IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 内山工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-検出装置 図1
  • 特開-検出装置 図2
  • 特開-検出装置 図3
  • 特開-検出装置 図4
  • 特開-検出装置 図5
  • 特開-検出装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003378
(43)【公開日】2024-01-15
(54)【発明の名称】検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 7/24 20060101AFI20240105BHJP
   G01B 7/30 20060101ALI20240105BHJP
   G01D 5/245 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
G01B7/24
G01B7/30 H
G01D5/245 110M
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102480
(22)【出願日】2022-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】000225359
【氏名又は名称】内山工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002686
【氏名又は名称】協明国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】勢野 洋嗣
(72)【発明者】
【氏名】大森 健太郎
【テーマコード(参考)】
2F063
2F077
【Fターム(参考)】
2F063AA25
2F063AA35
2F063BA03
2F063DA01
2F063DA05
2F063GA52
2F077NN04
2F077NN17
2F077NN24
(57)【要約】
【課題】簡易な構成でありながら、回転体の変形を検出可能な検出装置を提供する。
【解決手段】軸回転する回転体(10)に装着され周方向にN極とS極とが交互に配置された環状体からなる磁性体1と、前記磁性体の磁束密度を検出するセンサ2と、前記センサによる検出結果に基づき前記回転体の変形を検出する処理部4とを備えた検出装置100であって、前記センサは、前記磁性体の着磁面から前記着磁面の周方向に対して垂直方向に発する第1磁束密度(By)を検出し、前記処理部は、前記第1磁束密度の変化に基づき、前記回転体の変形を検出することを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸回転する回転体に装着され周方向にN極とS極とが交互に複数着磁された環状体からなる磁性体と、前記磁性体の磁束密度を検出するセンサと、前記センサによる検出結果に基づき前記回転体の変形を検出する処理部とを備えた検出装置であって、
前記センサは、前記磁性体の着磁面から前記着磁面の周方向に対して垂直方向に発する第1磁束密度を検出し、
前記処理部は、前記第1磁束密度の変化に基づき、前記回転体の変形を検出することを特徴とする検出装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記センサは、前記着磁面から周方向に発する第2磁束密度または、前記着磁面から前記着磁面に対して垂直方向に発する第3磁束密度を検出し、
前記処理部は、前記第2磁束密度または前記第3磁束密度に基づき、前記回転体の回転速度及び回転角度を検出することを特徴とする検出装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記センサは、前記着磁面に対向し複数個が間隔を空けて設けられていることを特徴とする検出装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2において、
前記回転体は、車両の軸受装置の回転側部材であることを特徴とする検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸回転する回転体に装着される磁性体と、磁束密度を検出するセンサとによって、回転体の変形を検出する検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車輪の軸受装置における回転側部材には、アンチロックブレーキシステム(ABS)等を制御するため、磁気エンコーダを構成する磁性体が装着されており、回転速度や回転角度を検出することがなされている。
【0003】
下記特許文献1には、磁性体の被検出面の特性変化に対応して出力信号を変化させるセンサを備え、外輪やハブとの間に加わる荷重を変位センサ等の荷重測定専用の部品を使用せずに測定できるものが開示されている。下記特許文献2には、磁性体の外周面のうち、円周方向の位相が互いに180度異なる部位に第1センサ、第2センサを配し、位相差に基づいてラジアル荷重を測定するものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-317420号公報
【特許文献2】特開2007-225106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで軸受装置にかかる荷重は、回転体の自重による荷重、他部品から負荷される荷重、回転体の回転によって発生する荷重等があり、過剰な荷重が負荷されると回転体に変形が発生し、気づかず使用を継続していると、回転軸の破損に繋がる。そこで簡易な構成でありながら、早期に回転体の変形を検出できるものが求められている。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、簡易な構成でありながら、回転体の変形を検出可能な検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る検出装置は、軸回転する回転体に装着され周方向にN極とS極とが交互に複数着磁された環状体からなる磁性体と、前記磁性体の磁束密度を検出するセンサと、前記センサによる検出結果に基づき前記回転体の変形を検出する処理部とを備えた検出装置であって、前記センサは、前記磁性体の着磁面から前記着磁面の周方向に対して垂直方向に発する第1磁束密度(By)を検出し、前記処理部は、前記第1磁束密度の変化に基づき、前記回転体の変形を検出することを特徴とする。
上記構成において、前記センサは、前記着磁面から周方向に発する第2磁束密度(Bx)または、前記着磁面から前記着磁面に対して垂直方向に発する第3磁束密度(Bz)を検出し、前記処理部は、前記第2磁束密度または前記第3磁束密度に基づき、前記回転体の回転速度及び回転角度を検出するようにしてもよい。
また上記構成において、前記センサは、前記着磁面に対向し複数個が間隔を空けて設けられてもよい。
さらに上記構成において、回転体は、車両の軸受装置の回転側部材であってもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る検出装置は、上述の構成としたことで、簡易な構成でありながら、回転体の変形を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る検出装置を構成する磁性体を説明するための図であり、回転体への装着状態を模式的に示した概略的斜視図であり、アキシャルタイプの磁性体の例を示している。
図2】同検出装置の構成の一例を示すブロック図である。
図3】(a)は、図1に示す磁性体の測定径<1>~<3>(図3(b)参照)における第1磁束密度の波形をグラフ化して示したものであり、(b)は同磁性体の測定径<1>~<3>を説明するための図である。
図4】(a)及び(b)は同磁性体が発する第1磁束密度(By)の特性を説明するためのグラフである。
図5】同実施形態の変形例として、ラジアルタイプの磁性体の例を示している。
図6】(a)~(d)は、同検出装置を構成する磁性体とセンサの配置例を説明するために模式的に示した概略的平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。なお、一部の図では、他図に付している詳細な符号の一部を省略している。
本実施形態に係る検出装置100は、軸回転する回転体10に装着され周方向にN極とS極とが交互に複数着磁された環状体からなる磁性体1と、磁性体1の磁束密度を検出するセンサ2と、センサ2による検出結果に基づき回転体10の変形を検出する処理部4とを備えている。センサ2は、磁性体1の着磁面1aから着磁面1aの周方向に対して垂直方向に発する第1磁束密度(By)を検知し、処理部4は、第1磁束密度の変化に基づき、回転体10の変形を検出する。
【0011】
<第1実施形態>
まずは図1図4を参照しながら、第1実施形態に係る検出装置100について説明する。図1及び図2に示すように検出装置100は、軸回転する回転体に装着される磁性体1と、磁束密度を検出するセンサ2と、センサ2による検出結果に基づき前記回転体の変形を検出する処理部4を有する演算装置30とを備える。以下では、検出装置100が適用される例として、車両の軸受装置に適用された例を説明する。軸受装置は、車輪(不図示)を軸回りに回転(軸回転)可能に支持するように設けられ、外側の固定側部材となる外輪(不図示)と、内側の回転側部材となる内輪10とを備える。よって、本実施形態におおいて、内輪10が回転体であり、内輪10に負荷される荷重等により、内輪10の変形を早期に検出するために検出装置100が設けられている。
【0012】
磁性体1は、N極及びS極が周方向に交互に複数着磁され中央に貫通孔を備えた環状体で、円板の径方向または面方向に磁化されている。磁性体1の構成は特に限定されないが、フェライト、ネオジム等の磁性粉がゴム材により結合されたゴム磁石、焼結磁石、プラスチック磁石等が用いられる。磁性体1は、芯金部材11を介して内輪10に取り付けられる。芯金部材11は、SPCC等の鋼板をプレス加工して片側の断面が略L字形状に形成される。芯金部材11は、内輪10の端部に嵌合される円筒部12と、円筒部12における軸方向Aの一方端部から径方向の外側に延出する円板部13とを有している。円板部13の軸方向Aの外側面13aには、磁性体1が加硫接着、もしくは後接着されている。磁性体1の形状や芯金部材11への固着態様は図例に限定されないが、本実施形態では、円板部13の外側面13aと、円板部41の径方向Rの外側端部13bを覆うように配されている。これによれば、芯金部材11に磁性体1を強固に固着でき、長期の使用に耐えることができる。N極及びS極の極幅は特に限定されず、図例のように等間隔としてもよいし、極と極の境界が斜め湾曲したスパイラル状としてもよい。
【0013】
磁性体1の磁束密度を検出するセンサ2は、磁気式センサを用いた例を説明する。センサ2は、磁性体1の着磁面1aと対峙するように近接して配置され、センサ2は、不図示の固定部材に固定されている。センサ2が磁性体1から検出する磁束密度は、内輪10の回転に伴って変化し、センサ2は、演算装置30と電気的に接続されている。センサ2は、回転体である内輪10の変形を検出するため、図1に示すように磁性体1の着磁面1aから着磁面1aの周方向に対して垂直方向に発する第1磁束密度(By)を検出する。またセンサ2は、内輪10の回転速度及び回転角度(回転位置)を検出するため、着磁面1aから周方向に発する第2磁束密度(Bx)と、着磁面1aから着磁面1aに対して垂直方向に発する第3磁束密度(Bz)とを検知する。センサ2に用いられる検知素子としては、ホール素子、MR素子(磁気抵抗効果素子)等が用いられ、従来の着磁面1aから周方向に発する第2磁束密度(Bx)と、着磁面1aから着磁面1aに対して垂直方向に発する第3磁束密度(Bz)に加え、着磁面1aから着磁面1aの周方向に対して垂直方向に発する第1磁束密度(By)も検知できる高感度のものが好適である。例えば、ホール素子の場合は、着磁面1aのX軸成分の強さBxを検知するためのホール素子または、Z軸成分の強さBz を検知するためのホール素子とに加え、荷重、変位量を検出するため、着磁面1aのY軸成分の強さByを検知するためのホール素子を要する。
【0014】
図2は、本実施形態に係る検出装置100の一例を示すブロック図である。
検出装置100は、上述したとおり、内輪10に取り付けられた磁性体1と、磁性体1から発生する磁束密度を検出可能なセンサ2と、演算装置30とを備える。演算装置30は、CPUで構成され各種制御を実行する制御部3と、センサ2が検出する各種磁束密度(Bx~Bz)に基づき各種演算処理を行う処理部4と、処理部4での演算処理を実行するために必要な各種プログラムやデータが記憶される記憶部5と、センサ2からの信号を受信する受信部6と、演算装置30を操作する操作部7と、測定・算出結果を表示する表示部8と、内輪10の変形等、異常を検出した際に警告音やランプを点灯・点滅させる等を報知する報知部9等を備える。記憶部5は、ROM、RAM等のメモリやHDDで構成され、各種演算結果を適宜、記憶される。処理部4は、荷重・変形量算出部40と、速度・角度算出部41とを備える。荷重・変形量算出部40は、測定径が変わることによる第1磁束密度(By)の変化率を使用して算出する。具体的には、図4(a)及び図4(b)に示した第1磁束密度(By)と測定径(図3(b)参照)との後記する特性に基づき、センサ2によって検出された第1磁束密度(By)の値の変化率を算出し、そこから変形量を算出する。そしてその変形量から荷重を算出する。速度・角度算出部41は、第2磁束密度(Bx)及び第3磁束密度(Bz)の2つの磁気パターンをデジタル信号に変換し、演算処理を行って絶対位置検出から回転位置(回転角度)情報を算出する。また速度・角度算出部41は、第2磁束密度(Bx)及び第3磁束密度(Bz)の2相のパルス信号から距離を算出し、内輪10の回転速度の算出も実行する。
【0015】
次に図3及び図4を参照しながら、回転体である内輪10の変形検出に用いられる着磁面1aから着磁面1aの周方向に対して垂直方向に発する第1磁束密度(By)の特性についての分析結果について説明する。ここでは、フェライトのゴム磁石を用いて測定を行った。
【0016】
図3(a)のグラフは、図3(b)に示す磁性体1の測定径<1>~<3>の位置における第1磁束密度(By)を検知した結果を示すものであり、ここでは横軸を回転角度(°)、縦軸を磁束密度(mT)としている。図3(b)に示すとおり、測定径<1>が3つの測定径の中では一番径が小さく、測定径<3>が3つの測定径の中では一番径が大きい位置である。図3(a)によれば、いずれの測定径<1>~<3>においても、磁束密度の振幅は大小あるが、sin波が確認され、1回転につき、sin信号が1周期ずつ生成されていることが確認できた。
【0017】
図4(a)のグラフは、図3(a)のsin波を示す同じ磁性体1に対し、同じ測定径<1>~<3>における第1磁束密度(By)を検知した結果を示す。ここでは横軸を測定径(mm)、縦軸を磁束密度(mT)とし、第1磁束密度(By)だけでなく、測定径<1>~<3>の位置で第2磁束密度(Bx)及び第3磁束密度(Bz)についても測定を行った。この測定結果から第2磁束密度(Bx)及び第3磁束密度(Bz)は、いずれの位置でもほぼ同じ測定値を示す一方、第1磁束密度(By)は、測定径<1>において急激に低下する大きな変化率を示すことがわかった。
【0018】
図4(b)は、それぞれの磁束密度の変化率をより明らかに示したグラフである。ここでは、横軸は測定径(mm)、縦軸は図4(a)の測定結果を比にしたものである。縦軸は、一番変化率が大きかった測定径<1>を基準(「1」)とし、その基準からどの程度変化しているかを示している。比にすると第2磁束密度(Bx)及び第3磁束密度(Bz)にほとんど変化がないことが明らかである。一方、第1磁束密度(By)は、径方向の変化に対して、磁束密度の変化率が非常に大きいといえる。
以上より、第1磁束密度(By)、すなわち着磁面1aのY軸成分の強さByをセンサ2で検知することで、回転体の径方向の変化が加わると、第1磁束密度(By)に大きな変化が生じるので、この特性から荷重、変形量を検出することができる。
【0019】
本実施形態に係る検出装置100によれば、第1磁束密度(By)の特性を活かし、センサ2によって第1磁束密度(By)を検知することで、内輪10の変形(傾き)を検出できる。よって、検出装置100による検出結果から、内輪10に過剰な(ラジアル)荷重が加わったことが推測できる。また第1磁束密度(By)を検知結果に基づく荷重・変形量算出部40の演算結果に閾値を設定し、閾値を超えると荷重・変形量の異常とみなして、検出装置100の報知部9で警告音等を報知させる態様とすれば、回転軸の破損等を未然に防止できる。また上記構成によれば、ひとつの磁性体1を用いて、内輪10の変形に加え、内輪10の回転速度及び回転角度を検出できる。
【0020】
図5は、ラジアルタイプの磁性体1Aの例を示す図である。上記実施形態と共通の箇所には共通の符号を付し、共通する事項の説明は省略する。上記実施形態では、アキシャルタイプの磁性体1について説明したが、これに限定されず、図5に示すような内輪10の一側面10bに設けられる磁性体1Aとして適用可能である。この場合も、アキシャルタイプのものと同様に着磁面1aから周方向に発する第2磁束密度(Bx)と、着磁面1aから着磁面1aに対して垂直方向に発する第3磁束密度(Bz)だけでなく、着磁面1aから着磁面1aの周方向に対して垂直方向に発する第1磁束密度(By)を検知し、処理部4は、第1磁束密度の変化に基づき、回転体である内輪10の軸方向の変形を検出する。
【0021】
次に図6(a)~図6(d)を参照しながら、検出装置100を構成する磁性体1とセンサ2の配置例について説明する。磁性体1とセンサ2とは、図1に示すようにセンサ2が磁性体1の着磁面1aに対して対向して配備され、図6(a)に示すように、環状のひとつの磁性体1に対しひとつのセンサ2で上記検出を行うようにしてもよいし、図6(b)に示すように例えば図6(a)に設けられたセンサ2の位置を基準に90°異なる位置にセンサ2を設けてもよい。また図6(c)に示すように図6(b)の例に加えて、さらに180°異なる位置にセンサ2を設けてもよい。また図6(d)に示すように磁性体1の周方向における同じ位置に磁性体1の縁部に幅方向に対向して2つのセンサ2,2を設置してもよい。センサ2の設置は、図例に限定されず、等間隔に複数設置してもよい。このように着磁面1aに対向してセンサ2が複数個間隔を空けて設けられているようにすれば、複数の箇所で回転体(内輪10等)の変形の検出を行うことができるので、検出精度の向上を図ることができる。
【0022】
上述したとおり、実施形態に係る検出装置100の構成・態様は上記実施形態に限定されない。例えば磁性体1の形状は、図例のような薄状の環状体に限定されず、円筒体でもよい。また回転体の変形検出を行う対象は軸受装置の内輪10に限定されず、例えば、シートの巻き取り設備等、軸回転する機械装置の回転部材等に適用できる。
【符号の説明】
【0023】
100 検出装置
10 内輪(回転体)
1,1A 磁性体
1a 着磁面
2 センサ
By 第1磁束密度
Bx 第2磁束密度
bz 第3磁束密度
図1
図2
図3
図4
図5
図6