IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱電機ビルテクノサービス株式会社の特許一覧 ▶ 三菱電機株式会社の特許一覧

特開2024-33708エレベータ用巻上機及びその油供給装置
<>
  • 特開-エレベータ用巻上機及びその油供給装置 図1
  • 特開-エレベータ用巻上機及びその油供給装置 図2
  • 特開-エレベータ用巻上機及びその油供給装置 図3
  • 特開-エレベータ用巻上機及びその油供給装置 図4
  • 特開-エレベータ用巻上機及びその油供給装置 図5
  • 特開-エレベータ用巻上機及びその油供給装置 図6
  • 特開-エレベータ用巻上機及びその油供給装置 図7
  • 特開-エレベータ用巻上機及びその油供給装置 図8
  • 特開-エレベータ用巻上機及びその油供給装置 図9
  • 特開-エレベータ用巻上機及びその油供給装置 図10
  • 特開-エレベータ用巻上機及びその油供給装置 図11
  • 特開-エレベータ用巻上機及びその油供給装置 図12
  • 特開-エレベータ用巻上機及びその油供給装置 図13
  • 特開-エレベータ用巻上機及びその油供給装置 図14
  • 特開-エレベータ用巻上機及びその油供給装置 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033708
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】エレベータ用巻上機及びその油供給装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 11/08 20060101AFI20240306BHJP
   F16N 31/00 20060101ALI20240306BHJP
   F16N 13/14 20060101ALI20240306BHJP
   F16N 23/00 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
B66B11/08 A
F16N31/00 C
F16N13/14
F16N23/00
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137470
(22)【出願日】2022-08-31
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(72)【発明者】
【氏名】深貝 聖史
【テーマコード(参考)】
3F306
【Fターム(参考)】
3F306AA02
3F306BA18
(57)【要約】
【課題】ギヤケースから漏れた潤滑油を当該ギヤケースに収納された減速機に供給するエレベータ用巻上機及びその油供給装置8を得る。
【解決手段】エレベータ用巻上機及びその油供給装置8は、回収部9、ポンプ10及び供給管11を備える。回収部9は、減速機が収納されたギヤケースから漏れた潤滑油を回収する。ポンプ10は、巻上機の回転軸3に取り付けられた回転部材12を備え、回転軸3の回転に連動して回転部材12が回転することにより回収部9によって回収された潤滑油を供給管11に流す。供給管11は、潤滑油を減速機に供給する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
減速機が収納されたギヤケースから漏れた潤滑油を回収する回収部と、
前記潤滑油を前記減速機に供給する供給管と、
巻上機の回転軸に取り付けられた回転部材を備え、前記回転軸の回転に連動して前記回転部材が回転することにより前記回収部によって回収された前記潤滑油を前記供給管に流すポンプと
を備えたエレベータ用巻上機の油供給装置。
【請求項2】
減速機が収納されたギヤケースから漏れた潤滑油を回収する回収部と、
前記潤滑油が流入する流入口と前記潤滑油が流出する流出口を有するシリンダと、
前記流出口に接続され、前記流出口から流出した前記潤滑油を前記減速機に供給する供給管と、
一端が前記シリンダ内に配され、他端が前記シリンダから突出するピストンロッドと、
前記ピストンロッドの前記一端に取り付けられ、前記シリンダの内筒面に全周密着し、筒軸方向に移動可能に設けられたピストンと、
前記ピストンロッドの前記一端から前記他端へ向かう第1の方向に前記ピストンを付勢する弾性部材と、
巻上機の回転軸に取り付けられ、前記ピストンロッドの前記他端から前記一端へ向かう第2の方向に前記ピストンロッドを介して前記ピストンを移動させる回転部材と、
前記ピストンが前記第1の方向に移動したとき、前記回収部から前記流入口を通過させて前記シリンダ内に前記潤滑油を流入させ、前記ピストンが前記第2の方向に移動したとき、前記潤滑油が前記シリンダ内から前記流入口を通過して前記回収部に流出することを抑制する第1の弁と、
前記ピストンが前記第1の方向に移動したとき、前記潤滑油が前記供給管から前記流入口へ向かう方向に流れることを抑制し、前記ピストンが前記第2の方向に移動したとき、前記潤滑油を前記供給管へ送る方向に流出させる第2の弁と
を備えたエレベータ用巻上機の油供給装置。
【請求項3】
前記供給管内に設けられ、前記潤滑油が前記流出口へ向かう方向に流れることを抑制する第3の弁と
をさらに備えた請求項2に記載のエレベータ用巻上機の油供給装置。
【請求項4】
前記ピストンロッドの前記他端に設けられ、前記回転部材と接し、前記回転部材の回転に連動して回転するローラと
をさらに備えた請求項2又は3に記載のエレベータ用巻上機の油供給装置。
【請求項5】
前記弾性部材は、金属から形成され、前記シリンダ内に設けられる請求項2又は3に記載のエレベータ用巻上機の油供給装置。
【請求項6】
前記回転軸は、電動機の回転軸である請求項1から3のいずれか一項に記載のエレベータ用巻上機の油供給装置。
【請求項7】
前記回転軸は、綱車の回転軸である請求項1から3のいずれか一項に記載のエレベータ用巻上機の油供給装置。
【請求項8】
回転軸と、
減速機が収納されたギヤケースと、
前記ギヤケースから漏れた潤滑油を回収する回収部と、
前記潤滑油を前記減速機に供給する供給管と、
前記回転軸に取り付けられた回転部材を備え、前記回転軸の回転に連動して前記回転部材が回転することにより前記回収部によって回収された前記潤滑油を前記供給管に流すポンプと
を備えたエレベータ用巻上機。
【請求項9】
回転軸と、
減速機が収納されたギヤケースと、
前記ギヤケースから漏れた潤滑油を回収する回収部と、
前記潤滑油が流入する流入口と前記潤滑油が流出する流出口を有するシリンダと、
前記流出口に接続され、前記流出口から流出した前記潤滑油を前記減速機に供給する供給管と、
一端が前記シリンダ内に配され、他端が前記シリンダから突出するピストンロッドと、
前記ピストンロッドの前記一端に取り付けられ、前記シリンダの内筒面に全周密着し、筒軸方向に移動可能に設けられたピストンと、
前記ピストンロッドの前記一端から前記他端へ向かう第1の方向に前記ピストンを付勢する弾性部材と、
巻上機の回転軸に取り付けられ、前記ピストンロッドの前記他端から前記一端へ向かう第2の方向に前記ピストンロッドを介して前記ピストンを移動させる回転部材と、
前記ピストンが前記第1の方向に移動したとき、前記回収部から前記流入口を通過して前記シリンダ内に前記潤滑油を流入させ、前記ピストンが前記第2の方向に移動したとき、前記潤滑油が前記シリンダ内から前記流入口を通過して前記回収部に流出することを抑制する第1の弁と、
前記ピストンが前記第1の方向に移動したとき、前記潤滑油が前記流入口側に逆流することを抑制し、前記ピストンが前記第2の方向に移動したとき、前記潤滑油を前記供給管に送る方向に流出させる第2の弁と
を備えたエレベータ用巻上機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エレベータ用巻上機及びその油供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のエレベータ用巻上機において、減速機が収納されたギヤケースから漏れて電動機の回転軸に付着した潤滑油は、当該回転軸に摺接している払拭子によって拭き取られ、支持部材に沿って垂下し、ケースに溜められる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-308551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来のエレベータ用巻上機では、ギヤケースから漏れた潤滑油を回収するのみであるため、ギヤケース内の潤滑油が徐々に減少するという課題がある。
【0005】
本開示は上記の問題点を解決するためになされたものであり、ギヤケースから漏れた潤滑油を当該ギヤケースに収納された減速機に供給することができるエレベータ用巻上機及びその油供給装置を得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示にかかるエレベータ用巻上機の油供給装置は、減速機が収納されたギヤケースから漏れた潤滑油を回収する回収部と、潤滑油を減速機に供給する供給管と、巻上機の回転軸に取り付けられた回転部材を備え、回転軸の回転に連動して回転部材が回転することにより回収部によって回収された潤滑油を供給管に流すポンプとを備える。
【0007】
本開示にかかるエレベータ用巻上機の油供給装置は、減速機が収納されたギヤケースから漏れた潤滑油を回収する回収部と、潤滑油が流入する流入口と潤滑油が流出する流出口を有するシリンダと、流出口に接続され、流出口から流出した潤滑油を減速機に供給する供給管と、一端がシリンダ内に配され、他端がシリンダから突出するピストンロッドと、ピストンロッドの一端に取り付けられ、シリンダの内筒面に全周密着し、筒軸方向に移動可能に設けられたピストンと、ピストンロッドの一端から他端へ向かう第1の方向にピストンを付勢する弾性部材と、巻上機の回転軸に取り付けられ、ピストンロッドの他端から一端へ向かう第2の方向にピストンロッドを介してピストンを移動させる回転部材と、ピストンが第1の方向に移動したとき、回収部から流入口を通過させてシリンダ内に潤滑油を流入させ、ピストンが第2の方向に移動したとき、潤滑油がシリンダ内から流入口を通過して回収部に流出することを抑制する第1の弁と、ピストンが第1の方向に移動したとき、潤滑油が供給管から流入口へ向かう方向に流れることを抑制し、ピストンが第2の方向に移動したとき、潤滑油を供給管へ送る方向に流出させる第2の弁とを備える。
【0008】
本開示にかかるエレベータ用巻上機は、回転軸と、減速機が収納されたギヤケースと、ギヤケースから漏れた潤滑油を回収する回収部と、潤滑油を減速機に供給する供給管と、回転軸に取り付けられた回転部材を備え、回転軸の回転に連動して回転部材が回転することにより回収部によって回収された潤滑油を供給管に流すポンプとを備える。
【0009】
本開示にかかるエレベータ用巻上機は、回転軸と、減速機が収納されたギヤケースと、
ギヤケースから漏れた潤滑油を回収する回収部と、潤滑油が流入する流入口と潤滑油が流出する流出口を有するシリンダと、流出口に接続され、流出口から流出した潤滑油を減速機に供給する供給管と、一端がシリンダ内に配され、他端がシリンダから突出するピストンロッドと、ピストンロッドの一端に取り付けられ、シリンダの内筒面に全周密着し、筒軸方向に移動可能に設けられたピストンと、ピストンロッドの一端から他端へ向かう第1の方向にピストンを付勢する弾性部材と、巻上機の回転軸に取り付けられ、ピストンロッドの他端から一端へ向かう第2の方向にピストンロッドを介してピストンを移動させる回転部材と、ピストンが第1の方向に移動したとき、回収部から流入口を通過してシリンダ内に潤滑油を流入させ、ピストンが第2の方向に移動したとき、潤滑油がシリンダ内から流入口を通過して回収部に流出することを抑制する第1の弁と、ピストンが第1の方向に移動したとき、潤滑油が流入口側に逆流することを抑制し、ピストンが第2の方向に移動したとき、潤滑油を供給管に送る方向に流出させる第2の弁とを備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示にかかるエレベータ用巻上機及びその油供給装置によれば、ギヤケースから漏れた潤滑油を当該ギヤケースに収納された減速機に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1におけるエレベータ用巻上機の正面図である。
図2】実施の形態1におけるエレベータ用巻上機のA-A’断面図である。
図3】実施の形態1におけるエレベータ用巻上機の油供給装置の断面図である。
図4】実施の形態1における潤滑油が流入した状態のエレベータ用巻上機の油供給装置の断面図である。
図5】実施の形態1における潤滑油が流出した状態のエレベータ用巻上機の油供給装置の断面図である。
図6】実施の形態1におけるエレベータ用巻上機の油供給装置の変形例を示す断面図である。
図7】実施の形態2におけるエレベータ用巻上機の油供給装置の断面図である。
図8】実施の形態2における潤滑油が流入した状態のエレベータ用巻上機の油供給装置の断面図である。
図9】実施の形態2における潤滑油が流出した状態のエレベータ用巻上機の油供給装置の断面図である。
図10】実施の形態3におけるエレベータ用巻上機の正面図である。
図11】実施の形態3における潤滑油が流入した状態のエレベータ用巻上機の油供給装置の断面図である。
図12】実施の形態3における潤滑油が流出した状態のエレベータ用巻上機の油供給装置の断面図である。
図13】実施の形態4におけるエレベータ用巻上機の正面図である。
図14】実施の形態4におけるエレベータ用巻上機のB-B’断面図である。
図15】実施の形態4におけるエレベータ用巻上機の油供給装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
以下に、実施の形態1にかかるエレベータ用巻上機及びその油供給装置を詳細に説明する。なお、各図面における同一の符号は同一又は相当の構成を表している。
【0013】
図1に示すように、エレベータ用巻上機1は、電動機2、回転軸3、ブレーキ4、綱車5、回転軸6、ギヤケース7及び油供給装置8を備える。電動機2は、ギヤケース7に収納された減速機(図示せず)を介して綱車5を回転させる。回転軸3は、エレベータ用巻上機1の回転軸である。具体的には、回転軸3は、電動機2の回転軸である。回転軸3は、電動機2により回転され、減速機に回転を伝達する。また、回転軸3は、ブレーキ4により制動される。減速機は、回転軸3から伝達された回転を減速させ、回転軸6に回転を伝達する。
【0014】
回転軸6は、エレベータ用巻上機1の回転軸である。具体的には、回転軸6は、綱車5の回転軸である。図2に示すように、回転軸6は、ギヤケース7から突出して設けられる。回転軸6には、綱車5が取り付けられる。綱車5は、回転軸6の回転に連動して回転する。綱車5には、一端がかご(図示せず)に接続され、他端が釣合おもり(図示せず)に接続される懸架体(図示せず)が巻きかけられる。なお、図2において、油供給装置8の図示を省略している。
【0015】
ギヤケース7には、複数の歯車を有する減速機が収納される。ギヤケース7には、減速機を円滑に作動させるために、潤滑油が注入されている。図2に示すように、ギヤケース7の高さ方向、すなわち紙面の上下方向において、回転軸3は回転軸6より低い位置に設けられている。このため、ギヤケース7内の潤滑油は、回転軸3とギヤケース7との間の隙間から漏れやすい。そこで、ギヤケース7のうち回転軸3が貫通する部分には、ギヤケース7から潤滑油が漏れることを抑制するために、シール部材であるパッキン(図示せず)が介挿されている。パッキンは、パッキングランド7aによって押さえられており、パッキングランド7aは、4つのボルト7bによってギヤケース7に取り付けられている。ギヤケース7のうち回転軸6が貫通する部分にも、上述と同様にパッキン及びパッキングランドを設け、ギヤケース7から潤滑油が漏れることを抑制してもよい。
【0016】
なお、潤滑油とは、例えばグリースである。潤滑油には、酸化防止剤、極圧添加剤、錆び止め添加剤、腐食防止剤等の添加剤が配合されていてもよい。
【0017】
図3に示すように、油供給装置8は、ギヤケース7から漏れた潤滑油を回収し、当該潤滑油をギヤケース7に収納された減速機に供給する装置である。油供給装置8は、回収部9、ポンプ10及び供給管11を備える。回収部9は、回転軸3の直下に配置される。回転軸3とギヤケース7との間の隙間を通過してギヤケース7から漏れた潤滑油は、回収部9によって回収される。
【0018】
ポンプ10は、回転部材12、シリンダ13、ピストンロッド14、ピストン15、ローラ16、バネ17、第1の弁18及び第2の弁19を備える。
【0019】
回転部材12は、その外周が円形となるように円盤状に形成され、回転軸3に取り付けられる。回転軸3は、回転部材12の偏心した位置を貫通している。そのため、回転部材12は、回転部材12の中心からずれた位置を回転中心として、回転軸3の回転に連動して回転する。
【0020】
シリンダ13は、シリンダ13の筒軸方向が鉛直方向と平行になるように回収部9内に配置される。シリンダ13は、円筒部13a、上蓋部13b及び下蓋部13cを有する。上蓋部13bは、円筒部13aの上端に配置され、鉛直方向の上方から円筒部13aの中空を覆うように設けられる。上蓋部13bは、ピストンロッド14が貫通する開口13dを有する。下蓋部13cは、円筒部13aの下端に配置され、鉛直方向の下方から円筒部13aの中空を覆うように設けられる。また、シリンダ13は、回収部9によって回収された潤滑油がシリンダ13内に流入する流入口13e、及び、流入口13eからシリンダ13内に流入した潤滑油が流出する流出口13fを有する。流入口13e及び流出口13fは、円筒部13aの下方に設けられる。以下の説明において、シリンダ13の筒軸方向を上下方向ともいう。
【0021】
シリンダ13内には、仕切板13gが設けられる。仕切板13gは、その断面がT字となるように形成される。仕切板13gは、流入口13eと流出口13fとの間を隔てるように配置される。
【0022】
ピストンロッド14は、棒状に形成され、上下方向に延びるように配置されている。ピストンロッド14は、シリンダ13の上蓋部13bの開口13dを貫通している。そのため、ピストンロッド14の一端はシリンダ13内に配され、その他端はシリンダ13の上面から突出している。以下の説明において、ピストンロッド14の一端から他端へ向かう第1の方向を上方向といい、ピストンロッド14の他端から一端へ向かう第2の方向を下方向という。
【0023】
ピストン15は、円柱状に形成され、ピストンロッド14の一端に取り付けられている。ピストン15は、シリンダ13の円筒部13aの内側の面である内筒面13hに全周密着し、上下方向に移動可能に設けられている。なお、ピストン15は、その外周にOリング等のシール部材を設けてもよい。
【0024】
ローラ16は、ピストンロッド14の他端に設けられ、回転部材12と接している。ローラ16は、その回転軸が回転軸3と平行になるように設けられているため、回転部材12の回転に連動して回転する。
【0025】
弾性部材であるバネ17は、ステンレス等の金属から形成され、シリンダ13内に設けられる。具体的には、バネ17は、シリンダ13内を流れる潤滑油が通過する経路上に設けられる。当該経路とは、流入口13eと後述する空間20と流出口13fとを結ぶ経路である。バネ17の一端は仕切板13gの上端に取り付けられ、その他端はピストン15に取り付けられている。バネ17は、ピストン15を上方向に付勢する。
【0026】
第1の弁18は、具体的にはスイング式逆止弁である。第1の弁18は、シリンダ13内に設けられ、その一端が内筒面13hに回動可能に取り付けられる。第1の弁18の他端が仕切板13gに当接しているとき、具体的には、仕切板13gの上部である上下方向に対して直交する方向に延びている部分に上方向から当接しているとき、第1の弁18は閉じた状態であり、第1の弁18の他端が仕切板13gから離れているとき、第1の弁18は開いた状態である。第1の弁18が閉じると、流入口13eと空間20との間が隔てられ、第1の弁18が開くと、流入口13eと空間20とが連通される。なお、空間20とは、シリンダ13内の一部の空間である。具体的には、空間20とは、第1の弁18及び第2の弁が閉じたとき、ピストン15、シリンダ13の内筒面13h、第1の弁18、仕切板13g及び第2の弁19で囲まれる空間である。
【0027】
第2の弁19は、具体的にはスイング式逆止弁である。第2の弁19は、シリンダ13内に設けられ、その一端が内筒面13hに回動可能に取り付けられている。第2の弁19の他端が仕切板13gに当接しているとき、具体的には、仕切板13gの上部に下方向から当接しているとき、第2の弁19は閉じた状態であり、第2の弁19の他端が仕切板13gから離れているとき、第2の弁19は開いた状態である。第2の弁19が閉じると、空間20と流出口13fとの間が隔てられ、第2の弁19が開くと、空間20と流出口13fとが連通される。
【0028】
供給管11は、その一端がシリンダ13の流出口13fに接続されており、その他端がギヤケース7の上部に接続されている。供給管11は、流出口13fから流出した潤滑油をギヤケース7の減速機に供給する。
【0029】
油供給装置8は、供給管11内に設けられる複数の第3の弁21をさらに備える。第3の弁21は、具体的にはダックビル式逆止弁である。第3の弁21は、供給管11内において、シリンダ13の流出口13fからギヤケース7へ向かう方向に潤滑油を流し、潤滑油がギヤケース7からシリンダ13の流出口13fへ向かう方向に流れることを抑制する。言い換えると、第3の弁21は、供給管11の一端から他端へ向かう方向に潤滑油を流し、供給管11の他端から一端へ向かう方向に潤滑油が流れることを抑制する。
【0030】
次に、このように構成された油供給装置8を備えたエレベータ用巻上機1における潤滑油の供給動作について説明する。
【0031】
まず、回転軸3とギヤケース7との間の隙間を通過してギヤケース7から漏れた潤滑油を回収部9が回収する。
【0032】
次に、ポンプ10は、回転軸3の回転に連動して回転部材12が回転することにより回収部9によって回収された潤滑油を供給管11に流す。以下、具体的なポンプ10の動作について説明する。
【0033】
まず、回転部材12の回転により、回収部9によって回収された潤滑油をシリンダ13内に流入させる動作について説明する。回転部材12は、回転部材12の中心からずれた位置を回転中心として、回転軸3の回転に連動して図4の矢印r1で示す方向へ回転する。回転部材12は、図4に示す回転位置P1から180度回転すると、図5に示す回転位置P2に移動する。回転部材12は、回転位置P2からさらに180度回転すると回転位置P1に移動する。
【0034】
回転部材12が回転し、回転位置P1から回転位置P2へ移動したとき、回転部材12はローラ16及びピストンロッド14を介してピストン15を下方向に移動させる。回転部材12がさらに回転し、回転位置P2から回転位置P1へ移動したとき、ピストン15はバネ17に付勢されて上方向に移動する。このように回転部材12が回転し、回転位置P1と回転位置P2との間を移動することにより、ピストン15は上下方向の移動を繰り返す。
【0035】
図4に示すように、ピストン15が上方向に移動したとき、シリンダ13内の空間20の気体の圧力が低くなるため、第1の弁18の他端が仕切板13gから離れて第1の弁18が開き、流入口13eと空間20とが連通される。そして、回収部9によって回収された潤滑油がシリンダ13内の空間20に流入する。つまり、第1の弁18は、ピストン15が上方向に移動したとき、回収部9から流入口13eを通過させてシリンダ13内の空間20に潤滑油を流入させる。なお、図4のシリンダ内の矢印は、潤滑油の流れる方向を示すものである。
【0036】
また、ピストン15が上方向に移動したとき、シリンダ13内の空間20の気体の圧力が低くなることにより、第2の弁の他端が仕切板13gに当接して第2の弁19が閉じ、空間20と流出口13fとの間が隔てられる。そのため、潤滑油が逆流すること、すなわち、潤滑油が供給管11内又はシリンダ13内の流出口13f付近からシリンダ13内の空間20に流れることが抑制される。つまり、第2の弁19は、ピストン15が上方向に移動したとき、潤滑油が供給管11から流入口13eへ向かう方向に流れることを抑制する。
【0037】
次に、回転部材12が回転することにより、シリンダ13内の潤滑油を供給管11に流す動作について説明する。図5に示すように、ピストン15が下方向に移動したとき、シリンダ13内の空間20の気体の圧力が高くなるため、第2の弁19の他端が仕切板13gから離れて第2の弁19が開き、空間20と流出口13fとが連通される。そして、シリンダ13内の空間20に流入した潤滑油が流出口13fを通過して供給管11に流れる。つまり、第2の弁19は、ピストン15が下方向に移動したとき、潤滑油を供給管11へ送る方向に流出させる。なお、図5のシリンダ内の矢印は、潤滑油の流れる方向を示すものである。
【0038】
また、ピストン15が下方向に移動したとき、シリンダ13内の空間20の気体の圧力が高くなることにより、第1の弁18の他端が仕切板13gに当接して第1の弁18が閉じ、流入口13eと空間20との間が隔てられる。そのため、潤滑油が逆流すること、すなわち、潤滑油がシリンダ13内の空間20から流入口13eを通過して回収部9に流れることが抑制される。つまり、第1の弁18は、ピストン15が下方向に移動したとき、潤滑油がシリンダ13内から流入口13eを通過して回収部9に流出することを抑制する。
【0039】
以上のように、ポンプ10は、回転軸3の回転に連動して回転部材12が回転することにより回収部9によって回収された潤滑油を供給管11に流す。
【0040】
最後に、供給管11は、ポンプ10によって流された潤滑油をギヤケース7の減速機に供給する。潤滑油は、第3の弁21を通過して、シリンダ13の流出口13fからギヤケース7へ向かう方向に流れる。この途中において潤滑油が逆流した場合、すなわち、潤滑油がギヤケース7からシリンダ13の流出口13fへ向かう方向に流れた場合、第3の弁21がこの逆流を抑制する。
【0041】
以上説明したように、エレベータ用巻上機1は油供給装置8を備える。このような実施の形態1における油供給装置8にあっては、ギヤケース7から潤滑油が漏れたとしても回収部9が潤滑油を回収し、ポンプ10が潤滑油を回収部9から供給管11へ流し、供給管11が潤滑油をギヤケース7に収納された減速機に供給する。具体的には、ポンプ10は、回転部材12、シリンダ13、ピストンロッド14、ピストン15、バネ17、第1の弁18及び第2の弁19を備える。ピストン15がバネ17に付勢されることにより上方向に移動したとき、第1の弁18が回収部9から流入口13eを通過させてシリンダ13内に潤滑油を流入させる。ピストン15が回転部材12の回転により下方向に移動したとき、第2の弁19が潤滑油を供給管11へ送る方向に流出させる。
【0042】
ギヤケース7から潤滑油が漏れてギヤケース7内の潤滑油が徐々に減少すると、減速機の歯車に十分な潤滑油の補給がされず、歯車の摩耗又は焼付き等の損傷が生じる恐れがある。実施の形態1における油供給装置8は、ギヤケース7から漏れた潤滑油をギヤケース7に収納された減速機に供給することができる。つまり、ギヤケース7から潤滑油が漏れてギヤケース7内の潤滑油が徐々に減少したとしても、回転軸3の回転に連動してポンプ10が動作するため潤滑油を自動的に補給することができる。そして、潤滑油の供給により、減速機の歯車の損傷の発生を抑制することができる。
【0043】
さらに、実施の形態1における油供給装置8にあっては、供給管11内に設けられ、潤滑油が流出口13fへ向かう方向に流れることを抑制する第3の弁21をさらに備える。そのため、潤滑油が供給管11からシリンダ13内へ逆流することを抑制され、ポンプ10が潤滑油を効率よく流すことができる。
【0044】
さらに、実施の形態1における油供給装置8にあっては、電動機2の回転軸3に回転部材12が取り付けられる。ポンプ10は、回転軸3の回転により回収部9によって回収された潤滑油を供給管11に流すことができるため、ポンプ10を動作させるための新たな電動機を設ける必要がない。
【0045】
さらに、実施の形態1における油供給装置8にあっては、ピストンロッド14の他端に設けられ、回転部材12と接し、回転部材12の回転に連動して回転するローラ16をさらに備える。ピストンロッド14の他端が回転する回転部材12と接触すると、ピストンロッド14の他端が摩耗する恐れがある。ピストンロッド14の他端に設けられたローラ16を設けることにより、ピストンロッド14の他端の摩耗を抑制することができる。また、ローラ16が回転部材12の回転に連動して回転することにより、ローラ16と回転部材12とが接触することにより生じるローラ16の摩耗を抑制することができる。
【0046】
さらに、実施の形態1における油供給装置8にあっては、金属から形成され、シリンダ13内に設けられるバネ17を備える。バネ17がシリンダ13内に設けられることにより、回収部9からシリンダ13内に流入した潤滑油がバネ17の表面に付着する。そのため、バネ17の表面が錆びることを抑制することができる。
【0047】
なお、第3の弁21が複数設けられる例について説明したが、1つであってもよい。
【0048】
なお、供給管11は、潤滑油をギヤケース7に収納された減速機に供給できればギヤケース7の上部に接続されなくてもよい。
【0049】
なお、図6に示すように、油供給装置8は、一端が流入口13eに接続される流入管22を備えてもよい。このとき、回収部9によって回収された潤滑油は流入管22の他端から流入口13eを通過してシリンダ13内に流入する。このように流入管22を備える場合、流入管22の他端のみを回収部9内に配置し、シリンダ13を回収部9の外に配置してもよいため、周囲の環境に合わせてシリンダ13を配置することができる。
【0050】
また、第1の弁18及び第2の弁19をシリンダ13内に設ける例について説明したが、図6に示すように、第1の弁18を流入管22内に設け、第2の弁19を供給管11内に設けてもよい。このとき、空間20とは、第1の弁18及び第2の弁が閉じている場合において、シリンダ13内のうちピストン15より下方向にある空間、流入管22内のうち第1の弁18よりシリンダ13側の空間、及び、供給管11内のうち第2の弁19よりシリンダ13側の空間である。
【0051】
実施の形態2.
実施の形態2における油供給装置8は、回転部材12の外周が卵形である点で実施の形態1と相違する。また、バネ17がシリンダ13の外に設けられる点で実施の形態1と相違する。さらに、仕切板13g及びローラ16が設けられない点で実施の形態1と相違する。以下、その相違点について説明する。
【0052】
図7に示すように、回転部材12は、その外周が卵形となるように形成される。回転部材12は、回転部材12の中心からずれた位置を回転中心として、回転軸3の回転に連動して回転する。
【0053】
ピストンロッド14の他端には、鍔部23が設けられる。鍔部23は、上下方向に対して直交する方向に延びている。鍔部23は、回転部材12と接する。
【0054】
バネ17は、ピストンロッド14の周囲に巻き付けられ、シリンダ13の上蓋部13bとピストンロッド14の鍔部23との間に設けられる。
【0055】
第1の弁18は、シリンダ13内に設けられ、その一端が内筒面13hに回動可能に取り付けられる。第1の弁18の他端が内筒面13hに当接しているとき、第1の弁18は閉じた状態であり、第1の弁18の他端が内筒面13hから離れているとき、第1の弁18は開いた状態である。第1の弁18が閉じると、流入口13eが閉じ、第1の弁が開くと、流入口13eが開く。
【0056】
第2の弁19は、供給管11内に設けられる。第2の弁19は、その一端がシリンダ13の円筒部13aの外側の面である外筒面13iに回動可能に取り付けられる。第2の弁19の他端が外筒面13iに当接しているとき、第2の弁19は閉じた状態であり、第2の弁19の他端が外筒面13iから離れているとき、第2の弁19は開いた状態である。第2の弁19が閉じると、流出口13fが閉じ、第2の弁19が開くと、流出口13fが開く。
【0057】
次に、このように構成された油供給装置8を備えたエレベータ用巻上機1における潤滑油の供給動作について説明する。潤滑油の供給動作のうち、実施の形態1と相違するポンプ10の動作について説明する。
【0058】
まず、回転部材12の回転により、回収部9によって回収された潤滑油をシリンダ13内に流入させる動作について説明する。回転部材12は、回転部材12の中心からずれた位置を回転中心として、回転軸3の回転に連動して図8の矢印r2で示す方向へ回転する。回転部材12は、図8に示す回転位置P3から180度回転すると、図9に示す回転位置P4に移動する。回転部材12は、回転位置P4からさらに180度回転すると回転位置P3に移動する。
【0059】
回転部材12が回転し、回転位置P3から回転位置P4へ移動したとき、回転部材12は鍔部23及びピストンロッド14を介してピストン15を下方向に移動させる。回転部材12がさらに回転し、回転位置P4から回転位置P3へ移動したとき、ピストン15はバネ17に付勢されて上方向に移動する。このように回転部材12が回転し、回転位置P3と回転位置P4との間を移動することにより、ピストン15は上下方向の移動を繰り返す。
【0060】
ピストン15が上方向に移動したとき、シリンダ13内の空間20の気体の圧力が低くなるため、第1の弁18の他端が内筒面13hから離れて第1の弁18の開き、流入口13eが開く。そして、回収部9によって回収された潤滑油がシリンダ13内の空間20に流入する。つまり、第1の弁18は、ピストン15が上方向に移動したとき、回収部9から流入口13eを通過させてシリンダ13内の空間20に潤滑油を流入させる。なお、図8のシリンダ内の矢印は、潤滑油の流れる方向を示すものである。なお、空間20とは、シリンダ13内の一部の空間であって、具体的には、上下方向において下蓋部13cとピストン15とが向かい合う部分の空間である。
【0061】
また、ピストン15が上方向に移動したとき、シリンダ13内の空間20の気体の圧力が低くなることにより、第2の弁19の他端が外筒面13iに当接して第2の弁19が閉じ、流出口13fが閉じる。そのため、潤滑油が逆流すること、すなわち、潤滑油が供給管11内からシリンダ13内の空間20に流れることが抑制される。つまり、第2の弁19は、ピストン15が上方向に移動したとき、潤滑油が供給管11から流入口13eへ向かう方向に流れることを抑制する。
【0062】
次に、回転部材12が回転することにより、シリンダ13内の潤滑油を供給管11に流す動作について説明する。図9に示すように、ピストン15が下方向に移動したとき、シリンダ13内の空間20の気体の圧力が高くなるため、第2の弁19の他端が外筒面13iから離れて第2の弁19が開き、流出口13fが開く。そして、シリンダ13内の空間20に流入した潤滑油が流出口13fを通過して供給管11に流れる。つまり、第2の弁19は、ピストン15が下方向に移動したとき、潤滑油を供給管11へ送る方向に流出させる。なお、図9のシリンダ内の矢印は、潤滑油の流れる方向を示すものである。
【0063】
また、ピストン15が下方向に移動したとき、シリンダ13内の空間20の気体の圧力が高くなることにより、第1の弁18の他端が内筒面13hに当接して第1の弁18が閉じ、流入口13eが閉じる。そのため、潤滑油が逆流すること、すなわち、潤滑油がシリンダ13内の空間20から流入口13eを通過して回収部9に流れることが抑制される。つまり、第1の弁18は、ピストン15が下方向に移動したとき、潤滑油がシリンダ13内から流入口13eを通過して回収部9に流出することを抑制する。
【0064】
以上のように、ポンプ10は、回転軸3の回転に連動して回転部材12が回転することにより回収部9によって回収された潤滑油を供給管11に流す。
【0065】
このように構成された実施の形態2に示された油供給装置8にあっても、実施の形態1に示された油供給装置8と同様に、ギヤケース7から漏れた潤滑油をギヤケース7に収納された減速機に供給することができる。つまり、ギヤケース7から潤滑油が漏れてギヤケース7内の潤滑油が徐々に減少したとしても、回転軸3の回転に連動してポンプ10が動作するため潤滑油を自動的に補給することができる。そして、潤滑油の供給により、減速機の歯車の損傷の発生を抑制することができる。
【0066】
実施の形態3.
実施の形態3における油供給装置8は、ピストンロッド14が2つの回転部材12に取り付けられる点で実施の形態1と相違する。以下、その相違点について説明する。
【0067】
図10に示すように、回転軸3は、一方の回転軸3及び他方の回転軸3を有する。一方の回転軸3は、電動機2により回転される。一方の回転軸3が回転すると、後述する2つの回転部材2を介して他方の回転軸3が回転し、ギヤケース7の減速機に回転を伝達される。
【0068】
回転部材12は、2つ設けられる。一方の回転部材12は一方の回転軸3に取り付けられ、他方の回転部材12は他方の回転軸3に取り付けられている。2つの回転部材12は、ピストンロッド14を挟むように配置されている。つまり、一方の回転部材12と他方の回転部材12とは対向している。回転部材12は、回転軸3に回転部材12の中心からずれた位置を回転中心として、回転軸3の回転に連動して回転する。
【0069】
ピストンロッド14の他端側は、2つの回転部材12に挟まれて取り付けられている。
【0070】
図11に示すように、回転部材12は、その外周が卵形となるように形成される。
【0071】
次に、このように構成された油供給装置8を備えたエレベータ用巻上機1における潤滑油の供給動作について説明する。潤滑油の供給動作のうち、実施の形態1と相違するポンプ10の動作について説明する。
【0072】
図11に示すように、2つの回転部材12は、回転部材12の中心からずれた位置を回転中心として、回転軸3の回転に連動して図11の矢印r3で示す方向へ回転する。回転部材12は、図11に示す回転位置P5から180度回転すると、図12に示す回転位置P6に移動する。回転部材12は、回転位置P6からさらに180度回転すると回転位置P5に移動する。
【0073】
回転部材12が回転し、回転位置P5から回転位置P6へ移動したとき、回転部材12はピストンロッド14を介してピストン15を下方向に移動させる。回転部材12がさらに回転し、回転位置P6から回転位置P5へ移動したとき、ピストン15はバネ17に付勢されて上方向に移動する。このように回転部材12が回転し、回転位置P5と回転位置P6との間を移動することにより、ピストン15は上下方向の移動を繰り返す。
【0074】
このように構成された実施の形態3に示された油供給装置8にあっても、実施の形態1に示された油供給装置8と同様に、ギヤケース7から漏れた潤滑油をギヤケース7に収納された減速機に供給することができる。つまり、ギヤケース7から潤滑油が漏れてギヤケース7内の潤滑油が徐々に減少したとしても、回転軸3の回転に連動してポンプ10が動作するため潤滑油を自動的に補給することができる。そして、潤滑油の供給により、減速機の歯車の損傷の発生を抑制することができる。
【0075】
実施の形態4.
実施の形態4における油供給装置8は、回転部材12が綱車5の回転軸6に取り付けられる点で実施の形態1と相違する。以下、その相違点について説明する。
【0076】
図13、14に示すように、ギヤケース7の高さ方向において、回転軸6は回転軸3より低い位置に設けられている。このため、ギヤケース7内の潤滑油は、回転軸6とギヤケース7との間の隙間から漏れやすい。
【0077】
回収部9は、回転軸6の直下に配置される。回転軸6とギヤケース7との間の隙間を通過してギヤケース7から漏れた潤滑油は、回収部9によって回収される。
【0078】
図15に示すように、回転部材12は、その外周が円形となるように円盤状に形成され、回転軸6に取り付けられる。回転軸6は、回転部材12の偏心した位置を貫通している。そのため、回転部材12は、回転部材12の中心からずれた位置を回転中心として、回転軸6の回転に連動して回転する。
【0079】
ポンプ10は、回転軸6の回転に連動して回転部材12が回転することにより回収部9によって回収された潤滑油を供給管11に流す。
【0080】
このように構成された実施の形態4に示された油供給装置8にあっても、実施の形態1に示された油供給装置8と同様に、ギヤケース7から漏れた潤滑油をギヤケース7に収納された減速機に供給することができる。つまり、ギヤケース7から潤滑油が漏れてギヤケース7内の潤滑油が徐々に減少したとしても、回転軸6の回転に連動してポンプ10が動作するため潤滑油を自動的に補給することができる。そして、潤滑油の供給により、減速機の歯車の損傷の発生を抑制することができる。
【0081】
さらに、実施の形態4における油供給装置8にあっては、綱車5の回転軸6に回転部材12が取り付けられる。ポンプ10は、回転軸6の回転により回収部9によって回収された潤滑油を供給管11に流すことができるため、ポンプ10を動作させるための新たな電動機を設ける必要がない。
【0082】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
(付記1)
減速機が収納されたギヤケースから漏れた潤滑油を回収する回収部と、
前記潤滑油を前記減速機に供給する供給管と、
巻上機の回転軸に取り付けられた回転部材を備え、前記回転軸の回転に連動して前記回転部材が回転することにより前記回収部によって回収された前記潤滑油を前記供給管に流すポンプと
を備えたエレベータ用巻上機の油供給装置。
(付記2)
減速機が収納されたギヤケースから漏れた潤滑油を回収する回収部と、
前記潤滑油が流入する流入口と前記潤滑油が流出する流出口を有するシリンダと、
前記流出口に接続され、前記流出口から流出した前記潤滑油を前記減速機に供給する供給管と、
一端が前記シリンダ内に配され、他端が前記シリンダから突出するピストンロッドと、
前記ピストンロッドの前記一端に取り付けられ、前記シリンダの内筒面に全周密着し、筒軸方向に移動可能に設けられたピストンと、
前記ピストンロッドの前記一端から前記他端へ向かう第1の方向に前記ピストンを付勢する弾性部材と、
巻上機の回転軸に取り付けられ、前記ピストンロッドの前記他端から前記一端へ向かう第2の方向に前記ピストンロッドを介して前記ピストンを移動させる回転部材と、
前記ピストンが前記第1の方向に移動したとき、前記回収部から前記流入口を通過させて前記シリンダ内に前記潤滑油を流入させ、前記ピストンが前記第2の方向に移動したとき、前記潤滑油が前記シリンダ内から前記流入口を通過して前記回収部に流出することを抑制する第1の弁と、
前記ピストンが前記第1の方向に移動したとき、前記潤滑油が前記供給管から前記流入口へ向かう方向に流れることを抑制し、前記ピストンが前記第2の方向に移動したとき、前記潤滑油を前記供給管へ送る方向に流出させる第2の弁と
を備えたエレベータ用巻上機の油供給装置。
(付記3)
前記供給管内に設けられ、前記潤滑油が前記流出口へ向かう方向に流れることを抑制する第3の弁と
をさらに備えた付記2に記載のエレベータ用巻上機の油供給装置。
(付記4)
前記ピストンロッドの前記他端に設けられ、前記回転部材と接し、前記回転部材の回転に連動して回転するローラと
をさらに備えた付記2又は3に記載のエレベータ用巻上機の油供給装置。
(付記5)
前記弾性部材は、金属から形成され、前記シリンダ内に設けられる付記2から4のいずれか一項に記載のエレベータ用巻上機の油供給装置。
(付記6)
前記回転軸は、電動機の回転軸である付記1から5のいずれか一項に記載のエレベータ用巻上機の油供給装置。
(付記7)
前記回転軸は、綱車の回転軸である付記1から5のいずれか一項に記載のエレベータ用巻上機の油供給装置。
(付記8)
回転軸と、
減速機が収納されたギヤケースと、
前記ギヤケースから漏れた潤滑油を回収する回収部と、
前記潤滑油を前記減速機に供給する供給管と、
前記回転軸に取り付けられた回転部材を備え、前記回転軸の回転に連動して前記回転部材が回転することにより前記回収部によって回収された前記潤滑油を前記供給管に流すポンプと
を備えたエレベータ用巻上機。
(付記9)
回転軸と、
減速機が収納されたギヤケースと、
前記ギヤケースから漏れた潤滑油を回収する回収部と、
前記潤滑油が流入する流入口と前記潤滑油が流出する流出口を有するシリンダと、
前記流出口に接続され、前記流出口から流出した前記潤滑油を前記減速機に供給する供給管と、
一端が前記シリンダ内に配され、他端が前記シリンダから突出するピストンロッドと、
前記ピストンロッドの前記一端に取り付けられ、前記シリンダの内筒面に全周密着し、筒軸方向に移動可能に設けられたピストンと、
前記ピストンロッドの前記一端から前記他端へ向かう第1の方向に前記ピストンを付勢する弾性部材と、
巻上機の回転軸に取り付けられ、前記ピストンロッドの前記他端から前記一端へ向かう第2の方向に前記ピストンロッドを介して前記ピストンを移動させる回転部材と、
前記ピストンが前記第1の方向に移動したとき、前記回収部から前記流入口を通過して前記シリンダ内に前記潤滑油を流入させ、前記ピストンが前記第2の方向に移動したとき、前記潤滑油が前記シリンダ内から前記流入口を通過して前記回収部に流出することを抑制する第1の弁と、
前記ピストンが前記第1の方向に移動したとき、前記潤滑油が前記流入口側に逆流することを抑制し、前記ピストンが前記第2の方向に移動したとき、前記潤滑油を前記供給管に送る方向に流出させる第2の弁と
を備えたエレベータ用巻上機。
【符号の説明】
【0083】
1 エレベータ用巻上機、2 電動機、3 回転軸、5 綱車、6 回転軸、7 ギヤケース、8 油供給装置、9 回収部、10 ポンプ、11 供給管、12 回転部材、13 シリンダ、13e 流入口、13f 流出口、13h 内筒面、14 ピストンロッド、15 ピストン、16 ローラ、17 バネ、18 第1の弁、19 第2の弁、21 第3の弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【手続補正書】
【提出日】2023-03-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
減速機が収納されたギヤケースから漏れた潤滑油を回収する回収部と、
前記潤滑油を前記減速機に供給する供給管と、
巻上機の回転軸に取り付けられた回転部材を備え、前記回転軸の回転に連動して前記回転部材が回転することにより前記回収部によって回収された前記潤滑油を前記供給管に流すポンプと
を備え
前記回転軸は、前記ギヤケースから突出して設けられており、
前記回収部は、前記回転軸と前記ギヤケースとの間の隙間を通過して前記ギヤケースから漏れた前記潤滑油を回収するエレベータ用巻上機の油供給装置。
【請求項2】
減速機が収納されたギヤケースから漏れた潤滑油を回収する回収部と、
前記潤滑油が流入する流入口と前記潤滑油が流出する流出口を有するシリンダと、
前記流出口に接続され、前記流出口から流出した前記潤滑油を前記減速機に供給する供給管と、
一端が前記シリンダ内に配され、他端が前記シリンダから突出するピストンロッドと、
前記ピストンロッドの前記一端に取り付けられ、前記シリンダの内筒面に全周密着し、筒軸方向に移動可能に設けられたピストンと、
前記ピストンロッドの前記一端から前記他端へ向かう第1の方向に前記ピストンを付勢する弾性部材と、
巻上機の回転軸に取り付けられ、前記ピストンロッドの前記他端から前記一端へ向かう第2の方向に前記ピストンロッドを介して前記ピストンを移動させる回転部材と、
前記ピストンが前記第1の方向に移動したとき、前記回収部から前記流入口を通過させて前記シリンダ内に前記潤滑油を流入させ、前記ピストンが前記第2の方向に移動したとき、前記潤滑油が前記シリンダ内から前記流入口を通過して前記回収部に流出することを抑制する第1の弁と、
前記ピストンが前記第1の方向に移動したとき、前記潤滑油が前記供給管から前記流入口へ向かう方向に流れることを抑制し、前記ピストンが前記第2の方向に移動したとき、前記潤滑油を前記供給管へ送る方向に流出させる第2の弁と
を備え
前記回転軸は、前記ギヤケースから突出して設けられており、
前記回収部は、前記回転軸と前記ギヤケースとの間の隙間を通過して前記ギヤケースから漏れた前記潤滑油を回収するエレベータ用巻上機の油供給装置。
【請求項3】
前記供給管内に設けられ、前記潤滑油が前記流出口へ向かう方向に流れることを抑制する第3の弁と
をさらに備えた請求項2に記載のエレベータ用巻上機の油供給装置。
【請求項4】
前記ピストンロッドの前記他端に設けられ、前記回転部材と接し、前記回転部材の回転に連動して回転するローラと
をさらに備えた請求項2又は3に記載のエレベータ用巻上機の油供給装置。
【請求項5】
前記弾性部材は、金属から形成され、前記シリンダ内に設けられる請求項2又は3に記載のエレベータ用巻上機の油供給装置。
【請求項6】
前記回転軸は、電動機の回転軸である請求項1から3のいずれか一項に記載のエレベータ用巻上機の油供給装置。
【請求項7】
前記回転軸は、綱車の回転軸である請求項1から3のいずれか一項に記載のエレベータ用巻上機の油供給装置。
【請求項8】
回転軸と、
減速機が収納されたギヤケースと、
前記ギヤケースから漏れた潤滑油を回収する回収部と、
前記潤滑油を前記減速機に供給する供給管と、
前記回転軸に取り付けられた回転部材を備え、前記回転軸の回転に連動して前記回転部材が回転することにより前記回収部によって回収された前記潤滑油を前記供給管に流すポンプと
を備え
前記回転軸は、前記ギヤケースから突出して設けられており、
前記回収部は、前記回転軸と前記ギヤケースとの間の隙間を通過して前記ギヤケースから漏れた前記潤滑油を回収するエレベータ用巻上機。
【請求項9】
回転軸と、
減速機が収納されたギヤケースと、
前記ギヤケースから漏れた潤滑油を回収する回収部と、
前記潤滑油が流入する流入口と前記潤滑油が流出する流出口を有するシリンダと、
前記流出口に接続され、前記流出口から流出した前記潤滑油を前記減速機に供給する供給管と、
一端が前記シリンダ内に配され、他端が前記シリンダから突出するピストンロッドと、
前記ピストンロッドの前記一端に取り付けられ、前記シリンダの内筒面に全周密着し、筒軸方向に移動可能に設けられたピストンと、
前記ピストンロッドの前記一端から前記他端へ向かう第1の方向に前記ピストンを付勢する弾性部材と、
巻上機の回転軸に取り付けられ、前記ピストンロッドの前記他端から前記一端へ向かう第2の方向に前記ピストンロッドを介して前記ピストンを移動させる回転部材と、
前記ピストンが前記第1の方向に移動したとき、前記回収部から前記流入口を通過して前記シリンダ内に前記潤滑油を流入させ、前記ピストンが前記第2の方向に移動したとき、前記潤滑油が前記シリンダ内から前記流入口を通過して前記回収部に流出することを抑制する第1の弁と、
前記ピストンが前記第1の方向に移動したとき、前記潤滑油が前記流入口側に逆流することを抑制し、前記ピストンが前記第2の方向に移動したとき、前記潤滑油を前記供給管に送る方向に流出させる第2の弁と
を備え
前記回転軸は、前記ギヤケースから突出して設けられており、
前記回収部は、前記回転軸と前記ギヤケースとの間の隙間を通過して前記ギヤケースから漏れた前記潤滑油を回収するエレベータ用巻上機。