(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003376
(43)【公開日】2024-01-15
(54)【発明の名称】オレフィン重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 10/00 20060101AFI20240105BHJP
C08F 4/6592 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
C08F10/00
C08F4/6592
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102477
(22)【出願日】2022-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】596133485
【氏名又は名称】日本ポリプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】船谷 宗人
【テーマコード(参考)】
4J100
4J128
【Fターム(参考)】
4J100AA02Q
4J100AA03P
4J100CA03
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4J128GA01
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4J128GA09
4J128GA19
4J128GA26
(57)【要約】
【課題】特定の粘土鉱物を成分として有する触媒を用いたオレフィン重合体の製造において、触媒活性を阻害することなく、重合反応時に塊状ポリマーや反応器への付着物の発生を抑制しうるオレフィン重合体の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 下記成分[A]及び成分[B]を含むオレフィン重合触媒の存在下、オレフィン重合体を製造する方法であって、
成分[A]:モンモリロナイト及び/またはバイデライトを含み、比表面積が150m2/g以上700m2/g以下である、イオン交換性層状珪酸塩粒子
成分[B]:遷移金属化合物
特定の構造を有する、数平均分子量が500以上、8000以下であるポリオキシエチレン化合物を添加することを特徴とする、オレフィン重合体の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分[A]及び成分[B]を含むオレフィン重合触媒の存在下、オレフィン重合体を製造する方法であって、
成分[A]:モンモリロナイト及び/またはバイデライトを含み、比表面積が150m2/g以上700m2/g以下である、イオン交換性層状珪酸塩粒子
成分[B]:遷移金属化合物
下記一般式(I)で表され、数平均分子量が500以上、8000以下であるポリオキシエチレン化合物を添加することを特徴とする、オレフィン重合体の製造方法。
式(I):Ra-((CH2CH2O)n-Rb)m
[式(I)中、
Raは、水素原子、炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子およびホウ素原子からなる群より選ばれる少なくとも1つの原子で構成される、m価の置換基であり、
Rbはそれぞれ独立に、水素原子、炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子、ホウ素原子、アルカリ金属原子およびアルカリ土類金属原子からなる群より選ばれる少なくとも1つの原子で構成される1価の置換基であり、
mは1~6の整数であり、
nは2以上の整数であり、
mが2以上の場合、複数のRb及びnは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。]
【請求項2】
前記イオン交換性層状珪酸塩粒子は、平均粒子径が2μm以上500μm以下であることを特徴とする、請求項1に記載のオレフィン重合体の製造方法。
【請求項3】
前記オレフィン重合触媒は、さらに下記成分[C]を含む、請求項1又は2に記載のオレフィン重合体の製造方法。
成分[C]:有機アルミニウム化合物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンを製造する技術として、メタロセン化合物に代表される有機金属化合物を固体状の担体に担持する等した固体状触媒を用いる技術は広く知られている。
このような固体状触媒を用いてポリオレフィンを製造すると、重合系内で塊状、シート状のポリマーや微粉等が発生し、重合反応器の除熱、撹拌能力への負荷を高めたり、配管を閉塞させたり等の問題を引き起こすことがある。
このような問題の解決方法として、界面活性剤などの添加物を用いることが知られている。
【0003】
例えば特許文献1では、ビスシクロペンタジエニル配位子を有するメタロセン化合物、メチルアルミノキサン、及びシリカ担体からなる触媒の存在下、特定の重合条件下でエチレン-ヘキセン共重合体を製造する際、ヒドロキシエチル基、エチレンオキシ基、またはプロピレンオキシ基をもつ化合物を添加することで反応器への付着を防止できることが開示されている。しかしながら、未添加同等の触媒活性や嵩密度を維持できている例は少ない。
【0004】
特許文献2では、架橋型ビスインデニル配位子を有するメタロセン化合物、非配位性イオン含有化合物であるホウ素化合物、及びシリカ担体からなる触媒を用いて、比較的低分子量のポリエチレングリコールモノステアレート等を用いる例が開示されている。
特許文献3では、ビスシクロペンタジエニル配位子および架橋型シクロペンタジエニルフルオレニル配位子を有するメタロセン化合物、メチルアルミノキサン、及びシリカ担体からなる触媒を用いて特定の重合条件下でエチレン-ヘキセン共重合体やポリプロピレンを製造する技術が開示されているが、比較的低分子量のポリエチレンラウリルエーテル等では反応器への付着の防止について十分な効果が得られない上、触媒活性が低下してしまうため、特定の組成、粘度範囲のポリアルキレンオキサイドブロック共重合体が好ましいとされている。しかしながら、特許文献1で有効とされている化合物でも効果が不十分とされている例もある。
【0005】
特許文献4では、架橋型ビスシクロペンタジエニル配位子を有するメタロセン化合物、メチルアルミノキサン、及びシリカ担体からなる触媒と、ステアリン酸アルミニウムなどのカルボン酸塩を用いることで、安定した操作性が得られることが開示されている。
以上のように、助触媒としてアルミノキサン化合物やホウ素化合物を含有する担持型メタロセン触媒を用いた際の重合反応の操作性を、添加剤によって改良する技術は広く知られている。
【0006】
一方、助触媒及び担体として、粘土鉱物を使用するオレフィン重合技術も知られている。粘土鉱物はアルミノキサン化合物と異なり、水や酸素と激しく反応することがなく、安全性が高いうえ、比較的安価であることから、これを触媒成分として用いるオレフィン重合技術は産業的に優れた技術である。しかしながら、他の触媒系と同様、重合時に塊の生成や微粉の生成、反応器への付着等によって、重合反応の操作性が損なわれることがあった。
【0007】
例えば特許文献5では、有機変性粘土をポリエチレンオキサイドソルビタンモノオリエートやポリオキシエチレンで処理した担体と架橋型シクロペンタジエニルフルオレニル配位子メタロセン化合物からなる触媒を使用する例が開示されている。しかしながら特許文献5では、特許文献1において高い効果が示されるポリエチレンオキシドを用いた場合、触媒活性が、ポリエチレンオキサイドソルビタンモノオリエートを用いて調製した触媒の半分程度にとどまっている。また、助触媒及び担体として用いられている粘土鉱物は合成ヘクトライトであって、このような粘土鉱物ではメタロセン化合物の構造やモノマーであるオレフィンの種類によっては、実質的に触媒活性を示さない等の問題点がある(たとえば非特許文献1)。
【0008】
一方で特許文献6では、ビスシクロペンタジエニル配位子を有するメタロセン化合物と酸によって活性化された粘土鉱物を担体とする触媒と、有機アルミニウムと反応させた非イオン性界面活性剤を用いることで、触媒の触媒容器や触媒導入管内への付着性が低減されることが開示されている。しかしながら、有機アルミニウムと非イオン性界面活性剤とを事前に反応させる工程が必要なことでコスト上昇の原因となることが問題となる上に、添加剤を用いない場合に対し、効果が十分といえるものではない。また重合反応時の付着、塊や生成したポリマー由来の微粉の付着等を抑制できるものではなかった。また特許文献1で有効とされていたポリプロピレングリコールも有機アルミニウム化合物と事前反応をしない場合は、触媒付着を防止する効果のないことが述べられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000-327707号公報
【特許文献2】特開2004-018785号公報
【特許文献3】特開2004-262992号公報
【特許文献4】特表2002-520427号公報
【特許文献5】特開2003-201309号公報
【特許文献6】特開2004-059828号公報
【非特許文献1】Clay Science 20,49-58(2016)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のように従来の技術では、触媒を構成する成分である助触媒や担体、及び重合条件によって、触媒本来の活性等の性質を損なわずに、付着や微粉、塊の生成を抑制するといった製造の安定性を達成できる添加剤の種類、濃度や添加方法は異なっており、特に特定の活性化された粘土鉱物を成分として有する触媒を用いたポリオレフィン製造においては有効な添加剤は知られていなかった。
【0011】
上記問題について鋭意検討した結果、特定のイオン交換性層状珪酸塩を成分として含む触媒と特定の構造を有する化合物を用いることで、上記課題を解決できることを見出した。
【0012】
本発明は、かかる従来技術の状況に鑑み、特定の活性化された粘土鉱物を成分として有する触媒を用いたオレフィン重合体の製造において、触媒活性を阻害することなく、重合反応時に塊状ポリマーや反応器への付着物の発生を抑制しうるオレフィン重合体の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、特定のイオン交換性層状珪酸塩粒子を成分とする触媒と特定の部分構造を有するポリエーテル化合物を組み合わせることにより触媒活性や重合体の品質を損なうことなく、重合時の塊状ポリマーや反応器への付着物の発生を抑制できることを見出した。
すなわち、本発明は以下の[1]~[3]に関する。
【0014】
[1]下記成分[A]及び成分[B]を含むオレフィン重合触媒の存在下、オレフィン重合体を製造する方法であって、
成分[A]:モンモリロナイト及び/またはバイデライトを含み、比表面積が150m2/g以上700m2/g以下である、イオン交換性層状珪酸塩粒子
成分[B]:遷移金属化合物
下記一般式(I)で表され、数平均分子量が500以上、8000以下であるポリオキシエチレン化合物を添加することを特徴とする、オレフィン重合体の製造方法。
式(I):Ra-((CH2CH2O)n-Rb)m
[式(I)中、
Raは、水素原子、炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子およびホウ素原子からなる群より選ばれる少なくとも1つの原子で構成される、m価の置換基であり、
Rbはそれぞれ独立に、水素原子、炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子、ホウ素原子、アルカリ金属原子およびアルカリ土類金属原子からなる群より選ばれる少なくとも1つの原子で構成される1価の置換基であり、
mは1~6の整数であり、
nは2以上の整数であり、
mが2以上の場合、複数のRb及びnは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。]
[2]前記イオン交換性層状珪酸塩粒子は、平均粒子径が2μm以上500μm以下であることを特徴とする、前記[1]に記載のオレフィン重合体の製造方法。
[3]前記オレフィン重合触媒は、さらに下記成分[C]を含む、前記[1]又は[2]に記載のオレフィン重合体の製造方法。
成分[C]:有機アルミニウム化合物
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、触媒活性やポリマーの品質を損なうことなく、重合反応時に塊状ポリマーや反応器への付着物の発生を抑制しうる、安定したオレフィン重合体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、実施例P1及びP2、比較例P1及びP2について、MFRに対して触媒活性をプロットしたグラフである。
【
図2】
図2は、実施例P1及びP2、比較例P1及びP2について、MFRに対して塊量をプロットしたグラフである。
【
図3】
図3は、実施例P1及びP2、比較例P1及びP2について、MFRに対して嵩密度(BD)をプロットしたグラフである。
【
図4】
図4は、実施例P3~P22、比較例P1~P12において、水素濃度が異なる以外同一条件の2点の重合活性について、MFR=1換算触媒活性を添加剤の添加量に対してプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のオレフィン重合体の製造方法は、下記成分[A]及び成分[B]を含むオレフィン重合触媒の存在下、オレフィン重合体を製造する方法であって、
成分[A]:モンモリロナイト及び/またはバイデライトを含み、比表面積が150m2/g以上700m2/g以下である、イオン交換性層状珪酸塩粒子
成分[B]:遷移金属化合物
下記一般式(I)で表され、数平均分子量が500以上、8000以下であるポリオキシエチレン化合物を添加することを特徴とする。
式(I):Ra-((CH2CH2O)n-Rb)m
[式(I)中、
Raは、水素原子、炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子およびホウ素原子からなる群より選ばれる少なくとも1つの原子で構成される、m価の置換基であり、
Rbはそれぞれ独立に、水素原子、炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子、ホウ素原子、アルカリ金属原子およびアルカリ土類金属原子からなる群より選ばれる少なくとも1つの原子で構成される1価の置換基であり、
mは1~6の整数であり、
nは2以上の整数であり、
mが2以上の場合、複数のRb及びnは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。]
【0018】
本発明のオレフィン重合体の製造方法においては、前記特定のイオン交換性層状珪酸塩粒子を含むオレフィン重合触媒に、前記特定のポリオキシエチレン化合物を添加した存在下で、オレフィンを重合することにより、触媒活性を阻害することなく、重合反応時に塊状ポリマーや反応器への付着物の発生を抑制しうる。
【0019】
以下、本発明のオレフィン重合体の製造方法について、項目毎に詳細に説明する。
本明細書において数値範囲を示す「~」とは、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
また、下記のイオン交換性層状珪酸塩粒子の特性は、イオン交換性層状珪酸塩粒子の集合体としての特性である。
また、本発明において、アルキル基名称に付随する「n]はノルマル、「s」はセカンダリー、「t」はターシャリーの異性体構造を表す符号である。なお,アルキル基に異性体構造を表す符号が付随していない場合は,ノルマル構造であることを示す。
【0020】
I.オレフィン重合触媒
本発明において用いられるオレフィン重合用触媒は、下記成分[A]及び成分[B]を含む。本発明において用いられるオレフィン重合用触媒は、さらに下記成分[C]を含むことが好ましい。
成分[A]:モンモリロナイト及び/またはバイデライトを含み、比表面積が150m2/g以上700m2/g以下である、イオン交換性層状珪酸塩粒子
成分[B]:遷移金属化合物
成分[C]:有機アルミニウム化合物
【0021】
1.成分[A]
本発明において用いられるオレフィン重合用触媒の成分[A]は、モンモリロナイト及び/またはバイデライトを含み、比表面積が150m2/g以上700m2/g以下である、イオン交換性層状珪酸塩粒子である。
【0022】
(比表面積)
本発明において用いられるイオン交換性層状珪酸塩粒子は比表面積が150m2/g以上、700m2/g以下である。
本発明において用いられるイオン交換性層状珪酸塩粒子の比表面積は、下限値が好ましくは180m2/g以上、より好ましくは200m2/g以上、さらに好ましくは210m2/g以上であり、上限値が好ましくは600m2/g以下、より好ましくは500m2/g以下である。上限値は、400m2/g以下であってもよく、300m2/g以下であってもよい。前記上限値と下限値は任意の組み合わせを採用できる。
一般的に比表面積が増大すると触媒の活性成分量、または活性成分を担持できる量が増大するため、活性が高くなる。一方で、比表面積が大きすぎると細孔径が小さくなることがある。これによって反応基質の拡散速度の低下等が引き起こされ、触媒としての活性低下を招くことがある。
本発明における比表面積とは、ガス吸着法において窒素ガスを用いて測定した吸着等温線データより、BET多点法解析(Rouquerol変換)によって算出された値を指す。ガス吸着法による比表面積の測定方法については、例えばJIS Z8830に解説されている。具体的には後述の実施例に記載の測定方法を採用することができる。
【0023】
(粒子径)
本発明において用いられるイオン交換性層状珪酸塩粒子の粒子径は、特に制限はない。好ましくは平均粒子径が2μm以上、500μm以下である。
平均粒子径は、反応器内への付着や閉塞抑制及び分散性の点から、下限値がより好ましくは3μm以上、さらに好ましくは8μm以上、特に好ましくは10μm以上であり、30μm以上であってもよく、40μm以上であってもよい。上限値が好ましくは200μm以下、より好ましくは100μm以下、さらに好ましくは70μm以下、よりさらに好ましくは60μm以下、特に好ましくは55μm以下である。前記上限値と下限値は任意の組み合わせを採用できる。
一般的に粒子径が小さすぎると反応器内への付着や配管、フィルターの閉塞原因となることがある。一方で、大きすぎると液中(スラリー状態)や気相反応時の分散不良等を引き起こすことがある。
ここで、本発明の平均粒子径は、球等価粒子径分布から求められる体積基準のメジアン径のことをいう。本発明のイオン交換性層状珪酸塩粒子の平均粒子径の測定方法は、具体的には後述の実施例に記載の測定方法を採用することができる。
【0024】
(組成)
本発明において用いられるイオン交換性層状珪酸塩粒子は、少なくともモンモリロナイトおよびバイデライトのいずれかの構造を有し、さらには八面体シートの一部が風化や酸処理、塩処理等によって、欠損した構造であることが好ましい。このような構造をもつものは、酸性白土、活性白土としても知られている。
【0025】
本発明において用いられるイオン交換性層状珪酸塩粒子は、好ましくはモンモリロナイト及び/またはバイデライト型の層状珪酸塩粒子である。モンモリロナイトの八面体シートはアルミニウム、マグネシウム等の金属元素から構成されている。これらの八面体シート構成する金属元素(金属陽イオン)は、後述するイオン交換性層状珪酸塩粒子の製造方法の酸処理に記載したような溶出量で、酸処理前の含有量に対して溶出されているものであることが好ましい。
【0026】
また八面体シートの主構成金属元素がアルミニウム、四面体シートの主構成金属元素がケイ素である場合、ケイ素に対するアルミニウムのモル比は、触媒活性や製品の品質の点から、好ましくは0.05~0.40、より好ましくは0.08~0.30、さらに好ましくは0.10~0.25、よりさらに好ましくは0.12~0.20である。ケイ素に対するアルミニウムのモル比は、0.15~0.20であってよく、0.17~0.19であってよい。
アルミニウムがケイ素に対し多すぎると、細孔容積、比表面積が小さくなる傾向がある。一方、アルミニウムがケイ素に対し少なすぎると活性を示すサイトの量が減少する傾向がある。そのため、触媒や触媒担体としての活性低下や、製品の品質に悪影響を与えることがある。
【0027】
また、ケイ素に対する鉄のモル比は、イオン交換性の点から、好ましくは0~0.20、より好ましくは0.0005~0.10、さらに好ましくは0.001~0.08、よりさらに好ましくは0.005~0.05である。
また、ケイ素に対するマグネシウムのモル比は、イオン交換性の点から、好ましくは0~0.30、より好ましくは0.001~0.30、さらに好ましくは0.01~0.20、よりさらに好ましくは0.02~0.10である。
【0028】
本発明において、後述するイオン交換性層状珪酸塩、及び、イオン交換性層状珪酸塩粒子の組成分析はJIS R2212に準拠して検量線を作成し、蛍光X線測定にて定量する。蛍光X線の測定方法は、具体的には後述の実施例に記載の方法を採用することができる。
【0029】
(イオン交換性層状珪酸塩粒子の製造方法)
本発明において用いられるイオン交換性層状珪酸塩粒子を製造する方法としては、前記特性を有するイオン交換性層状珪酸塩粒子を得ることができれば特に限定されるものではない。
【0030】
(1)イオン交換性層状珪酸塩
本発明において用いられるイオン交換性層状珪酸塩粒子は、モンモリロナイト及び/またはバイデライトを含むイオン交換性層状珪酸塩からなる。
上記イオン交換性層状珪酸塩とは、イオン結合等によって構成される面が互いに弱い結合力で平行に積み重なった結晶構造をとる珪酸塩化合物の一種である。上記イオン交換性層状珪酸塩は、天然産のものに限らず、人工合成物であってもよいがモンモリロナイト、及び/またはバイデライト構造を含むものである。これらは天然には、粘土鉱物の混合物として産出されるため、不純物(石英やクリストバライト、オパール、炭酸塩等が挙げられる)が含まれることが多いが、それらを含んでいてもよい。このような例としてはモンモリロナイトを主成分として含む粘土であるベントナイトや酸性白土が挙げられる。
これらのイオン交換性層状珪酸塩は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
また、これらの天然物を水簸や風簸により精製することがより好ましい。水簸や風簸を行うことで、比重の大きな石英や長石などの不純物が取り除かれる他、膨潤しない珪酸塩も取り除くことができ、好ましいイオン交換性層状珪酸塩を得ることができる。水簸や風簸方法としては、通常用いられる方法を用いることができる。精製の前に乾燥や粉砕を行ってもよい。粉砕様式としては、乾式粉砕、湿式粉砕等が挙げられる。粉砕機としては、ジョークラッシャー、ジャイレトリークラッシャー、ロールクラッシャー、エッジランナー、ハンマーミル、ボールミル、ビーズミル、ジェットミル等が上げられる。
【0032】
また、例えば予めごく少量の炭酸ソーダ等を用いてのイオン交換処理を行ってもよい。
このような例として、例えばCa型ベントナイトをNa型の活性化ベントナイトに転換させたものなどが挙げられる(関税中央分析所報 第56号 P85、粘土科学第21巻第1号1~13(1981))総説)。これにより、水簸に際し、スメクタイトが分散し易くなり粗大な石英等を粒子径差によって速やかに沈降分離することができる。また分散剤として公知の物質を加えてもよく、例えばケイ酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0033】
上記イオン交換性層状珪酸塩は後述する造粒及び化学処理を行うことが好ましい。
また本発明においては、化学処理を加える前段階でイオン交換性を有していれば、該処理によって物理的、化学的な性質が変化し、イオン交換性や層構造がなくなった珪酸塩もイオン交換性層状珪酸塩であるとして取り扱う。
【0034】
上記イオン交換性層状珪酸塩の層間カチオン(イオン交換性層状珪酸塩の層間に含有される陽イオン)の種類としては、特に限定されない。前記層間カチオンは、主成分として、リチウム、ナトリウム等の周期表第1族のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム等の周期表第2族のアルカリ土類金属、アルミニウム、及びケイ素からなる群から選択される少なくとも1種を含んでもよい。あるいは前記層間カチオンは、鉄、コバルト、銅、ニッケル、亜鉛、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、イリジウム、白金、金等の遷移金属原子などを含んでもよい。このようなイオン交換性層状珪酸塩もしくはイオン交換処理に要する原料は、工業原料として比較的容易に入手可能である点で好ましい。
【0035】
上記イオン交換性層状珪酸塩は、天然に産出する形状、人工的に合成した時点の形状でもよいが、造粒や粉砕を行い、形状や粒子径を調整することが好ましい。
造粒前のイオン交換性層状珪酸塩の形状については、特に制限はなく、天然に産出する形状、人工的に合成した時点の形状でもよい。そして、粉砕、造粒、分級などの操作によって形状を加工したイオン交換性層状珪酸塩を用いてもよい。さらに、水簸等の精製操作によって得られたスラリーをそのまま用いてもよい。また不純物(石英やクリストバライト、オパール、炭酸塩等が挙げられる)を含んでいてもよい。
【0036】
好ましい造粒の方法としては、撹拌造粒法、噴霧造粒法、転動造粒法、ブリケッティング、コンパクティング、押出造粒法、流動層造粒法、噴流層造粒法、乳化造粒法、液中造粒法、圧縮成型造粒法等が挙げられる。より好ましくは、噴霧乾燥造粒法や噴霧冷却造粒法、流動層造粒法、噴流層造粒法、液中造粒法、乳化造粒法等が挙げられ、特に好ましくは噴霧乾燥造粒法や噴霧冷却造粒法が挙げられる。
【0037】
噴霧造粒を行う場合、噴霧方式について特に制限はない。ロータリーアトマイザーや1流体ノズル、2流体ノズル、または超音波ノズル等を用いることができる。乾燥媒体についても特に制限はない。乾燥媒体の例としては窒素やアルゴン、空気が挙げられる。
噴霧乾燥造粒の乾燥媒体の供給時の温度についても制限はない。前記温度は分散媒により異なるが、水を例にとると、70℃~300℃、好ましくは80℃~280℃が挙げられる。
【0038】
造粒により製造するイオン交換性層状珪酸塩粒子の粒子径分布は、アトマイザーや乾燥媒体温度、流量等の製造条件によって調整することもできる。また篩や風力分級等の公知の分級技術を用いて調整してもよい。
イオン交換性層状珪酸塩粒子の平均粒子径は、造粒を行っていても上記と同様に2μm以上、500μm以下であってよい。
【0039】
(2)酸処理
本発明において用いられるイオン交換性層状珪酸塩粒子の製造方法においては、上記造粒したイオン交換性層状珪酸塩粒子またはイオン交換性層状珪酸塩を酸類と接触させる酸処理を行い、イオン交換性層状珪酸塩粒子とすることが好ましい。
酸処理は、不純物を溶解させたり、イオン交換性層状珪酸塩の層間に存在する陽イオンの交換を行う。また酸処理は、イオン交換性層状珪酸塩の結晶構造を構成するアルミニウム、鉄、マグネシウム等の陽イオンの一部又は全部を溶出させることによって、細孔構造の特性を変化させることができ、比表面積を増大させることができる。これは、イオン交換性層状珪酸塩粒子の酸強度を増大させ、また単位質量当たりの酸点量を増大させることに寄与する。
【0040】
酸処理によって、八面体シートを構成する金属陽イオンを、酸処理前の含有量に対して、15%~75%溶出させることが好ましく、より好ましくは15%~70%、さらに好ましくは17%~65%、特に好ましくは20%~60%溶出させる。溶出する金属陽イオンの割合(%)は、例えば、金属陽イオンがアルミニウムの場合では、以下の式で、表される。
[化学処理前のアルミニウム/ケイ素(モル比)-化学処理後のアルミニウム/ケイ素(モル比)]÷化学処理前のアルミニウム/ケイ素(モル比)×100
溶出率が上記範囲であると、比表面積が向上し、触媒活性が向上する。
【0041】
酸処理で用いられる酸類としては、塩酸、硫酸、硝酸、シュウ酸、安息香酸、ステアリン酸、プロピリオン酸、フマル酸、マレイン酸、フタル酸などの無機酸および有機酸が例示される。その中でも、無機酸が好ましく、塩酸、硝酸、硫酸が好ましい。さらに好ましくは塩酸、硫酸であり、特に好ましくは硫酸である。
【0042】
イオン交換性層状珪酸塩粒子またはイオン交換性層状珪酸塩と酸類との接触は、効率よく均一に反応させる点から、イオン交換性層状珪酸塩粒子またはイオン交換性層状珪酸塩のスラリー下で行うことが好ましい。
スラリー化のための溶媒としては、特に制限はない。酸処理中に反応を起こさない溶媒が好ましく、水あるいはメタノール、エタノール、クロロホルム、塩化メチレン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン等の有機溶媒が好ましい。さらに好ましくは水である。またこれらの溶媒を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0043】
酸処理時の酸濃度(反応系全体質量に対する酸の質量百分率)について特に制限はない。前記酸濃度は、好ましくは3質量%~50質量%であり、より好ましくは4質量%~40質量%、さらに好ましくは5質量%~20質量%である。
また、酸処理時の温度についても制限はない。前記温度は、好ましくは30℃~102℃、より好ましくは40℃~100℃、さらに好ましくは50℃~95℃である。
酸処理時の溶媒中の固形分濃度についても特に制限はない。前記濃度は、好ましくは3質量%~50質量%、より好ましくは5質量%~30質量%、さらに好ましくは8質量%~20質量%である。
酸処理の時間についても制限はない。前記時間は、好ましくは5分~3000分、より好ましくは10分~1500分、さらに好ましくは30分~750分である。
不純物、陽イオン等が溶出する程度は、酸類の種類、酸類の濃度、処理温度、処理時間等を適宜選択して調整することができる。
また、酸処理は、複数回に分けて行うことも、可能である。
【0044】
(3)塩基処理
本発明において用いられるイオン交換性層状珪酸塩粒子は、イオン交換性層状珪酸塩粒子またはイオン交換性層状珪酸塩を塩基類と接触させる塩基処理を行って、得られるものであってもよい。
イオン交換性層状珪酸塩粒子またはイオン交換性層状珪酸塩は前記酸処理を行った後、さらに塩基類と接触させる塩基処理を行ってもよい。
塩基処理は、不純物を溶解させたり、イオン交換性層状珪酸塩の層間に存在する陽イオンの交換を行う。また塩基処理は、イオン交換性層状珪酸塩の結晶構造を構成するアルミニウム、鉄、マグネシウム、さらにはケイ素等の陽イオンの一部又は全部を溶出させることによって、細孔構造の特性を変化させることができ、比表面積を増大させることができる。
【0045】
塩基処理で用いられる塩基類とは、ブレンステッド塩基として働く物質である。塩基類は、プロトンと反応して水を発生する(中和反応)性質を持つ物質である。好ましくは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、周期表第3~14族の金属からなる群から選ばれる金属の水酸化物が挙げられる。より好ましくはアルカリ金属、アルカリ土類金属、Mn、Fe、Ni、Cu、Zn、Al、Sn、Pbの水酸化物である。さらに好ましくはアルカリ金属、アルカリ土類金属、Mg、Zn、Alの水酸化物である。
塩基類は、以下に限定されるわけではない。具体例としては、LiOH、NaOH、KOH、CsOH、RbOH、Be(OH)2、Mg(OH)2、Ca(OH)2、Sr(OH)2、Mn(OH)2、Cu(OH)2、Cu(OH)3、Zn(OH)2、Al(OH)3、Sn(OH)4、Pb(OH)2、Ni(OH)2、Li2CO3、Na2CO3、K2CO3、Cs2CO3、Rb2CO3、BeCO3、MgCO3、CaCO3、MnCO3、CuCO3、Al2(CO)3、ZnCO3、PbCO3、LiHCO3、NaHCO3、RpHCO3、CsHCO3、Ca(HCO3)2、Mg(HCO3)2などが挙げられる。
塩基類は、単独で用いても複数で用いてもよい。使用方法には、特に制限はない。
イオン交換性層状珪酸塩粒子と接触させる際の塩基類の状態は、溶媒に溶解させていても、固体のままでもよい。溶媒に溶解させて接触させる場合は、その濃度に、制限はなく、上限としては、飽和する濃度以下であることが好ましい。
【0046】
塩基処理は、効率よく均一に反応させる点から、イオン交換性層状珪酸塩粒子スラリー下またはイオン交換性層状珪酸塩のスラリー下で行うことが好ましい。
スラリー化のための溶媒としては、水、またはアルコール等の有機溶媒などが挙げられる。好ましくはエタノール、メタノール、エチレングリコール、グリセリン、または水で、より好ましくは水である。またこれらの溶媒を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0047】
塩基類の使用量は、塩基類との接触前のイオン交換性層状珪酸塩粒子スラリーまたはイオン交換性層状珪酸塩スラリーが含有している酸の量や、その処理目的によっても異なる。
溶媒として水を用いた酸処理後のイオン交換性層状珪酸塩粒子スラリーまたはイオン交換性層状珪酸塩スラリーを用いる場合には、塩基類の使用量は、塩基処理工程中pHが8以下となり、かつ塩基処理工程を終了するときにpHが4.5~8となる量であることが好ましい。
【0048】
また、塩基処理時の温度についても制限はない。前記温度は、好ましくは-20℃~120℃、より好ましくは0℃~105℃、さらに好ましくは10℃~80℃である。
塩基処理時の溶媒中の固形分濃度に特に制限はない。前記濃度は、好ましくは1質量%~50質量%、より好ましくは2質量%~30質量%、さらに好ましくは3質量%~20質量%である。
塩基処理の時間についても制限はない。前記時間は、好ましくは1分~600分、より好ましくは5分~300分、さらに好ましくは10分~120分である。
不純物、陽イオン等が溶出する程度は、塩基類の種類、塩基類の濃度、処理温度、処理時間等を適宜選択して調整することができる。
また、塩基処理は、複数回に分けて行うことも、可能である。
【0049】
(4)その他の化学処理
本発明においては、イオン交換性層状珪酸塩粒子またはイオン交換性層状珪酸塩に、酸処理、塩基処理の他に、その他の化学処理を行ってもよい。
イオン交換性層状珪酸塩粒子またはイオン交換性層状珪酸塩は前記酸処理又は前記塩基処理を行った後、さらにその他の化学処理を行ってもよい。
【0050】
その他の化学処理としては、塩類、酸化剤、還元剤、あるいはイオン交換性層状珪酸塩の層間にインターカレーションし得る化合物などを含有する処理剤との接触や溶媒による洗浄などが挙げられる。
インターカレーションとは、層状物質の層間に別の物質を導入することをいう。導入される物質はゲスト化合物という。
また、インターカレーションや塩処理、酸処理、または塩基処理では、イオン複合体、分子複合体、または有機誘導体等を形成し、表面積や層間距離を変えることができる。
イオン交換性を利用し、層間の交換性イオンを別の大きな嵩高いイオンと置換することにより、層間が拡大した状態の層状物質を得ることもできる。すなわち、嵩高いイオンが層状構造を支える支柱的な役割を担っており、ピラーと呼ばれる。以下に、処理剤の具体例を示す。
【0051】
塩類としては、有機陽イオン、および、金属イオンを含む無機陽イオンからなる群から選ばれる陽イオンと、有機陰イオン、および、ハロゲン化物イオンを含む無機陰イオンからなる群から選ばれる陰イオンとから構成される塩類が例示される。例えば、周期表第1~14族から選択される少なくとも1種の原子を含む陽イオンと、ハロゲンの陰イオン、無機ブレンステッド酸及び有機ブレンステッド酸の陰イオンからなる群より選ばれる少なくとも1種の陰イオンとから構成される化合物が好ましい例として挙げられる。特に好ましくは、アニオンが無機ブレンステッド酸やハロゲンからなる化合物である。
【0052】
このような塩類の具体例としては、LiCl、LiBr、Li2SO4、Li3(PO4)、LiNO3、Li(OOCCH3)、NaCl、NaBr、Na2SO4、Na3(PO4)、NaNO3、Na(OOCCH3)、KCl、KBr、K2SO4、K3(PO4)、KNO3、K(OOCCH3)、CaCl2、CaSO4、Ca(NO3)2、Ca3(C6H5O7)2、Ti(OOCCH3)4、Ti(CO3)2、Ti(NO3)4、Ti(SO4)2、TiF4、TiCl4、TiBr4、TiI4、Zr(OOCCH3)4、Zr(CO3)2、Zr(NO3)4、Zr(SO4)2、ZrF4、ZrCl4、ZrBr4、ZrI4、ZrOCl2、ZrO(NO3)2、ZrO(ClO4)2、ZrO(SO4)、Hf(OOCCH3)4、Hf(CO3)2、Hf(NO3)4、Hf(SO4)2、HfOCl2、HfF4、HfCl4、HfBr4、HfI4、CuCl2、CuBr2、Cu(NO3)2、CuC2O4、Cu(ClO4)2、CuSO4、Cu(OOCCH3)2、Zn(OOCH3)2、Zn(CH3COCHCOCH3)2、ZnCO3、Zn(NO3)2、Zn(ClO4)2、Zn3(PO4)2、ZnSO4、ZnF2、ZnCl2、nBr2、ZnI2、AlF3、AlCl3、AlBr3、AlI3、Al2(SO4)3、Al2(C2O4)3、Al(CH3COCHCOCH3)3、Al(NO3)3、AlPO4、GeCl4、Sn(OOCCH3)4、Sn(SO4)2、SnF4、SnCl4等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0053】
有機陽イオンの例としては、トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、トリプロピルアンモニウム、トリブチルアンモニウム、ドデシルアンモニウム、N,N-ジメチルアニリニウム、N,N-ジエチルアニリニウム、N,N-2,4,5-ペンタメチルアニリニウム、N,N-ジメチルオクタデシルアンモニウム、オクタドデシルアンモニウム、N,N-2,4,5-ペンタメチルアニリニウム、N,N-ジメチル-p-n-ブチルアニリニウム、N,N-ジメチル-p-トリメチルシリルアニリニウム、N,N-ジメチル-1-ナフチルアニリニウム、N,N,2-トリメチルアニリニウム、2,6-ジメチルアニリニウム等のアンモニウム化合物、ピリジニウム、キノリニウム、N-メチルピペリジニウム、2,6-ジメチルピリジニウム、2,2,6,6-テトラメチルピペリジニウム等の含窒素芳香族化合物、ジメチルオキソニウム、ジエチルオキソニウム、ジフェニルオキソニウム、フラニウム、オキソラニウム等のオキソニウム化合物、トリフェニルホスホニウム、トリ-o-トリルホスホニウム、トリ-p-トリルホスホニウム、トリメシチルホスホニウム等のホスホニウム化合物、ホスファベンゾニウム、ホスファナフタレニウム等の含リン芳香族化合物等が例示されるが、これらに限定されるものではない。
陰イオンの例としては、上に例示した陰イオン以外にも、ホウ素化合物、リン化合物からなる陰イオン、例えばヘキサフルオロフォスフェート、テトラフルオロボレート、テトラフェニルボレートなどが例示されるが、これらに限定されるものではない。
また、これらの塩類は単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0054】
塩類は、さらに酸類、塩基類、酸化剤、還元剤、またはイオン交換性層状珪酸塩の層間にインターカレーションする化合物等と組み合わせて用いてもよい。
これらの組み合わせは処理開始時に添加する処理剤について組み合わせて用いてもよい。また、処理の途中で添加する処理剤について組み合わせて用いてもよい。
【0055】
上述の塩処理は、適当な溶剤を使用し、そこに処理剤を溶解させて処理剤溶液として用いてもよい。また、処理剤自身を溶媒として用いてもよい。
使用できる溶媒としては、水、アルコール類、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、エステル類、エーテル類、ケトン類、アルデヒド類、フラン類、アミン類、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。好ましくは、水、アルコール類、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、エステル類、エーテル類、より好ましくは水、アルコール類、脂肪族炭化水素、エーテル類、特に好ましくは水、アルコール類である。
また、処理剤溶液中の処理剤濃度は0.1質量%~100質量%程度が好ましく、より好ましくは5質量%~50質量%程度である。処理剤濃度がこの範囲内であれば処理に要する時間が短くなり効率的に生産が可能になるという利点がある。
【0056】
また化学処理として、溶媒による洗浄を行うことは好ましい。洗浄は、不純物の溶解、および、イオン交換性層状珪酸塩の層間に存在する陽イオンの交換を行う。また洗浄は、上述の酸類、塩基類、塩類での処理時に残存する酸類、塩基類、塩類や溶媒を取り除くことができる。
【0057】
洗浄に使用する溶媒は、水、アルコール類、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、エステル類、エーテル類、ケトン類、アルデヒド類、フラン類、アミン類、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。これらは2種以上を混合して用いてもよい。好ましくは、水、アルコール類、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、エステル類、エーテル類であり、より好ましくは水、アルコール類、脂肪族炭化水素、エーテル類であり、より好ましくは水、アルコール類及びこれらの混合溶媒、特に好ましくは水である。
また、洗浄時の温度についても制限はない。前記温度は、好ましくは0℃~100℃、より好ましく50℃~95℃、さらに好ましくは10℃~60℃である。
洗浄時の溶媒中の固形分濃度に特に制限はない。前記濃度は、好ましくは3質量%~50質量%、より好ましくは5質量%~40質量%、さらに好ましくは8質量%~30質量%である。
洗浄の時間についても制限はない。前記時間は、好ましくは1分~3000分、より好ましくは3分~1500分、さらに好ましくは5分~750分である。
【0058】
溶媒とイオン交換性層状珪酸塩粒子を分離する固液分離の方法についても特に制限はない。沈降分離や濾過分離、遠心力を利用した遠心沈降分離や遠心濾過等が挙げられる。これらは複数回行ってもよく、また複数の方法を組み合わせてもよい。
洗浄率としては、好ましくは1/5~1/10000、より好ましくは1/10~1/1000である。ここで洗浄率とは洗浄開始時における溶媒の残存比率を表す。例えば、100Lの溶媒をイオン交換性層状珪酸塩粒子と接触させ、その後90Lの溶媒を取り除くことにより洗浄を行った場合、洗浄率は(100-90)/100=1/10となる。
また残存するイオン量を示す上澄み液の電気伝導度が好ましくは1000mS/cm以下、より好ましくは100mS/cm以下、さらに好ましくは10mS/cm以下、最も好ましくは1mS/cm以下になるまで洗浄することができる。
【0059】
(5)その他の工程
上記化学処理を行った後は、得られたイオン交換性層状珪酸塩粒子の乾燥を行うことが好ましい。
乾燥方法に関しては、特に限定されず、各種方法で乾燥を実施可能である。乾燥は、イオン交換性層状珪酸塩粒子の構造破壊を起こさないように行うことが好ましい。
乾燥温度は、一般的には、100℃~800℃、好ましくは120℃~600℃で実施可能であり、特に好ましくは150℃~300℃で実施することが好ましい。
乾燥時間は、通常1分~24時間、好ましくは5分~4時間である。
乾燥時の雰囲気は、乾燥空気、乾燥窒素、乾燥アルゴン、又は減圧下であることが好ましい。
【0060】
これらのイオン交換性層状珪酸塩粒子は、構造破壊されなくとも乾燥温度により特性が変化するために、用途に応じて乾燥温度を変えることが好ましい。
オレフィン重合触媒の成分として用いる場合は、除去した後の水分含有率が、温度200℃、圧力1mmHgの条件下で2時間脱水した場合の水分含有率を0質量%とした時、3質量%以下、好ましくは1質量%以下であることが好ましい。
【0061】
2.成分[B]
本発明において用いられるオレフィン重合用触媒の成分[B]は、遷移金属化合物である。
成分[B]としては、周期表第4族の遷移金属化合物であってよい。好ましい周期表第4族の遷移金属化合物は、共役五員環配位子を少なくとも1つを有するメタロセン化合物である。かかる遷移金属化合物として好ましいものは、下記一般式(1)~(4)で表される化合物である。
【0062】
【化1】
[上記一般式(1)~(4)中、AおよびA’は、置換基を有してもよい共役五員環配位子(同一化合物内においてAおよびA’は同一でも異なっていてもよい)を示し、
Qは、二つの共役五員環配位子を任意の位置で架橋する結合性基を示し、Zは、窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、リン原子またはイオウ原子を含む配位子、水素原子、ハロゲン原子、又は炭化水素基を示し、Z’は、窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、リン原子またはイオウ原子を含む配位子、又は炭化水素基を示す。
Q’は、共役五員環配位子の任意の位置とZを架橋する結合性基を示し、Mは、周期表第4族から選ばれる金属原子を示し、XおよびYは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、アルコキシ基、アミノ基、リン原子含有炭化水素基またはケイ素原子含有炭化水素基(同一化合物内においてX及びYは、同一でも異なっていてもよい。)を示す。]
【0063】
AおよびA’の共役五員環配位子としては、例えば、シクロペンタジエンやインデン、テトラヒドロインデン、フルオレン、アズレン、テトラヒドロアズレンから誘導される共役五員環配位子が挙げられる。これらは非置換でもよく、置換されていてもよい。この中で、特に好ましいものは、置換または非置換のインデニル基またはアズレニル基である。
【0064】
共役五員環配位子上の置換基としては、炭素数1~40、好ましくは炭素数1~30の炭化水素基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子が置換した炭素数1~30の炭化水素基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、炭素数1~12のアルコキシ基、例えば、-Si(R1)(R2)(R3)で示されるケイ素原子含有炭化水素基、-P(R1)(R2)で示されるリン原子含有炭化水素基、または-B(R1)(R2)で示されるホウ素含有炭化水素基が挙げられる。これらの置換基が複数ある場合、それぞれの置換基は同一でも異なっていてもよい。
上述のR1、R2、R3は、同一でも異なっていてもよく、炭素数1~24、好ましくは炭素数1~18のアルキル基を示す。
また、共役五員環配位子上の置換基は、少なくとも1つの周期表第15及び16族元素(すなわち、ヘテロ元素)を有してもよい。このような置換基として好ましくは、5員又は6員環中に酸素原子、硫黄原子、窒素原子、及びリン原子よりなる群から選択される少なくとも1種のヘテロ原子を含有する単環式又は多環式置換基が挙げられる。さらに好ましくは置換していてもよいヘテロ芳香族化合物から誘導される置換基であり、特に好ましくは置換していてもよいフリル基、置換していてもよいチエニル基が挙げられる。一般式(2)または(4)で表される架橋基をもつ化合物の場合、これらの置換基は、特に制限は無いが、共役五員環配位子上のα位(架橋基との結合部位を基準とする)にあることが好ましい。
【0065】
Qは、二つの共役五員環配位子間を任意の位置で架橋する結合性基を、Q’は、共役五員環配位子の任意の位置とZで示される基を架橋する結合性基を表す。
QおよびQ’の具体例としては、次の基が挙げられる。
(イ)メチレン基、エチレン基、イソプロピレン基、ジメチルメチレン基、フェニルメチルメチレン基、ジフェニルメチレン基、シクロブチレン基、シクロヘキシレン基等のアルキレン基類
(ロ)ジメチルシリレン基、ジエチルシリレン基、ジプロピルシリレン基、ジフェニルシリレン基、メチルエチルシリレン基、メチルフェニルシリレン基、メチル-t-ブチルシリレン基、ジシリレン基、テトラメチルジシリレン基、シラシクロブチレン基等のシリレン基類
(ハ)炭化水素基で置換された置換ゲルミレン基、置換リン基、置換アミノ基、置換硼素基若しくは置換アルミレン基
【0066】
さらに、具体的には、(CH3)2Ge、(C6H5)2Ge、(CH3)P、(C6H5)P、(C4H9)N、(C6H5)N、(C4H9)B、(C6H5)B、(C6H5)Al、(C6H5O)Alで示される基等である。好ましいものは、アルキレン基類、又は、シリレン基類である。
【0067】
また、Mは、金属原子を表し、特に周期表第4族から選ばれる遷移金属原子を示す。Mの例を挙げるならば、チタン、ジルコニウム、ハフニウム等である。特に、ジルコニウム、ハフニウムが好ましい。
さらに、Zは、窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、リン原子またはイオウ原子を含む配位子、水素原子、ハロゲン原子又は炭化水素基を示し、Z’は、窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、リン原子またはイオウ原子を含む配位子、又は炭化水素基を示す。
Z及びZ’の好ましい具体例としては、炭素数1~40、好ましくは炭素数1~18の酸素原子含有炭化水素基、炭素数1~40、好ましくは炭素数1~18のイオウ原子含有炭化水素基、炭素数1~40、好ましくは炭素数1~18のケイ素原子含有炭化水素基、炭素数1~40、好ましくは炭素数1~18の窒素原子含有炭化水素基、炭素数1~40、好ましくは炭素数1~18のリン原子含有炭化水素基、炭素数1~20の炭化水素基が挙げられる。Zの好ましい具体例としては、水素原子、塩素原子、臭素原子が更に追加される。
【0068】
XおよびYは、各々水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20、好ましくは炭素数1~10の炭化水素基、炭素数1~20、好ましくは炭素数1~10のアルコキシ基、アミノ基、ジフェニルフォスフィノ基等の炭素数1~20、好ましくは炭素数1~12のリン原子含有炭化水素基、またはトリメチルシリル基、ビス(トリメチルシリル)メチル基等の炭素数1~20、好ましくは炭素数1~12のケイ素原子含有炭化水素基である。
XとYは同一でも異なってもよい。これらのうちハロゲン原子、炭素数1~10の炭化水素基、および炭素数1~12のアミノ基が特に好ましい。
【0069】
一般式(1)で表される化合物としては、例えば、
(1)ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(2)ビス(n-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(3)ビス(1、3-ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(4)ビス(1-n-ブチル-3-メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(5)ビス(1-メチル-3-トリフルオロメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(6)ビス(1-メチル-3-トリメチルシリルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(7)ビス(1-メチル-3-フェニルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(8)ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、
(9)ビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、
(10)ビス(2-メチル-テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、
等が挙げられる。
【0070】
一般式(2)で表される化合物としては、例えば、
(1)ジメチルシリレンビス{1-(2-メチル-4-イソプロピル-4H-アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、
(2)ジメチルシリレンビス{1-(2-メチル-4-フェニル-4H-アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、
(3)ジメチルシリレンビス〔1-{2-メチル-4-(4-クロロフェニル)-4H-アズレニル}〕ジルコニウムジクロリド、
(4)ジメチルシリレンビス[1-{2-メチル-4-(2,6-ジメチルフェニル)-4H-アズレニル}]ジルコニウムジクロリド、
(5)ジメチルシリレンビス{1-(2-メチル-4,6-ジイソプロピル-4H-アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、
(6)ジフェニルシリレンビス{1-(2-メチル-4-フェニル-4H-アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、
(7)ジメチルシリレンビス{1-(2-エチル-4-フェニル-4H-アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、
(8)エチレンビス{1-[2-メチル-4-(4-ビフェニリル)-4H-アズレニル]}ジルコニウムジクロリド、
(9)ジメチルシリレンビス{1-[2-エチル-4-(2-フルオロ-4-ビフェニリル)-4H-アズレニル]}ジルコニウムジクロリド、
(10)ジメチルシリレンビス{1-[2-メチル-4-(2’,6’-ジメチル-4-ビフェニリル)-4H-アズレニル]}ジルコニウムジクロリド、
(11)ジメチルシリレン{1-[2-メチル-4-(4-ビフェニリル)-4H-アズレニル]}{1-[2-メチル-4-(4-ビフェニリル)インデニル]}ジルコニウムジクロリド、
(12)ジメチルシリレン{1-(2-エチル-4-フェニル-4H-アズレニル)}{1-(2-メチル-4,5-ベンゾインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
(13)ジメチルシリレンビス{1-(2-エチル-4-フェニル-7-フルオロ-4H-アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、
(14)ジメチルシリレンビス{1-(2-エチル-4-インドリル-4H-アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、
(15)ジメチルシリレンビス[1-{2-エチル-4-(3,5-ビストリフルオロメチルフェニル)-4H-アズレニル}]ジルコニウムジクロリド、
(16)ジメチルシリレンビス{1-(2-メチル-4-フェニル-4H-アズレニル)}ジルコニウムビス(トリフルオロメタンスルホン酸)、
(17)ジメチルシリレンビス{1-(2-メチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
(18)ジメチルシリレンビス{1-(2-メチル-4,5-ベンゾインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
(19)ジメチルシリレンビス〔1-{2-メチル-4-(1-ナフチル)インデニル}〕ジルコニウムジクロリド、
(20)ジメチルシリレンビス{1-(2-メチル-4,6-ジイソプロピルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
【0071】
(21)ジメチルシリレンビス{1-(2-エチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
(22)エチレン-1,2-ビス{1-(2-メチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
(23)エチレン-1,2-ビス{1-(2-エチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
(24)イソプロピリデンビス{1-(2-メチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
(25)エチレン-1,2-ビス{1-(2-メチル-4-フェニル-4H-アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、
(26)イソプロピリデンビス{1-(2-メチル-4-フェニル-4H-アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、
(27)ジメチルゲルミレンビス{1-(2-メチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
(28)ジメチルゲルミレンビス{1-(2-エチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
(29)フェニルホスフィノビス{1-(2-エチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
(30)ジメチルシリレンビス[3-(2-フリル)-2,5-ジメチル-シクロペンタジエニル]ジルコニウムジクロリド、
(31)ジメチルシリレンビス[2-(2-フリル)-3,5-ジメチル-シクロペンタジエニル]ジルコニウムジクロリド、
(32)ジメチルシリレンビス[2-(2-フリル)-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(33)ジメチルシリレンビス[2-(2-(5-メチル)フリル)-4,5-ジメチル-シクロペンタジエニル]ジルコニウムジクロリド、
(34)ジメチルシリレンビス[2-(2-(5-トリメチルシリル)フリル)-4,5-ジメチル-シクロペンタジエニル]ジルコニウムジクロリド、
(35)ジメチルシリレンビス[2-(2-チエニル)-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(36)ジメチルシリレン[2-(2-(5-メチル)フリル)-4-フェニルインデニル][2-メチル-4-フェニルインデニル]ジルコニウムジクロリド、
(37)ジメチルシリレンビス(2,3,5-トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(38)ジメチルシリレンビス(2,3-ジメチル-5-エチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(39)ジメチルシリレンビス(2,5-ジメチル-3-フェニルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(40)シラシクロブチレンビス[2-(2-フリル)-4-フェニル-5-メチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
【0072】
(41)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-フェニル-5-メチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(42)シラシクロブチレンビス[2-(4,5-ジメチル-2-フリル)-4-フェニル-5-メチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(43)シラシクロブチレンビス[2-(5-t-ブチル-2-フリル)-4-フェニル-5-メチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(44)シラシクロブチレンビス[2-(5-フェニル-2-フリル)-4-フェニル-5-メチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(45)シラシクロブチレンビス[2-(2-チエニル)-4-フェニル-5-メチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(46)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-チエニル)-4-フェニル-5-メチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(47)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-フルオロフェニル)-5-メチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(48)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-クロロフェニル)-5-メチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(49)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-メチルフェニル)-5-メチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(50)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-t-ブチルフェニル)-5-メチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(51)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(3,5-ジメチルフェニル)-5-メチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(52)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(3,5-ジt-ブチルフェニル)-5-メチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(53)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(1-ナフチル)-5-メチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(54)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(2-ナフチル)-5-メチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(55)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-ビフェニリル)-5-メチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(56)シラシクロブチレンビス[2-(2-フリル)-4-フェニル-5,6-ジメチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(57)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-フェニル-5,6-ジメチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(58)シラシクロブチレンビス[2-(4,5-ジメチル-2-フリル)-4-フェニル-5,6-ジメチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(59)シラシクロブチレンビス[2-(5-t-ブチル-2-フリル)-4-フェニル-5,6-ジメチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(60)シラシクロブチレンビス[2-(5-フェニル-2-フリル)-4-フェニル-5,6-ジメチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
【0073】
(61)シラシクロブチレンビス[2-(2-チエニル)-4-フェニル-5,6-ジメチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(62)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-チエニル)-4-フェニル-5,6-ジメチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(63)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-フルオロフェニル)-5,6-ジメチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(64)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-クロロフェニル)-5,6-ジメチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(65)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-メチルフェニル)-5,6-ジメチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(66)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-t-ブチルフェニル)-5,6-ジメチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(67)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(3,5-ジメチルフェニル)-5,6-ジメチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(68)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(3,5-ジt-ブチルフェニル)-5,6-ジメチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(69)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(1-ナフチル)-5,6-ジメチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(70)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(2-ナフチル)-5,6-ジメチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(71)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-ビフェニリル)-5,6-ジメチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(72)シラシクロブチレンビス[2-(2-フリル)-4-フェニル-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
(73)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-フェニル-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
(74)シラシクロブチレンビス[2-(4,5-ジメチル-2-フリル)-4-フェニル-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
(75)シラシクロブチレンビス[2-(5-t-ブチル-2-フリル)-4-フェニル-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
(76)シラシクロブチレンビス[2-(5-フェニル-2-フリル)-4-フェニル-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
(77)シラシクロブチレンビス[2-(2-チエニル)-4-フェニル-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
(78)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-チエニル)-4-フェニル-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
(79)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-フルオロフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
(80)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-クロロフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
【0074】
(81)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-メチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
(82)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-t-ブチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
(83)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(3,5-ジメチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
(84)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(3,5-ジt-ブチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
(85)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(1-ナフチル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
(86)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(2-ナフチル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
(87)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-ビフェニリル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
(88)シラシクロブチレンビス[2-(2-フリル)-4-フェニル-1,5,6,7-テトラヒドロ-5,5,7,7-テトラメチル-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
(89)シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-フェニル-1,5,6,7-テトラヒドロ-5,5,7,7-テトラメチル-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
(90)シラシクロブチレン[2-(5-メチル-2-フリル)-4-フェニル-5-メチル-1-インデニル][2,5-ジメチル-4-フェニル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(91)シラシクロブチレン[2-(5-メチル-2-フリル)-4-フェニル-5-メチル-1-インデニル][2-(2-フリル)-4-フェニル-5-メチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(92)シラシクロブチレン[2-(5-メチル-2-フリル)-4-フェニル-5-メチル-1-インデニル][2-(5-t-ブチル-2-フリル)-4-フェニル-5-メチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(93)シラシクロブチレン[2-(5-メチル-2-フリル)-4-フェニル-5-メチル-1-インデニル][2-(5-メチル-2-フリル)-4-フェニル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(94)シラシクロブチレン[2-(5-メチル-2-フリル)-4-フェニル-5-メチル-1-インデニル][2-(5-メチル-2-フリル)-4-フェニル-5,6-ジメチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(95)シラシクロブチレン[2-(5-メチル-2-フリル)-4-フェニル-5-メチル-1-インデニル][2-(5-メチル-2-フリル)-4-フェニル-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
(96)シラシクロペンチレンビス[2-(2-フリル)-4-フェニル-5-メチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(97)シラシクロペンチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-フェニル-5-メチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(98)シラシクロペンチレンビス[2-(2-フリル)-4-フェニル-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
(99)シラシクロペンチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-フェニル-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、等が挙げられる。
【0075】
一般式(3)で表される化合物としては、例えば、
(1)(テトラメチルシクロペンタジエニル)チタニウム(ビスt-ブチルアミド)ジクロリド、
(2)(テトラメチルシクロペンタジエニル)チタニウム(ビスイソプロピルアミド)ジクロリド、
(3)(テトラメチルシクロペンタジエニル)チタニウム(ビスシクロドデシルアミド)ジクロリド、
(4)(テトラメチルシクロペンタジエニル)チタニウム{ビス(トリメチルシリル)アミド)}ジクロリド、
(5)(2-メチル-4-フェニル-4H-アズレニル)チタニウム{ビス(トリメチルシリル)アミド}ジクロリド、
(6)(2-メチルインデニル)チタニウム(ビスt-ブチルアミド)ジクロリド、
(7)(フルオレニル)チタニウム(ビスt-ブチルアミド)ジクロリド、
(8)(3、6-ジイソプロピルフルオレニル)チタニウム(ビスt-ブチルアミド)ジクロリド、
(9)(テトラメチルシクロペンタジエニル)チタニウム(フェノキシド)ジクロリド、(10)(テトラメチルシクロペンタジエニル)チタニウム(2、6-ジイソプロピルフェノキシド)ジクロリド、
等が挙げられる。
【0076】
一般式(4)で表される化合物としては、例えば、
(1)ジメチルシランジイル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(t-ブチルアミド)チタニウムジクロリド、
(2)ジメチルシランジイル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(シクロドデシルアミド)チタニウムジクロリド、
(3)ジメチルシランジイル(2-メチルインデニル)(t-ブチルアミド)チタニウムジクロリド、
(4)ジメチルシランジイル(フルオレニル)(t-ブチルアミド)チタニウムジクロリド、等が挙げられる。
【0077】
これらの例示化合物のジクロリドは、ジブロマイド、ジフルオライド、ジメチル、ジフェニル、ジベンジル、ビスジメチルアミド、ビスジエチルアミド等に置き換えた化合物も、同様に例示される。さらに、例示化合物中のジルコニウムは、ハフニウムまたはチタニウムに、チタニウムは、ハフニウムまたはジルコニウムに置き換えた化合物も、同様に、例示される。
【0078】
本発明で使用する遷移金属化合物としては、一般式(2)で示される化合物が好ましい。
なお、メタロセン化合物は、1種を用いることも、2種以上を併用して用いることもできる。
【0079】
2種以上を併用して用いる場合は、上記一般式(1)~(4)のうちいずれか1つの一般式に含まれる化合物群の中から2種以上を選ぶことができる。さらに、1つの一般式に含まれる化合物群の中から選ばれる1種または2種以上と他の一般式に含まれる化合物群の中から選ばれる1種または2種以上とを選ぶこともできる。
【0080】
3.成分[C]
本発明において用いられるオレフィン重合用触媒の成分[C]は、有機アルミニウム化合物である。
有機アルミニウム化合物としては、一般式(AlRnX3-n)mで表される有機アルミニウム化合物であってよい。式中、Rは炭素数1~20のアルキル基を表し、Xはハロゲン原子、水素原子、アルコキシ基又はアミノ基を表し、nは1~3の整数、mは1~2の整数を各々表す。有機アルミニウム化合物は、単独であるいは複数種を組み合わせて使用することができる。
【0081】
有機アルミニウム化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリノルマルプロピルアルミニウム、トリノルマルブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリノルマルヘキシルアルミニウム、トリノルマルオクチルアルミニウム、トリノルマルデシルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムセスキクロライド、ジエチルアルミニウムヒドリド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジエチルアルミニウムジメチルアミド、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、ジイソブチルアルミニウムクロライド等が挙げられる。
これらのうち、好ましくは、m=1、n=3のトリアルキルアルミニウム及びアルキルアルミニウムヒドリドである。
さらに好ましくは、Rが炭素数1~8であるトリアルキルアルミニウムである。
【0082】
4.オレフィン重合用触媒の調製、予備重合
本発明に用いられるオレフィン重合用触媒は、前記成分[A]、及び成分[B]、並びに必要に応じて前記成分[C]を接触させて調製する。
接触方法は特に限定されないが、以下のような順序で接触させることができる。
また、この接触は、触媒調製時だけでなく、オレフィンによる予備重合時またはオレフィンの重合時に行ってもよい。これらの接触において接触を充分に行うため溶媒を用いてもよい。またオレフィン重合用触媒の製造時にポリオキシエチレン化合物を添加しても良い。
1)成分[B]と成分[A]を接触させる
2)成分[B]と成分[A]を接触させた後に成分[C]を添加する
3)成分[B]と成分[C]を接触させた後に成分[A]を添加する
4)成分[A]と成分[C]を接触させた後に成分[B]を添加する
その他、三成分を同時に接触させてもよい。
オレフィン重合用触媒の製造時に前記ポリオキシエチレン化合物(成分[D]とする)を添加する場合は以下のように添加することができる。
5)成分[A]と成分[D]を接触させた後に成分[B]を添加する
6)成分[B]と成分[A]を接触させた後に成分[C]、次いで成分[D]を添加する
7)成分[B]と成分[A]を接触させた後に成分[D]、次いで成分[C]を添加する
8)成分[B]と成分[C]を接触させた後に成分[D]、次いで成分[A]を添加する
9)成分[B]と成分[C]を接触させた後に成分[A]、次いで成分[D]を添加する
10)成分[A]と成分[C]を接触させた後に成分[B]、次いで成分[D]を添加する
11)成分[A]と成分[C]を接触させた後に成分[D]、次いで成分[B]を添加する
その他、4成分を同時に接触させてもよい。
最小限の添加量で効率よく効果を得る観点から、ポリオキシエチレン化合物の添加は上記方法で行うことが好ましく、この時、成分[D]の添加量としては、基準を触媒(イオン交換性層状珪酸塩粒子及び遷移金属化合物の質量の和)とした場合、上限値は0.2質量%以下であってよい。
【0083】
好ましい接触方法は、上記4)の方法であり、中でも、上記4)の成分[A]と成分[C]を接触させた後、未反応の成分[C]を洗浄等で除去し、その後再度必要最小限の成分[C]を成分[A]に接触させ、その後成分[B]を接触させる方法である。
ポリオキシエチレン化合物(成分[D]とする)をオレフィン重合用触媒成分の製造時に接触させる場合、好ましい方法は、上記11)の方法であり、中でも、上記11)の成分[A]と成分[C]を接触させた後、未反応の成分[C]を洗浄等で除去し、その後成分[D]を接触させた後、再度必要最小限の成分[C]を成分[A]に接触させ、その後成分[B]を接触させる方法である。
【0084】
成分[C]のAlと成分[B]の遷移金属のモル比は0.1~1000、好ましくは1~100、さらに好ましくは4~50の範囲である。
【0085】
接触温度に特に制限はないが、0℃~100℃が好ましく、さらに好ましくは10℃~80℃、特に好ましくは20℃~60℃である。
【0086】
溶媒としては有機溶媒が好ましい。ヘキサン、ヘプタン、ペンタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン等の飽和脂肪族又は芳香族炭化水素、後述のオレフィンがより好ましい。これらは単独で用いても、複数を混合して用いてもよい。
溶媒中の成分[B]の濃度についても制限はないが、好ましくは3mmol/L~50mmol/L、より好ましくは4mmol/L~40mmol/L、さらに好ましくは6mmol/L~30mmol/Lである。
成分[B]の使用量は、成分[A]1gにつき、0.001mmol~10mmol、好ましくは0.001mmol~1mmolの範囲がより好ましい。
【0087】
本発明に用いられるオレフィン重合用触媒は、オレフィンを接触させて少量重合されることからなる予備重合処理を行ってもよい。
使用するオレフィンは、特に限定はない。エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、ビニルシクロアルカン、またはスチレンなどを使用することが可能であり、特にエチレン、またはプロピレンを使用することが好ましい。
オレフィンの供給方法は、任意の方法が可能である。例えば、オレフィンを反応器に定速的にあるいは定圧状態になるように維持する供給方法やその組み合わせ、段階的な変化をさせるなどの方法が挙げられる。
【0088】
予備重合時間は、特に限定されないが、5分~24時間の範囲であることが好ましい。
また、予備重合量は、予備重合ポリマー質量が成分[A]1部に対し、好ましくは0.01~100、さらに好ましくは0.1~50である。
予備重合温度は特に制限はないが、0℃~100℃が好ましく、より好ましくは10℃~70℃、特に好ましくは20℃~60℃、さらに好ましくは30℃~50℃である。
予備重合時には有機溶媒等の液体中で実施することも出来、かつこれが好ましい。
予備重合時の固体触媒の濃度には特に制限はないが、好ましくは10g/L~300g/L、より好ましくは20g/L~200g/L、特に好ましくは25g/L~150g/Lである。
【0089】
各成分の接触後に触媒を乾燥してもよい。
乾燥方法には特に制限はない。減圧乾燥や加熱乾燥、乾燥ガスを流通させることによる乾燥などが例示される。これらの方法を単独で用いてもよいし2つ以上の方法を組み合わせて用いてもよい。
乾燥工程において触媒を攪拌、振動、流動させてもよいし静置させてもよい。
【0090】
さらに、上記各成分の接触の際、もしくは接触の後に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどの重合体やシリカ、チタニアなどの無機酸化物固体を共存させることも可能である。またオレフィン重合触媒においてドナーとして知られるアルコキシシラン、アミノシラン、エーテル、フタル酸エステル、カルボン酸エステル等を加えることもできる。
【0091】
II.ポリオキシエチレン化合物
本発明のオレフィン重合体を製造する方法において添加するポリオキシエチレン化合物は、下記一般式(I)で表され、数平均分子量が500以上、8000以下であるポリオキシエチレン化合物である。
式(I):Ra-((CH2CH2O)n-Rb)m
[式(I)中、
Raは、水素原子、炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子およびホウ素原子からなる群より選ばれる少なくとも1つの原子で構成される、m価の置換基であり、
Rbはそれぞれ独立に、水素原子、炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子、ホウ素原子、アルカリ金属原子およびアルカリ土類金属原子からなる群より選ばれる少なくとも1つの原子で構成される1価の置換基であり、
mは1~6の整数であり、
nは2以上の整数であり、
mが2以上の場合、複数のRb及びnは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。]
【0092】
nは2以上であれば特に制限はないが、上限値が好ましくは100以下、より好ましくは50以下、特に好ましくは25以下である。
【0093】
nが2以上の前記ポリオキシエチレン化合物を用いることで十分な作用が得られる理由については定かではないが、以下のように考えることができる。すなわち、オキシエチレン基はDaviesのHLB(Hydrophilic-Lipophilic Balance)Group Numberによると、0.33で、いわゆる親水基であることから、オレフィン重合環境のような疎水性環境下ではある程度の集合体を形成していると推測される。一方で本願のイオン交換性層状珪酸塩粒子を成分にもつオレフィン重合触媒は、重合活性点がイオン交換性層状珪酸塩粒子の外表面にも存在するが、その多くは内表面(細孔内部)に分布していると考えられる。ポリオキシエチレン化合物が集合体となることで、イオン交換性層状珪酸塩粒子の細孔内に拡散することができなくなり、外表面の重合活性点のみを選択的に失活することで全体の活性を損じることなく、塊状ポリマーや反応器への付着物の発生を抑制する効果を発揮していると考えらえる。もしnが小さく集合体が形成できないと、ポリオキシエチレン化合物が細孔内部に拡散してしまうため、塊状ポリマーや付着物の発生抑制効果は発揮されるものの、触媒失活効果が大きくなる。
もしくは集合体が帯電防止剤として働き、塊状ポリマーや反応器への付着物の発生を抑制しているとも考えられる。そのためnが2以上となることで十分な作用が得られるものと推測される。また、nが適度な大きさであることにより、オキシエチレン基の集合体が適度な大きさとなり、重合系内でも分散性を維持することで、十分な効果を発揮すると推測される。
【0094】
本発明に用いられるポリオキシエチレン化合物の数平均分子量は、下限値が500以上、より好ましくは700以上、さらに好ましくは900以上であり、1200以上であってもよく、1500以上であってもよい。一方で、上限値が8000以下、好ましくは6000以下、より好ましくは5000以下である。前記上限値と下限値は任意の組み合わせを採用できる。
数平均分子量に最適な範囲があることの理由については定かではないが、nと同じく、上記範囲内であればイオン交換性層状珪酸塩粒子の細孔内まで拡散することによる触媒失活を抑制でき、重合系内や触媒外表面への分散性が維持されることにより、十分に効果が発揮されると推測される。
【0095】
Raは、ポリオキシエチレン基の炭素原子と結合するm価の置換基である。Raが1価の場合、例えば、後述する一般式(II)におけるRc、及び一般式(III)におけるRcにポリオキシプロピレン基を付加した基と同様のものを挙げることができる。Raが2価の場合、例えば、後述する一般式(IV)におけるRe、及び一般式(V)における-O(CH2CHRfO)h-と同様のものを挙げることができる。Raが3価~6価の場合、例えば、ポリオールにおける3個以上の水酸基から水素原子を除いて誘導される3価以上のアルコキシ基またはアリールオキシ基、リン酸基((O=)P(-O-)3)、及び、ホウ酸基(B(-O-)3)等が挙げられる。Raが3価~6価の場合、さらに、後述する一般式(IV)におけるReと同様のアミノ基、アミド基、スルホンアミド基、及びウレタン基からなる群から選択される1種以上を3価以上となるように含む多価置換基であってもよい。
Rbはポリオキシエチレン基の酸素と結合する1価の置換基であり、例えば、後述する一般式(II)におけるRdと同様のものを挙げることができる。
【0096】
好ましい構造の例として、上記一般式(I)において、m=1である下記一般式(II)で表される化合物が挙げられる。
式(II):Rc-(CH2CH2O)n-Rd
[式(II)において、Rcは、水酸基、アルコキシ基(Rc’O)、アリールオキシ基(Rc”O)、アミノ基((Rc’)2N)、アミド基(Rc’CONH)、及び、アシルオキシ基(Rc’COO)からなる群より選ばれる1価の置換基(ここでRc’は炭素数1~30のアルキル基であり、Rc”は炭素数6~30のアリール基またはアルキル置換アリール基)であり、
Rdは、水素原子、アシル基(CORd’、CORd”)、硫酸エステル(SO3Rd’)、硫酸塩(SO3M)、リン酸エステル(P(=O)(ORd’)2)、リン酸塩(P(=O)(OH)(OM))、ホウ酸エステル(B(ORd’)2)、及びホウ酸塩(B(OH)(OM))からなる群より選ばれる1価の置換基(ここでRd’は炭素数1~30のアルキル基であり、Rd”は炭素数1~30のアルキル基にカルボン酸塩(COOM)及び/または硫酸塩(SO3M)が置換した基であり、Mはアルカリ金属原子、トリエタノールアミン、またはアンモニウム)であり、
nは2以上の整数である。]
【0097】
Rc’およびRd’における炭素数1~30のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、ブチル基、ドデシル基(ラウリル基)、テトラデシル基(ミリスチル基)、ヘキサデシル基(セチル基)、オクタデシル基(ステアリル基)等が挙げられる。
Rc”における炭素数6~30のアリール基またはアルキル置換アリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、トリベンジルフェニル基等が挙げられる。
アルコキシ基としては、例えば、エトキシ基、ブトキシ基、ラウリルオキシ基、セチルオキシ基、ミリスチルオキシ基、ステアリルオキシ基等が挙げられる。
アリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基、トリベンジルフェニルオキシ基等が挙げられる。
アミノ基としては、アミノ基(NH2)、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等が挙げられる。
アミド基としては、ラウリルアミド基、セチルアミド基、ミリスチルアミド基、ステアリルアミド基等が挙げられる。
また、アシルオキシ基としては、プロパノイルオキシ基、ドデカノイルオキシ基、テトラデカノイルオキシ基、ヘキサデカノイルオキシ基、オクタデカノイルオキシ基等が挙げられ、これらのアシルオキシ基は更にカルボン酸塩(COOM)及び/または硫酸塩(SO3M)で置換されていてもよい。
式(II)におけるnは、式(I)におけるnと同様であってよい。
【0098】
一般式(II)で表される化合物として、より具体的にはポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(トリベンジル)フェニルエーテル、
ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミン、ポリオキシアルキレンラウリルエーテル硫酸エステルアンモニウム、ポリオキシエチレンスルホコハク酸ラウリル二ナトリウム、
ジステアリン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンフェニルエーテルリン酸エステル等が挙げられる。
【0099】
m=1でのより好ましい例としては下記一般式(III)で表される化合物が挙げられる。
式(III):Rc-(CH2CH(CH3)O)k-(CH2CH2O)n-(CH2CH(CH3)O)l-Rd
[式(III)において、Rc及びRdは、式(II)に記載の通りである。
kおよびlはそれぞれ独立に、0以上の整数であるが、k+lは1以上であり、nは2以上の整数である。]
【0100】
kおよびlはそれぞれ独立に0以上の整数であり、同時に0にはならなければ特に制限はないが、k+lが適度な大きさにおいてポリオキシエチレン基による効果が得られやすいことから、好ましくはk+lが1以上200以下、より好ましくは1以上100以下、さらに好ましくは1以上80以下である。
式(III)におけるnは、式(I)におけるnと同様であってよい。
kおよびlがそれぞれ1以上の場合としては、プルロニック系界面活性剤(ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン・ブロックコポリマー)のリバースタイプとして知られるものを用いることができる。これらは商品名プルロニック(BASF社)や商品名アデカプルロニック(ADEKA社)等として市販されており、例えば31R1、25R1、10R5、10R8、17R2、17R4、25R2、25R4等の構造が挙げられる。ここでRの前の数値は分子量、Rの後ろの数値はポリオキシエチレン基の含有量の目安を示している。
【0101】
上記一般式(I)において、m=1の化合物として特に好ましくは、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールモノエーテル、および、一般式(III)で表される化合物のうち、kおよびlがそれぞれ1以上である化合物(リバース型プルロニック系界面活性剤)である。
【0102】
上記一般式(I)において、m=2である場合の好ましい例として下記一般式(IV)で表される化合物が挙げられる。
式(IV):Rd-(OCH2CH2)i-Re-(CH2CH2O)j-Rd
[式(IV)において、Rdは式(II)に記載の通りである。
Reは2価のアルコキシ基(-O-Re’-O-)、アリールオキシ基(-O-Re”-O-)、アミノ基(Re’”N=)、アミド基(Re’”CON=)、スルホンアミド基(Re’”SO2N=)、ウレタン基(-OCONH-Re”-NHCOO-)、リン酸基(-O-P(=O)(OH)-O-)、及び、ホウ酸基(-O-B(OH)-O-)からなる群より選ばれる2価の置換基(ここでRe’は炭素数1~30のアルキレン基であり、Re”は炭素数6~30のアリーレン基またはアルキル若しくはアルキレン置換アリーレン基、Re’”は炭素数1~30のアルキル基、炭素数6~30のアリール基またはアルキル置換アリール基)であって、さらにこれらにポリオキシプロピレン基を付加した基であってもよく、
iおよびjはそれぞれ独立に2以上の整数である。]
【0103】
i+jは、上限値が好ましくは100以下、より好ましくは50以下、特に好ましくは25以下である。
【0104】
Re’における炭素数1~30のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が挙げられる。
Re”における炭素数6~30のアリーレン基またはアルキル若しくはアルキレン置換アリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ビスイソプロピリデンフェニレン基等が挙げられる。
Re’”における炭素数1~30のアルキル基、炭素数6~30のアリール基またはアルキル置換アリール基としては、式(II)で説明したRc’の炭素数1~30のアルキル基及びRc”における炭素数6~30のアリール基またはアルキル置換アリール基と同様であってよい。
【0105】
一般式(IV)で表される化合物として、具体的には例えば、N,N-ビス(ポリオキシエチレン)オクタデシルアミン、N,N-ビス(ポリオキシエチレン)p-トルエンスルホン酸アミド、N,N-ビス(ポリオキシエチレン)トリルアミン、ビスフェノールAエチレンオキシド付加物や、キシリレンジイソシアネートなどの二つのイソシアネート基をもつ化合物とポリエチレングリコール誘導体を付加反応させたウレタン化合物等が挙げられる。
【0106】
上記一般式(I)において、m=2である場合の特に好ましい例として下記一般式(V)のような構造が挙げられる。
式(V):Rd-(OCH2CH2)i-O(CH2CHRfO)h-(CH2CH2O)j-Rd
[式(V)において、Rdは式(II)に記載の通りである。
Rfはメチル基、またはエチル基である。
iおよびjはそれぞれ独立に2以上の整数であり、hは1以上の整数である。]
【0107】
i+jの上限値は、前記式(IV)に記載したものと同様であってよい。
hの上限値は、好ましくは100以下、より好ましくは85以下、特に好ましくは70以下である。
【0108】
式(V)において、Rdがそれぞれ水素原子の場合、プルロニック系界面活性剤(ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン・ブロックコポリマーまたはポリオキシエチレン・ポリオキシブチレン・ブロックコポリマー)として知られる化合物を用いることができる。このような化合物はプルロニックグリッド(例えば日本油化学会誌 第49巻 第10号(2000)やCurrent Opinion in Colloid & Interface Science Volume 2, Issue 5, 1997, 478等)で構造を表すことができる。これらも商品名プルロニック(BASF社)や商品名アデカプルロニック(ADEKA社)等として市販されており、本願においてはL121、L122、L81、L82、L72、L71、L62、L61等が液体であること、粘度が比較的低く取扱が容易であり、付着防止性能のバランスに優れることから特に好ましい。
ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン・ブロックコポリマーまたはポリオキシエチレン・ポリオキシブチレン・ブロックコポリマーにおいて、ポリオキシエチレン含量の好ましい範囲は、上限値が30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、下限値は5質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。また、数平均分子量の好ましい範囲は、上限値が5000以下、より好ましくは4000以下、下限値が900以上である。
【0109】
mが3以上の場合、Raの構造としてはグリセリンやペンタエリスリトールなどの糖アルコールに代表されるポリオールから誘導される多価置換基、トリメチロールプロパン等の合成ポリオールから誘導される多価置換基、ポリオールの一部の水酸基が脂肪酸などと縮合してエステル構造を持っているポリオールから誘導される多価置換基が挙げられる。
またエチレンジアミンや、エチレンジアミンにポリオキシプロピレン基を付加して得られるポリオールから誘導される多価置換基が挙げられる。
ポリオールから誘導される3価以上の多価置換基としては、ポリオールにおける3個以上の水酸基から水素原子を除いて誘導される3価以上のアルコキシ基またはアリールオキシ基が挙げられる。
特にトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビタンまたはソルビタン脂肪酸エステルから誘導される多価置換基が好ましい。ソルビタン脂肪酸エステルから誘導される置換基とポリオキシエチレン骨格をもつ化合物はポリソルベートとして知られており、ポリソルベート20,60,65,80等を例示することができる。
mは6以下であるが、5以下であってもよく、4以下であってもよい。
【0110】
本発明のオレフィン重合体を製造する方法において、ポリオキシエチレン化合物を添加する方法としては特に制限はなく、オレフィン重合用触媒を製造する際に添加しても良いし、オレフィン重合用触媒とオレフィンを反応させる反応器に添加しても良く、オレフィン重合用触媒を製造する際及びオレフィン重合用触媒とオレフィンを反応させる反応器の両方に添加しても良く、さらには複数回に分けて添加しても良い。好ましくはオレフィン重合用触媒を製造する際にポリオキシエチレン化合物を添加する方法である。
また複数のポリオキシエチレン化合物を混合して使用しても良く、また別々に添加しても良い。粘度や添加量の調整のため、溶媒に溶解、または分散させて使用しても良い。溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、ペンタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン等の飽和脂肪族又は芳香族炭化水素の単独又は混合物を用いることができる。また溶媒への溶解度や粘度を調整するために、加温や冷却等によって温度を調整しても良い。
【0111】
本発明のオレフィン重合体を製造する方法において、ポリオキシエチレン化合物を添加する量としては特に制限はない。添加によって塊や付着が防止できるが、さらに触媒活性の制御を同時に行うことも可能である。触媒活性の制御は、特に多段重合によって製造されるインパクトコポリマーの組成を調整するために行われることがあるが、この場合は所望のポリマー組成になるように、添加量を調整することができる。
具体的な添加量としては、基準を触媒(イオン交換性層状珪酸塩粒子と遷移金属化合物の質量の和)とした場合、下限値が好ましくは0.005質量%、より好ましくは0.01質量%、さらに好ましくは0.05質量%、上限値が好ましくは100質量%以下、より好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下、よりさらに好ましくは5質量%以下、特に好ましくは1質量%以下、より特に好ましくは0.5質量%以下、さらに特に好ましくは0.2質量%以下である。
【0112】
III.オレフィン重合体の製造方法
本発明のオレフィン重合体の製造方法は、前記特定のオレフィン重合用触媒の存在下、前記特定のポリオキシエチレン化合物を添加して、オレフィンの重合を行い、オレフィン重合体を製造することを特徴とする。
オレフィン重合体の製造方法は、前記オレフィン重合用触媒の存在下、炭素数2~20のオレフィンを単独重合または共重合する。すなわち、この製造方法では、1種類のオレフィンを重合、又は2種類以上のオレフィンを共重合させる。なお、本明細書において重合体とは、単独重合体及び共重合体の少なくとも一方を意味する。
【0113】
共重合の場合、反応系中の各モノマーの量比は、経時的に一定である必要はなく、各モノマーを一定の混合比で供給することも可能である。また、供給するモノマーの混合比を経時的に変化させることも可能である。また、共重合反応比を考慮してモノマーのいずれかを分割添加することもできる。
【0114】
重合し得るオレフィンとしては、炭素数2~20が好ましく、具体的にはエチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、スチレン、ジビニルベンゼン、7-メチル-1、7-オクタジエン、シクロペンテン、ノルボルネン、エチリデンノルボルネン等が挙げられる。好ましくはエチレン、プロピレンおよび炭素数4~8のα-オレフィンであり、さらに好ましくはエチレン、またはプロピレンである。
【0115】
共重合の場合、用いられるコモノマーの種類は、前記オレフィンとして挙げられるものの中から、主成分となるもの以外のオレフィンを1種、又は2種以上選択して用いることができる。好ましいコモノマーの主成分はプロピレンである。
【0116】
重合様式は、触媒成分と各モノマーが効率よく接触するならば、あらゆる様式を採用しうる。具体的には、不活性溶媒を用いるスラリー法、不活性溶媒を実質的に使用せずにプロピレンなどのモノマーを溶媒として用いる方法、溶液重合法あるいは実質的に液体溶媒を使用せず各モノマーをガス状に保つ気相法などが採用できる。また、連続重合、回分式重合、又は予備重合を行う方法も適用される。
【0117】
スラリー重合の場合は、重合溶媒として、ヘキサン、ヘプタン、ペンタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン等の飽和脂肪族又は芳香族炭化水素の単独又は混合物が用いられる。
重合温度は、通常、0℃~150℃である。
【0118】
また、分子量調節剤として水素を用いることができる。また反応量を調節するために、酸素やアルコール等の触媒を失活させる作用のある化合物を供給してもよい。運転性を改善する等の目的で、酸素、アルコール、アルコキシシラン等の公知の添加剤を加えてもよい。
重合圧力は0kg/cm2~2000kg/cm2G(≒0MPaG~196.14MPaG)、好ましくは0kg/cm2~60kg/cm2G(≒0MPaG~5.88MPaG)が適当である。
【0119】
上記オレフィン重合体の製造方法によって得られるオレフィン重合体としては、特に限定されない。例えば、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、プロピレン-エチレンブロック共重合体、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン/エチレン-オレフィン系共重合体などが好適に挙げられる。
【0120】
本発明の製造方法において、重合時にポリオキシエチレン化合物を添加する場合、その方法や添加場所、タイミングについて特に制限はなく、触媒と混合させて反応器に添加する方法、触媒を加える反応器と同一の反応器に触媒と同時に添加する方法、触媒とは別に反応器に添加する方法のいずれでも良い。また複数の反応器を用いて多段重合を行う場合は、すべての反応器に添加しても良いし、特定の反応器のみに添加しても良い。また溶媒やモノマーが流れる配管に添加しても良いし、熱交換器やフィルター、圧力計などの計器用配管等、付着や閉塞が特に問題となりやすい部分に添加してもよい。また連続的に供給しても良いし、間欠的に添加しても良い。
中でも、添加量に対して効率よく効果を得る観点からは、触媒とポリオキシエチレン化合物を混合して添加する方法、または触媒を加える反応器と同一反応器に同時又はそれぞれ触媒とポリオキシエチレン化合物を添加する方法が好ましい。
【実施例0121】
次に本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はその要旨を逸脱しない限りこれらの実施例によって制約を受けるものではない。なお、本実施例における測定法は次の通りである。
【0122】
[各種物性測定法]
1.イオン交換性層状珪酸塩粒子の組成分析
JIS R2212に準拠して検量線を作成し、蛍光X線測定にてイオン交換性層状珪酸塩粒子の組成を定量した。
装置は、リガク社製ZSX Primus IVを使用した。
試料は、1050℃で1時間焼成後、0.4gを分け取り、融剤(Li2B4O7)4g、50%LiBr水溶液(離型剤)15μLと混合し、ガラスビードを作成することで調製した。
【0123】
2.アルミニウム(Al)の溶出率(ΔAl量)の計算方法
Alの溶出率(%)={[(化学処理前のアルミニウム/ケイ素(モル比))-(化学処理後のアルミニウム/ケイ素(モル比))]÷(化学処理前のアルミニウム/ケイ素(モル比))}×100。
【0124】
3.比表面積測定
窒素吸着法によって、イオン交換性層状珪酸塩粒子の吸着及び脱着等温線を測定した。
得られた吸着等温線を用いてBET多点法解析(Rouquerol変換)を実施し、イオン交換性層状珪酸塩粒子の比表面積を求めた。
具体的な測定条件は下記の通りとした。
装置:Anton-Paar社製ガス吸着量測定装置Autosorb-iQ3
測定手法:窒素ガス吸着法
前処理条件:試料を200℃、真空下(1.3Pa以下)で2時間減圧加熱
試料量:約0.2g
ガス液化温度:77K
【0125】
4.イオン交換性層状珪酸塩粒子の平均粒子径の測定
平均粒子径は、堀場製作所社製レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置LA-960を用い、分散溶媒をエタノール、屈折率実数項1.490、虚数項0.000、分散溶媒屈折率実数項1.360の条件で、超音波分散を行った後に測定した。平均粒子径は、体積基準のメジアン径のことをいう。
【0126】
5.MFR(メルトマスフローレート)
タカラ社製メルトインデクサーを用い、JIS K7210の「プラスチック-熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレート(MFR)及びメルトボリュームフローレート(MVR)の試験方法」の試験条件:230℃、2.16kg荷重に準拠して測定した。
【0127】
6.塊量
重合によって得られたポリマーを直径300mm、JIS Z 8801-1:2000に準拠した篩上に入れ、十分に振盪し、篩上に残ったポリマーの重量を測定し、下式により算出した。
塊量(重量%)=篩上に残ったポリマー量÷篩へ投入したポリマー量×100
なお篩の目開きはプロピレン単独重合実験では2360μm、プロピレン-エチレンランダム共重合体の重合実験では2800μmとした。
【0128】
7.BD(嵩密度)
篩を通過したポリマーを用いて、ASTM 1895-96 TEST METHOD Aに準拠して嵩密度を測定した。
【0129】
8.Tm(融点)
ポリマーの融点は、セイコーインスツルメンツ社製DSC6200示差走査熱量測定装置を使用して測定した。篩を通過したポリマーを用いてシート状にした試料片を5mgアルミパンに詰め、室温から一旦200℃まで昇温速度100℃/分で昇温し、200℃で5分間保持した後に、10℃/分で20℃まで降温して結晶化させた後に、10℃/分で200℃まで昇温することにより融解曲線を得た。融解曲線の昇温段階における主吸熱ピークのピークトップ温度を融点とした。
【0130】
9.付着物の評価
ポリマー回収後の重合反応器内部及び撹拌翼の表面を目視で観察し、付着物の有無を確認した。
【0131】
[ポリオキシエチレン化合物並びに他試薬]
市販の試薬を記載の販売元から入手し、5g/lとなるようにトルエンで希釈して使用した。なおジステアリン酸アルミニウム(DSA)は使用前に減圧下、80℃にて乾燥を行い、トルエンに完全には溶解しなかったため、トルエンスラリーとして使用した。
それぞれの数平均分子量等を表に示す。なお、PPGはポリプロピレングリコール、PEGはポリエチレングリコールを表す。
・31R1:プルロニック31R1(PPG-block-PEG-block-PPG )シグマ アルドリッチジャパン合同会社
・L121:プルロニックL121(PEG-block-PPG-block-PEG )シグマ アルドリッチジャパン合同会社
・L81:プルロニックL81(PEG-block-PPG-block-PEG )シグマ アルドリッチジャパン合同会社
・L31:プルロニックL31(PEG-block-PPG-block-PEG )シグマ アルドリッチジャパン合同会社
・PEG(23)L:ポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテル 富士フイルム和光純薬株式会社
・PEG1000:ポリエチレングリコール 1000 東京化成工業株式会社
・Tween80:ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート 東京化成工業株式会社
・Brij4:ポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテル シグマアルドリッチジャパン合同会社
・LEA:N-ラウリルジエタノールアミン 東京化成工業株式会社
・DSA:ジステアリン酸アルミニウム 富士フイルム和光純薬株式会社
【0132】
【0133】
[合成例1:オレフィン重合用触媒の製造]
(a)イオン交換性層状珪酸塩粒子の化学処理
原料として、2:1型層構造のスメクタイト族モンモリロナイトを主成分とするイオン交換性層状珪酸塩粒子(水澤化学工業社製「ベンクレイSL」)を使用した。
この原料の化学組成は、Al/Si=0.289であった。
【0134】
[酸処理]
撹拌翼と還流装置を取り付けた2Lフラスコに、蒸留水1300gを投入し、96%硫酸168gを滴下した。
内温が95℃になるまでオイルバスで加熱し、目標温度に到達したところで、原料であるイオン交換性層状珪酸塩200gを添加後撹拌した。
その後95℃を保ちながら540分反応させた。
この反応溶液を2Lの純水に注ぐことで反応を停止し、さらに、このスラリーをヌッチェと吸引瓶にアスピレータを接続した装置にて濾過した。
ろ過後のケーキ状のイオン交換性層状珪酸塩粒子を1Lの蒸留水でリンスした。
上記ケーキに、902.1gの蒸留水を加え、スラリー化させた。
この時のスラリーのpHは、1.7だった。
【0135】
[塩基処理]
前記スラリーを40℃まで昇温し、水酸化リチウム・一水和物3.54gを42.11gの蒸留水に溶解させた水酸化リチウム水溶液全量を徐々に加えていき、90分間撹拌を継続し、反応させた。
90分経過後のスラリーpHは、5.68であった。
工程中にスラリーのpHは、8を超えなかった。
反応スラリーをヌッチェと吸引瓶にアスピレータを接続した装置にて濾過し、2Lの蒸留水で3回洗浄した。
【0136】
[乾燥処理]
回収したケーキを110℃で1晩乾燥し、140.8gの化学処理イオン交換性層状珪酸塩粒子を得た。
この化学処理イオン交換性層状珪酸塩粒子を容積1Lのフラスコに入れ、200℃で減圧乾燥させ、ガスの発生が収まってからさらに2時間減圧乾燥した。
得られたイオン交換性層状珪酸塩粒子のAlとSiモル比(Al/Si)は0.176、アルミニウム(Al)の溶出率は39%、BET法により測定した比表面積は298m2/g、平均粒子径は48.1μmであった。
【0137】
(b)イオン交換性層状珪酸塩粒子の有機アルミニウム処理
内容積1000mLのフラスコに上記(a)で得た化学処理イオン交換性層状珪酸塩粒子10gを秤量し、ヘプタン36ml、成分[C]としてトリノルマルオクチルアルミニウム(TnOA)のヘプタン溶液64ml(25mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。
その後、ヘプタンで残液率1/100まで洗浄し、最後にスラリー量を50mLに調製した。
【0138】
(c)プロピレンによる予備重合
上記(b)で調製したTnOA処理したイオン交換性層状珪酸塩粒子のヘプタンスラリーに、TnOAのヘプタン溶液31mL(12.2mmol)を加えた。
ここに、別のフラスコ(容積200mL)中で、成分[B]として(r)-シラシクロブチレンビス[2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-t-ブチルフェニル)-5,6-ジメチル-1-インデニル]ジルコニウムジクロリド184mg(196μmol)にトルエン(30mL)を加えたスラリーを加えて、40℃で60分間撹拌した。
次に、上記イオン交換性層状珪酸塩粒子のヘプタンスラリーに、さらにヘプタン189mLを追加して全量を300mLに調製し、充分に窒素置換を行った内容積1Lの撹拌式オートクレーブに導入した。
オートクレーブ内の温度が40℃に安定したところでプロピレンを10g/時間の速度で供給し、温度を維持した。
120分後にプロピレンの供給を停止し、さらに60分間、40℃を維持した。
その後、残存モノマーをパージして予備重合触媒スラリーをオートクレーブより回収した。
回収した予備重合触媒スラリーを静置し、上澄み液を抜き出した。
続いて成分[C]としてトリイソブチルアルミニウム(TiBA)のヘプタン溶液8.3mL(6mmol)を室温にて加え、その後、減圧乾燥して、オレフィン重合用の固体触媒(予備重合触媒)を33.15g回収した。
予備重合倍率(予備重合ポリマー量を固体触媒量で除した値)は2.25であった。
【0139】
[合成例2:オレフィン重合用触媒の製造]
(a)イオン交換性層状珪酸塩粒子の化学処理
[酸処理]
撹拌翼と還流装置を取り付けた3Lセパラブルフラスコに、純水2250gを投入し、98%硫酸665gを滴下し、内部温度を90℃にした。そこへ、さらに市販の造粒モンモリロナイト(水澤化学社製、ベンクレイSL)を400g添加後撹拌した。その後90℃で3時間反応させた。このスラリーをヌッチェと吸引瓶にアスピレータを接続した装置にて濾過し、2Lの純水で5回洗浄した。
[塩処理]
このようにして回収されたケーキは、5Lビーカー内において硫酸亜鉛7水和物423gを純水1523mlに溶解させた水溶液に加えて室温で2時間反応させた。このスラリーをヌッチェと吸引瓶にアスピレータを接続した装置にて濾過し、2Lの純水で5回洗浄してケーキを回収し、これを120℃で終夜乾燥して295gの化学処理イオン交換性層状珪酸塩粒子を得た。これを目開き74μmの篩にて篩い分けしたところ、篩通過分は全体の重量の90%であった。
【0140】
[乾燥処理]
上記で得た化学処理イオン交換性層状珪酸塩粒子を容積1Lのフラスコに入れ、200℃で3時間減圧乾燥させたところガスの発生が収まった。その後さらに2時間減圧乾燥した。その水分含量を測定したところ、水分値は1.11質量%であった。
得られたイオン交換性層状珪酸塩粒子のAlとSiモル比(Al/Si)は0.183、アルミニウム(Al)の溶出率は35%、BET法により測定した比表面積は219m2/g、平均粒子径は50.9μmであった。
【0141】
(b)イオン交換性層状珪酸塩粒子の有機アルミニウム処理
内容積1Lのフラスコに上記で得られたイオン交換性層状珪酸塩粒子19.9gを秤量し、ヘプタン72ml、トリノルマルオクチルアルミニウム(TnOA)のヘプタン溶液128.0ml(50.1mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。その後、ヘプタンで残液率1/100まで洗浄したのち、100ml量に調整されたスラリーを得た。
【0142】
(c)プロピレンによる予備重合
上記(b)で調製したTnOA処理したイオン交換性層状珪酸塩粒子のヘプタンスラリーに、トリノルマルオクチルアルミニウムのヘプタン溶液6.13ml(2400μmol)を加えた。ここに、別のフラスコ(容積200ml)中で、ジメチルシリレンビス〔1-{2-メチル-4-(4-クロロフェニル)-4H-アズレニル}〕ジルコニウムジクロリド439mg(600.7μmol)にヘプタン(60ml)を加えたスラリーを加えて、60℃で60分間撹拌した。
このようにして得られたスラリーに、さらにヘプタン340mlを追加して全量を500mlに調整し、十分に窒素置換を行った内容積1Lの撹拌式オートクレーブに導入した。オートクレーブ内の温度が40℃に安定したところでプロピレンを10g/時間の速度で供給し、温度を維持した。4時間後プロピレンの供給を停止し、さらに2時間40℃を持した。
その後、残存モノマーをパージして予備重合触媒スラリーをオートクレーブより回収した。回収した予備重合触媒スラリーを静置し、上澄み液を400ml抜き出した。続いてトリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液16.72ml(12.01mmol)を室温にて加え、その後、減圧乾燥して固体触媒を63.46g回収した。
予備重合倍率(予備重合ポリマー量を固体触媒量で除した値)は2.12であった。
【0143】
【0144】
[実施例C1:オレフィン重合用触媒の製造]
合成例1において、工程(c)(プロピレンによる予備重合)前に、工程(b)で調製したTnOA処理したイオン交換性層状珪酸塩粒子のヘプタンスラリーに、31R1のトルエン溶液(31R1として10mg)を加えた以外は合成例1と同様にして、オレフィン重合用触媒の製造を行った。
【0145】
[実施例P1:プロピレンホモ重合]
内容積3Lの攪拌式オートクレーブ内をプロピレンで十分置換した。その後、トリイソブチルアルミニウム(TiBA)のヘプタン溶液5.6mL(4.04mmol)を加えた。次に、水素38mL、液体プロピレン750mLを導入し、80℃に昇温した。
実施例C1で得られたオレフィン重合用触媒をヘプタンにスラリー化した。このスラリーを固体触媒として(イオン交換性層状珪酸塩粒子量とメタロセン錯体量の和)17.7mgを圧入し重合を開始した。
80℃で1時間重合した後、エタノール5mLを加え重合反応を停止させた。
残存したプロピレンをパージ後、ポリマーを回収し、90℃で1時間乾燥した。得られたポリマーを篩にかけ、篩上に残った量を計測した。またMFR、BDは篩を通過したポリマーを用いて測定した。またポリマー回収後の重合反応器内部や撹拌翼の表面を目視で観察し、付着物の有無を確認した。結果を表4に示す。
【0146】
[実施例P2:プロピレンホモ重合]
触媒量(イオン交換性層状珪酸塩粒子量とメタロセン錯体量の和)および水素添加量を表3に記載の条件とした以外は、実施例P1と同様の方法で重合を行った。結果を表4に示す。
【0147】
[実施例P3~P22:プロピレンホモ重合]
実施例P1において、触媒を合成例1で合成したオレフィン重合用触媒に変更し、触媒量および水素添加量を表3に記載の条件とし、オートクレーブをプロピレンで置換した後に、表3に記載のポリオキシエチレン化合物をトルエン溶液とし、表3に記載の量を表3に記載の添加方法で併用した以外は実施例P1と同様の方法で重合を行った。結果を表4に示す。
【0148】
[比較例P1~P12:プロピレンホモ重合]
オレフィン重合用触媒の種類、触媒量、水素添加量及びポリオキシエチレン化合物の使用有無、使用した場合の使用量並びに添加方法を表3に記載の条件とした以外は、実施例P3と同様の方法で重合を行った。結果を表4に示す。
【0149】
【表3】
*添加方法 A:触媒と添加剤を重合反応器とは別の反応器で接触
添加方法 B:触媒と添加剤を重合反応器へ別々に供給
【0150】
【0151】
[実施例P23:プロピレン-エチレンランダム共重合]
内容積3Lの攪拌式オートクレーブ内をプロピレンで十分置換した。その後、31R1のトルエン溶液を0.75ml(31R1として3.75mg)、トリイソブチルアルミニウム(TiBA)のヘプタン溶液5.6mL(4.04mmol)を加えた。次に、水素69mL、エチレン23g、液体プロピレン750mLを導入し、70℃に昇温した。
合成例2で得られたオレフィン重合用触媒をヘプタンにスラリー化した。このスラリーを固体触媒として(イオン交換性層状珪酸塩粒子量とメタロセン錯体量の和)6.82mgを圧入し重合を開始した。
70℃で1時間重合した後、エタノール5mLを加え重合反応を停止させた。
残存したプロピレンをパージ後、ポリマーを回収し、90℃で1時間乾燥した。得られたポリマーを篩にかけ、篩上に残った量を計測した。またMFR、BDは篩を通過したポリマーを用いて測定した。結果を表6に示す。
【0152】
[比較例P13~P15:プロピレン-エチレンランダム共重合]
触媒量(イオン交換性層状珪酸塩粒子量とメタロセン錯体量の和)および水素添加量を表5に記載の条件とし、31R1のトルエン溶液を加えなかった以外は、実施例P23と同様の方法で重合を行った。結果を表6に示す。
【0153】
【表5】
*添加方法 B:触媒と添加剤を重合反応器へ別々に供給
【0154】
【0155】
[実施例と比較例の対比]
実施例P1及びP2は、特定のイオン交換性層状珪酸塩粒子を成分として含む触媒と本願特定のポリオキシエチレン化合物を重合反応器とは別の反応器で接触させた上で、当該触媒を用いてプロピレンホモ重合を行った例である。比較例P1及びP2は、本願特定のポリオキシエチレン化合物を用いず、特定のイオン交換性層状珪酸塩粒子を成分として含む触媒を用いてプロピレンホモ重合を行った例である。実施例P1及びP2、比較例P1及びP2について、触媒活性、塊量、嵩密度(BD)を比較したグラフをそれぞれ
図1、2、及び3に示す。
特定のイオン交換性層状珪酸塩粒子を成分として含む触媒は、本願特定のポリオキシエチレン化合物と組み合わせて用いることで、触媒活性を損なうことなく、塊量が低減され、BDも上昇し、付着も消失していることがわかる。
【0156】
またイオン交換性層状珪酸塩粒子を成分として含む触媒と本願特定のポリオキシエチレン化合物を重合反応器へ別々に供給し、プロピレンホモ重合を行った実施例P3~22、並びに、本願特定のポリオキシエチレン化合物を用いない、または本願特定のポリオキシエチレン化合物以外の公知の添加剤を用いてイオン交換性層状珪酸塩粒子を成分として含む触媒によりプロピレンホモ重合を行った比較例P1~12において、水素量を変えて重合した2点の結果(例えば,表4の実施例3と実施例4の2点)について、Log(MFR)について1次の相関関係があるとしてMFR=1での触媒活性を算出した。得られたMFR=1換算の触媒活性を、本願特定のポリオキシエチレン化合物又は本願特定のポリオキシエチレン化合物以外の公知の添加剤の添加量に対してプロットした結果を
図4に示す。
図4と表3の結果より、特定のイオン交換性層状珪酸塩粒子を成分として含む触媒に、本願特定のポリオキシエチレン化合物を組み合わせることで、触媒活性を損なうことなく、塊状ポリマーや反応器への付着物の発生を抑制できることがわかる。
【0157】
また実施例P23及び比較例P13~15の比較により、プロピレン-エチレンランダム共重合においても、触媒活性を損なうことなく、塊を抑制できることがわかる。
本発明によれば、触媒活性や、重合体の品質を損なうことなく、安全性や経済性に優れたイオン交換性層状珪酸塩粒子を成分として含むオレフィン重合用触媒を用いて、安定的にオレフィン重合体を製造する方法を提供でき、産業上、利用可能性が高いものである。