(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033731
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】形状転写用二軸配向ポリエステルフィルム、それを用いた樹脂組成物膜の製造方法、および得られる樹脂組成物膜
(51)【国際特許分類】
C08J 7/04 20200101AFI20240306BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20240306BHJP
B29C 55/12 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
C08J7/04 Z CEZ
C08J5/18 CER
C08J5/18 CFD
B29C55/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137503
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中森 ゆか里
(72)【発明者】
【氏名】東大路 卓司
(72)【発明者】
【氏名】千代 敏弘
【テーマコード(参考)】
4F006
4F071
4F210
【Fターム(参考)】
4F006AA35
4F006AB20
4F006AB24
4F006AB33
4F006AB76
4F006BA14
4F006EA05
4F006EA06
4F071AA09
4F071AA29
4F071AA33X
4F071AA41
4F071AA78
4F071AB26
4F071AE04
4F071AF04Y
4F071AF28
4F071AG15
4F071AH19
4F071BB02
4F071BB12
4F071BC02
4F071BC12
4F071BC13
4F071BC15
4F071BC16
4F210AA24
4F210AG01
4F210AG03
4F210AH33
4F210AH73
4F210AR13
4F210AR20
4F210QA02
4F210QA03
4F210QC06
4F210QW12
(57)【要約】 (修正有)
【課題】フィルム表面に微細な突起を設けその突起個数と最大突起高さ、さらに水接触角を制御することによって微細な突起を高頻度に形成させつつ高平滑な面とすると共に、易滑性、離型性並びに表面の耐久性に優れた形状転写用二軸配向ポリエステルフィルム、並びに、樹脂組成物膜の製造工程において支持体として使用したときに、得られる樹脂組成物膜の表面特性や品位向上と、ハンドリング性を両立することが可能な形状転写用二軸配向ポリエステルフィルムを提供することにある。
【解決手段】少なくとも一方の表面が、SEM画像からカウントされる突起個数が10個/μm2以上70個/μm2以下、AFMによる高さが0nmの面(基準面)からの最大突起高さ(Rp)が300nm以下、水接触角が90°以上である表面(転写面)を有する形状転写用二軸配向ポリエステルフィルム。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方の表面が、SEM画像からカウントされる突起個数が10個/μm2以上70個/μm2以下、AFMによる高さが0nmの面(基準面)からの最大突起高さ(Rp)が300nm以下、水接触角が90°以上、である表面を有する形状転写用二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項2】
形状転写させる層が樹脂組成物層(M)である、請求項1に記載の形状転写用二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項3】
少なくとも以下の工程1 、2 をこの順に有する、樹脂組成物膜(M)の製造方法。
工程1: 請求項1記載の形状転写用二軸配向ポリエステルフィルムの表面に、樹脂組成物(M)を形成する塗剤を塗布する工程。
工程2:前記形状転写用二軸配向ポリエステルフィルムを剥離して、樹脂組成物膜(M)を得る工程。
【請求項4】
請求項3記載の製造方法により得られた樹脂組成物膜(M)であって、表面が凹みを有し、該凹みの個数が10個/μm2以上70個/μm2以下、である樹脂組成物膜。
【請求項5】
130℃30分熱処理後の水接触角が90°以上、かつ処理前後の水接触角変化量が2°以上10°以下である、請求項1または2に記載の形状転写用二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項6】
前記特徴面の表面粗さRa5が20nm以上50nm以下である、請求項1または2に記載の形状転写用二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項7】
前記表面において、表面粗さRa比(Ra5/Ra90)=0.75以上である請求項1または2に記載の形状転写用二軸配向ポリエステルフィルム。
ここで、Ra5はAFM測定における5μm□の表面粗さRaであり、
Ra90はAFM測定における90μm□の表面粗さRaを表す。
【請求項8】
前記表面において、SEM画像の突起の大きさ(突起径)が30nm以上300nm以下である、請求項1または2に記載の形状転写用二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項9】
前記表面が、長鎖アルキル基含有化合物を含有する樹脂層(X)からなる、請求項1または2に記載の形状転写用二軸配向ポリエステルフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物膜を製造する際に支持体として用いることができ、製造した樹脂組成物膜の表面に高精細な凹凸を付与し、基板や相手部材との易滑性を付与できる形状転写用二軸配向ポリエステルフィルム、樹脂組成物膜の製造方法、および樹脂組成物膜に関する。
【背景技術】
【0002】
二軸配向ポリエステルフィルムはその優れた熱特性、寸法安定性、機械特性および表面形態の制御のし易さから各種用途に使用されており、中でも、光学部材や電子材料などの
特性高度化、高品位化の要求向上に伴い、形状転写用二軸配向ポリエステルフィルムに求められる要求特性や要求品位も高まっている。
【0003】
特に、光学用途向けの樹脂組成物膜を製造する場合、支持体に用いられるフィルムの表面形状は各種樹脂に対する離型性や高精細な表面が要求される。
たとえば特許文献1には、離型性能に優れ、かつ溶媒浸漬・擦過試験後のヘイズを規定した積層フィルムが記載されている。
また、特許文献2には、離型層中に離型剤の含有量を規定し、転写した樹脂表面に離型成分の転着を抑止し、二次加工性に優れた離型フィルムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開2020/017289号公報
【特許文献2】特開2021-138105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら前述の特許文献1に記載の方法では、転写させた樹脂組成物膜の表面は平滑性が高いために二次加工時に相手部材との易滑性が不十分となり、しわやキズが発生するなどの問題があった。
また、特許文献2に記載の方法では、転写させた樹脂組成物膜表面の凹凸構造が大きく、相手部材との密着性や光学特性や品位に劣る場合があった。
【0006】
本発明は、フィルム表面に微細な突起を設けその突起個数と最大突起高さ、さらに水接触角を制御することによって微細な突起を高頻度に形成させつつ高平滑な面とすると共に、易滑性、離型性並びに表面の耐久性に優れた形状転写用二軸配向ポリエステルフィルム、並びに、樹脂組成物膜の製造工程において支持体として使用したときに、得られる樹脂組成物膜の表面特性や品位向上と、ハンドリング性を両立することが可能な形状転写用二軸配向ポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は以下の構成を取る。すなわち、
(1)少なくとも一方の表面が、SEM画像からカウントされる突起個数が10個/μm2以上70個/μm2以下、AFMによる高さが0nmの面(基準面)からの最大突起高さ(Rp)が300nm以下、水接触角が90°以上、である表面を有する形状転写用二軸配向ポリエステルフィルム、
(2)形状転写させる層が樹脂組成物層(M)である、(1)に記載の形状転写用二軸配向ポリエステルフィルム、
(3)少なくとも以下の工程1 、2 をこの順に有する、樹脂組成物膜(M)の製造方法
工程1: (1)記載の形状転写用二軸配向ポリエステルフィルムの表面に、樹脂組成物(M)を形成する塗剤を塗布する工程。
【0008】
工程2:前記形状転写用二軸配向ポリエステルフィルムを剥離して、樹脂組成物膜(M)を得る工程。
(4)(3)記載の製造方法により得られた樹脂組成物膜(M)であって、表面が凹みを有し、該凹みの個数が10個/μm2以上70個/μm2以下、である樹脂組成物膜、
(5)130℃30分熱処理後の水接触角が90°以上、かつ処理前後の水接触角変化量が2°以上10°以下である、(1)または(2)に記載の形状転写用二軸配向ポリエステルフィルム、
(6)前記特徴面の表面粗さRa5が20nm以上50nm以下である、(1)または(2)に記載の形状転写用二軸配向ポリエステルフィルム、
(7)前記表面において、表面粗さRa比(Ra5/Ra90)=0.75以上である(1)または(2)に記載の形状転写用二軸配向ポリエステルフィルム。
【0009】
ここで、Ra5はAFM測定における5μm□の表面粗さRaであり、
Ra90はAFM測定における90μm□の表面粗さRaを表す
(8)前記表面において、SEM画像の突起の大きさ(突起径)が30nm以上300nm以下である、(1)または(2)に記載の形状転写用二軸配向ポリエステルフィルム。
(9)前記表面が、長鎖アルキル基含有化合物を含有する樹脂層(X)からなる、(1)または(2)に記載の形状転写用二軸配向ポリエステルフィルム、
である。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、樹脂組成物膜の製造工程における形状転写用二軸配向ポリエステルフィルムとして使用したときに、樹脂組成物膜との離型性に優れ、得られる樹脂組成物膜(M)の表面特性や品位向上と、ハンドリング性を両立することが可能な形状転写用二軸配向ポリエステルフィルムを提供することができる。本発明の形状転写用二軸配向ポリエステルフィルムは、光学部材や電子材料用途に用いられる樹脂組成物膜(M)を製造する際に離型性に優れた形状転写用支持体として好適に使用することができ、これを用いて製造した樹脂組成物膜(M)の表面は微細な凹みを高頻度に有しており、平滑性と易滑性を兼ね備えるものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】
本発明の形状転写用二軸配向ポリエステルフィルムは、少なくとも一方の表面が、SEM画像からカウントされる突起個数が10個/μm2以上70個/μm2以下、好ましくは10個/μm2以上50個/μm2以下、さらに好ましくは15個/μm2以上40個/μm2以下の頻度で形成されている。突起個数の頻度が本発明の下限値未満であると例えば形状転写用支持体フィルムとして、フィルム上に樹脂組成物を含む塗剤を塗布し、これを固化、剥離して得られる樹脂組成物膜(M)表面への形状転写に影響を与え、該樹脂組成物膜(M)表面の凹み個数を本発明の範囲内に制御できない場合がある。
凹みの個数が不足する場合は、相手部材との十分な易滑性が得られずしわの発生や、きずの発生により品位が低下する場合がある。突起個数の頻度が本発明の上限値を超えると転写される凹みの個数が多くなりすぎ、樹脂組成物膜(M)の表面平滑性が低下し、その後の製造工程において相手部材との密着性不良や欠点となる場合がある。
【0013】
SEM画像の倍率としては、1万倍以上、好ましくは3万倍で観察された画像でカウントすると個々の突起を識別し易くなるため、精度よく突起個数を計測できる。
【0014】
本発明の形状転写用二軸配向ポリエステルフィルムの上記特徴を有する表面のAFMによる最大突起高さ(Rp)は300nm以下、好ましくは250nm以下、さらに好ましくは200nm以下である。最大突起高さ(Rp)が300nmを超えると離型性の低下や突起の耐久性が低下し粒子の脱落による異物の発生が起こり、品位面に劣る場合がある。さらに本発明の樹脂組成物膜(M)においては、特に塗布厚みが30μm以下にて、表面の平滑性が悪化し、密着性不良や異物によるピンホールなどの塗布欠陥を発生させる場合がある。
【0015】
本発明の形状転写用二軸配向ポリエステルフィルムの上記特徴を有する表面の水接触角は90°以上、好ましくは92°以上、さらに好ましくは95°以上110°以下である。
水接触角が本発明の範囲外であると、樹脂組成物層(M)の剥離性に影響を与え、樹脂組成物層(M)が剥がれ難くなる場合がある。
【0016】
本発明の形状転写用二軸配向ポリエステルフィルムは、樹脂組成物層に形状転写させ樹脂組成物膜を得る方法に用いられる。
【0017】
本発明の樹脂組成物膜(M)の製造方法は、少なくとも以下の工程1,2をこの順に有する樹脂組成物膜の製造方法である。工程1:SEM画像からカウントされる突起個数が10個/μm2以上~70個/μm2以下、AFMによる最大突起高さ(Rp)が300nm以下、水接触角が 90°以上である形状転写二軸配向ポリエステルフィルムの面に樹脂組成物を含む塗剤を塗布する工程、および、工程2:前記形状転写用二軸配向ポリエステルフィルムを剥離して、樹脂組成物膜(M)を得る工程である。工程1と工程2の間に別の工程、例えば、樹脂組成物層を硬化・固化させる工程、カバーフィルムなどの保護フィルムを設ける工程などがあってもよい。
【0018】
本発明の樹脂組成物膜(M)は、形状転写二軸配向ポリエステルフィルムの面に樹脂組成物を含む塗剤を塗布後に、前記形状転写用二軸配向ポリエステルフィルムを剥離して得た樹脂組成物膜であり、剥離後の表面が凹みを有し、該凹み個数は10個/μm2以上70個/μm2以下、好ましくは15個/μm2以上60個/μm2以下、さらに好ましくは20個/μm2以上50個/μm2以下の頻度である。樹脂組成物膜(M)の表面が特定の頻度の凹みを有することで、樹脂組成物膜(M)の平滑性と滑り性を兼ね備えた高品位なハンドリング性に優れた樹脂組成物膜(M)を得ることが出来る。
【0019】
本発明の形状転写用二軸配向ポリエステルフィルムは130℃、30分処理後の水接触角が90°以上である。好ましくは92°以上、さらに好ましくは95°以上110°以下である。熱処理後の水接触角が90°未満であると形状転写用二軸配向ポリエステルフィルムから樹脂組成物層(M)を剥離する際に、樹脂組成物層(M)が剥がれ難くなる場合がある。さらに、熱処理前後の水接触角変化量が2°以上10°以下である。熱処理後の水接触角変化量が10°を超えると剥離後の樹脂組成物層(M)表面への離型剤などの転着が発生する場合があり、その後の製造過程で工程汚染や密着性不良などの問題が発生する場合がある。
【0020】
本発明の形状転写用二軸配向ポリエステルフィルムの表面(転写面)において、AFMによる表面粗さRa5は20nm以上50nm以下である。好ましくは40nm以下、さらに好ましくは30nm以下である。本発明のRa5は、観察視野5μm×5μm(以下5μm□)の観察時の表面粗さであり、表面粗さRa5が本発明の範囲外であると樹脂組成物層(M)表面への凹凸転写によって得られた樹脂組成物膜(M)の平滑性と易滑性が損なわれる場合がある。
【0021】
本発明の形状転写用二軸配向ポリエステルフィルムの表面(転写面)において、AFMによる表面粗さRa比(Ra5/Ra90)が0.75以上である。好ましくは0.8以上、さらに好ましくは0.85以上である。本発明のRa比とは、観察視野5μm□の表面粗さRa5と観察視野90μm□の表面粗さRa90比であり、この値が大きく1に近いほど、粗大突起が極めて少なく表面の凹凸が均一であることを意味する。
【0022】
本発明の形状転写用二軸配向ポリエステルフィルムの表面(転写面)において、SEM画像で観察される突起の大きさ(突起径)が30nm以上300nm以下である。好ましくは30nm以上200nm以下であり、さらに好ましくは30nm以上150nm以下である。SEM画像で観察される突起の大きさが本発明の下限値未満であると樹脂組成物層(M)への形状転写が出来にくくなる場合がある。また、本発明の上限値を超える場合には形状転写用二軸配向ポリエステルフィルムを剥離する際にフィルムが剥がれ難くなり、樹脂組成物層(M)の表面平滑性が低下し品位低下に繋がる場合がある。
【0023】
本発明の形状転写用二軸配向ポリエステルフィルムの表面(転写面)は、長鎖アルキル基含有化合物を含有する樹脂層(X)からなることが表面突起個数の制御のし易さと離型性付与の観点で好ましい。
【0024】
本発明における二軸配向ポリエステルフィルムとは、ポリエステル樹脂を主成分とするフィルムを示す。ここでいう主成分とはフィルムの全成分100質量%において、50質量%を超えて含有している成分を示す。
【0025】
また、本発明のポリエステル樹脂はジカルボン酸構成成分とジオール構成成分を重縮合してなるものである。なお、本明細書内において、構成成分とはポリエステルを加水分解することで得ることが可能な最小単位のことを示す。
【0026】
かかるポリエステルを構成するジカルボン酸構成成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、もしくはそのエステル誘導体が挙げられる。
【0027】
また、かかるポリエステルを構成するジオール構成成分としては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール等の脂肪族ジオール類、シクロヘキサンジメタノール、スピログリコールなどの脂環式ジオール類、上述のジオールが複数個連なったものなどが挙げられる。
【0028】
本発明のポリエステル樹脂としては、機械特性、透明性の観点から、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレン-2,6-ナフタレンジカルボキシレート(PEN)、およびPETのジカルボン酸成分の一部にイソフタル酸やナフタレンジカルボン酸を共重合したもの、PETのジオール成分の一部にシクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、ジエチレングリコールを共重合したポリエステルが好適に用いられ、その中でも特にポリエチレンテレフタレートが好ましい。これらの原料は、変性体、誘導体、及び他の化合物との共重合体も使用することができ、単独で使用してもよいし、2種類以上を混合して使用することもできる。
【0029】
本発明の形状転写用二軸配向ポリエステルフィルムは二軸配向している。二軸配向していることにより、フィルムの機械強度や寸法安定性が向上することでシワが入りにくくなり、巻取り性を向上させることができ、また延伸工程において均一な延伸応力をかけることで表面の平滑性をフィルム全域において均一にすることができる。ここでいう二軸配向とは、広角X線回折で二軸配向のパターンを示すものをいう。ポリエステルフィルムは、一般に未延伸状態の熱可塑性樹脂シートをシート長手方向および幅方向に延伸し、その後熱処理を施し結晶配向を完了させることにより、得ることができる。詳しい製膜条件に関しては後述する。
【0030】
本発明の形状転写用二軸配向ポリエステルフィルムの表面(形状転写する面)を得る方法としては、突起個数の制御のし易さから、ポリエステル層Lの少なくとも片面に粒子を含有するポリエステル層Pを共押出しし溶融状態で積層して2層以上の二軸配向積層フィルムとする方法、あるいは、粒子を含有した層をポリエステルフィルムの少なくとも一方の面にコーティングする方法及びこれらの組み合わせが好ましく例示される。
【0031】
共押し出しによって、例えばポリエステル層P面を表面(転写面)とする場合を説明すると、ポリエステル層Pに含有する粒子の平均粒径は200nm以下、好ましくは、30nm以上150nm以下の粒径を有する粒子を添加すると効率よく表面(転写面)が得られるので好ましい。
【0032】
添加する粒子としては、無機粒子、有機粒子どちらを用いても良く、2種類以上の粒子を併用してもよい。無機粒子としては例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、硫化亜鉛、リン酸カルシウム、アルミナ(αアルミナ、βアルミナ、γアルミナ、δアルミナ)、マイカ、雲母、雲母チタン、ゼオライト、タルク、クレー、カオリン、フッ化リチウム、フッ化カルシウム、モンモリロナイト、ジルコニア、湿式シリカ、乾式シリカ、コロイダルシリカなどが挙げられる。有機粒子としては例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂などを構成成分とする有機粒子、コアシェル型有機粒子などが例示できる。
【0033】
ポリエステル層Pの厚みとしては、二軸配向後の積層厚みが500nm以下、好ましくは300nm以下、さらに好ましくは100nm以下となるように設定することが本発明の表面(転写面)を得るためには重要である。また、この場合は、表面(転写面)の水接触角を本発明の範囲内にするために帯電防止剤や離型剤から選ばれる少なくとも1種類以上の機能性添加剤(A)を含むことが好ましい。
【0034】
ポリエステル層Lは粒子を含有しても構わないし無粒子としても良い。粒子を含有する場合、ポリエステル層Pと同じ粒子を用いることもできるし、異なる粒子を用いても構わない。
【0035】
コーティングによる樹脂層(X)によって表面(転写面)を得る場合を説明すると、帯電防止剤や離型剤から選ばれる少なくとも1種類以上の機能性添加剤(A)と、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物、アクリル樹脂、シリコーン樹脂から選ばれる少なくとも1種類以上の樹脂または化合物(B)と粒子(C)とを含有する樹脂層をインラインコートあるいはオフラインコートにて塗設する方法が挙げられる。中でも、長手方向に延伸した一軸延伸フィルムに対し、形状転写用の樹脂組成物(X)を塗布し、その後の幅方向に延伸、乾燥させるインラインコート法によることが、本発明の表面(転写面)を形成することや、温度130℃、30分後に水接触角の変化する範囲を本発明の好ましい範囲に制御する上で、特に好ましく例示される。
【0036】
<機能性添加剤(A)>
本発明の表面(転写面)を形成する樹脂層(X)は、帯電防止剤や離型剤から選ばれる少なくとも1種類以上の機能性添加剤(A)を含有することが好ましい。これは、水接触角を制御するためだけではなく、離型剤であればフィルム搬送・工程ロールとの易滑性が向上し、帯電防止剤であればフィルムロール巻き出し時にフィルム表面への異物付着の抑制を達成することが可能となる。
【0037】
(離型剤)
本発明において用いることのできる離型剤としては、長鎖アルキル基含有樹脂、オレフィン樹脂、フッ素化合物、ワックス系化合物などが挙げられる。中でも、長鎖アルキル基含有樹脂は、良好な剥離性を付与できる点で好ましい。
【0038】
長鎖アルキル基含有化合物は市販されているものを使用してもよく、具体的には、アシオ産業社製の長鎖アルキル系化合物である“アシオレジン”(登録商標)シリーズ、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製の長鎖アルキル化合物である“ピーロイル”シリーズ、中京油脂社製の長鎖アルキル系化合物の水性分散体である“レゼム”シリーズなどを使用することができる。前記離型剤は、炭素数12以上のアルキル基を有することが好ましく、炭素数16以上のアルキル基を有することがより好ましい。アルキル基の炭素数を12以上にすることで、疎水性が高まることとなり、離型剤として十分な離型性能を発現させることができる。アルキル基の炭素数が12未満であると、離型性能が不十分なものとなる恐れがある。アルキル基の炭素数の上限は特に限定されるものではないが、塗布外観の観点で25以下が好ましく例示される。
【0039】
前記炭素数12以上のアルキル基を有する樹脂は、ポリメチレンの主鎖に炭素数12以上のアルキル基の側鎖を有する樹脂であることがより好ましい。主鎖がポリメチレンであることで、樹脂全体の親水基が少なくなるため、離型剤の離型効果をより優れたものとすることができる。本発明の表面(転写面)を形成する樹脂層中の離型剤の添加量は10質量%以上30質量%以下、好ましくは15質量%以上25質量%以下が好ましく例示される。また、炭素数の異なるアルキル基を有する離型剤を複数種類併用することも可能である。アルキル基の炭素数が低いと基材フィルムとの密着性が向上する傾向にあるため好ましい。離型剤を複数種類併用する場合であっても添加量としては、離型剤の総量が上記の範囲内とすることが必要となる。
【0040】
(帯電防止剤)
本発明において用いることのできる帯電防止剤としては、ポリスチレンスルホン酸共重合体や、第3級アミノ基や第4級アンモニウム基をポリマー骨格内に有するイオン導電タイプでも、ポリチオフェン系化合物、ポリアニリン系化合物、アンチモンドーピングした酸化スズ系化合物などの電子伝導タイプの帯電防止剤のいずれでもよい。中でもポリチオフェン系化合物と遊離酸状態の酸性高分子であるポリスチレンスルホン酸とを組合せが入手しやすく安価で使いやすい。
【0041】
ポリチオフェン系導電体化合物としては、例えば、チオフェン環の3位と4位の位置が置換された構造を有する化合物などを用いることができる。更にはチオフェン環の3位と4位の炭素原子に酸素原子が結合した化合物を好適に用いることができる。該炭素原子に直接、水素原子あるいは炭素原子が結合したものは、塗液の水性化が容易でない場合がある。上記化合物は、例えば、特開2000-6324号公報、欧州特許第602713号、米国特許第5391472号に開示された方法により製造することができるが、これら以外の方法であってもよい。
【0042】
例えば、3,4-ジヒドロキシチオフェン-2,5、-ジカルボキシエステルのアルカリ金属塩を出発物質として、3,4-エチレンジオキシチオフェンを得た後、ポリスチレンスルホン酸水溶液にペルオキソ二硫酸カリウムと硫酸鉄と、先に得た3,4-エチレンジオキシチオフェンを導入して反応させることにより、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)などのポリチオフェンに、ポリスチレンスルホン酸などの酸性ポリマーが複合体化した組成物を得ることができる。
【0043】
またポリ-3,4-エチレンジオキシチオフェン及びポリスチレンスルホン酸を含む水性の塗料組成物として、H.C.Starck社(ドイツ国)から、“Baytron”Pとして販売されているものなどを用いることができる。
【0044】
一方、遊離酸状態の酸性高分子としては、例えば高分子カルボン酸、あるいは、高分子スルホン酸、ポリビニルスルホン酸などが挙げられる。高分子カルボン酸としては、例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸が例示される。また、高分子スルホン酸としては、例えば、ポリスチレンスルホン酸が例示され、特に、ポリスチレンスルホン酸が帯電防止性の点で好ましい。なお、遊離酸は、一部が中和された塩の形をとってもよい。また、共重合可能な他のモノマー、例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレンなどと共重合した形で用いることもできる。高分子カルボン酸や高分子スルホン酸の分子量は特に限定されないが、塗剤の安定性や帯電防止性の点で、その重量平均分子量は1000以上1000000以下であることが好ましく、より好ましくは5000以上150000以下である。また、発明の特性を阻害しない範囲で、一部、リチウム塩やナトリウム塩などのアルカリ塩やアンモニウム塩などを含んでもよい。ポリ陰イオンが中和された塩の場合も、トーパントとして作用すると考えられる。これは、非常に強い酸として機能するポリスチレンスルホン酸とアンモニウム塩は、中和後の平衡反応の進行により、酸性サイドに平衡がずれるためである。
【0045】
<樹脂または化合物(B)>
本発明の表面(転写面)を形成する樹脂層(X)に用いることのできる樹脂または化合物(B)としては、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物、イソシアネート化合物、アクリル樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。
【0046】
樹脂または化合物(B)として用いることができるポリエステル樹脂としては、主鎖あるいは側鎖にエステル結合を有するもので、ジカルボン酸とジオールから重縮合して得られるものが好ましい。
【0047】
ポリエステル樹脂の原料となるジカルボン酸としては、芳香族、脂肪族、脂環族のジカルボン酸が使用できる。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、フタル酸、2,5-ジメチルテレフタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,2-ビスフェノキシエタン-p,p’-ジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸などを用いることができる。脂肪族及び脂環族のジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸など、及びそれらのエステル形成性誘導体を用いることができる。
【0048】
ポリエステル樹脂の原料となるジオール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、2,4-ジメチル-2-エチルヘキサン-1,3-ジオール、ネオペンチルグリコール、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-イソブチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール、4,4’-チオジフェノール、ビスフェノールA、4,4’-メチレンジフェノール、4,4’-(2-ノルボルニリデン)ジフェノール、4,4’-ジヒドロキシビフェノール、o-、m-、及びp-ジヒドロキシベンゼン、4,4’-イソプロピリデンフェノール、4,4’-イソプロピリデンビンジオール、シクロペンタン-1,2-ジオール、シクロヘキサン-1,2’-ジオール、シクロヘキサン-1,2-ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジオールなどを用いることができる。
【0049】
また、ポリエステル樹脂として、変性ポリエステル共重合体、例えば、アクリル、ウレタン、エポキシなどで変性したブロック共重合体、グラフト共重合体などを用いることも可能である。
【0050】
樹脂または化合物(B)として用いることができるエポキシ樹脂としては、例えば、ソルビトールポリグリシジルエーテル系架橋剤、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル系架橋剤、ジグリセロールポリグリシジルエーテル系架橋剤及びポリエチレングリコールジグリシジルエーテル系架橋剤などを用いることができる。エポキシ樹脂として、市販されているものを使用してもよく、例えば、ナガセケムテック株式会社製エポキシ化合物“デナコール”(登録商標)EX-611、EX-614、EX-614B、EX-512、EX-521、EX-421、EX-313、EX-810、EX-830、EX-850など)、坂本薬品工業株式会社製のジエポキシ・ポリエポキシ系化合物(SR-EG、SR-8EG、SR-GLGなど)、大日本インキ工業株式会社製エポキシ架橋剤“EPICLON”(登録商標)EM-85-75W、あるいはCR-5Lなどを好適に用いることができ、中でも、水溶性を有するものが好ましく用いられる。
【0051】
樹脂または化合物(B)として用いることができるメラミン樹脂としては、例えば、メラミン、メラミンとホルムアルデヒドを縮合して得られるメチロール化メラミン誘導体、メチロール化メラミンに低級アルコールを反応させて部分的あるいは完全にエーテル化した化合物、及びこれらの混合物などを用いることができる。また、メラミン樹脂としては、単量体または2量体以上の多量体からなる縮合物のいずれでもよく、これらの混合物でもよい。エーテル化に用いられる低級アルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール及びイソブタノールなどを用いることができる。官能基としては、イミノ基、メチロール基、あるいはメトキシメチル基やブトキシメチル基等のアルコキシメチル基を1分子中に有するもので、イミノ基型メチル化メラミン樹脂、メチロール基型メラミン樹脂、メチロール基型メチル化メラミン樹脂及び完全アルキル型メチル化メラミン樹脂などである。その中でも、メチロール化メラミン樹脂が最も好ましく用いられる。
【0052】
また、樹脂または化合物(B)として用いることができるオキサゾリン化合物は、該化合物中に官能基としてオキサゾリン基を有するものであり、オキサゾリン基を含有するモノマーを少なくとも1種以上含み、かつ、少なくとも1種の他のモノマーを共重合させて得られるオキサゾリン基含有共重合体からなるものが好ましい。
【0053】
オキサゾリン基を含有するモノマーとしては、2-ビニル-2-オキサゾリン、2-ビニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-ビニル-5-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-4-メチル-2-オキサゾリン及び2-イソプロペニル-5-エチル-2-オキサゾリンなどを用いることができ、これらの1種または2種以上の混合物を使用することもできる。中でも、2-イソプロペニル-2-オキサゾリンが工業的にも入手しやすく好適である。
【0054】
オキサゾリン化合物において、オキサゾリン基を含有するモノマーに対して用いられる少なくとも1種の他のモノマーは、該オキサゾリン基を含有するモノマーと共重合可能なモノマーであり、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、メタクリル酸-2-エチルヘキシルなどのアクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステル類、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸などの不飽和カルボン酸類、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどの不飽和ニトリル類、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミドなどの不飽和アミド類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類、エチレン、プロピレンなどのオレフィン類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニルなどの含ハロゲン-α,β-不飽和モノマー類、スチレン及びα-メチルスチレンなどのα,β-不飽和芳香族モノマー類などを用いることができ、これらは1種または2種以上の混合物を使用することもできる。
【0055】
また、樹脂または化合物(B)として用いることができるカルボジイミド化合物は、該化合物中に官能基としてカルボジイミド基、またはその互変異性の関係にあるシアナミド基を分子内に1個または2個以上有する化合物である。このようなカルボジイミド化合物の具体例としては、ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド、ジシクロヘキシルカルボジイミド、テトラメチルキシリレンカルボジイミド及びウレア変性カルボジイミド等を挙げることができ、これらは1種または2種以上の混合物を使用することもできる。
【0056】
本発明の表面(転写面)を形成する樹脂層には、樹脂または化合物(B)としてイソシアネート化合物を含んでいても良い。イソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネート、1,6-ジイソシアネートヘキサン、トリレンジイソシアネートとヘキサントリオールの付加物、トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンの付加物、ポリオール変性ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、カルボジイミド変性ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、3,3’-ビトリレン-4,4’ジイソシアネート、3,3’ジメチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、メタフェニレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0057】
さらに、イソシアネート基は水と反応し易いため、塗剤のポットライフの点で、イソシアネート基をブロック剤などでマスクしたブロックイソシアネート系化合物などを好適に用いることができる。この場合、ポリエステルフィルムに塗料組成物を塗布した後の乾燥工程において熱がかかることで、ブロック剤が解離し、イソシアネート基が露出する結果、架橋反応が進行することになる。
【0058】
樹脂または化合物(B)として用いることができるアクリル樹脂は、特に限定されないが、アルキルメタクリレート及び/またはアルキルアクリレートから構成されるものが好ましい。
【0059】
アルキルメタクリレート及び/またはアルキルアクリレートとしては、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n-ヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n-ヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、マレイン酸、イタコン酸、アクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドなどを用いるのが好ましい。これらは1種もしくは2種以上を用いることができる。
【0060】
また、樹脂または化合物(B)として用いることができるウレタン樹脂は、ポリヒドロキシ化合物とポリイソシアネート化合物を、乳化重合、懸濁重合などの公知のウレタン樹脂の重合方法によって反応させて得られる樹脂であることが好ましい。
【0061】
ポリヒドロキシ化合物としては、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレン・プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、テトラメチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリカプトラクトン、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリヘキサメチレンセバケート、ポリテトラメチレンアジペート、ポリテトラメチレンセバケート、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ポリカーボネートジオール、グリセリンなどを挙げることができる。
【0062】
ポリイソシアネート化合物としては、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートとトリメチレンプロパンの付加物、ヘキサメチレンジイソシアネートとトリメチロールエタンの付加物などを用いることができる。
【0063】
樹脂または化合物(B)として用いることができるシリコーン樹脂は、硬化型シリコーン樹脂を主成分とするタイプでもよく、変性シリコーン樹脂を主成分とするタイプでもよい。硬化型シリコーン樹脂の種類としては付加型・縮合型・紫外線硬化型・電子線硬化型・無溶剤型、熱と紫外線硬化併用型等、何れの硬化反応タイプでも用いることができる。変性シリコーン樹脂の種類としては、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキル樹脂などの有機樹脂とのグラフト重合等を行い得られる変性シリコーン樹脂でもよい。
【0064】
本発明の表面(転写面)を形成する樹脂層において、樹脂層の製膜工程、加工工程での削れを抑制する観点あるいは離型性の観点から、メラミン樹脂、イソシアネート化合物、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物から選ばれる少なくとも1種類以上を含有させ、樹脂層の強度を向上させることが好ましい。これら架橋剤の含有量としては、樹脂層全体に対して、5質量%以上60質量%以下、好ましくは10質量%以上50質量%以下が好ましく例示される。
【0065】
<粒子(C)>
本発明の表面(転写面)を形成する樹脂層(X)は、粒子(C)を含むことが本発明の突起個数を樹脂層表面に形成させ形状転写用二軸配向ポリエステルフィルムを得るためには重要である。
【0066】
本発明において用いられる粒子(C)としては、有機粒子、無機粒子、例えば、SiO2、TiO2、ZrO2、ZnO、CeO2、SnO2、Sb2O5、インジウムドープ酸化錫(ITO)、リンドープ酸化錫(PTO)、Y2O3、La2O3、Al2O3、などが挙げられ、1種を単独で用いても良く、2種以上を組合せて用いてもよい。分散安定性や屈折率、離型性の観点から、球形の有機粒子やSiO2が特に好ましい。
【0067】
粒子(C)は、数平均粒子径が30nm以上200nm以下であることが好ましい。より好ましくは30nm以上150nm以下であり、最も好ましくは50nm以上100nm以下である。該粒子(C)の数平均粒子径が上記範囲外であると、樹脂組成物膜(M)に形状転写しない場合や剥離力が低下し樹脂組成物膜(M)剥離することが困難となる場合がある。該粒子(C)の数平均粒子径が上記範囲内の粒子を添加することによってSEM画像からカウントされる突起個数や突起径、さらにはAFMによる最大突起高さを本発明の範囲内に制御しやすくなり好ましい。
【0068】
また、粒子(C)は分散性や密着性の観点で表面処理を施しても構わない。樹脂層(X)における粒子(C)の含有量は、樹脂層全体に対して、5質量%以上90質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、10質量%以上70質量%以下である。粒子(C)の含有量を、上記範囲内にすることで、本発明の表面(転写面)を有する形状転写用二軸配向ポリエステルフィルムが得られる。
【0069】
本発明の樹脂層(X)を形成するための塗剤の調整方法としては、溶媒は水系溶媒を用いることが好ましく、樹脂組成物を含む塗剤は、必要に応じて水分散化または水溶化した各種上記樹脂(A)~(C)を任意の順番で所望の重量比で混合、撹拌することで作製することができる。混合撹拌する方法は容器を手で振ったり、マグネチックスターラーや撹拌羽根、超音波、振動による分散方法などを用いることができる。特に、本発明の表面(転写面)を得るためには、フッ素系界面活性剤(例えば、互応化学工業(株)製 プラスコートRY-2)などの分散剤を溶媒に添加し十分撹拌した後に、樹脂(A)、(B)を添加し、撹拌した後に最後に粒子(C)を添加して再度、撹拌する手順が粒子の凝集を抑制するためには好ましく例示される。
【0070】
本発明の表面(転写面)を形成する樹脂層(X)の厚み(t)は30nm以上200nm以下、である。厚みが30nm未満であると含有する粒子(C)の脱落や剥離力が低下する場合がある。また、200nmを超えると、表面突起個数を本発明の範囲内に制御できなくなったり、最大突起高さが高くなりすぎ平滑性に劣る樹脂層表面になる場合や、逆に、添加する粒子の大きさが樹脂層厚みに対して小さすぎることで突起が発現しなくなる場合があり、本発明の樹脂組成物膜(M)を得るための形状転写フィルムを剥離する際に剥離が困難となる場合や樹脂組成物膜(M)に形状転写しない場合がある。樹脂層(X)の厚み(t)は、添加される粒子の粒径よりも小さすぎると粒子の脱落する頻度が増える可能性があるため、上述の厚みの範囲内で含有する粒子の数平均粒子径(d)との関係(t/d)が0.3~2、好ましくは0.5~1の範囲内に制御することが好ましい。
【0071】
本発明の形状転写用二軸配向ポリエステルフィルムには、本願の表面(転写面)を阻害しない範囲内で各種添加剤、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、有機または無機の粒子、帯電防止剤、核剤などが添加されてもよい。
【0072】
本発明の形状転写用二軸配向ポリエステルフィルムは、単層でも2層以上の積層構造を有してもよい。積層構成としては、例えば、表層部と基層部を有する2層あるいは3層積層構成が挙げられ、各層を構成するポリマーは異種ポリマーであっても同種ポリマーでも構わない。
【0073】
本発明の形状転写用二軸配向ポリエステルフィルムのフィルム厚みは、10μm以上が好ましく、さらに好ましくは15μm以上である。上限は特に限定されないが200μm以下である。
【0074】
本発明の形状転写用二軸配向ポリエステルフィルムは、形状転写させる層が樹脂組成物層である。樹脂組成物層は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂のいずれかを含む。
【0075】
本発明の樹脂組成物膜(M)の製造方法について、前記工程1 で塗布される塗材に含まれる樹脂組成物は特に限定されるものではないが、塗工性の観点から、熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂の原料となるモノマーや、2 成分以上の反応により硬化する硬化性樹脂の原料となるモノマー、熱可塑性樹脂、熱可塑性樹脂の原料となるモノマーを用いることが好ましい。工程2 で形成させる樹脂組成物膜に含有される成分に合わせて、該成分を溶剤に分散させたものや、硬化させた際に該成分を生成するモノマーを樹脂組成物として選択することが好ましい。塗剤に含まれる樹脂組成物を構成する樹脂成分の好ましい態様としては、例えば以下に述べる2つの態様がある。一つ目の態様としては、熱硬化性樹脂を含む態様である。熱硬化性樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂等があげられる。これらの樹脂は、変性体、誘導体、及び他の化合物との共重合体も使用することができる。また、単独で使用してもよいし、2 種類以上を混合して使用することもできる。二つ目の態様としては、熱可塑性樹脂を含む態様である。樹脂組成物膜に用いられる熱可塑性樹脂としては、特に限定されるものではないが、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリーレンサルファイド樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリエチレンオキサイド樹脂、ポリアリールエーテルケトン樹脂等が挙げられる。塗工性の観点から、溶媒中に分散させることが容易なポリオレフィン樹脂やポリエステル樹脂、モノマーとして塗工後に光や熱によって重合させて硬化膜を得ることができるアクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエチレンオキサイド樹脂を用いることが好ましい。
【0076】
ポリオレフィン樹脂としては、ポリスチレン( P S ) 樹脂、スチレン系エラストマー樹脂、ポリメチルペンテン( P M P ) 樹脂、環状オレフィン( C O P ) 樹脂、及び環状オレフィン・コポリマー( C O C ) 樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂を使用することができる。ポリオレフィン樹脂を使用する場合には、トルエン、キシレン、メシチレン、シクロヘキサン、デカヒドロナフタレンなどの無極性溶媒中に分散させることで、塗材として用いることができる。
【0077】
ポリエステル樹脂としては、飽和線状ポリエステルのみならず、3 価以上のエステル形成性成分を有する化合物あるいは反応性の不飽和基を有する化合物をポリエステル成分とするものでもよい。ポリエステル系樹脂は、水に対する溶解性、分散性を向上させるために、スルホン酸、カルボン酸またはその塩類等を有するものであることが好ましい。また、ポリエステル系樹脂として、ポリシロキサン基、フッ素化アルキル基、エポキシ基、アミド基などを有する炭素二重結合を有する化合物をグラフトして変性したものを用いてもよい。ポリエステル樹脂を使用する場合には、水やアルコールなどの水系溶媒中に分散または溶解させることで、塗材として用いることができる。
【0078】
アクリル樹脂としては、アルキルアクリレート及び/ 又はアルキルメタクリレートを主要な成分とし、これに反応性の官能基を有するビニル系単量体を共重合したアクリル樹脂を使用することができる。上記の反応性の官能基としては、カルボキシル基またはその塩類、酸無水物基、スルホン酸基またはその塩類、アミド基、アミノ基、水酸基、エポキシ基などが挙げられる。特に、工程フィルムとの接着性、塗膜強度という観点から、カルボキシル基、アミノ基、水酸基、エポキシ基などを含有する水性ポリアクリル系樹脂が好ましい。また、アクリル樹脂として、ポリシロキサン基、フッ素化アルキル基、エポキシ基等を有する化合物をグラフトまたはブロック重合して変性したものを用いてもよい。
【0079】
ポリウレタン系樹脂としては、ポリイソシアネート、ポリオール、鎖長延長剤、架橋剤などを主要原料成分とする水性ウレタン樹脂を使用することができる。ウレタン樹脂の水性化にあたっては、ポリイソシアネート、ポリオール及び鎖長延長剤に親水性基を導入したものを用いるのが一般的手法である。また、ポリウレタンの未反応イソシアネート基と親水性基を有する化合物とを反応させる方法を採用することもできる。また、ポリウレタン系樹脂として、ポリシロキサン基、フッ素化アルキル基、エポキシ基等を有する化合物をグラフトまたはブロック重合して変性したものを用いてもよい。これらの樹脂は、変性体、誘導体、及び他の化合物との共重合体も使用することができる。また、単独で使用してもよいし、2種類以上を混合して使用することもできる。
工程1 で本発明の形状転写用二軸配向ポリエステルフィルムの表面(転写面)に樹脂組成物を含む塗剤を塗布する手法は、特に限定されるものではなく、バーコーター、ブレードコーター、グラビアコーター、ダイコーター、スピンコーター、インクジェットコーター、リバースコーターで塗布する方法や、塗剤をフィルム上に蒸着する方法等を、塗剤の粘性、樹脂組成物を固化する方法に合わせて適宜選択することができる。これらの方法は、単独で使用してもよいし、2 種類以上の方法を連続的に組み合わせて使用してもよい。
【0080】
前記樹脂組成物を含む塗剤を固化させる手法は、特に限定されるものではなく、前記樹脂組成物を含む塗剤の特性に合わせて、例えば、乾燥による溶媒除去、紫外線硬化、熱硬化といった方法を適宜選択することができる。これらの方法は、単独で使用してもよい、2 種類以上の方法を組み合わせて使用してもよい。樹脂組成物を含む塗剤には、固化を促進するために、前記樹脂組成物の特性に合わせてラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合の開始剤や、触媒を添加してもよい。また、開始剤は熱により反応を開始するもの、光により反応を開始するものを前記樹脂組成物の固化特性に合わせて適宜選択することができる。触媒も同様に、酸や塩基、酸化剤、還元剤を前記樹脂組成物の固化特性に合わせて選択することができる。また、固化させる前にカバーフィルムを設けても構わない。
【0081】
工程2で、形状転写用二軸配向ポリエステルフィルムを剥離して、樹脂組成物膜(M)を得る手法は、特に限定されるものではなく、樹脂組成物膜(M)と形状転写用二軸配向ポリエステルフィルムの密着性、ヤング率に合わせて適宜選択することができる。例えば、樹脂組成物膜と本発明の形状転写用二軸配向ポリエステルフィルムをそれぞれ別のコアに巻き取って剥離する方法や、前記積層体を枚葉にカットした後、手で剥離する方法を選択することができる。
【0082】
本発明の形状転写用二軸配向ポリエステルフィルムを用いた樹脂組成物膜(M)の製造方法において、工程1 ,2を行う方式は特に限定されるものではなく、形状転写用二軸配向ポリエステルフィルムの枚葉を用いる、いわゆるバッチ方式で行ってもよいし、形状転写用二軸配向ポリエステルフィルムを巻き取ってロールとしたものを用いる、いわゆるロールtoロール 方式で行ってもよい。また、これらを組み合わせて行うこともできる。中でも、樹脂組成物膜の生産性の観点からは、ロールtoロール方式を用いることが好ましい。
【0083】
本発明の形状転写用二軸配向ポリエステルフィルムの表面(転写面)を工程1で用いることにより、樹脂組成物膜の剥離性が容易となり、その樹脂組成物膜(M)の表面は凹みを特定個数有するため、その後の二次加工工程における相手部材との滑り性が良く、しわや欠点の少ない品位に優れた積層体を得ることが可能となる。
【0084】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムにおいて、ポリエステルフィルム全体の固有粘度(IV)は、0.50dl/g以上であることが好ましく、より好ましくは0.55dl/g以上である。IVが0.50dl/g以上とすることで、ポリエステル分子鎖が短いことで結晶化が進行し延伸工程で破断が頻発し製膜が困難になることを抑制することができる。
【0085】
次に、本発明の形状転写用二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法について例を挙げて説明するが、本発明は、かかる例によって得られる物のみに限定して解釈されるものではない。
【0086】
本発明に用いられる形状転写用二軸配向ポリエステルフィルムを得る方法としては、常法による重合方法が採用できる。例えば、テレフタル酸等のジカルボン酸成分またはそのエステル形成性誘導体と、エチレングリコール等のジオール成分またはそのエステル形成性誘導体とを公知の方法でエステル交換反応あるいはエステル化反応させた後、溶融重合反応を行うことによって得ることができる。また、必要に応じ、溶融重合反応で得られたポリエステルを、ポリエステルの融点温度以下にて、固相重合反応を行っても良い。
【0087】
本発明のポリエステルフィルムは、従来公知の製造方法で得ることが出来る。具体的には本発明のポリエステルフィルムは、必要に応じて乾燥した原料を押出機内で加熱溶融し、口金から冷却したキャストドラム上に押し出してシート状に加工する方法(溶融キャスト法)を使用することができる。その他の方法として、原料を溶媒に溶解させ、その溶液を口金からキャストドラム、エンドレスベルト等の支持体上に押し出して膜状とし、次いでかかる膜層から溶媒を乾燥除去させてシート状に加工する方法(溶液キャスト法)等も使用することができる。
【0088】
2層以上の二軸配向ポリエステルフィルムを溶融キャスト法により製造する場合、二軸配向ポリエステルフィルムを構成する層毎に押出機を用い、各層の原料を溶融せしめ、これらを押出装置と口金の間に設けられた合流装置にて溶融状態で積層したのち口金に導き、口金からキャストドラム上に押し出してシート状に加工する方法(共押出法)が好適に用いられる。該積層シートを、表面温度20℃以上60℃以下に冷却されたキャストドラム上で静電気により密着させ冷却固化することで未延伸フィルムを作製する。またキャストドラムの表面温度を60℃以下とすることで未延伸フィルムのキャストドラムへの粘着を抑制し、フィルム走行方向に厚みムラの少ない未延伸フィルムを得ることができる。キャストドラムの表面温度のより好ましい範囲としては25℃以上55℃以下である。
【0089】
未延伸フィルムを二軸延伸する場合の延伸条件に関しては、本発明の形状転写用二軸配向ポリエステルフィルムがポリエステルを主成分とする場合、長手方向の延伸としては、未延伸フィルムを70℃以上に加熱されたロール群に導き、長手方向(縦方向、すなわちフィルムの進行方向)に延伸し、20℃以上50℃以下の温度に設定したロール群で冷却することが好ましい。長手方向の延伸における加熱ロール温度の下限についてはシートの延伸性を損なわない限り特に制限はないが、使用するポリエステル樹脂のガラス転移温度を超えることが好ましい。また、長手方向の延伸倍率の好ましい範囲は3倍以上5倍以下である。より好ましい範囲としては3倍以上4倍以下である。長手方向の延伸倍率が3倍以上であると、配向結晶化が進行しフィルム強度を向上することができる。一方で、延伸倍率を5倍以下とすることで延伸に伴うポリエステル樹脂の配向結晶化が過度に進行し脆くなり製膜時の破れが発生することを抑制できる。
【0090】
長手方向に延伸した工程フィルム(一軸延伸フィルム)に対し、形状転写用の樹脂組成物(X)を塗布し、その後の幅方向に延伸、乾燥させるインラインコート法によって本発明の表面(転写面)を形成することが好ましい。樹脂組成物の塗布方式は公知の塗布方式を任意で用いることができる。例えばワイヤーバーコート法、リバースコート法、グラビアコート法、ダイコート法、ブレードコート法、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法などが挙げられる。
【0091】
長手方向に直角な方向(幅方向)の延伸に関しては、フィルムの両端をクリップで把持しながらテンターに導き、70℃以上160℃以下の温度に加熱された雰囲気中にて、長手方向に直角な方向(幅方向)への3倍以上5倍以下の延伸することが好ましい。この時、前記幅方向への延伸を行う際に、延伸倍率に応じて段階的に温度を上げていくことが好ましい。これは幅方向の延伸が進展することでポリエステル樹脂の分子鎖配向が進展し、延伸を行うのに必要な熱量を常に与え続けることで、延伸不良が発生するのを抑制できるだけでは無く、上述の方式にて塗工された樹脂組成物を幅方向に均一な厚みで樹脂層形成を行うことができるためである。樹脂層が均一な厚みで形成されることで、樹脂層削れの基点になる局所的に厚みの高い部分の発生や樹脂層に含有される粒子の凝集が抑制され粒子の脱落を抑制することができる。段階的な延伸温度の昇温(以降、段階昇温と称する場合がある)を行う具体的な方法としてはテンター内の延伸区間において延伸温度を少なくとも3区間以上に分け、延伸倍率に比例しながら延伸温度を増加することが好ましい。
【0092】
その後、延伸されたフィルムを熱処理し内部の配向構造の安定化を行うことが好ましい。熱処理時にフィルムの受けた熱履歴温度に関しては、後述する示差走査熱量計(DSC)にて測定される融点温度の直下に現れる微小吸熱ピーク(Tmetaと称することがある。)温度にて確認することができるが、テンター装置設定温度としてはポリエステル(融点255℃)が主成分である場合には、テンター内の最高温度が200℃以上250℃以下であるように設定することが好ましく、他の熱可塑性樹脂を主成分とする際は、樹脂融点-55℃以下樹脂融点-5℃以下に設定することが好ましい。熱処理温度を200℃以上とすることで二軸配向ポリエステルフィルムの寸法安定性を向上させることができ、また樹脂層を構成する際に分子間の架橋反応の進行を促進し、より強固な樹脂層を形成させることが出来る。また、熱処理温度を250℃以下とすることでポリエステルフィルムの融解に伴うフィルム破れの発生を抑制し生産性良く製造することができる。より好ましい範囲としては220℃以上245℃以下である。
【0093】
更に熱処理した後に寸法安定性を付与することを目的として、1%以上10%以下の範囲で弛緩処理(リラックス処理)を行ってもよい。弛緩処理を1%以上とすることで二軸配向ポリエステルフィルムを高温環境下で用いる場合の寸法安定性を向上でき、10%以下とすることで、二軸配向ポリエステルフィルムに適度な張力をかけ続け、厚みムラが悪化するのを防ぐことができる。
【0094】
延伸倍率は、長手方向と幅方向それぞれ3倍以上5倍以下とするが、その面積倍率(長手方向の延伸倍率×幅方向の延伸倍率)は9倍以上22倍以下であることが好ましく、9以上20倍以下であることがより好ましい。面積倍率を9倍以上とすることで得られる二軸配向ポリエステルフィルムの分子配向を促進させ耐久性を向上させることができ、面積倍率を22倍以下とすることで延伸時の破れ発生を抑制することができる。
【0095】
[特性の評価方法]
本発明における特性値の測定方法並びに効果の評価方法は次の通りである。
【0096】
(1)SEM画像による突起個数および凹みの個数、突起径
SEM(走査型電子顕微鏡:日本電子(株)製 JSM-6700F LEIモード 加速電圧:3.0kV WD:7.9mm)にてランダムに5か所撮影(倍率:1万倍~10万倍の間)し、それぞれの画像(表面写真)を作製し存在する突起の個数を計測し、平均した。
【0097】
ここで突起の個数とは、粒子1個によって形成された突起である。但し、複数個の粒子が集合もしくは凝集した状態で突起を形成している場合であって、この突起を形成している粒子の集合体(凝集体(塊))を構成する個々の粒子を判別することが困難な場合には、この集合体を1個の粒子と見なし、1つの集合体(凝集体(塊))によって形成された突起を1個の突起と見なした。
【0098】
凹みの個数を計測する場合も、同様にしてSEM画像から計測する。突起と凹みの区別はSEM画像の陰影の付き方で区別可能である。突起の場合は、対象物の右側に陰影ができ、凹みの場合は陰影が対象物の左側にできる。5か所撮影(倍率:1万倍~10万倍の間)し、それぞれの画像(表面写真)を作製し存在する凹みの個数を計測し、平均した。
【0099】
突起径は、突起の個数を計測した画像において粒子1個によって形成された全突起について突起の最も長い外周上の2点間距離をそれぞれ計測する。複数個の粒子が集合もしくは凝集した状態で突起を形成している場合であって、この突起を形成している粒子の集合体(凝集体(塊))を構成する個々の粒子を判別することが困難な場合には、この集合体を1個の粒子と見なし、1つの集合体(凝集体(塊))によって形成された突起を1個の突起と見なしこの突起の最も長い外周上の2点間距離を突起径として計測し、全突起の長径の平均値を突起径とする。
【0100】
(2)AFMによる最大突起高さRp、表面粗さRa5、表面粗さRa90
原子間力顕微鏡(AFM)を用いて、場所を変えて20視野測定を行った。サンプルセットは、カンチレバーの走査方向に対して垂直方向(Y軸方向)がサンプルフィルムの長手方向(長手方向とは、フィルムの製造工程においてフィルムが走行する方向)となるようにサンプルをセットして、以下のAFM測定条件にて測定する。得られた画像について、付属の解析ソフト(NanoScope Analysis Version 1.40)を用い解析する。得られるフィルム表面のHeight Sensor画像を下記するFlatten処理のみを施した後、Roughness解析モードを下記の通り設定する。20視野の平均値をそれぞれもとめ測定視野90μm四方における最大突起高さRp、表面粗さRa90とする。測定視野5μn四方に変更して同様に場所を変えて20視野測定し、その平均値を表面粗さRa5とする。
本測定における突起高さの基準面は、下記のFlatten処理およびRoughnessモード設定において設定したThreshold Height:0nmからの高さであり、高さ0nmの面が基準面となる。
【0101】
[AFM測定方法]
・装置:Bruker社製 原子間力顕微鏡(AFM)
Dimention Icon with ScanAsyst
・カンチレバー:窒化ケイ素製プローブ ScanAsyst Air
・走査モード:ScanAsyst
・走査速度:0.6Hz
・走査方向:後述する方法にて作製した測定サンプルの幅方向に走査を行う
・測定視野:5μm四方および90μm四方
・サンプルライン:512
・Peak Force SetPoint:0.0195V~0.0205V
・Feedback Gain:10~20
・LP Deflection BW:40 kHz
・ScanAsyst Noise Threshold: 0.5nm
・サンプル調整:23℃、65%RH、24時間静置
・AFM測定環境:23℃、65%RH
・測定サンプル作成方法:AFM試料ディスク(直径15mm)の片面に両面テープを貼りつけ、AFM試料ディスクと、約15mm×13mm(長手方向×幅方向)に切り出した本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの前記表面(測定面)とは逆側の面とを張り合わせ、測定サンプルとした。
【0102】
・サンプル測定回数:各サンプル同士が少なくとも5μm以上離れるように場所を変え、20回測定を行う。
【0103】
・測定値:測定した20か所の画像に関して前述の解析を行い、各数値を測定しその平均値をサンプルの持つ各数値として扱う。
[Flatten処理]
・Flatten Order:3rd
・Flatten Z Threshholding Direction:No theresholding
・Find Threshold for :the whole image
・Flatten Z Threshold % :0.00 %
・Mark Excluded Data :Yes
[Roughnessモード設定]
(Stop Band Inputsタブ)
・Use Threshold :off
・Threshold Height :0nm
・Feature Direction :Above
・X Axis :Absolute
・Number Histogram Bins :512
・Bound Particles :Yes
・Non-Representative Particles :No
・Particle Filter Sigma :1.00
(Peak Inputs)
・Peak :On
・Peak threshold reference :Zero
・Peak threshold value type :Rms
・Peak threshold value :100%
・Zero Crossing :Off
・前記数値を求めるに際し、解析画像中の特定のピーク、エリアを選択しない。
・Diameter、Height、Area全てのヒストグラムで特定の場所を選択しない。
【0104】
(3)水接触角
フィルムを室温23℃相対湿度65%の雰囲気中に24時間放置後する。その後、同雰囲気下で、フィルムの樹脂層の表面側に対して、純水の接触角を、協和界面科学社製 接触角径DropMaster DM-501により、それぞれ5点測定する。5点の測定値の最大値と最小値を除いた3点の測定値の平均値をそれぞれの溶液の接触角とする。
【0105】
(4)粒子の数平均粒子径
フィルム断面を透過型電子顕微鏡(TEM)を用い、1万倍で観察する。このとき、写真上で1cm以下の粒子が確認できた場合はTEM観察倍率を5万倍に変えて観察する。TEMの切片厚さは約100nmとし、場所を変えて100視野測定し、写真に撮影された分散した粒子全てについて等価円相当径をもとめ、横軸に等価円相当径を、縦軸に粒子の個数として粒子の個数分布をプロットし、そのピーク値の等価円相当径を粒子の平均粒径とした。ここで、1万倍で観察した写真上に凝集粒子が確認できた場合は上記プロットに含めない。フィルム中に粒子径の異なる2種類以上の粒子が存在する場合、上記等価円相当径の個数分布は2個以上のピークを有する分布となる。この場合は、それぞれのピーク値の等価円相当径をそれぞれの粒子の数平均粒径とする。
【0106】
測定装置:透過型電子顕微鏡(TEM) 日立製H-7100FA型
測定条件:加速電圧 100kV
測定倍率:1万倍、5万倍
試料調整:超薄膜切片法
観察面 :TD-ZD断面(TD:幅方向、ZD:厚み方向) 。
【0107】
(5)粒子の含有量
フィルム原料であるポリエステルへの粒子配合量から計算し、表に記載した。
【0108】
なお、以下の手法に従いフィルムを分析することにより算出することもできる。
【0109】
(5)-1 粒子の元素分析
フィルムからポリエステルをプラズマ灰化処理法で除去し粒子を露出させる。処理条件はポリマは灰化されるが粒子は極力ダメージを受けない条件を選択する。その粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、粒子画像をイメージアナライザーで処理する。上記(8)で求めた粒度分布に従い、SEMの倍率を30,000倍にして、観察箇所を変えて20視野観察し、観察した全粒子についてエネルギー分散型X線分光法(EDX)を用いて元素分析を実施し、粒子と元素の関係を明確にする。
【0110】
(5)-2 粒子の含有量
各積層部の表面を片刃で削り取り、削れ粉100gにo-クロロフェノールを加え、攪拌しながら100℃で1時間を要してポリマを溶解する。次いで日立製作所製分離用超遠心機40P型にローターRP30を装備し、セル1個当りに上記溶解液30ccを注入した後徐々に30,000rpmにする。30,000rpm到達60分後に粒子の分離を終了する。次いで上澄液を除去し分離粒子を採取する。採取した該粒子に常温のo-クロロフェノールを加え、均一けん濁した後、超遠心分離操作を行う。分離粒子を示差走査熱量測定装置(DSC)を用いてポリマに相当する融解ピークが検出されなくなるまでくり返す。このようにして得た分離粒子を120℃で16時間真空乾燥した後、質量を測定した値を粒子の総含有量とし、これに対する比率(質量%)をもって粒子の含有量とする。
【0111】
(6) フィルム厚み
ダイヤルゲージを用い、JIS K7130(1992年)A-2法に準じて、フィルムを10枚重ねた状態で任意の5ヶ所について厚さを測定する。その平均値を10で除してフィルム厚みとする。
【0112】
(7)樹脂層(X)の厚み
二軸配向ポリエステルフィルムを四酸化ルテニウム(RuO4)及び/または四酸化オスミウム(OsO4)を用いて染色する。二軸配向ポリエステルフィルムを凍結せしめ、フィルム厚み方向に切断し、樹脂層断面観察用の超薄切片サンプルを10点(10個)得る。それぞれのサンプル断面をTEM(透過型電子顕微鏡:(株)日立製作所製H7100FA型)にて1万~100万倍の間で観察し、断面写真を得る。その10点(10個)における前記表面を有する樹脂層厚みの測定値を平均して、樹脂層の厚みとする。
【0113】
(8)固有粘度(IV)
オルトクロロフェノール100mlに、測定試料(ポリエステル樹脂(原料)又は本発明のポリエステルフィルム)を溶解させ(溶液濃度C(測定試料重量/溶液体積)=1.2g/100ml)、その溶液の25℃での粘度を、オストワルド粘度計を用いて測定した。また、同様に溶媒の粘度を測定した。得られた溶液粘度、溶媒粘度を用いて、下記式(5)により、[η]を算出し、得られた値をもってポリエステルフィルム全体の固有粘度(IV)とした。
ηsp/C=[η]+K[η]2・C ・・・式(5)
(ここで、ηsp=(溶液粘度/溶媒粘度)-1、Kはハギンス定数(0.343とする)である。)
なお、測定試料を溶解させた溶液に無機粒子などの不溶物がある場合は、以下の方法を用いて測定を行った。
(1-1)オルトクロロフェノール100mLに測定試料を溶解させ、溶液濃度が1.2g/100mLよりも濃い溶液を作成する。ここで、オルトクロロフェノールに供した測定試料の重量を測定試料重量とする。
(1-2)次に、不溶物を含む溶液を濾過し、不溶物の重量測定と、濾過後の濾液の体積測定を行う。
(1-3)濾過後の濾液にオルトクロロフェノールを追加して、(測定試料重量(g)-不溶物の重量(g))/(濾過後の濾液の体積(mL)+追加したオルトクロロフェノールの体積(mL))が、1.2g/100mLとなるように調整する。
(例えば、測定試料重量2.0g/溶液体積100mLの濃厚溶液を作成したときに、該溶液を濾過したときの不溶物の重量が0.2g、濾過後の濾液の体積が99mLであった場合は、オルトクロロフェノールを51mL追加する調整を実施する。((2.0g-0.2g)/(99mL+51mL)=1.2g/100mL))
(1-4)(1-3)で得られた溶液を用いて、25℃での粘度をオストワルド粘度計を用いて測定し、得られた溶液粘度、溶媒粘度を用いて、上記式(5)により、[η]を算出し、得られた値をもって固有粘度(IV)とする。
【0114】
(9)樹脂層(X)の走行耐久性
フィルムを幅12.65mmのテープ状にスリットしたものをテープ走行試験機SFT-700型((株)横浜システム研究所製)を使用し、23℃、65%RH雰囲気下にて24時間以上調湿後、フィルムの樹脂層表面をガイドに接するようにセットし、フィルムに荷重300gを掛けた状態で10回往復走行させる。この試験をフィルムサンプルを交換して3回実施し、ガイドを写真観察して以下の判定で走行耐久性を評価した。
【0115】
ここで、ガイド径は6mmであり、ガイド材質はSUS27(表面粗度0.2S)、巻き付け角は90゜、走行距離は10cm、走行速度は3.3cm/秒である。
〇:削れ粉の発生が目視、写真観察3回いずれも無い。
△:削れ粉の発生が写真観察で確認できる場合が1回以上ある。
×:削れ粉の発生が目視で確認できる場合が1回以上ある。
【0116】
(10)樹脂層(X)の剥離力
表面(転写面)に、粘着テープ(日東電工社製No.31B、幅19mm)を5kgのゴムローラーを1往復させ圧着し、23℃ 65%RH雰囲気下で24時間静止した後、引張試験機にて引張速度300mm/分にて180°剥離を実施した。剥離力が100mN/cm以下を○、100を超え200mN/cm以下を△、200mN/cmを超えるものは×と判断した。
【0117】
(11)樹脂組成物層(M)の塗布欠陥
本発明の形状転写用二軸配向ポリエステルフィルムの樹脂層(X)上に樹脂組成物層(M)を塗布し、サンプルの中央部をサイズ15cm×20cmに切り抜き評価サンプルとした。フィルムから剥離後、樹脂層(X)と接触していた樹脂組成物層(M)の面に20nmの厚みでアルミを蒸着し、光学顕微鏡を用いて明視野法にて対物レンズ200倍にて、塗布抜けによるピンホールやハジキの発生状況を観察する。5枚の評価サンプルを評価し、以下の基準で評価した。
◎:5枚ともピンホールおよびハジキの発生が無い。
○:5枚のうち1枚のサンプルでピンホールおよびハジキが認められる。
△:5枚のうち2枚のサンプルでピンホールおよびハジキが認められる。
×:5枚のうち3枚以上のサンプルでピンホールおよびハジキが認められる。
【0118】
(12)樹脂組成物膜(M)の滑り性
剥離した樹脂組成物層(M)を23℃、65%RHにて調湿した後、製膜ライン方向が長手となるように、幅65mm、長さ120mmの矩形状に切り出してサンプルとし、摩擦試験機(東洋精機(株)製)を使用し、23℃65%RH雰囲気下にて測定する。
【0119】
該装置の測定試料台上に、前記矩形状のサンプルを該装置引っ張り方向が該サンプルの長手方向となり、また二軸配向ポリエステルフィルムに接していた表面が上面になる(試料台とは接しない)ようにセットしテープにてサンプルの周囲を測定試料台と固定する。該装置の加重検出用Uゲージと接続されたスレッドの片面に下記する金属試料板を張り合わせ、該金属試料板の鏡面が前記固定されたサンプルの表面Aと重なるようにセットする。金属試料板とスレッドの合計加重は200gとなる。
【0120】
20秒静置することでサンプルの表面と金属試料板表面とを密着させた後、金属試料板を貼り付けたスレッドを以下の条件で引っ張った際に検出される加重(N;ニュートン単位)の最大値を測定する。7回の測定を行い、上位1点と下位1点を除いた5回測定値の平均値をもってサンプルの金属試料板との滑り性とし、以下の様に評価を行った。AAが最も良好であり、Dが最も劣る。
(金属試料板)
材質:ステンレス(SUS304鏡面)
表面粗さ:算術平均粗さ0.012μm
(測定条件)
測定距離:30mm
測定速度:100mm/min
AA:最大荷重が3N未満
A:最大荷重が3N以上4N未満
B:最大荷重が4N以上6N未満
C:最大荷重が6N以上10N未満
D:最大荷重が10N以上
【実施例0121】
以下、本発明について実施例を挙げて説明するが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0122】
(1)PETペレットの作製:テレフタル酸ジメチル194質量部とエチレングリコール124質量部とをエステル交換反応装置に仕込み、内容物を140℃に加熱して溶解した。その後、内容物を撹拌しながら酢酸マグネシウム四水和物0.3質量部および三酸化アンチモン0.05質量部を加え、140~230℃でメタノールを留出しつつエステル交換反応を行った。次いで、リン酸トリメチルの5質量%エチレングリコール溶液を0.5質量部(リン酸トリメチルとして0.025質量部)とリン酸二水素ナトリウム2水和物の5質量%エチレングリコール溶液を0.3質量部(リン酸二水素ナトリウム2水和物として0.015質量部)添加した。
【0123】
トリメチルリン酸のエチレングリコール溶液を添加すると反応内容物の温度が低下する。そこで余剰のエチレングリコールを留出させながら反応内容物の温度が230℃に復帰するまで撹拌を継続した。このようにしてエステル交換反応装置内の反応内容物の温度が230℃に達した後、反応内容物を重合装置へ移行した。
【0124】
移行後、反応系を230℃から275℃まで徐々に昇温するとともに、圧力を0.1kPaまで下げた。最終温度、最終圧力到達までの時間はともに60分とした。最終温度、最終圧力に到達した後、2時間(重合を始めて3時間)反応させたところ、重合装置の撹拌トルクが所定の値(重合装置の仕様によって具体的な値は異なるが、本重合装置にて固有粘度0.62のポリエチレンテレフタレートが示す値を所定の値とした)を示した。そこで反応系を窒素パージし常圧に戻して重縮合反応を停止し、冷水にストランド状に吐出、直ちにカッティングして固有粘度0.62のポリエチレンテレフタレートのPETペレットを得た(原料-1)。
【0125】
(原料2-a、)粒子含有PETペレットの作製:280℃に加熱された同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機に、上述のPETペレット(原料-1)を90質量部と平均粒径0.30μmの架橋ポリスチレン粒子の5質量%水スラリーを10質量部(架橋ポリスチレン粒子として0.5質量部)を供給し、ベント孔を1kPa以下の減圧度に保持し水分を除去し、架橋ポリスチレン粒子を0.5質量%含有する固有粘度0.62の粒子含有ペレット(原料2-a)を得た。
【0126】
(原料2-b)粒子含有PETペレットの作製:280℃に加熱された同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機に、上述のPETペレット(原料-1)を94質量部と平均粒径0.060μmのコロイダルシリカ粒子の20質量%水スラリーに平均粒径0.05mmのガラスビーズを加え1,000rpmで2時間攪拌した後ろ過しガラスビーズを除去した水スラリーを5質量部(コロイダルシリカ粒子として1.0質量部)を供給し、ベント孔を1kPa以下の減圧度に保持し水分を除去し、コロイダルシリカ粒子を1.0質量%含有する固有粘度0.62の粒子含有ペレット(原料-2b)を得た。
【0127】
[機能性添加剤(A)]
(離型剤)
・長鎖アルキル基含有樹脂(a-1)
4つ口フラスコにキシレン200部、オクタデシルイソシアネート600部を加え、攪 拌下に加熱した。キシレンが還流し始めた時点から、平均重合度500、ケン化度88モル%のポリビニルアルコール100部を少量ずつ10分間隔で約2時間にわたって加えた 。ポリビニルアルコールを加え終わってから、さらに2時間還流を行い、反応を終了した 。反応混合物を約80℃まで冷却してから、メタノール中に加えたところ、反応生成物が 白色沈殿として析出したので、この沈殿を濾別し、キシレン140部を加え、加熱して完 全に溶解させた後、再びメタノールを加えて沈殿させるという操作を数回繰り返した後、 沈殿をメタノールで洗浄し、乾燥粉砕することで、長鎖アルキル基含有樹脂(a―1:ポ リメチレンを主鎖として側鎖に炭素数18のアルキル基を有する)を得た。これを水で希釈し、20質量%に調整した。
【0128】
[樹脂または化合物(B)]
・アクリル樹脂(b-1)
ステンレス反応容器に、メタクリル酸メチル(α)、メタクリル酸ヒドロキシエチル(β)、ウレタンアクリレートオリゴマー(根上工業(株)製、アートレジン(登録商標)UN-3320HA、アクリロイル基の数が6)(γ)を(α)/(β)/(γ)=94/1/5の質量比で仕込み、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを(α)~(γ)の合計100質量部に対して2質量部を加えて撹拌し、混合液1を調製した。次に、攪拌機、環流冷却管、温度計及び滴下ロートを備えた反応装置を準備した。上記混合液1を60重量部と、イソプロピルアルコール200重量部、重合開始剤として過硫酸カリウム5重量部を反応装置に仕込み、60℃に加熱し、混合液2を調製した。混合液2は60℃の加熱状態のまま20分間保持させた。次に、混合液1の40重量部とイソプロピルアルコール50重量部、過硫酸カリウム5重量部からなる混合液3を調製した。続いて、滴下ロートを用いて混合液3を2時間かけて混合液2へ滴下し、混合液4を調製した。その後、混合液4は60℃に加熱した状態のまま2時間保持した。得られた混合液4を50℃以下に冷却した後、攪拌機、減圧設備を備えた容器に移した。そこに、25%アンモニア水60重量部、及び純水900重量部を加え、60℃に加熱しながら減圧下にてイソプロピルアルコール及び未反応モノマーを回収し、純水に分散されたアクリル樹脂(b-1)を得た。
【0129】
・メチロール化メラミン樹脂(b-2)
(株)三和ケミカル製、“ニカラック”(登録商標)MW-035(固形分濃度70質量%、溶媒:水)を用いた。
【0130】
[粒子(C)]
・粒子(c-1)
日揮触媒化成(株)製“スフェリカ”(登録商標)140(シリカ粒子、平均粒子一次径140nm)を用いた。
【0131】
・粒子(c-2)
日揮触媒化成(株)製“カタロイド”(登録商標)SI-80P(シリカ粒子、平均粒子一次径80nm)を用いた。
【0132】
・粒子(c-3)
日揮触媒化成(株)製“カタロイド-S”(登録商標)SI-50(シリカ粒子、平均粒子一次径20nm)を用いた。
【0133】
・粒子(c-4)
日産化学工業(株)製“スノーテックス PM-S”(シリカ粒子 粒子一次径が18~27nm、二次径が80~120nm)を用いた。
【0134】
・粒子(c-5)
日本触媒(株)製“シーホスター”(登録商標)KEW-30(シリカ粒子、平均粒子一次径300nm)を用いた。
【0135】
(実施例1)
押出機E1、E2の2台を用い、280℃に加熱された押出機E1には、P層原料として、PETペレット(原料-1)を83質量部、平均粒径0.3μmのコロイダルシリカ粒子含有ペレット(原料-2a)17質量部を180℃で3時間減圧乾燥した後に供給した。同じく280℃に加熱された押出機E2には、L層原料として、PETペレット(原料-1)を180℃で3時間減圧乾燥した後に供給した。これらを2層積層するべくTダイ中で積層厚み比(P層|L層)=1|5とし、L層側がキャストドラム面側になるように合流させ、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化し、積層未延伸フィルムを作製し、この積層未延伸フィルムを長手方向に60℃~100℃に加熱された延伸ロール群へと導き延伸操作によりトータル3.5倍に延伸を行う。その後L層の表面上に樹脂層(X)を塗設するため、表1に示した各種樹脂成分の形状転写用樹脂組成物をバーコーターを用いて塗布した。塗布後のフィルムをテンターへと導き80℃の予熱を加えた後、90℃、110℃、130℃に温度設定された長さが均等な3区間にて各区間にて1.6倍ずつ、段階昇温を行いながら延伸を行い幅方向にトータル4.1倍の延伸を施し、定長下235℃で熱処理を20秒間施し、幅方向に弛緩処理を5%施した。形状転写用樹脂層の厚みが80nm、フィルム厚み16μmの形状転写用二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られた形状転写用二軸配向ポリエステルフィルムの物性は表1の通りである。
・形状転写用樹脂組成物を含む塗剤の調整方法
フッ素系界面活性剤(互応化学工業(株)製 プラスコートRY-2)を塗剤組成物(樹脂A、樹脂B)全体100質量部に対して0.1質量部となるよう溶媒に添加し、その後、樹脂(b-1)を40質量部を添加し、次に樹脂(b-2)を40質量部を添加し撹拌し、樹脂(a-1)20質量部を添加し再度撹拌した後、粒子(c-1)を45質量部添加して撹拌し塗剤を調整した。
また、得られた形状転写用二軸配向ポリエステルフィルムの樹脂層(X)面にウレタンアクリレート(UA1: ウレタンアクリレート( 根上工業( 株) 製、25℃での粘度: 600,000 mPa・s、重量平均分子量Mw:1600、ガラス転移温度: 1 0 ℃ )を5 0 質量部と、市販のメチルエチルケトンを5 0 質量部と、市販の1 - ヒドロキシシクロへキシルフェニルケトンを3 質量部とを混合した樹脂組成物からなる塗剤をバーコーターで膜厚20 μ m となるように塗布した。次いで、これを熱風オーブンに入れ、8 0 ℃ で1 分加熱して溶媒を除去した。その後、窒素雰囲気下でU V ランプを用いて照射出力400 W/cm2 、積算光量1 2 0 m J / c m2 で紫外線を照射し、形状転写用二軸配向ポリエステルフィルム上の塗剤を硬化させた後、樹脂組成物層を剥離して、ポリウレタンアクリレートからなる樹脂組成物膜(M)を得た。得られた樹脂組成物膜(M)の物性および評価結果を表1に併せて示す。
【0136】
(実施例2~4、比較例2~6)
形状転写用樹脂組成物の配合量を表1の通りに変更した以外は実施例1と同様にして樹脂層(X)を片面に有する厚み16μmの形状転写用二軸配向ポリエステルフィルムおよび樹脂組成物膜(M)を得た。
【0137】
(実施例5~7)
形状転写用樹脂組成物(X)の配合量および粒子(C)を表1の通りに変更した以外は実施例1と同様にして樹脂層(X)を片面に有する厚み16μmの形状転写用二軸配向ポリエステルフィルムを得た。また、得られた形状転写用二軸配向ポリエステルフィルムの樹脂層面にCAP1(市販のセルロースアセテートプロピオネート( アセチル基置換度+ プロピオニル基置換度:2.5、重量平均分子量:180000、Mw/Mn:3.0)を100質量部と、トリフェニルホスフェートを8質量部と、エチルフタリルエチルグリコレートを2質量部と、塩化メチレンを360質量部と、エタノールを60質量部と、UVA1(チヌビン109( チバ・ジャパン(株)製))を0.5質量部と、UVA2(チヌビン171( チバ・ジャパン(株)製))を0.5質量部を混合した塗剤をバーコーターで膜厚20μmとなるように塗布した。続いて、25℃ の乾燥風で溶媒を乾燥除去し、形状転写用二軸配向ポリエステルフィルム上の塗剤を硬化させた後、樹脂組成物層(M)を剥離して、セルロースアセテートプロピオネートからなる樹脂組成物膜(M)を得た。得られた樹脂組成物膜(M)の物性および評価結果を表1に示す。
【0138】
(実施例8)
押出機E1、E2の2台を用い、280℃に加熱された押出機E1には、P層原料として、PETペレット(原料-1)を83質量部、平均粒径0.3μmのコロイダルシリカ粒子含有ペレット(原料-2a)17質量部を180℃で3時間減圧乾燥した後に供給した。同じく280℃に加熱された押出機E2には、L層原料として、PETペレット(原料-1)を180℃で3時間減圧乾燥した後に供給した。これらを2層積層するべくTダイ中で積層厚み比(P層|L層)=1|5とし、L層側がキャストドラム面側になるように合流させ、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化し、積層未延伸フィルムを作製し、この積層未延伸フィルムを長手方向に60℃~100℃に加熱された延伸ロール群へと導き延伸操作によりトータル3.5倍に延伸を行う。その後、フィルムをテンターへと導き80℃の予熱を加えた後、90℃、110℃、130℃に温度設定された長さが均等な3区間にて各区間にて1.6倍ずつ、段階昇温を行いながら延伸を行い幅方向にトータル4.1倍の延伸を施し、定長下235℃で熱処理を20秒間施し、幅方向に弛緩処理を5%施した。形状転写用樹脂層の厚みが80nm、フィルム厚み16μmの形状転写用二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
得られた二軸配向ポリエステルフィルムのL層の表面上に樹脂層(X)を塗設するため、表1に示した各種樹脂成分の形状転写用樹脂組成物をバーコーターを用いて塗布して温度100℃で乾燥した。得られた形状転写用二軸配向ポリエステルフィルムの物性は表1の通りである。
【0139】
(比較例1)
L層に用いる原料をPETペレット(原料-1)を83質量部、平均粒径0.06μmのコロイダルシリカ粒子含有ペレット(原料-2b)17質量部とした。L層表面に樹脂層を塗設しない以外はすべて実施例1と同様にして厚み16μmの形状転写用二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸配向ポリエステルフィルムのL層面上に実施例5と同じ樹脂組成物を塗布して、セルロースアセテートプロピオネートからなる樹脂組成物膜(M)を得た。得られた樹脂組成物膜(M)の物性および評価結果を表1に示す。