(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033728
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】穀物乾燥機
(51)【国際特許分類】
F26B 9/06 20060101AFI20240306BHJP
F26B 3/04 20060101ALI20240306BHJP
F26B 25/00 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
F26B9/06 E
F26B3/04
F26B25/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137497
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100200942
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 高史
(72)【発明者】
【氏名】大家 生裕
(72)【発明者】
【氏名】西野 栄治
(72)【発明者】
【氏名】岩井 通和
(72)【発明者】
【氏名】丸岡 政司
【テーマコード(参考)】
3L113
【Fターム(参考)】
3L113AA07
3L113AB02
3L113AC45
3L113AC67
3L113AC77
3L113BA03
3L113CA05
3L113CB23
3L113CB36
3L113DA24
(57)【要約】
【課題】籾や大豆の乾燥も可能にしつつ、特にトウモロコシの傷付きを防ぐことができる穀物乾燥機を提供する。
【解決手段】
穀物乾燥機1は、乾燥させる穀物の種類を設定する設定手段41によって、乾燥させる穀物の種類がトウモロコシに設定された場合、間隙調節手段14が、繰出バルブ8と流下通路3b1の下端部との間に形成された干渉防止用間隙G1の幅寸法を、籾に設定された場合よりも大きく、且つ大豆に設定された場合よりも小さい寸法に調節するとともに、繰出バルブ8の回転速度を調節するバルブ回転速度調節手段2,12が、籾に設定された場合よりも低く、且つ大豆に設定された場合の速度と同一又はそれよりも高い速度に調節する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
籾や大豆、トウモロコシを含む種々の穀物を乾燥させる穀物乾燥機であって、
穀物を貯留する貯留部と、
前記貯留部から穀粒を流下させる流下通路を有し、流下する穀粒に熱風を当てて乾燥させる乾燥部と、
前記流下通路を流下した穀粒を受けて繰り出す繰出バルブと、
前記繰出バルブにより繰り出された穀粒を集穀する集穀部と、
前記集穀部に集穀された穀物を上昇搬送して循環させる昇降機と、
前記繰出バルブの外周面と前記流下通路の下端部との間に形成された干渉防止用間隙の下方を覆うように配設され、回動動作によって前記干渉防止用間隙の幅寸法を調節可能に構成されたシール部と、
前記シール部を回動動作させて前記干渉防止用間隙の幅寸法を自在に調節する間隙調節手段と、
前記繰出バルブの回転速度を調節するバルブ回転速度調節手段と、
ユーザーの所定操作を受け付けて、乾燥させる穀物の種類を設定する設定手段とを備え、
前記設定手段によって、乾燥させる穀物の種類がトウモロコシに設定された場合、前記間隙調節手段が、前記干渉防止用間隙の幅寸法を、籾に設定された場合よりも大なる寸法であって、且つ、大豆に設定された場合よりも小なる寸法に調節するとともに、
バルブ回転速度調節手段が、前記繰出バルブの回転速度を、籾に設定された場合よりも低く、且つ、大豆に設定された場合の速度と同一又はそれよりも高い速度に調節するよう構成されたことを特徴とする穀物乾燥機。
【請求項2】
前記集穀部に配置され、前記繰出バルブにより繰り出された穀粒を前記昇降機へ搬送する下部螺旋と、
前記下部螺旋の上下位置を変更することで前記下部螺旋と前記集穀部の底面との間隔を調節可能な下部螺旋位置変更手段とを備え、
前記設定手段を用いてトウモロコシに設定された場合、前記下部螺旋位置変更手段が前記間隔を、籾に設定された場合よりも広く、且つ、大豆に設定された場合と同一か又は大豆に設定された場合に比べて狭い間隔に調節するよう構成されたことを特徴とする請求項1に記載の穀物乾燥機。
【請求項3】
前記昇降機により上昇搬送された穀粒を受けて、前記貯留部の平面視略中央部の上方の位置まで穀粒を搬送する上部螺旋と、
前記上部螺旋の搬送終端部付近に配置され、前記上部螺旋により搬送された穀粒を前記貯留部内で拡散させる拡散盤と、
前記上部螺旋により搬送途中の穀粒を、前記拡散盤により拡散される前に落下させる落下機構と、
バケットエレベータにより構成された前記昇降機の回転速度を調節する昇降機回転速度調節手段とを備え、
前記設定手段を用いて籾に設定された場合、穀粒を前記拡散盤により前記貯留部内に拡散させるのに対し、前記設定手段を用いてトウモロコシ又は大豆に設定された場合、前記落下機構により穀粒を落下させるとともに、前記昇降機回転速度調節手段が、前記昇降機の回転速度を、籾に設定された場合よりも低い速度に調節するよう構成されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の穀物乾燥機。
【請求項4】
穀粒を粉砕して穀粒の水分値を測定する水分計と、
前記昇降機から落下した穀粒を一粒ずつ受け入れて前記水分計へと導くガイド部材と、
前記ガイド部材の幅を変更することで前記ガイド部材により受け入れ可能な穀粒の粒径を調節する受け入れ寸法調節手段とを備え、
前記設定手段を用いてトウモロコシに設定された場合、前記受け入れ寸法調節手段が前記ガイド部材の幅を、籾に設定された場合よりも大きく、且つ、大豆に設定された場合と同一か又はそれよりも小なる幅に調節するよう構成されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の穀物乾燥機。
【請求項5】
穀物に当てる熱風を発生させるバーナを備え、
前記設定手段を用いて、籾、大豆、又はトウモロコシのいずれに設定された場合でも、穀物の張込量が多いほど前記バーナの設定温度が高くなるよう構成されるとともに、
前記設定手段を用いてトウモロコシに設定された場合、同一の張込量に対する前記バーナの設定温度が、籾に設定された場合よりも低く、且つ、大豆に設定された場合と同一又はそれよりも高い温度であることを特徴とする請求項1又は2に記載の穀物乾燥機。
【請求項6】
前記流下通路は、前記バーナで生成された熱風を通過させる乾燥網により形成されるとともに、穀物乾燥機は前記乾燥網を通過する風量を調節する風量調節手段を備え、
前記設定手段を用いてトウモロコシに設定された場合、前記風量調節手段が前記風量を、籾に設定された場合よりも多くなるように調節するよう構成されたことを特徴とする請求項5に記載の穀物乾燥機。
【請求項7】
前記昇降機と前記上部螺旋とを繋ぐケース部に騒音計が配置されており、
前記騒音計により計測された騒音の大きさが予め設定された基準値以上である場合、穀物の乾燥運転が停止されるよう構成されており、前記基準値は変更可能となっていることを特徴とする請求項3に記載の穀物乾燥機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穀物、特に籾、大豆、及びトウモロコシを乾燥させることが可能な穀物乾燥機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、穀物を上下に循環させつつ、バーナー等で発生させた熱風に当てることで、穀物全量を乾燥させることが可能な穀物乾燥機が知られている。
例えば特許文献1には、籾や大豆、トウモロコシ等を含む種々の穀物を乾燥させる穀物乾燥機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、トウモロコシは、籾や大豆とは粒径や表面の硬度、水分量等の性状が異なるため、特許文献1に記載された発明のように、籾や大豆などと同一の条件で乾燥させると、乾燥過程でトウモロコシの穀粒表面に傷付きが発生し、品質の低下を招く問題があった。
そこで本発明は、籾や大豆の乾燥も可能にしつつ、特にトウモロコシの傷付きを防ぐことができる穀物乾燥機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のかかる目的は、
籾や大豆、トウモロコシを含む種々の穀物を乾燥させる穀物乾燥機であって、
穀物を貯留する貯留部と、
前記貯留部から穀粒を流下させる流下通路を有し、流下する穀粒に熱風を当てて乾燥させる乾燥部と、
前記流下通路を流下した穀粒を受けて繰り出す繰出バルブと、
前記繰出バルブにより繰り出された穀粒を集穀する集穀部と、
前記集穀部に集穀された穀物を上昇搬送して循環させる昇降機と、
前記繰出バルブの外周面と前記流下通路の下端部との間に形成された干渉防止用間隙の下方を覆うように配設され、回動動作によって前記干渉防止用間隙の幅寸法を調節可能に構成されたシール部と、
前記シール部を回動動作させて前記干渉防止用間隙の幅寸法を自在に調節する間隙調節手段と、
前記繰出バルブの回転速度を調節するバルブ回転速度調節手段と、
ユーザーの所定操作を受け付けて、乾燥させる穀物の種類を設定する設定手段とを備え、
前記設定手段によって、乾燥させる穀物の種類がトウモロコシに設定された場合、前記間隙調節手段が、前記干渉防止用間隙の幅寸法を、籾に設定された場合よりも大なる寸法であって、且つ、大豆に設定された場合よりも小なる寸法に調節するとともに、
バルブ回転速度調節手段が、前記繰出バルブの回転速度を、籾に設定された場合よりも低く、且つ、大豆に設定された場合の速度と同一又はそれよりも高い速度に調節するよう構成されたことを特徴とする穀物乾燥機によって達成される。
【0006】
本発明によれば、穀物の種類がトウモロコシに設定された場合に、穀粒を繰り出す繰出バルブの外周面と流下通路の下端部との間に形成された干渉防止用間隙が、穀粒の大きさに合わせて、籾の場合よりも大なる寸法で、大豆の場合よりも小なる寸法に調節されるから、干渉防止用間隙への穀粒の噛み込みを防ぎ、トウモロコシの粒が潰れてしまうことを防止できる。
【0007】
さらに、本発明によれば、トウモロコシに設定された場合に、繰出バルブの回転速度が、穀粒の大きさと柔らかさに応じて、籾の場合よりも低く、大豆の場合と同一かそれよりも高い速度に調節されるから、トウモロコシの噛み込みによる傷付きをより一層防止できる。
【0008】
本発明の好ましい実施形態においては、
前記集穀部に配置され、前記繰出バルブにより繰り出された穀粒を前記昇降機へ搬送する下部螺旋と、
前記下部螺旋の上下位置を変更することで前記下部螺旋と前記集穀部の底面との間隔を調節可能な下部螺旋位置変更手段とを備え、
前記設定手段を用いてトウモロコシに設定された場合、前記下部螺旋位置変更手段が前記間隔を、籾に設定された場合よりも広く、且つ、大豆に設定された場合と同一か又は大豆に設定された場合に比べて狭い間隔に調節するよう構成されている。
【0009】
本発明のこの好ましい実施形態によれば、トウモロコシに設定された場合に、下部螺旋と集穀部の底面との間隔が、穀粒の大きさと柔らかさに応じて、籾の場合よりも広く、且つ、大豆の場合と同一か、又はそれよりも狭く調節されるから、下部螺旋による搬送時に、トウモロコシの傷付きを防止できる。
【0010】
本発明の好ましい実施形態においては、
前記昇降機により上昇搬送された穀粒を受けて、前記貯留部の平面視略中央部の上方の位置まで穀粒を搬送する上部螺旋と、
前記上部螺旋の搬送終端部付近に配置され、前記上部螺旋により搬送された穀粒を前記貯留部内で拡散させる拡散盤と、
前記上部螺旋により搬送途中の穀粒を、前記拡散盤により拡散される前に落下させる落下機構と、
バケットエレベータにより構成された前記昇降機の回転速度を調節する昇降機回転速度調節手段とを備え、
前記設定手段を用いて籾に設定された場合、穀粒を前記拡散盤により前記貯留部内に拡散させるのに対し、前記設定手段を用いてトウモロコシ又は大豆に設定された場合、前記落下機構により穀粒を落下させるとともに、前記昇降機回転速度調節手段が、前記昇降機の回転速度を、籾に設定された場合よりも低い速度に調節するよう構成されている。
【0011】
本発明のこの好ましい実施形態によれば、トウモロコシ又は大豆に設定された場合、穀粒が、拡散盤により拡散されることなく落下機構により貯留部に落とされるため、拡散盤との接触により傷付いてしまう事態を防止できる。
【0012】
さらに、トウモロコシ又は大豆に設定された場合、バケットエレベータにより構成された昇降機の回転速度が、籾に設定された場合に比して低く調節されるから、昇降機から上部螺旋に受け渡される際の穀粒の傷付きを防止できる。
【0013】
本発明の好ましい実施形態においては、
穀粒を粉砕して穀粒の水分値を測定する水分計と、
前記昇降機から落下した穀粒を一粒ずつ受け入れて前記水分計へと導くガイド部材と、
前記ガイド部材の幅を変更することで前記ガイド部材により受け入れ可能な穀粒の粒径を調節する受け入れ寸法調節手段とを備え、
前記設定手段を用いてトウモロコシに設定された場合、前記受け入れ寸法調節手段が前記ガイド部材の幅を、籾に設定された場合よりも大きく、且つ、大豆に設定された場合と同一か又はそれよりも小なる幅に調節するよう構成されている。
【0014】
本発明のこの好ましい実施形態によれば、穀粒の水分値を検出する水分計へと導くガイド部材の受け入れ幅を、設定された穀物の種類に応じて調節できるから、水分計を、様々な種類の穀物に汎用的に使用することが可能になり、製造コストを抑えられる。
【0015】
本発明の好ましい実施形態においては、
穀物に当てる熱風を発生させるバーナを備え、
前記設定手段を用いて、籾、大豆、又はトウモロコシのいずれに設定された場合でも、穀物の張込量が多いほど前記バーナの設定温度が高くなるよう構成されるとともに、
前記設定手段を用いてトウモロコシに設定された場合、同一の張込量に対する前記バーナの設定温度が、籾に設定された場合よりも低く、且つ、大豆に設定された場合と同一又はそれよりも高い温度である。
【0016】
本発明のこの好ましい実施形態によれば、同一の張込量の条件下において、トウモロコシの場合のバーナの設定温度が、籾の場合の設定温度に対して低く設定されているから、トウモロコシの穀粒表面の皺の発生を抑制できるとともに、トウモロコシの皺は大豆ほど発生し易いものではないため、大豆以上の設定温度とすることで、皺の発生を抑制しつつも、乾燥を速めることができる。
本発明の好ましい実施形態においては、
前記流下通路は、前記バーナで生成された熱風を通過させる乾燥網により形成されるとともに、穀物乾燥機は前記乾燥網を通過する風量を調節する風量調節手段を備え、
前記設定手段を用いてトウモロコシに設定された場合、前記風量調節手段が前記風量を、籾に設定された場合よりも多くなるように調節するよう構成されている。
【0017】
本発明のこの好ましい実施形態によれば、トウモロコシに設定された場合、籾の場合よりも乾燥網を通過する風量が多くなるよう調節されるから、バーナの設定温度を抑えつつ、風量を増やすことでトウモロコシの乾燥を速めることができる。
【0018】
本発明の好ましい実施形態においては、
前記昇降機と前記上部螺旋とを繋ぐケース部に騒音計が配置されており、
前記騒音計により計測された騒音の大きさが予め設定された基準値以上である場合、穀物の乾燥運転が停止されるよう構成されており、前記基準値は変更可能となっている。
【0019】
トウモロコシは、大豆等と比較して、穀粒の中心部と外部に近い部分との間で水分差が大きくなりやすいため、水分計を用いた測定ではトウモロコシの粒の水分値を正確に測定することが難しい場合があるが、本発明のこの好ましい実施形態によれば、トウモロコシの搬送時の騒音を測定することで、トウモロコシの粒の硬度上昇に伴う騒音の大きさに基づき、トウモロコシの乾燥を正確に検知でき、適切なタイミングで乾燥を停止させることができる。加えて、基準値を変更可能とすることで、トウモロコシの品種の違いや階級等の違いにも対応できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、籾や大豆の乾燥も可能にしつつ、特にトウモロコシの傷付きを防ぐことができる穀物乾燥機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本発明の好ましい実施形態にかかる穀物乾燥機の略正面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示された穀物乾燥機の略右側面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示された乾燥槽の内部を示す縦断面図である。
【
図4】
図4は、
図3に示された繰出バルブの近傍の部分縦断面図である。
【
図5】
図5は、
図4に示された繰出バルブの近傍の拡大部分縦断面図である。
【
図6】
図6は、
図3に示された下部螺旋の近傍を露出させた状態を示す拡大斜視図である。
【
図7】
図7は、穀物を循環させる循環機構を示す略斜視図である。
【
図8】
図8は、穀物の種類ごとの張込量と循環量との関係を示すグラフである。
【
図9】
図9は、穀粒の水分値を検出する水分測定部を示す略斜視図である。
【
図11】
図11は、
図1に示された乾燥槽の上部に配置された拡散盤の近傍の拡大斜視図である。
【
図14】
図14は、排風ファンの近傍に設けられた排風循環機構を示す部分縦断面図である。
【
図15】
図15は、穀物の種類ごとの張込量と、乾燥槽内に還流される熱風の割合との関係を示すグラフである。
【
図17】
図17は、穀物の種類ごとの張込量とバーナの設定温度との関係を示すグラフである。
【
図18】
図18は、穀物の種類ごとの張込量と排風ファンの作動により内側乾燥網及び外側乾燥網を通過する風量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面に基づいて、本発明の好ましい実施形態につき、詳細に説明を加える。
【0023】
図1は、本発明の好ましい実施形態にかかる穀物乾燥機1の略正面図であり、
図2は、
図1に示された穀物乾燥機1の略右側面図である。また、
図3は、
図1に示された乾燥槽の内部を示す縦断面図である。以下において、穀物乾燥機1を、単に「機体」ともいう。
【0024】
穀物乾燥機1は、穀物を乾燥させる乾燥槽3と、穀粒を上昇搬送する昇降機4と、乾燥槽3の下部に位置する穀粒を昇降機4へ搬送供給する下部螺旋6と、乾燥槽3内で乾燥熱風を発生させるバーナ5と、昇降機4により上昇搬送された穀粒を受けて乾燥槽3内へと戻す上部螺旋7と、昇降機4の下部に接続され、機体1に穀物を供給する供給ホッパ10と、乾燥槽3内で湿った熱風を機体1の外部に排出する排風ファン9と、機体1全体を制御する制御装置2と、ユーザーが乾燥させる穀物の種類等の情報を制御装置2に入力し設定するのに用いる設定部11を備えている。制御装置2は、
図1において乾燥槽3の図面手前側に配置されており、本明細書においては、乾燥槽3に対する制御装置2側(図面手前側)を「前」、その反対側を「後」といい、前方を向いた状態での左側を「左」、その反対側を「右」という。本実施形態の穀物乾燥機1は、籾、大豆、トウモロコシ等の穀物の乾燥が可能となっている。
【0025】
乾燥槽3は、穀物を貯留する貯留部3aと、貯留部3aから流下する穀粒に熱風を当てて乾燥させる乾燥部3bと、乾燥部3bの下部に配置された繰出バルブ8により繰り出された穀粒を集穀する集穀部3cを備えている。
【0026】
乾燥部3bは、
図3に示されるように、上方の貯留部3aから穀粒を流下させる流下通路3b1を有している。流下通路3b1は、バーナ5で生成された熱風を通過させる内側乾燥網15及び外側乾燥網16により形成されている。バーナ5で発生した熱風は、内側乾燥網15及び外側乾燥網16を左右に横断した後、機体1の背面側(=後部)に配置された排風ファン9により外部へ排出される。排風ファン9は、
図14に示される排風ファンモータ9aにより回転駆動される。
【0027】
図4は、
図3に示された繰出バルブ8の近傍の部分縦断面図であり、
図5は、
図4に示された繰出バルブ8及び左側の近傍の拡大部分縦断面図である。また、
図6は、
図3に示された下部螺旋6の近傍を露出させた状態を示す拡大斜視図である。また、
図7は、穀物を循環させる循環機構を示す略斜視図である。
【0028】
繰出バルブ8は縦断面視で略C字状の形状をなしており、流下通路3b1を通じて流下した穀粒を内部に受け入れる開口部8aと、正面視中央部において前後方向に延びる回転軸8bを備えている。この回転軸8bが
図7に示されるバルブ駆動モータ8cにより駆動されて、繰出バルブ8が正逆に回転する間に、開口部8aが流下通路3b1側を向いたタイミング(
図5参照)で流下通路3b1から内部に入った穀粒が、開口部8aが下方を向いたタイミング(
図4参照)で集穀部3cに繰り出される。
【0029】
繰出バルブ8の外周面と、左右一対の流下通路3b1の下端部(より詳細には左右一対の乾燥網16の下端部)との間には、各々、繰出バルブ8の回転軸8bがブレた際に繰出バルブ8が一対の乾燥網16に干渉してしまうことを防止する干渉防止用間隙G1が形成されている。
【0030】
繰出バルブ8の左右側方で、且つ、左右一対の干渉防止用間隙G1の直下には、一対の干渉防止用間隙G1の下方を部分的に下から覆うことで干渉防止用間隙G1の幅寸法を調節する左右一対のシール部13が設けられている。各シール部13は、回動プレート18に固定され、回動支点19を中心に回動プレート18と一体的に回動可能に構成されている。回動プレート18にはボルト17が装着されており、左右の各シール回動モータ14により左右のボルト17が上下に駆動されることで、各回動プレート18と各シール部13とが一体的に、回転方向Fとして
図5にされるように正逆いずれかに回動動作し、左右の干渉防止用間隙G1の寸法が自在に調節される。左右のシール回動モータ14は、本発明の「間隙調節手段」の一例である。
【0031】
ここで、左右の干渉防止用間隙G1の寸法は、各々、ユーザーの所定の操作を受け付けて穀物の種類を設定する穀物種類設定スイッチ41(
図16参照)の所定の操作により設定された穀物の種類に応じた所定の寸法に調節されるよう構成されている。トウモロコシに設定された場合の干渉防止用間隙G1の寸法は、穀粒の大きさに鑑みて、籾に設定された場合の寸法よりも大きく、且つ、大豆に設定された場合よりも小さい所定の寸法に調節される。これにより、左右の干渉防止用間隙G1にトウモロコシの粒が噛み込んでしまうことを防ぎ、粒の傷付きを防止できる。
【0032】
なお、本実施形態においては、繰出バルブ8の外周面に接触するようにゴム製のシール20が各シール部13に装着されているが、当該シール20を設けることは必ずしも必要でない。
【0033】
繰出バルブ8による集穀部3cへの繰出量は、繰出バルブ8の回転速度に応じて増減するが、繰出バルブ8の回転速度は、穀物種類設定スイッチ41の操作により設定された穀物の種類に応じた所定の速度に調節されるよう構成されている。穀物の種類がトウモロコシに設定された場合、繰出バルブ8の回転速度は、穀粒の大きさと柔らかさに応じて、籾に設定された場合の所定の回転速度よりも低く、且つ、大豆に設定された場合の速度よりも高い所定の速度に調節される。これにより、干渉防止用間隙G1へのトウモロコシの粒の噛み込みをより一層防止できる。なお、トウモロコシに設定された場合の繰出バルブ8の回転速度を、大豆に設定された場合の速度と同一の速度としてもよい。この場合にも上記と同様の効果を得ることができる。
【0034】
また、トウモロコシと大豆に設定された場合、バルブ駆動モータ8cが間欠的に駆動されるよう構成されており、かかる構成により、
図8に示されるように、繰出バルブ8によるトウモロコシ又は大豆の繰出量、すなわち、循環量が他の穀物に設定された場合に比して低く抑えられている。トウモロコシの場合、張込量が少ないほど循環量が段階的に少なくなるよう構成されている。
【0035】
下部螺旋6は、集穀部3cに配置され、オーガースクリューにより構成されており、
図7に示される搬送モータ21により回転駆動されることで、集穀部3cに繰り出された穀粒を昇降機4に搬送可能となっている。集穀部3cの底面は、左右プレート3c1と、下部螺旋6の下方に位置する底プレート3c2と、これらを連結する連結プレート3c3により構成されており、下部螺旋6は集穀部3cの底面に接触しないよう乾燥槽3に懸架されている。下部螺旋6の前部と後部には各々、いわゆるラックアンドピニオンにより構成された昇降機構が設けられており、
図16に示される螺旋昇降モータ6aの駆動により下部螺旋6の上下位置を変更可能(=昇降可能)となっている。下部螺旋6の上下位置が変更されることで、集穀部3cの底面と、下部螺旋6との間の間隔が調節される。昇降機構及びその螺旋昇降モータ6aは本発明の「下部螺旋位置変更手段」の一例である。
【0036】
ここで、下部螺旋6と集穀部3cの底面(より詳細には底プレート3c2)との間の間隔は、穀物種類設定スイッチ41の操作により設定された穀物の種類に応じた所定の間隔に調節されるよう構成されている。換言すれば、下部螺旋6は、設定された穀物の種類に応じた所定の上下位置に移動されるよう構成されている。トウモロコシに設定された場合の集穀部3cの底面との間の間隔は、穀粒の大きさと柔らかさに鑑みて、籾に設定された場合よりも広く、且つ、大豆に設定された場合と同一の所定の間隔に調節される。これにより、下部螺旋6による搬送時に、底プレート3c2との間の摩擦によるトウモロコシの傷付きを防止できる。なお、トウモロコシに設定された場合の集穀部3cの底面との間の間隔を、大豆に設定された場合よりも狭い所定の間隔に調節するよう構成してもよい。これにより上記と同様の効果を得ることができる。また、下部螺旋6の前部及び後部を、各々、乾燥槽3にネジ止めする構成とし、これを緩めることで、ユーザーが手動で下部螺旋6の上下位置を調節可能としてもよい。
【0037】
昇降機4は、
図7に示されるように、無端状(=閉ループ状)をなす搬送ベルト4aと、搬送ベルト4aに取付けられた多数のバケット(=バケツ)4bを備えており、搬送ベルト4aが搬送モータ21により回転駆動されることで、下部螺旋6から受けた穀粒を上昇搬送可能となっている。昇降機4により上昇搬送された穀粒は、バケット4bの回転の慣性力により、上部螺旋7の搬送開始位置に放たれるかのような状態となる。
【0038】
ここで、昇降機4の回転速度、すなわち搬送ベルト4aの回転速度は、穀物種類設定スイッチ41の操作により設定された穀物の種類に応じた所定の速度に調節されるよう構成されている。本実施形態においては、トウモロコシに設定された場合の搬送ベルト4aの回転速度は、穀粒の柔らかさに鑑みて、籾に設定された場合よりも低く、大豆に設定された場合と同一の所定の速度に調節される。このように、籾の場合よりも低い速度とすることで、昇降機4から上部螺旋7に穀粒が受け渡される際に穀粒にかかる衝撃を緩和し、トウモロコシの粒の傷付きを防止できる。なお、昇降機4と上部螺旋7とを覆いつつ繋ぐケース部36(
図10等参照)に、トウモロコシの粒の傷付きを防止する緩衝材を設けてもよい。
【0039】
図9は、穀粒の水分値を検出する水分測定部25を示す略斜視図であり、
図9(a)は、水分測定部25の全体を示す略斜視図であり、
図9(b)は、水分計25bに穀粒を導くガイド部材25aの略斜視図であり、
図9(c)は、水分計25bを示す略斜視図である。
【0040】
昇降機4の下部には、穀粒の水分値を測定することで穀物の乾燥状態を検知する水分測定部25が接続されている。水分測定部25は、穀粒を粉砕して穀粒の水分値を検出する水分計25bと、昇降機4による上昇搬送中にバケット4bから落下する穀粒を水分計25bへと導くガイド部材25aを備えている。
【0041】
ガイド部25aは、バケット4bから落下する穀粒が入り込んで転がる溝部25a1と、水分計25bへ繋がる開口部25a2aが形成されたプレート25a2と、プレート25a2の直下に配置され、一対の爪部25a3aを有するガイド部材25a3を備えている。ガイド部材25a3の一対の爪部25a3aの間隔よりも小さい粒径の穀粒のみが、一粒ずつ、開口部25a2a及び一対の爪部25a3aの間から受け入れられて、
図9(c)に示される取込路25b1へ落下し、水分計25b内へ導かれる。ガイド部材25a3の幅、より詳細には一対の爪部25a3aの間隔は、
図16に示される爪間隔調節モータ26により調節可能となっており、当該間隔は、穀物種類設定スイッチ41の操作により設定された穀物の種類に応じて自動的に調節される。トウモロコシに設定された場合、ガイド部材25a3の幅は、穀粒の粒径に応じて、籾に設定された場合よりも大きく、且つ、大豆に設定された場合と同一の所定の幅寸法に調節される。これにより、トウモロコシの穀粒の水分値を正確に測定できるとともに、水分測定部25及びその水分計25bを、少なくとも3種類の穀物に汎用的に使用することが可能になり、製造コストを抑えられる。なお、トウモロコシに設定された場合、ガイド部材25a3の幅が、大豆に設定された場合よりも小さい所定の幅に調節されるよう構成してもよい。この場合にも、上記と同様の効果を得ることができる。爪間隔調節モータ26は、ガイド部材25a3により受け入れ可能な穀粒の粒径を調節する本発明の「受け入れ寸法調節手段」に相当する。
【0042】
こうして水分計25b内に侵入した穀粒は水分計25bの複数の電極ローラ25b2により粉砕されるとともに、電気抵抗値が測定され、測定された電気抵抗値から水分電圧に変換して水分値(=水分率)を算出する。このときの変換量は、大豆に設定された場合とトウモロコシに設定された場合との間で所定量変更することが好ましい。そして、水分計25bによる測定結果は運転表示パネル40に表示されるとともに、水分値が所定値以下となった時点で、穀物乾燥機1による穀物の乾燥運転が停止される。なお、複数の電極ローラ25b2の配置間隔は、
図16に示されるローラ間隔調節モータ27の駆動により調節可能に構成されている。
【0043】
図10は、
図1に示された上部螺旋7の近傍の拡大斜視図であり、
図11は、
図1に示された乾燥槽3の上部に配置された拡散盤28の近傍の拡大斜視図である。
【0044】
上部螺旋7は、オーガースクリューにより構成されており、
図7、
図10等に示される搬送モータ21により回転駆動されることで、昇降機4から受けた穀粒を後方、詳細には貯留部3aの平面視略中央部の上方の位置(乾燥槽3の直ぐ上の位置)まで搬送可能となっている。上部螺旋7の搬送終端部付近で、且つ、乾燥槽3の上部には、回転軸28aを回転中心として回転駆動される拡散盤28が設けられており、
図16に示された穀物種類設定スイッチ41の操作により籾に設定された場合、籾の穀粒が、上部螺旋7から拡散盤28へ供給され、拡散盤28の回転により弾かれて、貯留部3a内で拡散される。
【0045】
ここで、乾燥槽3の天井部であって、上部螺旋7による搬送路の略中央部には、上部螺旋7により搬送途中の穀粒を、拡散盤28によって拡散される前に貯留部3aに落下させる落下機構が設けられている。具体的には、上部螺旋7による搬送路の略中央部の底面部は、
図11に示される開閉用モータ29により回動駆動される回動レバー30により下側から押さえられており、回動レバー30が下方へ回動されると、上記の底面部が開かれ(=下方へ回動され)、搬送途中の穀粒が落下するようになっている。穀物種類設定スイッチ41により籾に設定された場合、搬送路の底面部は閉じており、籾の穀粒が拡散盤28まで搬送され、貯留部3a内で拡散される。これに対して、穀物種類設定スイッチ41によりトウモロコシ又は大豆に設定された場合、搬送路の底面部は開いており、搬送途中のトウモロコシ又は大豆の穀粒が、拡散されることなく貯留部3aへ落とされる。このように、トウモロコシ又は大豆の穀粒が、拡散盤28により拡散されずに落下機構により落とされるため、拡散盤28に接触して傷付いてしまう事態を防止できる。なお穀粒が一定量堆積すると、以後に落下する穀粒は堆積層の表面を自然流下し、穀粒の損傷はより少なくなる。
【0046】
なお、
図7等に示される搬送モータ21の駆動力は、ベルト式伝達機構23,24等により、昇降機4と、下部螺旋6と、上部螺旋7と、拡散盤28に伝達されるよう構成されている。このため、昇降機4の回転速度を調節した場合、それに伴って下部螺旋6、上部螺旋7、および拡散盤28の回転速度(=搬送速度)も変化することとなるが、例えば拡散盤28を回転駆動する独立のモータを設け、穀物種類設定スイッチ41によりトウモロコシ又は大豆に設定された場合のみに、拡散盤28の駆動を停止させた状態で乾燥運転を行うよう構成してもよい。加えて、昇降機4を駆動するモータと、下部螺旋6を駆動するモータと、上部螺旋7を駆動するモータと、拡散盤28を駆動するモータを各々独立に設けてもよい。
【0047】
一方、
図12は、
図1に示された穀物乾燥機1の略平面図であり、
図13は、
図12に示された排塵機31の分解斜視図である。
【0048】
上部螺旋7は、
図12に示されるケース7aにより覆われており、このケース7aの上面に、上部螺旋7により搬送途中の穀粒から塵埃類や藁屑等を吸引し排出する排塵機31が装着されている。
【0049】
排塵機31は、塵埃類等を吸引する吸引ファンと、吸引ファンを覆う筐体31bを備えている。
図16に示される吸引ファン駆動モータ31aの駆動により吸引ファンが回転すると、穀物に混じる塵埃類等が、上部螺旋7のケース7aに形成された吸い込み口7a1を通じて吸引除去される。吸い込み口7a1には、その開度を調節するシャッター31cが設けられており、このシャッター31cが
図16に示されるシャッター開閉モータ37によりスライドされることで、吸引ファンにより吸引される風量が変更される。ここで、吸引ファンと排風ファン9とは互いに機体1の内部の風を吸い合うため、吸引ファンによる吸引風量が多いほど、排風ファン9により排出される熱風の風量が下がる。このため、シャッター31cの位置を変更することで、排風ファン9による排風量を調節することができる。吸い込み口7a1とシャッター31cとの重なりが大きく吸い込み口7a1が狭くなるほど、吸引ファンによる吸塵性能が低下するが、排風ファン9の風量は増加する。トウモロコシは塵埃が比較的少ないため、吸引ファンの吸引力を低下させ、全体の風量を増加させる方が望ましい場合もある。このように、穀物種類設定スイッチ41の操作によりトウモロコシ又は大豆に設定された場合は、シャッター開閉モータ37の駆動により吸い込み口7a1が比較的狭い所定の開度に自動的に調節されるよう構成されている。
【0050】
なお、昇降機4の下端部には塵埃類や土等の細かな粒子のみを選択的に通過させ落下させるネットが設けられており、当該ネット上を通過した塵埃類等が、
図1及び
図6に示される回収ボックス32内に貯留される。この構成は、前述の吸引ファンで除去し難い湿気のある塵埃の対応である。ネット上に穀粒を軽い衝撃を与えながら通過させることで湿気のある塵埃をはぎ取る形で除去するものである。
【0051】
このように、排塵機31と、昇降機4に設けられたネットとを用いて塵埃類等を取り除くことができるから、トウモロコシ等の穀物を清潔に保ちつつ、乾燥させることができる。
【0052】
図14は、排風ファン9の近傍に設けられた排風循環機構を示す部分縦断面図であり、
図15は、穀物の種類ごとの張込量と、乾燥槽3内に還流される熱風の割合との関係を示すグラフである。
【0053】
排風ファン9により吸引された熱風の一部は、排風ファン9の近傍に設けられた排風循環機構50により乾燥槽3内に還流される。
【0054】
排風循環機構50は、排風ファン9により吸引された熱風の一部を、乾燥槽3に連通する排風供給ダクト53へと導く第1調節弁51と、排風供給ダクト53内に導かれた熱風のうち、乾燥槽3内に還流させる熱風の量を調節する第2調節弁52を備えている。
【0055】
第1調節弁51は回転中心51aを中心に第1調節弁駆動モータ51bによって回転駆動され、第2調節弁52は回転中心52aを中心に第2調節弁駆動モータ52bによって回動駆動されることで、乾燥槽3内に還流される熱風の割合(量)が調節される。
【0056】
穀物種類設定スイッチ41によりいずれの種類に設定された場合でも、乾燥槽3内に還流される熱風の割合は、張込量が多くなるほど低くなるよう調節される。また、トウモロコシに設定された場合、排風ファン9により吸引される熱風に対する、乾燥槽3内へ還流される熱風の割合は、籾に設定された場合よりも低い所定の割合に制御される。このように、還流させる熱風の割合を比較的低く調節することで、乾燥槽3内を流れる熱風の湿度を低く抑えられるとともに、排風ファン9による排風量を上昇させることができる。なお、籾に設定された場合の還流される熱風の割合は、そばに設定された場合の割合と同一となっているため、
図15において、そばの線と籾の線とが重なっている。
【0057】
図16は、
図1に示された穀物乾燥機1の制御ブロック図である。
制御装置2は、CPU等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成された情報処理装置である。
【0058】
制御装置2の入力側には、乾燥槽3内に張り込まれた穀物量を検出する容積式の張込量検出センサ33と、穀粒の水分値を測定する水分計25bと、バーナ5により発生した熱風の温度を検出する熱風温度センサ34と、外気温度を検出する外気温度センサ35と、乾燥させる穀物の種類を設定する穀物種類設定スイッチ41と、穀物の張込用の張込スイッチ42と、排風ファン9及び循環機構を駆動するいわゆる通風運転用の通風スイッチ43と、バーナ5を点火して乾燥運転を行う乾燥スイッチ44と、運転を停止する停止スイッチ45が接続されている。符号41~45の各種スイッチは設定部11に設けられている。穀物種類設定スイッチ41は本発明の「設定手段」に相当する。
【0059】
制御装置2の出力側には、各モータへの電力供給を調節又はオンオフするインバータ12と、バーナ5への燃料の供給量を調節する比例制御弁38と、種々の情報を表示する運転表示パネル40が接続されている。
【0060】
制御装置2は、熱風温度センサ34及び外気温度センサ35の検出値に基づき、比例制御弁38による燃料の供給量を制御することで、穀物の種類に応じて予め設定された目標温度(=設定温度)に熱風温度を制御する。
【0061】
制御装置2は、さらに、インバータ12に制御信号を出力し、バルブ駆動モータ8c、搬送モータ21、螺旋昇降モータ6a、爪間隔調節モータ26、開閉用モータ29、吸引ファン駆動モータ31a、シャッター開閉モータ37、第1調節弁駆動モータ51b、第2調節弁駆動モータ52b、排風ファンモータ9a、シール回動モータ14及びローラ間隔調節モータ27への電力供給を開始若しくは停止又は周波数を増減することで、これらのモータの駆動のオンオフや回転速度を制御可能に構成されている。例えば、バルブ駆動モータ8cの回転速度が変更されることで、繰出バルブ8の回転速度が変更される。搬送モータ21の回転速度が変更されることで、昇降機4、下部螺旋6、上部螺旋7および拡散盤28の回転速度が各々変更される。排風ファンモータ9aの回転速度が変更されることで、排風ファン9による回転数、ひいては内側乾燥網15及び外側乾燥網16を通過する風量や排風量が変更される。制御装置2及びインバータ12は、本発明の「バルブ回転速度調節手段」、「昇降機回転速度調節手段」及び「風量調節手段」の例である。
【0062】
図17は、穀物の種類ごとの張込量とバーナ5の設定温度との関係を示すグラフである。
本実施形態の張込量検出センサ33は、乾燥槽3に張り込まれた穀物の容積を検出し、穀物種類設定スイッチ41により設定された穀物のかさ密度の値を乗算することで、穀物の重量である張込量を算出する。トウモロコシの場合のかさ密度は、籾の場合のかさ密度よりも大きい値となっている。
【0063】
張込量検出センサ33により検出された張込量の値は、運転表示パネル40に表示される。また、こうして検出された張込量に基づき、
図17に示されるように、設定された穀物の種類と、張込量とに応じた設定温度(=目標温度)にバーナ5の出力が制御される。張込量が増えるほど、バーナ5から発生する熱風の温度が高くなるよう設定温度が調節される。同一の張込量に対するバーナ5の設定温度は、穀物別に、高い方から、小麦、籾、そば、トウモロコシ、大豆の順となっている。すなわち、同一の張込量に対するバーナ5の設定温度は、トウモロコシに設定された場合、籾に設定された場合よりも低く、且つ、大豆に設定された場合よりも僅かに高い温度となっている。これにより、トウモロコシの穀粒表面の皺の発生を抑制できるとともに、トウモロコシの皺は大豆ほど発生し易いものではないため、大豆よりも高い設定温度とすることで、皺の発生を抑制しつつも、乾燥を速めることができる。ここで、トウモロコシや大豆のように設定温度が(所定値よりも)低い温度とする場合、バーナ5の出力の調節だけでは温度が設定温度まで下がりきらないため、バーナ5を間欠的に作動させ、間欠的に燃焼させるよう構成されている。例えば、バーナ5を45秒間にわたり燃焼(=作動)させるのと15秒間にわたり停止させるのを繰り返すか、又は30秒ごとに燃焼と停止を繰り返すことで、発生する熱風の温度を設定温度まで下げることができる。なお、トウモロコシに設定された場合のバーナ5の設定温度を、大豆に設定された場合と同一の設定温度としてもよく、この場合にもトウモロコシの穀粒表面の皺の発生を抑制できる。
図18は、穀物の種類ごとの張込量と排風ファン9の作動により内側乾燥網15及び外側乾燥網16を通過する風量との関係を示すグラフである。
【0064】
穀物種類設定スイッチ41によりトウモロコシに設定された場合、張込量に応じて、排風ファン9の回転数、すなわち、内側乾燥網15及び外側乾燥網16を通過する風量は籾に設定された場合よりも多い2段階の風量に調節される。このように、籾の場合よりも風量を増加させることで、トウモロコシの乾燥を速めることができるとともに、トウモロコシの穀粒温度の過剰な上昇を抑え、トウモロコシに皺が寄ってしまう事態を抑制できる。
【0065】
<本実施形態の技術的意義>
図1ないし
図18に示された本実施形態によれば、穀物種類設定スイッチ41の操作により穀物の種類がトウモロコシに設定された場合に、穀粒を繰り出す繰出バルブ8の外周面と流下通路3b1の下端部との干渉防止用間隙G1が、穀粒の大きさに合わせて、籾の場合よりも大きく、且つ大豆の場合よりも小さく調節されるから、干渉防止用間隙G1への穀粒の噛み込みを防ぎ、トウモロコシの粒が潰れてしまうことを防止できる。
【0066】
さらに、トウモロコシに設定された場合に、繰出バルブ8の回転速度が、制御装置2及びインバータ12により、穀粒の大きさと柔らかさに応じて、籾の場合よりも低く、大豆の場合と同一かそれよりも高い速度に調節されることで、トウモロコシの噛み込みによる傷付きをより一層防止できる。
【0067】
加えて、トウモロコシに設定された場合に、下部螺旋6と集穀部3cの底面(より詳細には底プレート3c2)との間の間隔が、穀粒の大きさと柔らかさに応じて、籾の場合よりも広く、且つ、大豆の場合と同一か、又はそれよりも狭く調節されることで、下部螺旋6による搬送時に、トウモロコシの傷付きを防止できる。
【0068】
また、本実施形態によれば、トウモロコシ又は大豆に設定された場合、穀粒が、拡散盤28により拡散されることなく搬送路の底面部を開くことにより貯留部3aに落とされるため、拡散盤28との接触により傷付いてしまう事態を防止できる。
【0069】
さらに、本実施形態によれば、トウモロコシ又は大豆に設定された場合、バケットエレベータにより構成された昇降機4の回転速度が、籾に設定された場合に比して低く調節されるから、昇降機4から上部螺旋7に受け渡される際の穀粒の傷付きを防止できる。
【0070】
加えて、本実施形態によれば、穀粒の水分値を検出する水分計25bへと穀粒を導くガイド部材25a3の受け入れ幅、すなわち、一対の爪部25a3a同士の幅を、設定された穀物の種類に応じて調節できるから、水分計25bを、様々な種類の穀物に汎用的に使用することが可能になり、製造コストを抑えられる。
【0071】
また、本実施形態によれば、
図17に示されるように、同一の張込量の条件下において、トウモロコシの場合のバーナ5の設定温度が、籾の場合の設定温度に対して低く設定されているから、トウモロコシの穀粒表面の皺の発生を抑制できるとともに、トウモロコシの皺は大豆ほど発生し易いものではないため、大豆以上の設定温度とすることで、皺の発生を抑制しつつも、乾燥を速めることができる。さらに、トウモロコシに設定された場合、籾の場合よりも、流下通路3b1を形成する内側乾燥網15及び外側乾燥網16を通過する風量が多くなるよう調節されるから、バーナ5の設定温度を抑えつつ、風量を増やすことでトウモロコシの乾燥をより一層速めることができる。
【0072】
本発明は、以上の実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0073】
例えば、
図1ないし
図18に示された前記実施形態においては、水分計25bによって測定された穀粒の水分値が所定値以上となった時点で、穀物乾燥機1による穀物の乾燥運転が停止されるよう構成されているが、トウモロコシは、大豆等と比較して、穀粒の中心部と外部に近い部分との間で水分差が大きくなりやすい。このため、電気抵抗式の水分計25bによってはトウモロコシの穀粒の水分値を正確に測定することが難しい場合がある。一方で、トウモロコシや大豆は、乾燥が進むと表面が硬化する性質がある。このため、昇降機4と上部螺旋7とを覆いつつ繋ぐケース部36の内側において、昇降機4により上昇搬送された穀粒が上部螺旋7へと渡される際に、乾燥が進むほど大きな音が発生するようになる。このような状況から、ケース部36の内側に騒音計を配置し、ケース部36内の騒音の大きさが予め設定された基準値以上となったときに、穀粒の乾燥が完了したことが認められるため、バーナ5を停止させて乾燥運転を停止させるよう構成することも可能である。また、騒音計に代えて、振動の大きさを検出する振動検知手段をケース部36に設け、検出された振動値が予め設定された基準値以上となったとき、穀粒の乾燥が完了したことが認められるため、バーナ5を停止させて乾燥運転を停止させるよう構成してもよい。騒音値と振動値のいずれで水分値を測定する場合も、測定された水分値は運転表示パネル40に表示させることが好ましく、基準値は、乾燥運転の開始に先立って、設定部11においてユーザーにより予め設定・変更可能に構成することが好ましい。騒音又は振動の基準値を変更可能とすることで、トウモロコシの品種の違いや階級等の違いに対応することができる。
【0074】
また、前記実施形態においては、排風ファンモータ9aへ供給する電力の周波数が変更されることで、乾燥槽3からの排風量が調節可能となっているが、さらに、内側乾燥網15又は/及び外側乾燥網16の少なくとも一部を、熱風を通さないプレートに変更可能に構成してもよい。このように、プレートに変更可能とすることで、プレートの場合と乾燥網の場合とで熱風の通風抵抗を変化させ、排風量を調節することができる。言うまでもなく、乾燥網の場合の方が排風量が多くなる。
【符号の説明】
【0075】
1 穀物乾燥機
2 制御装置
3 乾燥槽
4 昇降機
5 バーナ
6 下部螺旋
7 上部螺旋
8 繰出バルブ
9 排風ファン
10 供給ホッパ
11 設定部
12 インバータ
13 シール部
14 シール回動モータ
15 乾燥網
16 乾燥網
17 ボルト
18 回動プレート
19 回動支点
20 シール
21 搬送モータ
23 ベルト式伝達機構
24 ベルト式伝達機構
25 水分測定部
26 爪間隔調節モータ
27 ローラ間隔調節モータ
28 拡散盤
29 開閉用モータ
30 回動レバー
31 排塵機
32 回収ボックス
33 張込量検出センサ
34 熱風温度センサ
35 外気温度センサ
36 ケース部
37 シャッター開閉モータ
38 比例制御弁
40 運転表示パネル
41 穀物種類設定スイッチ
42 張込スイッチ
43 通風スイッチ
44 乾燥スイッチ
45 停止スイッチ
50 排風循環機構
51 第1調節弁
52 第2調節弁
53 排風供給ダクト