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  • 特開-抗菌抗カビ性布帛 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000337
(43)【公開日】2024-01-05
(54)【発明の名称】抗菌抗カビ性布帛
(51)【国際特許分類】
   D06M 13/355 20060101AFI20231225BHJP
   D06M 101/32 20060101ALN20231225BHJP
【FI】
D06M13/355
D06M101:32
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099069
(22)【出願日】2022-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】000107907
【氏名又は名称】セーレン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】西東 祐樹
【テーマコード(参考)】
4L033
【Fターム(参考)】
4L033AA07
4L033AB01
4L033AC10
4L033BA57
(57)【要約】
【課題】本発明は、MRSAやクロカビ、アオカビ、クロコウジカビ等の幅広い菌に対して強い抗菌性ならびに抗カビ性を示し、柔軟性および洗濯耐久性に優れた抗菌抗カビ性布帛を提供することを目的とする。
【解決手段】ポリエステル繊維を含有する抗菌抗カビ性布帛であって、抗菌抗カビ成分が、前記ポリエステル繊維に分散された状態で付着しており、前記抗菌抗カビ成分の固形物が、前記ポリエステル繊維の表面の0.01mmあたりに20~300個存在するように付着している抗菌抗カビ性布帛。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル繊維を含有する抗菌抗カビ性布帛であって、
抗菌抗カビ成分が、前記ポリエステル繊維に分散された状態で付着しており、
前記抗菌抗カビ成分の固形物が、前記ポリエステル繊維の表面の0.01mmあたりに20~300個存在するように付着している抗菌抗カビ性布帛。
【請求項2】
洗濯50回後の前記抗菌抗カビ成分の固形物が、0.01mmあたりに3個以上存在する請求項1に記載の抗菌抗カビ性布帛。
【請求項3】
前記抗菌抗カビ成分が有機系薬剤である請求項1または2に記載の抗菌抗カビ性布帛。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯耐久性を有する抗菌抗カビ性布帛に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、医療施設や介護施設は高い衛生レベルが求められており、院内感染対策が必須である。このような施設への入所者は健常者より比較的免疫力が低く、健常者では病原性を発揮しない病原体が、免疫が低下した人に病原性を発揮する日和見感染症の危険性がある。そのため、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)等の薬剤耐性菌、緑膿菌、セラチア、肺炎桿菌、エンテロバクター等のグラム陰性桿菌、クロコウジカビ(アスペルギルス)、アオカビ(ペニシリウム)、クロカビ(クラドスポリウム)、白癬菌(トリコフィトン)、カンジダ等の真菌が施設内で想定以上に繁殖し、入所者に晒されることを防ぐ必要がある。そのため、現場で使用する設備や製品は抗菌性や抗カビ性を有することもしくは、定常的な洗浄や汚染時の応急的な洗浄を容易に行えることが求められている。
【0003】
例えば、特許文献1では抗菌性および抗カビ性を有するポリエステル繊維が提案されている。ゼオライトに銀や亜鉛が担持された無機系抗菌剤を含むマスターバッチを作製し、ポリエステル樹脂と溶融混錬して紡糸することで得られる繊維は、表層部における無機系抗菌剤粒子の存在個数が、中心部における無機系抗菌剤粒子の存在個数の1.5倍以上であり、含有率が1~4重量%となることを特徴としており、抗カビ性能の耐久性に優れた繊維を得ることができる。しかしながら、上述の製造方法は、黄色ブドウ球菌と肺炎桿菌に対する抗菌性評価ならびに、白癬菌に対する抗カビ性評価であり、その他の菌種への対応が求められている。また、紡糸段階で抗菌剤の添加量を確定させているため、要求性能や生産数量、コストに合わせたカスタマイズは困難であるとともに、抗菌剤粒子の含有量が多いために風合いが硬くなってしまう。施設向けの衣服やカバー材等に用いた際に風合いが硬いと、肌への物理的刺激が強くなってしまうことで使用者がストレスを感じやすくなり、商品性は大きく損なわれる。さらに、カーテンのようなインテリア製品では適当なドレープ性が求められており、風合いが硬くなってしまうと柔軟性が損なわれ、製品として成り立たない。
【0004】
特許文献2では、洗濯10回後に黄色ブドウ球菌、大腸菌、モラクセラ菌に対する抗菌性を有する撥水布帛の提案がされている。しかしながら、撥水性を有するため、下着やシーツ等の吸水性が必要とされる製品には適用できず、用途が限定されてしまう。
【0005】
また、特許文献3では、抗菌抗カビ加工用の分散液の濃度調整、粒子径制御、異物混入を抑えることで、繊維類の洗濯耐久性と粒子の安定性、着色防止を両立する抗菌抗カビ性を施す技術が提案されている。しかしながら、アオカビや白癬菌、MRSA等には対応しているものの、湿気が多い所で特に繁殖するクロカビには対応していない。また、分散液濃度の調整で繊維に対する機能性付与を狙っているが、繊維素材や織編組織によって機能剤の付着量は大きく異なるため、生地の種類によっては機能性を十分に発揮できないおそれがある。
このように、現状において、洗濯耐久性が優れ、医療・介護施設内で特に注意されるMRSAやクロカビ、アオカビ、クロコウジカビ等の幅広い菌に対して強い抗菌性ならびに抗カビ性を示す、抗菌抗カビ性布帛の開発が待たれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5437472号公報
【特許文献2】特開2017-179633号公報
【特許文献3】特開2001-288014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、MRSAやクロカビ、アオカビ、クロコウジカビ等の幅広い菌に対して強い抗菌性ならびに抗カビ性を示し、柔軟性および洗濯耐久性等の耐久性に優れた抗菌抗カビ性布帛を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ポリエステル繊維を含有する抗菌抗カビ性を有する布帛であって、抗菌抗カビ成分が、前記ポリエステル繊維に分散された状態で付着しており、前記抗菌抗カビ成分の固形物が、前記ポリエステル繊維の表面の0.01mmあたりに20~300個存在するように付着している抗菌抗カビ性布帛である。
【0009】
また、洗濯50回後の前記抗菌抗カビ成分の固形物が、0.01mmあたりに3個以上であることが好ましい。
【0010】
また、前記抗菌抗カビ成分が有機系薬剤であると好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、MRSAやアオカビ、クロカビ等の幅広い菌に対して強い抗菌性ならびに抗カビ性を示し、柔軟性および洗濯耐久性等の耐久性に優れた抗菌抗カビ性布帛を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態にかかる抗菌抗カビ成分が付着しているポリエステル繊維の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の抗菌抗カビ性布帛について説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施形態に記載される構成に限定されることを意図しない。
【0014】
本発明の抗菌抗カビ性布帛は、ポリエステル繊維を含有し、抗菌抗カビ成分が、前記ポリエステル繊維に分散された状態で付着しており、前記抗菌抗カビ成分の固形物が、前記ポリエステル繊維の表面の0.01mmあたりに20~300個存在するように付着している。なお、本発明における分散された状態とは、図1に示すように、ポリエステル繊維1の全体にわたって抗菌抗カビ成分2が存在し、抗菌抗カビ成分2が繊維断面の外周部だけでなく繊維内部にも繊維の全体に存在することをいう。また、抗菌抗カビ成分2´のように固形物が隣接していても、偏在せずに繊維断面の外周部ならびに中心付近を含む繊維内部にほぼ均等に存在していれば、分散した状態という。
【0015】
抗菌抗カビ成分2が、前記ポリエステル繊維に分散された状態で付着しており、かつ、繊維表面に付着している抗菌抗カビ成分の固形物が0.01mmあたりに20~300個存在している。固形物が20個以上であれば、洗濯50回後の抗菌性ならびに抗カビ性に優れ、好ましくは、30個以上であり、より好ましくは、40個以上である。固形物が300個以下であれば、柔軟性に優れ、好ましくは、250個以下であり、より好ましくは、200個以下である。固形物が20個未満であると、洗濯50回後における抗菌抗カビ成分の含有量が抗菌性ならびに抗カビ性を発揮するのに不足してしまい、目的とする抗菌性ならびに抗カビ性を得ることができない。また、固形物が300個を超えると、柔軟性を損なうとともに、繊維上に付着する成分が過剰となることで洗濯時の脱落量が増加してしまい、使用量に対する洗濯耐久性向上の効率が悪くなる。また、成分が過剰なため、洗濯時に脱落する成分が多くなり、同浴で洗濯する他繊維製品への汚染を引き起こすおそれが高くなる。なお、抗菌抗カビ成分の個数を計測する際には、走査型電子顕微鏡による元素マッピングで観察し、抗菌抗カビ成分の粒径が1μm以上の固形物を計測する。抗菌抗カビ成分は、粒径が1~50μmの固形物であると好ましいが、1μm未満の固形物や50μmを超える固形物が存在しても構わない。
【0016】
繊維内部に存在している抗菌抗カビ成分は、ポリエステル繊維に分散した状態で付着していることが重要である。もし、繊維外周部に抗菌抗カビ成分が凝集し、繊維中心部に存在する抗菌抗カビ成分が少ないと、洗濯によって成分が脱落してしまい、洗濯50回後における抗菌性ならびに抗カビ性を得ることができない。繊維中心部に抗菌抗カビ成分が集まり、外周部に存在しない状態では、洗濯による脱落は抑えられるが、抗菌抗カビ成分が繊維表面に付着した菌と接触することがほとんどできないため、抗菌性ならびに抗カビ性を得ることができない。
【0017】
繊維に付着した抗菌抗カビ成分の含有量が、0.02~6.0g/mであると好ましい。0.02g/m以上であれば、洗濯50回後の抗菌性ならびに抗カビ性に優れ、より好ましくは、0.04g/m以上であり、さらに好ましくは、0.06g/m以上である。6.0g/m以下であれば、洗濯50回後の抗菌性ならびに抗カビ性と柔軟性がともに優れ、より好ましくは、5.0g/m以下であり、さらに好ましくは、4.0g/m以下である。布帛に対して洗濯処理を行うと、抗菌抗カビ成分の一部が脱落すると考えられるが、0.02g/m未満であると、洗濯50回後における抗菌抗カビ成分の含有量が抗菌性ならびに抗カビ性を発揮するのに不足してしまい、抗菌性ならびに抗カビ性を得にくくなる。また、6.0g/mを超えると、柔軟性を損なうとともに、繊維表面に付着する抗菌抗カビ成分が過剰となることで洗濯時の脱落量が増加してしまい、使用量に対する洗濯耐久性向上の効率が悪くなる。また、抗菌抗カビ成分が過剰なため、洗濯時に脱落する成分が多くなり、同浴で洗濯する他繊維製品への汚染を引き起こすおそれが高くなる。
【0018】
本発明に使用されるポリエステル繊維は、布帛中に50重量%以上含まれることが好ましく、60重量%以上含まれることがより好ましく、70重量%以上含まれることが更に好ましい。ポリエステル繊維が50重量%以上含まれていれば、抗菌抗カビ成分を効率よく、ポリエステル繊維に付着させることができ、洗濯後の抗菌性ならびに抗カビ性および生地強度を向上させることができる。
【0019】
ポリエステル繊維としては、特に限定するものではなく、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、カチオン可染ポリエステル、ポリ乳酸等が挙げられ、これらの中から1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0020】
なお、ポリエステル繊維には、本発明の目的を阻害しない程度であれば、ポリエステル以外の繊維を1種または2種以上を組み合わせて使用することが可能である。綿、麻、ウール、シルク、カシミヤ、テンセル等の天然繊維、キュプラ、レーヨン、リヨセル等の再生繊維、アセテート繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維、ウレタン繊維等が挙げられ、混紡、混織、交撚、交織、交編等で混用される。
【0021】
また、本発明において用いられる布帛の形態としては、特に限定されるものでなく、例えば、織物、編物、不織布が挙げられ、伸縮性の有無は限定されない。
【0022】
本発明において用いられる抗菌抗カビ成分としては、抗菌性および抗カビ性を有する薬剤であればよく、例えば、金、白金、銀、酸化銀、銅、酸化銅、酸化亜鉛、コバルト、ニッケル、ジルコニウム、パラジウム、タングステンといった金属元素が主成分となる無機系薬剤、2-クロロ-6-トリクロロメチルピリジン、2-クロロ-4-トリクロロメチル-6-メトキシピリジン、2-クロロ-4-トリクロロメチル-6-(2-フリルメトキシ)ピリジン、ジ(4-クロロフェニル)ピリジルメタノール、2,3,5-トリクロロ-4-(n-プロピルスルフォニル)ピリジン、2-ピリジルチオール-1-オキシド銅、2-ピリジルチオール-1-オキシド亜鉛、2-ピリジルチオール-1-オキシドナトリウム等の2-ピリジルチオール-1-オキシド金属塩、ジ(2-ピリジルチオール-1-オキシド)等のピリジン系化合物、ポリヘキサメチレングアニジン塩、クロルヘキシジン塩等のグアニジン系化合物、3-メチル-4-イソプロピルフェノール、2-イソピロピル-5-メチルフェノール等のフェノール系化合物、第4級アンモニウム塩系化合物、有機窒素硫黄系化合物、イミダゾール系化合物といった有機系薬剤が挙げられ、これらの中から1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。なかでも、有機系薬剤は抗菌性ならびに抗カビ性の発現が無機系薬剤と比べて早く、幅広い菌に対応可能であるため好ましく、ピリジン系化合物がより好ましい。特に、2-ピリジルチオール-1-オキシド金属塩は、繊維との親和性や固着性がよく、耐久性に優れていることや、対応する菌種の範囲が広いため、さらに好ましい。
【0023】
ポリエステル繊維には染料を含有していても含有していなくてもよいが、繊維外周部には染料を含有しないことが堅牢度の面で好ましい。染料としては、具体的に分散染料、カチオン染料、反応染料、酸性染料、直接染料が挙げられ、これらの中から1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0024】
抗菌抗カビ成分をポリエステル繊維に含有させた布帛を得る際には、繊維加工において一般的に行われている方法を用いればよく、例えば、(1)抗菌抗カビ成分を含む処理液に布帛を浸漬し、常圧下もしくは加圧下80~140℃の浴中で吸尽処理する方法、(2)抗菌抗カビ成分を含む処理液に布帛を浸漬、またはスプレーもしくは塗布することにより、処理液を繊維布帛に含浸させた後、必要に応じて圧搾や遠心脱水等で余剰液を除去し、次いで80~180℃で熱処理して乾燥する方法を挙げることができる。なかでも、繊維内部まで抗菌抗カビ成分を浸透させ、繊維表面にも適度で均一な付着状態とすることが可能であることから、(1)の吸尽処理する方法を0.1~3kg/cm(ゲージ圧)の範囲の加圧下で行うことが好ましい。
【0025】
なお、抗菌抗カビ成分を含む処理液は、本発明の目的を阻害しない程度であれば、必要に応じて、染料、各種染色助剤、黄変防止剤、制電剤、吸水剤、撥水剤、防虫剤、難燃剤、柔軟剤、pH調整剤等、他の成分を含んでいてもよく、特に限定されない。
【0026】
さらに、前記処理液で加工した後、本発明の目的を阻害しない程度であれば、抗菌性ならびに抗カビ性以外の機能性付与や風合い改良、強度向上、pH調整などを目的とした追加加工を行ってもよい。機能性としては、例えば、帯電防止性や難燃性、消臭性、速乾性、冷温感性等が挙げられる。機能性付与や風合い改良、強度向上、pH調整の方法としては、例えば、前記加工方法(2)と同様の浸漬加工やスプレー加工の他、タンブラー乾燥機によるリラックス加工、樹脂・金属ロールによるカレンダー加工、研磨機によるバフ加工、樹脂コーティング加工、フィルム接着加工、生地ボンディング加工等が挙げられる。
【0027】
本発明の抗菌抗カビ性布帛において、洗濯50回後の繊維に付着している抗菌抗カビ成分の含有量は、0.01g/m以上が好ましく、洗濯50回後の繊維においても抗菌性ならびに抗カビ性に優れ、より好ましくは、0.02g/m以上であり、さらに好ましくは、0.025g/m以上である。含有量が0.01g/m未満であると、抗菌抗カビ成分の含有量が抗菌性ならびに抗カビ性を発揮するのに不足してしまい、目的とする抗菌性ならびに抗カビ性を得ることができない。
【0028】
なお、洗濯50回とは、次の一連の操作を50回繰り返すことを示す。JIS C9606の規格に適合する遠心式絞り装置付きの家庭洗濯機を使用し、JIS L0217 付表1 洗い方103に準ずる方法である。具体的には、液温40℃の水30リットルに対しJAFET標準配合洗剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル及びアルファオレフィンスルホン酸ナトリウムを配合)40mlを溶解して洗濯液とし、この洗濯液に、布:洗濯液の浴比が1:30になるよう、試料および必要に応じて負荷布を投入し、次いで、5分間洗濯した後、脱水し、常温の新しい水で2分間すすぎ洗いを行い、再度脱水、常温の新しい水で2分間すすぎ洗いし、脱水を行う。この工程を洗濯1回とし、洗濯50回とはこの一連の操作を50回繰り返す。
【0029】
また、本発明の抗菌抗カビ性布帛において、洗濯50回後の繊維表面に付着している抗菌抗カビ成分の付着状態は、固形物が0.01mmあたりに3個以上が好ましい。固形物が3個以上であれば、洗濯50回後の繊維においても抗菌性ならびに抗カビ性に優れ、より好ましくは、5個以上であり、さらに好ましくは、10個以上である。固形物が3個未満であると、抗菌抗カビ成分の含有量が抗菌性ならびに抗カビ性を発揮するのに不足してしまい、目的とする抗菌性ならびに抗カビ性を得ることができない。
【0030】
本発明の抗菌抗カビ性布帛において、布帛の洗濯前と洗濯50回後の抗菌性は、黄色ブドウ球菌、肺炎桿菌、MRSAの抗菌活性値がいずれも2.5以上であることが好ましく、3.5以上であればより好ましい。
【0031】
さらに、本発明の抗菌抗カビ性布帛において、布帛の洗濯前と洗濯50回後の抗カビ性は、アオカビ、クロカビ、クロコウジカビ、白癬菌の減少率が、綿100%の未加工布帛と比較して、いずれも95%以上であることが好ましく、99%以上であればより好ましい。95%以上であれば、本発明の抗菌抗カビ性布帛を用いた製品を使用した際に、カビの繁殖が抑えられていることを実感できる。
【0032】
本発明の抗菌抗カビ性布帛は、抗菌抗カビ成分の固形分を、分散させた状態で適度な量を繊維内部ならびに繊維表面に存在させることで、洗濯前および洗濯後の抗菌性ならびに抗カビ性に優れる。また、本発明の抗菌抗カビ性布帛であれば、同一試験片を用いた抗カビ性の連続試験においても、優れた抗カビ性を継続して発揮することができる。
【0033】
本発明の抗菌抗カビ性布帛において、JIS L1096 8.21 A法 45°カンチレバー法における剛軟度が42mm以下であることが好ましく、38mm以下であればより好ましく、35mm以下であればさらに好ましい。42mm以下であれば、生地接触時に軟らかく感じられ、機能性加工品特有のごわつき感を低減できる。
【実施例0034】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例1~7及び比較例1~4にて得られた抗菌抗カビ性布帛について、下記の測定方法で物性を測定した。また、測定した結果を表1に示す。
【0035】
<測定方法及び評価方法>
(1)引張強度
任意の5箇所において、JIS L1096 8.14.1 A法 ストリップ法に基づき、試験片の幅50mm、つかみ間隔200mm、引張速度150±10mm/minに設定して、引張強度(N)を測定し、平均値を算出して、評価した。なお、引張強度が300N以上であれば、布帛として引張りに対する強度が保持されていると判断できる。
【0036】
(2)引裂強度
任意の5箇所において、JIS L1096 8.17.1 A法 シングルタング法に基づき、引張速度150±10mm/minに設定して、引裂強度(N)を測定し、平均値を算出して、評価した。なお、引裂強度が15N以上であれば、布帛として引裂きに対する強度が保持されていると判断できる。
【0037】
(3)洗濯処理
JIS C9606の規格に適合する遠心式絞り装置付きの家庭洗濯機を使用し、JIS L0217 付表1 洗い方103に準ずる方法で洗濯処理を行った。液温40℃の水30リットルに対しJAFET標準配合洗剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル及びアルファオレフィンスルホン酸ナトリウムを配合)40mlを溶解して洗濯液とした。この洗濯液に、布:洗濯液の浴比が1:30になるよう、試料および必要に応じて負荷布を投入した。次いで、5分間洗濯した後、脱水し、常温の新しい水で2分間すすぎ洗いを行い、再度脱水、常温の新しい水で2分間すすぎ洗いし、さらに脱水を行った。この工程を洗濯1回とした。洗濯50回とはこの一連の操作を50回繰り返すことを示す。繰り返し洗濯が完了した後、直射日光の影響を受けない状態でつり干しし、よく乾燥させた後に評価に用いた。
【0038】
(4)繊維表面状態ならびに分散状態の観察
洗濯前後の繊維表面を任意の5箇所において、走査型電子顕微鏡(S-3000N、株式会社日立サイエンスシステムズ社製)によって拡大倍率800倍で撮影し、SEM画像における0.01mmの計測領域に含まれる粒径1μm以上の抗菌抗カビ成分の固形物の個数を計測し、洗濯前後各々の平均値を算出した。さらに、任意の5箇所において、繊維断面を卓上顕微鏡(Miniscope TM4000Plus、株式会社日立ハイテクノロジーズ社製)によって拡大倍率1500倍でマッピング分析を行い、抗菌抗カビ成分の分散状態を確認した。抗菌抗カビ成分が繊維断面の外周部だけでなく繊維内部にも繊維の全体にわたり存在している状態を、「分散」とした。
【0039】
(5)抗菌抗カビ成分の含有量
任意の5箇所において、洗濯前後の布帛を電気炉で灰化させ、濃塩酸に溶解させた水溶液を調液すると同時に、抗菌抗カビ成分の水溶液を検量線となる標準溶液として複数濃度分準備し、偏光ゼーマン原子吸光光度計(Z-2310、株式会社日立ハイテクノロジーズ社製)によって各水溶液の吸光度を測定した。検量線用水溶液で測定された吸光度から検量線を作成し、その検量線をもとに抗菌抗カビ成分の含有量を算出し、平均値を算出した。
【0040】
(6)抗菌性
JIS L1902 8.1 菌液吸収法に基づき、黄色ブドウ球菌(NBRC12732)、肺炎桿菌(NBRC13277)、MRSA(IID1677)に対する、布帛の抗菌活性値を算出し、抗菌性を判定した。なお、抗菌性能の判断基準となる抗菌活性値は、下記式により算出し、各菌に対する抗菌性能は下記基準で評価した。また、対照試料には、JIS L1902 3.1に規定される綿100%の添付白布(綿3-1号)を、規定された手順で洗浄、風乾したものを用いた。
抗菌活性値=D-E
(D:対照試料の増殖値、E:試験試料の増殖値)
◎:洗濯前および洗濯50回後の抗菌活性値が3.5以上
○:洗濯前および洗濯50回後の抗菌活性値が2.5以上
△:洗濯前の抗菌活性値のみ、2.5以上
×:洗濯前および洗濯50回後の抗菌活性値が、いずれも2.5未満
【0041】
(7)抗カビ性
JIS L1921 12.1.2 吸収法に基づき、アオカビ(NBRC6352)、クロカビ(NBRC6348)、クロコウジカビ(NBRC105649)、白癬菌(NBRC32412)に対する、布帛の抗カビ活性値を算出し、対照布帛と比較したカビ菌の減少率から、抗カビ性を判定した。なお、抗カビ活性値は、下記式により算出し、各カビ菌に対する抗カビ性能は下記基準で評価した。また、対照試料には、JIS L1902 3.1に規定される綿100%の添付白布(綿3-1号)を、規定された手順で洗浄、風乾したものを用いた。
抗カビ活性値=F-G
(F:対照試料の増殖値、G:試験試料の増殖値)
◎:洗濯前および洗濯50回後のカビ菌の減少率が99%以上
○:洗濯前および洗濯50回後のカビ菌の減少率が95%以上
△:洗濯前のカビ菌の減少率のみ、95%以上
×:洗濯前および洗濯50回後のカビ菌の減少率が、いずれも95%未満
【0042】
(8)柔軟性(剛軟度)
任意の5箇所において、JIS L1096 8.21 A法 45°カンチレバー法に基づき、カンチレバー型試験機の上部に試験片を設置して、試験片を斜面の方向に緩やかに滑らせて、試験片の一端の中央点が斜面と接した際の位置から、移動した長さ(mm)を測定し、平均値を算出して、下記基準で評価した。
◎:長さが35mm以下
○:長さが35mm以上38mm未満
△:長さが38mm以上42mm未満
×:長さが42mmを超える
【0043】
<使用布帛>
[布帛(1)]
150dtex/96フィラメントのポリエステル糸(ポリエチレンテレフタレート)を用いて、目付220g/mの天竺組織の丸編地を作製し、布帛(1)とした。
【0044】
[布帛(2)]
150dtex/96フィラメントのポリエステル糸(ポリエチレンテレフタレート)と、60番手の綿糸を用いて、目付230g/mの天竺組織の丸編地を作製し、布帛(2)とした。なお、布帛(2)はポリエステルが全体の80重量%含まれており、得られた編地のポリエステル繊維含有量は184g/mであった。
【0045】
[布帛(3)]
150dtex/96フィラメントのポリエステル糸(ポリエチレンテレフタレート)と、40番手の綿糸、22dtexのポリウレタン糸を用いて、目付200g/mのベア天竺組織の丸編地を作製し、布帛(3)とした。なお、布帛(3)はポリエステルが全体の55重量%含まれており、得られた編地のポリエステル繊維含有量は110g/mであった。
【0046】
[布帛(4)]
150dtex/96フィラメントのポリエステル糸(ポリエチレンテレフタレート)と、117dtex/80フィラメントのキュプラ・ナイロン混繊糸、22dtexのポリウレタン糸を用いて、目付220g/mのベア天竺組織の丸編地を作製し、布帛(4)とした。なお、布帛(4)はポリエステルが全体の65重量%含まれており、得られた編地のポリエステル繊維含有量は154g/mであった。
【0047】
[布帛(5)]
150dtex/96フィラメントのポリエステル糸(ポリエチレンテレフタレート)と、60番手の綿糸、22dtexのポリウレタン糸を用いて、目付180g/mのベア天竺組織の丸編地を作製し、布帛(5)とした。なお、布帛(5)はポリエステルが全体の35重量%含まれており、得られた編地のポリエステル繊維含有量は63g/mであった。
【0048】
[実施例1]
まず、分散染料(A)としてSumikaron Yellow SE-RPD(住友化学工業株式会社製)0.2%owf、Sumikaron Red SE-RPD(住友化学工業株式会社製)0.2%owf、Sumikaron Blue SE-RPD(住友化学工業株式会社製)0.1%owf、抗菌抗カビ剤(B)としてSanitized TH 22-27(アークロマジャパン社製 ピリジン系化合物含有水分散体、有効成分:2-ピリジルチオール-1-オキシド亜鉛)0.5%owf、均染剤としてニッカサンソルト8000(日華化学株式会社製)0.5g/L、pH調整剤として酢酸0.5cc/Lを混合した染色液を作製した。この染色液を用いて、布帛(1)を130℃×60分間、浴比1:10、2kg/cm(ゲージ圧)にて加工を行った。次いで、洗浄、脱水作業を行い、130℃×2分間熱処理して乾燥した。かくして、繊維表面に付着している抗菌抗カビ成分の固形物は、0.01mmあたりに105個の付着状態となり、布帛に対する抗菌抗カビ成分の含有量が2.8g/mとなった、実施例1の抗菌抗カビ性布帛を得た。また、抗菌抗カビ成分は、ポリエステル繊維に分散された状態で付着していることが確認できた。
【0049】
[実施例2]
分散染料(A)としてSumikaron Yellow SE-RPD 0.1%owf、Sumikaron Red SE-RPD 0.1%owf、Sumikaron Blue SE-RPD 0.3%owf、抗菌抗カビ剤(B)としてSanitized TH 22-27 0.3%owf、均染剤としてニッカサンソルト8000 0.5g/L、pH調整剤として酢酸0.5cc/Lを混合した染色液ならびに、反応染料(C)としてSumifix Supra Blue BRF(住友化学工業株式会社製)0.4%owf、固着剤として炭酸ナトリウム15g/L、無水芒硝30g/Lを混合した染色液をそれぞれ作製した。(A)(B)が混合された染色液に布帛(2)を入れ、130℃×60分間、2kg/cm(ゲージ圧)条件下で加工した後に、洗浄、脱水作業を行った。続いて布帛(2)を、(C)が混合された染色液に投入し、80℃×40分間、常圧下で加工を行った。その後、洗浄、脱水作業を行い、130℃×2分間熱処理して乾燥した。繊維表面に付着している抗菌抗カビ成分の固形物は、0.01mmあたりに48個の付着状態となり、布帛に対する抗菌抗カビ成分の含有量が0.070g/mであった。抗菌抗カビ成分は、ポリエステル繊維に分散された状態で付着していることが確認できた。
【0050】
[実施例3]
分散染料(A)としてSumikaron Yellow SE-RPD 0.1%owf、Sumikaron Red SE-RPD 0.04%owf、Sumikaron Blue SE-RPD 0.3%owf、抗菌抗カビ剤(B)としてSanitized TH 22-27 0.2%owf、均染剤としてニッカサンソルト8000 0.5g/L、pH調整剤として酢酸0.5cc/Lを混合した染色液ならびに、反応染料(C)としてSumifix Supra Blue BRF 0.4%owf、固着剤として炭酸ナトリウム15g/L、無水芒硝30g/Lを混合した染色液をそれぞれ作製した。これらの染色液を、(A)(B)が混合された染色液および(C)が混合された染色液として用い、使用する布帛を布帛(3)とし加工を行った以外は実施例2と同様の内容にて実施した。繊維表面に付着している抗菌抗カビ成分の固形物は、0.01mmあたりに22個の付着状態となり、布帛に対する抗菌抗カビ成分の含有量が0.025g/mであった。抗菌抗カビ成分は、ポリエステル繊維に分散された状態で付着していることが確認できた。
【0051】
[実施例4]
分散染料(A)としてSumikaron Yellow SE-RPD 0.1%owf、Sumikaron Red SE-RPD 0.04%owf、Sumikaron Blue SE-RPD 0.3%owf、抗菌抗カビ剤(B)としてSanitized TH 22-27 0.3%owf、均染剤としてニッカサンソルト8000 0.5g/L、pH調整剤として酢酸0.5cc/Lを混合した染色液ならびに、反応染料(C)としてSumifix Supra Blue BRF 0.4%owf、固着剤として炭酸ナトリウム15g/L、無水芒硝30g/Lを混合した染色液をそれぞれ作製した。これらの染色液を、(A)(B)が混合された染色液および(C)が混合された染色液として用い、使用する布帛を布帛(4)とし加工を行った以外は実施例2と同様の内容にて実施した。繊維表面に付着している抗菌抗カビ成分の固形物は、0.01mmあたりに33個の付着状態となり、布帛に対する抗菌抗カビ成分の含有量が0.042g/mであった。抗菌抗カビ成分は、ポリエステル繊維に分散された状態で付着していることが確認できた。
【0052】
[実施例5]
分散染料(A)としてSumikaron Yellow SE-RPD 0.1%owf、Sumikaron Red SE-RPD 0.04%owf、Sumikaron Blue SE-RPD 0.5%owf、抗菌抗カビ剤(B)としてSanitized TH 22-27 0.8%owf、均染剤としてニッカサンソルト8000 0.5g/L、pH調整剤として酢酸0.5cc/Lを混合した染色液を作製した。この染色液を用いて加工を行った以外は実施例1と同様の内容にて実施した。このとき、繊維表面に付着している抗菌抗カビ成分の固形物は、0.01mmあたりに185個の付着状態となり、布帛に対する抗菌抗カビ成分の含有量が3.7g/mであった。抗菌抗カビ成分は、ポリエステル繊維に分散された状態で付着していることが確認できた。
【0053】
[実施例6]
分散染料(A)としてSumikaron Yellow SE-RPD 0.2%owf、Sumikaron Red SE-RPD 0.02%owf、Sumikaron Blue SE-RPD 0.5%owf、抗菌抗カビ剤(B)として2-ピリジンチオール-1-オキシドナトリウム(東京化成工業株式会社製 ピリジン系化合物含有水分散体、有効成分:2-ピリジンチオール-1-オキシドナトリウム)1.2%owf、均染剤としてニッカサンソルト8000 0.5g/L、pH調整剤として酢酸0.5cc/Lを混合した染色液を作製した。この染色液を用い加工を行った以外は実施例1と同様の内容にて実施した。このとき、繊維表面に付着している抗菌抗カビ成分の固形物は、0.01mmあたりに235個の付着状態となり、布帛に対する抗菌抗カビ成分の含有量が4.4g/mであった。抗菌抗カビ成分は、ポリエステル繊維に分散された状態で付着していることが確認できた。
【0054】
[実施例7]
抗菌抗カビ剤(B)として2-ピリジンチオール-1-オキシドナトリウム 1.5%owfの処理液を作製し、布帛(1)を130℃×60分間、浴比1:10、2kg/cm(ゲージ圧)にて加工を行った。なお、本実施例は染料を使用しない、所謂サラシ加工品である。次いで、洗浄、脱水作業を行い、130℃×2分間熱処理して乾燥した。かくして、繊維表面に付着している抗菌抗カビ成分の固形物は、0.01mmあたりに280個の付着状態となり、布帛に対する抗菌抗カビ成分の含有量が5.2g/mとなった、実施例7の抗菌抗カビ性布帛を得た。抗菌抗カビ成分は、ポリエステル繊維に分散された状態で付着していることが確認できた。
【0055】
[比較例1]
分散染料(A)としてSumikaron Yellow SE-RPD 0.05%owf、Sumikaron Red SE-RPD 0.05%owf、Sumikaron Blue SE-RPD 0.15%owf、抗菌抗カビ剤(B)としてSanitized TH 22-27 0.1%owf、均染剤としてニッカサンソルト8000 0.5g/L、pH調整剤として酢酸0.5cc/Lを混合した染色液ならびに、反応染料(C)としてSumifix Supra Blue BRF 0.2%owf、固着剤として炭酸ナトリウム15g/L、無水芒硝30g/Lを混合した染色液をそれぞれ作製した。これらの染色液を、(A)(B)が混合された染色液および(C)が混合された染色液として用い、使用する布帛を布帛(5)として加工を行った以外は実施例2と同様の内容にて実施した。繊維表面に付着している抗菌抗カビ成分の固形物は、0.01mmあたりに8個の付着状態となり、布帛に対する抗菌抗カビ成分の含有量が0.008g/mであった。抗菌抗カビ成分は、主にポリエステル繊維の外周部に付着していることが確認できた。
【0056】
[比較例2]
分散染料(A)としてSumikaron Yellow SE-RPD 0.2%owf、Sumikaron Red SE-RPD 0.2%owf、Sumikaron Blue SE-RPD 0.1%owf、抗菌抗カビ剤(B)としてSanitized TH 22-27 2.5%owf、均染剤としてニッカサンソルト8000 0.5g/L、pH調整剤として酢酸0.5cc/Lを混合した染色液を作製した。この染色液を用いて加工を行った以外は実施例1と同様の内容にて実施した。このとき、繊維表面に付着している抗菌抗カビ成分の固形物は、0.01mmあたりに375個の付着状態となり、布帛に対する抗菌抗カビ成分の含有量が7.1g/mであった。抗菌抗カビ成分は、ポリエステル繊維に分散された状態で付着していることが確認できた。
【0057】
[比較例3]
分散染料(A)としてSumikaron Yellow SE-RPD 0.3%owf、Sumikaron Red SE-RPD 0.225%owf、Sumikaron Blue SE-RPD 0.3%owf、抗菌抗カビ剤(B)としてSanitized TH 22-27 0.15%owf、均染剤としてニッカサンソルト8000 0.5g/L、pH調整剤として酢酸0.5cc/Lを混合した染色液を作製した。この染色液を用いて加工を行った以外は実施例1と同様の内容にて実施した。このとき、繊維表面に付着している抗菌抗カビ成分の固形物は、0.01mmあたりに16個の付着状態となり、布帛に対する抗菌抗カビ成分の含有量が0.010g/mであった。抗菌抗カビ成分は、主にポリエステル繊維の外周部に付着していることが確認できた。
【0058】
[比較例4]
抗菌抗カビ剤(B)として2-ピリジンチオール-1-オキシドナトリウム 2.0%owfの処理液を作製し、この処理液を用いて加工を行った以外は実施例7と同様の内容にて実施した。繊維表面に付着している抗菌抗カビ成分の固形物は、0.01mmあたりに315個の付着状態となり、布帛に対する抗菌抗カビ成分の含有量が6.2g/mであった。抗菌抗カビ成分は、ポリエステル繊維に分散された状態で付着していることが確認できた。
【0059】
実施例1~7および比較例1~4で得られた抗菌抗カビ性布帛について、先述の評価方法で評価した結果を表1に示した。
【0060】
【表1】
【0061】
実施例1~7の抗菌抗カビ性布帛は、洗濯前および洗濯50回後における抗菌性ならびに抗カビ性、生地強度、柔軟性のいずれも優れていた。
【0062】
一方、比較例1の抗菌抗カビ性布帛は、ポリエステル繊維の全体に占める割合が低いため、十分な強度とならなかったとともに、抗菌抗カビ成分の含有が不十分であったため、抗菌性ならびに抗カビ性は低いものとなった。さらに、比較例2ならびに4の抗菌抗カビ性布帛では、抗菌抗カビ成分が過剰に付着していたため、柔軟性が損なわれてしまった。また、比較例3の抗菌抗カビ性布帛では、抗菌抗カビ成分が十分に付着していないため、洗濯後の抗菌性ならびに抗カビ性は得られなかった。
【符号の説明】
【0063】
1 ポリエステル繊維
2、2´ 抗菌抗カビ成分
図1