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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033746
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】A重油組成物
(51)【国際特許分類】
   C10L 1/19 20060101AFI20240306BHJP
   C10L 1/04 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
C10L1/19
C10L1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137537
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000105567
【氏名又は名称】コスモ石油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】弁理士法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 直樹
(72)【発明者】
【氏名】大塚 武
【テーマコード(参考)】
4H013
【Fターム(参考)】
4H013AA05
(57)【要約】
【課題】バイオマスまたはバイオマスを原料とする基材により専ら構成することができるとともに、低温流動性向上剤(CFI)を添加することなく優れた低温流動性を発揮し得るA重油組成物を提供する。
【解決手段】硫黄分含有量が10質量ppm未満、イソパラフィン含有量が85.0容量%以上、n-パラフィン含有量が7.0質量%以下、芳香族分含有量が0.5容量%以下であり、15℃における密度が0.7900~0.8200g/cm、ASTM D 6352の規定による蒸留範囲が160.0℃~480.0℃であるイソパラフィン系基材を65.0容量%~96.5容量%含有するとともに、動植物油脂を3.5~35.0容量%含み、10%残油中の残留炭素分が0.20質量%以上、50℃における動粘度が10.000mm/秒以下であることを特徴とするA重油組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫黄分含有量が10質量ppm未満、イソパラフィン含有量が85.0容量%以上、n-パラフィン含有量が7.0質量%以下、芳香族分含有量が0.5容量%以下であり、15℃における密度が0.7900~0.8200g/cm、ASTM D 6352の規定による蒸留範囲が160.0℃~480.0℃であるイソパラフィン系基材を65.0容量%~96.5容量%含有するとともに、
動植物油脂を3.5~35.0容量%含み、
10%残油中の残留炭素分が0.20質量%以上、
50℃における動粘度が10.000mm/秒以下である
ことを特徴とするA重油組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、A重油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、重油組成物は、各種産業分野において種々の用途に使用されており、JIS K2205において、動粘度により、1種(A重油)、2種(B重油)及び3種(C重油)の3種類に分類されている。
これらの重油組成物のうち、A重油(A重油組成物)は、ハウス加温栽培用暖房機の燃料油や、ビル等の暖房機の燃料油や、漁船の燃料油等として用いられている。
【0003】
一般に、A重油組成物は、常圧蒸留装置より得られる直留灯油又は脱硫処理した灯油、直留軽質軽油または脱硫処理した直留軽質軽油、流動接触分解装置より得られる軽質サイクル油、 直接脱硫装置より得られる直脱軽油等から選択される一種以上の中間留分基材を含有しつつ、さらに、常圧蒸留残渣油、減圧蒸留残渣油、直脱残渣油、エキストラクト油(潤滑油の溶剤抽出副生油)等の残渣油等を残炭調整材(残留炭素分付与基材)として含有している。
【0004】
A重油組成物の残留炭素分に関し、JIS K 2205(重油)には4質量%以下とすることが規定されており、また、軽油組成物との製品区分を明確化し、軽油取引税の課税対象になることを避けるために、A重油組成物は、10%残油の残留炭素分を0.20質量%以上含む必要がある。
【0005】
ところで、A重油組成物を燃料とするエンジンや各種の燃焼機器には、燃料系等に目開き5~250μm程度のフィルターが設けられ、燃料油中の異物を除去することにより後段の精密機器を保護しているが、冬季、油温が低下すると高炭素数n-パラフィン(高炭素数直鎖状飽和炭化水素)がワックス結晶(スラッジ)として析出し、上記フィルターを閉塞することが知られている。
【0006】
そこで、上記ワックス結晶(スラッジ)の析出による燃料フィルターの閉塞を抑制するために、例えば、特許文献1等には、A重油組成物中に低温流動性向上剤(CFI)を添加し、ワックス結晶の成長を阻害して、生成するワックス結晶を微細化することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003-292977号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一方、近年、環境に対する意識の向上に伴って、所謂カーボンニュートラルの観点等から、化石燃料に代えて、再生可能原料、すなわち生物由来の有機性資源(バイオマス)を原料とし、発酵、搾油、熱分解処理等して製造された基材を含有する再生可能原料を用いた燃料油が注目されるようになっている。
【0009】
A重油組成物としても、バイオマスまたはバイオマスを原料とする基材を主たる配合成分とするものが望まれるようになっているが、このようなA重油組成物はこれまで殆ど知られていない上に、従来のA重油組成物と同様に、低温流動性向上剤(CFI)を添加する必要があるものとなっている。
【0010】
このような状況下、本発明は、専らバイオマスまたはバイオマスを原料とする基材により構成することができるとともに、低温流動性向上剤(CFI)を添加することなく優れた低温流動性を発揮し得るA重油組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような状況下、本発明者等は、バイオマスまたはバイオマスを原料とする基材の中でも、イソパラフィン系基材に着目するに至った。
【0012】
すなわち、再生可能原料を用いた燃料油基材として、合成反応や異性化反応を伴う生産方法を経て得られたものが知られているが、このような燃料油基材は分岐鎖状飽和炭化水素(イソパラフィン)が組成の大部分を占め、イソパラフィン系基材としてA重油組成物の調製に使用することを着想した。
そして、本発明者等は、上記イソパラフィン系基材とともに、残炭調整剤として、再生可能原料に由来する動植物油脂を採用することにより、低温流動性向上剤(CFI)を添加することなく優れた低温流動性を発揮し得ることを見出し、本知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、
硫黄分含有量が10質量ppm未満、イソパラフィン含有量が85.0容量%以上、n-パラフィン含有量が7.0質量%以下、芳香族分含有量が0.5容量%以下であり、15℃における密度が0.7900~0.8200g/cm、ASTM D 6352の規定による蒸留範囲が160.0℃~480.0℃であるイソパラフィン系基材を65.0容量%~96.5容量%含有するとともに、
動植物油脂を3.5~35.0容量%含み、
10%残油中の残留炭素分が0.20質量%以上、
50℃における動粘度が10.000mm/秒以下である
ことを特徴とするA重油組成物
を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、バイオマスまたはバイオマスを原料とする基材により専ら構成することができるとともに、低温流動性向上剤(CFI)を添加することなく優れた低温流動性を発揮し得るA重油組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
なお、本明細書中、数値範囲を現す「~」は、その上限及び下限としてそれぞれ記載されている数値を含む範囲を表す。また、「~」で表される数値範囲において上限値のみ単位が記載されている場合は、下限値も同じ単位であることを意味する。
本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。
本明細書において組成物中の各成分の含有率又は含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
本明細書において、好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
【0016】
本明細書において、下記項目の値は、特に断らない限り、各々以下の試験方法及び計算を用いて求めた値を意味する。
・「イソパラフィン含有量」
イソパラフィンの含有量は、後述する方法で求められるアルカン類(鎖状飽和炭化水素)含有量から、後述する方法により求められる容量あたりに換算したn-パラフィン(直鎖状飽和炭化水素)含有量を差し引いた値を意味する。
・「アルカン類(鎖状飽和炭化水素)含有量およびナフテン(環状飽和炭化水素)含有量)」
(1)高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて、以下に示す条件により飽和分(飽和炭化水素化合物)を分取する。
測定装置 :(株)島津製作所製 HPLC
カラム :Develosil 30-3 (4.6mm×250mm)
移動相 :n-ヘキサン 1.0mL/min 5.3MPa
検出器 :CH1:UV254nm、 CH2:RI
試料濃度 :n-ヘキサンで約20vol.%に希釈
注入量 :60μL
分取条件 :飽和分溶出後にバックフラッシュを行い、芳香族分を一括して溶出させる。
(2)上記(1)で得られた飽和分について、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)を用いて以下に示す条件により平均マススペクトルを求める。
測定装置 :Agilent社製 GC-MS
カラム :DB-1HT 30m×0.32mmI.D.×0.10um
オーフ゛ン温度 :40℃(2min)-(20℃/min)-300℃(5min) Run 20min
キャリアーカ゛ス :He 定圧モード 30kPa 初期:2.1mL/min,52cm/sec
イオン化電圧 :EI 70eV
注入方法 :オンカラム注入
次いで、ASTM D 2786に記載の計算式に代入して、アルカン類の容量比率およびナフテンの容量比率を算出し、後述するJPI-5S-49-07「石油製品―炭化水素タイプ試験方法―高速液体クロマトグラフ法」で測定した飽和分の値(容量%)に上記算出した容量比率をかけることで、溶液全体に対するアルカン類の含有量およびナフテンの含有量を算出する。
なお、ASTM D 2786で計算に使用するファクターとして、平均炭素数は16、計算ファクターはn-パラフィンを使用した。
・「n-パラフィン含有量の測定方法」
n-パラフィン含有量は、以下に記載の条件下で測定、算出される値を意味し、特に断りのない場合、炭素数9以上のn-パラフィンの含有量を意味する。
測定装置 :Agilent社製 GC-FID
カラム :DB-1 60m×0.32mmID DF:0.25μm
測定開始温度(保持時間) :60℃(5min)
測定終了温度(保持時間) :340℃(14min)
オーフ゛ン昇温速度 :6℃/min
キャリアーカ゛ス :He 152kPa
FID燃焼ガス :H230mK/min、 Air 400mL/min
定量方法 :内部標準法 (フタル酸ジ-n-ブチル)
試料希釈 :トルエン
注入方法 :オンカラム注入
また、容量あたりに換算したn-パラフィン含有量は、上記方法で測定したn-パラフィン含有量を0.75で除した値を意味する。
・「飽和分含有量」
JPI-5S-49-07「石油製品―炭化水素タイプ試験方法―高速液体クロマトグラフ法」に記載の方法により測定された値を意味する。
・「オレフィン分含有量」
JPI-5S-49-07「石油製品―炭化水素タイプ試験方法―高速液体クロマトグラフ法」に記載の方法により測定された値を意味する。
・「芳香族分含有量」
芳香族分の含有量は、JPI-5S-49-07「石油製品―炭化水素タイプ試験方法―高速液体クロマトグラフ法」に記載の方法により測定された値を意味する。
ただし、高圧水素化処理基材の原料油の芳香族分の含有量、及び後述する発熱量測定に用いる芳香族分については、IP548「Determination OF aromatic hydrocarbon types in middle distillates - High performance liquid chromatography method With refractive index detection」により測定される値を意味する。
・「蒸留性状(留出温度)」
イソパラフィン系基材及びイソパラフィン系基材を含むA重油組成物:ASTM D6352に規定されているガスクロマトグラフ蒸留試験方法。
イソパラフィン系基材以外の石油系基材:JIS K 2254:1998「石油製品-蒸留試験方法」に規定されている「常圧法蒸留試験方法」に規定されている方法。
・「10%残油の残留炭素分」
JIS K 2270-2:2009「原油及び石油製品―残留炭素分の求め方―第2部:ミクロ法」に規定されている方法。
・「50℃における動粘度(動粘度(50℃))」
JIS K 2283:2000「原油及び石油製品-動粘度試験方法及び粘度指数算出方法」に規定されている方法。
・「15℃における密度(密度(15℃))」
JIS K 2249-1:2011「原油及び石油製品-密度の求め方―(振動法)」に規定されている方法。
・「硫黄分含有割合」
500質量ppm以下の硫黄分:JIS K 2541-6:2003「原油及び石油製品-硫黄分試験方法-第6部:紫外蛍光法」に規定されている方法。
500質量ppmを超える硫黄分:JIS K 2541-4:2003「原油及び石油製品-硫黄分試験方法-第4部:放射線式励起法」に規定されている方法。
・「灰分」
JIS K2272に規定されている方法。
・「水分」
JIS K 2275-3「原油及び石油製品-水分試験方法」に記載のカールフィッシャー式電量滴定法。
・「反応」
JIS K 2252(1998)「石油製品-反応試験方法」に規定されている方法。
・「引火点」
JIS K 2265-3:2007「引火点の求め方―第3部:ペンスキーマルテンス密閉法」に規定されている方法(PM法)。
・「流動点(PP)」
JIS K 2269:1987「原油及び石油製品の流動点並びに石油製品曇り点試験方法」に規定されている方法。
・「スラッジ量」
メンブランフィルター(孔径1.2μm)の重量を0.1mgの桁まで求めた後、吸引ろ過装置にメンブランフィルターをセットし、測定試料100mLをろ過する。メンブランフィルター上に液体が見えなくなった後、メンブランフィルターの縁に油状のものが確認できなくなるまで、n-ヘプタンで洗浄する。その後、メンブランフィルターを減圧乾燥させ、乾燥後のメンブランフィルターの重量を測定し、乾燥後のメンブランフィルターの重量からフィルターの重量を引き、スラッジ量を求める。
・「セタン指数」
JIS K 2204:1992に規定されている方法。
【0017】
本発明に係るA重油組成物は、
硫黄分含有量が10質量ppm未満、イソパラフィン含有量が85.0容量%以上、n-パラフィン含有量が7.0質量%以下、芳香族分含有量が0.5容量%以下であり、15℃における密度が0.7900~0.8200g/cm、ASTM D 6352の規定による蒸留範囲が160.0℃~480.0℃であるイソパラフィン系基材を65.0容量%~96.5容量%含有するとともに、
動植物油脂を3.5~35.0容量%含み、
10%残油中の残留炭素分が0.20質量%以上、
50℃における動粘度が10.000mm/秒以下である
ことを特徴とするものである。
【0018】
以下、本発明に係るA重油組成物を構成する各基材について説明する。
【0019】
本発明に係るA重油組成物は、イソパラフィン系基材を構成基材として含むものであり、上記イソパラフィン系基材は、バイオマスを原料として得ることができる。
【0020】
本発明に係るA重油組成物を構成するイソパラフィン系基材は、硫黄分含有量が、10質量ppm未満(0質量ppm以上10質量ppm未満)であるものであり、5質量ppm以下(0質量ppm以上5質量ppm以下)であるものが好ましく、1質量ppm以下(0質量ppm以上1質量ppm以下)であるものがより好ましい。
本発明に係るA重油組成物を構成するイソパラフィン系基材の硫黄分含有量が上記範囲内にあることにより、燃焼時における硫黄酸化物の生成を容易に低減することができる。
【0021】
本発明に係るA重油組成物を構成するイソパラフィン系基材は、イソパラフィン(分岐鎖状飽和炭化水素)含有量が、85.0容量%以上(85.0~100.0容量%)であり、88.0容量%以上(88.0~100.0容量%)であることが好ましく、91.0容量%以上(91.0~100.0容量%)であることがより好ましい。
【0022】
本発明に係るA重油組成物を構成するイソパラフィン系基材は、n-パラフィン(直鎖状飽和炭化水素)含有量が、7.0質量%以下(0.0質量%~7.0質量%)であり、6.0質量%以下(0.0質量%~6.0質量%)であることが好ましく、5.0質量%以下(0.0質量%~5.0質量%)であることがより好ましい。
【0023】
本発明書に係るA重油組成物を構成するイソパラフィン系基材は、アルカン類(鎖状飽和炭化水素)含有量が84.0容量%以上(84.0容量%~100.0容量%)であることが好ましく、87.0容量%以上(87.0容量%~100.0容量%)であることがより好ましく、90.0容量%以上(90.0容量%~100.0容量%)であることがさらに好ましい。
【0024】
本発明に係るA重油組成物を構成するイソパラフィン系基材は、飽和分(飽和炭化水素化合物)含有量が、99.0容量%以上(99.0容量%~100.0容量%)であり、99.2容量%以上(99.2容量%~100.0容量%)であることが好ましく、99.4容量%以上(99.4容量%~100.0容量%)であることがより好ましい。
【0025】
本発明に係るA重有組成物を構成するイソパラフィン系基材は、オレフィン分含有量が、0.5容量%以下(0.0容量%~0.5容量%)であることが好ましく、0.4容量%以下(0.0容量%~0.4容量%)であることがより好ましく、0.3容量%以下(0.0容量%~0.3容量%)であることがさらに好ましい。
【0026】
本発明に係るA重油組成物を構成するイソパラフィン系基材は、芳香族分(芳香族炭化水素化合物)含有量が、0.5容量%以下(0.0容量%~0.5容量%)であり、0.4容量%以下(0.0容量%~0.4容量%)であることが好ましく、0.3容量%以下(0.0容量%~0.3容量%)であることがより好ましい。
【0027】
本発明に係るA重油組成物を構成するイソパラフィン系基材において、イソパラフィン含有量、n-パラフィン含有量および芳香族分含有量が各々上記範囲内にあり、その含有量の大部分がイソパラフィンにより構成され、ワックス分を生成し易いn-パラフィンの含有量が少ないことから、A重油組成物に配合したときに、流動点を容易に低下させることができる。
【0028】
本発明に係るA重油組成物を構成するイソパラフィン系基材は、15℃における密度が、0.7900~0.8200g/cm3であるものであり、0.7930g/cm~0.8180g/cmであることが好ましく、0.7950g/cm~0.8150g/cmであることがより好ましい。
本発明に係るA重油組成物を構成するイソパラフィン系基材の密度が上記範囲内にあることにより、A重油組成物の燃焼時に良好な燃焼状態を容易に発揮することができる。
【0029】
本発明に係るA重油組成物を構成するイソパラフィン系基材は、蒸留範囲が、160℃~480℃であるものであり、165℃~470℃であるものが好ましく、170℃~460℃であるものがより好ましい。
本発明に係るA重油組成物を構成するイソパラフィン系基材の蒸留範囲が上記範囲内にあることにより、A重油組成物とした際に、各用途に適した蒸留性状を付与することができる。
なお、本出願書類において、蒸留範囲とは、ASTM D6352の規定によりガスクロマトグラフ蒸留試験を行い、0.5容量%留出温度を初留点(IBP)とし、99.5容量%留出温度を終点(EP)とした場合の初留点(IBP)~終点(EP)を意味する。
【0030】
本発明に係るA重油組成物を構成するイソパラフィン系基材は、ASTM D6352の規定によりガスクロマトグラフ蒸留試験を行い、0.5容量%留出温度を初留点(IBP)とした場合に、初留点(IBP)が、160~200℃であるものが好ましく、165~195℃であるものがより好ましく、170~190℃であるものがさらに好ましい。
本発明に係るA重油組成物を構成するイソパラフィン系基材は、ASTM D6352の規定によりガスクロマトグラフ蒸留試験を行ったときの10容量%留出温度(T10)が、190~250℃であるものが好ましく、195~245℃であるものがより好ましく、200~250℃であることがさらに好ましい。
本発明に係るA重油組成物を構成するイソパラフィン系基材は、ASTM D6352の規定によりガスクロマトグラフ蒸留試験を行ったときの50容量%留出温度(T50)が、230~310℃であるものが好ましく、235~305℃であるものがより好ましく、240~300℃であるものがさらに好ましい。
本発明に係るA重油組成物を構成するイソパラフィン系基材は、ASTM D6352の規定によりガスクロマトグラフ蒸留試験を行ったときの90容量%留出温度(T90)が、290~380℃であるものが好ましく、295~375℃であるものがより好ましく、300~370℃であるものがさらに好ましい。
本発明に係るA重油組成物を構成するイソパラフィン系基材は、ASTM D6352の規定によりガスクロマトグラフ蒸留試験を行い、99.5容量%留出温度を終点(EP)とした場合に、終点(EP)が、400~470℃であるものが好ましく、405~465℃であるものがより好ましく、410~460℃であるものがさらに好ましい。
【0031】
本発明に係るA重油組成物を構成するイソパラフィン系基材は、IBP、T10、T50、T90およびEPが上記範囲内にあることにより、暖房機の燃料油や、船舶の燃料油等の基材として用いたときに、噴霧状態や燃焼状態を適切に保ちつつ、デポジット生成や排出ガス性状の低下を容易に抑制することができる。
【0032】
本発明に係るA重油組成物を構成するイソパラフィン系基材は、引火点が、60.0℃以上であるものが好ましく、70.0℃以上であるものがより好ましく、80.0℃以上であるものがさらに好ましい。
イソパラフィン系基材の引火点の上限は特に制限されないが、イソパラフィン系基材の引火点は、通常、90.0℃以下である。
本発明に係るA重油組成物を構成するイソパラフィン系基材の引火点が上記範囲内にあることにより、より容易な取り扱いが可能となる。
【0033】
本発明に係るA重油組成物を構成するイソパラフィン系基材は、スラッジ量が、0.0~1.0mg/lであることが好ましく、0.0~0.7mg/lであることがより好ましく、0.0~0.5mg/lであることがさらに好ましい。
イソパラフィン系基材を構成するスラッジの生成量が上記範囲内にあることにより、A重油組成物に配合したときに、フィルターに目詰まりを生じさせにくくすることができる。
【0034】
本発明に係るA重油組成物を構成するイソパラフィン系基材としては、バイオマス由来の種々の基材を使用することができる。
【0035】
上記バイオマス由来のイソパラフィン系基材としては、脂質を原料として製造されたもの、バイオアルコールを原料として合成されたものまたはバイオマス由来の合成ガスをFT(Fischer-Tropsch(フィッシャー・トロプシュ))合成して得られたものが好ましい。
脂質を原料として製造されたイソパラフィン系基材として、具体的には、廃食油や一般的な動植物油に由来するさまざまな脂質を水素化処理し、不純物を除去した後、得られたパラフィン分を異性化し、適宜分留処理してなるもの等を挙げることができる。
また、バイオアルコールを原料として合成されたイソパラフィン系基材として、具体的には、発酵法により生産されたエタノールやイソブタノールを脱水反応によりエチレンやイソブテンとした後、これを重合してオリゴマー化し、適宜分留処理してなるもの等を挙げることができる。
さらに、バイオマス由来の合成ガスをFT合成して製造されたイソパラフィン系基材としては、熱分解炉を用いてバイオマスを熱分解してガス化し、得られた合成ガスをFT合成してなるものを挙げることができる。
なお、本出願書類において、バイオアルコールとは、バイオマスを発酵し、適宜濾過処理して得られるエタノールやブタノール等のアルコール類を意味する。
【0036】
本発明に係るA重油組成物を構成するイソパラフィン系基材は、その少なくとも一部が、石油由来のイソパラフィン系基材であってもよく、石油由来のイソパラフィン系基材としては、石油精製工程で得られる留分や、石油精製工程で得られる留分をさらに合成ないし異性化処理した留分、具体的には石油精製工程から得られるイソブテン等から合成した留分等を挙げることができる。
本発明に係るA重油組成物を構成するイソパラフィン系基材は、バイオマス由来の基材のみで構成されていることが好適である。
【0037】
本発明に係るA重油組成物は、上記イソパラフィン系基材を、65.0容量%~96.5容量%含み、66.0容量%~95.0容量%含むことが好ましく、68.0容量%~93.0容量%含むことがより好ましい。
【0038】
本発明に係るA重油組成物は、上記イソパラフィン系基材を主たる基材として上記割合で含むものであることにより、バイオマスを原料とする基材によって構成することができるとともに、優れた低温流動性を容易に発揮することができる。
【0039】
本発明に係るA重油組成物は、イソパラフィン系基材とともに、動植物油脂を含む。
【0040】
本発明に係るA重油組成物において、動植物油脂としては、A重油組成物に配合し得る常温(20℃)で液体のものであれば特に制限されない。
【0041】
本発明のA重油組成物に含有される動植物油脂とは、動物の脂肪組織に含まれる油脂分または植物体に含まれる油脂分を抽出したものを意味する。
本発明のA重油組成物に含有される動植物油脂は、脂肪酸とグリセリンから成るトリアシルグリセリドを主成分とするものであり、他にモノ・ジアシルグリセリド、ビタミン、コレステロール、トコフェノール、植物ステロール等を含むものであってもよい。
【0042】
動物油脂の原料は特に制限されず、例えば、牛脂、牛乳脂質(バター)、豚油、羊油、鯨油、魚油、肝油、馬油、鶏油等から選ばれる一種以上が挙げられる。
【0043】
植物油脂の原料としても特に制限されず、例えば、ココヤシ、パームヤシ、オリーブ、パーム、大豆、菜種、ひまわり、ごま、ベニ花、落花生、綿実、米ぬか、とうもろこし等から選ばれる一種以上が挙げられる。
【0044】
本発明のA重油組成物に含有される動植物油脂としては、植物油脂が好ましく、具体的には、パーム油、ナタネ油、ひまわり油、大豆油等から選ばれる一種以上を挙げることができる。
【0045】
本発明のA重油組成物において、動植物油は、バイオマスからなる配合材として、燃焼性に優れるとともに、残炭調整材(残留炭素分付与基材)として好適に配合することができる。
【0046】
本発明に係るA重油組成物は、上記動植物油脂を、3.5容量%~35.0容量%含み、3.8容量%~33.0容量%含むことが好ましく、4.0容量%~32.0容量%含むことがより好ましい。
【0047】
本発明のA重油組成物が、動植物油を上記割合で含有するものであることにより、優れた燃焼性を発揮しつつ、残炭調整材(残留炭素分付与基材)として好適に作用することができる。
本発明に係るA重油組成物において、上記動植物油脂の配合割合が3.5容量%未満であると、10%残油中の残留炭素分が0.20質量%未満となって、A重油組成物として税法上の規定を満たさないものとなる。
本発明に係るA重油組成物において、上記動植物油脂の配合割合が35.0容量%を超えると、50℃における動粘度が10.000mm/秒超となり、冬季に加温が必要となることから、加温によりA重油組成物の酸化安定性が低下し易くなる。
【0048】
本発明に係るA重油組成物は、上述したイソパラフィン系基材および動植物油脂の合計含有量が、90.0~100.0容量%であるものが好ましく、95.0~100.0容量%であるものがより好ましく、98.0~100.0容量%であるものがさらに好ましい。
本発明に係るA重油組成物が、上記イソパラフィン系基材および動植物油脂を、合計で上記割合で含むことにより、バイオマスまたはバイオマスを原料とする基材により専ら構成することができるとともに、
低温流動性向上剤(CFI)を添加することなく優れた低温流動性を容易に発揮することができる。
【0049】
本発明に係るA重油組成物が、上述したイソパラフィン系基材および動植物油脂以外の基材を含む場合、イソパラフィン系基材および動植物油脂以外の基材としては、灯油留分、軽油留分、石油系残渣留分等から選ばれる一種以上を挙げることができる。
【0050】
本発明に係るA重油組成物は、10%残油の残留炭素分が、0.20質量%以上であり、0.20質量%~1.00質量%であることが好ましく、0.20質量%~0.90質量%であることがより好ましく、0.20質量%~0.80質量%であることがさらに好ましい。
本発明に係るA重油組成物の10%残油の残留炭素分が上記範囲にあることにより、税法上の規定を満たしつつ、スラッジの生成を好適に抑制することができる。
【0051】
本発明に係るA重油組成物は、50℃における動粘度が、10.000mm/秒以下(0.000~10.000mm/秒)であり、9.500mm/秒以下(0.000~9.500mm/秒)であることが好ましく、9.400mm/秒以下(0.000~9.400mm/秒)であることがより好ましい。
【0052】
本発明に係るA重油組成物の50℃における動粘度が上記範囲内にあることにより、冬期における加温処理が不要となるとともに、加温処理に伴う酸化安定性の低下を抑制することができる。
【0053】
本発明に係るA重油組成物は、15℃における密度が、0.8100g/cm3~0.8900g/cm3であることが好ましく、0.8120g/cm3~0.8880g/cm3であることがより好ましく、0.8140g/cm3~0.8860g/cm3であることがさらに好ましい。
A重油組成物の15℃における密度が上記範囲にあることにより、A重油組成物を燃焼させる際に良好な燃焼状態を容易に達成することができる。
【0054】
本発明に係るA重油組成物は、硫黄分含有割合が、1.20質量%以下(0.00質量%~1.20質量%)であることが好ましく、1.10質量%以下(0.00質量%~1.10質量%)であることがより好ましく、1.00質量%以下(0.00質量%~1.00質量%)であることがさらに好ましい。
本発明に係るA重油組成物の硫黄分含有割合が上記範囲内にあることにより、本発明に係るA重油組成物において、硫黄分の含有量を適正な範囲に容易に制御して、燃焼時における硫黄化合物の生成を容易に抑制することができる。
【0055】
本発明に係るA重油組成物は、ASTM D6352の規定によりガスクロマトグラフ蒸留試験を行ったときの10.0容量%留出温度が、190℃~250℃であることが好ましく、195℃~245℃であることがより好ましく、200℃~240℃であることがさらに好ましい。
【0056】
本発明に係るA重油組成物は、ASTM D6352の規定によりガスクロマトグラフ蒸留試験を行ったときの50.0容量%留出温度が、230℃~310℃であることが好ましく、235℃~305℃であることがより好ましく、240℃~300℃であることがさらに好ましい。
【0057】
本発明に係るA重油組成物は、ASTM D6352の規定によりガスクロマトグラフ蒸留試験を行ったときの90.0容量%留出温度が、290℃~380℃であることが好ましく、295℃~375℃であることがより好ましく、300℃~370℃であることがさらに好ましい。
【0058】
本発明に係るA重油組成物において、反応は、中性であることが好ましい。
本出願書類において、「反応」の語は、A重油組成物中に含まれる水溶性の酸又は塩基の有無を判断する反応試験を指し、試験結果が酸性又はアルカリ性を示す場合、A重油組成物は、水溶性の酸又は塩基を含むことを意味する。試験結果が中性を示す場合、A重油組成物は、水溶性の酸又は塩基を含まないことを意味する。
上述したように、反応は、JIS K 2252(1998)「石油製品-反応試験方法」に規定されている方法により測定するが、具体的には、試料に水を加え、加温して振り混ぜ、水相に酸及び塩基を抽出し、指示薬としてメチルオレンジ又はフェノールフタレインを用いて、抽出した水相の酸性、中性又はアルカリ性を判定することによって、試料中に含まれる酸及び塩基の有無を判断する。
本発明のA重油組成物において、反応が中性であることにより、燃料タンクや燃料配管においてA重油組成物が優れた貯蔵安定性を発揮することが可能となる。
【0059】
本発明に係るA重油組成物は、引火点が、60.0℃以上であることが好ましく、70.0℃以上であることがより好ましく、80.0℃以上であることがさらに好ましい。
本発明に係るA重油組成物の引火点が60.0℃以上であることにより、より容易に取り扱うことが可能となる。
【0060】
本発明に係るA重油組成物は、流動点が、-10.0℃以下であることが好ましく、-15.0℃以下であることがより好ましく、-20.0℃以下であることがさらに好ましい。
本発明に係るA重油組成物の流動点が-10.0℃以下であることにより、冬季の寒冷地においてもA重油組成物の流動性を好適に確保することができる。
本発明に係るA重油組成物の流動点の下限値については、特に制限されないが、本発明に係るA重油組成物の流動点は、通常は-60.0℃以上である。
【0061】
本発明に係るA重油組成物のセタン指数は、40.0以上であることが好ましく、50.0以上であることがより好ましく、55.0以上であることがさらに好ましい。
本発明に係るA重油組成物のセタン指数が40.0以上あることにより、A重油組成物を燃焼させる際に良好な燃焼状態を得ることができる。
【0062】
本発明に係るA重油組成物は、上述したイソパラフィン系基材および動植物油脂を必須基材として所定量混合するとともに、さらに本発明の効果を阻害しない範囲において公知の基材または添加剤を混合することにより調製することができる。
【0063】
上述したイソパラフィン系基材および動植物油を混合して本発明に係るA重油組成物を調製する場合、その混合順序は特に制限されない。
【0064】
本発明に係るA重油組成物は、上記構成基材の他に、各種添加剤を配合してなるものであってもよい。
上記添加剤としては、氷結防止剤、酸化防止剤、金属不活性剤、静電気防止剤、潤滑性向上剤、導電度調整剤、腐食防止剤等の公知の燃料添加剤から選択される一種以上が挙げられる。
【0065】
本発明によれば、再生可能原料を用いた燃料油基材により専ら構成することができるとともに、低温流動性向上剤(CFI)を添加することなく優れた低温流動性を発揮し得るA重油組成物を提供することができる。
【実施例0066】
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれ等の例により何ら限定されるものではない。
【0067】
(基材)
以下の実施例および比較例においては、以下の基材を使用した。各基材の特性を表1に示す。
・イソパラフィン系基材1(IP基油1)
イソパラフィンを100.0容量%含むもの(イソパラフィン含有量が100.0容量%、n-パラフィン含有量が0.0容量%、芳香族分含有量が0.0容量%であるもの)。
・イソパラフィン系基材2(IP基油2)
イソパラフィンを100.0容量%含むもの(イソパラフィン含有量が100.0容量%、n-パラフィン含有量が0.0容量%、芳香族分含有量が0.0容量%であるもの)。
・水素化脱硫灯油(直留灯油)
中東系原油を常圧蒸留して得られる灯油留分(直留灯油)を水素化脱硫処理したもの。
・水素化脱硫軽油(直留軽油)
中東系原油を常圧蒸留して得られる軽油留分(直留軽油)を水素化脱硫処理したもの。
・接触分解軽油
流動接触分解装置から留出した分解軽油。
・石油系残渣留分
減圧蒸留装置から留出した減圧蒸留残渣油を軽油留分等で粘度調製したものであるもの。
なお、以下の表中において、イソパラフィン系基材の蒸留性状(留出温度)は、ASTM D6352に規定されているガスクロマトグラフ蒸留試験方法で測定したものであり、直留灯油、直留軽油および接触分解軽油の蒸留性状(留出温度)は、JIS K 2254:1998「石油製品-蒸留試験方法」に規定されている「常圧法蒸留試験方法」に規定されている方法により測定したものである。
【0068】
また、以下の表中で、硫黄分含有量が「<1」であるとは、1質量ppm未満を意味し、10%残油中の残留炭素分が「<0.01」であるとは0.01質量%未満であることを意味し、灰分が「0.001」であるとは0.001質量%未満であることを意味し、水分が「<100」であるとは100質量ppm未満であることを意味する。
【0069】
【表1】
【0070】
(実施例1~実施例13、比較例1~比較例5)
上記各基材(IP基油1、IP基油2、直留灯油、直留軽油、接触分解軽油、石油系残渣留分)とともに、食物油として、紅花油、ヒマワリ油、コメ油、オリーブ油および菜種油を用意し、表2-1および表2-2に示す配合割合で各々配合することにより、実施例1~実施例13、比較例1~比較例5に係る各A重油組成物を調製した。
得られた各A重油組成物の特性を表3-1~表3-2に示す。
なお、以下の表中において、イソパラフィン系基材を含むA重油組成物の蒸留性状(留出温度)は、ASTM D6352に規定されているガスクロマトグラフ蒸留試験方法で測定したものである。
【0071】
また、以下の表中で、50℃における動粘度が「<10.000」であるとは10.000mm/秒未満であること意味し、硫黄分含有量が「<1」であるとは、各々1質量ppm未満を意味し、10%残油中の残留炭素分が「>0.29」、「>0.27」および「>0.28」であるとは、各々0.29質量%超、0.27質量%超および0.28質量%超を意味し、灰分が「<0.001」であるとは0.001質量%未満であることを意味し、水分が「<100」であるとは100質量ppm未満であることを意味し、流動点が「<-60.0」であるとは-60.0℃未満であることを意味する。
【0072】
【表2-1】
【0073】
【表2-2】
【0074】
【表3-1】
【0075】
【表3-2】
【0076】
表1、表2-1および表3-1より、実施例1~実施例13で得られた本発明に係るA重油組成物は、所定のイソパラフィン系基材を65.0~96.5容量%含むとともに、動植物油脂を3.5~35.0容量%含み、10%残油中の残留炭素分が0.20質量%以上、50℃における動粘度が10.000mm/秒以下であるものである。
このため、これ等の実施例で得られたA重油組成物は、バイオマスまたはバイオマスを原料とする基材により構成することができるとともに、低温流動性向上剤(CFI)を添加することなく優れた低温流動性を発揮し得るものであることが分かる。
【0077】
一方、表1、表2-2および表3-2より、比較例1~比較例5で得られたA重油組成物は、イソパラフィン系基材および動植物油脂を所定量含まないものであったり(比較例1~比較例4)、従来の石油系基材および残炭調整剤により構成され低温流動性向上剤(CFI)を含まないものである(比較例5)ために、10%残油中の残留炭素分が0.20質量%未満となって(比較例1、比較例3)A重油組成物として税法上の規定を満たさないものであったり、50℃における動粘度が10.000mm/秒超であったり(比較例2)、流動点が-60℃未満であったり(比較例3)、スラッジ量が多量検出される(比較例4、比較例5)、低温流動性に劣るものであることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明によれば、バイオマスまたはバイオマスを原料とする基材により専ら構成することができるとともに、低温流動性向上剤(CFI)を添加することなく優れた低温流動性を発揮し得るA重油組成物を提供することができる。