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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033756
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】クランプ装置
(51)【国際特許分類】
   B23Q 3/06 20060101AFI20240306BHJP
【FI】
B23Q3/06 301D
B23Q3/06 304F
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137553
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】391003989
【氏名又は名称】株式会社コスメック
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】後藤 純一
【テーマコード(参考)】
3C016
【Fターム(参考)】
3C016CA01
3C016CA04
3C016CB03
3C016CC01
3C016CE05
(57)【要約】
【課題】回転するような荷重がクランプロッドに作用することを抑制することができる、クランプロッドの軸心がピストンの軸心からずれたクランプ装置を提供すること。
【解決手段】クランプ装置は、ピストン(8)と、クランプロッド(29)と、ハウジング(1)の内部に配置されたリンク部材(49)とを備える。リンク部材(49)の他方の端部である第2端部(53)がピストンロッド(11)の先端部で押されることで、クランプロッド(29)の軸心(C2)部、または、当該軸心(C2)部まわりで等配の位置にあるクランプロッド(29)の複数部分、をリンク部材(49)の第1端部(51)が押し、その結果、クランプロッド(29)が軸心方向のうちの基端側方向へ移動する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(1)と、
前記ハウジング(1)に形成されたシリンダ孔(7)に当該シリンダ孔(7)の軸心方向へ移動可能に挿入されたピストン(8)であって、ピストン本体(9)およびピストンロッド(11)を備える流体圧駆動のピストン(8)と、
前記ハウジング(1)に前記軸心方向へ移動可能に挿入されたクランプロッド(29)であって、前記軸心方向に対して直交する方向へ前記ピストン(8)の軸心(C1)から離れた軸心(C2)を有するクランプロッド(29)と、
前記ハウジング(1)の内部に配置されたリンク部材(49)であって、前記クランプロッド(29)と前記ピストンロッド(11)とを連動させるリンク部材(49)と、
を備え、
前記リンク部材(49)の一方の端部である第1端部(51)が前記クランプロッド(29)側に配置されており、
前記リンク部材(49)の他方の端部である第2端部(53)が前記ピストンロッド(11)の先端部で押されることで、前記クランプロッド(29)の軸心(C2)部、または、当該軸心(C2)部まわりで等配の位置にある前記クランプロッド(29)の複数部分、を前記第1端部(51)が押し、前記クランプロッド(29)が前記軸心方向のうちの基端側方向へ移動する、
クランプ装置。
【請求項2】
請求項1のクランプ装置において、
前記クランプロッド(29)の側面に形成された凹部(52)に前記第1端部(51)が挿入されており、
前記第2端部(53)が前記ピストンロッド(11)の先端部で押されることで、前記凹部(52)における前記クランプロッド(29)の軸心(C2)部を前記第1端部(51)が前記基端側方向へ押し、前記クランプロッド(29)が前記基端側方向へ移動する、
クランプ装置。
【請求項3】
請求項1のクランプ装置において、
前記クランプロッド(29)の側面に形成された凹部(64)に前記第1端部(51)が挿入されており、
前記第2端部(53)が前記ピストンロッド(11)の先端部で押されることで、前記凹部(64)における前記クランプロッド(29)の軸心(C2)部まわりで等配の位置にある前記クランプロッド(29)の複数部分を前記第1端部(51)が前記基端側方向へ押し、前記クランプロッド(29)が前記基端側方向へ移動する、
クランプ装置。
【請求項4】
請求項3のクランプ装置において、
前記第1端部(51)は、第1-1端部(65)および第1-2端部(66)を有する二股形状とされており、
前記第1-1端部(65)と前記第1-2端部(66)との間に、前記クランプロッド(29)の軸心(C2)を通る、前記クランプロッド(29)の一部を構成する壁体(67)が設けられている、
クランプ装置。
【請求項5】
請求項1または2のクランプ装置において、
前記基端側方向は、前記クランプロッド(29)のロック方向であって、
前記ピストンロッド(11)は、前記ピストン本体(9)から前記軸心方向のうちの先端側方向へ突出しており、
前記ピストンロッド(11)が前記先端側方向へ移動することで、前記リンク部材(49)を介して、前記先端側方向とは逆方向の前記基端側方向へ前記クランプロッド(29)が移動する、
クランプ装置。
【請求項6】
請求項1または2のクランプ装置において、
前記リンク部材(49)は回動支軸(50)で支持されており、
前記回動支軸(50)は前記ハウジング(1)で支持されている、
クランプ装置。
【請求項7】
請求項1または2のクランプ装置において、
前記リンク部材(49)は回動支軸(50)で支持されており、
前記回動支軸(50)は前記クランプロッド(29)で支持されている、
クランプ装置。
【請求項8】
請求項1または2のクランプ装置において、
前記リンク部材(49)は回動支軸(50)で支持されており、
前記回動支軸(50)は前記ピストンロッド(11)の先端部で支持されている、
クランプ装置。
【請求項9】
請求項1または2のクランプ装置において、
被固定物(W)の孔(32)に挿入されて当該孔(32)の内周面に密着するように前記クランプロッド(29)の先端部外周側に配置された押圧部材(35)と、
前記押圧部材(35)を前記軸心方向のうちの先端側方向へ押すように前記ハウジング(1)の内部に配置された支持筒(34)であって、前記クランプロッド(29)が挿入される筒孔(34a)を有する支持筒(34)と、
前記支持筒(34)を前記先端側方向へ付勢する付勢手段(45、59)であって、前記ハウジング(1)の内部に配置された付勢手段(45、59)と、
を備える、クランプ装置。
【請求項10】
請求項9のクランプ装置において、
前記付勢手段(59)は、流体圧駆動の支持ピストン(59)である、
クランプ装置。
【請求項11】
請求項1または2のクランプ装置において、
前記リンク部材(49)は、前記ハウジング(1)の内部に形成されたリンク室(48)に配置されており、
前記ハウジング(1)に形成されたエア供給路(54)から前記リンク室(48)にエアブロー用の圧縮空気が供給される、
クランプ装置。
【請求項12】
請求項1または2のクランプ装置において、
前記クランプロッド(29)は、先端側から順に、クランプロッド本体(30)と、連結部材(31)とを有する、
クランプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランプロッドの軸心がピストンの軸心からずれたクランプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のクランプ装置として、下記の特許文献1に記載されたものがある。そのクランプ装置は、次のように構成されている。
【0003】
クランプ装置は、クランプロッドの入力部とピストンの出力部とを連結する連結部材を備えている。ピストンの出力部には半径方向へ突出する凸部が設けられている。当該凸部に半径方向へ係合する凹部が連結部材に設けられている。連結部材は、ピストンの軸心方向へピストンとともに移動可能となるようにハウジング内に挿入されている。
【0004】
リリース状態からロック状態へクランプ装置が切り換わるとき、連結部材は、ピストンで引っ張られて下降する。なお、特許文献1では、連結部材を、クランプロッドとは別の部材としているが、連結部材を、クランプロッドを構成する一部材ととらえてもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-108470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のクランプ装置には改良の余地があった。ピストンの出力部に設けられた凸部で連結部材の右側部分をピストンが下方に引っ張ることになるので、連結部材が回転するような荷重がピストンから連結部材に作用することがある。そのため、最悪の状態として、例えば、連結部材の左下部分および右上部分が筒孔の内面に強く接触し、連結部材が滑らかに動かなくなることが懸念される。また、筒孔の内面に連結部材が局部的に強く接触することで当該内面に偏摩耗が生じることも懸念される。この場合、ロック駆動の際に、連結部材が傾いて下降しかねない。
【0007】
本発明の目的は、回転するような荷重がクランプロッドに作用することを抑制することができる、クランプロッドの軸心がピストンの軸心からずれたクランプ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明に係るクランプ装置は、例えば、図1から図9に示すように、次のように構成される。
【0009】
(1)本願で開示するクランプ装置は、ハウジング1と、前記ハウジング1に形成されたシリンダ孔7に当該シリンダ孔7の軸心方向へ移動可能に挿入されたピストン8であって、ピストン本体9およびピストンロッド11を備える流体圧駆動のピストン8と、前記ハウジング1に前記軸心方向へ移動可能に挿入されたクランプロッド29であって、前記軸心方向に対して直交する方向へ前記ピストン8の軸心C1から離れた軸心C2を有するクランプロッド29と、前記ハウジング1の内部に配置されたリンク部材49であって、前記クランプロッド29と前記ピストンロッド11とを連動させるリンク部材49と、を備える。前記リンク部材49の一方の端部である第1端部51が前記クランプロッド29側に配置されている。前記リンク部材49の他方の端部である第2端部53が前記ピストンロッド11の先端部で押されることで、前記クランプロッド29の軸心C2部、または、当該軸心C2部まわりで等配の位置にある前記クランプロッド29の複数部分、を前記第1端部51が押し、前記クランプロッド29が前記軸心方向のうちの基端側方向へ移動する。
【0010】
本願で開示するクランプ装置は次の作用効果を奏する。クランプロッドの軸心部、または、当該軸心部まわりで等配の位置にあるクランプロッドの複数部分、がリンク部材によって押されるので、クランプロッドが回転するような荷重は発生しにくい。すなわち、当該クランプ装置によると、回転するような荷重がクランプロッドに作用することを抑制することができる。
【0011】
(2)(1)のクランプ装置において、例えば、図1から図8に示すように、前記クランプロッド29の側面に形成された凹部52に前記第1端部51が挿入されており、前記第2端部53が前記ピストンロッド11の先端部で押されることで、前記凹部52における前記クランプロッド29の軸心C2部を前記第1端部51が前記基端側方向へ押し、前記クランプロッド29が前記基端側方向へ移動してもよい。
【0012】
この構成によると、回転するような荷重がクランプロッドに作用することを抑制することができる。
【0013】
(3)(1)のクランプ装置において、例えば、図9に示すように、前記クランプロッド29の側面に形成された凹部64に前記第1端部51が挿入されており、前記第2端部53が前記ピストンロッド11の先端部で押されることで、前記凹部64における前記クランプロッド29の軸心C2部まわりで等配の位置にある前記クランプロッド29の複数部分を前記第1端部51が前記基端側方向へ押し、前記クランプロッド29が前記基端側方向へ移動してもよい。
【0014】
この構成によると、クランプロッドの複数部分がリンク部材によって押されるので、クランプロッドの1か所がリンク部材によって押される場合に比べて、クランプロッドの動きが安定する。
【0015】
(4)(3)のクランプ装置において、例えば、図9Aから図9Cに示すように、前記第1端部51は、第1-1端部65および第1-2端部66を有する二股形状とされており、前記第1-1端部65と前記第1-2端部66との間に、前記クランプロッド29の軸心C2を通る、前記クランプロッド29の一部を構成する壁体67が設けられていてもよい。
【0016】
この構成によると、クランプロッドの剛性を壁体により高めることができ、その結果、クランプロッドの動きが安定する。
【0017】
(5)(1)から(4)のいずれかのクランプ装置において、前記基端側方向は、前記クランプロッド29のロック方向であって、前記ピストンロッド11は、前記ピストン本体9から前記軸心方向のうちの先端側方向へ突出しており、前記ピストンロッド11が前記先端側方向へ移動することで、前記リンク部材49を介して、前記先端側方向とは逆方向の前記基端側方向へ前記クランプロッド29が移動してもよい。
【0018】
この構成によると、ロック駆動のときのピストン出力が、リリース駆動のときのピストン出力よりも大きくなる。そのため、ロック駆動においてクランプロッドを大きな力で移動させることができる。
【0019】
(6)(1)から(5)のいずれかのクランプ装置において、例えば、図1および図2に示すように、前記リンク部材49は回動支軸50で支持されており、前記回動支軸50は前記ハウジング1で支持されていてもよい。
【0020】
この構成によると、無駄のない簡単な構成でリンク部材を容易に動作させることができる。
【0021】
(7)(1)から(5)のいずれかのクランプ装置において、例えば、図4および図5に示すように、前記リンク部材49は回動支軸50で支持されており、前記回動支軸50は前記クランプロッド29で支持されていてもよい。
【0022】
この構成によると、リンク部材を容易に動作させることができる。
【0023】
(8)(1)から(5)のいずれかのクランプ装置において、例えば、図6に示すように、前記リンク部材49は回動支軸50で支持されており、前記回動支軸50は前記ピストンロッド11の先端部で支持されていてもよい。
【0024】
この構成によると、リンク部材を容易に動作させることができる。
【0025】
(9)(1)から(8)のいずれかのクランプ装置において、クランプ装置は、被固定物Wの孔32に挿入されて当該孔32の内周面に密着するように前記クランプロッド29の先端部外周側に配置された押圧部材35と、前記押圧部材35を前記軸心方向のうちの先端側方向へ押すように前記ハウジング1の内部に配置された支持筒34であって、前記クランプロッド29が挿入される筒孔34aを有する支持筒34と、前記支持筒34を前記先端側方向へ付勢する付勢手段45、59であって、前記ハウジング1の内部に配置された付勢手段45、59と、を備えてもよい。
【0026】
この構成によると、被固定物の孔に押圧部材を密着させて当該被固定物をハウジングに固定するための構成がコンパクトなものとなる。
【0027】
(10)(9)のクランプ装置において、例えば、図3に示すように、前記付勢手段59は、流体圧駆動の支持ピストン59であってもよい。
【0028】
この構成によると、支持筒を先端側方向へ容易に付勢することができる。
【0029】
(11)(1)から(10)のいずれかのクランプ装置において、前記リンク部材49は、前記ハウジング1の内部に形成されたリンク室48に配置されており、前記ハウジング1に形成されたエア供給路54から前記リンク室48にエアブロー用の圧縮空気が供給されてもよい。
【0030】
この構成によると、ごみなどがリンク室48に侵入することをより抑制することができ、その結果、ごみなどでリンク部材が摩耗したり破損したりするのを防止することができる。
【0031】
(12)(1)から(11)のいずれかのクランプ装置において、前記クランプロッド29は、先端側から順に、クランプロッド本体30と、連結部材31とを有してもよい。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、回転するような荷重がクランプロッドに作用することを抑制することができる、クランプロッドの軸心がピストンの軸心からずれたクランプ装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1図1は、本発明の第1実施形態を示し、クランプ装置のリリース状態における側面視の断面図である。
図2図2は、図1に示すクランプ装置のロック状態における側面視の断面図である。
図3図3は、第1実施形態の変形例を示し、クランプ装置のリリース状態における側面視の断面図である。
図4図4は、本発明の第2実施形態を示し、クランプ装置のリリース状態における側面視の断面図である。
図5図5は、図4に示すクランプ装置のロック状態における側面視の断面図である。
図6図6は、本発明の第3実施形態を示し、クランプ装置のリリース状態における側面視の断面図である。
図7図7は、第1実施形態の変形例を示し、クランプ装置のリリース状態における側面視の断面図である。
図8図8は、第1実施形態の変形例を示し、クランプ装置のリリース状態における側面視の断面図である。
図9A図9Aは、リンク部材の変形例およびクランプロッドを構成する連結部材の変形例を示す側面視の断面図である。
図9B図9Bは、図9Aの9B-9B断面図である。
図9C図9Cは、図9Aの9C-9C断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1および図2は、本発明の第1実施形態を示している。まず、図1および図2に基づいて、第1実施形態のクランプ装置の構成を説明する。
【0035】
テーブル等の固定台Tにクランプ装置のハウジング1が固定される。ハウジング1は、第1ハウジングとしての下ハウジング2と、第2ハウジングとしての上ハウジング3と、下ハウジング2の下端部に固定される下端壁4とを備える。下ハウジング2と上ハウジング3とは、複数のボルト(図示せず)によって固定される。
【0036】
下ハウジング2の下部(基端側部分)に第1シリンダ孔5が形成され、第1シリンダ孔5の上側(先端側)に第2シリンダ孔6が形成される。第1シリンダ孔5と第2シリンダ孔6とでシリンダ孔7を構成する。
【0037】
上記シリンダ孔7にピストン8がシリンダ孔7の軸心方向Zへ移動可能に挿入される。ピストン8は、ピストン本体としての第1ピストン本体9と、ピストンロッド11と、第2ピストン本体10とを備える流体圧駆動のピストンである。
【0038】
シリンダ孔7の下部部分である第1シリンダ孔5内に第1ピストン本体9が上下方向(シリンダ孔7の軸心方向Z)に移動可能で保密状に挿入される。この第1ピストン本体9にピストンロッド11がボルト12で固定されている。ピストンロッド11は、ピストンロッド11の端部において第1ピストン本体9に固定されており、第1ピストン本体9から上記軸心方向Zのうちの上方向(先端側方向)へ突出している。ピストンロッド11は、第1ピストン本体9から下方向(基端側方向)へは突出していない。
【0039】
なお、第1ピストン本体9とピストンロッド11とは一体であってもよい。すなわち、第1ピストン本体9とピストンロッド11とは1つの素材から形成されてもよい。
【0040】
第1ピストン本体9の上側(先端側)で第2シリンダ孔6内に上記第2ピストン本体10が上下方向(シリンダ孔7の軸心方向Z)に移動可能で保密状に挿入される。この第2ピストン本体10にピストンロッド11が保密状に挿入される。第2ピストン本体10は、ピストンロッド11の外周に形成された段差部11aによって上方向(先端側方向)への移動が制限されており、ピストンロッド11を先端側方向へ押すように構成されている。なお、第2ピストン本体10は、ピストンロッド11に固定されてもよい。
【0041】
第1シリンダ孔5は第2シリンダ孔6よりも径が大きく、第1シリンダ孔5と第2シリンダ孔6との境界部分に段差部13が形成される。この段差部13に、第1シリンダ孔5と第2シリンダ孔6とにシリンダ孔7を仕切る隔壁14が保密状に挿入される。隔壁14は、段差部13と止め輪15とで下ハウジング2に固定されている。ピストンロッド11は、隔壁14に形成される挿入孔に封止部材を介して保密状に挿入されている。
【0042】
第1ピストン本体9を上方(先端側)へ移動させるための第1ロック室16が、下端壁4と第1ピストン本体9との間(第1ピストン本体9の下方(基端側))に設けられるとともに、第2ピストン本体10を上方(先端側)へ移動させるための第2ロック室17が、隔壁14と第2ピストン本体10との間に設けられる。上記第1ロック室16および第2ロック室17に、ロック用の圧力流体としての圧縮空気がロックポート18を介して給排される。ロックポート18と第2ロック室17とは、下ハウジング2に形成されたポート側通路19で接続され、第2ロック室17と第1ロック室16とは、ピストンロッド11の内部に形成されたロック用第1連通路20およびボルト12に形成されたロック用第2連通路21で連通される。ポート側通路19とロック用第1連通路20とロック用第2連通路21とで、第1ロック室16および第2ロック室17に圧力流体を給排するロック用通路22を構成する。ロック用第1連通路20は、ピストンロッド11の外周面から径内方向へ向けてあけられた孔20aと、ピストンロッド11の軸方向に延びる孔20bとを有する。なお、ロックポート18への圧縮空気の給排通路の図示は省略されている。
【0043】
第1ピストン本体9の下面の面積(受圧面積)は、第1ピストン本体9の上面の面積(受圧面積)よりも、ピストンロッド11の断面積分、大きくなる。したがって、ピストンロッド11の上昇駆動力は、ピストンロッド11の下降駆動力よりも大きい。下方向(基端側方向)は、クランプロッド29のロック方向である。ピストンロッド11が上方向(先端側方向)へ移動(上昇)することで、リンク部材49を介して、クランプロッド29は、先端側方向とは逆方向の基端側方向、すなわちロック方向へ移動する。以上より、ロック駆動のときのピストン出力が、リリース駆動のときのピストン出力よりも大きくなる。そのため、ロック駆動においてクランプロッド29を大きな力で移動させることができる。また、ロック駆動力が大きいので、大型なピストン8とする必要はなく、コンパクトなクランプ装置とすることも可能である。
【0044】
特許文献1に記載の従来のクランプ装置は、ピストンが下方向へ移動することでワークをロックする。本実施形態のクランプ装置は、従来のクランプ装置におけるピストンの下降駆動力よりも大きな、ピストン8(ピストンロッド11)の上昇駆動力をリンク部材49で反転させてクランプロッド29に下方向(ロック方向)に作用させている。このため、本実施形態のクランプ装置によると、従来のクランプ装置に比べてロック駆動力を大きくすることができ、その結果、従来と同じ径寸法のピストンで、従来よりも強力に被固定物(ワークW)をクランプすることができる。
【0045】
第1ロック室16には、第1ピストン本体9を上方(先端側)へ付勢する第1付勢手段としての第1バネ27が配置されている。第1バネ27は圧縮コイルバネであり、本実施形態では、2本の第1バネ27が第1ロック室16に配置されている。第2ロック室17には、第2ピストン本体10を上方(先端側)へ付勢する第2付勢手段としての第2バネ28が配置されている。第2バネ28は圧縮コイルバネであり、本実施形態では、2本の第2バネ28が第2ロック室17に配置されている。第1バネ27および第2バネ28は、2本に限定されるものではない。第1バネ27および第2バネ28を設けることで、ロック駆動のときのピストン出力をより大きくすることができる。なお、第1バネ27および第2バネ28は、無くてもよい。
【0046】
第1ピストン本体9と隔壁14との間に第1リリース室23が設けられるとともに、第2ピストン本体10の上方(先端側)に第2リリース室24が設けられる。上記第1リリース室23に、リリース用の圧力流体としての圧縮空気が下ハウジング2に形成された第1リリース用通路25から給排される。同様に、第2リリース室24に、リリース用の圧力流体としての圧縮空気が下ハウジング2に形成された第2リリース用通路26から給排される。なお、第1リリース用通路25および第2リリース用通路26に連通するリリースポートの図示は省略されている。
【0047】
上ハウジング3に、軸心方向Zへ移動可能にクランプロッド29が挿入される。クランプロッド29は、ピストン8で下方(基端側)へ移動されることによってロック駆動される。クランプロッド29の軸心C2は、軸心方向Zに対して直交する方向へピストン8の軸心C1から所定の距離離されている。軸心C1と軸心C2とは平行である。クランプロッド29は、先端側から順に、クランプロッド本体30と、連結部材31とを有する。クランプロッド本体30と連結部材31とは同軸上に配置される。連結部材31の上端部分にT溝31aが形成されており、このT溝31aに、クランプロッド本体30の下端に設けられたT脚30aが係合される。T脚30a(クランプロッド本体30)と連結部材31とはピン部材36で連結されている。ピン部材36は、無くてもよい。クランプロッド本体30は、上記T溝31aとT脚30aとによって、連結部材31に対して水平方向に移動可能に連結されている。
【0048】
連結部材31の動きを滑らかなものとするために、連結部材31の側面(外周面)には、当該連結部材31の周方向に延びる溝31bが形成されている。溝31bは複数形成されている。当該溝31b部分に油だまりが形成されることにより、後述する支持筒34の筒孔34aと連結部材31の側面との間に働く摩擦力を小さくすることができ、連結部材31の動きを滑らかなものとすることができる。
【0049】
クランプロッド本体30の先端部の外周側には、被固定物としてのワークWの孔32に挿入される筒形状の(キャップ形状の)カバー部材33が配置され、カバー部材33の下に支持筒34が配置される。カバー部材33の側面に複数の開口33aが形成されており、これらの開口33aのそれぞれの内部に押圧部材としてのグリッパ35が配置される。グリッパ35(カバー部材33)の外周側で上ハウジング3の上面には、ワークWを受け止める着座面57が環状に形成される。グリッパ35は、孔32の内周面を内張りするための把持部材として機能する。グリッパ35は、上記の形態で、クランプロッド本体30の先端部の外周側に配置されている。なお、カバー部材33は、無くてもよい。この場合、グリッパ35の下に支持筒34が直接配置されることとなる。
【0050】
本実施形態では、グリッパ35は、周方向へ所定の間隔をあけて3つ配置される。各グリッパ35は、先端部に設けられた密着部37と下フランジ38とを備える。密着部37の外周には、鋸刃状の突起37aが上下方向へ複数形成される。密着部37の内周には、下方へ向かうにつれてクランプロッド本体30の軸心C2に近づくように傾斜面37bが形成される。
【0051】
上記傾斜面37bに上側から係合する楔面(楔部)30bがクランプロッド本体30の先端部に形成される。この楔面30bは、上記傾斜面37bの数に対応して3つ設けられる。本実施形態では、楔面30bおよび傾斜面37bはいずれも平面によって構成されている。
【0052】
3つのグリッパ35の下フランジ38およびカバー部材33の下部には、ゴムなどの弾性体からなる薄肉のリング39が装着される。このリング39の弾性力によって、各グリッパ35は、クランプロッド本体30の軸心C2へ向けて半径方向の内方へ付勢される。
【0053】
上ハウジング3の上孔3aの周壁にダストシール40が装着され、異物が上孔3aからハウジング1内に入ることがダストシール40によって防止されている。このダストシール40の弾性力によって、各グリッパ35とカバー部材33とクランプロッド29とは、上孔3aの軸心に向けて半径方向の内方へ付勢される。
【0054】
前記の支持筒34は、カバー部材33を介して各グリッパ35を下方から支持する上壁41と、上壁41の外周部から下方へ延在する環状壁42とを備える。上壁41と環状壁42の内周面とにより、支持筒34の筒孔34aが形成される。この筒孔34aに、クランプロッド29を構成する連結部材31が挿入される。支持筒34は、上ハウジング3に設けられた収容孔43に上下移動可能に挿入される。また、支持筒34の下方で下ハウジング2の内部に形成されたバネ室44には、支持筒34を上方向(先端側方向)へ付勢する付勢手段としてのバネ45が配置されている。バネ45は圧縮コイルバネである。バネ45の上には、円板状のバネ受け46が設けられている。バネ受け46は、支持筒34の環状壁42の下端を支持する。このバネ45が、バネ受け46、支持筒34、およびカバー部材33を介してグリッパ35を上方向(先端側方向)へ付勢している。
【0055】
支持筒34の動きを滑らかなものとするために、上記環状壁42の外周面には、当該環状壁42の周方向に延びる溝42aが形成されている。溝42aは複数形成されている。当該溝42a部分に油だまりが形成されることにより、収容孔43の内周面と環状壁42の外周面との間に働く摩擦力を小さくすることができ、支持筒34の動きを滑らかなものとすることができる。
【0056】
バネ室44には、上記バネ45に加えて、リリースバネ47が配置されている。リリースバネ47は圧縮コイルバネである。このリリースバネ47が、クランプロッド29を上方向(先端側方向)へ付勢している。
【0057】
ピストンロッド11の上方で上ハウジング3の内部に形成されたリンク室48には、クランプロッド29とピストンロッド11とを連動させるリンク部材49が配置される。リンク部材49は、回動支軸50で支持されており、当該回動支軸50の軸回りに回転可能である。回動支軸50は、その両端部において上ハウジング3に固定されている。すなわち、回動支軸50は上ハウジング3で支持されている。本実施形態では、回動支軸50は回動不能で、リンク部材49が回動支軸50に対して回動可能とされているが、回動支軸50が上ハウジング3に対して回動可能とされて、リンク部材49は回動支軸50に固定されてもよい。
【0058】
上ハウジング3(ハウジング1)の内部にリンク部材49が配置されるので、外部のごみなどでリンク部材49が摩耗したり破損したりするのを防止することができる。また、後述するように、エアブロー用の圧縮空気がリンク室48に供給されるので、リンク室48(リンク部材49が配置されたハウジング1)内にごみなどが侵入することをより抑制することができ、その結果、ごみなどでリンク部材が摩耗したり破損したりするのをより防止することができる。また、リンク部材49がハウジング1の内部に配置されるので、コンパクトなクランプ装置とすることができる。
【0059】
リンク部材49の一方の端部である第1端部51はクランプロッド29側に配置される。クランプロッド29を構成する連結部材31の下部の側面に、上記第1端部51が挿入される凹部52が形成されている。当該凹部52における下側(基端側)のクランプロッド29の軸心C2部を、第1端部51がほぼ真っすぐ下方向(基端側方向)に押すように第1端部51は形成される。そのため、クランプロッド29をロック駆動したときに、クランプロッド29の軸心C2が傾斜するような荷重は発生しにくい。リンク部材49の他方の端部である第2端部53は、ピストンロッド11の先端部で下方から押される。
【0060】
また、エアブロー用のエア供給路54が下ハウジング2の内部に形成される。エア供給路54に供給されたエアブロー用の圧縮空気は、例えば、リンク室48、バネ室44、連結部材31の下端に形成された孔55、孔55よりも上方で連結部材31に形成された孔56、およびグリッパ35とカバー部材33との隙間、をこの順で通って、ハウジング1の外部へ排出される。
【0061】
また、上ハウジング3の上面に形成された着座面57で開口するエア通路58が、上ハウジング3に形成されている。エア供給路54に供給されたエアブロー用の圧縮空気は、上記の経路に加えて、リンク室48、およびエア通路58をこの順で通って、ハウジング1の外部へ排出される。
【0062】
上記構成のクランプ装置は次のように動作する。
【0063】
図1に示すリリース状態では、第1ロック室16および第2ロック室17から圧縮空気が排出されているとともに、第1リリース室23および第2リリース室24に圧縮空気が供給されている。これにより、ピストンロッド11が下降し、クランプロッド29がリリースバネ47によって上昇させられている。また、支持筒34とカバー部材33とグリッパ35とがバネ45によって上昇位置に保持され、グリッパ35はリング39の弾性力によって縮径状態とされている。また、グリッパ35およびクランプロッド本体30は、ダストシール40の弾性力によって連結部材31の軸心と同軸上に位置されている。
【0064】
図1に示すリリース状態から図2に示すロック状態へ切り換えるときは、まず、上記リリース状態で、何らかの昇降手段または自重によってワークWを下降させ、グリッパ35が配置されたクランプロッド本体30の先端部分をワークWの孔32に挿入していく。クランプロッド本体30の先端部分を挿入していくと、ワークWの下面が、上ハウジング3の着座面57に受け止められる。
【0065】
次いで、第1リリース室23および第2リリース室24の圧縮空気を排出するとともに、第1ロック室16および第2ロック室17に圧縮空気を供給する。すると、第1ロック室16の圧縮空気によって第1ピストン本体9がピストンロッド11を上方に押すとともに、第2ロック室17の圧縮空気によって第2ピストン本体10がピストンロッド11を上方に押す。これにより、ピストンロッド11は上昇する(先端側方向へ移動する)。ピストンロッド11が上昇すると、ピストンロッド11の先端部がリンク部材49の第2端部53を下方から押す。第2端部53が下方から押されることで、リンク部材49は、図示上、反時計回りに回動し、リンク部材49の第1端部51が、連結部材31(クランプロッド29)の軸心C2部を下方向(基端側方向)に押す。すると、クランプロッド29(クランプロッド本体30および連結部材31)は、バネ45によって上昇位置に保持されたグリッパ35に対して、リリースバネ47の付勢力に抗して下降していく。すなわち、クランプロッド29は、軸心方向Zのうちの基端側方向へ移動する。基端側方向は、クランプロッド29のロック方向である。なお、第1端部51が押す箇所は、正確な軸心C2ではなく、軸心C2から少しだけずれた箇所を第1端部51が押してもよい(他の実施形態および変形例についても同様)。
【0066】
これにより、クランプロッド本体30の楔面30bによってグリッパ35が拡径され(半径方向の外方へ移動され)、グリッパ35がワークWの孔32の内周面に係合する。引き続いて、クランプロッド29の下降力により、孔32の内周面に食い込んで密着した状態のグリッパ35が孔32を介してワークWを下向きに引っ張り、グリッパ35、カバー部材33、および支持筒34は、バネ45の付勢力に抗して下降する。これにより、ワークWは、上ハウジング3の着座面57に強力に押し付けられた状態となる。
【0067】
図2に示すロック状態から図1に示すリリース状態へ切り換えるときは、第1ロック室16および第2ロック室17の圧縮空気を排出するとともに、第1リリース室23および第2リリース室24に圧縮空気を供給する。すると、第1リリース室23の圧縮空気によって第1ピストン本体9がピストンロッド11を下方に押すとともに、第2リリース室24の圧縮空気によって第2ピストン本体10が下降する。これにより、ピストンロッド11は下降する。ピストンロッド11が下降すると、ピストンロッド11の先端部がリンク部材49の第2端部53から離れようとし、リンク部材49は、ピストンロッド11による拘束から解放される。その結果、バネ45の付勢力によって、支持筒34、カバー部材33、およびグリッパ35が上昇するとともに、リリースバネ47の付勢力によってクランプロッド29(クランプロッド本体30および連結部材31)が上昇する。また、リンク部材49の第1端部51が連結部材31で引き上げられることで、リンク部材49は、図示上、時計回りに回動する。そして、支持筒34、カバー部材33、およびグリッパ35は、バネ45によって上昇位置に保持され、グリッパ35は、リング39の弾性力によって縮径する(半径方向の内方へ移動する)。
【0068】
図3は、第1実施形態の変形例を示す。この変形例のクランプ装置は、支持筒34を上方向(先端側方向)へ付勢する付勢手段が、第1実施形態と相違する。なお、当該変形例のクランプ装置を構成する各部材について、第1実施形態のクランプ装置を構成する各部材と同様の部材については、同じ符号を付している(図4以降に示す実施形態および変形例についても同様)。
【0069】
第1実施形態のクランプ装置の構成と、本変形例のクランプ装置の構成との相違点は次のとおりである。
【0070】
支持筒34を上方向(先端側方向)へ付勢する付勢手段として、流体圧駆動の支持ピストン59が本変形例では用いられている。支持ピストン59は、第1実施形態における付勢手段としてのバネ45と同様、支持筒34の下方で下ハウジング2の内部に形成されたバネ室44に配置される。支持ピストン59は、バネ室44内に上下方向(軸心方向Z)に移動可能で保密状に挿入される。支持ピストン59は、リリースバネ47の配置スペースを確保するための筒孔59aを有し、ピストン本体に類似する大径部60と、ピストンロッドに類似する小径部61とを備える。
【0071】
大径部60の下に環状の付勢室62が設けられる。この付勢室62に、圧力流体としての圧縮空気が下ハウジング2に形成された付勢用通路63から給排される。付勢用通路63は、第2ロック室17(ロック室)またはポート側通路19(ロック用通路)に連通されている。
【0072】
第1実施形態における付勢手段としてのバネ45は、支持筒34を上方向(先端側方向)へ常時付勢する。本変形例における上記支持ピストン59は、クランプ装置がリリース状態からロック状態へ切り換えられたとき、およびロック状態のときに、支持筒34を上方向(先端側方向)へ付勢する。リリース状態のときには、リリースバネ47が連結部材31と支持筒34とカバー部材33とを介してグリッパ35を上方に付勢する。
【0073】
図4および図5は、本発明の第2実施形態を示す。第2実施形態のクランプ装置は、回動支軸50を支持する箇所が第1実施形態と相違する。
【0074】
第1実施形態では、回動支軸50は上ハウジング3で支持されている。これに対して、第2実施形態では、回動支軸50は、クランプロッド29を構成する連結部材31で支持される。第2実施形態において、回動支軸50は、リンク部材49の第1端部51側に配置される。
【0075】
リンク部材49は、回動支軸50で支持されており、当該回動支軸50の軸回りに回転可能である。回動支軸50は、その端部において連結部材31に固定されている。本実施形態では、回動支軸50は回動不能で、リンク部材49が回動支軸50に対して回動可能とされているが、回動支軸50が連結部材31に対して回動可能とされて、リンク部材49は回動支軸50に固定されてもよい。
【0076】
リンク部材49は、第1端部51と第2端部53との間の上面に形成された山部49a(凸部)を有する。クランプ装置が図4に示すリリース状態から図5に示すロック状態へ切り換えられるとき、リンク部材49は、第2端部53が下方から押されることで、図示上、反時計回りに回動する。このとき、上記山部49aが、リンク室48の天井壁に当たり、当該山部49aを支点にして、第1端部51が、連結部材31(クランプロッド29)の軸心C2部を下方向(基端側方向)に押す。なお、山部49aはリリース状態のときからリンク室48の天井壁に当たっていてもよい。
【0077】
図6は、本発明の第3実施形態を示す。第3実施形態のクランプ装置は、第2実施形態のクランプ装置と同様、回動支軸50を支持する箇所が第1実施形態と相違する。
【0078】
第3実施形態では、回動支軸50は、ピストンロッド11の先端部で支持される。第3実施形態において、回動支軸50は、リンク部材49の第2端部53側に配置される。
【0079】
リンク部材49は、回動支軸50で支持されており、当該回動支軸50の軸回りに回転可能である。回動支軸50は、ピストンロッド11の先端部に固定されている。本実施形態では、回動支軸50は回動不能で、リンク部材49が回動支軸50に対して回動可能とされているが、回動支軸50がピストンロッド11に対して回動可能とされて、リンク部材49は回動支軸50に固定されてもよい。
【0080】
第2実施形態と同様、リンク部材49は、第1端部51と第2端部53との間の上面に形成された山部49a(凸部)を有する。クランプ装置がリリース状態からロック状態へ切り換えられるとき、リンク部材49は、第2端部53が下方から押されることで、ピストンロッド11とともに第2端部53側が押し上げられるとともに、図示上、反時計回りに回動する。このとき、上記山部49aが、リンク室48の天井壁に当たり、当該山部49aを支点にして、第1端部51が、連結部材31(クランプロッド29)の軸心C2部を下方向(基端側方向)に押す。なお、山部49aはリリース状態のときからリンク室48の天井壁に当たっていてもよい。
【0081】
図7は、第1実施形態の変形例を示す。この変形例のクランプ装置は、ピストン8の構成が第1実施形態と相違する。
【0082】
第1実施形態におけるピストン8は、いわゆるタンデム形式のピストンであって、2つの(複数の)ピストン本体を備えている。これに対して、当該変形例におけるピストン8は、1つのピストン本体9のみを備える。ピストン8は、ピストン本体9とピストンロッド11とを備え、ピストン本体9とピストンロッド11とは一体とされている。なお、ピストン本体9とピストンロッド11とは、第1実施形態のように別体とされてもよい。1つのピストン本体9のみを備えるため、ロック室16も1つであり、リリース室23も1つである。また、リリース用通路26も1つである。
【0083】
図8は、第1実施形態の変形例を示す。この変形例のクランプ装置は、クランプロッド29を上方向(先端側方向)へ付勢する付勢手段が第1実施形態と相違する。
【0084】
第1実施形態では、バネ室44に配置されたリリースバネ47が、クランプロッド29を上方向(先端側方向)へ付勢する付勢手段を構成している。これに対して、当該変形例では、リンク室48にリリースバネ47が配置される。リリースバネ47は、リンク部材49の上面に形成された穴49bに一方の端部が装着され、リンク室48の天井壁に形成された穴48aに他方の端部が装着される。当該変形例におけるリリースバネ47は、リンク部材49を介して、クランプロッド29(連結部材31)を上方向(先端側方向)へ付勢する。
【0085】
図9Aから図9Cは、リンク部材49の変形例およびクランプロッド29を構成する連結部材31の変形例を示す。図9Aは、図1に示すクランプ装置の図示において、リンク部材49および連結部材31を示す部分のみを拡大した図に相当する。図9Aおよび図9Cに示す回動支軸50は、図1に示すクランプ装置の場合と同じく、上ハウジング3で支持されている。なお、図9Aおよび図9Cに示す回動支軸50は、リンク部材49における位置が変更されることなどによって、図4に示すクランプ装置のように、連結部材31で支持されるように構成されてもよい。同様に、図9Aおよび図9Cに示す回動支軸50は、リンク部材49における位置が変更されることなどによって、図6に示すクランプ装置のように、ピストンロッド11の先端部で支持されるように構成されてもよい。
【0086】
図9Aから図9Cに示すリンク部材49の第1端部51は、第1-1端部65および第1-2端部66を有する二股形状とされている。
【0087】
連結部材31の側面に、第1-1端部65が挿入される凹部64aが形成されるとともに、第1-2端部66が挿入される凹部64bが形成される。凹部64aおよび凹部64bは、連結部材31の側面の互いに反対側に形成される。凹部64aと凹部64bとで、第1端部51が挿入される凹部64が構成される。当該凹部64における下側(基端側)の、連結部材31の面のうちの部分69aを、第1-1端部65がほぼ真っすぐ下方向(基端側方向)に押す。また、凹部64における下側(基端側)の、連結部材31の面のうちの部分69bを、第1-2端部66がほぼ真っすぐ下方向(基端側方向)に押す。
【0088】
部分69aおよび部分69bは、クランプロッド29の軸心C2部まわりで等配の位置にある、クランプロッド29の複数部分に相当する。「軸心C2部まわりで等配の位置」とは、軸心C2を中心とする軸心C2まわりにおいて互いに等位相差の位置であり、且つ軸心C2からの距離が等しい位置のことをいう。本実施形態を例にして説明すると、凹部64における部分69aおよび部分69bは、軸心C2まわりにおいて角度:180度差の位置にあり、且つ軸心C2からの距離が等しい位置にある。
【0089】
ピストンロッド11の先端部で第2端部53が下方から押されることで、凹部64におけるクランプロッド29の軸心C2部まわりで等配の位置にあるクランプロッド29(連結部材31)の複数部分(本実施形態では、部分69aおよび部分69b)を第1端部51が下方向(基端側方向)へ押し、その結果、クランプロッド29が基端側方向へ移動する。この場合、クランプロッド29(連結部材31)の1か所がリンク部材によって押される場合に比べて、クランプロッドの動きがより安定する。
【0090】
クランプロッド29(連結部材31)における第1端部51が押す複数部分は、部分69aおよび部分69bというような2つの部分に限定されない。第1端部51が押す複数部分は、例えば、軸心C2まわりにおいて角度:120度差の位置にある3つの部分であってもよいし、軸心C2まわりにおいて角度:90度差の位置にある4つの部分であってもよい。すなわち、クランプロッド29(連結部材31)における第1端部51が押す複数部分は、軸心C2まわりにおいて互いに等位相差の位置にあり、且つ軸心C2からの距離が等しい位置にある複数部分であればよい。なお、第1端部51(リンク部材49)は、上記に合わせて、形状および寸法が適宜設計される。本実施形態では、前記のとおり、第1端部51は、第1-1端部65および第1-2端部66を有する二股形状とされている。
【0091】
第1-1端部65と第1-2端部66との間に、クランプロッド29の軸心C2を通る、クランプロッド29(連結部材31)の一部を構成する壁体67が設けられている。この壁体67によって、クランプロッド29(連結部材31)の剛性を高めることができ、その結果、クランプロッド29の動きが安定する。なお、壁体67は無くてもよい。
【0092】
壁体67に形成された壁体67を貫通する孔68は、エアブロー用の圧縮空気が流れる孔である。
【0093】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、上記実施形態の要素を適宜組み合わせたり、上記実施形態に種々の変更を加えたりすることが可能である。
【0094】
例えば、上記の実施形態は次のように変更可能である。
【0095】
図1から図3図7から図9図9Aから図9C)に示すリンク部材49において、ピストンロッド11の先端部とリンク部材49(第2端部53)との係合位置から回動支軸50の軸心までの水平方向の距離が、連結部材31とリンク部材49(第1端部51)との係合位置から回動支軸50の軸心までの水平方向の距離よりも長くなるようにされてもよい。この場合、ピストンロッド11が連結部材31を下方向(基端側方向)に押す力が、リンク部材49を介して増加されて連結部材31に伝達される。このため、被固定物(ワークW)をより強力にクランプすることができる。
【0096】
上記のいずれの実施形態および変形例においても、リンク部材49が回動支軸50で支持されているところ、回動支軸50は省略されてもよい。回動支軸50が無くても、リンク部材49の形状および各部寸法を適切に設計することで、リンク室48の天井壁を支点にしてリンク部材49を回動させて、クランプロッド29の軸心C2部を第1端部51が押すようにすることができる。
【0097】
クランプ装置の姿勢は、例示した上下姿勢に対して、上下逆にしたり、横向きにしたり、さらには斜め向きにしたりしてもよい。
【0098】
クランプ装置を動作させるために使用する圧力流体は、圧縮空気に代えて、圧油でもよく、さらにはその他の液体でもよい。
【0099】
グリッパ35および楔面30bが、周方向へ所定の間隔をあけて3つ配置される例を示したが、グリッパ35および楔面30bは、2つ、4つ、または5つ以上配置されてもよい。
【0100】
被固定物は、ワークWではなく、ワークパレット、金型などであってもよい。
【符号の説明】
【0101】
1:ハウジング、7:シリンダ孔、8:ピストン、9:第1ピストン本体(ピストン本体)、11:ピストンロッド、29:クランプロッド、30:クランプロッド本体、31:連結部材、32:孔、34:支持筒、34a:筒孔、35:グリッパ(押圧部材)、45:バネ(付勢手段)、48:リンク室、49:リンク部材、50:回動支軸、51:第1端部、52:凹部、53:第2端部、54:エア供給路、59:支持ピストン(付勢手段)、64:凹部、65:第1-1端部、66:第1-2端部、67:壁体、C1:ピストンの軸心、C2:クランプロッドの軸心、W:ワーク(被固定物).
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C