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特開2024-3371三次元積層造形装置、および粉末均し部材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003371
(43)【公開日】2024-01-15
(54)【発明の名称】三次元積層造形装置、および粉末均し部材
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/214 20170101AFI20240105BHJP
   B29C 64/153 20170101ALI20240105BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20240105BHJP
【FI】
B29C64/214
B29C64/153
B33Y30/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102465
(22)【出願日】2022-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004271
【氏名又は名称】日本電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 達雄
(72)【発明者】
【氏名】津田 貴
(72)【発明者】
【氏名】稲永 尊也
(72)【発明者】
【氏名】清水 崇行
(72)【発明者】
【氏名】阿部 浩二
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AC04
4F213AR07
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL32
4F213WL74
4F213WL92
(57)【要約】
【課題】造形環境の熱的影響によらずに表面が平坦な粉末層の形成が可能な粉末均し部材を有する三次元造形装置、および粉末均し部材を提供することを目的とする。
【解決手段】ベースプレートと、前記ベースプレート上に供給された粉末を均して粉末層を形成するための粉末均し部材とを備えた三次元積層造形装置であって、前記粉末均し部材は、複数の位置合わせ孔を有する櫛歯状の均し板を、前記各位置合わせ孔を重ねた状態で複数枚積層したスキージと、前記重ねて配置された前記各位置合わせ孔に嵌入される複数の位置決めピンを有するアームとを備え、前記複数の位置合わせ孔は、前記櫛歯の配列方向の位置合わせのための第1位置合わせ孔と、前記櫛歯の配列方向と垂直な方向の位置合わせのための位置合わせ孔であって、前記第1位置合わせ孔を挟んだ両側に配置され、前記櫛歯の配列方向に長尺な開口形状を有する前記第2位置合わせ孔とである。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースプレートと、前記ベースプレート上に供給された粉末を均して粉末層を形成するための粉末均し部材とを備えた三次元積層造形装置であって、
前記粉末均し部材は、
複数の位置合わせ孔を有する櫛歯状の均し板を、前記各位置合わせ孔を重ねた状態で複数枚積層したスキージと、
前記重ねて配置された前記各位置合わせ孔に嵌入される複数の位置決めピンを有するアームとを備え、
前記複数の位置合わせ孔は、
前記櫛歯の配列方向の位置合わせのための第1位置合わせ孔と、
前記櫛歯の配列方向と垂直な方向の位置合わせのための位置合わせ孔であって、前記第1位置合わせ孔を挟んだ両側に配置され、前記櫛歯の配列方向に長尺な開口形状を有する第2位置合わせ孔とである
三次元積層造形装置。
【請求項2】
前記第1位置合わせ孔は、前記櫛歯の配列方向と垂直な方向に長尺な開口形状を有する
請求項1に記載の三次元積層造形装置。
【請求項3】
前記第1位置合わせ孔は、前記均し板における前記櫛歯の配列方向の中央に設けられた
請求項1に記載の三次元積層造形装置。
【請求項4】
前記第2位置合わせ孔は、前記均し板における前記櫛歯の配列方向の両端に設けられた
請求項1に記載の三次元積層造形装置。
【請求項5】
前記複数枚の均し板は、隣接して積層された均し板の櫛歯によって、櫛歯間のスリットを塞ぐように配置されている
請求項1に記載の三次元積層造形装置。
【請求項6】
粉末を均して粉末層を形成するための粉末均し部材であって、
複数の位置合わせ孔を有する櫛歯状の均し板を、前記各位置合わせ孔を重ねた状態で複数枚積層したスキージと
前記重ねて配置された前記各位置合わせ孔に嵌入される複数の位置決めピンを有するアームとを備え、
前記複数の位置合わせ孔は、
前記櫛歯の配列方向の位置合わせのための第1位置合わせ孔と、
前記櫛歯の配列方向と垂直な方向の位置合わせのための位置合わせ孔であって、前記第1位置合わせ孔を挟んだ両側に配置され、前記櫛歯の配列方向に長尺な開口形状を有する第2位置合わせ孔とである
粉末均し部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元積層造形装置、および粉末均し部材に関する。
【背景技術】
【0002】
三次元積層造形技術の一つとして、パウダーベッド方式の造形方法が知られている。この造形方法は、先に形成された硬化層および未硬化の粉末材料の上に、新たな粉末材料を供給し、造形枠を横断する幅板状の規制部材を造形枠よりも少し高い位置で水平方向に移動させて、粉末材料の高さ位置を規制し、全体が一定の厚みを有する粉末材料の層を形成する。次に、形成した粉末材料の層の表面に電子ビームまたはレーザを照射する。これにより、粉末材料の全体あるいは一部を溶融させて粉末材料同士を一体的に接合させて硬化層を形成し、また新たに形成された硬化層を下方に積層された硬化層と一体化させる。そして、このような硬化層の形成工程を繰り返すことにより、所定のパターン形状を有する硬化層が複数層積層された三次元積層造形体を得ることができるとしている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-152204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、粉末材料の層を形成するために用いる幅板状の規制部材として、複数枚の櫛歯状の均し板を積層させた構成のものがある。このような規制部材は、隣接して積層される均し板同士で櫛歯のスリットを塞ぐように各均し板を配置して固定している。このような構成の規制部材においては、造形環境からの熱的影響によって均し板が膨張すると、均し板同士の櫛歯の配置にずれが生じ、櫛歯の間に隙間が発生する場合があった。この場合、粉末材料の高さ位置を揃えることができず、表面が平坦な粉末材料の層を形成することが困難であった。
【0005】
そこで本発明は、造形環境の熱的影響によらずに表面が平坦な粉末層の形成が可能な粉末均し部材を有する三次元造形装置、および粉末均し部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的を達成するための本発明は、ベースプレートと、前記ベースプレート上に供給された粉末を均して粉末層を形成するための粉末均し部材とを備えた三次元積層造形装置であって、前記粉末均し部材は、複数の位置合わせ孔を有する櫛歯状の均し板を、前記各位置合わせ孔を重ねた状態で複数枚積層したスキージと、前記重ねて配置された前記各位置合わせ孔に嵌入される複数の位置決めピンを有するアームとを備え、前記複数の位置合わせ孔は、前記櫛歯の配列方向の位置合わせのための第1位置合わせ孔と、前記櫛歯の配列方向と垂直な方向の位置合わせのための位置合わせ孔であって、前記第1位置合わせ孔を挟んだ両側に配置され、前記櫛歯の配列方向に長尺な開口形状を有する前記第2位置合わせ孔とである。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、造形環境の熱的影響によらずに表面が平坦な粉末層の形成が可能な粉末均し部材を有する三次元造形装置、および粉末均し部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る三次元積層造形装置の概略構成図である。
図2】実施形態に係る粉末均し部材の概略構成図である。
図3】実施形態に係る粉末均し部材を構成するスキージの分解斜視図である。
図4】実施形態に係るスキージを構成する均し板の平面図である。
図5】粉末均し部材を構成するアームの撓みを示す図である。
図6】実施形態に対する比較例の問題点を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
≪三次元積層造形装置≫
図1は、実施形態に係る三次元積層造形装置1の概略構成図である。図1に示す三次元積層造形装置1は、パウダーベッド方式の三次元積層造形装置1であり、減圧チャンバー10内に、形成槽11、ベースプレート12、粉末供給装置13、粉末均し部材14、レール部材15、ダストボックス16、およびエネルギー線照射部17を備えている。また三次元積層造形装置1は、これらの構成要素のうちの駆動部を制御するための制御部18および入力部19を備えている。以下、三次元積層造形装置1を構成するこれらの構成要素を説明する。
【0010】
<形成槽11>
形成槽11は、減圧チャンバー10内に立設された筒状の構造体であり、筒状の内部において三次元積層造形物が形成される。形成槽11を構成する筒状は、一例として円筒状である。このような形成槽11は、上部開口の周縁から外周側に向かって延設されたフランジ状のテーブル11aを備えている。
【0011】
<ベースプレート12>
ベースプレート12は、形成槽11の内周壁に接して設けられたもので、形成槽11の底面を構成する。形成槽11の内周壁とベースプレート12の端縁部との隙間は、フレキシブルシール12aが配置され、形成槽11内においてのベースプレート12の摺動性と密閉性とが確保されている。このようなベースプレート12によって底面が構成される形成槽11の内部には、粉末100が貯蔵されるとともに、粉末100を所定の厚さで積層させた粉末層が順次に積層される。
【0012】
またベースプレート12は、ベースプレート駆動部12bを備える。ベースプレート駆動部12bは、形成槽11内においてのベースプレート12の昇降を制御し、形成槽11の深さを可変としている。このようなベースプレート駆動部12bは、制御部18に接続され、制御部18からの指示に基づいてベースプレート12を昇降させる。
【0013】
<粉末供給装置13>
粉末供給装置13は、テーブル11aの上部に粉末100を供給するものである。この粉末供給装置13は、粉末タンク13aと粉末タンク13aの底部に接続された定量供給器13bとを備え、定量供給器13bに設けられた粉末排出口13cから、テーブル11a上に所定量の粉末100を供給する。粉末供給装置13は、テーブル11aの一方側の端縁付近に設定された移動開始位置[ps]の近辺であって、移動開始位置[ps]よりも形成槽11の上部開口側に、形成槽11の上部開口にわたるライン状に所定量の粉末100を供給する。このような粉末供給装置13による粉末100の供給は、制御部18からの指示によって実施される。なお、移動開始位置[ps]は、次に説明する粉末均し部材14が移動を開始する位置である。
【0014】
<粉末均し部材14>
粉末均し部材14は、形成槽11の上部開口にわたる長尺状の板状材である。このような粉末均し部材14は、板状材の一辺がテーブル11aに対して所定の間隔を保った高さ位置において、テーブル11aおよび形成槽11の上部開口に沿って移動自在である。また粉末均し部材14は、制御部18からの指示により、粉末供給装置13からテーブル11a上に粉末100が供給された後に、テーブル11aの一方側の端縁付近に設定された移動開始位置[ps]から、テーブル11aに沿って上部開口に向かって移動する。
【0015】
さらに、粉末均し部材14は、形成槽11の上部開口にわたって上部開口上を通過するように折り返し位置[pr]まで移動する。折り返し位置[pr]は、テーブル11aの他方側の端縁付近に設定された位置である。粉末均し部材14は、折り返し位置[pr]に到達した後、折り返し位置[pr]から移動開始位置[ps]に向かって移動する。これにより、粉末均し部材14は、テーブル11a上に供給された粉末100を形成槽11内に供給し、形成槽11内に収容された粉末100の厚みを揃えて粉末層101とする。
【0016】
また粉末均し部材14は、形成槽11内に収容しきれずに形成槽11の上部開口からはみ出した余剰分の粉末100を、テーブル11aの外周に吐き落とす。以上のような粉末均し部材14の構成は、以降に詳細に説明する。
【0017】
<レール部材15>
レール部材15は、粉末均し部材14の走行方向にわたって敷設されたものであって、粉末均し部材14の端部を摺動自在に保持し、粉末均し部材14の移動を案内する。このようなレール部材15は、粉末均し部材14の一方側の端部のみに配置され、粉末均し部材14を片持ちする構成であってもよい。またレール部材15は、粉末均し部材14の両側の端部に配置され、粉末均し部材14を両側で保持する構成であってもよい。
【0018】
<ダストボックス16>
ダストボックス16は、粉末均し部材14の移動方向の両側において、テーブル11aの下方に配置されたものである。これらのダストボックス16は、移動開始位置[ps]側のダストボックス16sと、折り返し位置[pr]側のダストボックス16rである。これらのダストボックス16は、粉末均し部材14によってテーブル11aの外周に吐き落とされた余剰分の粉末100を収容する。
【0019】
<エネルギー線照射部17>
エネルギー線照射部17は、粉末100を溶融可能なエネルギー線の照射部であって、ベースプレート12に対向して配置され、ベースプレート12上に積層された粉末100からなる粉末層101に対してエネルギー線を照射する。エネルギー線は、例えば電子線であって、図示したエネルギー線照射部17は、電子線照射装置である。このようなエネルギー線照射部17は、次に説明する制御部18による駆動制御により、形成槽11内のベースプレート12上に貯蔵された粉末100からなる粉末層101に対して、設定された照射範囲においてエネルギー線を走査させながら照射する。
【0020】
<制御部18>
制御部18は、上述した構成要素の駆動を制御するものであって、計算機によって構成されている。計算機は、いわゆるコンピューターとして用いられるハードウェアである。計算機は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、およびROM(Read Only Memory)やHDD(hard disk drive)のような不揮発性の記憶部を備え、さらにはネットワークインターフェースを備えていてもよい。このような計算機によって構成された制御部18は、CPUが、ROMやRAMに記録された造形プログラムを実行する。
【0021】
<入力部19>
入力部19は、三次元積層造形物の形成開始を指示するための入力、および三次元積層造形物を形成するために必要な造形データを入力するためのものである。
【0022】
≪粉末均し部材14の詳細な構成≫
図2は、実施形態に係る粉末均し部材14の概略構成図である。図2に示すように、粉末均し部材14は、アーム14aと、アーム14aに保持されたスキージ14bとを備える。以下、アーム14aの延設方向をx方向とし、粉末均し部材14の配置面内においてx方向と垂直な方向をy方向とし、x方向およびy方向に対して垂直な方向をz方向として、アーム14aおよびスキージ14bの構成を説明する。
【0023】
[アーム14a]
アーム14aは、長尺状の2枚の横梁141を備え、2枚の横梁141でスキージ14bを挟み込み、ボルト142で2枚の横梁141を止め付けることで、2枚の横梁141間にスキージ14bを固定している。このようなアーム14aは、2枚の横梁141の端部をレール部材15に摺動自在に嵌合させ、これにより粉末均し部材14のz方向の移動をレール部材15に案内させる。アーム14aを構成する2枚の横梁141は、金属材料やセラミックス材料で構成される。
【0024】
これらの2つの横梁141のうちの一方は、他方の横梁141側に向かってz方向に突出させた複数の位置決めピン143を有する。アーム14aを構成する2つの横梁141のうちの他方は、各位置決めピン143と個別に嵌合する複数の孔(図示省略)を有している。
【0025】
複数の位置決めピン143および位置決めピン143と嵌合する孔は、一例として、横梁141の延設方向(x方向)に沿って配置され、例えば両端付近と中央付近とに設けられている。また複数の位置決めピン143は、典型的にはy方向の同位置に配置される。
【0026】
[スキージ14b]
図3は、実施形態に係る粉末均し部材を構成するスキージ14bの分解斜視図である。図2および図3に示すように、スキージ14bは、複数枚の均し板200を重ねた構成のものである。図示した例において、スキージ14bは、3枚の均し板201,202,203(図3参照)を順に積層させた構成となっている。
【0027】
各均し板200は櫛歯状のものであって、櫛歯200aの先端の高さを揃えた状態で、櫛歯200aの基端側がアーム14aに保持されている。また複数枚の均し板200は、アーム14aの延設方向(x方向)を櫛歯200aの配列方向とし、隣接して重ねられた均し板200同士で櫛歯200a間のスリット200bが塞がれるように配置されている。このような構成により、粉末100を均す際(図1参照)に、下地となる粉末層101の溶融部のエッジ等に突起ができた場合でも、突起に当接した部分の櫛歯200aのみが変形し、スキージ14bの先端の高さを維持して、粉末の敷き詰めと均しを行うことを可能な構成としている。このような各馴らし板200は、金属材料、セラミックス材料、または樹脂によって構成されたものである。
【0028】
図4は、実施形態に係るスキージを構成する均し板200の平面図である。図2図4に示すように、各均し板200は、複数の櫛歯200aを有する櫛歯状のものである。また各均し板200は、第1位置合わせ孔200hと、第2位置合わせ孔200vとを有する。これらの第1位置合わせ孔200hおよび第2位置合わせ孔200vは、アーム14aの位置決めピン143が嵌入される貫通孔として、各均し板200の基端側に設けられている。次に、均し板200における櫛歯200a、第1位置合わせ孔200h、および第2位置合わせ孔200vを順に説明し、その後、均し板200の積層構造の詳細を説明
【0029】
-櫛歯200a-
スキージ14bを構成する各均し板200の櫛歯200aは、一例として櫛歯200aの配列方向(x方向)と垂直な方向(y方向)を、延設方向としている。しかしながら、櫛歯200aの延設方向がこれに限定されることはなく、櫛歯200aの配列方向(x方向)に対して斜めであってもよい。また櫛歯200aは、例えば均等なピッチで配置されており、櫛歯200a間に設けられたスリット200bの大きさは、櫛歯200aで塞ぐことができる大きさであることとする。また複数の櫛歯200aにおいて、両端の櫛歯200aのうちの少なくとも一方の櫛歯200aの幅は、他の櫛歯200aよりも小さく(または大きく)てもよい。これにより、同一設計の均し板200を裏表交互に積層させることで、隣接して重ねられた均し板200同士で櫛歯200aのスリット200bを塞いだスキージ14bを構成することができる。
【0030】
図4に示した例では、図面上の右端部の櫛歯200aを調整用櫛歯200aaとし、この調整用櫛歯200aaの幅を、他の櫛歯200aの1/3程度としている。また櫛歯200a間のスリット200bの幅は、櫛歯200aの1/3程度としている。
【0031】
-第1位置合わせ孔200h-
第1位置合わせ孔200hは、アーム14aの延設方向であって、櫛歯200aの配列方向(x方向)に対する均し板200の位置決め、すなわち櫛歯200aの位置決めのための貫通孔である。この第1位置合わせ孔200hは、櫛歯200aの配列方向(x方向)の開口幅[hx]が、この第1位置合わせ孔200hに嵌入される位置決めピン143の径と同程度であってよい。この開口幅[hx]は、第1位置合わせ孔200hに位置決めピン143を貫通させた状態で、櫛歯200aの配列方向(図面上のx方向)に余裕をもたせることのない大きさであることとする。
【0032】
また、第1位置合わせ孔200hにおいて、y方向の開口幅[hy]は、位置決めピン143を嵌入可能な大きさであればよい。ただし、この開口幅[hy]は、例えばアーム14aの熱変形による撓みを吸収できる程度の大きさであることが好ましく、この場合、第1位置合わせ孔200hはy方向に長尺な開口形状となる。
【0033】
図5は、粉末均し部材14を構成するアーム14aの撓みを示す図である。この図に示すように、例えば金属材料を用いて構成された粉末均し部材14は、造形環境からの熱的影響によって高温になり、素材の内部応力が解放されてアーム14aに撓みなどの熱変形が生じ、位置決めピンの位置関係が変化する。
【0034】
そこで、均し板200の第1位置合わせ孔200hは、櫛歯200aの延設方向(y方向)の開口幅[hy]を、位置決めピン143の径よりも十分に大きくすることで、アーム14aの熱変形を吸収できる構成とする。
【0035】
以上のような第1位置合わせ孔200hは、各均し板200において、櫛歯200aの配列方向(図面上のx方向)の中央付近に配置されていることが好ましく、最も好ましい配置は中央部である。これにより、図3に示すように、積層された均し板200が同一設計のものであっても、同一設計の均し板200を裏表交互に積層させることにより、隣接して重ねられた均し板200同士で櫛歯200aのスリット200bを塞いだスキージ14bを構成することができる。この場合、各均し板200は、櫛歯200aの配列方向(x方向)に対して垂直なy方向を、櫛歯200aの延設方向とすることが好ましい。
【0036】
また第1位置合わせ孔200hが、櫛歯200aの配列方向(x方向)の中央であれば、図3中の矢印に示すように、各均し板200は、櫛歯200aの配列方向(x方向)の中央から両側に向かって膨張する。このため、均し板200の両端部の膨張による移動量がもっとも大きい部分において、膨張による移動量を最小限に抑えることができる。
【0037】
-第2位置合わせ孔200v-
図2図4に示すように、第2位置合わせ孔200vは、アーム14aの延設方向(x方向)に垂直なy方向に対する均し板200の位置決めのための貫通孔である。この第2位置合わせ孔200vは、y方向の開口幅[vy]が、この第2位置合わせ孔200vに嵌入される位置決めピン143の径と同程度であってよい。この開口幅[vy]は、第2位置合わせ孔200vに位置決めピン143を貫通させた状態で、y方向に余裕をもたせることのない大きさであることとする。
【0038】
また、第2位置合わせ孔200vにおいて、櫛歯200aの配列方向(x方向)の開口幅[vx]は、例えば金属材料からなる均し板200の熱膨張を吸収できる程度の大きさであり、第2位置合わせ孔200vはx方向に長尺な開口形状を有する。
【0039】
以上のような第2位置合わせ孔200vは、各均し板200において、第1位置合わせ孔200hを挟んだ両側に配置されていることとし、均し板200の両端に配置されていることが好ましい。これにより、アーム14aに対する均し板200の姿勢を安定化させることが可能である。また、これらの2つの第2位置合わせ孔200vは、第1位置合わせ孔200hから等しい距離に配置されていることが好ましい。これにより、同一設計の均し板200を裏表交互に積層させることで、隣接して重ねられた均し板200同士で櫛歯200aのスリット200bを塞いだスキージ14bを構成することができる。
【0040】
-均し板200の積層構造-
以上のような第1位置合わせ孔200h、第2位置合わせ孔200v、および櫛歯200aを有する均し板200は、隣接して重ねられた均し板200同士で櫛歯200a間のスリット200bを塞ぐように積層される。この状態において、重ねて配置された複数の第1位置合わせ孔200hに、1本の位置決めピン143を嵌入させ、さらに両脇において重ねて配置された第2位置合わせ孔200vに、それぞれ1本の位置決めピン143を嵌入させる。
【0041】
ここで、同一設計の均し板200を積層させて1つのスキージ14bとする場合、図3を参照し、複数枚の積層された均し板200のうち、奇数番目に積層された均し板201,203に対して、偶数番目に積層された均し板202を裏返しとする。これにより、調整用櫛歯200aaの配置は積層方向において交互になる。この状態において、各均し板200の中央に配置された複数の第1位置合わせ孔200hに、アーム14aの中央に設けられた1本の位置決めピン143を嵌入させる。また、第1位置合わせ孔200hの両脇において重ねて配置された第2位置合わせ孔200vに、それぞれ1本の位置決めピン143を嵌入させる。
【0042】
≪実施形態の効果≫
以上説明した実施形態によれば、櫛歯200aの配列方向の位置合わせのための第1位置合わせ孔200hの両側に、これと垂直な方向に長尺な開口形状の第2位置合わせ孔200vを配置した均し板200構造とした。これにより、造形環境からの熱的影響を受けた場合に、数枚積層された各均し板200は、第1位置合わせ孔200hを起点して両側に向かって膨張する。このため、均し板200同士の櫛歯の配置にずれが生じ難く、櫛歯200aの間に隙間が発生することを防止できる。さらに、均し板200同士の擦れや櫛歯200a同士が引っ掛かりを防止できる。この結果、造形環境の熱的影響によらずに、表面が平坦な粉末層101の形成が可能となる。
【0043】
図6は、実施形態に対する比較例の問題点を説明する図であり、粉末均し部材を構成するスキージ14b’の分解斜視図である。この図に示すスキージ14b’が、実施形態のスキージ14bと異なるところは、均し板200’に設けた第1位置合わせ孔200h’と第2位置合わせ孔200v’の配置状態にある。これらの均し板200’は、同一設計のものであり、櫛歯200aは実施形態のものと同様の構成であり、一端側の櫛歯200aを調整用櫛歯200aaとし、この調整用櫛歯200aaの幅よりも小さくした構成のものである。このような構成において、第1位置合わせ孔200h’が一方の端部(例えば調整用櫛歯200aa側の端部)に配置されている。また、中央部と他端部に第2位置合わせ孔200v’が配置された構成を有している。
【0044】
またこのような構成の均し板200’は、裏表交互に積層してスキージ14b’を構成し、第1位置合わせ孔200h’と第2位置合わせ孔200v’に、ここでの図示を省略したアームの位置決めピン143を嵌入させて粉末均し部材としている。
【0045】
このような構成のスキージ14b’を有する粉末均し部材では、環境からの熱的影響を受けた場合、図6中の矢印に示すように、各均し板200’は端部に設けた第1位置合わせ孔200h’を基準にして熱膨張する。このため、隣接する均し板200’は、逆方向に向かって膨張することになり、均し板200’同士の櫛歯の配置にずれが生じ、櫛歯200aの間に隙間が発生する危険性があった。また、隣接する均し板200’が逆方向に向かって膨張することにより、均し板200’同士が擦れたり、櫛歯200a同士が引っ掛かることで、均し板200’が波打つ場合もあった。さらに、熱によってアームが変形した場合には、位置決めピン143の配置にずれが生じ、これに追従して均し板200’に撓みが生じる場合もあった。これに対して、本願実施形態の構成によれば、上述した通りに、これらを防止することが可能である。
【符号の説明】
【0046】
1…三次元積層造形装置
12…ベースプレート
14…粉末均し部材
14a…アーム
14b…スキージ
15…レール部材
100…粉末
101…粉末層
141…横梁
142…ボルト
143…位置決めピン
200…均し板
200a…櫛歯
200aa…調整用櫛歯
200b…スリット
200h…第1位置合わせ孔
200v…第2位置合わせ孔
201,203…奇数番目の均し板
202…偶数番目の均し板
図1
図2
図3
図4
図5
図6