(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033726
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】移植機
(51)【国際特許分類】
A01C 13/00 20060101AFI20240306BHJP
A01C 11/00 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
A01C13/00
A01C11/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137495
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100200942
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 高史
(72)【発明者】
【氏名】村並 昌実
(72)【発明者】
【氏名】清家 丈晴
(72)【発明者】
【氏名】山根 暢宏
(72)【発明者】
【氏名】東 幸太
(72)【発明者】
【氏名】田▲崎▼ 昭雄
(72)【発明者】
【氏名】中島 弘喜
(72)【発明者】
【氏名】川崎 優太
(72)【発明者】
【氏名】周防 僚太
【テーマコード(参考)】
2B060
【Fターム(参考)】
2B060AA10
2B060AC01
2B060AC08
2B060AE01
2B060BA04
2B060BB05
2B060CA09
2B060EA08
(57)【要約】
【課題】簡潔な構成であっても、旋回時に畝面の凹凸を均す鎮圧ローラを上昇させることができる移植機を提供する。
【解決手段】
移植機の左右に延びる支持ロッドの左方及び/又は右方の端部付近に、支持ロッドを中心に回動可能に装着された回動カムは、リフトアームの前端部と、平面視で開放部を後方へ向けた略コの字状をなす鎮圧フレームの左右両側部及び/又は左右一方側の側部が連結され、走行車体の車高の上昇に連動してリフトアームが後方へ移動されると、支持ロッドを中心に左側面視で時計回りに回動されて、回動カムに連結された鎮圧フレームが支持ロッドを中心に左側面視で時計回りに回動することで、鎮圧ローラが上昇する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移植物を圃場に植え付ける移植機であって、
車高を昇降可能に構成された走行車体と、
圃場に移植物を移植する植付装置と、
前記走行車体のバンパーに装着され、左右方向に延びる支持ロッドと、
平面視で、開放部を後方へ向けた略コの字状をなし、左右の後端部が前記支持ロッドの左右の端部付近に回動可能に装着された鎮圧フレームと、
前記鎮圧フレームの左右中央部に回転自在に装着され、畝面の凹凸を均す鎮圧ローラと、
前記支持ロッドの左方及び/又は右方の端部付近に、前記支持ロッドを中心に回動可能に装着された回動カムと、
前記走行車体の車高の昇降に連動して前後へ移動されるリフトアームとを備え、
前記回動カムは、前記リフトアームの前端部と、前記鎮圧フレームの左右両側部及び/又は前記左右一方側の側部とが連結され、前記走行車体の車高の上昇に連動して前記リフトアームが後方へ移動されると、前記支持ロッドを中心に左側面視で時計回りに回動するよう構成され、これにより、前記回動カムに連結された前記鎮圧フレームが前記支持ロッドを中心に左側面視で時計回りに回動することにより、前記鎮圧ローラが上昇することを特徴とする移植機。
【請求項2】
畝の左右の法面に接触することで、前記走行車体が圃場の畝に沿って走行するようガイドする左右一対のガイドローラを備え、
前記左右一対のガイドローラは、各々、前記支持ロッドに左右位置を調節可能に固定される枠形状のガイドホルダと、上下に回動可能且つ左右にスライド可能に前記ガイドホルダに連結されたローラアームと、前記ローラアームの前部に固定され、畝の左右いずれかの法面に接触するローラ部材とを備え、
各前記ガイドホルダの前面には、前記ローラアームの回動角度と左右位置とを制限するガイド孔が形成され、各前記ローラアームは、略コの字状をなす前記鎮圧フレームの左右方向に延びる部分の上方に位置するとともに、前記ガイドホルダの内部から前記ガイド孔を通じて前記ガイドホルダの前方へと延ばされており、
前記ガイド孔は、機体の幅方向における内側且つ下方の方向へ斜めに延びる上部貫通部と、前記上部貫通部の下端部から、機体の幅方向における外側且つ下方の方向へ斜めに延びる下部貫通部とを備え、前記ガイド孔全体として正面視略くの字状の形状をなすことを特徴とする請求項1に記載の移植機。
【請求項3】
前記走行車体は、左右一対のクローラを備え、
前記クローラは、左右それぞれ、前記クローラの後下部に揺動可能に配置された揺動フレームを備え、前記揺動フレームの前部に前方転輪が、後部に後方転輪が各々配設されており、
前記後方転輪は、機体の幅方向において前記揺動フレームの内側に位置する内側転輪と、外側に位置する外側転輪とを備え、
前記外側転輪は、その径方向における中心部に位置するハブと、外周部に位置するリムと、前記ハブから前記リムへ延びる3本のスポークとを備え、
前記リムは、機体の幅方向における外側へ向かうほど前記ハブから離れるようにテーパ状に形成されており、
前記3本のスポークは、前記ハブの円周方向に120°間隔で配置されており、機体の幅方向において、前記リムの内側の端部及び前記ハブの内側の端部よりも外側に位置することを特徴とする請求項1又は2に記載の移植機。
【請求項4】
前記ハブ及び前記3本のスポークは、各々、機体の幅方向における内側端部の上下寸法が、外側端部の上下寸法よりも大なる寸法で形成されていることを特徴とする請求項3に記載の移植機。
【請求項5】
前記後方転輪は、機体の幅方向に延び、前記外側転輪と前記内側転輪とを連結する軸体を備え、
前記内側転輪は、前記軸体に沿ってスライド可能に構成されており、また、前記内側転輪の径方向における中心部に位置するハブを備え、
当該ハブの径方向における外側に位置する部分が、機体の幅方向における内側へ突出する形状をなすことで、その径方向内側に収容空間が形成されており、
前記収容空間に、前記内側転輪を機体の幅方向における外側へ付勢するスプリングが収容されていることを特徴とする請求項3に記載の移植機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野菜の苗や、芋類の種芋、ラッキョなどの球根類等の移植物を圃場に植え付ける移植機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、苗や種芋、球根等の移植物を圃場に移植する移植機の前部に、畝面(畝の上面)上を転動されることで畝面の凹凸を均す鎮圧ローラが配置されたものが知られている。鎮圧ローラを用いて畝面の凹凸を均すことで、移植物の植付深さを安定させることができる。一般に、移植機は、隣の畝に移動する旋回時に、畝への接触を防止するため、作業者が、後輪の位置を下げることで車高を高くした後に、機体の後端部に配置された操縦ハンドルを押し下げることで、機体の前部を持ち上げることができる。しかしながら、機体の前部に鎮圧ローラが配置されている場合、鎮圧ローラが畝に接触しないよう、操縦ハンドルを大きく押し下げる必要があり、作業者の負担になっていた。
【0003】
これに対して、特許文献1に記載の移植機においては、機体の前部に配置された前輪がモータ等のアクチュエータを含む昇降機構により上下に昇降される。そして、前輪の昇降に連動して鎮圧ローラを支持するアームがワイヤにより巻き上げられることで、鎮圧ローラが上下に回動される構成となっている。この構成により、機体の旋回時に、アクチュエータの駆動により前輪が上昇するのに伴って、鎮圧ローラが自動的に上方へ回動されるため、作業者が操縦ハンドルを押し下げる負担を軽減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の構成では、従来より設けられていた後輪の昇降機構に加え、前輪を昇降可能とする昇降機構が必要であるため、機体の構成が複雑になるとともに、機体の前部の重量が重くなってしまうという問題があった。
【0006】
このような状況に照らして、本発明は、簡潔な構成であっても、旋回時に畝面の凹凸を均す鎮圧ローラを上昇させることができる移植機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のかかる目的は、
移植物を圃場に植え付ける移植機であって、
車高を昇降可能に構成された走行車体と、
圃場に移植物を移植する植付装置と、
前記走行車体のバンパーに装着され、左右方向に延びる支持ロッドと、
平面視で、開放部を後方へ向けた略コの字状をなし、左右の後端部が前記支持ロッドの左右の端部付近に回動可能に装着された鎮圧フレームと、
前記鎮圧フレームの左右中央部に回転自在に装着され、畝面の凹凸を均す鎮圧ローラと、
前記支持ロッドの左方及び/又は右方の端部付近に、前記支持ロッドを中心に回動可能に装着された回動カムと、
前記走行車体の車高の昇降に連動して前後へ移動されるリフトアームとを備え、
前記回動カムは、前記リフトアームの前端部と、前記鎮圧フレームの左右両側部及び/又は前記左右一方側の側部とが連結され、前記走行車体の車高の上昇に連動して前記リフトアームが後方へ移動されると、前記支持ロッドを中心に左側面視で時計回りに回動するよう構成され、これにより、前記回動カムに連結された前記鎮圧フレームが前記支持ロッドを中心に左側面視で時計回りに回動することにより、前記鎮圧ローラが上昇することを特徴とする移植機。
【0008】
本発明によれば、走行車体の車高が上昇されるのに連動して、リフトアームが後方へ移動され、これによりリフトアームの前部が連結された回動カムが回動することで、同じく回動カムと連結された鎮圧フレームが支持ロッドを中心に上方へ回動される。したがって、走行車体の車高を調整する機構に加えて、別途モータ等のアクチュエータを設けることなく、車高の上昇に連動して鎮圧ローラを上昇させることができるから、簡潔な構成であっても、旋回時に鎮圧ローラを上昇させることができる。
【0009】
また、本発明によれば、鎮圧ローラが装着された鎮圧フレームが、支持ロッドに回動可能に装着されているから、鎮圧ローラ及び鎮圧フレームの自重により、鎮圧フレームが自然と前下がりに回動される。したがって、畝面の凸部や石等により鎮圧フレームが一時的に上方へ回動されても、鎮圧フレームの姿勢を自然に前下がりに戻すことができ、植付深さを安定させることができる。
【0010】
本発明の好ましい実施形態においては、
畝の左右の法面に接触することで、前記走行車体が圃場の畝に沿って走行するようガイドする左右一対のガイドローラを備え、
前記左右一対のガイドローラは、各々、前記支持ロッドに左右位置を調節可能に固定される枠形状のガイドホルダと、上下に回動可能且つ左右にスライド可能に前記ガイドホルダに連結されたローラアームと、前記ローラアームの前部に固定され、畝の左右いずれかの法面に接触するローラ部材とを備え、
各前記ガイドホルダの前面には、前記ローラアームの回動角度と左右位置とを制限するガイド孔が形成され、各前記ローラアームは、略コの字状をなす前記鎮圧フレームの左右方向に延びる部分の上方に位置するとともに、前記ガイドホルダの内部から前記ガイド孔を通じて前記ガイドホルダの前方へと延ばされており、
前記ガイド孔は、機体の幅方向における内側且つ下方の方向へ斜めに延びる上部貫通部と、前記上部貫通部の下端部から、機体の幅方向における外側且つ下方の方向へ斜めに延びる下部貫通部とを備え、前記ガイド孔全体として正面視略くの字状の形状をなしている。
【0011】
本発明のこの好ましい実施形態によれば、畝の法面に接触するローラ部材を支持するローラアームが、上下に回動可能にガイドホルダに連結されているとともに、鎮圧ローラが装着された鎮圧フレームの上方に位置するから、鎮圧ローラが車高の上昇に連動して上方に回動された際に、左右の各ローラアームが、鎮圧フレームにより押圧されて上方へ回動され、左右の各ローラ部材が上昇する。したがって、機体の旋回時に一対のガイドローラが畝に接触し、畝を崩してしまうことを防止できる。
【0012】
さらに、本発明のこの好ましい実施形態によれば、ローラアームの左右位置と回動角度を制限するガイドホルダのガイド孔の下部貫通部が、機体の幅方向における外側且つ下方へ斜めに延びる形状をなしている。換言すれば、下部貫通部は、畝の法面から加わる力に対して略垂直な方向に延びている。このため、自重及びローラ部材の重みにより下方へ回動されて、下部貫通部を通過する位置にあるローラアームに、畝の法面から押し返される力が加わったときに、ローラアームが、上部貫通部と下部貫通部との間に形成される角部の下端部によって抑えられる。したがって、移植作業中にローラ部材が畝の法面から頻繁に離れてしまうことを防止できる。
【0013】
加えて、畝の法面に位置する石等に接触することにより各ローラ部材に強い衝撃が加わった際には、ローラアームを上部貫通部へ逃がすことができ、したがってガイドローラの破損を防止することができる。
【0014】
さらに、本発明のこの好ましい実施形態によれば、機体の旋回後に、走行車体の車高が下げられた際に、リフトアームが前方へ移動されるのに伴って鎮圧フレームが前下がりに回動すると、各ローラ部材及びローラアームが自重により、ガイド孔に沿って、下方且つ機体の幅方向における内側に移動する。したがって、走行車体の車高を下げたときに、一対のローラ部材を、自然に畝の法面にフィットさせることができる。
【0015】
また、本発明のこの好ましい実施形態によれば、左右一対のガイドローラが、各々、左右位置を調節可能に構成されているから、一対のガイドローラの左右間隔を畝幅に合わせて調節することができ、植付装置による植付位置が左右に乱れることを防止できる。
【0016】
本発明のさらに好ましい実施形態においては、
前記走行車体は、左右一対のクローラを備え、
前記クローラは、左右それぞれ、前記クローラの後下部に揺動可能に配置された揺動フレームを備え、前記揺動フレームの前部に前方転輪が、後部に後方転輪が各々配設されており、
前記後方転輪は、機体の幅方向において前記揺動フレームの内側に位置する内側転輪と、外側に位置する外側転輪とを備え、
前記外側転輪は、その径方向における中心部に位置するハブと、外周部に位置するリムと、前記ハブから前記リムへ延びる3本のスポークとを備え、
前記リムは、機体の幅方向における外側へ向かうほど前記ハブから離れるようにテーパ状に形成されており、
前記3本のスポークは、前記ハブの円周方向に120°間隔で配置されており、機体の幅方向において、前記リムの内側の端部及び前記ハブの内側の端部よりも外側に位置している。
【0017】
本発明のこの好ましい実施形態によれば、外側転輪の3本のスポークが等間隔(120°間隔)に配置されているから、スポーク同士の間に空間を広くとることができ、外側転輪と揺動フレームとの間に侵入した泥などを、スポーク同士の間から機体外側へ逃がすことができる。加えて、3本のスポークが、リムの内側の端部とハブの内側の端部よりも機体の幅方向において外側に位置しているから、泥などが機体外側へ逃げるのを妨げにくい。
【0018】
さらに、外側転輪の外周部に位置するリムが、機体の幅方向における外側へ向かうほどハブから離れるようにテーパ状に形成されているから、リムの径方向における内側部分に泥などが付着した場合でも、テーパ状をなすリムの機体幅方向における外側の面に沿って泥等が滑り落ちるため、揺動フレームと外側転輪との間に泥などが溜まる事態を効果的に防ぐことができる。したがって、各クローラの後ろ下部に位置し、走行時に負荷がかかりやすい後方転輪の破損を防止できる。
【0019】
本発明のさらに好ましい実施形態においては、
前記ハブ及び前記3本のスポークは、各々、機体の幅方向における内側端部の上下寸法が、外側端部の上下寸法よりも大なる寸法で形成されている。
【0020】
本発明のこの好ましい実施形態によれば、外側転輪のハブと3本のスポークは各々、機体の幅方向における内側端部の上下寸法が、外側端部の上下寸法よりも大なる寸法(例えば縦断面視で三角形状、台形状など)で形成されているから、ハブやスポークに載った泥などを走行時の振動等により機体外側に落とすことができ、泥等が後方転輪と揺動フレームとの間に落ちてしまう事態を抑制できる。
【0021】
本発明のさらに好ましい実施形態においては、
前記後方転輪は、機体の幅方向に延び、前記外側転輪と前記内側転輪とを連結する軸体を備え、
前記内側転輪は、前記軸体に沿ってスライド可能に構成されており、また、前記内側転輪の径方向における中心部に位置するハブを備え、
当該ハブの径方向における外側に位置する部分が、機体の幅方向における内側へ突出する形状をなすことで、その径方向内側に収容空間が形成されており、
前記収容空間に、前記内側転輪を機体の幅方向における外側へ付勢するスプリングが収容されている。
【0022】
本発明のこの好ましい実施形態によれば、内側転輪が、軸体に沿ってスライド可能に構成されているとともに、内側転輪のハブに、内側転輪を機体の幅方向における外側へ付勢するスプリングが設けられているから、内側転輪と揺動フレームとの間に泥や石等が侵入し、内側転輪に対し過度に負荷がかかったときに、内側転輪を、スプリングの付勢力に反して機体の幅方向における内側へスライドさせて逃がすことができ、内側転輪への負荷を軽減できる。さらに、このとき、内側転輪と揺動フレームとの間の間隙を広げることができるから、泥等の侵入物を下方へ排出することができる。
【0023】
加えて、侵入物の排出後に、スプリング59の付勢力により、内側転輪を機体幅方向外側へ戻すことができるため、その後の泥等の侵入を抑制できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、簡潔な構成であっても、旋回時に、畝面の凹凸を均す鎮圧ローラの位置を上昇させることができる移植機を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る移植機の模式的左側面図である。
【
図3】
図3は、走行車体の前部に配置されたバンパーの近傍の拡大平面図である。
【
図4】
図4は、走行車体の前部に配置されたバンパーの近傍の拡大左側面図である。
【
図5】
図5は、吸水ホースの先端部を示す図面である。
【
図6】
図6は、
図1に示された主クラッチレバーの根元部分の近傍の略左側面図である。
【
図7】
図7は、本発明の第2実施形態に係る移植機に設けられた左側のクローラの略左側面図である。
【
図8】
図8は、左側のクローラの揺動フレームの近傍の略斜視図である。
【
図9】
図9は、左側のクローラの後方転輪の外側転輪の近傍の拡大左側面図である。
【
図10】
図10は、
図9に示されたX-X線に沿った外側転輪のハブの近傍の部分縦断面図である。
【
図11】
図11は、
図9に示されたY-Y線に沿った外側転輪の近傍の水平断面図である。
【
図12】
図12は、左側のクローラの後方転輪の内側転輪の近傍の略背面図である。
【
図13】
図13は、
図12に示された内側転輪に設けられたスプリングを露出させた状態を示す略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面に基づいて、本発明の好ましい実施形態につき、詳細に説明を加える。
図1は、本発明の第1実施形態に係る移植機1の模式的左側面図であり、
図2は、
図1に示された移植機1の模式的平面図である。
【0027】
本明細書においては、特に断りがない限り、移植機1の進行方向となる側を「前」、その反対側を「後」とし、移植機1の進行方向である前方に向かって左側を「左」といい、その反対側を「右」という。本実施形態にかかる移植機1は、移植物として甘薯の苗を圃場に移植可能に構成されているが、圃場に移植する移植物の種類はこれに限られない。
【0028】
移植機1は、機体を前進させる走行車体10(以下、単に「車体」ともいう。)と、車体10に装着され、作業者により苗保持具7にセットされた苗を機体下部へ搬送する搬送装置4と、搬送装置4により搬送された苗を植付け動作を繰り返すことで圃場に移植する植付装置3と、車体10の前方に配置された鎮圧ローラ5及び左右一対のガイドローラ6と、車体の後部に設けられた左右一対の鎮圧輪21と、車体10の後部に設けられた機体フレーム17に装着された操縦ハンドル16を備えている。なお、本明細書において、「機体」とは、移植機を指すものとする。
【0029】
走行車体10は、機体の動力源としてのエンジン11と、エンジン11から出力される回転動力を変速するミッションケース12と、駆動輪としての左右一対の後輪9と、遊転輪である左右一対の前輪8を備えている。
【0030】
ミッションケース12により変速された動力は、第1伝動装置25及び第2伝動装置26を介して搬送装置4及び植付装置3に伝達される他、ミッションケース12に軸架している車軸13及び左右一対のチェーンケース14を介して一対の後輪9に伝達される。その結果、一対の後輪9が回転されて車体10が前進すると同時に、搬送装置4が間欠的に回転されることで植付装置3の植付け動作時の軌跡に重なる位置まで搬送された苗が、植付け動作を繰り返す植付装置3により掻き取られて圃場の畝Pに移植される。
一対の鎮圧輪21は、各々、車体10の走行に伴って畝面を遊転することにより移植後の表土を鎮圧する。
【0031】
操縦ハンドル16には、車体10、搬送装置4及び植付装置3への動力の伝達を断接する主クラッチを切るのに用いられる主クラッチレバー18や、車体10の車高を調節するのに用いられる植付昇降レバー19等が配置されている。
【0032】
一対のチェーンケース14のミッションケース12への取付部には、各々、上方へ延びる昇降アーム20が一体的に取り付けられている。左側の昇降アーム20は、ミッションケース12に固定された昇降用油圧シリンダ70(
図2参照)のピストンロッド先端に上下軸心まわりに回動自在に取り付けられた天秤杆23の左側の端部に、水平制御用油圧シリンダ15により連結されている。一方、右側の昇降アーム20は、連結ロッド24により天秤杆23の右側の端部に連結されている。
【0033】
植付昇降レバー19の操作により昇降用油圧シリンダ70のピストンロッドが後方へ突出すると、一対の昇降アーム20が後方に(詳細には、左側面視で時計回りに)回動される。これにより、一対のチェーンケース14が車軸13周りに下方へ(詳細には、左側面視で時計回りに)回動され、一対の後輪9が下降する。その結果、車体10の車高が上昇する。
【0034】
これに対し、植付昇降レバー19の操作により昇降用油圧シリンダ70のピストンロッドが前方に収容されると、一対の昇降アーム20が前方に(詳細には、左側面視で反時計回りに)回動される。これにより、一対のチェーンケース14が車軸13周りに上方へ(詳細には、左側面視で反時計回りに)回動され、一対の後輪9が上昇する。その結果、車体10の車高が下降する。左側の昇降アーム20には、後に詳述するリフトアーム30の後端部に連結されている。
【0035】
図3は、走行車体10の前部に配置されたバンパー2の近傍の拡大平面図であり、
図4は、走行車体10の前部に配置されたバンパー2の近傍の拡大左側面図である。より詳細には、
図4(a)は、植付作業時のバンパー2の近傍の拡大左側面図であり、
図4(b)は、旋回時に車体10の車高が高く調整されたときのバンパー2の近傍の拡大左側面図である。
図3の破線で描かれた吹き出し内には、後に詳述するガイドホルダ6cの略正面図が示されている。
【0036】
走行車体10のバンパー2には、機体の幅方向(=左右方向)に延びる支持ロッド27が装着されている。支持ロッド27は、幅方向中央部が縦断面視で六角形状をなすとともに、左右の端部付近は縦断面視で円形をなす部材である。支持ロッド27のこの左右の端部付近には、平面視略コの字状をなす鎮圧フレーム28の左右の後端部28b1が回動可能に装着されており、鎮圧フレーム28は支持ロッド27により支持されている。
【0037】
鎮圧フレーム28は、機体の幅方向(=左右方向)に延びる支持部28aと、支持部28aの左右両端部から後方の支持ロッド27へ延びる左右一対の基部28bを備え、開放部を平面視で後方へ向けて配置されている。なお、開放部とは、一対の基部28bの後部間の左右方向の間隙をいう。支持部28aの左右中央部には、畝面(畝Pの上面)を転動することで畝面の凹凸を均す鎮圧ローラ5が回転自在に装着されており、支持部28aは鎮圧ローラ5を回転自在に支持している。
【0038】
支持ロッド27には、鎮圧フレーム28に加えて、畝の左右の法面(のりめん、=斜面)に接触することで車体10が畝Pに沿って走行するようガイドする左右一対のガイドローラ6と、車高が上昇された際に鎮圧フレーム28を上昇回動させる回動カム29が装着されている。回動カム29は、縦断面視円形をなす支持ロッド27の左側の端部付近に回動自在に装着されている。
【0039】
ここで、回動カム29と、鎮圧フレーム28の左側の基部28bと、リフトアーム30の前端部とは、左右に延びる連結ピン31により連結されている。車体10の車高が(一定以上)上昇され、
図4(b)に示されるように、一対の昇降アーム20が左側面視で時計回りに回動されると、リフトアーム30が昇降アーム20により引っ張られて後方へ移動される。その結果、回動カム29が支持ロッド27を中心に左側面視で時計回りに回動されて、連結ピン31の位置が、車体10の車高の上昇前よりも上方に移動される。これにより、鎮圧フレーム28が支持ロッド27回りに上方へ回動され、鎮圧ローラ5が上昇する。
【0040】
このように、車体10の車高が上昇されたときに、鎮圧ローラ5が連動して上昇するから、機体の旋回時に、鎮圧ローラ5が畝Pに接触して畝Pが崩れてしまう事態を防止できる。加えて、鎮圧ローラ5が上昇されているから、隣りの畝Pへ旋回する際に鎮圧ローラ5が邪魔にならない。
【0041】
一方、左右一対のガイドローラ6は、各々、支持ロッド27に固定された枠形状のガイドホルダ6cと、ガイドホルダ6cに連結されたローラアーム6bと、ローラアーム6bの前部に固定されたローラ部材6aを備えている。植付装置3による苗の移植を伴う車体10の走行時に、左側のガイドローラ6のローラ部材6aは畝Pの左側の法面に接触し、右側のガイドローラ6のローラ部材6aは畝Pの右側の法面に接触することで、車体10が畝Pに沿って走行するようガイドできる。
【0042】
各ガイドホルダ6cの後部には、支持ロッド27に固定用の孔(不図示)が形成されている。当該孔と、支持ロッド27に形成された左右方向に並ぶ複数の貫通孔(不図示)のいずれかとが位置合わせされた状態で、蝶ボルト又は押しボルトが挿入されることで、各ガイドローラ6の左右位置を固定することができる。すなわち、各ガイドホルダ6cは、左右位置を調節可能に支持ロッド27に固定される。なお、支持ロッド27に複数の貫通孔を設けることは必ずしも必要でなく、各ガイドホルダ6cの下面に、支持ロッド27に引っ掛けるためのフックを設けるとともに、各ガイドホルダ6cの後部に形成された固定用の孔を通じて、蝶ボルト又は押しボルトを支持ロッド27に押し付ける構成とすることで各ガイドローラ6の左右位置を無段階に変更可能としてもよい。
【0043】
枠形状の各ガイドホルダ6cの内部は中空となっており、そこに左右方向に延びる軸体6c1が通されている。各ガイドローラ6のローラアーム6bは、軸体6c1に上下に回動自在且つ左右にスライド可能に連結されている。この連結部にはやや遊びが設けられており、ローラアーム6bを、軸体6c1に対してやや斜めに動かすことも可能である。
【0044】
各ガイドホルダ6cの前面には、ガイドホルダ6cの外部と、内部の中空部分とを連通するガイド孔6c2が形成されており、ローラアーム6bは、ガイドホルダ6cの内部から、ガイド孔6c2を通じて、ガイドホルダ6cの前方へ延ばされている。このため、ローラアーム6bは、ガイド孔6c2が延びる方向にのみ、上下に回動及び左右にスライドすることができ、ガイド孔6c2は、ローラアーム6bの上下の回動角度と、左右位置とを制限する機能を果たしている。換言すれば、ガイド孔6c2は、ローラアーム6bの上下の回動角度と、左右位置を画定する機能を有している。
【0045】
図3の破線で描かれた吹き出し内に示されるように、ガイド孔6c2は、正面視で、全体として略L字状(換言すれば、略「く」の字状)又は略逆L字状(換言すれば、略逆「く」の字状)をなしている。より詳細には、ガイド孔6c2は、下側へ向かうほど機体の幅方向における内側へ向かうように斜めに延びる上部貫通部6c2aと、上部貫通部6c2aの下端部から、機体の幅方向における外側且つ下方へ屈曲する(=へ延びる)下部貫通部6c2bを備えている。このため、各ガイドホルダ6cの前面には、上部貫通部6c2aと下部貫通部6c2bとにより形成された角部6c2cが形成されている。上部貫通部6c2aは、換言すれば、機体の幅方向における内側且つ下方へ斜めに延びており、角部6c2cは、換言すれば、ガイド孔6c2の方へ突出する突出部である。
【0046】
ローラアーム6bは、自重及びローラ部材6aの重みにより、軸体6c1を中心に自然と下方へ回動されるため、苗の植付けを伴う走行時には、基本的にガイド孔6c2の下端部を通過する回動角度・左右位置にある。車体10の走行中には、ローラアーム6b及びローラ部材6aに、畝Pの法面から押し返される力、すなわち、上方且つ機体の幅方向における外側の方向へ斜めに押圧する力が加わる。しかしながら、下部貫通部6c2bがこの押圧する力の方向に対して略垂直な方向に延びており、下部貫通部6c2bの上方の角部6c2cの下端部が、上方へ逃げようとするローラアーム6bの抵抗となり、ローラアーム6bが角部6c2cにより抑えられる。加えて、
図4(a)から見てとれるように、回動中心である軸体6c1(
図3参照)は、ローラアーム6bがガイド孔6c2の下端部にあるときの(作用部である)ローラ部材6aよりも上方の位置に設定されている。したがって、移植作業中にローラ部材6aが畝Pの法面から頻繁に離れてしまうことを防止できる。さらに、畝Pの法面に存在する石等によりローラ部材6a及びローラアーム6bに過度に強い力が加わった場合には、ローラアーム6bを、ガイド孔6c2の下部貫通部6c2bから、上部貫通部6c2a内に逃がすことができ、したがって、ローラ部材6a、ローラアーム6b及びガイドホルダ6cの破損を防止できる。
【0047】
各ローラアーム6bは、
図3及び
図4から見てとれるように、鎮圧フレーム28の支持部28aの上方を、略前方へ伸びている。このため、車体10の車高が一定以上上昇され、鎮圧フレーム28が支持ロッド27を中心に上方へ回動された際には、各ローラアーム6bが、鎮圧フレーム28の支持部28aにより上方へ押圧され、軸体6c1を中心に上方へ回動される。このように、車体10の車高が一定以上上昇されたときに、鎮圧ローラ5に加えて、左右一対のガイドローラ6のローラ部材6aも上昇されるから、機体の旋回時に、ローラ部材6aが畝Pに接触して畝Pが崩れてしまう事態を防止できる。
【0048】
このとき、各ガイドローラ6のローラアーム6bが、上部貫通部6c2aに沿って、上方且つ機体の幅方向における外側へ回動・スライドされるから、左右のガイドローラ6のローラ部材6a間の間隔が拡げられる。したがって、機体の旋回後に、畝Pの左右外側へ左右のローラ部材6aを位置させ易い。
【0049】
さらに、機体の旋回後に、走行車体10の車高を下げたときに、各ガイドローラ6のローラアーム6bは、上部貫通部6c2aに沿って、下方且つ機体の幅方向における内側へ回動・スライドされるから、一対のローラ部材6aを、自然に畝Pの法面にフィットさせることができる。
【0050】
また、鎮圧ローラ5は、支持ロッド27を中心とした鎮圧フレーム28の回動により上下するため、畝Pの高さが変わっても鎮圧ローラ5を畝面に追従させることができる。
【0051】
さらに、畝Pの上面を鎮圧ローラ5により、畝Pの法面を左右一対のローラ部材6aにより押さえることができるから、追従性がよく、走行車体10を畝Pが延びる方向へ確実に案内することができる。
一方、
図5は、吸水ホース38の先端部を示す図面である。
【0052】
移植機1には図示しない潅水用タンクが設けられており、植付装置3の植付け動作が行われる度に、潅水用タンクより送られる水が植付爪3a(
図1参照)から圃場に供給される。この潅水用タンク内に貯留された水の中に、
図5に示される吸水ホース38の端部が挿し込まれており、吸水ホース38の端部にホースバンド40を用いて取付けられたフィルタ39の側面を通じて吸い上げられた水が、送水経路を通じて植付爪3aへと供給される。このように、フィルタ39を介して潅水用タンク内の水を吸い上げることで、潅水用タンク内に含まれる水以外の異物が送水経路に送られてしまうことを防止できる。フィルタ39の先端部には、タンク底部でフィルタ39が擦れてしまうことを防止するキャップ41が設けられており、フィルタ39を保護することができる。
【0053】
フィルタ39の内部にはフィルタ39を張るためのスプリング42が延ばされている。
図5にスプリング42の径が破線で示されるように、フィルタ39内を延びるスプリング42において、キャップ41の内側に位置する部分の径が、他の部分の径よりも太く構成されている。このように構成することで、キャップ41がフィルタ39から外れにくくなる。
【0054】
フィルタ39の先端部の内側であって、キャップ41の内側に位置する部分には、一点鎖線で示された錘(重り)43が内蔵されている。これにより、吸水ホース38の先端部を、潅水用タンク内に貯留された水の中に確実に沈めることができ、植付爪3aに安定的に水を供給できる。
【0055】
図6は、
図1に示された主クラッチレバー18の根元部分の近傍の略左側面図である。
図6(a)には、主クラッチレバー18が回動操作される前の状態が示されており、
図6(b)には、主クラッチレバー18が回動操作された後の状態が示されている。
【0056】
主クラッチレバー18の略下方には、主クラッチレバー18の回動操作(
図6(a)に示される矢印参照)を、主クラッチに伝達するための第1プレート32及び第1プレート33の右側(図面奥側)に配置された第2プレート33が設けられている。
【0057】
第1プレート32は、操縦ハンドル16の角度を調節するノブボルト34(
図1参照)が挿し込まれるチューブ35に干渉しないよう、湾曲した形状をなしている。これにより、主クラッチレバー18の回動操作時に第1プレート32がチューブ35に干渉し傷付け、又は傷付いてしまうことを防止できる。
【0058】
主クラッチレバー18が回動操作されるとき、第2プレート33に連結されたケーブル37(
図6(b)参照)により、第2プレート33が前側へ引っ張られ、回動中心36回りに第2プレート33が左側面視で時計回りに回動される。なお、
図6(a)においては、第2プレート33へのケーブル37の連結部分を示すため、ケーブル37等が省略されている。
【0059】
主クラッチレバー18が回動操作される間、
図6に示されるように、第1プレート32及び第2プレート33は常に側面視で重なっており、互いに左右に当接しながら動作する。これにより、第1、第2プレート32,33の端面同士が接触して動作がロックされてしまう事態を防止できる。
<第一実施形態の技術的意義>
【0060】
図1ないし
図6に示された第1実施形態によれば、走行車体10の車高が上昇されるのに連動して、リフトアーム30が後方へ移動され、これによりリフトアーム30の前部が連結ピン31により連結された回動カム29が左側面視で時計回りに回動することで、同じく回動カム29と連結された鎮圧フレーム28が支持ロッド27を中心に上方へ回動される。したがって、走行車体10の車高を調整する機構に加えて、別途モータ等のアクチュエータを設けることなく、車高の上昇に連動して鎮圧ローラ5を上昇させることができるから、簡潔な構成であっても、旋回時に鎮圧ローラ5を上昇させることができる。
【0061】
さらに、第1実施形態によれば、鎮圧ローラ5が装着された鎮圧フレーム28が、支持ロッド27に回動可能に装着されているから、鎮圧ローラ5及び鎮圧フレーム28の自重により、鎮圧フレーム28が自然と前下がりに回動される。したがって、畝面の凸部や石等により鎮圧フレーム28が一時的に上方へ回動されても、鎮圧フレーム28の姿勢を自然に前下がりに戻すことができ、植付深さを安定させることができる。
【0062】
加えて、第1実施形態によれば、畝Pの法面に接触するローラ部材6aを支持するローラアーム6bが、上下に回動可能にガイドホルダ6cに連結されているとともに、鎮圧ローラ5が装着された鎮圧フレーム28の支持部28aの上方に位置するから、鎮圧ローラ5が車高の上昇に連動して上方に回動された際に、左右の各ローラアーム6bが、鎮圧フレームにより押圧されて上方へ回動され、各ローラ部材6aが上昇する。したがって、旋回時に一対のガイドローラ6が畝Pに接触し、畝Pを崩してしまうことを防止できる。
【0063】
また、第1実施形態によれば、ローラアーム6bの左右位置と回動角度を制限するガイドホルダ6cのガイド孔6c2の下部貫通部6c2bが、機体の幅方向における外側且つ下方へ斜めに延びる形状をなしている。換言すれば、下部貫通部6c2bは、畝Pの法面から加わる力に対して略垂直な方向に延びている。このため、自重及びローラ部材6aの重みにより下部貫通部6c2bを通過する位置にあるローラアーム6bに、畝Pの法面から押し返される力が加わったときに、ローラアーム6bが、上部貫通部6c2aと下部貫通部6c2bとの間に形成される角部6c2cの下端部によって抑えられる。したがって、植付け作業中にローラ部材6aが畝Pの法面から頻繁に離れてしまうことを防止できる。
【0064】
さらに、第1実施形態によれば、畝Pの法面に位置する石等に接触することにより各ローラ部材6aに強い衝撃が加わった際には、上部貫通部6c2aにローラアーム6bを逃がすことができ、したがってガイドローラ6の破損を防止することができる。
【0065】
加えて、第1実施形態によれば、機体の旋回後に、走行車体10の車高が下げられた際に、リフトアーム30が前方へ移動されるのに伴って鎮圧フレーム28が前下がりに回動すると、各ローラアーム6bが自重で、ガイド孔6c2に沿って下方に移動することにより、ローラ部材6aが下方且つ機体の幅方向における内側に移動する。したがって、走行車体10の車高を下げたときに、一対のローラ部材6aを、自然に畝Pの法面にフィットさせることができる。
【0066】
また、第1実施形態によれば、左右一対のガイドローラ6が、各々、支持ロッド27に、左右位置を調節可能に装着されるから、一対のガイドローラ6の左右間隔を畝幅に合わせて調節することができ、植付装置3による植付位置が左右に乱れることを防止できる。
一方、
図7は、本発明の第2実施形態に係る移植機1に設けられた左側のクローラ45の略左側面図である。
【0067】
本実施形態に係る移植機1は、左右一対のチェーンケース14及び左右一対の後輪9に代えて、左右一対のクローラ45を備えており、以下に述べる点を除いて、前記実施形態に係る移植機1と同様に構成されている。
【0068】
各クローラ45は、
図1及び
図7に示された車軸13から動力を受ける駆動輪46と、駆動輪46により回転されるクローラベルト48と、クローラベルト48にテンションを加える従動輪47と、クローラ45の後ろ下部に配置された揺動フレーム49と、揺動フレーム49の前部に装着された前方転輪50と、揺動フレーム49の後部に装着された後方転輪51と、揺動フレーム49、駆動輪46及び従動輪47を支持する基本フレーム52を備えている。
【0069】
図2に示された昇降用油圧シリンダ70のピストンロッドが後方へ突出することで、
図1、
図2、
図4等に示された一対の昇降アーム20が左側面視で時計回りに回動されると、左右のクローラ45が車軸13周りに下方へ(詳細には、左側面視で時計回りに)回動される。その結果、車体10の車高が上昇する。反対に、昇降用油圧シリンダ70のピストンロッドが前方に収容されると、一対の昇降アーム20が前方に(詳細には、左側面視で反時計回りに)回動される。これにより、左右のクローラ45が車軸13周りに上方へ(詳細には、左側面視で反時計回りに)回動されて、車体10の車高が下降する。このように、車高の昇降時に一対の昇降アーム20が回動されるから、第1実施形態の場合と同様に、車高の昇降に連動して、鎮圧ローラ5及びローラ部材6aを昇降させることができる。
【0070】
以下、左側のクローラ45について詳細に説明を進めるが、左右のクローラ45は、互いに同一に構成されており、右側のクローラ45についても同様のことがいえる。
図8は、左側のクローラ45の揺動フレーム49の近傍の略斜視図である。
【0071】
揺動フレーム49は、基本フレーム52に対して揺動中心62回りに揺動可能に取付けられており、走行中に、又は車高の昇降中に、揺動フレーム49が揺動されることによって、前方転輪50及び後方転輪51が揺動中心62まわりに回動される。
【0072】
後方転輪51は、機体の幅方向において揺動フレーム49の外側に配設された外側転輪51aと、機体の幅方向において揺動フレーム49の内側に配設された内側転輪51bと、揺動フレーム49に回転可能に装着された軸体56(
図10、
図11、
図13等参照)を備えている。すなわち、外側転輪51aと内側転輪51bは、軸体56を介して揺動フレーム49に連結されている。軸体56は機体の幅方向に延びており、外側転輪51aに対し、
図11に示されるブッシュ64を介して接続されている。
【0073】
後方転輪51はクローラ45の後ろ下部に配置された揺動フレーム49の後部に連結(配設)されており、圃場面に接地し前後方向に延びるクローラベルト48を、前上方へ向ける役割を果たす。このため、後方転輪51には走行時に負荷がかかりやすく、加えて、揺動フレーム49と後方転輪51との間に石や泥等が侵入することで後方転輪51により一層の負荷がかかりやすい。本実施形態においては、以下に詳述するように、侵入した石や泥等を逃がすための種々の対策が施されている。
【0074】
図9は、左側のクローラ45の後方転輪51の外側転輪51aの近傍の拡大左側面図であり、
図10は、
図9に示されたX-X線に沿った外側転輪51aのハブ53の近傍の部分縦断面図であり、
図11は、
図9に示されたY-Y線に沿った外側転輪51aの近傍の水平断面図である。なお、
図11において、クローラベルト48は便宜上省略されている。
【0075】
左側のクローラ45の外側転輪51aは、その径方向における中心部に位置するハブ53と、外周部に位置するリム54と、ハブ53からリム54へ放射状に延びる3本のスポーク55を備えている。
【0076】
3本のスポーク55は、
図9に示されるように、ハブ53の円周方向に120°間隔で配置されている。このため、スポーク55同士の間に形成された3つの泥逃げ空間63を広く取ることができ、揺動フレーム49と後方転輪51との間の間隙に侵入した泥などを、泥逃げ空間63を通じて後方転輪51の機体幅方向外側へ逃がすことができる。
【0077】
ここで、3本のスポーク55は、
図11に示されるように、機体の幅方向において、ハブ53の機体幅方向内側の端部よりも外側に位置し、且つ、リム54の機体幅方向内側の端部よりも外側に位置している。したがって、揺動フレーム49と後方転輪51との間に侵入した泥等が泥逃げ空間63を通じて外側へ逃げるのを妨げにくい。また、各スポーク55がこのような位置に配置されていることで、走行時に外側転輪51aが遊転する間に、3か所の各泥逃げ空間63から隣り合う泥逃げ空間63に泥が行かないように、スポーク55で仕切ることができる。
【0078】
さらに、ハブ53及び3本のスポーク55は、各々、
図10に示されるように、機体幅方向内側の端部(=内側端部)の上下寸法が、外側の端部(=外側端部)の上下寸法よりも大なる寸法で形成されている。すなわち、ハブ53及び3本のスポーク55は各々、縦断面視で、略台形状又は略三角形状をなしている。したがって、走行時の振動等により、ハブ53や各スポーク55に載った泥などを走行時の振動等により機体外側に落とすことができ、揺動フレーム49と外側転輪51aとの間に落ちてしまうことを抑制できる。
【0079】
図10及び
図11に示されるように、外側転輪51aのハブ53の径方向外側に位置する部分(換言すれば、ハブ53の周縁部)が機体幅方向内側に突出する形状をなしており、これにより、当該突出部57の径方向内側に、空間58が形成されている。なお、当該突出部57の径方向内側は、すなわち、軸体56の周りである。加えて、
図7及び
図9に示されるように、揺動フレーム49の下端部は、ハブ53の下端部よりも上方に位置するよう設定されており、尚且つ、機体幅方向内側へ延びる突出部57の(ハブ53の径方向における)内側の面の下端部よりも上方に位置するよう設定されている。
【0080】
このように、ハブ53の径方向外側に位置する部分を揺動フレーム49の方へ突出させることで、揺動フレーム49とハブ53との間の部分に泥や石等が侵入することを抑制できるとともに、空間58内に侵入してしまった泥等を、空間58の下部から機体幅方向内側へ排出することができる。なお、突出部57の内側の面、すなわち、空間58に対向する面は、
図11に示されるよりもさらに、軸体56へ向けて滑らかに斜めに延びるよう構成してもよく、これにより、空間58へ侵入した泥等をスムーズに排出することが可能になる。
【0081】
加えて、リム54は、
図11に示されるように、機体の幅方向における外側へ向かうほどハブ53(換言すれば、外側転輪51aの径方向中央部)から離れるようにテーパ状(=すり鉢状)に形成されている。したがって、走行中に、リム54の径方向における内側部分(泥逃げ空間63に面する部分)に泥などが付着した場合でも、走行時の振動等により機体幅方向外側へ滑らせて落とすことができる。
【0082】
一方、
図12は、左側のクローラ45の後方転輪51の内側転輪51bの近傍の部分断面背面図であり、
図13は、
図12に示された内側転輪51bに設けられたスプリング59を露出させた状態を示す略斜視図である。
【0083】
内側転輪51bは、その径方向中央部に位置するハブ67と、外周部に位置するリム68と、ハブ67とリム68とを連結するスポーク69を備え、機体幅方向にスライド可能に軸体56に接続されている。すなわち、内側転輪51bは、軸体56に沿ってスライド可能に構成されている。
【0084】
内側転輪51bのハブ67は、外側転輪51aのハブ53と同様に、その径方向外側に位置する部分(=周縁部)が機体幅方向内側へ突出することにより、ハブ67の径方向における当該突出部66の内側に、収容空間65が形成されている。突出部66は円筒状に延びる形状をなしており、収容空間65には、
図13に示されるスプリング59が収容されている。スプリング59は、収容空間65から機体幅方向内側へ飛び出さないよう、押さえ部材60により押さえつけられており、さらに、この押さえ部材60の縁部が、突出部66に当接した状態で、ロック部材61によりロックされている。このため、ハブ67及び内側転輪51b全体が、スプリング59により機体幅方向外側、すなわち、揺動フレーム49側へ付勢されている。
【0085】
このように構成することで、内側転輪51bと揺動フレーム49との間に泥や石等が侵入し、内側転輪51bを機体幅方向内側へ押圧する力(=負荷)が過度に強まった場合に、スプリング59が縮み、内側転輪51bが軸体56に沿って機体幅方向内側へ自然とスライドされるから、内側転輪51bを保護できるとともに、揺動フレーム49との間の間隔を広げ、泥等の侵入物を下方へ排出することができる。加えて、侵入物の排出後に、スプリング59の付勢力により、内側転輪51bを機体幅方向外側へ戻すことができるため、泥等の侵入を抑制できる。
<第2実施形態の技術的意義>
図7ないし
図13に示された第2実施形態によれば、前記実施形態により得られる効果に加え、以下の効果を得ることができる。
すなわち、第2実施形態によれば、後方転輪51の外側転輪51aの3本のスポーク55が等間隔(120°間隔)に配置されているから、スポーク55同士の間に泥逃げ空間63を広くとることができ、外側転輪51aと揺動フレーム49との間に侵入した泥などを、泥逃げ空間63から機体外側へ逃がすことができる。加えて、3本のスポーク55が、
図11に示されるように、機体の幅方向において、リム54の内側の端部とハブ53の内側の端部よりも外側に位置しているから、泥などが機体外側へ逃げるのを妨げにくい。
【0086】
さらに、第2実施形態によれば、後方転輪51の外側転輪51aの外周部に位置するリム54が、機体の幅方向における外側へ向かうほどハブ53から離れるようにテーパ状に形成されているから、リム54の径方向における内側部分に泥などが付着した場合でも、テーパ状をなすリム54の機体幅方向における外側の面に沿って泥等が滑り落ちるため、揺動フレーム49と外側転輪51aとの間に泥などが溜まる事態を効果的に防ぐことができる。したがって、各クローラ45の後ろ下部に位置し、走行時に負荷がかかりやすい後方転輪51の破損を防止できる。
【0087】
加えて、第2実施形態によれば、後方転輪51の外側転輪51aのハブ53と3本のスポーク55は各々、機体の幅方向における内側端部の上下寸法が、外側端部の上下寸法よりも大なる寸法(例えば縦断面視で三角形状、台形状など)で形成されているから、ハブ53やスポーク55に載った泥などを走行時の振動等により機体外側に落とすことができ、泥等が後方転輪と揺動フレームとの間に落ちてしまう事態を抑制できる。
【0088】
また、第2実施形態によれば、後方転輪51の内側転輪51bが、軸体56に沿って機体幅方向にスライド可能に構成されているとともに、内側転輪51bのハブ67に、内側転輪51bを機体の幅方向における外側へ付勢するスプリング59が設けられているから、内側転輪51bと揺動フレーム49との間に泥や石等が侵入し、内側転輪51bに対し過度に負荷がかかったときに、内側転輪51bを、スプリング59の付勢力に反して機体の幅方向における内側へスライドさせて逃がすことができ、内側転輪51bへの負荷を軽減できる。さらに、このとき、内側転輪51bと揺動フレーム49との間の間隙を広げることができるから、泥等の侵入物を下方へ排出することができる。
加えて、侵入物の排出後に、スプリング59の付勢力により、内側転輪51bを機体幅方向外側へ戻すことができるため、その後の泥等の侵入を抑制できる。
【0089】
本発明は、以上の実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0090】
例えば、
図1ないし
図13に示された各実施形態においては、鎮圧フレーム28の左側の基部28bが左側の昇降アーム20から延びるリフトアーム30とともに、支持ロッド27の左側の端部付近に装着された回動カム29に連結されているが、この構成に代えて、又はこの構成とともに、右側の昇降アーム20から別途リフトアームを前方へ延ばし、当該リフトアームを、鎮圧フレーム28の右側の基部28bとともに、支持ロッド27の右側の端部付近に別途設けた回動カムへ連結する構成としてもよい。
【0091】
さらに、
図1ないし
図13に示された各実施形態においては、鎮圧フレーム28の基部28bと、リフトアーム30の前端部とを、単一のピン31により回動カム29に連結しているが、鎮圧フレーム28の基部28bをリフトアーム30の前端部とともに回動カム29に連結することは必ずしも必要でなく、鎮圧フレーム28の基部28bとリフトアーム30の前端部とを、別々に、回動カム29に連結してもよい。
【符号の説明】
【0092】
1 移植機
3 植付装置
4 搬送装置
5 鎮圧ローラ
6 ガイドローラ
7 苗保持具
8 前輪
9 後輪
10 走行車体
11 エンジン
12 ミッションケース
13 車軸
14 チェーンケース
15 水平制御用油圧シリンダ
16 操縦ハンドル
17 機体フレーム
18 バンパー
19 植付昇降レバー
20 昇降アーム
21 鎮圧輪
23 天秤杆
24 連結ロッド
25 第1伝動装置
26 第2伝動装置
27 支持ロッド
28 鎮圧フレーム
29 回動カム
30 リフトアーム
31 連結ピン
32 第1プレート
33 第2プレート
34 ノブボルト
35 チューブ
36 回動中心
37 ケーブル
38 吸水ホース
39 フィルタ
40 ホースバンド
41 キャップ
42 スプリング
43 錘
45 クローラ
46 駆動輪
47 従動輪
48 クローラベルト
49 揺動フレーム
50 前方転輪
51 後方転輪
52 基本フレーム
53 ハブ(外側転輪
54 リム
55 スポーク
56 後方転輪の軸体
57 突出部(外側転輪)
58 空間
59 スプリング
60 押さえ部材
61 ロック部材
62 揺動中心
63 泥逃げ空間
64 ブッシュ
65 収容空間
66 突出部(内側転輪)
67 ハブ(内側転輪)
68 リム(内側転輪)
69 スポーク(内側転輪)
70 昇降用油圧シリンダ