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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033715
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】ディスクハロー型耕耘作業機
(51)【国際特許分類】
   A01B 49/00 20060101AFI20240306BHJP
   A01B 17/00 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
A01B49/00
A01B17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137478
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 秀樹
【テーマコード(参考)】
2B032
2B034
【Fターム(参考)】
2B032AA07
2B032BA01
2B032FA06
2B032FB01
2B032FB17
2B034AA09
2B034BA01
2B034BA07
2B034BB02
2B034BC06
2B034JA04
2B034JB01
(57)【要約】
【課題】小型や中型のトラクタに連結して田畑をその砕土ディスクで耕耘する場合に、この砕土ディスクを備える耕耘作業機を軽量化しても、作業者が所望する耕耘深さを安定して得ることができるディスクハロー型耕耘作業機を提供する。
【解決手段】前後の砕土ディスク群と、砕土ディスク群の後方に設ける粉砕ローラーと、砕土ディスク群の前方に設けるチゼル砕土体を備えて圃場の耕耘を行う際に、チゼル砕土体は、前後の砕土ディスク群に先行して圃場の作土層に喰い込んで、砕土ディスク群の土壌への刺さり込みの助勢と土壌表面への浮き上がりの抑制を行い、粉砕ローラーは砕土ディスク群やチゼル砕土体によって耕耘した土塊の粉砕と、砕土ディスク群やチゼル砕土体の耕耘深さの調節をネジ式伸縮装置を用いた上下回動調節によって行う。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラクタの後部に設ける三点リンクに連結する作業機フレームと、この作業機フレームの下方にその進行方向と直交する左右方向に間隔を空けて回転自在に設ける前後の砕土ディスク群と、これ等の砕土ディスク群の後方に位置させてその左右方向に長尺な多数の破砕体を備えるローラー本体を回転自在、並びに作業機フレームの後部にネジ式伸縮装置を用いて上下回動調節自在に設ける粉砕ローラーと、前記砕土ディスク群の前方に位置させてその前下がりに傾斜させる砕土刃を作業機フレームの前部下方に設けるチゼル砕土体を数体備えて、前記トラクタの牽引によって圃場の耕耘を行う際に、前記チゼル砕土体は、前後の砕土ディスク群に先行して圃場の作土層に喰い込んで、砕土ディスク群の土壌への刺さり込みの助勢と土壌表面への浮き上がりの抑制を行うと共に、前記粉砕ローラーは、砕土ディスク群やチゼル砕土体によって耕耘した土塊の粉砕と、砕土ディスク群やチゼル砕土体の耕耘深さの調節をネジ式伸縮装置を用いた上下回動調節によって行うことを特徴とするディスクハロー型耕耘作業機。
【請求項2】
前記チゼル砕土体の砕土刃を、作業機フレームの前部下方の特に、トラクタの車輪又は履帯の後方延長線上に位置するように設けて、耕耘作業を行うトラクタの轍跡に係る踏み固められた土壌を、前記砕土刃によって砕土して軟化することを特徴とする請求項1に記載のディスクハロー型耕耘作業機。
【請求項3】
前記作業機フレームの前部に固定するチゼルブラケットに上下調節自在に取り付けるシャンクと、このシャンクの下端部に着脱自在に取り付ける砕土刃によって、前記チゼル砕土体を構成することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のディスクハロー型耕耘作業機。
【請求項4】
前記砕土ディスク群の前方に位置させて設けるチゼル砕土体に、そのチゼル砕土体の進行方向に対して斜交する略鉛直となる板面を備える抵抗体を設けて、前記前後の砕土ディスク群に作用する耕耘抵抗の分力に基づくトラクタに対する回転モーメントを、前記抵抗体に作用する耕耘抵抗の分力によって減ずることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1つに記載のディスクハロー型耕耘作業機。
【請求項5】
前記粉砕ローラーを作業機フレームに上下回動調節自在になすネジ式伸縮装置の連結部に機械的な遊びとなる隙間を設けて、前記トラクタの高速作業走行等において生ずる粉砕ローラーの土壌表面からの浮き上がりを、前記隙間によって抑制することを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1つに記載のディスクハロー型耕耘作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタに連結して圃場を耕耘するディスクハロー型耕耘作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
日本農業にあって農作物を栽培する田畑は、トラクタに装着するプラウやロータリ耕耘装置等の耕耘作業機を用いて耕している。また、この内、一般的に用いられているロータリ耕耘装置は、トラクタに搭載するエンジン動力によって耕耘爪を回転させて土壌を砕きながら攪拌するので、砕土性は優れているものの、その耕耘負荷によってトラクタ側のエンジンの燃料消費量が大きく、また、トラクタによる作業速度の高速化を阻む要因となっている。
【0003】
一方、欧米において一般的に用いられている圃場の耕起後の砕土を担うディスクハローを、畑だけではなく水田の耕耘作業に用いることが、近年、日本において注目されている。そして、このディスクハローはトラクタに牽引させて、耕耘、播種床の準備、除草、肥料・堆肥の混和、表層の固い土を破砕、作物残渣・緑肥のすき込み等を一度に高速で行うことができ、作業能率の向上に貢献する。
【0004】
また、係るディスクハローの耕耘を行う曲面を持った皿状の円盤(ディスク)は、土壌に突き刺さって自ら回転し、一方、ロータリ耕耘装置の耕耘爪のようにエンジン動力によって回転させるものではないので、トラクタ側のエンジンの燃料消費量を大幅に節約して、コスト低減を図ることができる。
【0005】
しかし、このようなディスクハローは、広大な農地で大規模農業が行われる海外で開発された耕耘作業機である。そのため、農地面積が狭く集約農業を行う国内にあっては、作業機が大き過ぎて狭い圃場での取り扱いが悪かったり、国内各地の農地の土壌に対する適応性に問題があったりして、作業機の小型化と共に性能面での改良の余地がある。
【0006】
そこで、これらの問題解決のために、現在、国内で使用されている出力馬力の比較的少ないエンジンを搭載した小型や中型のトラクタであっても、その三点リンク等に連結して無理なく牽引作業を行うことができる、また、性能面でも優れた小型のディスクハローを使用した耕耘作業機の出現が待たれている。
【0007】
なお、ディスクハローを使用した耕耘作業機は古くから種々提案されており、例えば、トラクタの油圧三点リンクヒッチに連結する方形フレームに前部デスクハロー、カルチベータ、後部デスクハロー、ケージローラを備える複合作業機(特許文献1参照)や、心土作溝犂体、ディスクプラウ列、砕土鎮圧用ローラを備える耕耘作業機(特許文献2参照)などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003-225003号公報
【特許文献2】特開2007-68528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述のように田畑の耕耘作業にディスクハローを用いると、作業能率やコスト面で優位性を発揮する。そのため、小型や中型のトラクタの後部に設ける三点リンクに連結して、田畑を耕耘する比較的耕幅の少ないディスクハロー型の耕耘作業機の開発を行う。しかし、この牽引車として用いる小型や中型のトラクタは、その搭載するエンジンの出力馬力が少ないばかりか、全体的に小型で軽量化された機体を備えるので、重量のある耕耘作業機を後部に連結すると、機体の前後バランスの悪化や油圧揚力不足によって作業機が持ち上がらない等の問題がある。
【0010】
そこで、新たに開発するディスクハロー型の耕耘作業機は、そのディスクハローの砕土ディスク等を取り付ける作業機フレームの構造の簡素化や、軽量材料の使用等によって極力軽量化することになる。しかし、このように作業機フレーム等の重量を軽くすると、ディスクハローの砕土ディスクに加わる重量が少なくなるので、特に硬い圃場では砕土ディスクが土壌に刺さり難くなって、所望する耕耘深さを得ることができないという問題が生ずる。
【0011】
また、ディスクハローはトラクタで高速で牽引することによってその能力を発揮し、この高速耕耘時には圃場に凹凸があったり石等の障害物があるとディスクハローが跳ね上がり易く、その場合には耕深が浅くなって安定した耕耘ができないという問題がある。さらに、ディスクハローの砕土ディスクは、その進行方向に対して斜めに傾斜させて回転自在に設けるので、その回転軸心に向けて耕耘抵抗の分力が加わり、この分力はトラクタに回転モーメントを発生させる。そして、トラクタに回転モーメントが加わると、ステアリングハンドルが取られてトラクタの直進性が損なわれるという問題がある。
【0012】
そこで、ディスクハローの前列と後列の砕土ディスク群は、トラクタに加わる前述の回転モーメントが相殺されて打ち消されるように、その砕土ディスクの傾斜方向を逆向きに設ける。しかし、前列の砕土ディスク群に加わる耕耘抵抗の分力と、後列の砕土ディスク群に加わる耕耘抵抗の分力は、これから耕そうとする未耕地から全面的に加わるものと、前列の砕土ディスク群が残した未耕地を耕すものとでは異なり、その結果、トラクタに少なからず回転モーメントが加わって前述のトラクタの直進性における問題が残る。
【0013】
一方、ディスクハローの後方には、砕土ディスクで砕土した土塊を砕土して粉砕したり鎮圧するローラーを回転自在に設ける。そして、このローラーは、耕耘作業中にトラクタが圃場の凹凸等によって前上がりになり、また、それに伴って砕土ディスク群が土中に深くもぐろうとした場合でも、このローラーが地表に接地することによってそれ以上の砕土ディスク群の沈み込みを防止し、これによって砕土ディスク群の耕耘深さを一定に保つ役割を果たす。
【0014】
そして、このローラーをストッパピンの差し替えや専用の油圧シリンダを用いて上下動調節自在に設けると、砕土ディスク群の耕耘深さを任意に調節することができる。しかし、このように砕土ディスク群の耕耘深さを調節するために、ストッパピンの差し替えを行う場合には、煩わしい操作が必要となると共に、重量のあるローラーの持ち上げ等の労力が必要になるという問題がある。そこで、この問題を解決するために専用の油圧シリンダ等を用いる場合は、トラクタに別途油圧取り出し装置や油圧切換弁等を設けなければならず、コストアップになるという問題がある。
【0015】
そこで、本発明は係る問題点等に鑑み、搭載するエンジンの出力馬力が比較的少ない小型や中型のトラクタに連結して田畑を砕土ディスクで耕耘する場合に、この砕土ディスクを備える耕耘作業機を極力軽量化しても、作業者が所望する耕耘深さを安定して得ることができるディスクハロー型耕耘作業機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明のディスクハロー型耕耘作業機は、上記課題を解決するため第1に、トラクタの後部に設ける三点リンクに連結する作業機フレームと、この作業機フレームの下方にその進行方向と直交する左右方向に間隔を空けて回転自在に設ける前後の砕土ディスク群と、これ等の砕土ディスク群の後方に位置させてその左右方向に長尺な多数の破砕体を備えるローラー本体を回転自在、並びに作業機フレームの後部にネジ式伸縮装置を用いて上下回動調節自在に設ける粉砕ローラーと、前記砕土ディスク群の前方に位置させてその前下がりに傾斜させる砕土刃を作業機フレームの前部下方に設けるチゼル砕土体を数体備えて、前記トラクタの牽引によって圃場の耕耘を行う際に、前記チゼル砕土体は、前後の砕土ディスク群に先行して圃場の作土層に喰い込んで、砕土ディスク群の土壌への刺さり込みの助勢と土壌表面への浮き上がりの抑制を行うと共に、前記粉砕ローラーは、砕土ディスク群やチゼル砕土体によって耕耘した土塊の粉砕と、砕土ディスク群やチゼル砕土体の耕耘深さの調節をネジ式伸縮装置を用いた上下回動調節によって行うことを特徴とする。
【0017】
また、本発明のディスクハロー型耕耘作業機は第2に、前記チゼル砕土体の砕土刃を、作業機フレームの前部下方の特に、トラクタの車輪又は履帯の後方延長線上に位置するように設けて、耕耘作業を行うトラクタの轍跡に係る踏み固められた土壌を、前記砕土刃によって砕土して軟化することを特徴とする。
【0018】
さらに、本発明のディスクハロー型耕耘作業機は第3に、前記作業機フレームの前部に設けるチゼルブラケットに上下調節自在に取り付けるシャンクと、このシャンクの下端部に着脱自在に取り付ける砕土刃によって、前記チゼル砕土体を構成することを特徴とする。
【0019】
そして、本発明のディスクハロー型耕耘作業機は第4に、前記砕土ディスク群の前方に位置させて設けるチゼル砕土体に、そのチゼル砕土体の進行方向に対して斜交する略鉛直となる板面を備える抵抗体を設けて、前記前後の砕土ディスク群に作用する耕耘抵抗の分力に基づくトラクタに対する回転モーメントを、前記抵抗体に作用する耕耘抵抗の分力によって減ずることを特徴とする。
【0020】
そのうえ、本発明のディスクハロー型耕耘作業機は第5に、前記粉砕ローラーを作業機フレームに上下回動調節自在になすネジ式伸縮装置の連結部に機械的な遊びとなる隙間を設けて、前記トラクタの高速作業走行等において生ずる粉砕ローラーの土壌表面からの浮き上がりを、前記隙間によって抑制することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明のディスクハロー型耕耘作業機によれば、トラクタの後部に設ける三点リンクに連結する作業機フレームと、この作業機フレームの下方にその進行方向と直交する左右方向に間隔を空けて回転自在に設ける前後の砕土ディスク群と、これ等の砕土ディスク群の後方に位置させてその左右方向に長尺な多数の破砕体を備えるローラー本体を回転自在、並びに作業機フレームの後部にネジ式伸縮装置を用いて上下回動調節自在に設ける粉砕ローラーと、前記砕土ディスク群の前方に位置させてその前下がりに傾斜させる砕土刃を作業機フレームの前部下方に設けるチゼル砕土体を数体備えて、前記トラクタの牽引によって圃場の耕耘を行う際に、前記チゼル砕土体は、前後の砕土ディスク群に先行して圃場の作土層に喰い込んで、砕土ディスク群の土壌への刺さり込みの助勢と土壌表面への浮き上がりの抑制を行うと共に、前記粉砕ローラーは、砕土ディスク群やチゼル砕土体によって耕耘した土塊の粉砕と、砕土ディスク群やチゼル砕土体の耕耘深さの調節をネジ式伸縮装置を用いた上下回動調節によって行う。
【0022】
そのため、搭載するエンジンの出力馬力が比較的少ない小型や中型のトラクタであっても、その三点リンクに連結して耕耘作業を行うことができるように、作業機フレームの構造の簡素化や軽量材料の使用等によって軽量化を行っても、砕土ディスク群の前方に新たに設けるチゼル砕土体の前下がりに傾斜させる砕土刃は、砕土ディスク群に先行して圃場の作土層に喰い込んで、砕土ディスク群の土壌への刺さり込みの助勢と土壌表面への浮き上がりの抑制を行うので、軽量化を行わない耕耘作業機に勝るとも劣ることのない耕耘深さの安定という耕耘作業機に求められる基本性能を遺憾無く発揮させることができる。
【0023】
そして、砕土ディスク群の後方に設ける粉砕ローラーは、砕土ディスク群やチゼル砕土体によって耕耘した土塊をそのローラー本体に備える多数の破砕体によって粉砕して破砕性を高めると共に、ローラー本体の接地によって砕土ディスク群の土中への沈み込みを防止して耕耘深さの維持を図る。さらに、このローラー本体をネジ式伸縮装置を用いて上下回動調節することによって、砕土ディスク群やチゼル砕土体の耕耘深さの調節を労力少なく簡単に行うことができると共に、油圧シリンダ等を用いて耕耘深さの調節を行う場合より安価に装置することができる。
【0024】
また、本発明のディスクハロー型耕耘作業機によれば、前記チゼル砕土体の砕土刃を、作業機フレームの前部下方の特に、トラクタの車輪又は履帯の後方延長線上に位置するように設けて、耕耘作業を行うトラクタの轍跡に係る踏み固められた土壌を、前記砕土刃によって砕土して軟化するので、このチゼル砕土体の砕土刃に後続する数個の砕土ディスクのみに過大な耕耘負荷を掛けること無く、後方に設ける砕土ディスク群の夫々の砕土ディスクに耕耘負荷を略均等に掛けて安定した耕耘を行わせることができる。
【0025】
さらに、本発明のディスクハロー型耕耘作業機によれば、前記作業機フレームの前部に設けるチゼルブラケットに上下調節自在に取り付けるシャンクと、このシャンクの下端部に着脱自在に取り付ける砕土刃によって、前記チゼル砕土体を構成する。そのため、圃場の作土層に喰い込む砕土刃は長時間の使用によって摩耗することになるが、この場合、シャンクから摩耗した砕土刃を取り外して新しい砕土刃に簡単に交換することができる。
【0026】
また、トラクタの後部に設ける三点リンクに連結する耕耘作業機は、圃場への移動等を行う場合に全体を持ち上げて走行を行うが、その際に砕土刃は後方に設ける砕土ディスク群より下方に位置することになるので、事前に砕土ディスク群より砕土刃が高く位置するようにシャンクを持ち上げて格納位置に固定しておくことによって、障害物との当接による砕土刃の破損を防止することができる。なお、軟らかい圃場であったり作物残渣等が少なくて砕土ディスク群が土壌に適切に刺さってチゼル砕土体の助勢が格別不要な場合は、砕土刃を格納位置に固定しておくことによって、トラクタの牽引負荷を少なくすることができる。
【0027】
そして、本発明のディスクハロー型耕耘作業機によれば、前記砕土ディスク群の前方に位置させて設けるチゼル砕土体に、そのチゼル砕土体の進行方向に対して斜交する略鉛直となる板面を備える抵抗体を設けて、前記前後の砕土ディスク群に作用する耕耘抵抗の分力に基づくトラクタに対する回転モーメントを、前記抵抗体に作用する耕耘抵抗の分力によって減ずるので、耕耘作業中にステアリングハンドルが取られるといった問題が解消されて、トラクタの適正な直進性を担保することができる。
【0028】
そのうえ、本発明のディスクハロー型耕耘作業機によれば、前記粉砕ローラーを作業機フレームに上下回動調節自在になすネジ式伸縮装置の連結部に機械的な遊びとなる隙間を設けて、前記トラクタの高速作業走行等において生ずる粉砕ローラーの土壌表面からの浮き上がりを、前記隙間によって抑制するので、例えば、トラクタが圃場の凹凸によって前下がりに傾斜して後部に連結する耕耘作業機が浮き上がった際にも、粉砕ローラーは自重によって下方に回動して土塊の粉砕を続けるので、その粉砕性を良好に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】トラクタに本発明に係るディスクハロー型耕耘作業機を連結して耕耘作業を行う状態を示す側面図である。
図2】耕耘作業機の正面図である。
図3】耕耘作業機の平面図である。
図4】耕耘作業機の斜視図である。
図5】粉砕ローラーの上下回動調節を示す斜視図である。
図6】ネジ式伸縮装置の縦断面図である。
図7】チゼル砕土体の取り付けを示す分解図である。
図8】チゼル砕土体の砕土刃を示し、(a)は砕土刃の正面図、(b)は右側面図、(c)は左側面図、(d)は平面図である。
図9】チゼル砕土体の砕土刃に掛かる耕耘抵抗の分力を説明する側面図である。
図10】チゼル砕土体に設ける抵抗体と砕土ディスク群に掛かる耕耘抵抗の分力を説明する平面図である。
図11】耕耘作業機を移動走行のために持ち上げた状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1乃至図4に示すように搭載するエンジンの出力馬力が比較的少ない小型や中型のトラクタ1の後部に設ける三点リンク2(トップリンク2a、左右のロアリンク2b、2b)に連結(直装)して、トラクタ1の前進走行に伴って田畑を耕耘する、本発明のディスクハロー型耕耘作業機3は、軽量の角型鋼管(角パイプ)等を用いて構造の簡素化を行って軽量化した作業機フレーム4を備える。
【0031】
より詳細に説明すると、この作業機フレーム4は、耕耘作業を行う際のトラクタ1の前進走行方向と一致する前後方向に長尺な左右のメインフレーム4a、4bと、この左右のメインフレーム4a、4bの上面に固着して前進走行方向に直交する左右方向に長尺な前後のディスクフレーム4c、4dと、この前後のディスクフレーム4c、4dの左右端寄りの上面に固着して前後方向に長尺な左右のサブフレーム4e、4fと、左右のメインフレーム4a、4bの後寄り中程を繋ぐ左右方向となる連結フレーム4gから構成する。
【0032】
そして、この作業機フレーム4の左右のメインフレーム4a、4bの前部寄りに、鋼板を折り曲げて形成するトップリンクマスト5とサポートプレート6を取り付け、このトップリンクマスト5の上部にトップリンク2aに連結するトップリンクピン7を設ける。また、左右のメインフレーム4a、4bの前端面に、コ字状のリンクブラケット8を夫々固着し、このリンクブラケット8に左右のロアリンク2bに連結するロアリンクピン9を設ける。
【0033】
ところで、ディスクハローで一般的に用いられる耕耘主体となる砕土ディスク10は、凹状の湾曲面を持った皿状の円盤(ディスク)10aであって、この円盤10aの外周縁10bは鋭利な切断刃に形成して作物残渣等をこの切断刃によって切断することができる。また、この外周縁10bに円弧状の切欠部10cを多数(12個)設けて、係る砕土ディスク10が土壌に突き刺さって自ら回転し易くすることから所謂、花形ディスクと称される。そこで、新たに開発する本耕耘作業機3でもこの花形の砕土ディスク10を使用する。
【0034】
そして、このような花形の砕土ディスク10を使用して田畑を耕耘する場合に、係る砕土ディスク10によって掻き取られた土塊は、砕土ディスク10の凹状の下部寄りの湾曲面内に溜まる。また、この溜まった土塊は、砕土ディスク10の回転に伴って上方に持ち上げられて、その後に湾曲面の開放された側からその側方に向けて放擲される。
【0035】
そのため、作業機フレーム4の下方に多数の砕土ディスク10を、その凹状の湾曲面を同じ左向きや右向きに揃えて左右方向に所定の間隔Lを空けて並べて設けると、この多数の砕土ディスク10によって耕耘した土塊は、トラクタ1の前進走行方向に直交する左右方向の一側に放擲されて移動する。そこで、同数となす多数の砕土ディスク10を前後のディスクフレーム4c、4dの下方に夫々左右方向に並べて設けると共に、係る前後2列の砕土ディスク10の湾曲面の向きを、例えば、前列は左向きに後列は右向きというように互いに異ならせて設ける。
【0036】
そして、このように多数の砕土ディスク10を配設すると、前ディスクフレーム4cの下方に設ける前列の砕土ディスク10群によって左右方向の一側に移動した土塊を、後ディスクフレーム4dの下方に設ける後列の砕土ディスク10群によって元の他側に戻して、耕耘跡を左右方向に均平にすることができる。また、この場合に、前列と後列の砕土ディスク10群を左右方向に所定距離だけずらして設けると、前列の砕土ディスク10群が耕耘することができなかった未耕地を、後列の砕土ディスク10群で耕耘することができて、耕耘面の凹凸を無くすことができる。
【0037】
以上、作業機フレーム4の下方に設ける多数の砕土ディスク10の基本的な配置形態について説明したが、次に、この砕土ディスク10の具体的な作業機フレーム4への取付構造について説明すると、先ず、この単体としての砕土ディスク10は、鋼板を略三角形状に形成するディスクアーム11の下部にベアリング12を介して回転自在に取り付ける。
【0038】
なお、このディスクアーム11の下部に回転自在に設ける砕土ディスク10は、その円盤の湾曲面がトラクタ1の前進走行方向に対してある程度傾いていないと土壌を掻き取ることができない。そこで、この砕土ディスク10が前進走行方向に対して傾く円盤角(ギャング角)αと、土壌に喰い込み易くする鉛直方向に対して若干上向きに傾けるすくい角をとるために、砕土ディスク10を回転自在に取り付けるディスクアーム11の下部寄りを、その前後方向に設ける上部寄りの板面に対して斜めに捻って形成する。
【0039】
そして、このように砕土ディスク10を下部に回転自在に取り付けるディスクアーム11は、作業機フレーム4の前後のディスクフレーム4c、4dに所定の間隔Lで取り付けて設けるディスクブラケット13、14に、その上部を取り付けて設けることになる。しかし、この場合に後ディスクフレーム4dに取り付ける後列の砕土ディスク10群は、前述の円盤角αをネジ式伸縮装置15を用いて任意の角度に調節できるように構成するために、その円盤角αの調節を行う後ディスクブラケット14と、円盤角αの調節を行わない前ディスクブラケット13の前後のディスクフレーム4c、4dに対する取付方は両者で若干異なる。
【0040】
即ち、円盤角αを所定の角度に固定する前列の砕土ディスク10を取り付ける前ディスクブラケット13は、その前部に設けるコ字状の取付部13aを、前ディスクフレーム4cに後方から差し込んで、前部寄りに設ける2本のボルトとナットで自らを前ディスクフレーム4cに締着して取り付ける。
【0041】
一方、円盤角αを任意の角度に調節可能になす後列の砕土ディスク10を取り付ける後ディスクブラケット14は、その前部に設けるコ字状の取付部14aを、後ディスクフレーム4dの前面に溶着して設けるピン4d’の上面と下面に臨むように後方から差し込んで、その後に1本のボルトbを上方から取付部14aの上下に穿設した孔とピン4d’に設けた上下方向の孔に通してナットでボルトbの抜け止めをすることによって、このボルトbを中心として自らを後ディスクフレーム4dに水平回動自在に取り付ける。
【0042】
また、このように後ディスクフレーム4dに水平回動自在に取り付けた後ディスクブラケット14は、自らの左右のフレーム14bに孔14cを穿設して、この孔14cに小径の連結パイプ16を左右方向に通す。さらに、後ディスクブラケット14の左右のフレーム14b間に固着して設ける上下の連結片14eと支持片14d、並びに連結パイプ16に夫々穿設する孔に連結ピン17を通して、スナップリングで連結ピン17の抜け止めを行う(図6参照)。
【0043】
そのため、このように後ディスクブラケット14の夫々の後部寄りを1本の連結パイプ16で連結すると、この夫々の後ディスクブラケット14にディスクアーム11を介して取り付けることになる砕土ディスク10の円盤角αは、一括して全て同じ角度になすことができる。そして、この連結パイプ16を調節ハンドル18の正逆回転操作により左右方向に移動させることによって、後列の砕土ディスク10群の円盤角αを無段階に変更調節することができるようにする。
【0044】
つまり、左側のサブフレーム4eにコ字状のブラケット19を溶接して設ける。また、このブラケット19に水平回動自在に設ける連結軸20に、調節ハンドル18の回転操作によって回転する雄螺子を備える調節軸とこの雄螺子に螺合する雌螺子を備える調節パイプから構成するネジ式の伸縮装置15を取り付け、また、このネジ式伸縮装置15の調節パイプの先端部を連結パイプ16の左端寄りにピン21を用いて取り付けることによって、連結パイプ16を調節ハンドル18の正逆回転操作によって左右に移動させることができるようにする。
【0045】
さて、以上のように前後のディスクフレーム4c、4dに取り付けた前後のディスクブラケット13、14に、砕土ディスク10を下部寄りに回転自在に設けるディスクアーム11の上部寄りを取り付けることによって、作業機フレーム4の下方に田畑を耕耘する多数の砕土ディスク10を設けることができる。しかし、ここで耕耘する田畑の土壌中に石等の障害物があると砕土ディスク10は、この障害物に衝突して破損する虞がある。
【0046】
そこで、係る障害物に砕土ディスク10が衝突した際の破損を防止するために、弾性ゴムや板ばねを用いて砕土ディスク10を上方に逃がすことが知られている。しかし、これらのものでは耕耘する土壌の硬度等がそれなりに高ければ、石等に衝突しなくともその硬い土壌を耕耘する抵抗によって弾性ゴムや板ばねが相応に歪んだり撓んで、これにより砕土ディスク10が常に上方に浮き上がり気味となって、期待した耕深を砕土ディスク10によって安定して得られないという問題がある。
【0047】
そのため、この問題を解決するべく、作業機フレーム4の下方に設ける多数の砕土ディスク10は、石等の障害物に衝突して生ずる衝撃力が許容値を超えると障害物の上方に砕土ディスク10を逃がす退避手段を各砕土ディスク10毎に備えるようになして、砕土ディスク10の破損の防止と共に、砕土ディスク10の作業機フレーム4に対する取付位置の高さ(耕深)を維持して安定した耕耘を行うことができるようにする。
【0048】
次に、この砕土ディスク10の退避手段の具体例について説明すると、図4及び図9に示すように、ディスクブラケット13、14の左右のフレーム13b、14bの前寄り下部に孔を穿設し、また、ディスクアーム11の前寄りと後寄りの上部に同様な孔を穿設する。そして、左右のフレーム13b、14bの孔とディスクアーム11の前寄り上部の孔に支点ボルト22を通して、ディスクアーム11をディスクブラケット13、14に前後回動自在に取り付ける。
【0049】
また、ディスクアーム11の後寄り上部の孔と、ロッド23の下部に固着するコ字状片23aに穿設する左右孔にボルト24を通して、ロッド23の下部をディスクアーム11に回動自在に取り付ける。さらに、このロッド23の中途に固着するスプリング受け皿25に、ロッド23に通した圧縮コイルスプリング26を載置する。
【0050】
そして、ロッド23の上端部に設ける螺子部を、ディスクブラケット13、14の支持片13c、14dに穿設する孔に通して上方からその螺子部にワッシャとナットnを装着して、更に、そのナットnを締め上げて、ロッド23に通した圧縮コイルスプリング26に対して、前述の砕土ディスク10が障害物の上方に退避する際の許容値に相当する初期圧を掛ける(図6参照)。
【0051】
そのため、ディスクブラケット13、14にディスクアーム11を介して取り付けた砕土ディスク10に前方から障害物の衝撃力が加わり、その衝撃力が圧縮コイルスプリング26の初期圧(許容値)を超えなければ、砕土ディスク10は上方に逃げずにそれ迄の耕深をそのまま維持して田畑を耕耘するが、衝撃力が初期圧(許容値)を超えると圧縮コイルスプリング26は、その初期撓みから仕事撓みに縮んで砕土ディスク10を上方に逃がして、砕土ディスク10の破損を防止する。
【0052】
以上、トラクタ1の前進走行に伴って田畑を耕耘するディスクハロー(砕土ディスク10)の作業機フレーム4への取付構造について説明したが、次に、前後の砕土ディスク10群の後方に設けて、その前後の砕土ディスク10群や、後述するチゼル砕土体で耕耘した土や土塊、或いは作物残渣等をより細かく砕土・切断する粉砕ローラー27について説明すると、この粉砕ローラー27は所謂、かご型と称される粉砕ローラー27を用いる。
【0053】
そして、このかご型の粉砕ローラー27は、鋼管で形成するローラーフレーム28を備え、このローラーフレーム28の左右端部には鋼板で形成するローラーアーム29を取り付ける。また、左右のローラーアーム29の下部に孔を穿設し、この孔にベアリング30の軸30aを通してナットで取り付ける。さらに、このローラーアーム29に取り付けたベアリング30のハウジング30bに、ローラー本体31をボルトとナットで取り付けて、ローラー本体31を回転自在に設ける。
【0054】
また、前述のローラー本体31は、間隔を空けて左右方向に並べて設ける数個(実施形態にあっては4個)の鋼板で形成する円板32を備え、この円板32の外周縁に形成する数個(実施形態にあっては10個)の切欠に、波型の凹凸を先端部に備える左右方向に長尺な鋼板で形成する破砕体33を溶接固定して、全体として円筒かご型の粉砕ローラー27に形成する。
【0055】
なお、上述の破砕体33は、土塊や作物残渣等を砕土して破砕し易くするために、自らの板面を回転方向に前進角をもたせて円板32の外周縁に設ける。また、円板32には中央の孔32aとこの孔32aを取り囲むように6個の孔32bを設けて、ローラー本体31内に入った土塊や作物残渣等をこの孔32a、32bの周縁に衝突させて、長尺な破砕体33とともにこれ等をより細かく粉砕するように構成する。
【0056】
但し、左右端に設ける円板32の中央の孔32aの周囲に、ベアリング30をボルトで取り付けるので、係る中央の孔32aは土塊等の粉砕に役立たない。そして、以上のように構成する粉砕ローラー27は、前後の砕土ディスク10群やチゼル砕土体の耕耘深さの調節を行えるように、作業機フレーム4の後部にネジ式伸縮装置を用いて上下回動調節自在に取り付けて設ける。
【0057】
より詳細に説明すると、図5及び図6に示すように左右のメインフレーム4a、4bの後端部上面に後方に向けて開放するU字状の取付板34を溶接固定し、この取付板34にローラーフレーム28を後方から差し込む。次に、このローラーフレーム28の後面側を、取付板34にボルトで取り付ける押え板35によって抜け止めし、これにより左右のメインフレーム4a、4bの後端部に、粉砕ローラー27をその取付板34のU字状部を中心として上下回動自在に取り付ける。
【0058】
また、ローラーフレーム28の左右方向の中央に2枚の取付板36を対向させて溶接固定すると共に、連結フレーム4gの左右方向の中央に2枚の取付板37を同じく対向させて溶接固定する。そして、ローラーフレーム28の取付板36に連結軸38をスナップリングで抜け止めして回転自在に設けると共に、この連結軸38に設ける孔にカバー筒39を備える螺子軸杆40を通して、また、連結軸38に通した螺子軸杆40の後端側にスラストベアリング41を介装すると共に耕深調節ハンドル42をピンで取り付ける。
【0059】
なお、連結軸38に対する螺子軸杆40の位置決めは、螺子軸杆40の中途に溶接したワッシャ43、隙間塞ぎのワッシャ44、及びカバー筒39の後端部39aによって螺子軸杆40の後方側への移動を規制し、また、前方側への移動は螺子軸杆40の後端側にピンで取り付ける耕深調節ハンドル42とスラストベアリング41によって規制する。
【0060】
さらに、連結軸38より前方側の螺子軸杆40に加工する雄螺子40aに、その雌螺子45bを螺合させて調整パイプ45を設ける。一方、連結フレーム4gに設ける左右の取付板37に略前後方向となる長孔37aを穿設し、この長孔37aと調整パイプ45の先端に固着するU字型取付部45aに設ける孔に連結ピン46を通して、調整パイプ45のU字型取付部45aを左右の取付板37に略前後方向の遊び(長孔37a内を連結ピン46が移動可能な隙間)を設けて連結する。
【0061】
そのため、前述の耕深調節ハンドル42を正逆回転操作すると、ネジ式伸縮装置(螺子軸杆40と調整パイプ45の螺合)によって前方の連結ピン46と後方の連結軸38との間の芯間長を変化させて、作業機フレーム4に対して粉砕ローラー27(ローラー本体31)を上下回動調節することができる。
【0062】
また、耕耘作業中に粉砕ローラー27のローラー本体31は、前後の砕土ディスク10群等が耕耘した土壌表面に接地して、トラクタ1に連結する作業機フレーム4のそれ以上の下降を阻止するので、粉砕ローラー27の上下回動調節によって作業機フレーム4の下方に設ける前後の砕土ディスク10群等の耕耘深さを調節することができる。
【0063】
なお、耕耘作業中にローラー本体31が土壌表面に接地して作業機フレーム4の下降を阻止している際には、接地している土壌表面からの抗力によって前方の連結ピン46が取付板37に設ける長孔37aの前端部まで移動して、最終的な作業機フレーム4に対するローラー本体31の上下方向の高さが決定され、また、この高さによって前後の砕土ディスク10群等の耕耘深さが決まる。
【0064】
一方、高速で耕耘作業を行っている場合に、トラクタ1が圃場の凹凸によってピッチングして前下がり(前低後高状)に傾くと、トラクタ1の後部に三点リンク2で連結する作業機フレーム4が上方に浮き上がって前後の砕土ディスク10群等の耕耘深さが浅くなる。しかし、この際にローラー本体31は、自重によって前方の連結ピン46が取付板37に設ける長孔37aの後端部まで移動する間においては下方に向けて回動可能なので、それまで通り土壌表面に接地して耕耘した土塊の粉砕を継続することができる。
【0065】
従って、前述の連結フレーム4gに設ける左右の取付板37に略前後方向となる長孔37aを穿設し、この長孔37aと調整パイプ45の先端に固着するU字型取付部45aに設ける孔に連結ピン46を通して、調整パイプ45のU字型取付部45aを左右の取付板37に略前後方向の遊びを設けて連結することは、ネジ式伸縮装置(螺子軸杆40と調整パイプ45)の作業機フレーム4又は粉砕ローラー27との連結部に機械的な遊びとなる隙間を設けて、トラクタ1の高速作業走行等において生ずる粉砕ローラー27(ローラー本体31)の土壌表面からの浮き上がりを、この隙間によって抑制するものと捉えることができる。
【0066】
以上、砕土ディスク10群の後方に位置させてその左右方向に長尺な多数の破砕体33を備えるローラー本体31を回転自在、並びに作業機フレーム4の後部にネジ式伸縮装置を用いて上下回動調節自在に設ける粉砕ローラー27について説明したが、次に、作業機フレーム4の前部下方に新たに設けるチゼル砕土体47について説明する。
【0067】
先ず、このチゼル砕土体47は、図7及び図8に示すように圃場の作土層に喰い込んでその土壌を浮き上がらせることによって空隙を生じさせて軟らかくする砕土刃48と、この砕土刃48を作業機フレーム4の下方に位置させて取り付けるシャンク49から構成する。そして、この内、砕土刃48は、鋼板の先端を鋭角な刃部に形成してこの先端から後端に至るに従って左右方向に張り出させて略V字状となす刃体48aを備え、この刃体48aの上面には細長い柄体48bを縦方向を向くように溶接して固着する。
【0068】
また、シャンク49は砕土刃48の柄体48bと同様に細長い鋼板で形成し、このシャンク49の下部と柄体48bの上部には、夫々大小の径を備える2つの孔h1、h2を穿設する。そして、シャンク49の下部と柄体48bの上部を左右方向に重ねて、夫々の孔h1、h2に大小の径を備えたボルト50、51を通してナットで締結すれば、チゼル砕土体47を構成することができる。なお、作土層に喰い込んで摩耗したり破損した砕土刃48は、シャンク49から取り外して新たな砕土刃48に容易に交換することができる。
【0069】
さらに、前述のシャンク49に砕土刃48を取り付ける小径のボルト51を、砕土刃48が石等の障害物に当たって過大な衝撃力が加わった際に破断するシャーボルトになすと、砕土刃48を大径のボルト50を中心に後方に向けて退避回動させて、砕土刃48の破損を防止することができる。また、以上のように構成するチゼル砕土体47の砕土刃48には、そのチゼル砕土体47が土壌中を進行する方向に対して斜交する略鉛直となる板面を備える鋼板で形成する抵抗体52を、刃体48aの上面と柄体48bの前下部寄り側面に亘って溶接して設ける。
【0070】
そして、この抵抗体52を備えるチゼル砕土体47を作業機フレーム4の前部下方の左右方向に数体(実施形態では2体)設けるに当たって、先ず、前ディスクフレーム4cの左右方向の2箇所にチゼルブラケット53を取り付ける。つまり、チゼルブラケット53はL型に折り曲げた取付部53aとこの取付部53aに溶着する左右の取付板53bと左右の取付板53bに溶着する前後の補強体53c、53dによって形成する。そして、このL型に形成する取付部53aを、角パイプで構成する前ディスクフレーム4cの後面及び底面に当接するように後方からあてがう。
【0071】
また、L型に形成する当て金54を、前ディスクフレーム4cの上面及び前面に当接するように前方からあてがう。さらに、4本のボルトによりこの当て金54を取付部53aに締結することによって、チゼルブラケット53を前ディスクフレーム4cの所定位置に締着固定して取り付ける。次に、このチゼルブラケット53の左右の取付板53bの間にチゼル砕土体47のシャンク49を通して、左右の取付板53bに穿設する孔とシャンク49の上部寄りと中程の2箇所に穿設する孔h4、h3の内、上部寄りの孔h4にピン55を通してRピン56で抜け止めすると、チゼル砕土体47を耕耘作業位置に取り付けることができる(図9参照)。
【0072】
なお、この場合、シャンク49はピン55を中心に前後回動が可能であるが、シャンク49の上部寄り前面が取付部53aに当接するか、或いはシャンク49の上部寄り後面が左右の取付板53bに溶着する前後の補強体53c、53dの内、後側の補強体53dに当接して、その前後回動が阻止される。そして、このように耕耘作業位置に取り付けたチゼル砕土体47は、そのシャンク49の上部寄りが前ディスクフレーム4cの後面近傍に位置し、また、砕土刃48の先端がトラクタ1の後輪と前列の砕土ディスク10群の間に位置する前下がりの耕耘作業姿勢となる。
【0073】
また、図11に示すように前述のピン55を取り外してシャンク49を後側の補強体53dに案内させながら上方に引き上げ、ここで取り外したピン55をシャンク49の中程の孔h3に通して取り付けると、チゼル砕土体47を耕耘作業を行わない格納位置に保持することができる。そのため、チゼル砕土体47を最前部に設ける耕耘作業機3をトラクタ1に備える三点リンクの油圧昇降シリンダによって持ち上げて、畦畔や畝越え或いは移動走行する際に、係るチゼル砕土体47を引き上げてその下端が砕土ディスク10群の下端より高く位置する格納位置に固定しておくと、畦畔や畝等を破壊することなく通過出来たり、障害物との不測な当接による砕土刃48の破損を防止することができる。
【0074】
さらに、チゼル砕土体47は、前述の耕耘作業姿勢を取って田畑を耕耘する際に、前列の砕土ディスク10群の前方にかなり接近させて設けることによって、新たにチゼル砕土体47を作業機フレーム4に設けることになっても、作業機フレーム4の前後長を短く抑えて狭い圃場での旋回性を保証する。そして、特に重要なことは砕土刃48の刃体48aを前低後高状に設けて、砕土刃48を前下がりに傾斜させて設けることである。
【0075】
すなわち、図9に示すようにチゼル砕土体47の前下がりに傾斜させる砕土刃48(刃体48a)は、耕耘作業中に砕土ディスク10群に先行して圃場の作土層に喰い込んで突き進むので、その前方から後方に向かう耕耘抵抗Rを受ける、そして、この場合に前低後高状に傾斜させる刃体48aには、その傾斜する上面に直交する略下向きの耕耘抵抗の分力Fがかかる。そのため、この分力Fは、同じ作業機フレーム4に取り付けて設ける前後の砕土ディスク10群に対して、その砕土ディスク10が土壌に深く刺さり込むための助勢力として働く。
【0076】
また、これによって左右のチゼル砕土体47と前後の砕土ディスク10群が作土層に沈んで、所定の耕耘深さに達すると、作業機フレーム4の後方に設ける粉砕ローラー27が接地して、チゼル砕土体47や砕土ディスク10群の作土層におけるそれ以上の沈み込みを阻止するので、作業者がネジ式伸縮装置の耕深調節ハンドル42を操作して予め設定した耕耘深さで圃場の耕耘を行うことができる。
【0077】
さらに、このように圃場の耕耘を行っている際に、高速走行するトラクタ1が圃場の凹凸や石等の障害物によってピッチングして、その後部に連結する作業機フレーム4が跳ね上がると耕耘深さが浅くなって安定した耕耘ができないという問題がある。しかし、この場合にチゼル砕土体47の刃体48aに乗り上げる土塊によって砕土刃48の浮き上がりが阻止されるので、砕土ディスク10群の土壌表面への浮き上がりが抑制されて、設定した耕耘深さを安定して維持することができる。そして、チゼル砕土体47の作土層への喰い込み深さは、砕土ディスク10群の耕耘深さと略同じくするため、耕耘面に凹凸を無用に生じさせることなく、チゼル砕土体47の併用による作業負荷の増大も最小限に抑えることができる。
【0078】
そのうえ、前ディスクフレーム4cに取り付けて設けるチゼル砕土体47は、図10に示すようにチゼル砕土体47の砕土刃48をトラクタ1の左右の前輪と後輪、或いは装軌式とするトラクタ1であれば、左右の履帯の後方延長線上に位置するように左右に離して設ける。そのため、耕耘作業を行うトラクタ1の轍跡に係る踏み固められた硬い土壌を、チゼル砕土体47の砕土刃48によって砕土して軟化するので、この浮き上がらせて軟化した土塊を後続する砕土ディスク群10に過負荷を加えることなく砕土させることができる。
【0079】
ところで、前述のように砕土ディスク10は、トラクタ1の進行方向に対して斜めに傾斜する円盤角αを設けて圃場の耕耘を行う。そして、係る砕土ディスク10に加わる耕耘抵抗はその回転軸心に向かう分力を生じさせ、例えば、耕耘した土塊を左後方に放擲する前列の砕土ディスク10群の分力の総和は、トラクタ1を半時計方向に回転させるモーメントとなる。また、耕耘した土塊を右後方に放擲する後列の砕土ディスク10群の分力の総和は、トラクタ1を時計方向に回転させるモーメントとなる。
【0080】
そこで、前列と後列の砕土ディスク10群が発生する回転モーメントの絶対値が等しければ、互いの回転モーメントが打ち消されて問題はないが、これから最初に耕耘しようとする前列の砕土ディスク10群に掛かる耕耘抵抗は、この前列の砕土ディスク10群が耕し残した未耕地を耕耘しようとする後列の砕土ディスク10群に掛かる耕耘抵抗より多いから、前述の回転モーメントに差分が生じて、トラクタ1のステアリングハンドルが左側に取られて、直進性が損なわれるという問題がある。
【0081】
そのため、トラクタ1にこのような回転モーメントを生じないように、或いは発生する回転モーメントを減ずるために、ここではチゼル砕土体47に抵抗体52を設ける。つまり、図10に示すようにチゼル砕土体47に設ける抵抗体52には、その前方から後方に向かう耕耘抵抗が掛かっている。そして、この抵抗体52の略鉛直となる板面に直交する耕耘抵抗の分力F’は、この場合、略鉛直となる板面の後方側を右に張り出すように傾けているので、略左方向を向いている。
【0082】
従って、係る抵抗体52に掛かる耕耘抵抗の分力F’は、後列の砕土ディスク10群に掛かる耕耘抵抗の分力と同方向であるから、トラクタ1をその重心回りに回転させようとする回転モーメントは消失するか減じられることとなって、トラクタ1の直進性を改善することができる。なお、抵抗体52に掛かる耕耘抵抗の分力F’の大きさは、抵抗体52の略鉛直となる板面を進行方向から傾ける角度によって異なるから、係る傾きを変えた抵抗体52を備える砕土刃48を用意しておいて、ステアリングハンドルが取られることが少ない砕土刃48に取り替えるようにしてもよい。
【0083】
なお、説明が最後になったが、作業機フレーム4の下方に設ける前列と後列の砕土ディスク群の内、左右方向の最外側に位置する砕土ディスク10が後上方の外側方へ向けて放擲する土塊を、後列の砕土ディスク10群や粉砕ローラー27の多数の破砕体33が位置する内方側に向かうようにその放擲方向を変更する偏向板57を、前ディスクフレーム4cの左端と後ディスクフレーム4dの右端に取り付けて設ける夫々のアーム58にピン59で上下回動自在に設けている。そのため、前列と後列の砕土ディスク10群で耕耘した土塊を漏れなく、後列の砕土ディスク10群や粉砕ローラー27の多数の破砕体33によって砕土して粉砕することができる。
【0084】
以上、本発明の実施形態について説明したが、ここで開発する比較的小型のディスクハロー型耕耘作業機3で採用する技術は、大型のトラクタに連結して耕耘作業を行う同種の耕耘作業機でも採用することができると共に、例えば、砕土ディスク10群の列数を増やしたり、チゼル砕土体47の数を増減させて抵抗体52に掛かる耕耘抵抗の分力F’の総和を変更したり、或いは、粉砕ローラー27を作業機フレーム4に上下回動調節自在になすネジ式伸縮装置の連結部に設ける機械的な遊びを後方の連結軸38側で設けることも当然にして考えられるところであるから、本発明は、前述の実施形態に必ずしも限定して解釈されるものではない。
【符号の説明】
【0085】
1 トラクタ(牽引車両)
3 耕耘作業機
4 作業機フレーム
10 砕土ディスク
27 粉砕ローラー
31 ローラー本体
33 破砕体
40 螺子軸杆(ネジ式伸縮装置)
45 調整パイプ(ネジ式伸縮装置)
47 チゼル砕土体
48 砕土刃
52 抵抗体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11