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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033736
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】塗料組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 175/04 20060101AFI20240306BHJP
【FI】
C09D175/04
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137513
(22)【出願日】2022-08-31
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】300075348
【氏名又は名称】日本ペイント・インダストリアルコーティングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 環
(74)【代理人】
【識別番号】100088801
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 宗雄
(72)【発明者】
【氏名】石角 誠文
(72)【発明者】
【氏名】肥田 敬治
(72)【発明者】
【氏名】桑原 伸太郎
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038DG061
4J038DG272
4J038KA03
4J038KA08
4J038MA09
4J038NA04
4J038NA09
4J038NA12
4J038NA26
4J038PA18
(57)【要約】
【課題】本開示は、ポットライフが良好であって、耐水密着性、可とう性及び耐食性に優れる塗膜を実現可能な塗料組成物の提供を目的とする。
【解決手段】本開示の塗料組成物は、主剤(I)及び硬化剤(II)を含む塗料組成物であって、
前記主剤(I)及び前記硬化剤(II)の少なくとも一方が顔料(C)を含み、
前記主剤(I)は、ポリアミン化合物(A)を含み、
前記硬化剤(II)は、ポリイソシアネート化合物(B)を含み、
前記ポリアミン化合物(A)は、アスパラギン酸エステルアミン(A1)を含み、
前記ポリイソシアネート化合物(B)は、アロファネート基含有ポリイソシアネート化合物(B1)を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主剤(I)及び硬化剤(II)を含む塗料組成物であって、
前記主剤(I)及び前記硬化剤(II)の少なくとも一方が顔料(C)を含み、
前記主剤(I)は、ポリアミン化合物(A)を含み、
前記硬化剤(II)は、ポリイソシアネート化合物(B)を含み、
前記ポリアミン化合物(A)は、アスパラギン酸エステルアミン(A1)を含み、
前記ポリイソシアネート化合物(B)は、アロファネート基含有ポリイソシアネート化合物(B1)を含む、塗料組成物。
【請求項2】
前記アスパラギン酸エステルアミン(A1)は、
以下の式(I):
【化1】
[式(I)中、
は、2価のC1-80炭化水素基から選ばれる1種を表し、
は、互いに独立して、C1-20炭化水素基を表す。]
で表される、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項3】
前記アロファネート基含有ポリイソシアネート化合物(B1)は、以下の式(II):
【化2】
[式(II)中、
は、C1-20アルキレン基を表す。
は、C1-20アルキル基を表す。]
で表される、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項4】
前記アロファネート基含有ポリイソシアネート化合物(B1)の含有率が、前記ポリイソシアネート化合物(B)の総量100モル%中、50モル%以上である、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項5】
前記顔料(C)は、無機顔料及び/又は有機顔料を含む、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項6】
前記塗料組成物中における前記顔料(C)の顔料体積濃度が、10体積%以上40体積%以下である、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項7】
前記ポリイソシアネート化合物(B)に含まれるイソシアネート基の当量の合計(NCO)と、前記ポリアミン化合物(A)に含まれるアミノ基の当量の合計(NH)との比(NCO/NH)が、0.5以上2.0以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載の塗料組成物。
【請求項8】
脱水剤を更に含む、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項9】
アニオン性基及びカチオン性基を有する化合物を更に含む、請求項1に記載の塗料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料組成物、詳細には、溶剤系のウレア樹脂形成用塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン樹脂組成物は、耐摩耗性、屈曲性、可撓性、柔軟性、加工性、接着性、耐薬品性等の諸物性に優れ、且つ各種加工法への適性にも優れるため、電子機器部材、衣料、家具・家電、日用雑貨、建築・土木、及び自動車部材へのコーティング材、インキ、接着剤、塗料等の樹脂成分として、又はフィルム、シート等の各種成形体として広く使用されている。
【0003】
前記コーティング材及び塗料の分野においては、得られる塗膜(コーティング)の強度や耐久性をより向上させることが求められている。しかしながら、従来のポリウレタン樹脂から得られる塗膜は、柔軟性には優れるものの、強度(抗張力)を求められる分野においては要求品質を満足することが困難であった。
【0004】
ウレア結合(ポリアミン化合物とポリイソシアネート化合物とが反応して形成される)は、ウレタン結合と比較して反応性が高いため硬化時間を短くでき、その結合力が強いため耐久性に優れるという性質を有している。そのため、コーティング材及び塗料の分野においてもウレア結合を有する樹脂の応用が期待される。
【0005】
しかしながら、ポリアミン化合物とポリイソシアネート化合物との反応は、反応速度(硬化速度)が極めて速いため、従来の混合装置によって行うことは困難である。このため、この反応は、衝突混合ガン等の特殊設備を用いて行われており、工業的に利用することは極めて難しい状態にある。
【0006】
前記反応速度を制御するために、様々な検討がされている。
例えば、特許文献1(特開2002-80555号公報)には、有機ポリイソシアネートを含有するA液と、平均分子量200~10000のポリオキシアルキレンポリアミン及びアルキル基置換芳香族ポリアミンを含有するB液を反応させてなる2液硬化型樹脂について記載されている。
【0007】
また、脂肪族ポリアミン化合物を用いる場合に比べて、芳香族ポリアミン化合物を用いるとある程度反応時間が長くなる、すなわち可使時間(ポットライフともいう)を長くできることに着目した検討もなされている。例えば、特許文献2(特開2009-242600号公報)には、末端イソシアネートプレポリマー、芳香族アミン、親水性シリカ及び硬化促進剤を含む、ウレアウレタン樹脂組成物について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002-80555号公報
【特許文献2】特開2009-242600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、本発明者らの検討によれば、ウレア結合の形成反応の速度の制御には更に検討が必要であり、且つ、得られる塗膜が要求される伸び率や機械的強度等の諸物性に応えらないという課題も生じつつある。例えば、特許文献2にあるような芳香族アミン化合物を用いた場合には、得られる塗膜の耐候性が良好でなく、外装用途等には使用できないという課題があった。
【0010】
本開示は、上記課題に鑑みてなされたものであり、ポットライフが良好であって、耐水密着性、可とう性及び耐食性に優れる塗膜を実現可能な塗料組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示は、以下の[1]~[9]を提供する。
[1]
主剤(I)及び硬化剤(II)を含む塗料組成物であって、
前記主剤(I)及び前記硬化剤(II)の少なくとも一方が顔料(C)を含み、
前記主剤(I)は、ポリアミン化合物(A)を含み、
前記硬化剤(II)は、ポリイソシアネート化合物(B)を含み、
前記ポリアミン化合物(A)は、アスパラギン酸エステルアミン(A1)を含み、
前記ポリイソシアネート化合物(B)は、アロファネート基含有ポリイソシアネート化合物(B1)を含む、塗料組成物。
前記アスパラギン酸エステルアミン(A1)は、
以下の式(I):
【化1】
[式(I)中、
は、2価のC1-80炭化水素基から選ばれる1種を表し、
は、互いに独立して、C1-20炭化水素基を表す。]
で表される、[1]に記載の塗料組成物。
[3]
前記アロファネート基含有ポリイソシアネート化合物(B1)は、以下の式(II):
【化2】
[式(II)中、
は、C1-20アルキレン基を表す。
は、C1-20アルキル基を表す。]
で表される、[1]又は[2]に記載の塗料組成物。
[4]
前記アロファネート基含有ポリイソシアネート化合物(B1)の含有率が、前記ポリイソシアネート化合物(B)の総量100モル%中、50モル%以上である、[1]~[3]のいずれか1つに記載の塗料組成物。
[5]
前記顔料(C)は、無機顔料及び/又は有機顔料を含む、[1]~[4]のいずれか1つに記載の塗料組成物。
[6]
前記塗料組成物中における前記顔料(C)の顔料体積濃度が、10体積%以上40体積%以下である、[1]~[5]のいずれか1つに記載の塗料組成物。
[7]
前記ポリイソシアネート化合物(B)に含まれるイソシアネート基の当量の合計(NCO)と、前記ポリアミン化合物(A)に含まれるアミノ基の当量の合計(NH)との比(NCO/NH)が、0.5以上2.0以下である、[1]~[6]のいずれか1つに記載の塗料組成物。
[8]
脱水剤を更に含む、[1]~[7]のいずれか1つに記載の塗料組成物。
[9]
アニオン性基及びカチオン性基を有する化合物を更に含む、[1]~[8]のいずれか1つに記載の塗料組成物。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、ポットライフが良好であって、耐水付着性、可とう性及び耐食性に優れる塗膜を実現可能な塗料組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
主剤(I)及び硬化剤(II)を含む塗料組成物であって、
主剤(I)及び硬化剤(II)の少なくとも一方が顔料(C)を含み、
前記主剤(I)は、ポリアミン化合物(A)を含み、
前記硬化剤(II)は、ポリイソシアネート化合物(B)を含み、
前記ポリアミン化合物(A)は、アスパラギン酸エステルアミン(A1)を含み、
前記ポリイソシアネート化合物(B)は、アロファネート基含有ポリイソシアネート化合物(B1)を含む。
【0014】
本開示の塗料組成物は、ポットライフが良好であって、耐水付着性、可とう性及び耐食性に優れる塗膜を実現し得る。本開示は、特定の理論に限定して解釈されるべきではないが、本開示の塗料組成物がかかる効果を奏し得る理由は、以下のように考えられる。
【0015】
すなわち、本開示の塗料組成物では、ポリアミン化合物(A)とポリイソシアネート化合物(B)との反応により、ポリウレア化合物が形成され、塗膜が形成される。ポリアミン化合物(A)とポリイソシアネート化合物(B)との反応は、アミノ基によるイソシアネート基の炭素原子への求核反応により開始されると考えられる。本開示の塗料組成物は、ポリアミン化合物(A)として、アスパラギン酸エステルアミン(A1)を用いており、含まれる2個のエステル基により、アミノ基の求核性が抑制され得る。他方、アロファネート基含有ポリイソシアネート化合物(B1)は、化合物としては直鎖に近い構造を有するものの、アロファネート基に含まれる水素原子と酸素原子とが相互作用し、凝集力を発揮し得ると考えられる。本開示の塗料組成物では、かかるポリアミンとポリイソシアネートと顔料(C)を含むことでポットライフが良好となり得、更に、塗膜の形成過程において、アスパラギン酸エステルアミン(A1)とアロファネート基含有ポリイソシアネート化合物(B1)により形成されるポリウレア構造を顔料(C)が支えることで、耐水性、可とう性及び耐食性に優れる塗膜を実現し得ると考えられる。
【0016】
[ポリアミン化合物(A)]
ポリアミン化合物(A)は、1分子中に、アミノ基を2個以上有する化合物を意味し、好ましくは1級アミノ基及び2級アミノ基から選ばれる1種又は2種以上を合計で2個以上有する化合物を意味する。本開示のポリアミン化合物(A)は、アスパラギン酸エステルアミン(A1)を含む。
【0017】
アスパラギン酸エステルアミン(A1)は、アスパラギン酸のカルボキシ基がエステル化された構造を含むアミン化合物であり、好ましくは、2個のアスパラギン酸がそれぞれエステル化され、アミノ基の窒素原子が、それぞれ2価の有機基に結合している化合物であり得る。
【0018】
アスパラギン酸エステルアミン(A1)を用いることで、ポットライフが良好になり得る。本開示は、特定の理論に限定して解釈されるべきではないが、ポットライフが良好になる理由は、以下のように考えられる。すなわち、ポリアミン化合物(A)と、ポリイソシアネート化合物(B)との反応は、アミノ基による、イソシアネート基の炭素原子への求核反応が関与していると考えられる。そのため、かかる反応を抑制することで、ポットライフが良好になり得ると考えられる。アスパラギン酸エステルアミン(A1)では、第2級アミノ基に-CH(COOR)-CH-COORが結合している。そのため、第2級アミノ基は、かかる基による立体障害の影響を受け、イソシアネート基への求核反応が抑制され得ると考えられる。
【0019】
かかるアスパラギン酸エステルアミン(A1)は、好ましくは、
以下の式(I):
【0020】
【化3】
【0021】
[式(I)中、
は、2価のC1-80炭化水素基から選ばれる1種を表し、
は、互いに独立して、C1-20炭化水素基を表す。]
で表され得る。
【0022】
更に、式(I)で表される化合物において、Rが環構造(特に、脂環構造)を有する場合、式(I)の第2級アミノ基は、-CH(COOR)-CH-COORとRの環構造(特に、脂環構造)に囲まれるため、立体障害によるアミノ基の求核反応抑制効果が更に発揮されやすくなると考えられる。
【0023】
で表される2価の炭化水素基は、好ましくは、2価の脂肪族炭化水素基、2価の脂環式炭化水素基、2価の芳香族炭化水素基、又は、2価の脂肪族炭化水素基、2価の脂環式炭化水素基及び2価の芳香族炭化水素基から選ばれる2種以上を組み合わせた基であり得る。また、Rで表されるC1-80炭化水素基は、好ましくはC1-30炭化水素基、より好ましくはC1-20炭化水素基であり得る。
【0024】
で表される2価の脂肪族炭化水素基は、好ましくは、アルキレン基又はアルケニレン基であり、より好ましくは、アルキレン基であり得る。Rで表される2価の脂肪族炭化水素基は、直鎖又は分枝鎖のいずれであってもよく、分枝鎖であることが好ましい。Rで表される2価の脂肪族炭化水素基の炭素原子数は、好ましくは1~30、より好ましくは1~20、更に好ましくは1~10であり得る。
【0025】
で表される2価の脂肪族炭化水素基としては、例えば、-CH-、-CHCH-、-CHCHCH-、CH(CH)CH-、-C(CH-、-CHCHCHCH-、-CH(CH)CHCH-、-CHCH(CH)CH-、-C(CHCH-、-CHCHCHCHCH-、-CH(CH)CHCHCH-、-CHCH(CH)CHCH-、-C(CHCHCH-、CHC(CHCH-、-CHCHCHCHCHCH-、-CH(CH)CHCHCHCH-、-CHCH(CH)CHCHCH-、-CHCHCH(CH)CHCH-、-C(CHCHCHCH-、-CHC(CHCHCH-等が挙げられる。
【0026】
で表される2価の脂環式炭化水素基は、単環であっても多環であってもよく、多環の場合、橋かけ環を形成していてもよい。Rで表される2価の脂環式炭化水素基は、好ましくは、シクロアルキレン基又はシクロアルケニレン基であり、より好ましくは、シクロアルキレン基であり得る。Rで表される2価の脂環式炭化水素基の炭素原子数は、好ましくは3~30、より好ましくは4~20、更に好ましくは5~10であり得る。
【0027】
で表される2価の脂環式炭化水素基としては、シクロヘキサンジイル基、メチルシクロヘキサンジイル基、イソホロンジイル基等が挙げられる。
【0028】
で表される2価の芳香族炭化水素基は、単環であっても多環であってもよく、多環の場合、2以上の環は、縮環していてもよい。Rで表される2価の芳香族炭化水素基炭素原子数は、好ましくは6~30、より好ましくは6~20、更に好ましくは6~10であり得る。
【0029】
で表される2価の芳香族炭化水素基としては、フェニレン基、トリレン基、キシリレン基、ナフチレン基等が挙げられる。
【0030】
2価のC1-80脂肪族炭化水素基、2価のC3-80脂環式炭化水素基及び2価のC6-20芳香族炭化水素基から選ばれる2種以上を組み合わせた2価の基としては、2価のC1-80脂肪族炭化水素基と2価のC3-80脂環式炭化水素基とを組み合わせた2価の基;2価のC1-80脂肪族炭化水素基と2価のC6-80芳香族炭化水素基とを組み合わせた2価の基が好ましい。
【0031】
2価のC1-80脂肪族炭化水素基と2価のC3-80脂環式炭化水素基とを組み合わせた2価の基としては、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイル基、2,2’-ジメチルメチレンビスシクロヘキサン-4,4’-ジイル基等が挙げられる。
2価のC1-80脂肪族炭化水素基と2価のC6-80芳香族炭化水素基とを組み合わせた2価の基としては、ジフェニルメタン-4,4’-ジイル基、2,2-ジフェニルプロパン-4,4’-ジイル基等が挙げられる。
【0032】
としては、2価のC1-80脂肪族炭化水素基、2価のC3-80脂環式炭化水素基、又は、2価の脂肪族炭化水素基と2価のC3-80脂環式炭化水素基とを組み合わせた2価の基が好ましい。かかる2価の炭素原子数は、好ましくは4~80、より好ましくは4~30、更に好ましくは4~20であり得る。Rが上記の基であると、耐光性(塗膜の耐黄変性)が良好である。また、Rが脂肪族炭化水素基であると、塗装膜の乾燥性が良好であり得、Rが脂環式炭化水素基を含む基であると、ポットライフが良好になり得る。
【0033】
で表される炭化水素基は、好ましくは、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、又は、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基から選ばれる2種以上を組み合わせた基であり得る。Rで表されるC1-20炭化水素基は、好ましくはC1-10炭化水素基、より好ましくはC1-5炭化水素基であり得る。
【0034】
で表される脂肪族炭化水素基は、好ましくは、アルキル基であり得る。Rで表される脂肪族炭化水素基は、直鎖又は分枝鎖のいずれであってもよい。Rで要される脂肪族炭化水素基の炭素原子数は、好ましくは1~20、より好ましくは1~10、更に好ましくは1~5であり得る。
【0035】
で表される脂肪族炭化水素基としては、例えば、-CH、-CHCH、-CHCHCH、-CH(CH、-CHCHCHCH、-CHCH(CH、-CH(CH)CHCH等が挙げられる。
【0036】
で表される脂環式炭化水素基は、単環であっても多環であってもよく、多環の場合、橋かけ環を形成していてもよい。Rで表される脂環式炭化水素基は、好ましくは、シクロアルキル基又はシクロアルケニル基であり、より好ましくは、シクロアルキル基であり得る。Rで表される脂環式炭化水素基の炭素原子数は、好ましくは3~20、より好ましくは3~15、更に好ましくは4~10であり得る。
【0037】
で表される脂環式炭化水素基としては、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0038】
で表される芳香族炭化水素基は、単環であっても多環であってもよく、多環の場合、2以上の環は、縮環していてもよい。Rで表される芳香族炭化水素基炭素原子数は、好ましくは6~20、より好ましくは6~150、更に好ましくは6~10であり得る。
【0039】
で表される2価の芳香族炭化水素基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0040】
脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基から選ばれる2種以上を組み合わせた基としては、脂肪族炭化水素基と脂環式炭化水素基とを組み合わせた2価の基;脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とを組み合わせた基が好ましい。かかる脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基から選ばれる2種以上を組み合わせた基の炭素原子数は、好ましくは4~30、より好ましくは4~10であり得る。
【0041】
脂肪族炭化水素基と脂環式炭化水素基とを組み合わせた基としては、シクロヘキシルメチル基、メチルシクロヘキシルメチル基等が挙げられる。
脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とを組み合わせた2価の基としては、ベンジル基、フェニルエチル基等が挙げられる。
【0042】
としては、C1-20脂肪族炭化水素基又はC3-20脂環式炭化水素基が好ましく、C1-20脂肪族炭化水素基がより好ましい。Rが脂肪族炭化水素基又は脂環式炭化水素基であると、耐光性(塗膜の耐黄変性)が良好であり得る。また、Rが脂肪族炭化水素基であると、塗装膜の乾燥性が良好であり得、Rが脂環式炭化水素基であること、ポットライフが良好であり得る。
【0043】
式(I)で表される化合物としては、例えば、以下の化合物が挙げられる。
【0044】
【化4】
【0045】
【化5】
【0046】
【化6】
【0047】
アスパラギン酸エステルアミン(A1)としては、市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、デスモフェンNH1220、NH1420、NH1520(以上、いずれも住化コベストロウレタン社製)等が挙げられる。
【0048】
アスパラギン酸エステルアミン(A1)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0049】
アスパラギン酸エステルアミン(A1)の重量平均分子量は、好ましくは150~10,000、より好ましくは200~10,000、更に好ましくは220~4,000であり得る。アスパラギン酸エステルアミン(A1)の重量平均分子量が前記範囲内にあることにより、得られる塗料組成物の反応速度をより抑制することができる。また、得られる塗膜の耐久性をより向上させることができる。なお、本開示において重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算した値である。
【0050】
アスパラギン酸エステルアミン(A1)の含有率は、アミン化合物(A)の総量100質量%に対して、好ましくは80質量%以上100質量%以下、より好ましくは90質量%以上100質量%以下、更に好ましくは95質量%以上100質量%以下である。
【0051】
前記アミン化合物(A)は、アスパラギンエステル酸アミン(A1)以外に、その他のアミン化合物(A2)を含んでいてもよい。かかるアミン化合物(A2)は、アスパラギン酸エステルアミン(A1)とは異なるアミン化合物であればよく、例えば、脂肪族ポリアミン化合物、脂環式ポリアミン化合物、芳香族ポリアミン化合物等が挙げられる。
【0052】
本開示において、脂肪族ポリアミン化合物は、分子構造中に環構造を有しないポリアミン化合物を意味する。かかる脂肪族ポリアミン化合物としては、例えば、アルキレンポリアミン、ポリアルキレンポリアミン、その他の脂肪族ポリアミン等が挙げられる。
【0053】
前記アルキレンポリアミンとしては、アルキレンポリアミン化合物として、メチレンジアミン、エチレンジアミン、1,2-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン等が挙げられる。
前記ポリアルキレンポリアミンとして、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサメチレンテトラミン等が挙げられる。
前記その他の脂肪族ポリアミンとしては、例えば、テトラキス(2-アミノエチルアミノメチル)メタン、1,3-ビス(2’-アミノエチルアミノ)プロパン、トリエチレン-ビス(トリメチレン)ヘキサミン、ビス(3-アミノエチル)アミン、ビスヘキサメチレントリアミン、ポリオキシプロピレンジアミン、トリメチロールプロパンポリ(オキシプロピレン)トリアミン、グリセリルポリ(オキシプロピレン)トリアミン等のオキシアルキレン基を有するポリアミン化合物が挙げられる。
【0054】
本開示において、脂環式ポリアミン化合物は、分子構造中に脂環構造を有するポリアミン化合物を意味する。
【0055】
かかる脂環族ポリアミン化合物としては、例えば、1,4-シクロヘキサンジアミン、4,4’-メチレンビスシクロヘキシルアミン、4,4’-イソプロピリデンビスシクロヘキシルアミン、2,5(2,6)-ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン(例えば、ノルボルナジアミン)、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ジアミノジシクロヘキシルメタン(例えば、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン等)、イソホロンジアミン、メンセンジアミン(MDA)、1,4-ビス-(8-アミノプロピル)-ピペラジン、ピペラジン-1,4-ジアザシクロヘプタン、1-(2’-アミノエチルピペラジン)、1-[2’-(2’’-アミノエチルアミノ)エチル]ピペラジン、1,11-ジアザシクロエイコサン、1,15-ジアザシクロオクタコサン等が挙げられる。
【0056】
芳香族ポリアミン化合物としては、例えば、ビス(アミノアルキル)ベンゼン、ビス(アミノアルキル)ナフタレン、ベンゼン環に結合した2個以上の1級アミノ基を有する芳香族ポリアミン化合物、及びその他の芳香族系ポリアミン化合物等が挙げられる。
【0057】
芳香族ポリアミン化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、ビス(シアノエチル)ジエチレントリアミン、o-キシリレンジアミン、m-キシリレンジアミン(MXDA)、p-キシリレンジアミン、フェニレンジアミン、ナフチレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジエチルフェニルメタン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,4’-ジアミノビフェニル、2,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ジアミノビフェニル、ビス(アミノメチル)ナフタレン、ビス(アミノエチル)ナフタレン、ポリテトラメチレンオキシド-ジ-p-アミノベンゾエート等が挙げられる。
【0058】
ポリアミン化合物(A)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0059】
本開示の塗料組成物におけるポリアミン化合物(A)の含有量は、塗料組成物の固形分100質量部中、好ましくは10質量部以上80質量部以下、より好ましくは15質量部以上70質量部以下、更に好ましくは20質量部以上60質量部以下であり得る。
本開示において、塗料組成物の固形分は、主剤(I)の固形分及び硬化剤(II)の固形分の合計を意する。また、本開示において、主剤(I)及び硬化剤(II)の固形分は、JIS K 5601-1-2:2008に定義される加熱残分を意味し、固形分率は、105℃で60分間加熱した後の残差の質量の、元の質量に対する百分率を測定することにより算出される。
【0060】
本開示の塗料組成物は、ポリアミン化合物(A)とポリイソシアネート化合物(B)との反応により得られるポリウレア化合物が塗膜形成樹脂として作用し、塗膜が形成される。ポリアミン化合物(A)とポリイソシアネート化合物(B)との反応性は高いため、結合力が強く、得られる塗膜の耐久性が良好になり得る。一方、ポリウレタン化合物は、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物との反応により形成され得るが、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とは、ポリアミン化合物とポリイソシアネート化合物と比較して、反応性が低く、得られる塗膜の強度(抗張力)が十分に満足できるものとならない傾向がある。
【0061】
そのため、本開示の塗料組成物において、ポリオール化合物の含有量は抑制されていることが好ましく、例えば、ポリオール化合物の含有量は、ポリアミン化合物(A)100質量部に対して、好ましくは0質量部以上20質量部以下、より好ましくは0質量部以上10質量部以下、更に好ましくは0質量部以上5質量部以下であり得る。
【0062】
[その他のアミン化合物]
本開示の塗料組成物(具体的には、主剤(I))は、本発明の効果を損なわない範囲で、アミノ基を1つ有するアミン化合物を含んでいてもよい。
アミン化合物としては、特に限定されないが、例えば、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジイソブチルアミン、N-メチルヘキシルアミン、ジ-N-オクチルアミン、テトラ(アミノメチル)メタン、アスパラギン酸等を挙げることができる。これらのアミン化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0063】
[ポリイソシアネート化合物(B)]
ポリイソシアネート化合物(B)は、一分子中に、イソシアネート基を2以上有する化合物を意味する。
【0064】
ポリイソシアネート化合物(B)は、アロファネート基(-O-CO-N(-)-CO-NH-)を含むポリイソシアネート化合物(B1)(以下、「アロファネート基含有ポリイソシアネート化合物(B1)」ともいう)を含む。これにより、得られる塗膜の耐水密着性、可とう性及び耐食性が良好になり得る。本開示は、特定の理論に限定して解釈されるべきではないが、アロファネート基含有ポリイソシアネート化合物(B1)を用いることで、得られる塗膜の耐水密着性、可とう性及び耐食性が良好になる理由は、以下のように考えられる。
【0065】
すなわち、アロファネート基含有ポリイソシアネート化合物(B1)では、イソシアネート基は、反応性基の数が少なく、得られる塗膜において、架橋点の数が抑制され得る。そのため、塗膜の柔軟性(可とう性)を向上できると考えられる。一方、アロファネート基では、末端の酸素原子と水素原子が、水素結合し得るため、塗膜の凝集力は高くなると考えられる。そのため、耐水密着性、耐食性が良好になり得ると考えられる。
【0066】
前記アロファネート基含有ポリイソシアネート化合物(B1)は、1分子中に、アロファネート基(-O-CO-N(-)-CO-NH-)と、2個以上のイソシアネート基とを有する化合物であり、好ましくは、以下の式(II):
【0067】
【化7】
【0068】
[式(II)中、
は、C1-20アルキレン基を表す。
は、C1-20アルキル基を表す。]
で表される。
【0069】
で表されるC1-20アルキレン基は、直鎖又は分枝鎖のいずれであってもよく、直鎖であることが好ましい。Rは、好ましくは、直鎖又は分枝鎖のC2-10アルキレン基、より好ましくは直鎖のC3-8アルキレン基であり得る。
【0070】
で表されるC1-20アルキル基は、直鎖又は分枝鎖のいずれであってもよく、直鎖であることが好ましい。Rは、好ましくは、直鎖又は分枝鎖のC2-10アルキル基、より好ましくは直鎖のC3-8アルキル基であり得る。
【0071】
アロファネート基含有ポリイソシアネート化合物(B1)としては、市販品を用いることができ、例えば、デスモジュール31100(住化コベストロウレタン社製)、コロネート2770(東ソー社製)、デュラネートA201H(旭化成社製)等が挙げられる。
【0072】
アロファネート基含有ポリイソシアネート化合物(B1)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0073】
アロファネート基含有ポリイソシアネート化合物(B1)の含有量は、ポリイソシアネート化合物(B)の総量100モル中、好ましくは50モル%以上100モル%以下、より好ましくは60モル%以上100モル%以下、更に好ましくは80モル%以上100モル%以下である。上記範囲内にあることで、得られる塗膜の耐水密着性、可とう性及び耐食性が更に良好になる利点がある。
【0074】
前記ポリイソシアネート化合物(B)は、前記塗膜の物性に影響を及ぼさない範囲において、その他のポリイソシアネート化合物(B2)を含んでいてもよい。かかるポリイソシアネート化合物(B2)は、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、及び、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート又は芳香族ポリイソシアネートの多量体等が挙げられ、1種又は2種以上を含んでいてもよい。
【0075】
前記脂肪族ポリイソシアネートとしては、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
前記脂環式ポリイソシアネートとしては、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,2-シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ノルボルナンジイソシアネートメチル等が挙げられる。
前記芳香族ポリイソシアネートとしては、キシリレンジイソシアネート(XDI)、2,4-トリレンジイソシアネート(TDI)、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、メタキシリレンジイソシアネート(MXDI)等の芳香族イソシアネート等が挙げられる。
前記多量体としては、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート又は芳香族ポリイソシアネートのビュレット体、イソシアヌレート体、ウレトジオン体等が挙げられる。
【0076】
ポリイソシアネート化合物(B)に含まれるイソシアネート基は、変性されていてもよく、ポリイソシアネート化合物(B)は、かかるポリイソシアネート化合物の変性物も含み得る。更に、ポリイソシアネート化合物(B)に含まれるイソシアネート基によって架橋反応が生じてもよい。多量体であるポリイソシアネート化合物は、3官能以上であることから、複数のイソシアネート基のうち少なくとも1つが変性されていてもよく、また、少なくとも2つのイソシアネート基により架橋反応が生じてもよい。
【0077】
これらのポリイソシアネート化合物(B)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0078】
前記ポリイソシアネート化合物(B)に含まれるイソシアネート基の当量の合計(NCO)と、前記ポリアミン化合物(A)に含まれるアミノ基の当量の合計(NH)との比(NCO/NH)は、好ましくは0.5以上2.0以下、より好ましくは0.8以上1.2以下であり得る。当量比が前記の範囲内にあることにより、形成される塗膜の耐水性等が良好になるという利点がある。
【0079】
本開示の塗料組成物において、前記ポリアミン化合物(A)と前記ポリイソシアネート化合物(B)の合計の含有率は、塗料組成物の固形分100質量部中、好ましくは25質量部以上90質量部以下、より好ましくは40質量部以上90質量部以下、更に好ましくは50質量部以上80質量部以下であり得る。
【0080】
[顔料(C)]
本開示の塗料組成物は、顔料(C)を含む。顔料(C)を含むことで、ポリアミン化合物(A)とポリイソシアネート化合物(C)により形成されるポリウレア構造が支持され得ると考えられ、得られる塗膜の耐水密着性及び耐食性が良好になり得る。前記顔料(C)は、無機顔料及び/又は有機顔料を含むことが好ましい。
【0081】
前記無機顔料としては、タルク(例えば、表面処理タルク等)、クレー、炭酸カルシウム(例えば、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム等)、炭酸マグネシウム(例えば、沈降性硫酸バリウム等)、硫酸バリウム、ケイ酸、ケイ酸塩、酸化アルミニウム水和物、硫酸カルシウム、石膏、雲母状酸化鉄(MIO)、ガラスフレーク、スゾライト・マイカ、クラライト・マイカ等の体質顔料;酸化チタン、カーボンブラック、鉛白、黒鉛、硫化亜鉛、酸化亜鉛(亜鉛華)、酸化クロム、黄色ニッケルチタン、黄色クロムチタン、黄色酸化鉄、赤色酸化鉄、黒色酸化鉄、ウルトラマリンブルー等の着色顔料;モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸アルミニウム、亜鉛末(Zn)、リン酸亜鉛、アルミ粉(Al)等の防錆顔料が挙げられる。顔料(C)として、防錆顔料を含むことで、塗膜の耐食性を向上することができ、顔料(C)として、防錆顔料及び体質顔料を含むことで、塗膜の耐食性を一層向上することができる。また、上記体質顔料を、後述する粘性調整剤と併用することにより、本開示の塗料組成物の粘度及び粘性挙動、例えば粘度回復性を適切に調整でき、塗料組成物に対して適切なレベリングとタレ性を付与できる。これにより、得られる塗膜は、良好な塗膜外観を有し得る。
【0082】
前記有機顔料としては、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、キナクリドン類、アゾ系赤・黄色顔料等の着色顔料が挙げられる。
【0083】
顔料(C)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0084】
塗料組成物の顔料体積濃度(PVC)は、好ましくは10体積%以上40体積%以下、より好ましくは20体積%以上25体積%以下であり得る。PVCが前記範囲内にあることで、得られる塗膜の耐水密着性、可とう性及び耐食性の向上に効果がある。
【0085】
なお、本明細書における顔料体積濃度(PVC:PigmentVolumeConcentration)は、塗料組成物に含まれる各顔料の比重と配合量により求めた全顔料の体積(P)と、各樹脂不揮発分の比重と配合量により求めた樹脂の体積(R)から、下記式より求めることができる。
PVC(体積%)=P/(P+R)×100
本開示において、樹脂不揮発分は、ポリアミン化合物(A)及びポリイソシアネート化合物(B)の不揮発分を意味する。
【0086】
[その他の成分]
本開示の塗料組成物は、前記成分に加えて、必要に応じ、他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、塗料組成物において通常用いられる各種添加剤が挙げられる。各種添加剤としては、例えば、樹脂粒子、樹脂成分、タレ止め・沈降防止剤、硬化触媒(有機金属触媒)、色分れ防止剤、分散剤、消泡・ワキ防止剤、増粘剤、粘性調整剤、レベリング剤、ツヤ消し剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、消泡剤、表面調整剤、可塑剤、ピンホール防止剤、防錆剤、造膜助剤、脱水剤、界面活性剤、アニオン性基及びカチオン性基を有する化合物、有機溶剤等を挙げることができる。これらの構成要素の配合量は、本発明の効果を損なわない範囲で、適宜調整される。
【0087】
[粘性調整剤]
本開示の塗料組成物は、粘性調整剤を含むことが好ましい。粘性調整剤を用いることで、塗料組成物にチクソトロピー性を付与できる。また、混層、タレ等による塗膜外観の低下を低減できる。乾燥性と塗膜外観を両立する観点から、体質顔料と粘性調整剤とを併用することが好ましい。前記ポリアミン化合物(A)、ポリイソシアネート化合物(B)と合わせて、体質顔料及び粘性調整剤を用いることで、塗料の高せん断時の粘度を低くし、かつ粘度の回復性を遅くすることが可能となり、更に優れた塗膜外観を得ることができる。
【0088】
粘性調整剤としては、一般にチクソトロピー性を示すものを用いることができ、例えば、ポリオレフィンのコロイド状膨潤分散体等のポリオレフィン系粘性調整剤、脂肪酸アマイドの膨潤分散体、アマイド系脂肪酸、長鎖ポリアミノアマイドの燐酸塩等のポリアマイド系粘性調整剤、有機酸スメクタイト粘土、モンモリロナイト等の有機ベントナイト系粘性調整剤、ケイ酸アルミ、硫酸バリウム等の無機顔料、顔料の形状により粘性が発現する扁平顔料、架橋樹脂粒子及び非架橋樹脂粒子等が挙げられる。
【0089】
ポリオレフィン系粘性調整剤としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリエチレンを酸素等と接触させて得られる酸化ポリエチレン系、ポリプロピレンを酸素等と接触させて得られる酸化ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体を酸素等と接触して得られる酸化エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-無水マレイン酸共重合体、プロピレン-無水マレイン酸共重合体が挙げられ、酸化ポリエチレン、酸化ポリプロピレン、酸化エチレン-プロピレン共重合体が好ましく、酸化ポリエチレンがより好ましい。
【0090】
粘性調整剤として用いることができる酸化ポリエチレンとしては、具体的には、ディスパロンPF-911、ディスパロン4200-10、ディスパロン4200-20(楠本化成社製)等が挙げられる。
【0091】
粘性調整剤として用いることができるポリアマイド系粘性調整剤としては、例えば、脂肪酸アマイドを用いることができる。市販品として入手可能な脂肪酸アマイドとしては、粉末状態のものやペースト状態のものが知られている。ペースト状態のものは、一般にキシレンやアルコール等の溶剤によって希釈されている。
【0092】
上記脂肪酸アマイドの一例としては、下記式(IV)に示すような一般構造を有するジアマイドが挙げられる。
【0093】
【化8】
【0094】
[式(IV)中、
は、水酸基含有脂肪酸から水酸基及びカルボキシ基を除いた残基であり、好ましくはC1-20アルキレン基を表し、より好ましくは直鎖又は分枝鎖のC1-20アルキレン基、更に好ましくは直鎖又は分枝鎖のC1-10アルキレン基、一層好ましくは直鎖又は分枝鎖のC1-5アルキレン基を表す。
は、ジアミンからアミノ基を除いた残基であり、好ましくはC1-20アルキレン基を表し、より好ましくは直鎖又は分枝鎖のC1-20アルキル基、更に好ましくは直鎖又は分枝鎖のC1-10アルキレン基、一層好ましくは直鎖又は分枝鎖のC1-5アルキレン基を表す。]
【0095】
上記ジアマイドは、ジアミン(NH-R-NH)に水酸基含有脂肪酸(HO-R-COOH)を反応させることにより得られる化合物である。上記式(IV)において、Rのいずれか一方にOH基が結合していないような脂肪酸アマイドも粘性制御剤として知られており、本発明において用いることができるものである。
【0096】
本発明の塗料中に用いる脂肪酸アマイドとしては、上記のジアマイド及びポリアマイドの単体及び混合物が挙げられ、具体的には、ディスパロンNS-5025、ディスパロン6900-10X、ディスパロン6900-20X、ディスパロン6840-10X(いずれも楠本化成社製)フローノンHR-2(共栄社化学社製)等が挙げられる。
【0097】
[脱水剤]
本開示の塗料組成物は、脱水剤を更に含むことが好ましい。脱水剤を含むことで、塗料組成物のポットライフが向上し得る。特定の理論に限定して解釈されるべきではないが、脱水剤を含むことで、ポリイソシアネート化合物(B)のイソシアネート基と、塗料組成物中に含まれ得る水分や周囲環境の湿分等との反応が抑制されるため、塗料組成物のポットライフが向上し得ると考えられる。
【0098】
かかる脱水剤としては、物理的脱水剤及び化学的脱水剤のいずれであってもよく、物理的脱水剤が好ましい。物理的脱水剤としては、モレキュラーシーブ等の合成ゼオライト、シリカゲル、デシクレイ等の多孔体が挙げられ、化学的脱水剤としては、硫酸カルシウム、塩化カルシウム、酸化カルシウム等が挙げられる。
【0099】
脱水剤は、樹脂不揮発分100質量部に対して、好ましくは0質量部以上15質量部以下、より好ましくは0.3質量部以上10質量部以下であり得る。
【0100】
[アニオン性基及びカチオン性基を有する化合物]
本開示の塗料組成物は、アニオン性基及びカチオン性基を有する化合物を更に含むことが好ましい。該化合物を含むことで、塗料組成物のポットライフが向上し得る。特定の理論に限定して解釈されるべきではないが、アニオン性基及びカチオン性基を有する化合物を含むことで、アミン化合物(A)のアミノ基と、ポリイソシアネート化合物(B)のイソシアネート基との会合が抑制されるとともに、アミン化合物(A)のアミノ基の求核性もが抑制されるため、塗料組成物のポットライフが向上し得ると考えられる。本発明者らの検討によれば、アニオン性基のみを有する化合物、或いは、カチオン性基のみを有する化合物では、上記効果は得られ難い。
【0101】
前記アニオン性基としては、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等の酸基及びかかる酸基のエステル(すなわち、カルボン酸エステル、スルホン酸エステル及びリン酸エステル)が挙げられ、リン酸基又はリン酸エステルが好ましい。上記化合物におけるアニオン性基は、アンモニウム塩、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等の塩であってもよい。
【0102】
前記カチオン性基としては、無置換のアミノ基、モノ-又はジ-置換アミノ基、第4級アンモニウム基等が挙げられる。
【0103】
アニオン性基及びカチオン性基を有する化合物としては、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアクリル等のポリマー及び、前記ポリマーから選ばれる2種以上の共重合体等の高分子化合物に前記アニオン性基及びカチオン性基が結合している化合物が好ましい。
【0104】
前記アニオン性基及びカチオン性基を有する化合物の酸価は、5mgKOH/g以上200mgKOH/g以下、より好ましくは10mgKOH/g以上150mgKOH/g以下であり得る。
【0105】
前記アニオン性基及びカチオン性基を有する化合物のアミン価は、好ましくは5mgKOH/g以上であり、より好ましくは5mgKOH/g以上200mgKOH/g以下、より好ましくは20mgKOH/g以上150mgKOH/g以下であり得る。
【0106】
前記アニオン性基及びカチオン性基を有する化合物の重量平均分子量は、例えば200以上500,000以下であり得、好ましくは200以上100,000以下、より好ましくは200以上70,000以下であり得る。
【0107】
前記アニオン性基及びカチオン性基を有する化合物としては、市販品を用いてもよい。かかる市販品としては、ディスパロンPW-36、ディスパロンAQ-330(楠本化成社製);BYK-381、BYK-ES80、DISPERBYK-103、DISPERBYK-111、DISPERBYK-142、DISPERBYK-145、DISPERBYK-2001、DISPERBYK-2025、DISPERBYK-9076、ANTI-TERRA-203(ビックケミー・ジャパン社製);ソルスパース24000GR、ソルスパース32000、ソルスパース33000、ソルスパース34750、ソルスパース35100、ソルスパース35200、ソルスパース37500、ソルスパース39000(日本ルーブリゾール社製);アジスパーPB821、アジスパーPB822、アジスパーPB824、アジスパーPB881(味の素ファインテクノ社製)等を用いてよい。
【0108】
[有機溶剤]
有機溶剤としては、溶剤型塗料において通常用いられるものを含むことができる。このような溶剤として、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ソルベッソ100(エクソン化学社製)、メトキシブチルアセテート、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、石油エーテル、石油ナフサ等が挙げられる。
【0109】
有機溶剤の含有量は特に制限されるものではないものの、近年における環境保全及び環境負荷を考慮した量で用いるのがより好ましい。特に、本発明においては、塗料組成物が、本発明における塗膜形成樹脂、粘性調整剤、体質顔料を含むので、有機溶剤の使用量を、これまでの溶剤型塗料組成物と比べて大幅に低減できる。
【0110】
前記有機溶剤の含有率は、塗料組成物の合計100質量%中(主剤(I)及び硬化剤(II)の合計100質量%中)、好ましくは70質量%以下であり、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは50質量%以下であり得、0質量%以上であり、5質量%以上或いは12質量%以上であってもよい。
【0111】
本開示の塗料組成物は、主剤(I)及び硬化剤(II)を含む塗料組成物であり、2液硬化形の塗料組成物であり得る。前記主剤(I)は、ポリアミン化合物(A)を含み、前記硬化剤(II)は、ポリイソシアネート化合物(B)を含む。前記顔料(C)は、主剤(I)及び硬化剤(II)の少なくとも一方に含まれており、主剤(I)に含まれることが好ましい。また、前記その他の成分は、主剤(I)及び硬化剤(II)のいずれに含まれていてもよく、主剤(I)に含まれることが好ましい。
【0112】
[塗料組成物の製造方法]
本開示の塗料組成物は、主剤(I)及び硬化剤(II)を有する二液硬化型である。
主剤(I)及び硬化剤(II)は、それぞれに含まれる成分をそれぞれ当業者に知られた方法によって混合することによって調製することができる。かかる混合手段としては、例えば、ニーダー又はロール等を用いた混練混合手段、又は、サンドグラインドミル又はディスパー等を用いた分散混合手段等が挙げられる。
【0113】
主剤(I)及び硬化剤(II)は、使用前に混合して、通常の塗装方法により塗装してもよい。例えば、浸漬、刷毛、ローラー、ロールコーター、エアスプレー、エアレススプレー、カーテンフローコーター、ローラーカーテンコーター、ダイコーター等の一般に用いられている塗装方法等を挙げることができる。
また、2液混合ガンで、主剤(I)及び性硬化剤(II)をそれぞれガンまで送液し、ガン先で両者を混合する方法で塗装してもよい。
塗布方法は、これらは被塗物に応じて適宜選択することができる。
【0114】
本開示の塗料組成物を被塗物に塗装して硬化させることによって、被塗物上に塗膜、フィルム又はシートを形成することができる。
例えば、スプレー装置から塗料組成物を吐出することにより、被塗物に塗装し塗膜を形成し得る。剥離処理されたフィルム又はシート上に、塗料組成物を流延し、乾燥硬化してフィルム又はシートを形成してもよい。
硬化の際の温度は、好ましくは5℃以上150℃以下、より好ましくは20℃以上100℃以下であり得、硬化時間は、例えば、10分以上1,000時間以下であり得る。本開示の塗料組成物は、アスパラギン酸エステルアミン化合物(A1)、アロファネート基含有ポリイソシアネート化合物(B1)及び顔料(C)を含むことから、比較的低温で硬化し得る。
【0115】
被塗物として、例えば、金属基材、プラスチック基材及びこれらの複合基材、そして、木、ガラス、布、コンクリート、窯業系材料等が挙げられる。
金属基材として、例えば、鉄、鋼、銅、アルミニウム、スズ、亜鉛等の金属及びこれらの金属を含む合金等が挙げられる。金属基材は、亜鉛、銅、クロム等のメッキが施されていてもよく、また、クロム酸、リン酸亜鉛又はジルコニウム塩等の表面処理剤を用いた表面処理が施されていてもよい。更に、その上にプライマー塗装が施されていてもよい。
プラスチック基材として、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。これらのプラスチック基材は、プライマー塗装が施されていてもよい。
【0116】
本開示の塗料組成物から形成される塗膜は、1層であっても良好な保護機能及び装飾機能を有するが、下塗り塗膜の上に、本開示の塗料組成物を上塗り塗料として塗布してもよい。この場合、下塗り塗膜を形成する下塗り塗料としては、電着塗料やプライマー等の公知のものを用いることができる。また、上塗り塗料の下に、本開示の塗料組成物を下塗り塗料として塗布してもよく、この場合、上塗り塗料としては、中塗り塗料、ベース塗料及びクリヤー塗料等の公知のものを用いることができる。
【0117】
本開示の塗料組成物は、直接、被塗物に塗装してもよく、例えば、下塗り塗膜の上に、本開示の塗料組成物を上塗り塗料として塗装してもよい。
【実施例0118】
以下の実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。実施例中「部」及び「%」は、ことわりのない限り質量基準による。
【0119】
(実施例1)
<主剤の製造>
ポリアミン化合物(A-1)としてデスモフェンNH1520 53.31質量部、顔料(C-1)としてタイペークR-980 43.29質量部、顔料(C-2)としてNジュウタン 45.00質量部、顔料(C-3)として酸化亜鉛2種 12.00質量部及び溶剤(1)として酢酸ブチル 58.95部をディスパーでかくはん、混合し、混合物を得た。
次に、卓上式SGミル1500W型分散機(大平システム社製)に、得られた混合物全量とガラスビーズ(混合物の合計質量と同量)を入れ、顔料の粒子径が20μm以下となるまで顔料分散を実施し、顔料分散塗料を調製した。
更に、得られた顔料分散塗料212.55質量部に、添加剤(4)としてディスパロン6900-10X 5.19質量部及び添加剤(5)としてポリフローNo.85 1.23質量部を添加し、ディスパーを用いて均一になるまでかくはん、混合し、主剤(1)を得た。
【0120】
<硬化剤の製造>
ポリイソシアネート化合物(B1-1)としてデスモジュール31100を硬化剤(1)とした。
【0121】
<塗料組成物の製造>
上記より得られた主剤(1)及び硬化剤(1)を、前記ポリイソシアネート化合物(B-1)に含まれるイソシアネート基の総量(-NCO)と、前記ポリアミン化合物(A-1)に含まれるアミノ基の総量(-NH-)との比([NCO]/[NH])が1.0となるように、すなわち、前記主剤218.97質量部及び前記硬化剤39.09質量部を、ディスパーにより混合し、均一になるまでかくはんし、塗料組成物を得た。
【0122】
<評価用試験板の調製>
得られた主剤及び硬化剤を、下記表1に示される配合にてディスパーを用いて混合し、被塗物である鋼板(JIS G 3141、SPCC-SB鋼板、処理方法:PF-1077(リン酸鉄系処理剤)、TP技研社製)、70×150×0.8mm)の表面に、乾燥膜厚が40μmとなるようにエアスプレーガンを用いて塗装し、温度80℃で20分乾燥させた後、23℃で1週間乾燥させ、評価用試験板を得た。
【0123】
(実施例2~28、比較例1~6)
各成分の種類及び量を、表1~3に記載の種類及び量とした以外は実施例1と同様にして、塗料組成物を調製した。組成、諸特数値を表1~3に示す。なお、表中の配合量は有り姿の量(固形分及び液体成分の両方を含む量)を示す。
【0124】
[ポリアミン化合物(A)]
(ポリアミン化合物(A1))
(A1-1)デスモフェンNH1520、住化コベストロウレタン社製、脂環族2級ポリアミン(アスパラギン酸エステルアミン);固形分濃度:100質量%、重量平均分子量:585、アミン当量:290g/eq
(A1-2)デスモフェンNH1420、住化コベストロウレタン社製、脂環族2級ポリアミン(アスパラギン酸エステルアミン);固形分濃度:100質量%、重量平均分子量:555、アミン当量:276g/eq
(その他のポリアミン化合物)
(A1-3)フェイスパラティックF520、Feiyang社製、脂肪族2級ポリアミン(アスパラギン酸エステルアミン):固形分濃度:96質量%、重量平均分子量:582、アミン当量:290g/eq
(A2-4)JEFFAMINE D-2000、HUNTSMAN社製、脂肪族1級ポリアミン化合物(ポリオキシプロピレンジアミン);固形分濃度:100質量%、重量平均分子量:2,000、アミン当量:1,000g/eq
【0125】
[ポリイソシアネート化合物(B)]
(B1-1)デスモジュールN31100、住化コベストロウレタン社製、脂肪族イソシアネート化合物(HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)のアロファネート体);固形分濃度:100質量%、NCO含有量:20.0質量%
(B1-2)コロネート2770、東ソー社製、脂肪族イソシアネート化合物(HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)のアロファネート体);固形分濃度:100質量%、NCO含有量:19.4質量%
(B2-3)コロネートHXR、東ソー社製、脂肪族イソシアネート化合物(HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)のイソシアヌレート体);固形分濃度:100質量%、NCO含有量:21質量%
(B2-4)ミリオネートMR-200、東ソー社製、芳香族イソシアネート化合物(MDI(ジフェニルメタンジイソシアネート));固形分濃度:100質量%、NCO含有量:31.25質量%
(B2-5)デスモジュールN3400、住化コベストロウレタン社製、脂肪族イソシアネート化合物(HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)のウレトジオン体);固形分濃度:100質量%、NCO含有量:21.8質量%
(B2-6)デスモジュール3200、住化コベストロウレタン社製、脂肪族イソシアネート化合物(HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)のビウレット体);固形分濃度:100質量%、NCO含有量:23.0質量%
【0126】
[顔料(C)]
(C-1):タイペークR-980:石原産業社製、無機顔料(二酸化チタン)
(C-2):Nジュウタン:丸尾カルシウム社製、無機顔料(炭酸カルシウム)
(C-3):酸化亜鉛2種:堺化学工業社製、無機顔料(酸化亜鉛)
(C-4):Novoperm Orange HL70:クラリアント社製、有機顔料(ベンズイミダゾロン系顔料)
【0127】
[その他の成分]
溶剤:
溶剤(1):酢酸ブチル:JNC社製
溶剤(2):酢酸エチル:JNC社製
添加剤:
添加剤(1):モレキュラーシーブ4A:ユニオン昭和社製、合成ゼオライト
添加剤(2):BYK-ES80(酸価:140mgKOH/g、アミン価:140mgKOH/g):BYK社製、固形分濃度:80質量%
添加剤(3):DISPERBYK-2001(酸価:19mgKOH/g、アミン価:29mgKOH/g):BYK社製、固形分濃度:46質量%
添加剤(4):ディスパロン6900-10X:楠本化成工業社製、ポリアマイド系粘性調整剤(脂肪酸アマイド)、固形分濃度:10質量%
添加剤(5):ポリフローNo.85:共栄社化学社製、ポリマー系レベリング剤(アクリル系)、固形分濃度:83質量%
【0128】
[評価項目]
(ポットライフ)
実施例及び比較例で得られた主剤及び硬化剤を表1に示す配合で混合し、ディスパーで1分間かくはんした(塗料混合物)。かくはん終了後、直ちに粘度カップNK2(アネスト岩田社製)を用いて、塗料混合物の粘度を測定した(初期粘度(秒))。その後、塗料混合物を放置し、5分ごとに粘度を測定し、塗料混合物の粘度が初期粘度の2倍となる時間をポットライフ(分)とした。5分以上を合格とした。塗料温度は23℃とした。
【0129】
(耐水密着性)
実施例及び比較例で得られた各試験板を室温の水中に500時間浸漬した後、その試験板を水中から取り出し、表面の水分を除去した後、ASTM D3359 Method Bに準拠した方法により、塗膜の密着性を評価した。
試験板の塗膜に、カッターにより1mmの間隔で縦横11本ずつの切れ目を入れ、その上にセロハンテープ(登録商標)(ニチバン社製)を貼付してはがし、100個のマス目のうち、残存したマス目の数をカウントした(碁盤目試験)。評価基準は下記のとおりである。△以上を合格とした。なお、100/100は、塗膜のはく離面積が0%である場合を示し、例えば、90/100は、塗膜のはく離面積が10%である場合を示し、50/100は、塗膜のはく離面積が50%である場合を示す。
○:90/100以上である。
△:70/100以上90/100未満である。
×:70/100未満である。
【0130】
(可とう性)
実施例及び比較例で得られた各試験板について、ASTM D522に準じて、可とう性を評価した。
コニカルマンドレル試験機(TP技研社製)を用いて、直径3/2インチのマンドレルに、パテ塗膜が外側(マンドレルと接触しない側)になるように試験片を接触させ、約1秒かけて一定速度で180度に折り曲げた。折り曲げた部分の塗膜を目視で観察し、塗膜のひび割れの状態を下記基準により評価した。△以上を合格とした。なお、試験は23℃で行った。
○:ひび割れの長さが0.3インチ以下である。
△:ひび割れの長さが0.3インチより大きく0.5インチ以下である。
×:ひび割れの長さが0.5インチを超える。
【0131】
(耐食性)
実施例及び比較例で得られた各試験板について、ASTM D1654に従い、複合サイクル試験機CCT1L(スガ試験機社製)を用いて、複合サイクル腐食試験(CCT)を行なった。
すなわち、各試験片に、基材に達するようにカッターナイフでクロスカット傷を入れ、(35℃で5%食塩水噴霧2時間)-(60℃で乾燥4時間)-(50℃でRH95%以上の耐湿試験機内で静置2時間)を1サイクルとして、40サイクル(合計320時間)試験を行なった。試験終了後の各試験板のクロスカット部の状態(錆及びフクレの状態)を下記基準により評価した。△以上を合格とした。
○:錆幅又はフクレ幅が4mm未満である。
○△:錆幅又はフクレ幅が4mm以上6mm未満である。
△:錆幅又はフクレ幅が6mm以上8mm未満である。
×:錆幅又はフクレ幅が8mm以上である。
【0132】
【表1】
【0133】
【表2】
【0134】
【表3】
【0135】
実施例1~28は、本開示の実施例であり、塗料組成物のポットライフが良好であって、更に、耐水密着性、可とう性及び耐食性の良好な塗膜が得られることが確認された。
比較例1~4は、アロファネート基含有ポリイソシアネート化合物(B1)を含まない例であり、比較例1、4では、塗膜の耐食性に劣り、比較例2では、塗膜の可とう性に劣り、比較例3では塗膜の耐水密着性に劣ることが確認された。
比較例5は、アスパラギン酸エステルアミン(A1)を含まない例であり、主剤と硬化剤を混合後、直ちに塗料組成物の流動性が消失したため、塗膜を形成することができなかった。
比較例6は、顔料(C)を含まない例であり、塗膜の耐水密着性、可とう性及び耐食性に劣ることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0136】
本発明の塗料組成物は、主剤と硬化剤との反応速度が制御されており、ポットライフが良好であって、更に、耐水密着性、可とう性及び耐食性の良好な塗膜を形成できる。
【手続補正書】
【提出日】2023-03-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主剤(I)及び硬化剤(II)を含む塗料組成物であって、
前記主剤(I)及び前記硬化剤(II)の少なくとも一方が顔料(C)を含み、
前記主剤(I)は、ポリアミン化合物(A)を含み、
前記硬化剤(II)は、ポリイソシアネート化合物(B)を含み、
前記ポリアミン化合物(A)は、アスパラギン酸エステルアミン(A1)を含み、
前記ポリイソシアネート化合物(B)は、アロファネート基含有ポリイソシアネート化合物(B1)を含み、
前記ポリイソシアネート化合物(B)に含まれるイソシアネート基の当量の合計(NCO)と、前記ポリアミン化合物(A)に含まれるアミノ基の当量の合計(NH)との比(NCO/NH)が、0.5以上2.0以下であり、
前記ポリアミン化合物(A)に含まれるアスパラギン酸エステルアミン(A1)の含有率が、前記ポリアミン化合物(A)の総量100質量%中、80質量%以上100質量%以下である、塗料組成物。
【請求項2】
前記アスパラギン酸エステルアミン(A1)は、
以下の式(I):
【化1】
[式(I)中、
は、2価のC1-80炭化水素基から選ばれる1種を表し、
は、互いに独立して、C1-20炭化水素基を表す。]
で表される、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項3】
前記アロファネート基含有ポリイソシアネート化合物(B1)は、以下の式(II):
【化2】
[式(II)中、
は、C1-20アルキレン基を表す。
は、C1-20アルキル基を表す。]
で表される、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項4】
前記アロファネート基含有ポリイソシアネート化合物(B1)の含有率が、前記ポリイソシアネート化合物(B)の総量100モル%中、50モル%以上である、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項5】
前記顔料(C)は、無機顔料及び/又は有機顔料を含む、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項6】
前記塗料組成物中における前記顔料(C)の顔料体積濃度が、10体積%以上40体積%以下である、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項7】
脱水剤を更に含む、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項8】
アニオン性基及びカチオン性基を有する化合物を更に含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の塗料組成物。