(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033763
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】自動ワインダ
(51)【国際特許分類】
B65H 67/04 20060101AFI20240306BHJP
【FI】
B65H67/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137567
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】鳥居 隆太
(72)【発明者】
【氏名】中村 心也
【テーマコード(参考)】
3F112
【Fターム(参考)】
3F112AA08
3F112VA01
3F112VC03
(57)【要約】
【課題】中間フレームの位置ズレを吸収できるとともに、中間フレームを良好に支持可能な構成を有する自動ワインダを提供する。
【解決手段】自動ワインダは、給糸ボビンから糸を解舒してパッケージとして巻き取る。自動ワインダは、給糸フレーム25と、糸巻取フレームと、糸継フレーム76と、メインフレームと、を備える。給糸フレーム25には、給糸ボビンから解舒された直後の糸が形成するバルーンに接触するガイド部材が設けられる。糸巻取フレームには、パッケージを巻き取る糸巻取部が設けられる。糸継フレーム76は、糸巻取フレームと、給糸フレーム25と、の間に設けられている。メインフレームは、糸巻取フレームと、糸継フレーム76と、給糸フレーム25と、のそれぞれを支持する。糸継フレーム76と、給糸フレーム25とは、上下方向において間隔を空けて配置され、かつ水平方向において接触して配置される。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
給糸ボビンから糸を解舒してパッケージとして巻き取る自動ワインダであって、
前記給糸ボビンから解舒された直後の糸が形成するバルーンに接触するガイド部材が設けられる下部フレームと、
前記パッケージを巻き取る糸巻取部が設けられる上部フレームと、
前記上部フレームと、下部フレームと、の間に設けられた中間フレームと、
前記上部フレームと、前記中間フレームと、前記下部フレームと、のそれぞれを支持する機台フレームと、
を備え、
前記中間フレームと、前記下部フレームとは、上下方向において間隔をあけて配置され、かつ水平方向において接触して配置されることを特徴とする自動ワインダ。
【請求項2】
請求項1に記載の自動ワインダであって、
前記中間フレームは、その背面を基準として、前記機台フレームに取り付けられ、
前記下部フレームは、その底面を基準として、前記機台フレームに取り付けられることを特徴とする自動ワインダ。
【請求項3】
請求項1に記載の自動ワインダであって、
前記中間フレームは、水平視において凹状の第1部分を有し、
前記下部フレームは、水平視において凸状の第2部分を有し、
前記第2部分が前記第1部分に入り込むように配置されることを特徴とする自動ワインダ。
【請求項4】
請求項3に記載の自動ワインダであって、
前記第2部分は、レール部材であることを特徴とする自動ワインダ。
【請求項5】
請求項4に記載の自動ワインダであって、
前記中間フレームは、固定部材により、前記機台フレームに対して取外し可能に固定されており、
前記固定部材を取り外した際に、上下方向において、前記機台フレームから取り外された前記中間フレームの前記第1部分と、前記レール部材と、が接触することを特徴とする自動ワインダ。
【請求項6】
請求項1に記載の自動ワインダであって、
前記機台フレームには、前記中間フレームの位置を決めるための位置決め部が設けられていることを特徴とする自動ワインダ。
【請求項7】
請求項1に記載の自動ワインダであって、
前記中間フレームが前記機台フレームに取り付けられている状態において、上下方向における前記中間フレームと前記下部フレームとの間の間隔は、4ミリメートル以下であることを特徴とする自動ワインダ。
【請求項8】
請求項1に記載の自動ワインダであって、
並べられた複数の自動ワインダユニットを備え、
複数の前記自動ワインダユニットのそれぞれに、マガジン式の給糸ボビン供給装置が設けられた前記下部フレームが設置されており、
隣接する前記自動ワインダユニットの前記下部フレームに設けられた前記マガジン式の給糸ボビン供給装置同士は、互いに連結されていることを特徴とする自動ワインダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動ワインダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、紡績された糸を巻き取ってパッケージを形成する自動ワインダが知られている。特許文献1は、この種の自動ワインダを開示する。
【0003】
特許文献1の自動ワインダは、モジュール分割式の自動ワインダであって、糸巻取部、糸処理部のそれぞれが、メインフレームの異なる位置に取り付けられている構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1のようなモジュール分割式の自動ワインダにおいては、取付誤差、寸法誤差等、撓みの発生等による位置ズレを吸収可能な取付け構造が望まれている。
【0006】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、2つのフレームの間の上下方向の位置ズレを吸収しながら、一方のフレームを他方のフレームによって良好に支持可能な構成を有する自動ワインダを提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0008】
本発明の観点によれば、以下の構成の自動ワインダが提供される。即ち、この自動ワインダは、給糸ボビンから糸を解舒してパッケージとして巻き取る。自動ワインダは、下部フレームと、上部フレームと、中間フレームと、機台フレームと、を備える。前記下部フレームには、前記給糸ボビンから解舒された直後の糸が形成するバルーンに接触するガイド部材が設けられる。前記上部フレームには、前記パッケージを巻き取る糸巻取部が設けられる。前記中間フレームは、前記上部フレームと、下部フレームと、の間に設けられている。前記機台フレームは、前記上部フレームと、前記中間フレームと、前記下部フレームと、のそれぞれを支持する。前記中間フレームと、前記下部フレームとは、上下方向において間隔を空けて配置され、かつ水平方向において接触して配置される。
【0009】
これにより、中間フレーム又は下部フレームの取付誤差等による上下方向の位置ズレを、両者の間の間隔によって吸収すると同時に、中間フレームを下部フレームにより支持することができる。
【0010】
また、前記自動ワインダにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記中間フレームは、その背面を基準として、前記機台フレームに取り付けられる。前記下部フレームは、その底面を基準として、前記機台フレームに取り付けられる。
【0011】
下部フレーム及び中間フレームの機台フレームに対する取付基準が互いに異なっている場合、上下方向の位置ズレが生じ易いが、この位置ズレを、両者の間の間隔によって適切に吸収することができる。
【0012】
また、前記自動ワインダにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記中間フレームは、水平視において凹状の第1部分を有する。前記下部フレームは、水平視において凸状の第2部分を有する。前記第2部分が前記第1部分に入り込むように配置される。
【0013】
これにより、中間フレームが機台フレームから取り外された場合に、中間フレームの移動を、第1部分と第2部分の引っ掛かりによって規制することができる。従って、中間フレームの安定性を確保できる。
【0014】
また、前記自動ワインダにおいて、前記第2部分はレール部材であることが好ましい。
【0015】
これにより、中間フレームを引き出すとき、レール部材によって中間フレームを好適に案内することができる。
【0016】
また、前記自動ワインダにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記中間フレームは、固定部材により、前記機台フレームに対して取外し可能に固定されている。前記固定部材を取り外した際に、上下方向において、前記機台フレームから取り外された前記中間フレームの前記第1部分と、前記レール部材と、が接触する。
【0017】
これにより、機台フレームから取り外された中間フレームを下から支持することができる。
【0018】
また、前記自動ワインダにおいて、前記機台フレームには、前記中間フレームの位置を決めるための位置決め部が設けられていることが好ましい。
【0019】
これにより、中間フレームを機台フレームの所定の位置に正確に取り付けることができる。
【0020】
また、前記自動ワインダにおいて、前記中間フレームが前記機台フレームに取り付けられている状態において、上下方向における前記中間フレームと前記下部フレームとの間の間隔は、4ミリメートル以下であることが好ましい。
【0021】
これにより、中間フレームと下部フレームの間で生じる上下方向における位置ズレを吸収できるとともに、自動ワインダを上下方向にコンパクトに構成することができる。中間フレームを機台フレームから取り外したときの落下ストロークが小さいので、糸継部等に加わる衝撃を小さくすることができる。
【0022】
また、前記自動ワインダにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、この自動ワインダは、並べられた複数の自動ワインダユニットを備える。複数の前記自動ワインダユニットのそれぞれに、マガジン式の給糸ボビン供給装置が設けられた前記下部フレームが設置されている。隣接する前記自動ワインダユニットの前記下部フレームに設けられた前記マガジン式の給糸ボビン供給装置同士は、互いに連結されている。
【0023】
これにより、マガジン式の給糸ボビン供給装置の強度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施形態に係る自動ワインダに備えられるメインフレームの構成を示す斜視図。
【
図2】自動ワインダに備えられる巻取ユニットの構成の一例を模式的に示す側面図。
【
図3】巻取ユニットの構成の他の一例を模式的に示す側面図。
【
図4】マガジン式の給糸ボビン供給機構同士の連結構造を示す部分斜視図。
【
図5】糸継フレームをメインフレームに取り付ける構成を示す分解斜視図。
【
図7】糸継フレームをレール部材に取り付ける構成を示す斜視図。
【
図8】糸継フレームがレール部材に沿ってスライドするイメージを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る自動ワインダ1の構成を示す斜視図である。
【0026】
自動ワインダ1は、メインフレーム(機台フレーム)2と、複数の巻取ユニット(自動ワインダユニット)4,4,・・・と、図示しない機台制御部と、を備える。巻取ユニット4は1列に並べて配置され、それぞれメインフレーム2に取り付けられる。
【0027】
巻取ユニット4,4,・・・は、正面視で左右方向に並べて配置されている。それぞれの巻取ユニット4は、その給糸交換部3にセットされた給糸ボビン6又は図示しない給糸パッケージから糸を解舒する。それぞれの巻取ユニット4は、解舒された糸を巻き取る。これにより、それぞれの巻取ユニット4においてパッケージ9が形成される。
【0028】
機台制御部は、メインフレーム2の、複数の巻取ユニット4,4,・・・が並べられた方向(
図1に示す左右方向)の一端に配置される。機台制御部は、各巻取ユニット4に備えられるユニットコントローラ90と通信することにより、巻取ユニット4,4,・・・を統括的に制御する。オペレータは、機台制御部に適宜の指示を入力することにより、複数の巻取ユニット4を一括して管理することができる。
【0029】
次に、メインフレーム2の構成について、
図1を参照してより具体的に説明する。メインフレーム2は、自動ワインダ1の骨格をなすものである。メインフレーム2は、側板部11と、底板部12と、ブロアダクト13と、支持軸14と、受け板15と、を備える。
【0030】
側板部11は、上下方向に長い板状の部材である。側板部11は、その厚み方向を左右水平方向に向けて、左右1対で設けられる。左右の側板部11は、複数の巻取ユニット4,4,・・・を並べて配置するのに必要な間隔だけ空けて、対向するように配置される。底板部12は、左右方向に長い水平な板状の部材である。底板部12は、左側の側板部11の下端部と、右側の側板部11の下端部と、を水平に繋ぐように設けられる。
【0031】
ブロアダクト13は、中空の部材である。ブロアダクト13は、左右の側板部11の間に架け渡される。ブロアダクト13の前面側には、各巻取ユニット4に対応するように、開口13aが形成されている。ブロアダクト13は、図示しないファンの回転により発生した吸引流を、巻取ユニット4のそれぞれに分配することができる。各開口13aは、各巻取ユニット4の構成のうち吸引流を発生させる対象の部材と、配管等を介して接続される。
【0032】
受け板15は、ブロアダクト13の上方に設けられる。受け板15は、左右方向に長い水平な板状に形成され、左右の側板部11の間に架け渡される。受け板15は、ブロアダクト13の上面に対して平行に配置される。受け板15は、ブロアダクト13の上面に対して、上下方向に少し間隔を空けて、当該ブロアダクト13の上面と対面する。
【0033】
支持軸14は、左右方向に長い軸状の部材である。支持軸14は、ブロアダクト13の前端面の下方に配置される。軸に垂直な面で支持軸14を切った断面は円形である。支持軸14は、左右の側板部11の間に水平に架け渡される。
【0034】
次に、巻取ユニット4の構成について、
図2及び
図3を参照してより具体的に説明する。
図2は、自動ワインダ1の巻取ユニット4の構成の一例を模式的に示す側面図である。
図3は、巻取ユニット4の構成の他の一例を模式的に示す側面図である。
図4は、マガジン式のボビン供給装置20同士の連結構造を示す部分斜視図である。
【0035】
図2に示すように、巻取ユニット4は、糸巻取部5と、糸処理部10と、を備える。上下方向において、糸巻取部5はメインフレーム2の上部に配置される。上下方向において、糸処理部10は、糸巻取部5の下方に配置される。糸処理部10は、給糸交換部3と、糸継部8と、を備える。給糸交換部3は、糸処理部10の下部に配置される。糸継部8は、糸巻取部5と給糸交換部3との間に配置される。
【0036】
このように、巻取ユニット4は、モジュール分割式のユニットであって、下から順に配置された給糸交換部3と、糸継部8と、糸巻取部5と、の3つのモジュールを組み合わせて構成される。給糸交換部3、糸継部8及び糸巻取部5に取り付けられる各装置は、何れも、モジュールとして、メインフレーム2に対して着脱可能に設けられている。
【0037】
給糸交換部3は、糸処理部10の一部である。給糸交換部3は、パッケージ9に巻き返すための糸を供給する給糸ボビン6(又は図示しない給糸パッケージ)が交換可能にセットされる部分である。給糸交換部3は、メインフレーム2の底板部12に載置されるようにして、メインフレーム2の下部に取り付けられる。
【0038】
給糸交換部3は、複数の形式の給糸交換装置のうちの何れかを選択的に取り付けることにより構成される。具体的には、本実施形態の給糸交換部3には、マガジン式のボビン供給装置(マガジン式の給糸ボビン供給装置)20、トレイ式のボビン供給装置30、及び図示しないパッケージ供給装置の中から、何れか1つを取り付けることが可能である。
【0039】
糸継部8は、糸処理部10の一部である。糸継部8は、給糸交換部3から糸巻取部5へ供給される糸を繋ぎ合わせる部分である。糸継部8は、メインフレーム2の上下方向中間部に取り付けられる。具体的にいうと、糸継部8がメインフレーム2に取り付けられる位置は、給糸交換部3が設けられる位置よりも上方であり、かつ、糸巻取部5が取り付けられる位置よりも下方である。糸継部8は、例えば、適宜の固定部材(例えば、ボルト等)によって、メインフレーム2の前面側に取り付けられる。糸継部8がメインフレーム2に固定された状態において、糸継部8の重量は、メインフレーム2が備える支持軸14によって支持されている。
【0040】
糸継部8は、複数の形式の糸継メカニズムのうちの何れかを選択的に取り付けることにより構成される。具体的には、本実施形態の糸継部8には、サクションマウス式の糸継メカニズム70、及び図示しない糸貯留式の糸継メカニズムのうちの何れか1つを取り付けることが可能である。
【0041】
糸巻取部5は、給糸交換部3から供給される糸を芯管に巻き取ってパッケージ9を形成する部分である。糸巻取部5は、メインフレーム2の上部に取り付けられる。メインフレーム2に固定された状態で、糸巻取部5の背面側の底面は、振動吸収部材59を介してメインフレーム2の受け板15に載置されている。別の言い方をすれば、糸巻取部5は、その背面側で、受け板15によって下方から支持される。
【0042】
糸巻取部5は、複数の形式の糸巻取装置のうちの何れかを選択的に取り付けることにより構成される。具体的には、本実施形態の糸巻取部5には、綾振ドラム式の糸巻取装置50、及びアームトラバース式の糸巻取装置60のうちの何れか1つを取り付けることが可能である。
【0043】
給糸交換部3、糸継部8、及び糸巻取部5に取り付けられる各装置は、何れも、モジュールとして、メインフレーム2に対して着脱可能に設けられている。メインフレーム2は、給糸交換部3、糸継部8、糸巻取部5等のモジュールを組み合わせるための基台となる部材として機能する。メインフレーム2はそれぞれのモジュールを着脱できる構成を有していればよく、その構成は限定されない。
【0044】
図2は、給糸交換部3にマガジン式のボビン供給装置20を、糸巻取部5に綾振ドラム式の糸巻取装置50を、糸継部8にサクションマウス式の糸継メカニズム70を、それぞれ取り付けた場合の構成を模式的に示している。以下、これらの3つのモジュールの組合せで巻取ユニット4を構成した例について、巻取ユニット4の構成をより詳細に説明する。
【0045】
マガジン式のボビン供給装置20は、ボビンセット部21と、マガジン式のボビン供給機構22と、解舒補助装置(補助装置)29と、を備える。
【0046】
ボビンセット部21は、糸を解舒するための給糸ボビン6を、立てた姿勢で、所定の位置で保持することが可能である。
【0047】
マガジン式のボビン供給機構22は、オペレータが給糸ボビン6を手動で供給するための円柱状のマガジンカン23を備える。マガジンカン23には、複数のポケット部が円周状に並ぶように形成されている。オペレータがこのポケット部に給糸ボビン6を差し入れることで、給糸ボビン6をストックすることができる。マガジンカン23の下には、給糸ボビン案内部24が設けられている。給糸ボビン案内部24は、マガジンカン23から落下してきた給糸ボビン6を斜め下方に更に落下させ、ボビンセット部21まで案内する。
【0048】
ボビンセット部21に既にセットされている給糸ボビン6から糸が全て解舒されると、空の給糸ボビンが図略の排出機構によって排出される。その後、ボビン供給機構22にストックされた給糸ボビン6が、給糸ボビン案内部24に落下する。これにより、新しい給糸ボビン6がボビンセット部21にセットされる。
【0049】
解舒補助装置29は、給糸ボビン6の上部に形成されるバルーンB1に対して可動部材(ガイド部材)29aを接触させ、当該バルーンB1の大きさを適切に制御することによって糸の解舒を補助する。給糸ボビン6に巻かれた糸をボビンの長手方向に引っ張ると、糸が糸層から離れる箇所は、ボビン軸を中心として周回する。バルーンB1とは、実質的に、給糸ボビン6から上方へ解舒される糸が振り回されることに伴って通過する軌跡を意味する。可動部材29aは、糸が下から上へ通過できるように、実質的に筒状に形成される。可動部材29aは、例えばネジ送り機構からなる昇降機構29bにより、上下方向に移動可能に給糸フレーム25に取り付けられる。昇降機構29bには、図示しない電動モータの駆動力が伝達される。ユニットコントローラ90は電動モータを制御し、可動部材29aの高さを昇降機構29bによって変更する。これにより、バルーンB1が適度な大きさとなるように調整することができる。
【0050】
ボビン供給機構22及び解舒補助装置29は、給糸フレーム(下部フレーム)25を介して、ボビンセット部21の底部に支持されている。ボビンセット部21の底部が底板部12の上に載置された状態で、ボビンセット部21(ひいてはマガジン式のボビン供給装置20)がメインフレーム2に取り付けられる。
【0051】
給糸フレーム25は、支持体28と、レール部材(第2部分)26と、から構成される。支持体28は、細長い部材である。支持体28は、上下方向に向けられた状態で、ボビンセット部21の底部に固定される。支持体28は、前述の昇降機構29bを介して、ボビンセット部21の上方に配置された可動部材29aを支持する。
【0052】
レール部材26は、
図1に示す前後方向に延びるように、支持体28の上端に設けられる。レール部材26の後端は、
図6に示すボルト92を用いて、支持軸14に取り付けられている。
【0053】
本実施形態において、レール部材26の取付フランジ26L,26Rの背面は平面状である一方、支持軸14の前面は湾曲面となっている。取付フランジ26L,26Rと支持軸14とは側面視で点接触の関係にあるので、レール部材26の後端部(言い換えれば、給糸フレーム25の背面)は、給糸フレーム25の取付けの基準として実質的に機能しない。給糸フレーム25は、前述の給糸フレーム底板27の底面を基準として、メインフレーム2の底板部12に取り付けられる。給糸フレーム25の上側の部分は、レール部材26を介して支持軸14に固定される。
【0054】
本実施形態の自動ワインダ1においては、左右方向に隣接する2つの巻取ユニット4に属するマガジン式のボビン供給装置20同士が、互いに連結して配置されている。
【0055】
具体的には、
図4に示すように、互いに隣接する2つのマガジン式のボビン供給装置20は、連結部材20aを介して連結されている。連結部材20aは、板をU字状に曲げて構成されている。マガジン式のボビン供給装置20のそれぞれにおいて、マガジンカン23はマガジンカン支持板23aによって支持される。連結部材20aは、隣接するマガジンカン支持板23aに跨って配置される。連結部材20aの左右方向の両端部のそれぞれが、ボルト92を用いて、マガジンカン支持板23aに固定されている。この結果、隣接する2つのマガジン式のボビン供給装置20が連結される。この連結構造により、マガジン式のボビン供給装置20の強度が向上し、また、ボビン供給装置20の安定的な取付けが実現される。
【0056】
マガジンカン支持板23aは、
図4に示すように正面視で逆T字状に形成されている。しかし、マガジンカン支持板23aの形状は上記に限定されない。
【0057】
綾振ドラム式の糸巻取装置50は、巻取ボビン51と、クレードル52と、綾振ドラム53と、図示しない綾振ドラム回転駆動源と、糸巻取フレーム(上部フレーム)54と、を備える。
【0058】
巻取ボビン51は、給糸交換部3から供給された糸をその外周に巻き付けてパッケージ9を形成する。クレードル52は、巻取ボビン51を保持可能に構成される。綾振ドラムは、綾振ドラム回転駆動源の駆動力により回転する。綾振ドラム53は、巻取ボビン51に巻かれる糸をトラバース(綾振り)させつつ、巻取ボビン51を回転させることができる。
【0059】
クレードル52は、支点58を中心にして回転することで、綾振ドラム53に対し近接又は離間する方向に揺動可能である。これにより、パッケージ9が綾振ドラム53に対して接触又は離間される。綾振ドラム53の外周面には螺旋状の綾振溝が形成されている。糸は、この綾振溝によって一定の幅でトラバースされながら巻取ボビン51に巻き取られる。これにより、一定の巻幅を有するパッケージ9を形成することができる。
【0060】
糸巻取フレーム54は、概ね直方体状の部材である。糸巻取フレーム54の左右一側には、クレードル52及び綾振ドラム53が配置されている。糸巻取フレーム54は、これらの部材を片持ち支持している。
【0061】
糸巻取フレーム54には、綾振ドラム53の駆動モータが配置されている。糸巻取フレーム54の背面側の底部には、水平な底板55が設けられている。この底板55が受け板15の上に振動吸収部材59を介して載置された状態で、糸巻取フレーム54(ひいては、糸巻取部5)がメインフレーム2に取り付けられる。糸巻取フレーム54は、隣接する巻取ユニット4の糸巻取部5との間を仕切るように配置される。
【0062】
サクションマウス式の糸継メカニズム70は、糸監視装置71と、スプライサ72と、第1糸捕捉装置73と、第2糸捕捉装置74と、テンション付与装置75と、糸継フレーム(中間フレーム)76と、を備える。
【0063】
糸継フレーム76は、縦方向に細長い概ね直方体状の部材である。糸継フレーム76は、その厚み方向が自動ワインダ1の左右方向と一致するようにメインフレーム2に取り付けられている。
【0064】
糸継フレーム76の厚み方向一側(本実施形態においては左側)には、糸監視装置71と、スプライサ72と、第1糸捕捉装置73と、第2糸捕捉装置74と、テンション付与装置75と、が配置される。糸継フレーム76は、これらの部材を片持ち支持している。
【0065】
糸継フレーム76は、上記の各部を支持した状態で、メインフレーム2の上下方向中間部に取り付けられる。糸継フレーム76は、隣接する巻取ユニット4の糸継部8との間を仕切るように、糸巻取フレーム54と左右方向で位置を合わせて配置される。糸巻取フレーム54と糸継フレーム76とは直接的には接続されておらず、互いの間に(上下方向に)空間としての隙間が形成されている。
【0066】
糸継フレーム76の内部には、ユニットコントローラ90等が配置されている。ユニットコントローラ90は、巻取ユニット4の各部を制御するための制御部として機能する。
【0067】
糸監視装置71は、糸の太さを監視することにより、糸に生じるスラブ等の欠陥(以下、糸欠陥と称することがある。)を検出する。糸監視装置71の近傍には、当該糸監視装置71が糸欠陥を検出したときに直ちに糸を切断するためのカッタが配置されている。
【0068】
スプライサ72は、糸監視装置71が糸欠陥を検出してカッタで糸を切断する糸切断時、給糸ボビン6から解舒中の糸の糸切れ時、又は給糸ボビン6の交換時等に、給糸交換部3側の糸と、糸巻取部5側の糸とを繋ぎ合わせる。本実施形態のスプライサ72においては、図略のコンプレッサからの圧縮空気が供給されることにより糸の撚り合わせ等が行われ、これにより糸継ぎが行われる。
【0069】
スプライサ72の下側及び上側には、第1糸捕捉装置73と、第2糸捕捉装置74と、が設けられている。第1糸捕捉装置73は、給糸交換部3側の糸を吸引捕捉して案内する。第2糸捕捉装置74は、糸巻取部5側の糸を吸引捕捉して案内する。第1糸捕捉装置73の先端には吸引口が形成され、第2糸捕捉装置74の先端にはサクションマウスが備えられている。第1糸捕捉装置73及び第2糸捕捉装置74は、配管等を介して、ブロアダクト13の開口13aに接続されている。これにより、吸引口及びサクションマウスに吸引流を発生させることができる。
【0070】
この構成で、給糸ボビン6の交換時等においては、第1糸捕捉装置73の吸引口が下方へ回動して給糸交換部3側の糸を吸引捕捉し、その後、上方へ回動することでスプライサ72まで下糸を案内する。また、これとほぼ同時に、第2糸捕捉装置74のサクションマウスが、逆転駆動されるパッケージ9から解舒される糸を吸引捕捉し、その後、下方へ回動することでスプライサ72まで上糸を案内する。そして、スプライサ72において、給糸交換部3からの糸とパッケージ9からの糸の糸継ぎが行われる。
【0071】
以上の構成で、
図2に示す巻取ユニット4は、給糸交換部3にセットされた給糸ボビン6から糸を解舒して巻取ボビン51に巻き取って、所定長のパッケージ9を形成することができる。
【0072】
本実施形態の巻取ユニット4は、
図3に示すように、綾振ドラム式の糸巻取装置50の代わりにアームトラバース式の糸巻取装置60を備え、マガジン式のボビン供給装置20の代わりに搬送トレイ式のボビン供給装置30を備える構成とすることができる。
図3に示す巻取ユニット4は、糸巻取装置60とボビン供給装置30の組合せを含んで構成される。
【0073】
図3に示すアームトラバース式の糸巻取装置60は、巻取ボビン61と、図示しない巻取ボビン回転駆動源と、クレードル62と、接触ローラ63と、糸巻取フレーム(上部フレーム)64と、トラバースアーム67と、トラバース駆動モータ66と、を備える。
【0074】
クレードル62は、巻取ボビン61を回転可能に支持する。巻取ボビン61は、巻取ボビン回転駆動源の出力軸に連結され、回転駆動される。トラバースアーム67は、トラバース駆動モータ66によって往復旋回駆動される。
【0075】
接触ローラ63は、回転可能に糸巻取フレーム64に支持されている。接触ローラ63の軸方向の一端部が、糸巻取フレーム64に取り付けられている。接触ローラ63は、巻取ボビン61の周面に接触して回転可能である。接触ローラ63は、例えば、糸巻取フレーム64に固定された図示しない支持アーム等に回転可能に取り付けられても良い。
【0076】
糸巻取フレーム64の左右方向一側には、糸巻取装置60の各種装置が配置される。各種装置は、クレードル62、巻取ボビン回転駆動源、及びトラバース駆動モータ66等を含む。トラバースアーム67は、トラバース駆動モータ66によって往復旋回駆動される。
【0077】
トラバースアーム67は、トラバース駆動モータ66のロータが正逆回転を繰り返すことにより、往復旋回運動を行う。これにより、トラバースアーム67の先端に引っ掛けられている糸は、トラバースされながら接触ローラ63側へ供給され、回転する巻取ボビン61に巻き取られる。これにより、給糸ボビン6の糸を巻き返したパッケージ9を形成することができる。
【0078】
図3に示す搬送トレイ式のボビン供給装置30は、ボビンセット部31と、糸解舒補助装置39と、給糸フレーム25と、を備える。
【0079】
ボビンセット部31は、糸を解舒するための給糸ボビン6を、立てた姿勢で、所定の位置で保持することが可能である。糸解舒補助装置39は、給糸ボビン6の上部に形成されるバルーンB1に対して可動部材39aを接触させて糸の解舒を補助する。糸解舒補助装置39、可動部材39a及び昇降機構39bの構成は、前述の解舒補助装置29、可動部材29a及び昇降機構29bと実質的に同様であるため、説明を省略する。
【0080】
給糸フレーム25の支持体28は、ボビンセット部31の上方に配置された可動部材39aを、昇降機構39bを介して支持する。搬送トレイ式のボビン供給装置30において、給糸フレーム25は、給糸フレーム底板27を更に備える。給糸フレーム底板27には、給糸ボビン6を載せたトレイが通過可能な軌道が形成されている。
【0081】
給糸フレーム底板27は、図示しないボルト等により、メインフレーム2の底板部12に固定される。支持体28は、上下方向に向けられた状態で、給糸フレーム底板27により支持される。このように、搬送トレイ式のボビン供給装置30においても、マガジン式と同様に、給糸フレーム25は底面を基準としてメインフレーム2に取り付けられる。
【0082】
続いて、糸継メカニズム70の糸継フレーム76をメインフレーム2に取り付ける具体的な構成について説明する。
図5は、糸継フレーム76をメインフレーム2に取り付ける構成を示す分解斜視図である。
図6は、レール部材26を固定する構成を示す斜視図である。
図7は、糸継フレーム76をレール部材26に取り付ける構成を示す斜視図である。
図8は、糸継フレーム76がレール部材26に沿ってスライド移動する様子を示す図である。
【0083】
本実施形態の自動ワインダ1において、糸継フレーム76をメインフレーム2に取り付けるための構造は、ブロアダクト13及び給糸フレーム25のそれぞれに配置されている。
【0084】
図5に示すように、ブロアダクト13の前方には、位置決めピン(位置決め部)13bと、上部穴16と、下部取付ブラケット17と、が配置されている。位置決めピン13bは、糸継フレーム76をブロアダクト13の所定の位置に正確に取り付けるために設けられている。上部穴16及び下部取付ブラケット17は、糸継フレーム76を取り付けるために設けられている。
【0085】
位置決めピン13bは、ブロアダクト13の前面から更に前方に突出するように設けられている。即ち、当該位置決めピン13bは、自動ワインダ1の前後方向に延びている。位置決めピン13bの先端部には、円錐テーパ部が形成されている。これにより、位置決めピン13bが後述の位置決め穴78bに差し込み易くなる。位置決めピン13bの形状は円錐台状に限定されず、例えば円柱状、円錐状、又は半球状に形成されても良い。位置決めピン13bは、左側の上部穴16の左方に配置されている。しかし、位置決めピン13bの位置は任意である。位置決めピン13bが設けられているブロアダクト13側に位置決めピン13bの直径が縮小する小径部を設けることもできる。このように小径部を設けることにより、位置決めピン13bが位置決め穴78bに差し込まれた際に、位置決め穴78bの一部が小径部に係止される。これにより位置決めピン13bに差し込まれた位置決め穴78bがテーパ部の傾斜により移動して外れてしまうことを防止できる。この効果によりオペレータは糸継フレーム76を軽い力で保持することができるので、作業効率が向上する。
【0086】
上部穴16は、ネジ穴である。上部穴16は、ブロアダクト13の前面の上側に、対をなして形成されている。1対の上部穴16は、巻取ユニット4のそれぞれに対応して形成されている。1対の上部穴16は、自動ワインダ1の左右方向において、所定の距離をあけて並べられている。
【0087】
下部取付ブラケット17は、巻取ユニット4のそれぞれに対応した位置に1つずつ設けられている。下部取付ブラケット17は、板状の部材を適宜折り曲げて形成されている。下部取付ブラケット17は、例えば
図5に示すように、マウントプレート17aと、底部17bと、を有する。マウントプレート17aは、ブロアダクト13の前面と平行に配置されている。底部17bは、水平に配置されている。
【0088】
下部取付ブラケット17のマウントプレート17aは、ブロアダクト13の前面に対して、ネジ93によって固定される。下部取付ブラケット17をメインフレーム2に固定する構成は限定されない。底部17bが、図示しないネジ等の固定部材によって、ブロアダクト13の底面に固定されても良い。
【0089】
下部取付ブラケット17のマウントプレート17aの右下側には、糸継フレーム76を取り付けるためのネジ穴17cが形成されている。
【0090】
本実施形態の糸継フレーム76は、上部固定板78を備える。糸継フレーム76の上部は、上部固定板78を介して上部穴16に取り付けられる。上部固定板78は、糸継フレーム76の背面の上部に固定されている。
【0091】
上部固定板78を糸継フレーム76の背面に固定する方法は特に限定されない。例えば、上部固定板78は、ボルト等を用いて糸継フレーム76に固定することができる。上部固定板78に図示しない引掛け部又は嵌合部等を形成し、この引掛け部又は嵌合部等用いて、上部固定板78を糸継フレーム76の背面に固定しても良い。上部固定板78は、糸継フレーム76と一体的に形成されても良い。
【0092】
上部固定板78は、1対の延出部78aを有する。それぞれの延出部78aは、糸継フレーム76の背面から左右方向に延出している。1対の延出部78aは、左右方向において、2つの上部穴16のそれぞれに対応して配置される。
図5に示すように、1対の延出部78aは、ボルト(固定部材)92等を介して上部穴16に固定される。このようにして、糸継フレーム76の背面上部を、ブロアダクト13に固定することができる。
【0093】
図5に示すように、左側の延出部78aには、位置決め穴78bが貫通状に形成されている。糸継フレーム76がブロアダクト13に取り付けられるとき、位置決めピン13bが位置決め穴78bを後方から挿通する。位置決め穴78bは上下方向に少し細長く形成されている。位置決めピン13bの大径部の上端が位置決め穴78bの上縁部に接触することで、糸継フレーム76のブロアダクト13に対する上下方向の位置決めが行われる。また、位置決め穴78bの幅は位置決めピン13bの大径部の直径と実質的に一致しているので、糸継フレーム76のブロアダクト13に対する左右方向の位置決めが行われる。
【0094】
糸継フレーム76の上下方向中間部近傍は、下部固定板79を介して、下部取付ブラケット(ネジ穴17c)に取り付けられる。
【0095】
下部取付ブラケット17にはネジ穴17cが形成されている。下部固定板79は、
図6に示すように、ネジ穴17cの位置に対応して、糸継フレーム76の背面の上下方向中間部よりも若干下側に固定されている。
【0096】
下部固定板79を糸継フレーム76の背面に固定する構成は、上部固定板78と同様に、特に限定されない。
【0097】
下部固定板79は、下部取付ブラケット17の右下部に形成されたネジ穴17cに対応して配置される。下部固定板79は、糸継フレーム76の右側面から更に右側へ延出している。
図5に示すように、下部固定板79は、ボルト(固定部材)92等を介して、ネジ穴17cに固定される。このようにして、糸継フレーム76の背面の上下方向中間部近傍を、ブロアダクト13に固定することができる。
【0098】
上部固定板78の背面及び下部固定板79の背面は、何れも平坦に形成されている。ブロアダクト13において上部固定板78及び下部固定板79が取り付けられる面も、同様に平坦に形成されている。このように平坦に形成された面は、取付けの基準面として機能する。糸継フレーム76は、その背面を基準として、3箇所のボルト92でブロアダクト13に取り付けられる。
【0099】
上述のように、糸継に関連する各種装置は、糸継フレーム76の左側に取り付けられている。この各種装置には、糸監視装置71、スプライサ72、第1糸捕捉装置73、第2糸捕捉装置74、及びテンション付与装置75等が含まれる。従って、糸継フレーム76を取り付ける際に、3箇所のうち右下部のボルト92の締付作業が容易である。
【0100】
給糸フレーム25は、上述のように、糸継フレーム76を取り付けるためのレール部材26を備える。レール部材26は、前後方向に延びるように配置された細長い部材である。レール部材26は支持体28によって支持されている。
【0101】
レール部材26は、
図6に示すように、支持体28の上端に設けられている。巻取ユニット4の前後方向で見た場合、レール部材26は、支持体28の上端部よりも更に上方へ少し突出している。レール部材26は、支持体28と一体的に形成されても良いし、例えばボルト等を介して支持体28に固定されても良い。
【0102】
レール部材26は、巻取ユニット4の前後方向に細長く形成されている。レール部材26は、その長手方向(巻取ユニット4の前後方向)に沿って見た場合、下方の面が開放されている。言い換えれば、レール部材26を長手方向に垂直な面で切った断面は、U字を上下逆にした形状となっている。
【0103】
レール部材26は、左側壁26aと、右側壁26bと、天板26cと、を備える。
【0104】
左側壁26a及び右側壁26bは、巻取ユニット4の左右方向に並べて配置されている。左側壁26aと右側壁26bの間には適宜の空間が形成されている。前後方向に沿って見た場合、左側壁26aと右側壁26bは、互いに平行に配置されている。左側壁26a及び右側壁26bのそれぞれの上端部は、天板26cの左右方向の端部に垂直に接続している。
【0105】
巻取ユニット4の前後方向におけるレール部材26の後端には、1対の取付フランジ26L,26Rが形成されている。
【0106】
1対の取付フランジ26L,26Rは、板状に形成されている。取付フランジ26L,26Rは何れも、ブロアダクト13の前面と平行になるように設けられている。取付フランジ26Lは、左側壁26aの後端の左方に位置し、左側壁26aの後端部に垂直に接続している。取付フランジ26Rは、右側壁26bの後端の右方に位置し、右側壁26bの後端部に垂直に接続している。しかし、取付フランジ26L,26Rの構成は上記に限定されない。
【0107】
それぞれの取付フランジ26L,26Rは、ボルト92等を用いて、支持軸14の前面中央に固定される。これにより、レール部材26の後端が支持軸14に支持される。
【0108】
レール部材26の前部において、右側壁26bには糸継フレーム取付穴26dが形成されている。糸継フレーム76の右側面における前下部は、後述の連結部18を介して、糸継フレーム取付穴26dに固定される。
【0109】
本実施形態の糸継フレーム76の底面には、細長い凹部(第1部分)76dが形成されている。凹部76dは、下側を開放させるように形成されている。凹部76dを長手方向に垂直な面で切った断面は、レール部材26に対応して、U字を上下逆にした形状となっている。凹部76dには、レール部材26を下から上へ相対的に差し込むことが可能である。
【0110】
凹部76dは、レール部材26の左側壁26a、右側壁26b、及び天板26cに対応して、3つの内壁面を有する。以下の説明においては、凹部76dが備える3つの内壁面のうち、天板26cに対応するように水平に配置される内壁面を「内頂面76e」と呼ぶことがある。
【0111】
凹部76dは、前後方向に延びるように形成されている。巻取ユニット4の前後方向に沿って見た場合、レール部材26の凸形状と凹部76dの凹形状は対応している。糸継フレーム76をブロアダクト13の前面に固定した状態では、レール部材26は凹部76dに差し込まれた状態である。ただし、凹部76dの内頂面76eとレール部材26の上面との間には、上下方向の隙間が形成されている。
【0112】
糸継フレーム76をブロアダクト13から取り外した場合、
図8に示すように、糸継フレーム76が自重によって下降し、凹部76dの内頂面76eとレール部材26の上面とが互いに接触する。即ち、糸継フレーム76は、レール部材26により支持される。この状態で、レール部材26に沿って前後方向に糸継フレーム76をスライドして移動させることができる。
【0113】
このように、糸継フレーム76がメインフレーム2及び給糸フレーム25に取り付けられていないとき、レール部材26は、糸継フレーム76を支持する。加えて、レール部材26は、糸継フレーム76のスライド移動を前後方向に案内し、糸継フレーム76の左右方向の移動を規制する。
【0114】
ブロアダクト13から取り外された糸継フレーム76は、給糸フレーム25により支持されながら糸継フレーム76を前方に引き出すことができる。隣接する巻取ユニット4に対して糸継フレーム76を前方に引き出した状態では、例えば糸継フレーム76の右側面を大きく露出させることができ、メンテナンスを容易に行うことができる。
【0115】
本実施形態の巻取ユニット4においては、
図7に示すように、糸継フレーム76がブロアダクト13に固定されている状態で、糸継フレーム76の凹部76dの内頂面76eと、レール部材26の天板26cと、の間に隙間が形成されている。即ち、糸継フレーム76と給糸フレーム25とが、上下方向の間隔をあけて配置される。これにより、巻取ユニット4の稼動時において、給糸交換部3の振動の糸継部8への伝達、及び、逆の伝達を抑制することができる。
【0116】
本実施形態においては、当該隙間は数ミリメートル程度、好ましくは4ミリメートル以下となるように定められている。これにより、ブロアダクト13から糸継フレームを取り外したとき、糸継フレーム76(即ち、糸継メカニズム70)が即座に給糸フレーム25により支持される。従って、糸継フレーム76がレール部材26の上に落下することによる衝撃を抑制することができる。この結果、例えば、糸継フレーム76に配置される各種装置(ユニットコントローラ90を含む)に加わる衝撃を小さくすることができる。
【0117】
図7に示すように、糸継フレーム76の右側面における前下部には、凹状の切欠部19が形成されている。切欠部19は、右方及び下方を開放するように形成されている。切欠部19には、後述する連結部18の一部を収容することができる。切欠部19は、レール部材26に形成された糸継フレーム取付穴26dに対応するように配置される。
【0118】
糸継フレーム76は、連結部18を備える。連結部18は、細長い板状に形成された部材である。連結部18は、厚み方向が糸継フレーム76の左右方向と一致し、長手方向が上下方向と一致するように設けられている。連結部18には、上取付穴18aと、下取付穴18bと、が形成されている。上取付穴18aと下取付穴18bは、上下方向に適宜の間隔をあけて配置されている。
【0119】
上取付穴18aに対応して、切欠部19には図示しないネジ穴が形成されている。連結部18の上部は、上取付穴18aを挿通するボルト92等を介して、切欠部19の内部に固定されている。連結部18の下部は、糸継フレーム76よりも下方へ突出している。
【0120】
糸継フレーム76がブロアダクト13の前面に固定されている状態では、切欠部19に固定された連結部18の下部は、レール部材26の右側壁26bの右側面と対面する。連結部18の下部は、
図7に示すように、下取付穴18bを挿通するボルト92等を介して、糸継フレーム取付穴26dに取り付けられる。下取付穴18bのボルト92を締め付けた状態では、連結部18とレール部材26とが左右方向で接触する。
【0121】
このように、連結部18は、2つのボルト92を用いて、糸継フレーム76の切欠部19及びレール部材26の右側壁26bのそれぞれに固定される。切欠部19において連結部18を取り付けるための面、及び、右側壁26bの右側面は、何れも平坦に形成されている。連結部18が切欠部19及び右側壁26bと対面する面も、同様に平坦に形成されている。このように平坦に形成された面は、取付けの基準面として機能する。連結部18とボルト92により、糸継フレーム76の切欠部19の面と、レール部材26の右側壁26bの前部の右側面と、を左右方向で一致させながら、糸継フレーム76とレール部材26を機械的に連結することができる。即ち、連結部18は、糸継フレーム76とレール部材26とを左右方向で相対的に位置決めする機能を有している。
【0122】
本実施形態の連結部18の上取付穴18aは、上下方向に延びる長穴に形成されている。下取付穴18bは、前後方向に延びる長穴に形成されている。これにより、組付誤差等の何らかの原因によって、側面視において糸継フレーム76の前下部とレール部材26の前端部との間に位置ズレが生じていても、その位置ズレを長穴によって吸収して、糸継フレーム76とレール部材26とを連結部18によって相互に固定することができる。
【0123】
連結部18の2つのボルト92が十分に締め付けられた状態では、連結部18は、糸継フレーム76の前下部とレール部材26の前端部の位置関係を保持する。従って、全体としての剛性を向上させることができるので、稼動時の振動等を抑制できる。
【0124】
以上に説明したように、本実施形態の自動ワインダ1は、給糸ボビン6から糸を解舒してパッケージ9として巻き取る。自動ワインダ1は、給糸フレーム25と、糸巻取フレーム54と、糸継フレーム76と、メインフレーム2と、を備える。給糸フレーム25には、給糸ボビン6から解舒された直後の糸が形成するバルーンB1に接触する可動部材29aが設けられる。糸巻取フレーム54には、パッケージ9を巻き取る糸巻取部5が設けられる。糸継フレーム76は、糸巻取フレーム54と、給糸フレーム25と、の間に設けられている。メインフレーム2は、糸巻取フレーム54と、糸継フレーム76と、給糸フレーム25と、のそれぞれを支持する。糸継フレーム76と、給糸フレーム25とは、上下方向において間隔をあけて配置される。糸継フレーム76が備える連結部18と、給糸フレーム25が備えるレール部材26は、水平な左右方向において接触して配置される。
【0125】
これにより、糸継フレーム76又は給糸フレーム25の取付誤差等による上下方向の位置ズレを、両者の間の間隔によって吸収すると同時に、糸継フレーム76を給糸フレーム25により支持することができる。
【0126】
また、本実施形態の自動ワインダ1において、糸継フレーム76は、その背面を基準として、メインフレーム2に取り付けられる。給糸フレーム25は、その底面を基準として、メインフレーム2に取り付けられる。
【0127】
給糸フレーム25及び糸継フレーム76のメインフレーム2に対する取付基準が互いに異なっている場合、上下方向の位置ズレが生じ易いが、この位置ズレを、両者の間の間隔によって適切に吸収することができる。
【0128】
また、本実施形態の自動ワインダ1において、糸継フレーム76は、水平視において凹状の凹部76dを有する。給糸フレーム25は、水平視において凸状のレール部材26を有する。レール部材26が凹部76dに入り込むように配置される。
【0129】
これにより、糸継フレーム76がメインフレーム2から取り外された場合に、糸継フレーム76の移動を、レール部材26と凹部76dとの引っ掛かりによって規制することができる。従って、糸継フレーム76の安定性を確保できる。
【0130】
また、本実施形態の自動ワインダ1において、給糸フレーム25には凸状のレール部材26が配置される。
【0131】
これにより、糸継フレーム76を引き出すとき、レール部材26によって糸継フレーム76を好適に案内することができる。
【0132】
また、本実施形態の自動ワインダ1において、糸継フレーム76は、ボルト92により、メインフレーム2に対して取外し可能に固定されている。ボルト92を取り外した際に、上下方向において、メインフレーム2から取り外された糸継フレーム76の凹部76dと、レール部材26と、が接触する。
【0133】
これにより、メインフレーム2から取り外された糸継フレーム76を下から支持することができる。
【0134】
また、本実施形態の自動ワインダ1において、ブロアダクト13には、糸継フレーム76の位置を決めるための位置決めピン13bが設けられている。
【0135】
これにより、糸継フレーム76をブロアダクト13の所定の位置に正確に取り付けることができる。
【0136】
また、本実施形態の自動ワインダ1において、糸継フレーム76がメインフレーム2に取り付けられている状態において、上下方向における糸継フレーム76と給糸フレーム25との間の間隔は、4ミリメートル以下である。
【0137】
これにより、給糸フレーム25と糸継フレーム76の間で生じる上下方向における位置ズレを吸収できるとともに、自動ワインダ1を上下方向にコンパクトに構成することができる。糸継フレーム76をメインフレーム2から取り外したときの落下ストロークが小さいので、糸継部8等に加わる衝撃を小さくすることができる。
【0138】
また、本実施形態の自動ワインダ1は、並べられた複数の巻取ユニット4を備える。複数の巻取ユニット4のそれぞれに、マガジン式のボビン供給装置20が設けられた給糸フレーム25が設置されている。隣接する巻取ユニット4の給糸フレーム25に設けられたマガジン式のボビン供給装置20同士は、互いに連結されている。
【0139】
これにより、マガジン式のボビン供給装置20の強度を向上することができる。
【0140】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。変更は単独で行われても良いし、複数の変更が任意に組み合わせて行われても良い。
【0141】
糸継部8には、サクションマウス式の糸継メカニズム70以外に、例えば糸貯留式の糸継メカニズムを取り付けることも可能である。
【0142】
巻取ユニット4は、空気紡績ユニット又はロータ式紡績ユニットとして構成されても良い。
【0143】
レール部材26の左右両側に、1対の水平な支持面が設けられても良い。それぞれの支持面は、レール部材26と平行に細長く形成されている。糸継フレーム76がブロアダクト13に固定されている状態では、支持面と、糸継フレーム76の底面と、の間に、上下方向の隙間が形成される。この隙間の大きさは、上記と同様に、4ミリメートル以下とすることが好ましい。糸継フレーム76がブロアダクト13から取り外された場合、糸継フレーム76の底部は、天板26cの代わりに支持面によって支持される。
【0144】
糸継フレーム76側にレール部材が設けられ、給糸フレーム25側に凹部が設けられても良い。ただし、糸継フレーム76側に凹部76dを設ける方が、糸継フレーム76を単独で床面等に置いたときに安定するために好ましい。
【0145】
給糸フレーム25側に、糸継フレーム76の下端の全体を収容可能な左右幅を有する凹部を設けることもできる。糸継フレーム76がブロアダクト13に固定されている状態では、凹部の内底面と、糸継フレーム76の底面と、の間に、上下方向の隙間が形成される。この場合、糸継フレーム76側にレール部材を設ける必要はない。
【0146】
レール部材及び凹部を省略して、糸継フレーム76が前方へスライド不能な構成とすることもできる。
【0147】
糸継フレーム76が背面以外の面を基準にしてメインフレーム2に取り付けられても良いし、給糸フレーム25が底面以外の面を基準にしてメインフレーム2に取り付けられても良い。
【符号の説明】
【0148】
1 自動ワインダ
2 メインフレーム(機台フレーム)
5 糸巻取部
6 給糸ボビン
9 パッケージ
20 ボビン供給装置(給糸ボビン供給装置)
25 給糸フレーム(下部フレーム)
26 レール部材(第2部分)
29a 可動部材(ガイド部材)
54 糸巻取フレーム(上部フレーム)
64 糸巻取フレーム(上部フレーム)
76 糸継フレーム(中間フレーム)
76d 凹部(第1部分)
92 ボルト(固定部材)
B1 バルーン