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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033713
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】鉄道車体用無人搬送台車
(51)【国際特許分類】
   B61B 13/00 20060101AFI20240306BHJP
【FI】
B61B13/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137476
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125737
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 昭博
(72)【発明者】
【氏名】寺澤 佑一
(72)【発明者】
【氏名】西本 翔太郎
(72)【発明者】
【氏名】森中 裕紀
【テーマコード(参考)】
3D101
【Fターム(参考)】
3D101BA01
3D101BB33
3D101BB38
3D101BE06
(57)【要約】
【課題】鉄道車体の前後を支えながら安全に搬送するための鉄道車体用無人搬送台車を提供すること。
【解決手段】搭載する鉄道車体3の最大幅寸法より小さく形成された矩形の台車フレーム11と、台車フレーム11に組付けられた走行装置12と、台車フレーム11の上部に配設され、鉄道車体3を搭載させる載置台31と、走行方向前方の障害物を検出する走行方向検出センサ41,42と、搭載した鉄道車体3の車体周りの障害物を検出するための車体用検出センサ43と、走行方向検出センサ41,42および車体用検出センサ43の検出信号に従って走行装置12の駆動を制御する駆動制御装置7と、を有する鉄道車体用無人搬送台車1。
【選択図】図5

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搭載する鉄道車体の最大幅寸法より小さく形成された矩形の台車フレームと、
前記台車フレームに組付けられた走行装置と、
前記台車フレームの上部に配設され、前記鉄道車体搭載させる載置台と、
走行方向前方の障害物を検出する走行方向検出センサと、
搭載した前記鉄道車体の車体周りの障害物を検出するための車体用検出センサと、
前記走行方向検出センサおよび前記車体用検出センサの検出信号に従って前記走行装置駆動を制御する駆動制御装置と、
を有する鉄道車体用無人搬送台車。
【請求項2】
前記車体用検出センサは、前記鉄道車体の横を下から上に向けて照射されるレーザ光が前記鉄道車体の側面から遠ざかる方向に傾斜し、且つ、前後方向に所定角度の範囲を検出領域としてレーザ光を照射させるものである請求項1に記載の鉄道車体用無人搬送台車。
【請求項3】
前記走行装置は、前記台車フレームの前後左右に複数台が前記台車フレームに対して揺動可能に組付けられ、それぞれ独立して回転させられる複数の車輪を備えている請求項1に記載の鉄道車体用無人搬送台車。
【請求項4】
前記載置台は、前記台車フレームの幅方向に延在する水平な横軸を中心として前後端が上下に揺動するベースプレートと、前記ベースプレートに対して前記横軸に直交する幅方向中央の縦軸を回転中心として左右端が前後すると共に前記鉄道車体が搭載されるテーブルとを備えるものであり、前記車体用検出センサが前記テーブルの左右端にそれぞれ設けられた請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の鉄道車体用無人搬送台車。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車体の前後を支えながら安全に搬送するための鉄道車体用無人搬送台車に関する。
【背景技術】
【0002】
製造工場あるいは建設現場などでは搬送対象物を自動で搬送するための無人搬送台車が使用されている。下記特許文献1は、ロボットアームを搭載した搬送台車が開示されている。その搬送台車は、前部及び後部に障害物を検出する非接触形の台車用センサが設けられ、その検出領域が走行路の路面とほぼ平行になるように設定されている。また、搬送台車の周囲には、アームに対する障害物を検出する非接触形のアーム用センサが設けられている。そのアーム用センサは、斜め上方を指向するように取付けられ、検出領域はアームが動作する高さまでに設定されている。そして、台車用センサは、進行方向の障害物検出距離をアーム用センサの同方向の障害物検出距離よりも長くなるよう設定されている。そこで、搬送台車は、台車用センサから障害物検出信号に従って停止し、アームは、アーム用センサから障害物検出信号に従って停止するよう、それぞれ駆動制御が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9-300252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、無人搬送台車にとって安全な走行を実現するには衝突回避が必須である。そのため、無人搬送台車には前述した従来例のように障害物を回避する構成がとられ、また、ほかにも様々な無人搬送台車においてセンサを使用した技術が開示されている。それぞれに応じた課題を解決する必要があり、鉄道車両を搬送する場合にも当然要求されることである。ただ、鉄道車両検修工場における鉄道車両の車体部(以下、鉄道車体と記す)の搬送は、これまで鉄道レールに従った移動のほか、トラバーサなどの設備が使用されていた。こうした従来の搬送方法であれば問題ないが、今後無人搬送台車によって鉄道車体を搬送するにはセンサを用いた障害物回避のための構成が必要になる。
【0005】
そこで、本発明は、かかる課題を解決すべく、鉄道車体の前後を支えながら安全に搬送するための鉄道車体用無人搬送台車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る鉄道車体用無人搬送台車は、搭載する鉄道車体の最大幅寸法より小さく形成された矩形の台車フレームと、前記台車フレームに組付けられた走行装置と、前記台車フレームの上部に配設され、前記鉄道車体搭載させる載置台と、走行方向前方の障害物を検出する走行方向検出センサと、搭載した前記鉄道車体の車体周りの障害物を検出するための車体用検出センサと、前記走行方向検出センサおよび前記車体用検出センサの検出信号に従って前記走行装置駆動を制御する駆動制御装置と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
前記構成によれば、幅寸法が小さく形成された台車フレームに載置台を介して鉄道車体が搭載され、駆動制御装置によって走行装置が制御されることによって搬送が行われるが、その際、走行方向検出センサによって走行方向前方の障害物が検出されるほか、車体用検出センサによって搭載した鉄道車体の車体周りが検出されるため、例えば出入口のような狭い箇所では鉄道車体が接触する前に停止させることができ、鉄道車体の安全な搬送が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】鉄道車体を2台の鉄道車体用無人搬送台車に搭載した搬送時の状態を示した斜視図である。
図2】鉄道車体用無人搬送台車を上方から示した斜視図である。
図3】鉄道車体用無人搬送台車を下方から示した斜視図である。
図4】鉄道車体用無人搬送台車を示した平面図である。
図5】複数の検出センサによってつくりだされる検出領域を示した図である。
図6】鉄道車体が出入口を通る際に車体用検出センサから照射されるレーザ光の状態を示した図である。
図7】無人搬送台車制御システムの機能構成を簡易的に示したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る鉄道車体用無人搬送台車の一実施形態について、図面を参照しながら以下に説明する。本実施形態では、鉄道車体に対する検査や修繕などを行う鉄道車両検修工場において、その鉄道車体を搬送することを可能にする鉄道車体用無人搬送台車について説明する。図1は、鉄道車体を2台の鉄道車体用無人搬送台車に搭載した搬送時の状態を示した斜視図である。この鉄道車体3は、通常の運転時にはその前部および後部が台車に搭載されて鉄道レールを走行するものであるが、本実施形態の鉄道車体用無人搬送台車(以下、単に「無人搬送台車」という)1は、そうした台車に換えて鉄道車体3を前後で支持し、当該鉄道車体を検査あるいは修繕するために鉄道車両検修工場内を無人搬送するものである。
【0010】
鉄道車体3は、鉄道車両検修工場において定期的に検査などが行われるが、その鉄道車両検修工場には鉄道レールが敷かれており、トラバーサなどの設備が整えられている。これまで鉄道車両検修工場内を移動する鉄道車体3は、本台車の代わりに仮台車が使用され、そこに搭載されることにより鉄道レールに従った移動が行われていた。従って、鉄道車両検修工場は、例えば建屋出入口など鉄道車体3が移動することとなる周囲の建物や設備は、鉄道レールに従って移動する鉄道車体3の外形寸法に応じて設計されている。そうした工場内を無人搬送するには、狭い箇所を鉄道車体3が衝突せず通過できるようにするための手段が必要となる。
【0011】
本実施形態の無人搬送台車1は、このような従来から使用されてきた鉄道車両検修工場での無人搬送を可能にするものである。図2乃至図4は、その無人搬送台車1を示した図である。特に、図2は上方から示した斜視図であり、図3は下方から示した斜視図、そして図4は平面図である。なお、本実施形態では、各図に示すX軸方向を、無人搬送台車1の前後方向として、また鉄道車体3を搬送する際の前後方向として説明する。
【0012】
無人搬送台車1は、角形鋼管を接合した矩形の台車フレーム11によって構成され、そこに4台の走行装置12が前後左右に組み付けられている。4台の走行装置12は同じ構造であり、台車フレーム11に対して下側から組み付けられている。走行装置12は、装置本体20に対して独立して回転する一対の車輪21,22と駆動モータ23,24とが一体になって構成されている。車輪21,22は、各々の車軸が同軸上に位置することで平行に配置され、その車輪21,22を前後に挟んで配置された駆動モータ23,24から、減速機を介して対応する車軸に回転が伝達されるよう構成されている。
【0013】
走行装置12は、駆動モータ23,24が走行モータおよび操舵モータとして機能するものである。すなわち、駆動モータ23,24の駆動制御によって、例えば車輪21,22が同じ方向に回転すれば直進走行が行われ、逆方向に回転すれば操舵が行われるようになっている。即ち、車輪21,22が逆方向に回転した場合には、走行装置12は、その装置本体20が台車フレーム11に対して鉛直方向の装置回転軸によって、図3の矢印Aで示すように回転可能に組み付けられており、操舵を行うに当たって車輪21,22の角度が変えられるようになっている。
【0014】
無人搬送台車1は、こうした4つの走行装置12に対する制御によって車輪21,22の角度が揃えられ、図1に示すように、搭載した鉄道車体3を前後方向に直進走行させるほかX軸に直交する横行や一定角度の斜行による走行が可能になっている。また、走行装置12は、鉛直な装置回転軸に対して直交する水平な前後軸によって、装置本体20が図3の矢印Bに示すように、走行方向に直交する台車フレーム11の幅方向に揺動可能な構成がとられている。
【0015】
さらに無人搬送台車1は、台車フレーム11に対して不図示の走行揺動梁が設けられ、4台ある走行装置12のうち前側の2台または後側の2台がその走行揺動梁に組み付けられている。その走行揺動梁は、台車フレーム11に対して幅方向の中心位置を前後方向に通した前後軸によって軸支されたものであり、図2の矢印Cで示すように上下に変位する左右端部に走行装置12がそれぞれ組み付けられている。この様な構成の走行装置12を有する無人搬送台車1は、凹凸があって平坦でない鉄道車両検修工場内を安定して走行することができる。
【0016】
また、無人搬送台車1は、台車フレーム11上に長尺搬送対象物である鉄道車体3を搭載するための載置台31が設けられている。この載置台31は、長方形のテーブル32とベースプレート33とが重ねられ、長手方向を台車フレーム11の幅寸法に合わせるように構成されたものであり、無人搬送台車1を前後方向に見た中間位置に配置されている。テーブル32は、長方形の鉄板の両端部が直角に折り曲げられ、ベースプレート33を覆うようにして組付けられ、その折り曲げられた端部には後述するように車体用検出センサ43が取り付けられるようになっている。載置台31は、ベースプレート33が台車フレーム11に対して幅方向に水平な横軸35によって軸支され、鉄道車体3が直接搭載されるテーブル32は、そのベースプレート33に対して横軸35に直交する回転中心の軸受36を介して組み付けられている。
【0017】
軸受36は、ベースプレート32の幅方向中央であって、かつ無人搬送台車1の中央部に位置する。そして、その中央部には鉄道車体3側の中心ピンが入り込む位置決め穴37が形成されている。こうした載置台31は、テーブル32とベースプレート33とが一体になって、横軸35を中心に図3の矢印Dで示すように揺動することで、前後端が交互に上下するピッチング動作が生じるようになっている。また、載置台31は、テーブル32が軸受36によってベースプレート33に対して、図4の矢印Eで示すように回転することで、左右端が交互に前後するヨーイング動作が生じるようになっている。
【0018】
ところで、無人搬送台車1について安全な搬送を実現するには、工場内を移動する作業員はもちろん各種設備などに対する接触や衝突を回避するため、検出センサを用いた駆動制御が必要になる。しかし、小型化された無人搬送台車1は、鉄道車体3の下に収まるように搭載した状態で搬送が行われる。一方で、搬送中の接触回避は鉄道車体3に対するものでありながら、そのための検出センサを鉄道車体3に設けるわけにはいかない。従って、無人搬送台車1に取り付けた検出センサによって、搭載した鉄道車体3の周囲を適切に検出する必要がある。
【0019】
先ず、無人搬送台車1は、その前面部と後面部とに前方検出センサ41が取り付けられている。この前方検出センサ41は光学センサであって、検出波であるレーザ光を所定角度で照射することにより、前方に存在する人や障害物など(以下、まとめて「障害物」という)からの反射光(反射波)を受光するものである。その前方検出センサ41によれば、図面右側へと走行する場合に、その前方に検出領域45がつくられる。図5は、その前方検出センサ41を含む複数の検出センサによってつくりだされる検出領域を示した図である。なお、この前方検出センサ41は、レーザ光に限定されるものではなく、赤外線や超音波などを放射して検出を行ってもよい。また、鉄道車体3を前後で支持する2台の無人搬送台車1は、前方用台車、後方用台車の区別はなく、使用される状況や走行方向により監視すべき方向が変わるため、前後両側に前方検出センサ41が設けられている。
【0020】
次に、無人搬送台車1は、側方の障害物を検出するための側方検出センサ42が左右両側に設けられている。無人搬送台車1,1は図1に示す搭載状態の鉄道車体3をX軸に直交する横行または一定角度で斜行させることがあり、そうした走行時の進行方向に存在する障害物を検出する必要があるためである。そして、側方検出センサ42によれば、2台の無人搬送台車1に設けられ、図5に示すように鉄道車体3の全長にわたって車体側方側に検出領域46がつくられる。なお、側方検出センサ42は図5に示す車体反対側にも設けられ、同じように検出領域46がつくられている。側方検出センサ42は、前方検出センサと同じく光学センサであって、検出波であるレーザ光を広範囲に照射することにより、前方に存在する物体からの反射光(反射波)を受光するものである。側方検出センサ42に関してもレーザ光に限定されるものではなく、赤外線や超音波などを放射して検出を行ってもよい。
【0021】
さらに無人搬送台車1は、狭い箇所を通過して鉄道車体3を搬送する必要があるため、その車体が近づくことになる障害物を検知する必要がある。前述したように、鉄道車両検修工場の建屋の出入口や地上設備などは、鉄道レールを走行する鉄道車体3を想定し、鉄道車両が通常走行する軌道に適用される建築限界に近い寸法で造られている。そのため、鉄道車体3が通過する建物や設備などとの隙間は小さく、無人搬送台車1による鉄道車体3の搬送が困難なところであるといえる。そこで、無人搬送台車1には狭い箇所を通過する際には鉄道車体3と障害物に衝突する前に停止できるように、車体周りの障害物を検出するための車体用検出センサ43が台車両側部に設けられている。
【0022】
車体用検出センサ43は、二次元のレーザスキャナであり、鉄道車体3の横を下から上に向けてレーザ照射し、図5に示すように前後方向に約180°の範囲を検出領域47にするものである。その検出領域47は、車体用検出センサ43から放射状に複数のレーザ光が順番に照射され、台車の中心から妻面の上端までの距離(本実施例では半径8メートル)以上の領域が検出対象範囲として設定されている。そして、左右両側に作られた検出領域47によって、鉄道車体3の前方には側方からの障害物を検出する一点鎖線で示した検出領域48が仮想的に作りだされる。この検出領域48は、正面から見て鉄道車体3の幅寸法および高さ寸法より大きな範囲となっている。なお、車体用検出センサ43に関してもレーザ光に限定されるものではなく、赤外線や超音波などを使用したセンサであってもよい。
【0023】
無人搬送台車1は、建屋出入口や地上設備などの通過を可能にするため鉄道車体3よりも幅寸法が小さく設計されている。そのため、車体用検出センサ43を台車フレーム11に取り付けても、検出領域47における適切な検出ができない。しかも、無人搬送台車1は、鉄道車体3をヨーイング動作する載置台31に搭載するため、台車フレーム11に対して鉄道車体3が傾くことになる。そこで、車体用検出センサ43は、鉄道車体3との位置関係が一定になるように、載置台31の特にテーブル32の端部にセンサブラケット38を介して取り付けられている。
【0024】
ただし、センサブラケット38が鉄道車体3から幅方向にはみ出してしまっては、車体用検出センサ43が搬送時に衝突してしまう。そこで、図6に示すように、車体用検出センサ43から照射されるレーザ光Lが鉄道車体3の側面から遠ざかる方向に傾斜するように、鉛直線に対して照射角度θが設定されている。なお、この照射角度θが大きければ、図示する出入口100など鉄道車体3が狭い箇所の通過できるようにするための車体用検出センサ43がすぐに反応してしまい、かえって搬送の妨げになる。本実施形態ではこのような点を考慮し、鉄道車体3と干渉しない極力小さな照射角度θとして例えば3.5°で設定されている。
【0025】
次に、図7は、無人搬送台車制御システムの機能構成を簡易的に示したブロック図である。この無人搬送台車制御システムでは、コンピュータを用いて構成された搬送管理装置5と、無人搬送台車1に搭載された駆動制御装置7との間で走行指令などの情報通信が行われ、所定の経路に従った鉄道車体3の搬送が行われるようになっている。
【0026】
2台の無人搬送台車1は、一方がマスタとなり他方がスレーブとなって協調走行が行われる。駆動制御装置7は、搬送管理装置5および無人搬送台車1同士で走行情報を送受信するための走行情報通信部51を有し、鉄道車体3を搬送するための搬送情報を受けるほか互いの走行状態について確認が行われるようになっている。また、駆動制御装置7は、各々の無人搬送台車1について進行速度や移動方向、現在の位置座標などの走行情報を算出する走行情報算出部52を有し、マスタ側であれば自らの位置座標が算出され、スレーブ側であればマスタ側との相対的な位置関係が算出される。
【0027】
更に、駆動制御装置7は、走行装置12に対する走行指令を作成する駆動指令部53を有している。その駆動指令部53は、搬送管理装置5から鉄道車両検修工場における搬送経路などを含む搬送情報、走行情報算出部52において算出される走行情報、そして走行情報通信部51を介して取得した他方の無人搬送台車1に関する走行情報などに基づき、自らの走行情報と比較が行われる。また、無人搬送台車1には前述した前方検出センサ41、側方検出センサ42および車体用検出センサ43からの検出信号が駆動指令部53に送られ、各センサのいずれかが障害物を検知した場合には、停止指令や減速指令が作成されるようになっている。
【0028】
続いて、鉄道車両検修工場における鉄道車体3の搬送は、その鉄道車体3の前後2台の無人搬送台車1に搭載され、所定の搬送経路に従った移動が行われる。2台の無人搬送台車1は、各々の走行装置12について駆動モータ23,24に対する駆動制御が行われ、それにより車輪21,22に回転が与えられ、協調した鉄道車体3の搬送が行われる。鉄道車体3は、図1に示すX軸方向に直進するほか、斜行や横行といった走行方向の切り換えが行われて進行する。
【0029】
鉄道車体3の進行方向に対して、前方検出センサ41や側方検出センサ42によって検出が行われ、障害物が存在する場合にはその検出信号が駆動指令部53に送られ、駆動モータ23,24に対する停止制御が行われる。そして、その障害物が取り除かれるなどした後、再び走行が開始される。その一方で、例えば一定距離離れた設備を検出した場合には、駆動モータ23,24に対する減速制御が行われるとともに、無人搬送台車1の走行方向の修正制御が行われるようにしてもよい。 ただし、この場合でも一定の距離まで近づいても障害物が回避できない場合には停止制御に切り換えられる。無人搬送台車1が停止した場合には、駆動制御装置7から搬送管理装置5へと異常信号が送信され、そのことがオペレータに報知される。
【0030】
次に、工場建屋の出入口100など図6に示すような狭い箇所を通過する場合には、車体用検出センサ43によって鉄道車体3の側部が検出される。これにより、無人搬送台車1が左右の片側に寄ってしまったような場合、またシャッタが途中まで下りてしまっているような場合には、鉄道車体3の側面や天井が衝突する状態であることが車体用検出センサ43によって検出される。車体用検出センサ43からは検出信号が駆動指令部53へと送られ、駆動モータ23,24に対する停止制御が行われる。そして、無人搬送台車1が停止した場合には、駆動制御装置7から搬送管理装置5へと異常信号が送信され、そのことがオペレータに報知される。
【0031】
よって、本実施形態の無人搬送台車1によれば、長尺な鉄道車体3を平滑でない鉄道車両検修工場においても搬送することができる。そして、既存の設備そのままの鉄道車両検修工場は鉄道車体3が通過する建物や設備などとの隙間は小さいが、前方検出センサ41、側方検出センサ42および車体用検出センサ43によって安全に搬送することが可能になっている。特に、車体用検出センサ43によって鉄道車体3の周囲を検出し、側方からの障害物に対して検出領域48における検出が可能であるため、狭い箇所であっても鉄道車体3を安全に通過させることができる。
【0032】
無人搬送台車1は、鉄道車体の幅方向において、無人搬送台車1の台車フレーム11の幅より大きな鉄道車体3を搭載しているが、センサブラケット38を介して車体用検出センサ43を取り付け、しかも鉄道車体3の側面から遠ざかる方向に傾斜するように照射角度θを設定することにより、鉄道車体3の周囲を適切に検出することができる。また、無人搬送台車1は、載置台ピッチング動作とともにヨーイング動作を行う載置台31に鉄道車体3が搭載されるため、そのヨーイング動作を実行するテーブル32の端部に車体用検出センサ43を取り付けることで、鉄道車体3の安定した搬送とともに適切な検出が可能になっている。
【0033】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
前記実施形態では、前方検出センサ41、側方検出センサ42および車体用検出センサ43について2次元センサを例に挙げて説明したが、前方および側方に向けて3次元センサを取り付けるようにしたものであってもよい。
また、車体用検出センサ43の照射角度θは搭載する鉄道車体3の車体幅及び工場内設備に応じて調整する必要があるため、センサブラケット38は角度調節機構を備えていることが望ましい。
【符号の説明】
【0034】
1…鉄道車体用無人搬送台車 3…鉄道車体 5…搬送管理装置 7…駆動制御装置 11…台車フレーム 12…走行装置 20…装置本体 21,22…車輪 23,24駆動モータ… 31…載置台 32…テーブル 33…ベースプレート 38…センサブラケット 41…前方検出センサ 42…側方検出センサ 43…車体用検出センサ

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7