上段の半割管体をスライドさせ、上段の半割管体を回動させることで、突出部と保持部とを係合させることができる。従って、ボルトやナットを用いることなく、半割管体をスライド、回動させるという簡易な作業により、ケーブル等の線状体に容易に保護管を取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る保護管の一部分解斜視図。
【
図2】上記保護管を構成する一対の半割管体の斜視図。
【
図3】上記半割管体の
図2とは異なる角度における斜視図
【
図4】(a)は上記半割管体の左側面図、(b)は同半割管体の平面図、(c)は右側面図、(d)は(c)に対応する断面図、(e)は底面図、(f)は正面図、(g)は背面図。
【
図5】複数の上記保護管を直線状に連結する手順を示す斜視図。
【
図6】(a)(b)(c)は、複数の上記保護管を互いに連結する際の手順を説明するための側面図。
【
図7】(a)(b)(c)は、
図6とは異なる手順を説明するための側面図。
【
図8】(a)は上記保護管の斜視図、(b)は右側面図、(c)は断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態に係る保護管について、図面を参照して説明する。
図1に示すように、保護管1は、全体として略円筒状に形成され、その円筒軸を含む面で半割された一対の半割管体2により構成される。保護管1は、被保護対象を所定期間にわたって十分に保護できるだけの剛性と耐久性があれば、その材質は特に限定されず、例えば、樹脂製又は鋳鉄製とされる。
【0016】
一対の半割管体2は、互いに同じ形状を有し、各々の凹面側を互いに対向するように配設させてケーブルC等の線状体の側周を2方向から覆う。一対の半割管体2は、互いに連結されるとき、それぞれ凹面の両端を成す接合面20において当接する。線状体は、図例では1本の断面円形状のケーブルCとしているが、例えば、複数本のケーブルや、断面楕円形状又は扁平形状のケーブル、又は、送水管や送ガス管であってもよい。なお、以下の説明において、先に連結された半割管体2の方を「前」、続いて連結される半割管体2を「後」と言い、図例では、左方向を「前」、右方向を「後」としている。
【0017】
半割管体2は、半円筒状に形成された直管部3と、直管部3の円筒軸方向の後端に設けられた小径接続部4と、直管部3の円筒軸方向の前端に設けられた大径接続部5と、を有する。小径接続部4は、直管部3よりも拡径した構造を有し、図例ではフランジにより構成されている。大径接続部5は、直管部3よりも拡径した袋状、例えば、半円筒状や半球状に形成され、後述するように他の保護管1の小径接続部4に連結される。
【0018】
また、半割管体2は、大径接続部5の接合面20の外縁に設けられて一対の半割管体2を互いに係合させる係合部6を有する。係合部6は、大径接続部5の一方の縁部に設けられた突出部7と、大径接続部5の他方の縁部に設けられて突出部7を保持する保持部8と、を有する。
【0019】
図2、
図3及び
図4(a)乃至(g)に示すように、突出部7は、大径接続部5の前端部分よりも僅かに前方に張り出した位置から、接合面20と平行な側方に突出した短い柱状の部材である。突出部7は、接合面20に対し正方向の高さ差(段差)を持った1面71と、第1面71と平行で第1面71と対峙する面である第2面72と、突出部7の前面を成す第3面73と、突出部7の後面を成す第4面74と、これら第1面71~第4面74と直交し突出部7の突出端面を成す第5面75と、を有する。ここで言う「正方向」とは、対となる半割管体に対向する方向を言う。
【0020】
第1面71とその前端の第3面73とは、緩やかに丸みを帯びた前方湾曲面76により繋がれている。第1面71とその後端の第4面74とは角部により繋がれている。また、第2面72とその後端の第4面74とは、後方湾曲面77により繋がれている。第2面72とその前端の第3面73とは角部により繋がれている。第1面71~第4面74と第5面75との各角部は面取りされている。
【0021】
保持部8は、対向する半割管体2の突出部7の第1面71、第2面72及び第5面73を囲うように保持する鉤状部80を有する。鉤状部80は、接合面20に対し負方向の高さ差(段差)を持ちつつ側方に膨出した受け片81と、受け片81から対向する半割管体2に向けて立設された立設片82と、立設片82の立設端部から半割管体2の内方に屈曲した止め片83と、から成る。すなわち、鉤状部80は、受け片81、立設片82及び止め片83がコの字状に配置された構成となっている。なお、受け片81と接合面20との段差は、突出部7の第1面71と接合面20との段差に対応している。対向する半割管体2が連結されるとき、受け片81は対向する突出部7の第1面71と当接し、立設片82は第5面75と当接し、止め片83は第1面72と当接する。すなわち、突出部7の3面が鉤状部80によって保持されることになり、
図1に示した上下方向の位置ズレ及び左右いずれかの方向への位置ズレが規制される。一方、対向する突出部7の第3面73及び第4面74は、鉤状部80によって保持されることなく開放されている。すなわち、
図1に示した前後方向には規制されていない。
【0022】
保持部8の受け片81は、大径接続部5に沿って設けられている。また、保持部8は、対向する半割管体2の突出部7を鉤状部80に導き、対向する半割管体2の後方湾曲面77と摺接する傾斜片84を有する。また、止め片83における傾斜片84に対向する角部が湾曲面85とされている(
図2、後述する
図6(a)(b)も参照)。また、接合面20と第1面71との段差により壁部78が形成され、接合面20と受け片81との段差により壁部86が形成される(特に
図3参照)。壁部78は内方に面し、壁部86は外方に面し、対向する半割管体2が連結されるとき、これら壁部78、86が当接する(後述する
図8(c)も参照)。これにより、突出部7の3面では規制されていなかった左右方向への位置ズレも規制される。また、受け片81が接合面20に対して窪んでいるので、傾斜片84の後方には壁部87が形成される。この壁部87は、壁部78の反対側の面を構成する壁部79と当接し、これにより左右方向への位置ズレがより確実に規制される。
【0023】
また、半割管体2は、対向する半割管体2の直管部3との接合面20の外縁に設けられた複数の係止突起9を有する。これらの係止突起9は、直管部3の一方の縁部に直管部3の長手方向に沿って2つ設けられた係止突起9a、9bと、直管部3の他方の縁部に1つ設けられた係止突起9cと、から成る。一対の半割管体2が連結されるとき、直管部3の一方の縁部に設けられた2つの係止突起9a、9bによって、直管部3の他方の縁部に設けられた1つの係止突起9cの前面及び後面が挟持される(
図1参照)。また、2つの係止突起9a、9bのうち、前方に設けられた係止突起9aは、後方に設けられた係止突起9bよりも幅長に形成されている。
【0024】
次に、上記のように構成された保護管1において、一対の半割管体2を連結する手順を説明する。ここでは、
図5に示すように、前隣の保護管1における半割管体2の小径接続部4の下に、後隣下段の半割管体2Aが、ケーブルCの下半面を被覆するように配置されており、この後隣下段の半割管体2Aに、後隣上段の半割管体2Bを連結される例に基づいて説明する。本実施形態の保護管1では、後隣上段の半割管体2Bを前方から後方にスライド移動させながら後隣下段の半割管体2Aに連結させる前方スライドパターン(実線矢印)と、後隣上段の半割管体2Bを後方から前方に差し込むことで後隣下段の半割管体2Aに連結させる後方スライドパターン(一点鎖線矢印)との2パターンにより、半割管体2A、2Bを連結させることができる。
【0025】
図6(a)乃至(c)は、前方スライドパターンで半割管体2A、2Bを連結させる手順を示す。ここでは、保護管1の右側面からの視点において、突出部7及び保持部8の構成を一部可視化して表示している。
図6(a)に示すように、前隣の保護管1の直管部3の上に、後隣上段の半割管体2Bの大径接続部5を配置し、小径接続部4側を持ち上げた状態で、後隣上段の半割管体2Bを後方へスライドしていく。上段の半割管体2Bは、下段の半割管体2Aに対して、例えば、20~40°の角度で配置される。
【0026】
図6(a)に示す右側面図では、下段の半割管体2Aの突出部7(ハッチング描画)と、上段の半割管体2Bの保持部8との位置合わせがなされている構成例を示しているが、図示していない左側面においては、上段の半割管体2Bの突出部7と、下段の半割管体2Aの保持部8との位置合わせがなされる。
【0027】
上段の半割管体2Bを後方へスライドしていくと、
図6(b)に示すように、上段の半割管体2Bの保持部8の止め片83が、下段の半割管体2Aの突出部7の下を通り抜ける。このとき、止め片83の後方の角部が湾曲面85となっているので、止め片83は、突出部7の下面と摺接しながら、突出部7をスムーズに通り抜けることができる。
【0028】
続いて、小径接続部4側を倒していくように上段の半割管体2Bを回動させて、その傾斜を緩めていことで、下段の半割管体2A上に、上段の半割管体2Bを連結させる。ここで、下段の半割管体2Aの突出部7には後方湾曲面77が、上段の半割管体2Bの止め片83には湾曲面85が夫々設けられているので、上段の半割管体2Bをスムーズに回動させることができる。
【0029】
そして、上段の半割管体2Bを、下段の半割管体2Aに向かい合わせたとき、一方の半割管体2の突出部7の第2面72が、他方の半割管体2の止め片83と当接するので、半割管体2A、2Bの大径接続部5側の端部(前端)は、互いに上下方向の移動を規制することになる。このとき、前隣の保護管1の小径接続部4が、後隣の保護管1の大径接続部5によって被覆されるので、前隣の保護管1の小径接続部4の端部(後端)も、互いに上下方向及び左右方向の移動が規制され、前隣の保護管1の固定が完了する。また、壁部78と壁部86とが当接し、壁部79と壁部87とが当接する。これにより半割管体2の前端の左右方向の位置ズレも規制される(後述する
図8(a)(c)参照)。
【0030】
また、上段の半割管体2の係止突起9cが、下段の半割管体2の係止突起9a、9bの間に嵌まり込む。これにより、半割管体2A、2Bが前後方向の位置ズレが規制される。また、係止突起9a、9b、9cは、いずれも直管部3の接合面20よりも上下方向に突出しているので、半割管体2A、2Bの左右方向の位置ズレも規制される。なお、この状態では、半割管体2A、2Bの小径接続部4側端部(後端)の上下方向の位置ズレは規制されていないが、更に後隣の保護管1の大径接続部5を被せることで、この後端側の上下方向の位置ズレも規制することができる。
【0031】
次に、
図7(a)乃至(c)は、後方スライドパターンで半割管体2A、2Bを連結させる手順を示す。後方スライドパターンでは、
図7(a)に示すように、後隣下段の半割管体2Aより僅かに後方の位置に置いて、後隣上段の半割管体2Bを傾斜させて、その前端を、前隣の保護管1の直管部3と当接させる。そして、上段の半割管体2Bを、その止め片83が下段の半割管体2Aの突出部7の下側に入り込むように、後方から前方へ差し込むようにスライドさせていく。
【0032】
なお、
図7(a)乃至(c)に示す右側面側では、上段の半割管体2Bの止め片83を下段の半割管体2Aの突出部7の下側に差し込む動作となるが、左側面では、上段の半割管体2Bの突出部7を、下段の半割管体2Aの止め片83の下側に差し込む動作となる(
図2参照)。このとき、保持部8には、傾斜片84が設けられているので、突出部7をスムーズに鉤状部80に導くことができる。
【0033】
続いて、
図7(b)に示すように、上段の止め片83が下段の突出部7と接触するまで上段の半割管体2をスライドさせた位置で上段の半割管体2を回動させる。そして、
図7(c)に示すように、上段の半割管体2Bを、下段の半割管体2Aに向かい合わせる。これにより、前方スライドパターンと同様に、半割管体2A、2Bを連結させることができる。
【0034】
図8(a)乃至(c)は、保護管1において、一対の半割管体2が連結された状態を示す。このように、本実施形態の保護管1では、突出部7が、保持部8の鉤状部80で囲われた状態となるので、一対の半割管体2の上下方向の位置ズレを規制することができる。また、突出部7の第1面71が半割管体2の接合面20に対して高さがあるので、これらの段差によって形成される壁部78が壁部86と当接し、また、壁部79と壁部87とが当接することにより、左右方向の位置ズレを規制することができる。また、係止突起9a、9b、9cによって、一対の半割管体2の前後左右の位置ズレを規制することができる。また、係止突起9a、9b、9cを係合させていない状態では、一対の半割管体2は前後方向には規制されていないので、
図6及び
図7で示したように、上段の半割管体2をスライドさせることができる。そして、突出部7と保持部8とを近接させ、上段の半割管体2を回動させることで、突出部7と保持部8とを係合させることができる。このように、本実施形態の保護管1では、ボルトやナットを用いることなく、半割管体2をスライド、回動させるという簡易な作業により、ケーブル等の線状体に容易に保護管1を取り付けることができる。このような作業は、殆ど手さぐりでの作業も可能であり、作業者は、沼地やヘドロが多い海底等の海水の透明度が低い環境下であっても、容易に保護管1を設置することができる。更に、上述したように、前方スライドパターン又は後方スライドパターンを用いることができるので、例えば、設置場所の地形に応じて、半割管体2の連結手順を切り替えることができる。
【0035】
また、保護管1を成す一対の半割管体2は、互いに同じ形状である。そのため、海中で作業する作業者は、半割管体2が上段用であるか、又は下段用であるかを区別する必要がなく、船上の作業者も海中の作業者に連続的に半割管体2を供給することができ、作業効率が向上する。また、半割管体2を成型するための金型を複数、用意する必要もないので、半割管体2の製造効率も向上する。
【0036】
なお、本発明に係る保護管は、上記実施形態に限定されず種々の変形が可能である。本実施形態の保護管1は、ボルトやナットを用いることなく半割管体2を連結できることが特徴であるが、ボルトやナットを使用可能なように、適宜にボルト穴(不図示)を設けることもできる。特に、最後端の半割管体2の小径接続部4側の端部(後端)は、その後隣が存在しないので、そのままでは固定されない状態となる。固定されない端部が、結束バンド等で固定することもできるが、例えば、小径接続部4側の端部にボルト穴を設けた変形例が採用されてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 保護管
2、2A、2B 半割管体
20 接合面
3 直管部
4 小径接続部
5 大径接続部
6 係合部
7 突出部
71 第1面
72 第2面
73 第3面
74 第4面
75 第5面
76 前方湾曲面
77 後方湾曲面
8 保持部
80 鉤状部
84 傾斜片
9Aa,9b、9c 係止突起