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特開2024-3379慣性センサーモジュール及び慣性計測システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003379
(43)【公開日】2024-01-15
(54)【発明の名称】慣性センサーモジュール及び慣性計測システム
(51)【国際特許分類】
   G01C 19/5776 20120101AFI20240105BHJP
   G01P 15/18 20130101ALI20240105BHJP
【FI】
G01C19/5776
G01P15/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102481
(22)【出願日】2022-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100148323
【弁理士】
【氏名又は名称】川▲崎▼ 通
(74)【代理人】
【識別番号】100168860
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 充史
(72)【発明者】
【氏名】満永 新一
【テーマコード(参考)】
2F105
【Fターム(参考)】
2F105AA02
2F105AA06
2F105AA10
2F105BB17
2F105BB20
2F105CD11
(57)【要約】
【課題】外部から出力データのフォーマットを変更することが可能な慣性センサーモジュールを提供すること。
【解決手段】第1慣性センサーと、第2慣性センサーと、前記第1慣性センサーから出力される第1検出信号と前記第2慣性センサーから出力される第2検出信号とが入力され、外部から入力される出力指示情報に基づいて前記第1検出信号及び前記第2検出信号に基づく計測データを出力する処理装置と、を備え、前記処理装置は、外部から入力される出力フォーマット選択情報に応じたフォーマットの前記計測データを出力する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1慣性センサーと、
第2慣性センサーと、
前記第1慣性センサーから出力される第1検出信号と前記第2慣性センサーから出力される第2検出信号とが入力され、外部から入力される出力指示情報に基づいて前記第1検出信号及び前記第2検出信号に基づく計測データを出力する処理装置と、
を備え、
前記処理装置は、外部から入力される出力フォーマット選択情報に応じたフォーマットの前記計測データを出力する、慣性センサーモジュール。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1慣性センサーは、第1軸、第2軸及び第3軸を検出軸とし、
前記第2慣性センサーは、前記第1軸を検出軸とし、
前記処理装置は、前記出力フォーマット選択情報が第1フォーマットを選択する情報であるとき、前記出力指示情報に基づいて前記第1フォーマットの前記計測データを出力し、
前記第1フォーマットの前記計測データは、前記第1検出信号に含まれる前記第1軸の検出信号に基づく第1軸第1計測データ、前記第1検出信号に含まれる前記第2軸の検出信号に基づく第2軸計測データ、前記第1検出信号に含まれる前記第3軸の検出信号に基づく第3軸計測データ、及び、前記第2検出信号に含まれる前記第1軸の検出信号に基づく第1軸第2計測データを含む、慣性センサーモジュール。
【請求項3】
請求項1において、
前記第1慣性センサーは、第1軸、第2軸及び第3軸を検出軸とし、
前記第2慣性センサーは、前記第1軸を検出軸とし、
前記処理装置は、前記出力フォーマット選択情報が第2フォーマットを選択する情報であるとき、前記出力指示情報に基づいて前記第2フォーマットの前記計測データを出力し、前記出力フォーマット選択情報が第3フォーマットを選択する情報であるとき、前記出力指示情報に基づいて前記第3フォーマットの前記計測データを出力し、
前記第2フォーマットの前記計測データは、前記第2検出信号に含まれる前記第1軸の検出信号に基づく第1軸第2計測データ、前記第1検出信号に含まれる前記第2軸の検出信号に基づく第2軸計測データ及び前記第1検出信号に含まれる前記第3軸の検出信号に基づく第3軸計測データを含み、
前記第3フォーマットの前記計測データは、前記第1検出信号に含まれる前記第1軸の検出信号に基づく第1軸第1計測データ、前記第2軸計測データ及び前記第3軸計測データを含む、慣性センサーモジュール。
【請求項4】
請求項2において、
前記処理装置は、前記出力フォーマット選択情報が第2フォーマットを選択する情報であるとき、前記出力指示情報に基づいて前記第2フォーマットの前記計測データを出力し、前記出力フォーマット選択情報が第3フォーマットを選択する情報であるとき、前記出力指示情報に基づいて前記第3フォーマットの前記計測データを出力し、
前記第2フォーマットの前記計測データは、前記第1軸第2計測データ、前記第2軸計測データ及び前記第3軸計測データを含み、
前記第3フォーマットの前記計測データは、前記第1軸第1計測データ、前記第2軸計測データ及び前記第3軸計測データを含み、
前記第1フォーマットの前記計測データに含まれる前記第1軸第2計測データ、前記第2フォーマットの前記計測データに含まれる前記第1軸第2計測データ及び前記第3フォーマットの前記計測データに含まれる前記第1軸第1計測データの配置が同じであり、
前記第1フォーマットの前記計測データに含まれる前記第2軸計測データ、前記第2フォーマットの前記計測データに含まれる前記第2軸計測データ及び前記第3フォーマットの前記計測データに含まれる前記第2軸計測データの配置が同じであり、
前記第1フォーマットの前記計測データに含まれる前記第3軸計測データ、前記第2フォーマットの前記計測データに含まれる前記第3軸計測データ及び前記第3フォーマットの前記計測データに含まれる前記第3軸計測データの配置が同じである、慣性センサーモジュール。
【請求項5】
請求項1において、
前記処理装置は、少なくとも2つの時刻の前記第1検出信号を用いて所定の時刻の第1補完データを算出し、少なくとも2つの時刻の前記第2検出信号を用いて前記所定の時刻の第2補完データを算出し、前記出力指示情報に基づいて前記第1補完データ及び前記第2補完データに基づく前記計測データを出力する、慣性センサーモジュール。
【請求項6】
請求項1において、
前記第1慣性センサーは、第1軸、第2軸及び第3軸を検出軸とし、
前記第2慣性センサーは、前記第1軸を検出軸とし、
前記処理装置は、
前記第1検出信号に含まれる前記第1軸の検出信号を補正した第1軸第1計測データ、前記第1検出信号に含まれる前記第2軸の検出信号を補正した第2軸計測データ、前記第1検出信号に含まれる前記第3軸の検出信号を補正した第3軸計測データ、及び、前記第2検出信号に含まれる前記第1軸の検出信号を補正した第1軸第2計測データを算出し、
前記出力フォーマット選択情報が第4フォーマットを選択する情報であるとき、前記出力指示情報に基づいて前記第4フォーマットの前記計測データを出力し、
前記第4フォーマットの前記計測データは、前記第1軸第1計測データ、前記第2軸計測データ、前記第3軸計測データ、前記第1軸第2計測データ、前記第1検出信号に含まれる前記第1軸の検出信号である第1軸第1検出データ、前記第1検出信号に含まれる前記第2軸の検出信号である第2軸検出データ、前記第1検出信号に含まれる前記第3軸の検出信号である第3軸検出データ、及び、前記第2検出信号に含まれる前記第1軸の検出信号である第1軸第2検出データを含む、慣性センサーモジュール。
【請求項7】
請求項1において、
前記第1慣性センサーは、第1軸、第2軸及び第3軸を検出軸とし、
前記第2慣性センサーは、前記第1軸を検出軸とし、
前記処理装置は、
前記出力フォーマット選択情報が第5フォーマットを選択する情報であるとき、前記第2検出信号に含まれる前記第1軸の検出信号、前記第1検出信号に含まれる前記第2軸の検出信号及び前記第1検出信号に含まれる前記第3軸の検出信号に基づいて、姿勢、速度及び角度の少なくとも1つを含む第1慣性データを算出し、前記出力指示情報に基づいて前記第1慣性データを含む前記第5フォーマットの前記計測データを出力し、
前記出力フォーマット選択情報が第6フォーマットを選択する情報であるとき、前記第1検出信号に含まれる前記第1軸の検出信号、前記第1検出信号に含まれる前記第2軸の検出信号及び前記第1検出信号に含まれる前記第3軸の検出信号に基づいて、姿勢、速度及び角度の少なくとも1つを含む第2慣性データを算出し、前記出力指示情報に基づいて前記第2慣性データを含む前記第6フォーマットの前記計測データを出力する、慣性センサーモジュール。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の慣性センサーモジュールと、
前記計測データを監視し、監視結果に応じた前記出力フォーマット選択情報を前記処理装置に送信する監視装置と、
を備える、慣性計測システム。
【請求項9】
請求項2に記載の慣性センサーモジュールと、
前記計測データを監視し、監視結果に応じた前記出力フォーマット選択情報を前記処理装置に送信する監視装置と、
を備え、
前記監視装置は、
前記処理装置から出力される前記第1フォーマットの前記計測データに含まれる前記第1軸第1計測データと前記第1軸第2計測データとを比較し、比較結果に基づいて前記第2慣性センサーが故障しているか否かを判定し、判定結果に応じた前記出力フォーマット選択情報を前記処理装置に出力し、
前記監視装置が前記第2慣性センサーが故障していないと判定した場合に前記処理装置に出力する前記出力フォーマット選択情報と、前記監視装置が前記第2慣性センサーが故障していると判定した場合に前記処理装置に出力する前記出力フォーマット選択情報とが異なる、慣性計測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、慣性センサーモジュール及び慣性計測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、慣性センサーと、当該慣性センサーからの信号に基づく所定の信号を出力するICチップと、を有する慣性センサーモジュールが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-31358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、慣性センサーモジュールの用途が多様化し、慣性センサーモジュールと接続されるホストデバイスは、慣性センサーモジュールの内部で生成された各種のデータのうち、用途に応じて必要な一連のデータを選択して取得可能であることが望まれる。しかしながら、特許文献1に記載の慣性センサーモジュールは所定の信号を出力するものであり、出力信号のフォーマットを変更することができない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る慣性センサーモジュールの一態様は、
第1慣性センサーと、
第2慣性センサーと、
前記第1慣性センサーから出力される第1検出信号と前記第2慣性センサーから出力される第2検出信号とが入力され、外部から入力される出力指示情報に基づいて前記第1検出信号及び前記第2検出信号に基づく計測データを出力する処理装置と、
を備え、
前記処理装置は、外部から入力される出力フォーマット選択情報に応じたフォーマットの前記計測データを出力する。
【0006】
本発明に係る慣性計測システムの一態様は、
前記慣性センサーモジュールの一態様と、
前記計測データを監視し、監視結果に応じた前記出力フォーマット選択情報を前記処理装置に送信する監視装置と、
を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態の慣性センサーモジュールの被装着面への固定態様を示す斜視図。
図2】慣性センサーモジュールを被装着面側から観察した斜視図。
図3】慣性センサーモジュールの分解斜視図。
図4】回路基板の斜視図。
図5】第1実施形態の慣性計測システムの構成を示す図。
図6】処理装置の構成例を示す図。
図7】第1実施形態における計測データのフォーマットの一例を示す図。
図8】第2実施形態における計測データのフォーマットの一例を示す図。
図9】第3実施形態における計測データのフォーマットの一例を示す図。
図10】第4実施形態の慣性計測システムの構成を示す図。
図11】慣性センサーモジュールの変形例を示す図。
図12】慣性センサーモジュールの変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0009】
1.第1実施形態
1-1.慣性センサーモジュールの構造
図1は、第1実施形態の慣性計測システムに用いられる慣性センサーモジュールの被装着面への固定態様を示す斜視図である。図2は、慣性センサーモジュールを被装着面側から観察した斜視図である。まず、第1実施形態における慣性センサーモジュール2の概要について説明する。慣性センサーモジュール2は、例えば、自動車や、ロボットなどの被装着体の挙動を検出する。
【0010】
図1に示すように、慣性センサーモジュール2は、平面形状が略正方形の直方体をなしており、正方形の一辺の長さが数センチ程度とコンパクトに構成されている。慣性センサーモジュール2の対角線方向には2ヶ所の切欠き穴52が設けられている。慣性センサーモジュール2は、切欠き穴52に挿通される2本のネジ80により、自動車などの被装着体の被装着面81に固定される。なお、被装着体は自動車などの運動体に限らず、例えば、橋梁や、高架軌道などの建造物であっても良い。建造物に取付けられる場合は、例えば、建造物の健全度をチェックする構造ヘルスモニタリングシステムとして用いられる。
【0011】
図2に示すように、慣性センサーモジュール2は、直方体状のアウターケース51の中にインナーケース70を収納した構成となっている。インナーケース70には、長方形状の開口部71が形成されている。以下、この開口部71の長辺方向をY(+)方向とする。また、Y(+)方向と直交する方向をX(+)方向とし、アウターケース51の厚さ方向をZ(+)として座標軸で示して説明する。なお、インナーケース70の開口部71からは、プラグ型のコネクター66が露出しており、Y(+)方向はコネクター66における複数のピンの配列方向と一致している。また、この座標軸は、慣性センサーモジュール2の検出軸である。
【0012】
図3は、慣性センサーモジュール2の分解斜視図である。図3に示すように、慣性センサーモジュール2は、アウターケース51、接合部材60、回路基板65、インナーケース70などから構成される。
【0013】
アウターケース51は、外形が直方体をなした箱状の筐体である。アウターケース51の材質は、例えば、アルミニウムであるが、他の金属やセラミックであってもよい。アウターケース51の外側には、前述した2つの切欠き穴52が形成されている。ただし、アウターケース51に丸穴等の貫通孔が形成され、当該貫通孔がネジ止めされてもよい。あるいは、アウターケース51の側面にフランジが形成され、フランジ部分がネジ止めされてもよい。
【0014】
アウターケース51には、回路基板65がセットされた状態のインナーケース70を収納するための収納部55が設けられている。収納部55は、底部53aを底面とした第1凹部53と、第1凹部53を囲う受け部54aを有する第2凹部54とから構成される。第1凹部53には、回路基板65が収納される。受け部54aは、底部53aから階段状に立ち上がったリング状のインナーケース70の受け部であり、第2凹部54には、接合
部材60を介してインナーケース70が収納される。接合部材60は、アウターケース51とインナーケース70との間に配置される樹脂製の緩衝部材である。接合部材60は、受け部54aと同様なリング状の部材であり、受け部54aの上にセットされる。
【0015】
インナーケース70は、回路基板65を支持する部材であり、アウターケース51の第2凹部54に収納され得る形状に構成されている。インナーケース70は、アウターケース51と同じ材質で構成されている。インナーケース70には、回路基板65のコネクター66を外部に露出させるための開口部71と、回路基板65に実装された電子部品を収納するための第3凹部73とが設けられている。なお、実際には、第3凹部73には樹脂が充填されるが、図3では図示が省略されている。また、アウターケース51における収納部55の第1凹部53にも、同様に樹脂が充填され得るが、図3では図示が省略されている。
【0016】
このような構成により、アウターケース51の中に、回路基板65を含むインナーケース70が収納され一体化された状態で、図1に示したように、2本のネジ80により、被装着体の被装着面81に慣性センサーモジュール2が固定されて使用される。
【0017】
図4は、回路基板65の斜視図である。回路基板65は、複数のスルーホールが形成された多層基板であり、ガラスエポキシ基板が用いられる。ただし、回路基板65は、ガラスエポキシ基板に限られず、複数の慣性センサーや、電子部品、コネクターなどを実装可能なリジットな基板であればよく、例えば、コンポジット基板やセラミック基板が用いられてもよい。回路基板65の外形は、平面視において一部が切り掛かれた変形の八角形に形成されている。回路基板65のZ(+)側の面を第1面65a、第1面65aとは反対側の面を第2面65bという。
【0018】
図4に示すように、回路基板65の第1面65aには、コネクター66、第1慣性センサー10、第2慣性センサー20などが実装されている。コネクター66は、プラグ型のコネクターであり、複数のピンが等ピッチで配置されている2列の接続端子を備えている。端子数は、設計仕様に応じて適宜変更してもよい。
【0019】
第1慣性センサー10は、6軸の検出軸を有するセンサーであり、例えば、X軸、Y軸、Z軸の3軸回りの角速度及びX軸、Y軸、Z軸の3軸方向の加速度を検出する6DOFセンサーである。DOFは、Degrees Of Freedomの略である。例えば、第1慣性センサー10は、シリコン基板をMEMS技術で加工した静電容量型のセンサーである。MEMSは、Micro Electro Mechanical Systemsの略である。
【0020】
第2慣性センサー20は、1軸の慣性量を検出するセンサーであり、例えば、Z軸回りの角速度を検出するジャイロセンサーである。例えば、第2慣性センサー20は、水晶を材料とするセンサー素子を有し、振動する物体に加わるコリオリの力から角速度を検出する振動ジャイロセンサーである。ただし、第2慣性センサー20は、セラミックやシリコン等を材料とするセンサー素子を有してもよい。
【0021】
回路基板65の第2面65bには、処理装置30が実装されている。ただし、処理装置30は、回路基板65の第1面65aに実装されてもよい。処理装置30は、例えばMCUであり、1チップのICとして構成されている。MCUは、Micro Controller Unitの略である。第1慣性センサー10及び第2慣性センサー20は、それぞれ、回路基板65に設けられた不図示の配線により処理装置30と接続されている。なお、回路基板65には、その他にも、例えば温度センサー等の複数の電子部品が実装されていてもよい。
【0022】
1-2.慣性計測システムの構成
次に、慣性センサーモジュール2を用いた第1実施形態の慣性計測システム1の構成及び機能について説明する。また、慣性センサーモジュール2の機能的な構成についても併せて説明する。図5は、第1実施形態の慣性計測システム1の構成を示す図である。図5に示すように、第1実施形態の慣性計測システム1は、慣性センサーモジュール2とホストデバイス3とを備える。
【0023】
慣性センサーモジュール2は、第1慣性センサー10と、第2慣性センサー20と、処理装置30と、温度センサー40と、を備える。なお、慣性センサーモジュール2は、図5の構成要素の一部を省略又は変更し、あるいは、他の構成要素を付加した構成としてもよい。
【0024】
第1慣性センサー10は、第1軸、第2軸、第3軸、第4軸、第5軸及び第6軸をそれぞれ検出軸とするセンサーであり、第1センサー素子11と、第2センサー素子12と、第3センサー素子13と、第4センサー素子14と、第5センサー素子15と、第6センサー素子16と、処理回路17と、を含む。例えば、第1慣性センサー10は、第1センサー素子11、第2センサー素子12、第3センサー素子13、第4センサー素子14、第5センサー素子15、第6センサー素子16及び処理回路17が形成されたシリコン基板がパッケージに収容されたデバイス、すなわち、シリコンMEMSセンサーであってもよい。そして、第1慣性センサー10は、パッケージに設けられる外部接続用の端子である端子TCS1、端子TCK1、端子TDI1、端子TDO1及び端子TR1を有する。
【0025】
第1センサー素子11は、第1軸を検出軸として物理量を検出するセンサー素子である。物理量は、例えば、角速度、加速度、角加速度、速度、距離、圧力、音圧又は磁気量等である。
【0026】
第2センサー素子12は、第1軸とは異なる第2軸を検出軸として物理量を検出するセンサー素子である。第3センサー素子13は、第1軸及び第2軸とは異なる第3軸を検出軸として物理量を検出するセンサー素子である。第1センサー素子11、第2センサー素子12及び第3センサー素子13がそれぞれ検出する物理量は、互いに同じ種類であってもよいし、互いに異なる種類であってもよい。
【0027】
第4センサー素子14は、第4軸を検出軸として物理量を検出するセンサー素子である。第5センサー素子15は、第4軸とは異なる第5軸を検出軸として物理量を検出するセンサー素子である。第6センサー素子16は、第4軸及び第5軸とは異なる第6軸を検出軸として物理量を検出するセンサー素子である。第4センサー素子14、第5センサー素子15及び第6センサー素子16がそれぞれ検出する物理量は、互いに同じ種類であってもよいし、互いに異なる種類であってもよい。また、第4軸、第5軸及び第6軸は、第1軸、第2軸及び第3軸とそれぞれ同じ軸であってもよいし、異なる軸であってもよい。
【0028】
例えば、第1軸及び第4軸がともにZ軸であり、第2軸及び第5軸がともにX軸であり、第3軸及び第6軸がともにY軸であり、第1センサー素子11はZ軸回りの角速度を検出し、第2センサー素子12はX軸回りの角速度を検出し、第3センサー素子13はY軸回りの角速度を検出し、第4センサー素子14はZ軸方向の加速度を検出し、第5センサー素子15はX軸方向の加速度を検出し、第6センサー素子16はY軸方向の加速度を検出してもよい。
【0029】
処理回路17は、第1センサー素子11、第2センサー素子12、第3センサー素子13、第4センサー素子14、第5センサー素子15及び第6センサー素子16からそれぞれ出力される信号に対して物理量の検出処理を行い、検出処理によって得られた第1検出信号SD1を出力する。処理回路17は、第1センサー素子11、第2センサー素子12
、第3センサー素子13、第4センサー素子14、第5センサー素子15及び第6センサー素子16からそれぞれ出力される信号に対して物理量の検出処理を行う検出回路171と、検出回路171の検出処理によって得られた第1検出信号SD1を出力するインターフェース回路172と、を含む。
【0030】
検出回路171は、第1センサー素子11、第2センサー素子12、第3センサー素子13、第4センサー素子14、第5センサー素子15及び第6センサー素子16からそれぞれ出力される信号を所定の周期で取得し、所定の演算を行って第1検出信号SD1を生成する。第1検出信号SD1は、第1センサー素子11の出力信号に基づいて得られた第1軸の検出信号、第2センサー素子12の出力信号に基づいて得られた第2軸の検出信号及び第3センサー素子13の出力信号に基づいて得られた第3軸の検出信号を含む。さらに、第1検出信号SD1は、第4センサー素子14の出力信号に基づいて得られた第4軸の検出信号、第5センサー素子15の出力信号に基づいて得られた第5軸の検出信号及び第6センサー素子16の出力信号に基づいて得られた第6軸の検出信号を含む。また、検出回路171は、第1検出信号SD1の生成を完了する毎に第1検出信号SD1の準備完了を知らせる第1データレディー信号DRDY1を生成する。第1検出信号SD1はインターフェース回路172に出力され、第1データレディー信号DRDY1は、端子TR1から出力され、処理装置30の端子TMR1に入力される。
【0031】
インターフェース回路172は、処理装置30から入力される読み出しコマンドに応じて、検出回路171から出力される第1検出信号SD1を取得し、取得した第1検出信号SD1を処理装置30に出力する。
【0032】
第2慣性センサー20は、第1軸を検出軸とするセンサーであり、センサー素子21と、処理回路22と、を含む。例えば、第2慣性センサー20は、センサー素子21と処理回路22とが実装されたプリント基板がパッケージに収容されたデバイスであってもよい。処理回路22は、例えば、半導体により実現されるICチップであってもよい。ICは、Integrated Circuitの略である。そして、第2慣性センサー20は、パッケージに設けられる外部接続用の端子である端子TCS2、端子TCK2、端子TDI2、端子TDO2及び端子TR2を有する。
【0033】
センサー素子21は、第1慣性センサー10に含まれる第1センサー素子11の検出軸と同じ第1軸を検出軸として物理量を検出するセンサー素子である。センサー素子21は、第1センサー素子11と同じ種類の物理量を検出してもよい。例えば、センサー素子21及び第1センサー素子11は、ともにZ軸回りの角速度を検出してもよい。
【0034】
処理回路22は、センサー素子21から出力される信号に対して物理量の検出処理を行い、検出処理によって得られた第2検出信号SD2を出力する。処理回路22は、センサー素子21から出力される信号に対して物理量の検出処理を行う検出回路221と、検出回路221の検出処理によって得られた第2検出信号SD2を出力するインターフェース回路222と、を含む。
【0035】
検出回路221は、センサー素子21から出力される信号を所定の周期で取得し、所定の演算を行って第2検出信号SD2を生成する。第2検出信号SD2は、センサー素子21の出力信号に基づいて得られた第1軸の検出信号を含む。また、検出回路221は、第2検出信号SD2の生成を完了する毎に第2検出信号SD2の準備完了を知らせる第2データレディー信号DRDY2を生成する。第2検出信号SD2はインターフェース回路222に出力され、第2データレディー信号DRDY2は、端子TR2から出力され、処理装置30の端子TMR2に入力される。
【0036】
インターフェース回路222は、処理装置30から入力される読み出しコマンドに応じて、検出回路221から出力される第2検出信号SD2を取得し、取得した第2検出信号SD2を処理装置30に出力する。
【0037】
慣性センサーモジュール2は、第1慣性センサー10及び第2慣性センサー20と処理装置30とを電気的に接続するデジタルインターフェースバスBSを含む。
【0038】
デジタルインターフェースバスBSは、インターフェース回路172及びインターフェース回路222が行うインターフェース処理の通信規格に準拠したバスである。本実施形態では、デジタルインターフェースバスBSは、SPIの通信規格に準拠したバスであり、2つのデータ信号線、クロック信号線及びチップセレクト信号線を含む。SPIは、Serial Peripheral Interfaceの略である。具体的には、第1慣性センサー10は、端子TCS1、端子TCK1、端子TDI1、端子TDO1を介してデジタルインターフェースバスBSに電気的に接続される。また、第2慣性センサー20は、端子TCS2、端子TCK2、端子TDI2、端子TDO2を介してデジタルインターフェースバスBSに電気的に接続される。また、処理装置30は、端子TMCS、端子TMCK、端子TMDO、端子TMDIを介してデジタルインターフェースバスBSに電気的に接続される。ここで、電気的に接続とは電気信号が伝達可能に接続されていることであり、電気信号による情報の伝達が可能となる接続である。ただし、デジタルインターフェースバスBSは、I2Cの通信規格や、SPI又はI2Cを発展した通信規格や、SPI又はI2Cの規格の一部を改良又は改変した通信規格などに準拠したバスであってもよい。I2Cは、Inter-Integrated Circuitの略である。
【0039】
処理装置30は、第1慣性センサー10、第2慣性センサー20に対してマスターとなるコントローラーである。処理装置30は、集積回路装置であり、例えばMCUなどのプロセッサーにより実現される。或いは、処理装置30は、ゲートアレイなどの自動配置配線によるASICにより実現されてもよい。
【0040】
処理装置30は、端子TMCSからチップセレクト信号XMCSを出力し、端子TMCKからシリアルクロック信号MSCLKを出力し、端子TMDOからシリアルデータ信号MSDIを出力する。インターフェース回路172は、端子TCS1から入力されるチップセレクト信号XMCS、端子TCK1から入力されるシリアルクロック信号MSCLK及び端子TDI1から入力されるシリアルデータ信号MSDIに基づいて、SPIの通信規格のインターフェース処理を行い、シリアルデータ信号MSDIが第1検出信号SD1の読み出しコマンドである場合、端子TDO1に第1検出信号SD1を出力する。インターフェース回路222は、端子TCS2から入力されるチップセレクト信号XMCS、端子TCK2から入力されるシリアルクロック信号MSCLK及び端子TDI2から入力されるシリアルデータ信号MSDIに基づいて、SPIの通信規格のインターフェース処理を行い、シリアルデータ信号MSDIが第2検出信号SD2の読み出しコマンドである場合、端子TDO2に第2検出信号SD2を出力する。第1慣性センサー10の端子TDO1から出力された第1検出信号SD1及び第2慣性センサー20の端子TDO2から出力された第2検出信号SD2は、それぞれシリアルデータ信号MSDOとして処理装置30の端子TMDIに入力される。
【0041】
処理装置30は、第1慣性センサー10から出力される第1検出信号SD1と第2慣性センサー20から出力される第2検出信号SD2とが入力され、外部から入力される出力指示情報に基づいて、第1検出信号SD1及び第2検出信号SD2に基づく計測データを出力する。具体的には、処理装置30は、端子TMR1から第1データレディー信号DRDY1が入力されると、第1慣性センサー10に第1検出信号SD1の読み出しコマンドを出力して第1検出信号SD1を読み出し、第1検出信号SD1に対して各種の演算処理
を行う。また、処理装置30は、端子TMR2から第2データレディー信号DRDY2が入力されると、第2慣性センサー20に第2検出信号SD2の読み出しコマンドを出力して第2検出信号SD2を読み出し、第2検出信号SD2に対して各種の演算処理を行う。
【0042】
例えば、処理装置30は、温度センサー40から出力されて端子TSENから入力される温度信号TMPOに基づいて、第1検出信号SD1及び第2検出信号SD2に対する温度補正演算を行ってもよい。温度補正演算は、あらかじめ決められた温度範囲において、温度に応じて第1検出信号SD1及び第2検出信号SD2を増加又は減少させることにより、第1検出信号SD1及び第2検出信号SD2の温度依存性を低減させるように補正する演算である。なお、温度センサー40は、第1慣性センサー10又は第2慣性センサー20に設けられてもよい。
【0043】
また、処理装置30は、第1検出信号SD1及び第2検出信号SD2に対して、感度補正演算、オフセット補正演算、アラインメント補正演算等を行ってもよい。感度補正演算は、各軸の検出感度が基準値となるように補正する演算である。オフセット補正演算は、各軸のゼロ点が基準値となるように補正する演算である。アラインメント補正演算は、各センサー素子の検出軸と慣性センサーモジュール2のX軸、Y軸又はZ軸とのずれによる誤差を補正する演算である。
【0044】
また、処理装置30は、第1検出信号SD1及び第2検出信号SD2に基づいて、慣性センサーモジュール2の姿勢、速度、角度等を算出する演算を行ってもよい。
【0045】
なお、処理装置30は、一連の演算を行う周期が第1データレディー信号DRDY1の周期や第2データレディー信号DRDY2の周期よりも長い場合、第1検出信号SD1及び第2検出信号SD2の一部を間引くダウンサンプリング演算を行ってもよい。
【0046】
本実施形態では、処理装置30は、端子THCS、端子THCK、端子THDI、端子THDO及び端子THRを介してホストデバイス3と電気的に接続される。ホストデバイス3は、処理装置30に対してマスターとなるコントローラーである。処理装置30は、第1検出信号SD1及び第2検出信号SD2に対する一連の演算が完了する毎に、端子THRから計測データの準備完了を知らせるデータレディー信号DRDYをホストデバイス3に出力する。ホストデバイス3は、端子THRからデータレディー信号DRDYが入力される毎に、SPIの通信規格に準拠した、チップセレクト信号XHCS、シリアルクロック信号HSCLK及び出力指示情報としての計測データの読み出しコマンドであるシリアルデータ信号HSDIを処理装置30に出力する。処理装置30は、端子THCSから入力されるチップセレクト信号XHCS、端子THCKから入力されるシリアルクロック信号HSCLK及び端子THDIから入力されるシリアルデータ信号HSDIに基づいて、SPIの通信規格のインターフェース処理を行い、端子THDOに計測データを出力する。処理装置30の端子THDOから出力された計測データは、シリアルデータ信号HSDOとしてホストデバイス3に入力される。ただし、処理装置30は、I2Cの通信規格や、SPI又はI2Cを発展した通信規格や、SPI又はI2Cの規格の一部を改良又は改変した通信規格などのインターフェース処理を行ってもよい。
【0047】
また、本実施形態では、処理装置30は、外部から入力される出力フォーマット選択情報に応じたフォーマットの計測データを出力する。具体的には、処理装置30は、出力フォーマット選択情報が第1フォーマットを選択する情報であるとき、出力指示情報に基づいて第1フォーマットの計測データを出力する。第1フォーマットの計測データは、第1検出信号SD1に含まれる第1軸の検出信号に基づく第1軸第1計測データ、第1検出信号SD1に含まれる第2軸の検出信号に基づく第2軸計測データ、第1検出信号SD1に含まれる第3軸の検出信号に基づく第3軸計測データ、及び、第2検出信号SD2に含ま
れる第1軸の検出信号に基づく第1軸第2計測データを含む。
【0048】
また、処理装置30は、出力フォーマット選択情報が第2フォーマットを選択する情報であるとき、出力指示情報に基づいて第2フォーマットの計測データを出力する。第2フォーマットの計測データは、第2検出信号SD2に含まれる第1軸の検出信号に基づく第1軸第2計測データ、第1検出信号SD1に含まれる第2軸の検出信号に基づく第2軸計測データ、第1検出信号SD1に含まれる第3軸の検出信号に基づく第3軸計測データを含む。
【0049】
また、処理装置30は、出力フォーマット選択情報が第3フォーマットを選択する情報であるとき、出力指示情報に基づいて第3フォーマットの計測データを出力する。第3フォーマットの計測データは、第1検出信号SD1に含まれる第1軸の検出信号に基づく第1軸第1計測データ、第1検出信号SD1に含まれる第2軸の検出信号に基づく第2軸計測データ、第1検出信号SD1に含まれる第3軸の検出信号に基づく第3軸計測データを含む。
【0050】
ホストデバイス3は、チップセレクト信号XHCS、シリアルクロック信号HSCLK及び出力フォーマット選択情報としての計測データのフォーマット選択コマンドであるシリアルデータ信号HSDIを処理装置30に出力する。処理装置30は、端子THCSから入力されるチップセレクト信号XHCS、端子THCKから入力されるシリアルクロック信号HSCLK及び端子THDIから入力されるシリアルデータ信号HSDIに基づいて、計測データのフォーマット選択コマンドによって選択されたフォーマットを、不図示のフォーマット選択レジスターに設定する。処理装置30は、端子THDIから計測データの読み出しコマンドが入力されると、フォーマット選択レジスターを参照して一連の演算によって得られた各種のデータの少なくとも一部を選択し、フォーマット選択レジスターに設定されたフォーマットの計測データを生成する。そして、処理装置30は、生成した計測データを端子THDIから出力する。
【0051】
なお、第1慣性センサー10から第1データレディー信号DRDY1が出力されるタイミングや周期が、第2慣性センサー20から第2データレディー信号DRDY2が出力されるタイミングや周期と一致しない場合、処理装置30が取得した第1検出信号SD1と第2検出信号SD2とは検出時刻が一致しないことになる。そこで、処理装置30は、少なくとも2つの時刻の第1検出信号SD1を用いて所定の時刻の第1補完データを算出する。この少なくとも2つの時刻の各々は、第1データレディー信号DRDY1が直近に少なくとも2回入力された各時刻である。また、処理装置30は、少なくとも2つの時刻の第2検出信号SD2を用いて当該所定の時刻の第2補完データを算出する。この少なくとも2つの時刻の各々は、第2データレディー信号DRDY2が直近に少なくとも2回入力された各時刻である。例えば、処理装置30は、直近に取得した2つの時刻の第1検出信号SD1を1次式で近似して線形補完により所定の時刻の第1補完データを算出し、直近に取得した2つの時刻の第2検出信号SD2を1次式で近似して線形補完により当該所定の時刻の第2補完データを算出してもよい。あるいは、処理装置30は、直近に取得した3つ以上の時刻の第1検出信号SD1を2次以上の多項式で近似して非線形補完により所定の時刻の第1補完データを算出し、直近に取得した3つの時刻の第2検出信号SD2を2次以上の多項式で近似して非線形補完により当該所定の時刻の第2補完データを算出してもよい。
【0052】
このようにして、処理装置30は、同時刻の第1補完データ及び第2補完データを算出し、第1補完データ及び第2補完データに対して前述した一連の演算処理を行い、演算処理が完了するとデータレディー信号DRDYを出力する。そして、処理装置30は、ホストデバイス3からの計測データの読み出しコマンドに基づいて、フォーマット選択レジス
ターに設定されたフォーマットの、第1補完データ及び第2補完データに基づく計測データを出力する。
【0053】
1-3.処理装置の構成
次に、処理装置30の具体的な構成について説明する。図6は、処理装置30の構成例を示す図である。図6に示すように、処理装置30は、デジタルインターフェース回路31、処理回路32及びホストインターフェース回路33を含む。
【0054】
デジタルインターフェース回路31は、第1慣性センサー10及び第2慣性センサー20とのインターフェース処理を行う回路である。すなわち、デジタルインターフェース回路31は、インターフェース回路172及びインターフェース回路222との間でマスターとしてのインターフェース処理を行う。デジタルインターフェース回路31は、端子TMCS、端子TMCK、端子TMDO、端子TMDIを介してデジタルインターフェースバスBSに接続される。本実施形態では、デジタルインターフェース回路31は、インターフェース回路172及びインターフェース回路222と同様に、SPIの通信規格のインターフェース処理を行う。ただし、デジタルインターフェース回路31は、I2Cの通信規格や、SPI又はI2Cを発展した通信規格や、SPI又はI2Cの規格の一部を改良又は改変した通信規格などのインターフェース処理を行ってもよい。デジタルインターフェースバスBS及びデジタルインターフェース回路31は、第1慣性センサー10及び第2慣性センサー20に対し、共通に設けられていてもよいし、第1慣性センサー10及び第2慣性センサー20にそれぞれ設けられていてもよい。
【0055】
ホストインターフェース回路33は、ホストデバイス3とのインターフェース処理を行う回路である。すなわち、ホストインターフェース回路33は、ホストデバイス3との間でスレーブとしてのインターフェース処理を行う。ホストインターフェース回路33は、端子THCS、端子THCK、端子THDO、端子THDIを介して、ホストデバイス3に対してSPIの通信規格のインターフェース処理を行う。ただし、ホストインターフェース回路33は、I2Cの通信規格や、SPI又はI2Cを発展した通信規格や、SPI又はI2Cの規格の一部を改良又は改変した通信規格などのインターフェース処理を行ってもよい。
【0056】
処理回路32は、デジタルインターフェース回路31やホストインターフェース回路33の制御処理、各種の演算処理等を行う。処理回路32は、レジスター部321と、検出信号取得回路322、演算回路323及び計測データ生成回路324を含む。処理回路32は、不図示の記憶部に記憶されているプログラムを実行することにより、制御処理や演算処理を行ってもよい。
【0057】
レジスター部321は、前述したフォーマット選択レジスター等の各種のレジスターを含む。
【0058】
検出信号取得回路322は、端子TMR1から第1データレディー信号DRDY1が入力される毎に、第1検出信号SD1の読み出しコマンドを、デジタルインターフェース回路31を介して第1慣性センサー10に出力し、第1慣性センサー10から出力される第1検出信号SD1を、デジタルインターフェース回路31を介して取得する。また、検出信号取得回路322は、端子TMR2から第2データレディー信号DRDY2が入力される毎に、第2検出信号SD2の読み出しコマンドを、デジタルインターフェース回路31を介して第2慣性センサー20に出力し、第2慣性センサー20から出力される第2検出信号SD2を、デジタルインターフェース回路31を介して取得する。
【0059】
演算回路323は、検出信号取得回路322が取得した第1検出信号SD1及び第2検
出信号SD2に対して、各種の演算を実行する。例えば、演算回路323は、端子TSENから入力される温度信号TMPOに基づいて、第1検出信号SD1に含まれる、第1軸の検出信号、第2軸の検出信号、第3軸の検出信号、第4軸の検出信号、第5軸の検出信号及び第6軸の検出信号に対する温度補正演算を行う。同様に、演算回路323は、端子TSENから入力される温度信号TMPOに基づいて、第2検出信号SD2に含まれる、第1軸の検出信号に対する温度補正演算を行う。また、演算回路323は、第1検出信号SD1に含まれる、第1軸の検出信号、第2軸の検出信号、第3軸の検出信号、第4軸の検出信号、第5軸の検出信号及び第6軸の検出信号に対して、感度補正演算、オフセット補正演算、アラインメント補正演算等を行う。同様に、演算回路323は、第2検出信号SD2に含まれる第1軸の検出信号に対して、感度補正演算、オフセット補正演算、アラインメント補正演算等を行う。なお、演算回路323は、温度補正演算、感度補正演算、オフセット補正演算及びアラインメント補正演算の一部を行わなくてもよいし、他の補正演算を行ってもよい。
【0060】
演算回路323は、これらの一連の演算により、第1検出信号SD1に含まれる第1軸の検出信号に基づく第1軸第1計測データ、第1検出信号SD1に含まれる第2軸の検出信号に基づく第2軸計測データ、第1検出信号SD1に含まれる第3軸の検出信号に基づく第3軸計測データ、第1検出信号SD1に含まれる第4軸の検出信号に基づく第4軸計測データ、第1検出信号SD1に含まれる第5軸の検出信号に基づく第5軸計測データ、第1検出信号SD1に含まれる第6軸の検出信号に基づく第6軸計測データ、及び、第2検出信号SD2に含まれる第1軸の検出信号に基づく第1軸第2計測データを算出する。
【0061】
なお、演算回路323は、一連の演算を行う周期が第1データレディー信号DRDY1の周期や第2データレディー信号DRDY2の周期よりも長い場合、第1検出信号SD1及び第2検出信号SD2の一部を間引くダウンサンプリング演算を行った後、各種の演算処理を行う。
【0062】
さらに、演算回路323は、第1検出信号SD1及び第2検出信号SD2に基づいて、慣性センサーモジュール2の姿勢、速度及び角度の少なくとも1つを算出する演算を行ってもよい。姿勢は、ロール、ピッチ、ヨーで表現されてもよいし、オイラー角やクォータニオンで表現されてもよい。例えば、第1センサー素子11、第2センサー素子12、第3センサー素子13及びセンサー素子21がそれぞれ角速度を検出し、第4センサー素子14、第5センサー素子15及び第6センサー素子16がそれぞれ加速度を検出するものとする。この場合、演算回路323は、第1軸第1計測データ又は第1軸第2計測データと、第2軸計測データと、第3軸計測データとに基づいて、姿勢を算出する。また、演算回路323は、第4軸計測データ、第5軸計測データ及び第6軸計測データをそれぞれ積分して第4軸方向の速度、第5軸方向の速度及び第6軸方向の速度を算出する。また、演算回路323は、第1軸第1計測データ又は第1軸第2計測データ、第2軸計測データ及び第3軸計測データをそれぞれ積分して第1軸回りの角度、第2軸回りの角度及び第3軸回りの角度を算出する。
【0063】
演算回路323は、一連の演算が完了すると、データレディー信号DRDYを、端子THRを介してホストデバイス3に出力する。
【0064】
なお、第1検出信号SD1の検出時刻と第2検出信号SD2の検出時刻が一致しない場合、演算回路323は、少なくとも2つの時刻の第1検出信号SD1を用いて所定の時刻の第1補完データを算出し、少なくとも2つの時刻の第2検出信号SD2を用いて当該所定の時刻の第2補完データを算出する。第1補完データは、第1検出信号SD1に含まれる、第1軸の検出信号、第2軸の検出信号、第3軸の検出信号、第4軸の検出信号、第5軸の検出信号及び第6軸の検出信号のそれぞれの補完データを含む。第2補完データは、
第2検出信号SD2に含まれる第1軸の検出信号の補完データを含む。そして、演算回路323は、算出した同時刻の第1補完データ及び第2補完データに対して前述した一連の演算処理を行って第1軸第1計測データ、第2軸計測データ、第3軸計測データ、第4軸計測データ、第5軸計測データ、第6軸計測データ及び第1軸第2計測データを算出する。
【0065】
第1軸第1計測データ、第2軸計測データ、第3軸計測データ、第4軸計測データ、第5軸計測データ、第6軸計測データ及び第1軸第2計測データは、それぞれ、レジスター部321の互いに異なるレジスターに保存される。また、慣性センサーモジュール2の姿勢、速度及び角度のデータも、それぞれ、レジスター部321の互いに異なるレジスターに保存される。ホストデバイス3は、互いに異なるアドレスを指定して、第1軸第1計測データ、第2軸計測データ、第3軸計測データ、第4軸計測データ、第5軸計測データ、第6軸計測データ及び第1軸第2計測データをそれぞれ読み出すこともできるし、フォーマット選択レジスターに設定されたフォーマットの計測データを読み出すこともできる。
【0066】
計測データ生成回路324は、ホストデバイス3からの計測データの読み出しコマンドがホストインターフェース回路33を介して入力されると、レジスター部321に含まれるフォーマット選択レジスターを参照し、フォーマット選択レジスターの設定値に応じたフォーマットの計測データを生成する。そして、計測データ生成回路324は、生成した計測データを、ホストインターフェース回路33を介してホストデバイス3に出力する。
【0067】
図7は、第1実施形態において選択可能な計測データのフォーマットの一例を示す図である。
【0068】
第1実施形態では、計測データ生成回路324は、フォーマット選択レジスターに第1フォーマットが設定されている場合、計測データの読み出しコマンドが入力されると第1フォーマットの計測データを出力する。図7に示すように、第1フォーマットの計測データは、第1検出信号SD1に含まれる第1軸の検出信号に基づく第1軸第1計測データGZ1、第1検出信号SD1に含まれる第2軸の検出信号に基づく第2軸計測データGX1、第1検出信号SD1に含まれる第3軸の検出信号に基づく第3軸計測データGY1、及び、第2検出信号SD2に含まれる第1軸の検出信号に基づく第1軸第2計測データGZ2を含む。さらに、図7の例では、第1フォーマットの計測データは、第1検出信号SD1に含まれる第4軸の検出信号に基づく第4軸計測データAZ1、第1検出信号SD1に含まれる第5軸の検出信号に基づく第5軸計測データAX1、及び、第1検出信号SD1に含まれる第6軸の検出信号に基づく第6軸計測データAY1を含む。
【0069】
また、第1実施形態では、計測データ生成回路324は、フォーマット選択レジスターに第2フォーマットが設定されている場合、計測データの読み出しコマンドが入力されると第2フォーマットの計測データを出力する。図7に示すように、第2フォーマットの計測データは、第2検出信号SD2に含まれる第1軸の検出信号に基づく第1軸第2計測データGZ2、第1検出信号SD1に含まれる第2軸の検出信号に基づく第2軸計測データGX1、及び、第1検出信号SD1に含まれる第3軸の検出信号に基づく第3軸計測データGY1を含む。さらに、図7の例では、第2フォーマットの計測データは、第1検出信号SD1に含まれる第4軸の検出信号に基づく第4軸計測データAZ1、第1検出信号SD1に含まれる第5軸の検出信号に基づく第5軸計測データAX1、及び、第1検出信号SD1に含まれる第6軸の検出信号に基づく第6軸計測データAY1、及び、温度信号TMPOに基づく温度データTPを含む。
【0070】
また、第1実施形態では、計測データ生成回路324は、フォーマット選択レジスターに第3フォーマットが設定されている場合、計測データの読み出しコマンドが入力される
と第3フォーマットの計測データを出力する。図7に示すように、第3フォーマットの計測データは、第1検出信号SD1に含まれる第1軸の検出信号に基づく第1軸第1計測データGZ1、第1検出信号SD1に含まれる第2軸の検出信号に基づく第2軸計測データGX1、及び、第1検出信号SD1に含まれる第3軸の検出信号に基づく第3軸計測データGY1を含む。さらに、図7の例では、第3フォーマットの計測データは、第1検出信号SD1に含まれる第4軸の検出信号に基づく第4軸計測データAZ1、第1検出信号SD1に含まれる第5軸の検出信号に基づく第5軸計測データAX1、及び、第1検出信号SD1に含まれる第6軸の検出信号に基づく第6軸計測データAY1、及び、温度信号TMPOに基づく温度データTPを含む。
【0071】
図7の例では、第1軸第1計測データGZ1及び第1軸第2計測データGZ2は、ともにZ軸角速度データである。また、第2軸計測データGX1はX軸角速度データであり、第3軸計測データGY1はY軸角速度データである。また、第4軸計測データAZ1はZ軸加速度データであり、第5軸計測データAX1はX軸加速度データであり、第6軸計測データAY1はY軸加速度データである。
【0072】
ここで、第1フォーマットの計測データにおいて、1番目のデータは第2軸計測データGX1であり、2番目のデータは第3軸計測データGY1であり、3番目のデータは第1軸第2計測データGZ2である。また、第2フォーマットの計測データにおいて、1番目のデータは第2軸計測データGX1であり、2番目のデータは第3軸計測データGY1であり、3番目のデータは第1軸第2計測データGZ2である。また、第3フォーマットの計測データにおいて、1番目のデータは第2軸計測データGX1であり、2番目のデータは第3軸計測データGY1であり、3番目のデータは第1軸第1計測データGZ1である。すなわち、第1フォーマットの計測データに含まれる第2軸計測データGX1、第2フォーマットの計測データに含まれる第2軸計測データGX1及び第3フォーマットの計測データに含まれる第2軸計測データGX1の配置が同じである。また、第1フォーマットの計測データに含まれる第3軸計測データGY1、第2フォーマットの計測データに含まれる第3軸計測データGY1及び第3フォーマットの計測データに含まれる第3軸計測データGY1の配置が同じである。また、第1フォーマットの計測データに含まれる第1軸第2計測データGZ2、第2フォーマットの計測データに含まれる第1軸第2計測データGZ2及び第3フォーマットの計測データに含まれる第1軸第1計測データGZ1の配置が同じである。換言すれば、第1フォーマットの計測データ、第2フォーマットの計測データ、第3フォーマットの計測データのいずれにおいても、1番目のデータは第2軸の計測データであり、2番目のデータは第3軸の計測データであり、3番目のデータは第1軸の計測データである。したがって、ホストデバイス3は、第1フォーマットの計測データ、第2フォーマットの計測データ、第3フォーマットの計測データのいずれが出力された場合でも、第1軸の計測データ、第2軸の計測データ及び第3軸の計測データを用いた演算を同様に行うことができる。
【0073】
同様に、第1フォーマットの計測データ、第2フォーマットの計測データ、第3フォーマットの計測データのいずれにおいても、4番目のデータは第5軸計測データAX1であり、5番目のデータは第6軸計測データAY1であり、6番目のデータは第4軸計測データAZ1である。したがって、ホストデバイス3は、第1フォーマットの計測データ、第2フォーマットの計測データ、第3フォーマットの計測データのいずれが出力された場合でも、第4軸計測データAZ1、第5軸計測データAX1及び第6軸計測データAY1を用いた演算を同様に行うことができる。
【0074】
次に、図7の例において、ホストデバイス3が慣性センサーモジュール2に出力させる計測データのフォーマットを切り替える具体例について説明する。
【0075】
第2慣性センサー20の検出精度は、第1慣性センサー10の検出精度よりも高いものとする。例えば、第2慣性センサー20が有するセンサー素子21は、水晶を材料とする素子であるのに対して、第1慣性センサー10が有する第1センサー素子11、第2センサー素子12及び第3センサー素子13は、シリコン基板からMEMS技術を用いて形成した素子である。このようなセンサー素子21を有する第2慣性センサー20は、周波数温度特性や周波数安定度が高く、ノイズやジッターが低いため、第1センサー素子11、第2センサー素子12及び第3センサー素子13を有する第1慣性センサー10と比較して、高価ではあるものの検出精度が高い。そのため、第1軸の物理量の検出に高い精度が要求される場合、基本的には、第1軸の計測データとしては第1軸第2計測データGZ2が用いられる。
【0076】
一方、センサー素子21と第1センサー素子11との材質や構造の違いに起因して、入力に対する出力の線形性が満たされるデータ範囲については、第1軸第1計測データGZ1の方が第1軸第2計測データGZ2よりも広い場合がある。そのため、第1軸第2計測データGZ2について線形性が満たされる第1の入力範囲では第1軸第2計測データGZ2の方が第1軸第1計測データGZ1よりも精度が高く、第1軸第2計測データGZ2について線形性が満たされない第2の入力範囲では第1軸第1計測データGZ1の方が第1軸第2計測データGZ2よりも精度が高い場合がある。
【0077】
そのような場合、ホストデバイス3は、慣性センサーモジュール2に第1フォーマットの計測データを出力させているときは、第1軸第2計測データGZ2、第2軸計測データGX1及び第3軸計測データGY1を用いた演算を行うとともに、第1軸第1計測データGZ1の値に基づいて、第1軸に加わる物理量が第1の入力範囲と第2の入力範囲のいずれに含まれるか判断する。そして、ホストデバイス3は、第1軸に加わる物理量が第1の入力範囲に含まれるときは、フォーマット選択レジスターの設定値を第1フォーマットのまま変更せず、第1軸に加わる物理量が第2の入力範囲に含まれるときは、フォーマット選択レジスターの設定値を第3フォーマットに変更する。また、ホストデバイス3は、慣性センサーモジュール2に第3フォーマットの計測データを出力させているときは、第1軸第1計測データGZ1、第2軸計測データGX1及び第3軸計測データGY1を用いた演算を行うとともに、第1軸第1計測データGZ1の値に基づいて、第1軸に加わる物理量が第1の入力範囲と第2の入力範囲のいずれに含まれるか判断する。そして、ホストデバイス3は、第1軸に加わる物理量が第2の入力範囲に含まれるときは、フォーマット選択レジスターの設定値を第3フォーマットのまま変更せず、第1軸に加わる物理量が第1の入力範囲に含まれるときは、フォーマット選択レジスターの設定値を第1フォーマットに変更する。このように、ホストデバイス3は、線形性を満たす範囲がより広い第1軸第1計測データGZ1の値に基づいて、第1軸に加わる物理量が第1の入力範囲と第2の入力範囲のいずれに含まれるかをより正確に判断して第1フォーマットと第3フォーマットを切り替えることにより、第1軸に加わる物理量の範囲によらず演算の精度を高めることができる。
【0078】
また、図7の例において、ホストデバイス3が慣性センサーモジュール2に出力させる計測データのフォーマットを切り替える他の具体例について説明する。
【0079】
温度が第1の温度範囲のときは第1軸第2計測データGZ2の方が第1軸第1計測データGZ1よりも精度が高く、温度が第1の温度範囲以外の第1の温度範囲のときは第1軸第1計測データGZ1の方が第1軸第2計測データGZ2よりも精度が高い場合がある。そのような場合、ホストデバイス3は、慣性センサーモジュール2に第2フォーマットの計測データを出力させているときは、第1軸第2計測データGZ2、第2軸計測データGX1及び第3軸計測データGY1を用いた演算を行うとともに、温度データTPの値に基づいて、温度が第1の温度範囲と第2の温度範囲のいずれに含まれるか判断する。そして
、ホストデバイス3は、温度が第1の温度範囲に含まれるときは、フォーマット選択レジスターの設定値を第2フォーマットのまま変更せず、温度が第2の温度範囲に含まれるときは、フォーマット選択レジスターの設定値を第3フォーマットに変更する。また、ホストデバイス3は、慣性センサーモジュール2に第3フォーマットの計測データを出力させているときは、第1軸第1計測データGZ1、第2軸計測データGX1及び第3軸計測データGY1を用いた演算を行うとともに、温度データTPの値に基づいて、温度が第1の温度範囲と第2の温度範囲のいずれに含まれるか判断する。そして、ホストデバイス3は、温度が第2の温度範囲に含まれるときは、フォーマット選択レジスターの設定値を第3フォーマットのまま変更せず、温度が第1の温度範囲に含まれるときは、フォーマット選択レジスターの設定値を第2フォーマットに変更する。このように、ホストデバイス3は、温度データTPの値に基づいて、温度が第1の温度範囲と第2の温度のいずれに含まれるかを判断して第2フォーマットと第3フォーマットを切り替えることにより、温度の範囲によらず演算の精度を高めることができる。
【0080】
1-4.作用効果
以上に説明したように、第1実施形態の慣性計測システム1によれば、ホストデバイス3から入力される出力指示情報に基づいて慣性センサーモジュール2から出力される計測データのフォーマットが、ホストデバイス3から入力される出力フォーマット選択情報に応じて選択されるので、ホストデバイス3から計測データのフォーマットを変更することができる。
【0081】
また、第1実施形態の慣性計測システム1によれば、ホストデバイス3は、慣性センサーモジュール2から第1フォーマットの計測データを出力させて、第1軸第2計測データ、第2軸計測データ及び第3軸計測データに基づく演算を行うことができる。
【0082】
また、第1実施形態の慣性計測システム1によれば、ホストデバイス3は、慣性センサーモジュール2から第2フォーマットの計測データを出力させて第1軸第2計測データ、第2軸計測データ及び第3軸計測データに基づく演算を行うこともできるし、慣性センサーモジュール2から第3フォーマットの計測データを出力させて第1軸第1計測データ、第2軸計測データ及び第3軸計測データに基づく演算を行うこともできる。
【0083】
また、第1実施形態の慣性計測システム1によれば、慣性センサーモジュール2から出力される、第1フォーマットの計測データ、第2フォーマットの計測データ、第3フォーマットの計測データのいずれにおいても、第1軸の計測データ、第2軸の計測データ及び第3軸の計測データの配置が同じである。したがって、ホストデバイス3は、第1フォーマットの計測データ、第2フォーマットの計測データ、第3フォーマットの計測データのいずれが出力された場合でも、第1軸の計測データ、第2軸の計測データ及び第3軸の計測データを用いた演算を同様に行うことができる。
【0084】
また、第1実施形態の慣性計測システム1によれば、慣性センサーモジュール2は、第1慣性センサー10と第2慣性センサー20とで検出タイミングや検出周期が異なっていても、時刻を揃えた第1補完データ及び第2補完データを含む計測データを出力することができる。したがって、ホストデバイス3は、第1補完データ及び第2補完データに基づく正しい演算を行うことができる。
【0085】
2.第2実施形態
以下、第2実施形態の慣性計測システムについて、第1実施形態と同様の構成要素には同じ符号を付し、第1実施形態と重複する説明は省略または簡略し、主に第1実施形態と異なる内容について説明する。
【0086】
第2実施形態における慣性センサーモジュール2の構造は図1図4と同様であるので、その図示を省略する。また、第2実施形態における慣性センサーモジュール2の機能的な構成は図5と同様であるので、その図示を省略する。また、第2実施形態における処理装置30の機能的な構成は図6と同様であるので、その図示を省略する。第2実施形態の慣性計測システム1では、慣性センサーモジュール2の処理装置30から出力される計測データの選択可能なフォーマットとして第4のフォーマットが加えられる。
【0087】
第2実施形態における処理装置30は、第1実施形態と同様、第1検出信号SD1に含まれる第1軸の検出信号を補正した第1軸第1計測データ、第1検出信号SD1に含まれる第2軸の検出信号を補正した第2軸計測データ、第1検出信号SD1に含まれる第3軸の検出信号を補正した第3軸計測データ、及び、第2検出信号SD2に含まれる第1軸の検出信号を補正した第1軸第2計測データを算出する。同様に、処理装置30は、第1検出信号SD1に含まれる第4軸の検出信号を補正した第4軸計測データ、第1検出信号SD1に含まれる第5軸の検出信号を補正した第5軸計測データ、及び、第1検出信号SD1に含まれる第6軸の検出信号を補正した第6軸計測データを算出する。
【0088】
そして、処理装置30は、出力フォーマット選択情報が第4フォーマットを選択する情報であるとき、出力指示情報に基づいて第4フォーマットの計測データを出力する。すなわち、処理装置30に含まれる計測データ生成回路324は、フォーマット選択レジスターに第4フォーマットが設定されている場合、ホストデバイス3からの計測データの読み出しコマンドがホストインターフェース回路33を介して入力されると、第4フォーマットの計測データを生成し、生成した計測データを、ホストインターフェース回路33を介してホストデバイス3に出力する。
【0089】
図8は、第2実施形態において選択可能な計測データのフォーマットの一例を示す図である。
【0090】
第2実施形態では、計測データ生成回路324は、フォーマット選択レジスターに第1フォーマットが設定されている場合、計測データの読み出しコマンドが入力されると第1フォーマットの計測データを出力する。また、計測データ生成回路324は、フォーマット選択レジスターに第2フォーマットが設定されている場合、計測データの読み出しコマンドが入力されると第2フォーマットの計測データを出力する。また、計測データ生成回路324は、フォーマット選択レジスターに第3フォーマットが設定されている場合、計測データの読み出しコマンドが入力されると第3フォーマットの計測データを出力する。図8に示すように、第1フォーマットの計測データ、第2フォーマットの計測データ及び第3フォーマットの計測データは、図7と同じであるため、その説明を省略する。
【0091】
さらに、第2実施形態では、計測データ生成回路324は、フォーマット選択レジスターに第4フォーマットが設定されている場合、計測データの読み出しコマンドが入力されると第4フォーマットの計測データを出力する。図8の例では、第4フォーマットの計測データは、第1軸第1計測データGZ1、第2軸計測データGX1、第3軸計測データGY1、第1軸第2計測データGZ2、第1検出信号SD1に含まれる第1軸の検出信号である第1軸第1検出データGZ1’、第1検出信号SD1に含まれる第2軸の検出信号である第2軸検出データGX1’、第1検出信号SD1に含まれる第3軸の検出信号である第3軸検出データGY1’、及び、第2検出信号SD2に含まれる第1軸の検出信号である第1軸第2検出データGZ2’を含む。さらに、図8の例では、第4フォーマットの計測データは、第4軸計測データAZ1、第5軸計測データAX1、第6軸計測データAY1、第1検出信号SD1に含まれる第4軸の検出信号である第4軸検出データAZ1’、第1検出信号SD1に含まれる第5軸の検出信号である第5軸検出データAX1’、第1検出信号SD1に含まれる第6軸の検出信号である第6軸検出データAY1’を含む。
【0092】
図8の例では、第1軸第1計測データGZ1、第1軸第2計測データGZ2、第1軸第1検出データGZ1’及び第1軸第2検出データGZ2’は、ともにZ軸角速度データである。また、第2軸計測データGX1及び第2軸検出データGX1’はX軸角速度データであり、第3軸計測データGY1及び第3軸検出データGY1’はY軸角速度データである。また、第4軸計測データAZ1及び第4軸検出データAZ1’はZ軸加速度データであり、第5軸計測データAX1及び第5軸検出データAX1’はX軸加速度データであり、第6軸計測データAY1及び第6軸検出データAY1’はY軸加速度データである。
【0093】
ここで、第1フォーマット~第4フォーマットの計測データのいずれにおいても、1番目のデータは第2軸の計測データであり、2番目のデータは第3軸の計測データであり、3番目のデータは第1軸の計測データである。したがって、ホストデバイス3は、第1フォーマット~第4フォーマットの計測データのいずれが出力された場合でも、第1軸の計測データ、第2軸の計測データ及び第3軸の計測データを用いた演算を同様に行うことができる。同様に、第1フォーマット~第4フォーマットの計測データのいずれにおいても、4番目のデータは第5軸計測データAX1であり、5番目のデータは第6軸計測データAY1であり、6番目のデータは第4軸計測データAZ1である。したがって、ホストデバイス3は、第1フォーマット~第4フォーマットの計測データのいずれが出力された場合でも、第4軸計測データAZ1、第5軸計測データAX1及び第6軸計測データAY1を用いた演算を同様に行うことができる。
【0094】
例えば、ホストデバイス3は、定期的に、慣性センサーモジュール2に第4フォーマットの計測データを出力させ、第1軸第1計測データGZ1、第2軸計測データGX1、第3軸計測データGY1及び第1軸第2計測データGZ2を、それぞれ、第1軸第1検出データGZ1’、第2軸検出データGX1’、第3軸検出データGY1’及び第1軸第2検出データGZ2’と比較することにより、第1軸第1計測データGZ1、第2軸計測データGX1、第3軸計測データGY1及び第1軸第2計測データGZ2の各々が正常であるか否かを判断することができる。同様に、ホストデバイス3は、第4軸計測データAZ1、第5軸計測データAX1及び第6軸計測データAY1を、それぞれ、第4軸検出データAZ1’、第5軸検出データAX1’及び第6軸検出データAY1’と比較することにより、第4軸計測データAZ1、第5軸計測データAX1及び第6軸計測データAY1の各々が正常であるか否かを判断することができる。
【0095】
第2実施形態の慣性計測システム1のその他の構成及び機能は、第1実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0096】
以上に説明した第2実施形態の慣性計測システム1は、第1実施形態の慣性計測システム1と同様の効果を奏する。
【0097】
さらに、第2実施形態の慣性計測システム1では、慣性センサーモジュール2は、第1軸第1検出データ、第1軸第1検出データを補正した第1軸第1計測データ、第2軸検出データ、第2軸検出データを補正した第2軸計測データ、第3軸検出データ、第3軸検出データを補正した第3軸計測データ、第1軸第2検出データ、及び、第1軸第2検出データを補正した第1軸第2計測データを含む計測データを出力することができる。したがって、ホストデバイス3は、例えば、第1軸第1計測データ、第2軸計測データ、第3軸計測データ及び第1軸第2計測データを、それぞれ、第1軸第1検出データ、第2軸検出データ、第3軸検出データ及び第1軸第2検出データと比較することにより、処理装置30による補正処理が正常であるか否かの判定や、当該補正処理の程度の評価等を行うことができる。
【0098】
3.第3実施形態
以下、第3実施形態の慣性計測システムについて、第1実施形態又は第2実施形態と同様の構成要素には同じ符号を付し、第1実施形態又は第2実施形態と重複する説明は省略または簡略し、主に第1実施形態及び第2実施形態と異なる内容について説明する。
【0099】
第3実施形態における慣性センサーモジュール2の構造は図1図4と同様であるので、その図示を省略する。また、第3実施形態における慣性センサーモジュール2の機能的な構成は図5と同様であるので、その図示を省略する。また、第3実施形態における処理装置30の機能的な構成は図6と同様であるので、その図示を省略する。第3実施形態の慣性計測システム1では、慣性センサーモジュール2の処理装置30から出力される計測データの選択可能なフォーマットとして第5のフォーマットおよび第6のフォーマットが加えられる。
【0100】
第3実施形態における処理装置30は、第1実施形態及び第2実施形態と同様、第1検出信号SD1に含まれる第1軸の検出信号を補正した第1軸第1計測データ、第1検出信号SD1に含まれる第2軸の検出信号を補正した第2軸計測データ、第1検出信号SD1に含まれる第3軸の検出信号を補正した第3軸計測データ、及び、第2検出信号SD2に含まれる第1軸の検出信号を補正した第1軸第2計測データを算出する。同様に、処理装置30は、第1検出信号SD1に含まれる第4軸の検出信号を補正した第4軸計測データ、第1検出信号SD1に含まれる第5軸の検出信号を補正した第5軸計測データ、及び、第1検出信号SD1に含まれる第6軸の検出信号を補正した第6軸計測データを算出する。
【0101】
さらに、第3実施形態における処理装置30は、出力フォーマット選択情報が第5フォーマットを選択する情報であるとき、第2検出信号SD2に含まれる第1軸の検出信号、第1検出信号SD1に含まれる第2軸の検出信号及び第1検出信号SD1に含まれる第3軸の検出信号に基づいて、慣性センサーモジュール2の姿勢、速度及び角度の少なくとも1つを含む第1慣性データを算出し、出力指示情報に基づいて第1慣性データを含む第5フォーマットの計測データを出力する。処理装置30は、第1検出信号SD1に含まれる第4軸の検出信号、第1検出信号SD1に含まれる第5軸の検出信号及び第1検出信号SD1に含まれる第6軸の検出信号にさらに基づいて、第1慣性データを算出してもよい。
【0102】
また、第3実施形態における処理装置30は、出力フォーマット選択情報が第6フォーマットを選択する情報であるとき、第1検出信号SD1に含まれる第1軸の検出信号、第1検出信号SD1に含まれる第2軸の検出信号及び第1検出信号SD1に含まれる第3軸の検出信号に基づいて、慣性センサーモジュール2の姿勢、速度及び角度の少なくとも1つを含む第2慣性データを算出し、出力指示情報に基づいて第2慣性データを含む第6フォーマットの計測データを出力する。処理装置30は、第1検出信号SD1に含まれる第4軸の検出信号、第1検出信号SD1に含まれる第5軸の検出信号及び第1検出信号SD1に含まれる第6軸の検出信号にさらに基づいて、第2慣性データを算出してもよい。
【0103】
例えば、処理装置30に含まれる計測データ生成回路324は、フォーマット選択レジスターに第5フォーマットが設定されている場合、第1軸第2計測データ、第2軸計測データ、第3軸計測データ、第4軸計測データ、第5軸計測データ及び第6軸計測データに基づいて第1慣性データを生成する。そして、計測データ生成回路324は、ホストデバイス3からの計測データの読み出しコマンドがホストインターフェース回路33を介して入力されると、第1慣性データを含む第5フォーマットの計測データを生成し、生成した計測データを、ホストインターフェース回路33を介してホストデバイス3に出力する。また、計測データ生成回路324は、フォーマット選択レジスターに第6フォーマットが設定されている場合、第1軸第1計測データ、第2軸計測データ、第3軸計測データ、第
4軸計測データ、第5軸計測データ及び第6軸計測データに基づいて第2慣性データを生成する。そして、計測データ生成回路324は、ホストデバイス3からの計測データの読み出しコマンドがホストインターフェース回路33を介して入力されると、第2慣性データを含む第6フォーマットの計測データを生成し、生成した計測データを、ホストインターフェース回路33を介してホストデバイス3に出力する。
【0104】
図9は、第3実施形態において選択可能な計測データのフォーマットの一例を示す図である。
【0105】
第3実施形態では、計測データ生成回路324は、フォーマット選択レジスターに第1フォーマットが設定されている場合、計測データの読み出しコマンドが入力されると第1フォーマットの計測データを出力する。また、計測データ生成回路324は、フォーマット選択レジスターに第2フォーマットが設定されている場合、計測データの読み出しコマンドが入力されると第2フォーマットの計測データを出力する。また、計測データ生成回路324は、フォーマット選択レジスターに第3フォーマットが設定されている場合、計測データの読み出しコマンドが入力されると第3フォーマットの計測データを出力する。また、計測データ生成回路324は、フォーマット選択レジスターに第4フォーマットが設定されている場合、計測データの読み出しコマンドが入力されると第4フォーマットの計測データを出力する。図9に示すように、第1フォーマットの計測データ、第2フォーマットの計測データ、第3フォーマットの計測データ及び第4フォーマットの計測データは、図8と同じであるため、その説明を省略する。
【0106】
さらに、第3実施形態では、計測データ生成回路324は、フォーマット選択レジスターに第5フォーマットが設定されている場合、計測データの読み出しコマンドが入力されると第5フォーマットの計測データを出力する。図9の例では、第5フォーマットの計測データは、第1軸第2計測データGZ2、第2軸計測データGX1、第3軸計測データGY1、第4軸計測データAZ1、第5軸計測データAX1、第6軸計測データAY1及び温度データTPを含む。さらに、図9の例では、第5フォーマットの計測データは、第1慣性データとして、慣性センサーモジュール2の姿勢を表すロール角データR、ピッチ角データP及び第2ヨー角データY、並びに、慣性センサーモジュール2の角度を表す第1軸第2角度データθZ2、第2軸角度データθX1及び第3軸角度データθY1を含む。ロール角データR、ピッチ角データP及び第2ヨー角データYは、第1軸第2計測データGZ2、第2軸計測データGX1及び第3軸計測データGY1に基づいて算出された姿勢データである。また、第1軸第2角度データθZ2、第2軸角度データθX1及び第3軸角度データθY1は、それぞれ、第1軸第2計測データGZ2、第2軸計測データGX1及び第3軸計測データGY1を積分して得られた角度データである。
【0107】
また、計測データ生成回路324は、フォーマット選択レジスターに第6フォーマットが設定されている場合、計測データの読み出しコマンドが入力されると第6フォーマットの計測データを出力する。図9の例では、第6フォーマットの計測データは、第1軸第1計測データGZ1、第2軸計測データGX1、第3軸計測データGY1、第4軸計測データAZ1、第5軸計測データAX1、第6軸計測データAY1及び温度データTPを含む。さらに、図9の例では、第6フォーマットの計測データは、第2慣性データとして、慣性センサーモジュール2の姿勢を表すロール角データR、ピッチ角データP及び第1ヨー角データY、並びに、慣性センサーモジュール2の角度を表す第1軸第1角度データθZ1、第2軸角度データθX1及び第3軸角度データθY1を含む。ロール角データR、ピッチ角データP及び第1ヨー角データYは、第1軸第1計測データGZ1、第2軸計測データGX1及び第3軸計測データGY1に基づいて算出された姿勢データである。また、第1軸第1角度データθZ1、第2軸角度データθX1及び第3軸角度データθY1は、それぞれ、第1軸第1計測データGZ1、第2軸計測データGX1及び第3
軸計測データGY1を積分して得られた角度データである。
【0108】
図9の例では、第1軸第1計測データGZ1、第1軸第2計測データGZ2、第1軸第1検出データGZ1’及び第1軸第2検出データGZ2’は、ともにZ軸角速度データである。また、第2軸計測データGX1及び第2軸検出データGX1’はX軸角速度データであり、第3軸計測データGY1及び第3軸検出データGY1’はY軸角速度データである。また、第4軸計測データAZ1及び第4軸検出データAZ1’はZ軸加速度データであり、第5軸計測データAX1及び第5軸検出データAX1’はX軸加速度データであり、第6軸計測データAY1及び第6軸検出データAY1’はY軸加速度データである。
【0109】
なお、図9の例において、第5フォーマットの計測データ及び第6フォーマットの計測データは、姿勢データ及び角度データを含むが、これらとともに、あるいは、これらの少なくとも1つに代えて、速度データを含んでもよい。速度データは、第4軸計測データAZ1、第5軸計測データAX1及び第6軸計測データAY1をそれぞれ積分して得られる、第4軸速度データ、第5軸速度データ及び第5軸速度データを含んでもよい。
【0110】
ここで、第1フォーマット~第6フォーマットの計測データのいずれにおいても、1番目のデータは第2軸の計測データであり、2番目のデータは第3軸の計測データであり、3番目のデータは第1軸の計測データである。したがって、ホストデバイス3は、第1フォーマット~第6フォーマットの計測データのいずれが出力された場合でも、第1軸の計測データ、第2軸の計測データ及び第3軸の計測データを用いた演算を同様に行うことができる。同様に、第1フォーマット~第6フォーマットの計測データのいずれにおいても、4番目のデータは第5軸計測データAX1であり、5番目のデータは第6軸計測データAY1であり、6番目のデータは第4軸計測データAZ1である。したがって、ホストデバイス3は、第1フォーマット~第6フォーマットの計測データのいずれが出力された場合でも、第4軸計測データAZ1、第5軸計測データAX1及び第6軸計測データAY1を用いた演算を同様に行うことができる。
【0111】
例えば、ホストデバイス3は、慣性センサーモジュール2に第5フォーマットの計測データを出力させているときは、ロール角データR、ピッチ角データP及び第2ヨー角データYを用いた演算や、第1軸第2計測データGZ2、第2軸計測データGX1及び第3軸計測データGY1を用いた演算を行うとともに、温度データTPの値に基づいて、温度が第1の温度範囲と第2の温度範囲のいずれに含まれるか判断する。そして、ホストデバイス3は、温度が第1の温度範囲に含まれるときは、フォーマット選択レジスターの設定値を第5フォーマットのまま変更せず、温度が第2の温度範囲に含まれるときは、フォーマット選択レジスターの設定値を第6フォーマットに変更する。また、ホストデバイス3は、慣性センサーモジュール2に第6フォーマットの計測データを出力させているときは、ロール角データR、ピッチ角データP及び第1ヨー角データYを用いた演算や、第1軸第1計測データGZ1、第2軸計測データGX1及び第3軸計測データGY1を用いた演算を行うとともに、温度データTPの値に基づいて、温度が第1の温度範囲と第2の温度範囲のいずれに含まれるか判断する。そして、ホストデバイス3は、温度が第2の温度範囲に含まれるときは、フォーマット選択レジスターの設定値を第6フォーマットのまま変更せず、温度が第1の温度範囲に含まれるときは、フォーマット選択レジスターの設定値を第5フォーマットに変更する。このように、ホストデバイス3は、温度データTPの値に基づいて、温度が第1の温度範囲と第2の温度のいずれに含まれるかを判断して第5フォーマットと第6フォーマットを切り替えることにより、温度の範囲によらず演算の精度を高めることができる。
【0112】
第3実施形態の慣性計測システム1のその他の構成及び機能は、第1実施形態又は第2実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0113】
以上に説明した第3実施形態の慣性計測システム1は、第1実施形態又は第2実施形態の慣性計測システム1と同様の効果を奏する。
【0114】
さらに、第3実施形態の慣性計測システム1によれば、ホストデバイス3は、慣性センサーモジュール2から第5フォーマットの計測データを出力させて第1慣性データに基づく演算を行うこともできるし、慣性センサーモジュール2から第6フォーマットの計測データを出力させて第2慣性データに基づく演算を行うこともできる。
【0115】
4.第4実施形態
以下、第4実施形態の慣性計測システムについて、第1実施形態~第3実施形態のいずれかと同様の構成要素には同じ符号を付し、第1実施形態~第3実施形態のいずれかと重複する説明は省略または簡略し、主に第1実施形態~第3実施形態のいずれとも異なる内容について説明する。
【0116】
第4実施形態における慣性センサーモジュール2の構造は図1図4と同様であるので、その図示を省略する。また、第4実施形態における処理装置30の機能的な構成は図6と同様であるので、その図示を省略する。
【0117】
図10は、第4実施形態の慣性計測システム1の構成を示す図である。図10に示すように、第4実施形態の慣性計測システム1は、慣性センサーモジュール2とホストデバイス3とを備え、さらに、監視装置4を備える。図10に示すように、第4実施形態における慣性センサーモジュール2の機能的な構成は図5と同様である。
【0118】
第4実施形態では、慣性センサーモジュール2の処理装置30は、端子THCS、端子THCK、端子THDI、端子THDO及び端子THRを介してホストデバイス3及び監視装置4と電気的に接続される。ホストデバイス3及び監視装置4は、処理装置30に対してマスターとなるコントローラーである。処理装置30は、第1検出信号SD1及び第2検出信号SD2に対する一連の演算が完了する毎に、端子THRから計測データの準備完了を知らせるデータレディー信号DRDYをホストデバイス3に出力する。ホストデバイス3は、端子THRからデータレディー信号DRDYが入力される毎に、SPIの通信規格に準拠した、チップセレクト信号XHCS、シリアルクロック信号HSCLK及び出力指示情報としての計測データの読み出しコマンドであるシリアルデータ信号HSDIを処理装置30に出力する。処理装置30は、端子THCSから入力されるチップセレクト信号XHCS、端子THCKから入力されるシリアルクロック信号HSCLK及び端子THDIから入力されるシリアルデータ信号HSDIに基づいて、SPIの通信規格のインターフェース処理を行い、端子THDOに計測データを出力する。処理装置30の端子THDOから出力された計測データは、シリアルデータ信号HSDOとしてホストデバイス3及び監視装置4に入力される。ただし、処理装置30は、I2Cの通信規格や、SPI又はI2Cを発展した通信規格や、SPI又はI2Cの規格の一部を改良又は改変した通信規格などのインターフェース処理を行ってもよい。
【0119】
監視装置4は、処理装置30から出力される計測データを監視し、監視結果に応じた出力フォーマット選択情報を処理装置30に送信する。すなわち、監視装置4は、処理装置30の端子THDOから出力された計測データを監視し、チップセレクト信号XHCS、シリアルクロック信号HSCLK及び監視結果に応じた出力フォーマット選択情報としての計測データのフォーマット選択コマンドであるシリアルデータ信号HSDIを処理装置30に出力する。
【0120】
具体的には、監視装置4は、定期的に、処理装置30に前述の第1フォーマットを選択
する出力フォーマット選択情報を出力する。そして、監視装置4は、処理装置30から出力される第1フォーマットの計測データに含まれる第1軸第1計測データと第1軸第2計測データとを比較し、比較結果に基づいて第2慣性センサー20が故障しているか否かを判定し、判定結果に応じた出力フォーマット選択情報を処理装置30に出力する。例えば、監視装置4は、所定の期間において、第1軸第1計測データの値が変動しているのに対して、第1軸第2計測データの値が同じように変動していれば第2慣性センサー20が故障していないと判定し、第1軸第2計測データの値がほとんど変化していなければ第2慣性センサー20が故障していると判定してもよい。あるいは、監視装置4は、不図示の他のセンサーの出力信号に基づいて、慣性センサーモジュール2が静止している期間を推定する。そして、監視装置4は、慣性センサーモジュール2が静止している期間において、第1軸第1計測データと第1軸第2計測データがともにほとんど変化していなければ第2慣性センサー20が故障していないと判定し、第1軸第1計測データがほとんど変化せずに第1軸第2計測データが変動していれば第2慣性センサー20が故障していると判定してもよい。
【0121】
ここで、監視装置4が第2慣性センサー20が故障していないと判定した場合に処理装置30に出力する出力フォーマット選択情報と、監視装置4が第2慣性センサー20が故障していると判定した場合に処理装置30に出力する出力フォーマット選択情報とが異なる。例えば、監視装置4は、第2慣性センサー20が故障していないと判定した場合は前述の第2フォーマットを選択する出力フォーマット選択情報を処理装置30に出力し、第2慣性センサー20が故障していると判定した場合は前述の第3フォーマットを選択する出力フォーマット選択情報を処理装置30に出力する。
【0122】
このように、第4実施形態では、ホストデバイス3は、第2慣性センサー20の故障の有無を監視して処理装置30から出力される計測データのフォーマットを切り替える処理を行う必要がない。したがって、ホストデバイス3は計測データに基づく演算処理に専念することができるので、ホストデバイス3の処理を簡素化することができる。
【0123】
第4実施形態の慣性計測システム1のその他の構成及び機能は、第1実施形態~第3実施形態のいずれかと同様であるため、その説明を省略する。
【0124】
以上に説明した第4実施形態の慣性計測システム1は、第1実施形態、第2実施形態又は第3実施形態の慣性計測システム1と同様の効果を奏する。
【0125】
さらに、第4実施形態の慣性計測システム1では、監視装置4は、慣性センサーモジュール2から出力される計測データの監視結果に基づいて、計測データのフォーマットを変更することができる。具体的には、監視装置4は、第2慣性センサー20の故障の有無によって、慣性センサーモジュール2から出力される計測データのフォーマットを変更することができる。したがって、ホストデバイス3は、第2慣性センサー20の故障の有無によらず、慣性センサーモジュール2から出力される計測データに基づく演算を行うことができる。そして、ホストデバイス3は計測データに基づく演算処理に専念することができるので、ホストデバイス3の処理を簡素化することができる。
【0126】
5.変形例
本発明は本実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0127】
例えば、上記の第1実施形態では、慣性センサーモジュール2から出力される計測データのフォーマットとして複数のフォーマットのうちの第1フォーマット~第3フォーマットを選択可能である例を挙げたが、複数のフォーマットのうちの少なくとも第1フォーマ
ットを選択可能であって、第2フォーマット及び第3フォーマットの少なくとも一方が選択不可であってもよい。あるいは、複数のフォーマットのうちの少なくとも第2フォーマット及び第3フォーマットを選択可能であって、第1フォーマットが選択不可であってもよい。
【0128】
また、上記の第2実施形態では、慣性センサーモジュール2から出力される計測データのフォーマットとして複数のフォーマットのうちの第1フォーマット~第4フォーマットを選択可能である例を挙げたが、複数のフォーマットのうちの少なくとも第4フォーマットを選択可能であって、第1フォーマット~第3フォーマットの少なくとも1つが選択不可であってもよい。
【0129】
また、上記の第3実施形態では、慣性センサーモジュール2から出力される計測データのフォーマットとして複数のフォーマットのうちの第1フォーマット~第6フォーマットを選択可能である例を挙げたが、複数のフォーマットのうちの少なくとも第5フォーマット及び第6フォーマットを選択可能であって、第1フォーマット~第4フォーマットの少なくとも1つが選択不可であってもよい。
【0130】
また、上記の各実施形態では、処理装置30は、端子THDIから入力される計測データのフォーマット選択コマンドを出力フォーマット選択情報として計測データのフォーマットを選択しているが、N個の端子から入力されるNビットの制御信号を出力フォーマット選択情報として計測データのフォーマットを選択してもよい。ただし、Nは1以上の整数であり、選択可能なフォーマットの数は2N-1+1以上2以下である。
【0131】
また、上記の第1実施形態~第3実施形態において、ホストデバイス3が、定期的に、慣性センサーモジュール2に第1フォーマットの計測データを出力させ、第4実施形態の監視装置4と同様、第1フォーマットの計測データに含まれる第1軸第1計測データと第1軸第2計測データとを比較してセンサー素子21が故障しているか否かを判定してもよい。そして、ホストデバイス3は、センサー素子21が故障していないと判定した場合は慣性センサーモジュール2に第2フォーマットの計測データを出力させ、センサー素子21が故障していると判定した場合は慣性センサーモジュール2に第3フォーマットの計測データを出力させてもよい。
【0132】
また、上記の各実施形態では、第1センサー素子11、第2センサー素子12、第3センサー素子13及びセンサー素子21がそれぞれ角速度を検出し、第4センサー素子14、第5センサー素子15及び第6センサー素子16がそれぞれ加速度を検出する例を挙げたが、各センサー素子が検出する物理量はこれに限られない。例えば、第1センサー素子11、第2センサー素子12、第3センサー素子13及びセンサー素子21がそれぞれ加速度を検出し、第4センサー素子14、第5センサー素子15及び第6センサー素子16がそれぞれ角速度を検出してもよい。
【0133】
また、上記の各実施形態では、第1慣性センサー10は、6個のセンサー素子で構成されているが、4個のセンサー素子で構成されてもよい。例えば、第1センサー素子は第1軸、第2軸、及び第3軸を検出軸とし、第2センサー素子は第4軸を検出軸とし、第3センサー素子は第5軸を検出軸とし、第4センサー素子は第6軸を検出軸としてもよい。この場合、第1センサー素子は3軸の角速度を検出し、第2センサー素子、第3センサー素子及び第5センサー素子はそれぞれ1軸の加速度を検出してもよい。また、例えば、第1センサー素子は第1軸を検出軸とし、第2センサー素子は第2軸を検出軸とし、第3センサー素子は第3軸を検出軸とし、第4センサー素子は第4軸、第5軸及び第6軸を検出軸としてもよい。この場合、第1センサー素子、第2センサー素子及び第3センサー素子はそれぞれ1軸の角速度を検出し、第4センサー素子は3軸の加速度を検出してもよい。
【0134】
また、上記の各実施形態では、第1慣性センサー10は、6個のセンサー素子で構成されているが、5個のセンサー素子で構成されてもよい。例えば、第1センサー素子は第1軸を検出軸とし、第2センサー素子は第2軸を検出軸とし、第3センサー素子は第3軸を検出軸とし、第4センサー素子は第4軸及び第5軸を検出軸とし、第5センサー素子は第6軸を検出軸としてもよい。この場合、第1センサー素子、第2センサー素子及び第3センサー素子はそれぞれ1軸の角速度を検出し、第4センサー素子は2軸の加速度を検出し、第5センサー素子は1軸の加速度を検出してもよい。
【0135】
また、上記の各実施形態では、第1慣性センサー10は、6個のセンサー素子で構成されているが、2個のセンサー素子で構成されてもよい。例えば、第1センサー素子は第1軸、第2軸、及び第3軸を検出軸とし、第2センサー素子は第4軸、第5軸及び第6軸を検出軸としてもよい。この場合、第1センサー素子は3軸の角速度を検出し、第2センサー素子は3軸の加速度を検出してもよい。
【0136】
また、上記の各実施形態では、慣性センサーモジュール2は、第1慣性センサー10及び第2慣性センサー20の2つの慣性センサーを備えているが、3つ以上の慣性センサーを備えてもよい。例えば、図11に示すように、慣性センサーモジュール2は、第1慣性センサー10及び第2慣性センサー20に加えて、第2軸の物理量を検出する第3慣性センサー91と第3軸の物理量を検出する第4慣性センサー92とをさらに備えてもよい。例えば、第1慣性センサー10はシリコンMEMSセンサーであり、第2慣性センサー20、第3慣性センサー91及び第4慣性センサー92は、それぞれ水晶センサーであってもよい。この場合、例えば、処理装置30は、第1慣性センサー10から出力される第1検出信号SD1に基づく第1軸第1計測データ、第2軸第1計測データ及び第3軸第1計測データを生成し、第2慣性センサー20から出力される第2検出信号SD2に基づく第1軸第2計測データ、第3慣性センサー91から出力される第3検出信号に基づく第2軸第2計測データ、及び、第4慣性センサー92から出力される第4検出信号に基づく第3軸第2計測データを生成する。そして、処理装置30は、出力フォーマット選択情報に基づいて、第1軸第1計測データ、第2軸第1計測データ及び第3軸第1計測データを含む計測データ、又は、第1軸第2計測データ、第2軸第2計測データ及び第3軸第2計測データを含む計測データを出力してもよい。
【0137】
また、上記の各実施形態では、第1慣性センサー10は6軸の物理量を検出しているが、1軸、2軸、3軸、4軸、5軸又は7軸以上の物理量を検出してもよい。また、上記の各実施形態では、第2慣性センサー20は1軸の物理量を検出しているが、2軸以上の物理量を検出してもよい。また、第1慣性センサー10と第2慣性センサー20とが同じ構造のセンサーや同等の検出精度のセンサーであってもよい。例えば、図12に示すように、第1慣性センサー10及び第2慣性センサー20がそれぞれ6軸の物理量を検出するシリコンMEMSセンサーであってもよい。この場合、例えば、処理装置30は、第1慣性センサー10から出力される第1検出信号SD1に基づいて第n軸第1データを算出し、第2慣性センサー20から出力される第2検出信号SD2に基づいて第n軸第2データを算出する。nは1以上6以下の各整数である。さらに、処理装置30は、第1慣性センサー10から出力される第1検出信号SD1に含まれる第n軸の検出信号と第2慣性センサー20から出力される第2検出信号SD2に含まれる第n軸の検出信号とを平均化したデータに基づいて第n軸平均化計測データを算出する。そして、処理装置30は、出力フォーマット選択情報に基づいて、第1軸第1計測データ~第6軸第1計測データを含む計測データ、第1軸第2計測データ~第6軸第2計測データを含む計測データ、又は、第1軸平均化計測データ~第6軸平均化計測データを含む計測データを出力してもよい。
【0138】
また、上記の各実施形態では、第1慣性センサー10が相対的に検出精度の低いシリコ
ンMEMSセンサーであり、第2慣性センサー20が相対的に検出精度の高い水晶センサーである例を挙げたが、これに限られない。例えば、第1慣性センサー10が相対的に検出精度の低いシリコンMEMSセンサーであり、第2慣性センサー20が相対的に検出精度の高いFOGセンサーであってもよい。FOGは、Fiber Optic Gyroscopeの略である。あるいは、第1慣性センサー10が相対的に検出精度の高いセンサーであって、第2慣性センサー20が相対的に検出精度の低いセンサーであってもよいし、第1慣性センサー10の検出精度と第2慣性センサー20の検出精度とが同等であってもよい。
【0139】
また、上記の第1実施形態及び第2実施形態では、慣性センサーモジュール2の処理装置30が慣性センサーモジュール2の姿勢、速度、角度等を演算する例を挙げたが、処理装置30以外の装置が慣性センサーモジュール2の姿勢、速度、角度等を演算してもよい。例えば、ホストデバイス3が慣性センサーモジュール2の姿勢、速度、角度等を演算してもよい。
【0140】
上述した実施形態および変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば、各実施形態および各変形例を適宜組み合わせることも可能である。
【0141】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成、例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【0142】
上述した実施形態および変形例から以下の内容が導き出される。
【0143】
慣性センサーモジュールの一態様は、
第1慣性センサーと、
第2慣性センサーと、
前記第1慣性センサーから出力される第1検出信号と前記第2慣性センサーから出力される第2検出信号とが入力され、外部から入力される出力指示情報に基づいて前記第1検出信号及び前記第2検出信号に基づく計測データを出力する処理装置と、
を備え、
前記処理装置は、外部から入力される出力フォーマット選択情報に応じたフォーマットの前記計測データを出力する。
【0144】
この慣性センサーモジュールによれば、外部から入力される出力指示情報に基づいて出力される計測データのフォーマットが、外部から入力される出力フォーマット選択情報に応じて選択されるので、外部から計測データのフォーマットを変更することができる。
【0145】
前記慣性センサーモジュールの一態様において、
前記第1慣性センサーは、第1軸、第2軸及び第3軸を検出軸とし、
前記第2慣性センサーは、前記第1軸を検出軸とし、
前記処理装置は、前記出力フォーマット選択情報が第1フォーマットを選択する情報であるとき、前記出力指示情報に基づいて前記第1フォーマットの前記計測データを出力し、
前記第1フォーマットの前記計測データは、前記第1検出信号に含まれる前記第1軸の検出信号に基づく第1軸第1計測データ、前記第1検出信号に含まれる前記第2軸の検出信号に基づく第2軸計測データ、前記第1検出信号に含まれる前記第3軸の検出信号に基づく第3軸計測データ、及び、前記第2検出信号に含まれる前記第1軸の検出信号に基づ
く第1軸第2計測データを含んでもよい。
【0146】
この慣性センサーモジュールによれば、外部装置は、第1フォーマットの計測データに含まれる第1軸第2計測データ、第2軸計測データ及び第3軸計測データに基づく演算を行うことができる。
【0147】
また、この慣性センサーモジュールによれば、外部装置は、第1フォーマットの計測データに含まれる第1軸第1計測データと第1軸第2計測データとを比較して、第1慣性センサー又は第2慣性センサーの故障の有無を判定することができる。
【0148】
前記慣性センサーモジュールの一態様において、
前記第1慣性センサーは、第1軸、第2軸及び第3軸を検出軸とし、
前記第2慣性センサーは、前記第1軸を検出軸とし、
前記処理装置は、前記出力フォーマット選択情報が第2フォーマットを選択する情報であるとき、前記出力指示情報に基づいて前記第2フォーマットの前記計測データを出力し、前記出力フォーマット選択情報が第3フォーマットを選択する情報であるとき、前記出力指示情報に基づいて前記第3フォーマットの前記計測データを出力し、
前記第2フォーマットの前記計測データは、前記第2検出信号に含まれる前記第1軸の検出信号に基づく第1軸第2計測データ、前記第1検出信号に含まれる前記第2軸の検出信号に基づく第2軸計測データ及び前記第1検出信号に含まれる前記第3軸の検出信号に基づく第3軸計測データを含み、
前記第3フォーマットの前記計測データは、前記第1検出信号に含まれる前記第1軸の検出信号に基づく第1軸第1計測データ、前記第2軸計測データ及び前記第3軸計測データを含んでもよい。
【0149】
この慣性センサーモジュールによれば、外部装置は、第2フォーマットの計測データに含まれる第1軸第2計測データ、第2軸計測データ及び第3軸計測データに基づく演算を行うこともできるし、第3フォーマットの計測データに含まれる第1軸第1計測データ、第2軸計測データ及び第3軸計測データに基づく演算を行うこともできる。
【0150】
前記慣性センサーモジュールの一態様において、
前記処理装置は、前記出力フォーマット選択情報が第2フォーマットを選択する情報であるとき、前記出力指示情報に基づいて前記第2フォーマットの前記計測データを出力し、前記出力フォーマット選択情報が第3フォーマットを選択する情報であるとき、前記出力指示情報に基づいて前記第3フォーマットの前記計測データを出力し、
前記第2フォーマットの前記計測データは、前記第1軸第2計測データ、前記第2軸計測データ及び前記第3軸計測データを含み、
前記第3フォーマットの前記計測データは、前記第1軸第1計測データ、前記第2軸計測データ及び前記第3軸計測データを含み、
前記第1フォーマットの前記計測データに含まれる前記第1軸第2計測データ、前記第2フォーマットの前記計測データに含まれる前記第1軸第2計測データ及び前記第3フォーマットの前記計測データに含まれる前記第1軸第1計測データの配置が同じであり、
前記第1フォーマットの前記計測データに含まれる前記第2軸計測データ、前記第2フォーマットの前記計測データに含まれる前記第2軸計測データ及び前記第3フォーマットの前記計測データに含まれる前記第2軸計測データの配置が同じであり、
前記第1フォーマットの前記計測データに含まれる前記第3軸計測データ、前記第2フォーマットの前記計測データに含まれる前記第3軸計測データ及び前記第3フォーマットの前記計測データに含まれる前記第3軸計測データの配置が同じであってもよい。
【0151】
この慣性センサーモジュールによれば、第1フォーマットの計測データ、第2フォーマ
ットの計測データ、第3フォーマットの計測データのいずれにおいても、第1軸の計測データ、第2軸の計測データ及び第3軸の計測データの配置が同じである。したがって、外部装置は、第1フォーマットの計測データ、第2フォーマットの計測データ、第3フォーマットの計測データのいずれが出力された場合でも、第1軸の計測データ、第2軸の計測データ及び第3軸の計測データを用いた演算を同様に行うことができる。
【0152】
前記慣性センサーモジュールの一態様において、
前記処理装置は、少なくとも2つの時刻の前記第1検出信号を用いて所定の時刻の第1補完データを算出し、少なくとも2つの時刻の前記第2検出信号を用いて前記所定の時刻の第2補完データを算出し、前記出力指示情報に基づいて前記第1補完データ及び前記第2補完データに基づく前記計測データを出力してもよい。
【0153】
この慣性センサーモジュールによれば、第1慣性センサーと第2慣性センサーとで検出タイミングや検出周期が異なっていても、時刻を揃えた第1補完データ及び第2補完データを含む計測データを出力することができる。したがって、外部装置は、第1補完データ及び第2補完データに基づく正しい演算を行うことができる。
【0154】
前記慣性センサーモジュールの一態様において、
前記第1慣性センサーは、第1軸、第2軸及び第3軸を検出軸とし、
前記第2慣性センサーは、前記第1軸を検出軸とし、
前記処理装置は、
前記第1検出信号に含まれる前記第1軸の検出信号を補正した第1軸第1計測データ、前記第1検出信号に含まれる前記第2軸の検出信号を補正した第2軸計測データ、前記第1検出信号に含まれる前記第3軸の検出信号を補正した第3軸計測データ、及び、前記第2検出信号に含まれる前記第1軸の検出信号を補正した第1軸第2計測データを算出し、
前記出力フォーマット選択情報が第4フォーマットを選択する情報であるとき、前記出力指示情報に基づいて前記第4フォーマットの前記計測データを出力し、
前記第4フォーマットの前記計測データは、前記第1軸第1計測データ、前記第2軸計測データ、前記第3軸計測データ、前記第1軸第2計測データ、前記第1検出信号に含まれる前記第1軸の検出信号である第1軸第1検出データ、前記第1検出信号に含まれる前記第2軸の検出信号である第2軸検出データ、前記第1検出信号に含まれる前記第3軸の検出信号である第3軸検出データ、及び、前記第2検出信号に含まれる前記第1軸の検出信号である第1軸第2検出データを含んでもよい。
【0155】
この慣性センサーモジュールによれば、第1軸第1検出データ、第1軸第1検出データを補正した第1軸第1計測データ、第2軸検出データ、第2軸検出データを補正した第2軸計測データ、第3軸検出データ、第3軸検出データを補正した第3軸計測データ、第1軸第2検出データ、及び、第1軸第2検出データを補正した第1軸第2計測データを含む計測データを出力することができる。したがって、外部装置は、例えば、第1軸第1計測データ、第2軸計測データ、第3軸計測データ及び第1軸第2計測データを、それぞれ、第1軸第1検出データ、第2軸検出データ、第3軸検出データ及び第1軸第2検出データと比較することにより、処理装置による補正処理が正常であるか否かの判定や、当該補正処理の程度の評価等を行うことができる。
【0156】
前記慣性センサーモジュールの一態様において、
前記第1慣性センサーは、第1軸、第2軸及び第3軸を検出軸とし、
前記第2慣性センサーは、前記第1軸を検出軸とし、
前記処理装置は、
前記出力フォーマット選択情報が第5フォーマットを選択する情報であるとき、前記第2検出信号に含まれる前記第1軸の検出信号、前記第1検出信号に含まれる前記第2軸の
検出信号及び前記第1検出信号に含まれる前記第3軸の検出信号に基づいて、姿勢、速度及び角度の少なくとも1つを含む第1慣性データを算出し、前記出力指示情報に基づいて前記第1慣性データを含む前記第5フォーマットの前記計測データを出力し、
前記出力フォーマット選択情報が第6フォーマットを選択する情報であるとき、前記第1検出信号に含まれる前記第1軸の検出信号、前記第1検出信号に含まれる前記第2軸の検出信号及び前記第1検出信号に含まれる前記第3軸の検出信号に基づいて、姿勢、速度及び角度の少なくとも1つを含む第2慣性データを算出し、前記出力指示情報に基づいて前記第2慣性データを含む前記第6フォーマットの前記計測データを出力してもよい。
【0157】
この慣性センサーモジュールによれば、外部装置は、第5フォーマットの計測データに含まれる第1慣性データに基づく演算を行うこともできるし、第6フォーマットの計測データに含まれる第2慣性データに基づく演算を行うこともできる。
【0158】
慣性計測システムの一態様は、
前記慣性センサーモジュールの一態様と、
前記計測データを監視し、監視結果に応じた前記出力フォーマット選択情報を前記処理装置に送信する監視装置と、
を備える。
【0159】
この慣性計測システムによれば、監視装置は、慣性センサーモジュールから出力される計測データの監視結果に基づいて、計測データのフォーマットを変更することができる。
【0160】
慣性計測システムの他の一態様は、
前記慣性センサーモジュールの一態様と、
前記計測データを監視し、監視結果に応じた前記出力フォーマット選択情報を前記処理装置に送信する監視装置と、
を備え、
前記監視装置は、
前記処理装置から出力される前記第1フォーマットの前記計測データに含まれる前記第1軸第1計測データと前記第1軸第2計測データとを比較し、比較結果に基づいて前記第2慣性センサーが故障しているか否かを判定し、判定結果に応じた前記出力フォーマット選択情報を前記処理装置に出力し、
前記監視装置が前記第2慣性センサーが故障していないと判定した場合に前記処理装置に出力する前記出力フォーマット選択情報と、前記監視装置が前記第2慣性センサーが故障していると判定した場合に前記処理装置に出力する前記出力フォーマット選択情報とが異なる。
【0161】
この慣性計測システムによれば、監視装置は、第2慣性センサーの故障の有無によって、慣性センサーモジュールから出力される計測データのフォーマットを変更することができる。したがって、外部装置は、第2慣性センサーの故障の有無によらず、慣性センサーモジュールから出力される計測データに基づく演算を行うことができる。そして、外部装置は計測データに基づく演算処理に専念することができるので、外部装置の処理を簡素化することができる。
【符号の説明】
【0162】
1…慣性計測システム、2…慣性センサーモジュール、3…ホストデバイス、4…監視装置、10…第1慣性センサー、11…第1センサー素子、12…第2センサー素子、13…第3センサー素子、14…第4センサー素子、15…第5センサー素子、16…第6センサー素子、17…処理回路、20…第2慣性センサー、21…センサー素子、22…処理回路、30…処理装置、31…デジタルインターフェース回路、32…処理回路、33
…ホストインターフェース回路、40…温度センサー、51…アウターケース、52…切欠き穴、53…第1凹部、53a…底部、54…第2凹部、54a…受け部、55…収納部、60…接合部材、65…回路基板、65a…第1面、65b…第2面、66…コネクター、70…インナーケース、71…開口部、73…第3凹部、80…ネジ、81…被装着体の被装着面、91…第3慣性センサー、92…第4慣性センサー、171…検出回路、172…インターフェース回路、221…検出回路、222…インターフェース回路、321…レジスター部、322…検出信号取得回路、323…演算回路、324…計測データ生成回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12