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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033764
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】フィルムおよび袋体
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20240306BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20240306BHJP
   C08L 23/06 20060101ALI20240306BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240306BHJP
   C08K 3/26 20060101ALI20240306BHJP
   B65D 30/02 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
B32B27/32
B32B27/18 Z
C08L23/06
C08K3/013
C08K3/26
B65D30/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137568
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】500163366
【氏名又は名称】出光ユニテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】西原 亮
(72)【発明者】
【氏名】吉田 和真
【テーマコード(参考)】
3E064
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
3E064AA05
3E064BA26
3E064BA55
3E064BB01
3E064BB03
3E064BC02
3E064BC18
3E064EA07
3E064EA30
3E064FA03
4F100AA01
4F100AA01A
4F100AA08
4F100AA08B
4F100AK04
4F100AK04A
4F100AK04B
4F100AK63
4F100AK63A
4F100BA02
4F100BA07
4F100GB15
4F100JA06
4F100JA06A
4F100JA13
4F100JA13A
4F100JK02
4F100JK06
4F100JK10
4F100JL12
4F100JL12B
4F100YY00A
4F100YY00B
4J002BB031
4J002DE236
4J002FD016
4J002GF00
4J002GG02
4J002GT00
(57)【要約】
【課題】無機物を含む樹脂組成物を用いたフィルムにおいて、衝撃強度、耐屈曲ピンホール性、およびシール強度を改善することが可能なフィルムおよび袋体を提供すること。
【解決手段】樹脂層を一層以上有するフィルムであって、前記樹脂層の少なくとも一層は、密度が937kg/m未満のポリエチレン樹脂、および無機物を含む第一の樹脂層であり、前記フィルム全体に対して、前記ポリエチレン樹脂を45質量%以上100質量%未満、および前記無機物を0質量%超、55質量%以下含む、フィルム。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂層を一層以上有するフィルムであって、
前記樹脂層の少なくとも一層は、密度が937kg/m未満のポリエチレン樹脂、および無機物を含む第一の樹脂層であり、
前記フィルム全体に対して、前記ポリエチレン樹脂を45質量%以上、100質量%未満、および前記無機物を0質量%超、55質量%以下含む、フィルム。
【請求項2】
前記樹脂層を二層以上有する、請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
いずれかの最外層が、前記ポリエチレン樹脂を主成分とし、かつ、前記無機物を含有しない第二の樹脂層である、請求項2に記載のフィルム。
【請求項4】
前記フィルム全体に対して、前記無機物を13質量%以上含む、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項5】
厚さが10μm以上、150μm以下である、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項6】
前記ポリエチレン樹脂のメルトフローレートが、0.5g/10min以上、2.5g/10min以下である、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項7】
前記ポリエチレン樹脂が、直鎖状低密度ポリエチレンである、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項8】
前記無機物が、炭酸カルシウムである、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項9】
衝撃強度が、20000J/m以上である、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項10】
ゲルボフレックステスターを用いて、5℃、500回の条件下で測定した、前記フィルムにおけるピンホール発生個数が、50個/A4以下である、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項11】
厚さが12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)からなるフィルムと積層し、かつ、130℃以上170℃以下の温度範囲において10℃間隔で融着した際の最大のシール強度が、50N/25mm以上である、請求項1から請求項10のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項12】
シーラント用フィルムである、請求項1から請求項11のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項13】
さらに、ポリオレフィン樹脂、ナイロン樹脂、およびポリエチレンテレフタレート樹脂の少なくともいずれかを含有する第三の樹脂層をラミネートした、請求項1から請求項12のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項14】
レトルト食品用袋体に用いられる、請求項1から請求項13のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項15】
請求項1から請求項14のいずれか一項のフィルムからなる、袋体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムおよび袋体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、袋体等の包装材料には、化石燃料由来の樹脂等が用いられている。近年、環境対応として、プラスチックの使用量の削減が求められていることから、このような化石燃料由来の樹脂の一部を無機物で置き換え、樹脂の使用量を削減することで、焼却時の二酸化炭素の排出を低減することが検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、レトルト食品等を包装する包装材料として使用することが可能な多層フィルムとして、(I)密度が940~970kg/mの高密度ポリエチレン系樹脂と、密度800~900kg/mの軟質ポリマー、およびアンチブロッキング剤からなる層と、(II)密度が920~945kg/mの直鎖状低密度ポリエチレンと、密度が800~900kg/mの軟質ポリマーからなり、造核剤を含有しない層と、(III)密度が920~945kg/mの直鎖状低密度ポリエチレンからなる層の3層を含む多層フィルムが開示されている。また例えば、特許文献2には、密度0.950g/cm以上の線状低密度ポリエチレンを30~70重量%含有し、かつ、熱風100℃処理による収縮率が0.5%以下のポリオレフィン系樹脂フィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-193609号公報
【特許文献2】特開2002-069213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、無機物を含む樹脂組成物を用いたフィルム等から成形体を製造するに際しては、無機物が高濃度に充填されていることで、衝撃強度、耐屈曲ピンホール性、およびシール強度が低下する場合があった。
【0006】
そこで、本発明は、無機物を含む樹脂組成物を用いたフィルムにおいて、衝撃強度、耐屈曲ピンホール性、およびシール強度を改善することが可能なフィルムおよび袋体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]樹脂層を一層以上有するフィルムであって、前記樹脂層の少なくとも一層は、密度が937kg/m未満のポリエチレン樹脂、および無機物を含む第一の樹脂層であり、前記フィルム全体に対して、前記ポリエチレン樹脂45質量%以上、100質量%未満、および前記無機物を0質量%超、55質量%以下含む、フィルム。
[2]前記樹脂層を二層以上有する、[1]に記載のフィルム。
[3]いずれかの最外層が、前記ポリエチレン樹脂を主成分とし、かつ、前記無機物を含有しない第二の樹脂層である、[2]に記載のフィルム。
[4]前記フィルム全体に対して、前記無機物を13質量%以上含む、[1]から[3]のいずれかに記載のフィルム。
[5]厚さが10μm以上、150μm以下である、[1]から[4]のいずれかに記載のフィルム。
[6]前記ポリエチレン樹脂のメルトフローレートが、0.5g/10min以上、2.5g/10min以下である、[1]から[5]のいずれかに記載のフィルム。
[7]前記ポリエチレン樹脂が、直鎖状低密度ポリエチレンである、[1]から[6]のいずれかに記載のフィルム。
[8]前記無機物が、炭酸カルシウムである、[1]から[7]のいずれかに記載のフィルム。
[9]衝撃強度が、20000J/m以上である、[1]から[8]のいずれかに記載のフィルム。
[10]ゲルボフレックステスターを用いて、5℃、500回の条件下で測定した、前記フィルムにおけるピンホール発生個数が、50個/A4以下である、[1]から[9]のいずれかに記載のフィルム。
[11]厚さが12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)からなるフィルムと積層し、かつ、130℃以上170℃以下の温度範囲において10℃間隔で融着した際の最大のシール強度が、50N/25mm以上である、[1]から[10]のいずれかに記載のフィルム。
[12]シーラント用フィルムである、[1]から[11]のいずれかに記載のフィルム。
[13]さらに、ポリオレフィン樹脂、ナイロン樹脂、およびポリエチレンテレフタレート樹脂の少なくともいずれかを含有する第三の樹脂層をラミネートした、[1]から[12]のいずれかに記載の積層フィルム。
[14]レトルト食品用袋体に用いられる、[1]から[13]のいずれかに記載のフィルム。
[15][1]から[14]のいずれかのフィルムからなる、袋体。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、無機物を含む樹脂組成物を用いたフィルムにおいて、衝撃強度、耐屈曲ピンホール性、およびシール強度を改善することが可能なフィルムおよび袋体が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係るフィルムの断面概略図である。
図2】本発明の一実施形態に係る積層フィルムの断面概略図である。
図3】本発明の別の一実施形態に係る積層フィルムの断面概略図である。
図4】本発明の一実施形態に係る袋体の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照等しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省略する。
【0011】
[フィルム]
本実施形態に係るフィルムは、樹脂層を一層以上有するフィルムであって、前記樹脂層の少なくとも一層は、密度が937kg/m未満のポリエチレン樹脂、および無機物を含む第一の樹脂層である。
本実施形態に係るフィルムは、第一の樹脂層のみからなる単層のフィルムであってもよい。
【0012】
図1は、本実施形態に係るフィルム1の断面概略図である。本実施形態に係るフィルム1は、第一の樹脂層のみからなる単層のフィルムである。
フィルム1は、密度が937kg/m未満のポリエチレン樹脂、および無機物を含む。
フィルム1(第一の樹脂層)における密度が937kg/m未満のポリエチレン樹脂、および無機物は、後述のフィルム50の第一の樹脂層10,30における密度が937kg/m未満のポリエチレン樹脂、および無機物と同様である。
【0013】
本実施形態に係るフィルムは、樹脂層を二層以上有する積層フィルムであってもよい。樹脂層を二層以上有する場合、少なくとも一層が第一の樹脂層であればよく、第一の樹脂層以外の層は特に限定されない。
本実施形態に係るフィルムは、樹脂層を二層以上有する積層フィルムであることが好ましい。
【0014】
図2は、本実施形態に係るフィルム40の断面概略図である。フィルム40は、第一の樹脂層10および第二の樹脂層20を有する積層フィルムである。第一の樹脂層10は、密度が937kg/m未満のポリエチレン樹脂、および無機物を含む。また、第二の樹脂層20は、密度が937kg/m未満のポリエチレン樹脂を主成分とし、かつ、無機物を含まない。
フィルム40の第一の樹脂層10および第二の樹脂層20における密度が937kg/m未満のポリエチレン樹脂、並びに第一の樹脂層10における無機物は、後述のフィルム50の第一の樹脂層10,30および第二の樹脂層20における密度が937kg/m未満のポリエチレン樹脂、並びに第一の樹脂層10,30における無機物と同様である。
【0015】
本実施形態に係るフィルムは、第一の樹脂層を一層有していてもよく、二層以上有していてもよい。
第一の樹脂層を二層以上有する場合、同じ組成の層を複数有する構成であってもよく、異なる組成の層を複数有する構成であってもよい。層間の接着強度が下がることによる衝撃強度およびシール強度の低下を防止する観点から、複数の第一の樹脂層は、いずれも同じ組成であることが好ましい。
【0016】
図3は、本実施形態に係るフィルム50の断面概略図である。フィルム50は、第一の樹脂層10,30および第二の樹脂層20を有する積層フィルムである。第一の樹脂層10,30は、密度が937kg/m未満のポリエチレン樹脂、および無機物を含む。本実施形態に係るフィルム50において、第一の樹脂層10および第一の樹脂層30は、同じ組成の層である。第二の樹脂層20は、密度が937kg/m未満のポリエチレン樹脂を主成分とし、かつ、無機物を含まない。
以下、図3を用いて、本実施形態に係るフィルムをより詳細に説明する。
【0017】
・ポリエチレン樹脂
第一の樹脂層10,30が含有するポリエチレン樹脂は、密度が937kg/m未満である。ポリエチレン樹脂の密度が937kg/m未満であれば、フィルム50は、衝撃強度が強く、耐屈曲ピンホール性が良好で、かつ、シール強度も高くなる。
耐衝撃性、耐屈曲ピンホール性の観点から、ポリエチレン樹脂の密度は、935kg/m以下であることが好ましく、930kg/m以下であることがより好ましい。
また、袋体にした際の内内融着(内面同士の融着)を防止する観点から、ポリエチレン樹脂の密度の下限は、903kg/m超であることが好ましく、908kg/m以上であることがより好ましく、913kg/m以上であることがさらに好ましい。
なお、本明細書における密度は、Heガス置換法により測定できる。
【0018】
フィルム全体におけるポリエチレン樹脂の含有量の下限は、45質量%以上である。フィルム全体におけるポリエチレン樹脂の含有量が45質量%以上であることで、成形性に優れたシートとなる。
耐衝撃性、耐屈曲ピンホール性、およびシール強度の観点から、フィルム全体におけるポリエチレン樹脂の含有量の下限は、45質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、55質量%以上であることがさらに好ましい。
また、フィルム全体におけるポリエチレン樹脂の含有量の上限は、100質量%未満である。
プラスチック使用量削減の観点から、フィルム全体におけるポリエチレン樹脂の含有量の上限は、87質量%以下であることが好ましく、82質量%以下であることがより好ましく、77質量%以下であることがさらに好ましく、72質量%以下であることがさらにより好ましく、65質量%以下であることがさらになお好ましい。
【0019】
ポリエチレン樹脂は、メルトフローレート(Melt Flow Rate(以下、「MFR」と略記することもある))が、0.5g/10min以上、2.5g/10min以下であることが好ましい。ポリエチレン樹脂のMFRが0.5g/10min以上、2.5g/10min以下であれば、フィルム1は、衝撃強度が強く、耐屈曲ピンホール性が良好で、かつ、シール強度も高くなる。
押出圧力の観点から、ポリエチレン樹脂のMFRの下限は、0.5g/10min以上であることがより好ましく、0.6g/10min以上であることがさらに好ましく、0.7g/10min以上であることがさらにより好ましい。
また、耐衝撃性、耐屈曲ピンホール性、およびシール強度の観点から、ポリエチレン樹脂のMFRの上限は、2.5g/10min以下であることがより好ましく、2.3g/10min以下であることがさらに好ましく、2.1g/10min以下であることがさらにより好ましい。
なお、本明細書におけるメルトフローレートは、JIS K7210:1999に準拠して、190℃、2160g荷重下で測定した値である。
【0020】
ポリエチレン樹脂としては、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)および低密度ポリエチレン(LDPE)等が挙げられる。
耐衝撃性、耐屈曲ピンホール性、およびシール強度の観点から、フィルム1が含有するポリエチレン樹脂は、直鎖状低密度ポリエチレンであることが好ましい。
また、環境負荷低減の観点から、ポリエチレン樹脂の少なくとも一部が、植物由来の樹脂であってもよい。この場合、当該植物由来の樹脂の密度も937kg/m未満である。
【0021】
・無機物
第一の樹脂層10,30が含有する無機物としては、例えば、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、カーボン、および酸化チタン等が挙げられる。
第一の樹脂層10,30は、このような無機物を1種含有してもよく、2種以上含有してもよい。
【0022】
コストの観点から、第一の樹脂層10,30は、無機物として炭酸カルシウムを含むことが好ましい。
【0023】
フィルム全体における無機物の含有量の下限は、0質量%超である。フィルムが無機物を含有することで、プラスチック使用量を削減でき、環境負荷を低減できる。
プラスチック使用量削減の観点から、フィルム全体における無機物の含有量の下限は、13質量%以上であることが好ましく、18質量%以上であることがより好ましく、23質量%以上であることがさらに好ましく、28質量%以上であることがさらにより好ましく、35質量%以上であることがさらになお好ましい。
また、フィルム全体における無機物の含有量の上限は、55質量%以下である。無機物の含有量が55質量%を超えると、フィルム50のシール強度が弱くなる恐れがある。
シール強度向上の観点から、フィルム全体における無機物の含有量の上限は、55質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましく、45質量%以下であることがさらに好ましい。
【0024】
第一の樹脂層10,30は、上述のポリエチレン樹脂および無機物のみを含有してもよい。あるいは、第一の樹脂層10,30は、本発明の効果を失わない範囲で、上述のポリエチレン樹脂および無機物以外のその他の成分を含有してもよい。
例えば、第一の樹脂層10,30は、植物由来の樹脂を含有してもよい。この場合において、上述の通り、ポリエチレン樹脂の少なくとも一部が、植物由来の樹脂であってもよい。
また例えば、第一の樹脂層10,30は、添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、アンチブロッキング剤、スリップ剤、目ヤニ防止剤、酸化防止剤、中和剤、帯電防止剤、および顔料等が挙げられる。
【0025】
第二の樹脂層20は、上述のポリエチレン樹脂を主成分とし、かつ、上述の無機物を含有しない層である。
フィルム50の一方の最外層として、このような第二の樹脂層20を有していれば、材料強度が落ちてシール強度が低くなることもない。また、このような第二の樹脂層20は、食品等の内容物と接する層に適しているため、フィルム50も食品用途として好適である。
なお、本明細書において、「主成分」とは、第二の樹脂層20を構成する成分のうち、最も含有率が多い成分を意味する。
【0026】
本実施形態に係るフィルムは、単層のフィルムおよび積層フィルムのいずれの場合も、厚さが10μm以上、150μm以下であることが好ましい。このような厚さのフィルム1は、特にレトルト食品用途として好適である。
耐衝撃性およびシール強度の観点から、本実施形態に係るフィルムの厚さの下限は、10μm以上であることがより好ましく、30μm以上であることがさらに好ましく、40μm以上であることがさらにより好ましい。
また、プラスチック使用量削減の観点から、本実施形態に係るフィルムの厚さの上限は、150μm以下であることがより好ましく、100μm以下であることがさらに好ましく、80μm以下であることがさらにより好ましい。
【0027】
耐衝撃性向上の観点から、本実施形態に係るフィルムは、衝撃強度が、20000J/m以上であることが好ましく、25000J/m以上であることがより好ましく、30000J/m以上であることがさらに好ましい。
なお、本明細書における衝撃強度は、後述の実施例に準じて測定できる。
【0028】
本実施形態に係るフィルムは、耐屈曲ピンホール性向上の観点から、ゲルボフレックステスターを用いて、5℃、500回の条件下で測定した、フィルムにおけるピンホール発生個数が、50個/A4以下であることが好ましい。ピンホール発生個数は35個/A4以下であることがより好ましく、25個/A4以下であることがさらに好ましく、15個/A4以下であることがよりさらに好ましく、10個/A4以下であることが特に好ましい。
なお、本明細書におけるピンホール発生個数は、本実施形態に係るフィルムを作製後に測定した場合の値である。
【0029】
本実施形態に係るフィルムは、厚さが12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)からなるフィルムと積層し、かつ、130℃以上170℃以下の温度範囲において5℃間隔で融着した際の最大のシール強度が、50N/25mm以上であることが好ましく、55N/25mm以上であることがより好ましく、60N/25mm以上であることがさらに好ましい。上限値は特に制限はないが、例えば200N/25mm以下である。
【0030】
フィルム1は、MD(Machine Direction)の引張特性が、破断強度23MPa以上であることが好ましく、26MPa以上であることがより好ましく、29MPa以上であることがさらに好ましい。また、フィルム1は、MDの引張特性が、破断強度80MPa以下であることが好ましい。
また、フィルム1は、TD(Transverse Direction)の引張特性が、破断強度19MPa以上であることが好ましく、22MPa以上であることがより好ましく、25MPa以上であることがさらに好ましい。また、フィルム1は、TDの引張特性が、破断強度70MPa以下であることが好ましい。
【0031】
なお、フィルムの引張特性(破断強度)は、JIS Z1702に準じて測定できる。
【0032】
[フィルムの製造方法]
本実施形態に係るフィルムの製造方法は、特に限定されない。
例えば、単層のフィルムであるフィルム1の製造方法としては、例えば、所望により上述のポリエチレン樹脂および無機物を含む原料によりフィルム用樹脂組成物を調製し、この樹脂組成物をインフレーション成形する方法、押出成形する方法、またはキャスト成形する方法等が挙げられる。
また例えば、積層フィルムであるフィルム40,50の製造方法としては、例えば、各々の層の材料を、インフレーション成形する方法または共押出しする方法、予め製造した一の層の一方の面に他の層の材料を押し出して積層する方法、予め各々の層に対応するフィルムを製造し、当該フィルム同士を貼り合わせて積層する方法、および予め製造した一の層の一方の面に他の層の材料を含むコーティング液をコーティングする方法等が挙げられる。
【0033】
本実施形態に係るフィルムは、例えば、シーラント用フィルムとしてもよい。
また、本実施形態に係るフィルムは、包装材料として用いることができる。包装材料の一例として、例えば、袋体等が挙げられる。このような袋体は、レトルト食品の包装材料等として用いることができる。
以下に一例として、本実施形態に係る積層フィルムからなる袋体について説明する。
【0034】
[袋体]
図4には、本実施形態に係るフィルムからなる袋体100の概略図が示されている。
袋体100は、互いに対向する第1面111および第2面112を有する袋体である袋本体110を含む。
袋本体110は、本実施形態に係るフィルム50を用いて形成されている。本実施形態では、2つのフィルム50がサイドシール部121,122、およびボトムシール部130において、ヒートシール等により互いに接合されることによって、第1面111および第2面112を有する袋本体110が形成される。
なお、袋体100は、例えば、本実施形態に係るフィルム50一枚を折り返して形成してもよい。
袋体100の袋本体110は、その内面(内容物側)が、第二の樹脂層20であることが好ましい。
【0035】
袋体100は、例えば開口部140から内容物を充填した後、開口部140の第一面111および第2面112同士をヒートシール等により互いに接合してもよい。
また例えば、袋体100は、開口部140にジッパーテープを形成して、ジッパーテープ付き包装袋としてもよい。
【0036】
本実施形態に係るフィルムは、無機物の添加によりプラスチック使用量を削減しつつ、衝撃強度、耐屈曲ピンホール性、およびシール強度を改善できる。本実施形態に係るフィルムは、特に、レトルト食品用途等の、ボイル殺菌に対応可能なフィルムとして有用である。
【0037】
〔変形例〕
なお、本発明は、上記実施形態に限定されない。
例えば、フィルム50において、第一の樹脂層10および第一の樹脂層30を同じ組成の層としたが、第一の樹脂層10および第一の樹脂層30は、異なる組成の層であってもよい。
また例えば、本発明の一態様に係るフィルムは、第一の樹脂層を3層以上有していてもよい。
【0038】
また例えば、本発明の一態様に係るフィルムは、さらにラミネートされた第三の樹脂層を有していてもよい。第三の樹脂層としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ナイロン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等が用いられる。
ポリオレフィン樹脂としては、ホモポリプロピレン(HPP)、ランダムポリプロピレン(RPP)、およびブロックポリプロピレン(BPP)等のポリプロピレン樹脂、高密度ポリエチレン(HDPE)、および(直鎖状)低密度ポリエチレン((Linear)Low Density Polyethylene:LDPE)等のポリエチレン樹脂、並びに直鎖状エチレン-α-オレフィン共重合体等が用いられる。
ナイロン樹脂としては、ナイロン6、ナイロン8、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6,6、ナイロン6,10、ナイロン6,12等を使用することができる。
また、第三の樹脂層には、着色剤等の各種添加剤が、適宜添加可能である。
第三の樹脂層は、ナイロン樹脂およびポリエチレンテレフタレート樹脂の少なくともいずれかを含有する層であることが好ましい。
レトルト用途に用いる場合、ポリエチレンテレフタレート樹脂を含有する層、ナイロン樹を含有する層、および本発明の一態様に係るフィルムの順でラミネートすることが好ましく、さらに各層間の少なくともいずれかの層間に、アルミニウム箔または蒸着フィルム等のバリアフィルムを含むことがより好ましい。
【実施例0039】
以下、本発明に係る実施例を説明する。本発明はこれらの実施例によって何ら限定されない。
【0040】
〔フィルムの製造〕
[実施例1~4、比較例1~2、参考例1~2]
インフレーション成形により、厚さ45μmの積層フィルムを製造した。
なお、各実施例、比較例、および参考例におけるフィルムの原料は、以下の通りとした。また、各原料の配合量(含有量)は、表1および表2に示す通りとした。また、実施例1~4における中間層および第二の最外層、並びに比較例1~2における中間層および第二の最外層は、予め原料をブレンドして各々樹脂組成物を製造し、当該樹脂組成物をインフレーション成形に用いた。
また、各ポリエチレン樹脂の密度およびMFRは、上述の方法で測定した。
【0041】
・ポリエチレン樹脂A:密度=915kg/m、MFR=1.0g/10min
・ポリエチレン樹脂B:密度=937kg/m、MFR=1.8g/10min
・ポリエチレン樹脂C:密度=913kg/m、MFR=3.8g/10min
・ポリエチレン樹脂D:密度=926kg/m、MFR=0.8g/10min
・炭酸カルシウム:製品名 PEX10560AL、東京インキ株式会社製
【0042】
〔フィルムの評価〕
<破断強度(MPa)>
各フィルムから、JIS規定のダンベル形のテスト用サンプルを作製し、破断強度(MPa)を測定した。フィルムの破断強度(MPa)は、JIS Z 1702:1994に基づき、株式会社島津製作所製の引張試験機(商品名:AGS-X)を用いて、500mm/分でテスト用サンプルの引張試験を行って測定した。結果を表1および表2に示す。
【0043】
<衝撃強度(J/m)>
各フィルムを、各々10cm×10cmの大きさに切断して、正方形のテスト用サンプルを作製した。東洋精機株式会社製のフィルム・インパクト・テスターを使用し、固定された円状のテスト用サンプルに半円球状の振り子(直径1.0インチ)を打ち付けて、テスト用サンプルの打ち抜きに要した衝撃強度(J/m)を測定した(30kg・cmスケール)。結果を表1および表2に示す。
【0044】
<耐屈曲ピンホール性(個/A4)>
各フィルムを、21.0cm(14.3インチ)×29.7cm(11.7インチ)の大きさに切断して、長方形のテストフィルムを作製した。このテストフィルムを巻架して長さ21.0cm(14.3インチ)の円筒状にした。そして、その円筒状フィルムの一端を、ゲルボフレックステスター(理学工業社製)の円盤状固定ヘッドの外周に固定し、円筒状フィルムの他端を、固定ヘッドと17.8cm(7.0インチ)隔てて対向したテスターの円盤状可動ヘッドの外周に固定した。そして、可動ヘッドを固定ヘッドの方向に、平行に対向した両ヘッドの軸に沿って8.8cm(3.5インチ)接近させる間に440゜回転させ、続いて回転させることなく6.4cm(2.5インチ)直進させた後、それらの動作を逆向きに実行させて可動ヘッドを最初の位置に戻すという1サイクルの屈曲テストを、1分間あたり40サイクルの速度で、連続して繰り返した。なお、屈曲テストは、テストフィルム作製後、総サイクル数500回、5℃で行った。その後、テストしたフィルムの固定ヘッドおよび可動ヘッドの外周に固定した部分を除く17.8cm(7.0インチ)×29.7cm(11.7インチ)内の部分に生じたピンホール数(A4サイズ:528.7cm(81.9平方インチ)当たりのピンホール数)を計測した。結果を表1および表2に示す。
【0045】
<シール強度(N/25mm)>
各フィルムを、50mm×300mmの大きさに切断して、フィルムの内面同士を合わせた長方形のテストフィルムを作製した。各テストフィルムを圧力0.2MPa、シール時間1.0秒にてシールし、ヒートシール後24時間静置した後、株式会社島津製作所製の引張試験機(商品名:AGS-X)を用い、JIS K6854-3:1999のT形剥離の試験方法に準拠し、シール強度を測定した。シール強度は、各例の試験片について、MDで200mm/分の引張速度でT形剥離させることで測定した。結果を表1および表2に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
表1および表2から明らかなように、実施例1~4のフィルムは、無機物を配合しない参考例1および参考例2と比べ、衝撃強度、耐屈曲ピンホール性、およびシール強度が同等またはそれ以上であった。また、実施例1~4のフィルムは、ポリエチレン樹脂の密度が937kg/m以上である比較例1~2のフィルムと比べ、衝撃強度、耐屈曲ピンホール性、およびシール強度を改善できた。
【符号の説明】
【0049】
1,40,50…フィルム、10,30…第一の樹脂層、20…第二の樹脂層、100…袋体、110…袋本体、111…第1面、112…第2面、121,122…サイドシール部、130…ボトムシール部、140…開口部。
図1
図2
図3
図4