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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033793
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】投射型表示装置
(51)【国際特許分類】
   G09G 3/36 20060101AFI20240306BHJP
   G09G 3/20 20060101ALI20240306BHJP
   G02F 1/133 20060101ALI20240306BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20240306BHJP
   H04N 5/74 20060101ALI20240306BHJP
   G03B 21/00 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
G09G3/36
G09G3/20 680C
G09G3/20 650C
G09G3/20 611E
G09G3/20 612R
G02F1/133 550
G02F1/13 505
H04N5/74 G
G03B21/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137622
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】青木 透
(72)【発明者】
【氏名】保坂 宏行
(72)【発明者】
【氏名】小室 佑介
【テーマコード(参考)】
2H088
2H193
2K203
5C006
5C058
5C080
【Fターム(参考)】
2H088EA14
2H088EA20
2H088HA06
2H088HA08
2H088HA13
2H088HA21
2H088HA28
2H088MA01
2H088MA03
2H088MA20
2H193ZA07
2H193ZD37
2H193ZE04
2H193ZE40
2H193ZF44
2H193ZP11
2H193ZP12
2H193ZP16
2H193ZR04
2K203FA03
2K203FA23
2K203FA34
2K203FA43
2K203FA62
2K203GB02
2K203GC14
2K203HB08
2K203MA01
2K203MA09
5C006AA16
5C006AA22
5C006AC25
5C006AF44
5C006AF47
5C006BB16
5C006BC03
5C006BC11
5C006BF31
5C006EA01
5C006EC11
5C006FA23
5C006FA34
5C058AA18
5C058AB02
5C058AB03
5C058BA25
5C058EA02
5C058EA26
5C058EA41
5C080AA10
5C080BB05
5C080CC03
5C080DD06
5C080DD07
5C080EE29
5C080FF11
5C080JJ01
5C080JJ02
5C080JJ03
5C080JJ04
5C080JJ06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】特定の表示パターンが表れた場合における表示品位の低下を抑える。
【解決手段】投射型表示装置は、液晶パネルと第1単位期間から第n(nは2以上の整数)単位期間までのn個の単位期間毎にシフトする光路シフト素子と、液晶パネルおよび光路シフト素子を制御する表示制御回路と、を含む。表示制御回路は、奇数フレーム期間における4個の単位期間のうち単位期間f1-1および偶数フレーム期間における4個の単位期間のうち単位期間f2-1において、それぞれ同一のデータ信号を液晶パネルに供給し、投射画素を同位置に制御し、奇数フレーム期間の単位期間f1-2から単位期間f1-4までにおいてシフト前の投射画素からシフト後の投射画素に向かうシフト方向が偶数フレーム期間の単位期間f2-2から単位期間f2-4までにおいてシフト前の投射画素からシフト後の投射画素に向かうシフト方向と反対方向になるように光路シフト素子を制御する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネル画素を有する液晶パネルと、
前記パネル画素から投射された投射画素の位置を、1フレーム期間に含まれる、第1単位期間から第n(nは2以上の整数)単位期間までのn個の単位期間毎にシフトする光路シフト素子と、
前記液晶パネルおよび前記光路シフト素子を制御する表示制御回路と、
を含み、
前記表示制御回路は、
映像データを構成する画素データに対応したデータ信号を前記単位期間毎に前記パネル画素に供給し、
前記光路シフト素子に対し、前記投射画素の位置のシフトを前記単位期間毎に制御し、
第1フレーム期間におけるn個の単位期間のうち先頭の第1単位期間、および、前記第1フレーム期間の後の第2フレーム期間におけるn個の単位期間のうち先頭の第1単位期間において、それぞれ同一の画素データに対応したデータ信号を前記液晶パネルに供給し、前記投射画素の位置が同位置になるように制御し、
前記第1フレーム期間の第2単位期間から第n単位期間までにおいてシフト前の投射画素の位置からシフト後の投射画素の位置に向かうシフト方向が前記第2フレーム期間の第2単位期間から第n単位期間までにおいてシフト前の投射画素の位置からシフト後の投射画素の位置に向かうシフト方向と反対方向になるように前記光路シフト素子を制御する
ことを特徴とする投射型表示装置。
【請求項2】
前記映像データを構成する画素データは、
第1軸および第2軸に沿って配列し、
前記光路シフト素子は、
前記単位期間毎に前記投射画素を、
前記第1軸に沿った方向または前記第2軸に沿った方向にシフトする
ことを特徴とする請求項1に記載の投射型表示装置。
【請求項3】
前記nは4であり、
前記光路シフト素子は、
前記投射画素の位置を、
前記第1フレーム期間において、
第1単位期間から第2単位期間までにおいて前記第1軸に沿った一方方向にシフトし、
第2単位期間から第3単位期間までにおいて前記第2軸に沿った一方方向にシフトし、
第3単位期間から第4単位期間までにおいて前記第1軸に沿った他方方向にシフトし、
第4単位期間から前記第2フレーム期間の第1単位期間までにおいて前記第2軸に沿った他方方向にシフトする
ことを特徴とする請求項2に記載の投射型表示装置。
【請求項4】
前記映像データを構成する画素データは、
第1軸および第2軸に沿った配列し、
前記光路シフト素子は、
前記単位期間毎に前記投射画素の位置を、
前記第1軸に沿った方向、前記第1軸と前記第2軸と交差する第3軸に沿った方向、または、前記第1軸と前記第2軸と前記第3軸と交差する第4軸に沿った方向にシフトする
ことを特徴とする請求項1に記載の投射型表示装置。
【請求項5】
前記nは4であり、
前記光路シフト素子は、
前記投射画素の位置を、
前記第1フレーム期間において、
第1単位期間から第2単位期間までにおいて前記第3軸に沿った一方方向にシフトし、
第2単位期間から第3単位期間までにおいて前記第1軸に沿った一方方向にシフトし、
第3単位期間から第4単位期間までにおいて前記第4軸に沿った一方方向にシフトし、
第4単位期間から前記第2フレーム期間の第1単位期間までにおいて前記第1軸に沿った一方方向にシフトする
ことを特徴とする請求項4に記載の投射型表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投射型表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スクリーン等に、液晶パネルなどにより作成された画像光を投射する投射型表示装置では、光路シフト素子によって解像度を擬似的に高める技術が知られている。詳細には、投射型表示装置では、液晶パネルにおける1つのパネル画素の投射位置が、1フレーム期間の複数の単位期間毎にシフトされて映像データにおける複数の画素データを表現する(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-107984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記技術では、映像データで指定される画像に特定の表示パターンが静止画として表れた場合に表示品位の低下が発生する、という課題がある。このような事情を考慮して、本開示のひとつの態様は、映像データで指定される画像に特定の表示パターンが表れた場合でも表示品位の低下を抑える技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る投射型表示装置は、パネル画素を有する液晶パネルと、前記パネル画素から投射された投射画素の位置を、1フレーム期間に含まれる、第1単位期間から第n(nは2以上の整数)単位期間までのn個の単位期間毎にシフトする光路シフト素子と、前記液晶パネルおよび前記光路シフト素子を制御する表示制御回路と、を含み、前記表示制御回路は、映像データを構成する画素データに対応したデータ信号を前記単位期間毎に前記パネル画素に供給し、前記光路シフト素子に対し、前記投射画素の位置のシフトを前記単位期間毎に制御し、第1フレーム期間におけるn個の単位期間のうち先頭の第1単位期間、および、前記第1フレーム期間の後の第2フレーム期間におけるn個の単位期間のうち先頭の第1単位期間において、それぞれ同一の画素データに対応したデータ信号を前記液晶パネルに供給し、前記投射画素の位置が同位置になるように制御し、前記第1フレーム期間の第2単位期間から第n単位期間までにおいてシフト前の投射画素の位置からシフト後の投射画素の位置に向かうシフト方向が前記第2フレーム期間の第2単位期間から第n単位期間までにおいてシフト前の投射画素の位置からシフト後の投射画素の位置に向かうシフト方向と反対方向になるように前記光路シフト素子を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態に係る投射型表示装置を示す図である。
図2】投射型表示装置の構成を示すブロック図である。
図3】投射型表示装置における液晶パネルの構成を示す斜視図である。
図4】液晶パネルの構造を示す断面図である。
図5】液晶パネルの電気的な構成を示すブロック図である。
図6】液晶パネルにおける画素回路の構成を示す図である。
図7】投射型表示装置におけるフレーム期間と単位期間とを示す図である。
図8】第1実施形態における光路シフト素子の動作を示す図である。
図9】画素データの配列とパネル画素の配列との関係等を示す図である。
図10】第1実施形態において各フレーム期間における画素データとパネル画素との対応関係を示す図である。
図11】第1実施形態においてパネル画素に供給される画素データの順番を示す図である。
図12】第1実施形態において奇数フレーム期間の映像画素とパネル画素と投射位置との関係を示す図である。
図13】第1実施形態において偶数フレーム期間の映像画素とパネル画素と投射位置との関係を示す図である。
図14】映像データにおける特定パターンを示す図である。
図15】第1実施形態において特定パターンを表示する際のパネル画素の変化を示す図である。
図16】第1比較例と第1実施形態における投射画像の部分拡大図である。
図17】第2比較例において各フレーム期間における映像画素とパネル画素との対応関係を示す図である。
図18】第2比較例と第1実施形態と第2実施形態とにおけるフリッカーを説明するための図である。
図19】第2実施形態における光路シフト素子の動作を示す図である。
図20】第2実施形態においてパネル画素に供給される画素データの順番を示す図である。
図21】第2実施形態において奇数フレーム期間の映像画素とパネル画素と投射位置との関係を示す図である。
図22】第2実施形態において偶数フレーム期間の映像画素とパネル画素と投射位置との関係を示す図である。
図23】第2実施形態において特定パターンを表示する際のパネル画素の変化を示す図である。
図24】第2実施形態における投射画像の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の電気光学装置について図面を参照して説明する。なお、各図において、各部の寸法および縮尺は、実際のものと適宜に異ならせてある。また、以下に述べる実施の形態は、好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本開示の範囲は、以下の説明において特に本開示を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0008】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る投射型表示装置1の光学的な構成を示す図である。図に示されるように、投射型表示装置1は、液晶パネル100R、100Gおよび100Bを含む。また、投射型表示装置1の内部には、ハロゲンランプ等の白色光源からなるランプユニット2102が設けられている。このランプユニット2102から射出された投射光は、内部に配置された3枚のミラー2106および2枚のダイクロイックミラー2108によって、赤(R)、緑(G)および青(B)の3原色に分離される。このうち、Rの光は液晶パネル100Rに、Gの光は液晶パネル100Gに、Bの光は液晶パネル100Bに、それぞれ入射する。
なお、Bの光路は、Rの光路およびGの光路と比較して長いので、Bの光路での損失を防ぐ必要がある。このため、Bの光路には、入射レンズ2122、リレーレンズ2123および出射レンズ2124からなるリレーレンズ系2121が設けられる。
【0009】
液晶パネル100Rは、複数の画素回路を有する。複数の画素回路の各々は、それぞれ液晶素子を含む。液晶パネル100Rの液晶素子は、後述するようにRに対応するデータ信号に基づいて駆動されることによって、当該データ信号の電圧に応じた透過率となる。
このため、液晶パネル100Rでは、液晶素子の透過率を個別に制御することによって、Rの透過像が生成される。同様に、液晶パネル100Gでは、Gに対応するデータ信号に基づいてGの透過像が生成され、液晶パネル100Bでは、Bに対応するデータ信号に基づいてBの透過像が生成される。
【0010】
液晶パネル100R、100Gおよび100Bによってそれぞれ生成された各色の透過像は、ダイクロイックプリズム2112に三方向から入射する。ダイクロイックプリズム2112において、RおよびBの光は90度に屈折する一方、Gの光は直進する。したがって、ダイクロイックプリズム2112が各色の画像を合成する。ダイクロイックプリズム2112による合成像は光路シフト素子230を介して投射レンズ2114に入射する。
投射レンズ2114は、光路シフト素子230を介した合成像を、スクリーンScrに拡大して投射する。
【0011】
光路シフト素子230は、ダイクロイックプリズム2112から出射される合成像をシフトする。詳細には、光路シフト素子230は、スクリーンScrに投射される画像を、投射面に対し左右方向または/および下方向にシフトする。
【0012】
なお、液晶パネル100R、100Bによる透過像は、ダイクロイックプリズム2112により反射した後に投射されるのに対し、液晶パネル100Gによる透過像は直進して投射される。したがって、液晶パネル100R、100Bによる各透過像は、液晶パネル100Gの透過像に対して左右反転した関係となる。
説明の便宜のため、投射型表示装置1からスクリーンScrの投射面を見た場合に、左右方向をX軸とし、上下方向をY軸とする。なお、X軸に沿った左右方向のうち、右方向をX方向とし、左方向をX方向の反対方向とする。また、Y軸に沿った上下方向のうち、下方向をY方向とし、上方向をY方向の反対方向とする。投射型表示装置1の投射方向をZ方向とする。
なお、第1実施形態においてY軸が第1軸の一例であり、X軸が第2軸の一例である。
【0013】
図2は、投射型表示装置1の電気的な構成を示すブロック図である。図に示されるように、投射型表示装置1は、表示制御回路20と、上述した液晶パネル100R、100Gおよび100Bと、光路シフト素子230とを含む。
【0014】
図示省略されたホスト装置等の上位装置から、映像データVid-inが同期信号Syncに同期して供給される。映像データVid-inは、表示すべき画像における画素の階調レベルを、RGB毎に例えば8ビットで指定する。
【0015】
なお、映像データVid-inで指定される画像の画素を映像画素と表記し、映像画素のデータを画素データと表記し、液晶パネル100R、100Gおよび100Bによる合成像の画素をパネル画素と表記する。また、光路シフト素子230によってシフトされて、スクリーンScrに投射されるパネル画素の位置を、投射位置と表記する。
液晶パネル100R、100Gおよび100Bの合成像では、パネル画素が縦方向および横方向にわたってマトリクス状に配列する。本実施形態において、映像データVid-inで階調レベルが指定される映像画素の配列は、液晶パネル100R、100Gまたは100Bにより合成したパネル画素の配列と比較して、縦方向で2倍、横方向で2倍となっている。
【0016】
本実施形態において、スクリーンScrに投射されるカラー画像は、液晶パネル100R、100Gおよび100Bの各透過像を合成することで表現される。したがって、カラー画像の最小単位である画素は、液晶パネル100Rによる赤の副画素、液晶パネル100Gによる緑の副画素、および、液晶パネル100Bによる青の副画素に分けることができる。ただし、液晶パネル100R、100Gおよび100Bにおける副画素について、色について特定する必要がない場合や、単に明暗のみを問題とする場合等では、副画素と敢えて表記する必要がない。そこで本説明では、液晶パネル100R、100Gおよび100Bにおける表示単位についても、パネル画素とする。
【0017】
同期信号Syncには、映像データVid-inの垂直走査開始を指示する垂直同期信号や、水平走査開始を指示する水平同期信号、および、映像データVid-inにおける映像画素の1つ分のタイミングを示すクロック信号が含まれる。
【0018】
表示制御回路20は、処理回路22、変換回路23R、23Gおよび23Bを含む。
処理回路22は、上位装置からの映像データVid-inを、1または2以上のフレーム期間分を蓄積した後に、光路シフト素子230による投射位置に対応する映像画素の画素データを読み出し、RGB成分別に出力する。なお、処理回路22から出力される画素データVのうち、Rの成分を画素データVad_Rと表記し、Gの成分を画素データVad_Gと表記し、Bの成分を画素データVad_Bと表記する。
【0019】
投射型表示装置1では、1フレーム期間を4分割した単位期間毎に投射位置が変化するが、連続する2フレーム期間における8つの単位期間では、投射位置として8箇所とすることが可能である。ただし、本実施形態では、8つの単位期間における投射位置を後述するように7箇所とする。
各単位期間は、映像データVid-inで指定される1フレーム期間の画像の解像度を1/4に落とした画像を、液晶パネル100R、100Gおよび100Bによる合成画像でユーザに視認させるための期間である。
【0020】
処理回路22は、各単位期間において光路シフト素子230による投射位置を制御する。詳細には、処理回路22は、光路シフト素子230に対し、X軸に沿った方向のシフトを制御信号P_xで制御し、Y軸に沿った方向のシフトを制御信号P_yで制御する。
なお、単位期間毎の投射位置、および、パネル画素が各投射位置に対応して映像データVid-idで指定される映像画素のうち、どの映像画素を表現するかの詳細については後述する。
また、処理回路22は、液晶パネル100R、100Gおよび100Bを単位期間毎に制御するための制御信号Ctrを生成する。
【0021】
変換回路23Rは、画素データVad_Rをアナログ電圧のデータ信号Vid_Rに変換して液晶パネル100Rに供給する。変換回路23Gは、画素データVad_Gをアナログ電圧のデータ信号Vid_Gに変換して液晶パネル100Gに供給する。変換回路23Bは、画素データVad_Bをアナログ電圧のデータ信号Vid_Bに変換して液晶パネル100Bに供給する。
【0022】
次に、液晶パネル100R、100Gおよび100Bについて説明する。液晶パネル100R、100Gおよび100Bについては、入射する光の色、すなわち波長だけが異なり、構造的には共通である。そこで、液晶パネル100R、100Gおよび100Bについては、符号を100として、色を特定しないで一般的に説明する。
【0023】
図3は、液晶パネル100の要部を示す図であり、図4は、図3におけるH-h線で切断した断面図である。
これらの図に示されるように、液晶パネル100では、画素電極118が設けられた素子基板100aと、コモン電極108が設けられた対向基板100bとが、一定の間隙を保ちつつ、互いに電極形成面が対向するようにシール材90によって貼り合わせられ、この間隙に液晶105が封入されている。
【0024】
素子基板100aおよび対向基板100bとしては、それぞれガラスや石英などの光透過性を有する基板が用いられる。図3に示されるように、素子基板100aにおける一辺は、対向基板100bから張り出している。この張り出した領域に、図において横方向に沿って複数の端子106が設けられている。複数の端子106には、図示省略されたFPC(Flexible Printed Circuits)基板の一端が接続される。なお、当該FPC基板の他端は、表示制御回路20に接続されて、上述した各種の信号などが供給される。
【0025】
素子基板100aにおいて対向基板100bに向かう面には、画素電極118が、例えばITO(Indium Tin Oxide)などの透明性を有する導電層のパターニングによって形成される。
また、素子基板100aの対向面および対向基板100bの対向面には、電極以外にも様々な要素が設けられるが、図では省略されている。
【0026】
図5は、液晶パネル100の電気的な構成を示すブロック図である。液晶パネル100には、表示領域10の周縁に、走査線駆動回路130およびデータ線駆動回路140が設けられる。
【0027】
液晶パネル100の表示領域10においては、画素回路110がマトリクス状に配列される。詳細には、表示領域10において、複数本の走査線12が図において横方向に延在して設けられ、また、複数本のデータ線14が縦方向に延在し、かつ、走査線12と互いに電気的な絶縁を保って設けられる。そして、複数本の走査線12と複数本のデータ線14との交差に対応して画素回路110がマトリクス状に設けられる。
【0028】
走査線12の本数をmとし、データ線14の本数をnとした場合、画素回路110は、縦m行×横n列でマトリクス状に配列する。m、nは、いずれも2以上の整数である。走査線12と画素回路110とにおいて、マトリクスの行を区別するために、図において上から順に1、2、3、…、(m-1)、m行と呼ぶ場合がある。同様にデータ線14および画素回路110において、マトリクスの列を区別するために、図において左から順に1、2、3、…、(n-1)、n列と呼ぶ場合がある。
【0029】
走査線駆動回路130は、表示制御回路200による制御にしたがって走査線12を例えば1、2、3、…、m行目という順番で1本ずつ選択し、選択した走査線12への走査信号をHレベルとする。なお、走査線駆動回路130は、選択した走査線12以外の走査線12への走査信号をLレベルとする。
データ線駆動回路140は、処理回路220R、220Gまたは220Bのうち、対応する色の回路から供給されたデータ信号を1行分ラッチするとともに、走査線12への走査信号がHレベルとなった期間において、当該走査線12に位置する画素回路110に、データ線14を介して出力する。
【0030】
図6は、隣り合う2本の走査線12と、隣り合う2本のデータ線14との交差に対応する縦2行横2列の計4個の、画素回路110の等価回路を示す図である。
図に示されるように、画素回路110は、トランジスター116と液晶素子120とを含む。トランジスター116は、例えばnチャネル型の薄膜トランジスターである。画素回路110において、トランジスター116のゲートノードは、走査線12に接続される一方、そのソースノードはデータ線14に接続され、そのドレインノードは、平面視で正方形形状の画素電極118に接続される。
【0031】
画素電極118に対向するようにコモン電極108が全画素に対して共通に設けられる。コモン電極108には電圧LCcomが印加される。そして、画素電極118とコモン電極108との間には上述したように液晶105が挟持される。したがって、画素回路110毎に、画素電極118およびコモン電極108によって液晶105を挟持した液晶素子120が構成される。
また、液晶素子120に対して並列に蓄積容量109が設けられる。蓄積容量109において、一端が画素電極118に接続され、他端が容量線107に接続されている。容量線107は、時間的に一定の電圧、例えばコモン電極108への印加電圧と同じ電圧LCcomが印加される。画素回路110は、走査線12の延在方向である横方向とデータ線14の延在方向である縦方向とにわたってマトリクス状に配列するので、画素回路110に含まれる画素電極118についても縦方向および横方向にわたって配列する。
【0032】
走査信号がHレベルとなった走査線12では、当該走査線12に対応して設けられる画素回路110のトランジスター116がオンする。トランジスター116のオンにより、データ線14と画素電極118とが電気的に接続された状態となるので、データ線14に供給されたデータ信号が、オンしたトランジスター116を介して画素電極118に到達する。走査線12がLレベルになると、トランジスター116はオフになるが、画素電極118に到達したデータ信号の電圧は、液晶素子120の容量性および蓄積容量109によって保持される。
【0033】
周知のように、液晶素子120では、画素電極118およびコモン電極108によって生じる電界に応じて液晶分子の配向が変化する。したがって、液晶素子120は、印加された電圧の実効値に応じた透過率となる。
なお、液晶素子120において画素として機能する領域、すなわち、電圧の実効値に応じた透過率となる領域は、素子基板100aおよび対向基板100bを平面視したときに、画素電極118とコモン電極108とが重なる領域である。画素電極118は、平面視で正方形であるので、液晶パネル100による画素の形状も正方形となる。
また、本実施形態では、液晶素子120への印加電圧が高くなるにつれて、透過率が高くなるノーマリーブラックモードであるとする。
【0034】
液晶素子120の画素電極118にデータ信号を供給する動作が、1つの単位期間において1、2、3、…、m行目という順番で実行される。これによりm行n列で配列する画素回路110の液晶素子120の各々にデータ信号に応じた電圧が保持されて、各液晶素子120が目的とする透過率となり、m行n列で配列する液晶素子120によって、対応する色の透過像が生成される。
このように透過像の生成がRGB毎に実行されて、RGBを合成したカラー画像がスクリーンScrに投射される。
1つの単位期間に対応して処理回路22から出力される映像画素の画素データVad_R、Vad_GおよびVad_Bは、当該単位期間に対応する映像画素の画素データである。このため、当該単位期間では投射位置に対応したカラーの合成画像が、当該投射位置において投射される。
【0035】
上述したように、映像データVid-inにおける映像画素の配列は、液晶パネル100R、100Gおよび100Bにおけるパネル画素の配列であるm行n列に対して縦方向で2倍、横方向で2倍であり、2m行2n列である。
換言すれば、パネル画素の配列は、映像画素の配列に比べて縦方向で1/2倍、横方向で1/2倍である。そこで、本実施形態では、1フレーム期間でみて、1つのパネル画素を、縦2地点×横2地点の計4箇所でシフトさせることによって、1つのパネル画素が、映像データVid-inで指定される4つの映像画素を示しているかのように視認させる。
【0036】
ただし、単純に、1つのパネル画素を1フレーム期間において4箇所にシフトさせて映像画素を表現する構成では、後述するように、表示品位が低下しまう場合がある。このため、本実施形態では、1つのパネル画素の投射位置が2フレーム期間の8つの単位期間毎にシフトされて映像画素を表現し、さらに、奇数フレーム期間において単位期間毎に投射位置をシフトさせる方向と偶数フレーム期間において単位期間毎に投射位置をシフトさせる方向とを反対方向にした。
【0037】
図7は、本実施形態におけるフレームと単位期間との関係を説明するための図である。図に示されるように、本実施形態では、2フレーム(2F)期間は、先行する奇数フレーム(Odd Frame)期間と後行する偶数フレーム(Even Frame)期間とに分けられる。
【0038】
奇数フレーム期間は、4つの単位期間に分割される。奇数フレーム期間における4つの単位期間を区別するために便宜的に、符号が、時間の順にf1-1、f1-2、f1-3、f1-4と付与される。偶数フレーム期間も同様に4つの単位期間に分割される。偶数フレーム期間における4つの単位期間を区別するために便宜的に、符号が、時間の順にf2-1、f2-2、f2-3、f2-4と付与される。
【0039】
なお、奇数フレーム期間および偶数フレーム期間に含まれる単位期間の個数の「4」は、2以上の整数nの一例である。また、奇数フレーム期間は第1フレーム期間の一例であり、偶数フレーム期間は第2フレーム期間の一例である。単位期間f1-1およびf2-1が第1単位期間の一例であり、単位期間f1-2およびf2-2が第2単位期間の一例であり、単位期間f1-3およびf2-3が第3単位期間の一例であり、単位期間f1-4およびf2-4が第4単位期間の一例である。
【0040】
1フレーム期間とは、上位装置からの映像データVid-inで示される画像の1コマ分が供給される期間であり、同期信号Syncに含まれる垂直同期信号の周波数が60Hzである場合、1周期の16.7ミリ秒である。この場合、各単位期間の長さは、それぞれ1フレーム期間の長さの1/4である4.17ミリ秒である。
【0041】
図8は、光路シフト素子230に供給される制御信号P_xおよびP_yの波形の一例を示す図である。
光路シフト素子230は、スクリーンScrに投射される画像を、投射面に対しX軸およびY軸にシフトする。便宜的に当該シフトの量については、スクリーンScrにおいて投写される画素の大きさ、すなわちパネル画素の大きさに換算して説明する。
【0042】
制御信号P_xおよびP_yは、単位期間f1-1~f1-4およびf2-1~f2-4における後端期間以外において+A、0または-Aの三値のいずれかのレベルをとる。制御信号P_xおよびP_yのレベルは、後端期間において変化する。後端期間とは、垂直走査帰線期間に相当する期間である。
なお、制御信号P_xまたはP_yのレベルは、連続する2つの単位期間に跨がってレベルが一定となる場合もある。
【0043】
説明の便宜上、奇数フレーム期間における単位期間f1-1のうち、後端期間以外の期間における投射位置、すなわち、制御信号P_xおよびP_yのレベルが0である期間における投射位置を規準位置とする。
光路シフト素子230は、制御信号P_xのレベルが+Aであれば、投射位置を基準位置からX方向にパネル画素の半分だけシフトさせ、制御信号P_xのレベルが-Aであれば、投射位置を基準位置からX方向の反対方向にパネル画素の半分だけシフトさせる。
光路シフト素子230は、制御信号P_yのレベルが+Aであれば、投射位置を基準位置からY方向にパネル画素の半分だけシフトさせ、制御信号P_yのレベルが-Aであれば、投射位置を基準位置からY方向の反対方向にパネル画素の半分だけシフトさせる。
【0044】
したがって、例えば制御信号P_xのレベルが+Aであり、かつ、制御信号P_xのレベルが+Aであれば、光路シフト素子230は、投射位置を基準位置から、X方向およびY方向にそれぞれパネル画素の半分だけシフトさせる。
【0045】
なお、図8において各単位期間の後端期間に示される矢印は、当該後端期間において制御信号P_xおよびP_yのレベルが変化または維持した場合に、投射位置がどの方向にシフトするのかを示す。
また、光路シフト素子230による投射位置のシフトは、制御信号P_xおよびP_yのレベル通りではなく、時間遅れを伴う場合がある。
【0046】
次に、奇数フレーム期間および偶数フレーム期間において、液晶パネル100によるパネル画素が、映像データVid-inの映像画素のうち、どの映像画素を表現するかについて説明する。
なお、パネル画素が、ある映像画素を表現する、とは、当該パネル画素が当該映像画素に対応した画素データで指定された透過率になる状態になることをいう。
【0047】
図9における左欄は、映像画素の配列を説明するために、映像データVid-inで示される映像画像のうち、一部だけを抜き出した図である。また、同図における右欄は、パネル画素のうち、当該左欄における映像画素の配列に対応したパネル画素の配列を示す図である。
【0048】
なお、図9における左欄では、映像データVid-inの映像画素を区別するために、便宜的に符号として1行目にA11、B11、A21、B21、A31、B31が、それぞれ付与される。2~5行目についても同様に、図に示されるように符号がそれぞれ付与される。
図9における右欄では、パネル画素を区別するために、便宜的に符号として1行目にp11、p21、p31が、2行目にp12、p22、p32が、それぞれ付与される。
【0049】
図10は、パネル画素が、奇数フレーム期間と偶数フレーム期間とにおいて表現する映像画素を示す図である。なお、図において縦2行×横2列の計4個の映像画素を囲む太線の黒枠は、1つのパネル画素が表現する映像画素のまとまりを示す。1つのパネル画素が表現する4つの映像画素は、奇数フレーム期間と偶数フレーム期間とで異なる。詳細には、ある1つのパネル画素が偶数フレーム期間において表現する2×2の映像画素は、当該パネル画素が奇数フレーム期間において表現する2×2の映像画素に対して、本実施形態では、右方向に映像画素で1画素および下方向に映像画素で1画素ずれた関係にある。
【0050】
図11は、特にパネル画素p11に着目し、当該パネル画素p11が奇数フレーム期間と偶数フレーム期間とにおいて表現する映像画素の順番を示す図である。図に示されるように、パネル画素p11は、奇数フレーム期間の単位期間f1-1~1-4において、順に映像画素C11、B11、A11、D11を表現し、偶数フレーム期間の単位期間f2-1~2-4において、順に映像画素C11、B12、A22、D21を順に表現する。換言すれば、パネル画素p11は、奇数フレーム期間において映像画素を表現する順序と、偶数フレーム期間において映像画素を表現する順序とは、映像画素C11を基準にして点対称の関係にある。
【0051】
このため、例えば奇数フレーム期間の単位期間f1-2から単位期間f1-3までにおいてシフト前の投射画素からシフト後の投射画素に向かうシフト方向と、偶数フレーム期間の単位期間f2-2から単位期間f2-3までにおいてシフト前の投射画素からシフト後の投射画素に向かうシフト方向と、反対方向になる。また、例えば奇数フレーム期間の単位期間f1-3から単位期間f1-4までにおいてシフト前の投射画素からシフト後の投射画素に向かうシフト方向と、偶数フレーム期間の単位期間f2-3から単位期間f2-4までにおいてシフト前の投射画素からシフト後の投射画素に向かうシフト方向とについても、反対方向になる。
【0052】
図12および図13は、第1実施形態に係る投射型表示装置1において、パネル画素が、どの映像画素を、どの投射位置で表現するのかを示す図である。詳細には、図12は、図9における6個のパネル画素が、図9の左欄における映像画素を、奇数フレーム期間の単位期間f1-1~f1-4において、どの投射位置で表現するのかを示す図である。また、図13は、パネル画素の6個が、映像画素を、偶数フレーム期間の単位期間f2-1~f2-4において、どの投射位置で表現するのかを示す図である。
【0053】
便宜的に奇数フレーム期間の単位期間f1-1における投射位置を基準位置とする。図12に示されるように、奇数フレーム期間の単位期間f1-1において、パネル画素p11、p21、p31、p12、p22およびp32は、ハッチングが付された映像画素C11、C21、C31、C12、C22およびC32をそれぞれ表現する。
【0054】
単位期間f1-1の後端期間(垂直帰線期間)において、光路シフト素子230は、投射位置を、破線で示される単位期間f1-1における基準位置から、図において上方向(Y方向の反対方向)にパネル画素の0.5画素分シフトさせる。次の単位期間f1-2では、パネル画素p11、p21、p31、p12、p22およびp32は、ハッチングが付された映像画素B11、B21、B31、B12、B22およびB32をそれぞれ表現する。
単位期間f1-2の後端期間において、光路シフト素子230は、投射位置を、破線で示される単位期間f1-2における投射位置から、図において左方向(X方向の反対方向)にパネル画素の0.5画素分シフトさせる。次の単位期間f1-3では、パネル画素p11、p21、p31、p12、p22およびp32は、ハッチングが付された映像画素A11、A21、A31、A12、A22およびA32をそれぞれ表現する。
単位期間f1-3の後端期間において、光路シフト素子230は、投射位置を、破線で示される単位期間f1-3における投射位置から、図において下方向(Y方向)にパネル画素の0.5画素分シフトさせる。次の単位期間f1-4では、パネル画素p11、p21、p31、p12、p22およびp32は、ハッチングが付された映像画素D11、D21、D31、D12、D22およびD32をそれぞれ表現する。
【0055】
単位期間f1-4の後端期間において、光路シフト素子230は、投射位置を、破線で示される単位期間f1-4における投射位置から、図において右方向(X方向)にパネル画素の0.5画素分シフトさせて基準位置に戻す。偶数フレーム期間における最初の単位期間f2-1では、パネル画素p11、p21、p31、p12、p22およびp32は、ハッチングが付された映像画素C11、C21、C31、C12、C22およびC32をそれぞれ表現する。すなわち、ある1つのパネル画素が単位期間1-1において表現する映像画素と、当該1つのパネル画素が単位期間2-1において表現する映像画素とは同一である。
単位期間f2-1の後端期間において、光路シフト素子230は、投射位置を、破線で示される単位期間f2-1における基準位置から、図において下方向(Y方向)にパネル画素の0.5画素分シフトさせる。次の単位期間f2-2では、パネル画素p11、p21、p31、p12、p22およびp32は、ハッチングが付された映像画素B12、B22、B32、B13、B23およびB33をそれぞれ表現する。
単位期間f2-2の後端期間において、光路シフト素子230は、投射位置を、破線で示される単位期間f2-2における投射位置から、図において右方向(X方向)にパネル画素の0.5画素分シフトさせる。また、単位期間f2-3では、パネル画素p11、p21、p31、p12、p22およびp32は、ハッチングが付された映像画素A22、A32、A42、A23、A33およびA42をそれぞれ表現する。
単位期間f2-3の後端期間において、光路シフト素子230は、投射位置を、破線で示される単位期間f2-3における投射位置から、図において上方向(Y方向の反対方向)にパネル画素の0.5画素分シフトさせる。次の単位期間f2-4では、パネル画素p11、p21、p31、p12、p22およびp32は、ハッチングが付された映像画素D21、D31、D41、D22、D32およびD42をそれぞれ表現する。
単位期間f2-4の後端期間において、光路シフト素子230は、投射位置を、破線で示される投射位置から、図において左方向(X方向の反対方向)にパネル画素の0.5画素分シフトさせて基準位置に戻す。
【0056】
次に、本実施形態において、映像データVid-inで指定される映像画像に特定パターンが表れた場合でも、表示品位の低下が抑えられる点について説明する。
【0057】
図14は、映像データVid-inで指定される映像画像に表れる特定パターンを示す図である。この図に示されるように、特定パターンとは、静止画像であって、例えば白の映像画素を背景として黒の映像画素による斜め45度のラインとするパターンである。
なお、静止画像である場合、奇数フレーム期間と偶数フレーム期間とで映像画素が同一になる。また、ここでいう白の映像画素とは、赤、緑および青の3原色についてそれぞれ最高(または最高に近い)の階調レベルが指定された映像画素をいう。また、黒の映像画素とは、赤、緑および青の3原色についてそれぞれ最低(または最低に近い)の階調レベルが指定された映像画素をいう。
【0058】
図15は、映像画素が特定パターンである場合に、奇数フレーム期間の単位期間f1-1~f1-4および偶数フレーム期間の単位期間f2-1~f2-4において、パネル画素が、どの映像画素を、どの投射位置で表現するのかを示す図である。
なお、図15では、図9と比較して、説明のためにY方向にパネル画素の1行分が追加されている。また、図15において太い破線は、単位期間f1-1および2-1において黒の映像画素C22を表現するパネル画素p22を示す。パネル画素p22が、奇数フレーム期間の単位期間f1-1~f1-4および偶数フレーム期間の単位期間f2-1~f2-4において、どの映像画素を、どの投射位置で表現するかについては、すでに図12および図13で説明した通りである。
【0059】
図15において、パネル画素p22が、単位期間f1-2およびf2-2において灰色で表されている(ハッチングが付されている)理由は、は次の通りである。一般に、液晶パネル100R、100Gおよび100Bにおける液晶素子の応答が遅い場合に黒から白に遷移する際、直ちに変化せずに、白および黒の間の灰を経て変化する。このため、黒から白に遷移するパネル画素は、黒から変化する単位期間において灰として視認される。
【0060】
第1実施形態における表示品位の低下が抑えられる点について言及する前に、第1比較例について説明する。
第1実施形態では、フレーム期間が奇数フレーム期間と偶数フレーム期間と区別され、1個のパネル画素が表現する2×2の映像画素が、奇数フレーム期間と偶数フレーム期間とで異なっていた。第1比較例では、フレーム期間が奇数フレーム期間および偶数フレーム期間で区別されない。このため、第1比較例では、単一のフレーム期間が4つの単位期間に分けられて、当該4つの単位期間において1つのパネル画素がそれぞれ2×2の映像画素を表現する構成である。すなわち、第1比較例は、第1実施形態において奇数フレーム期間または偶数フレーム期間のどちらか一方のみとした構成である。ここでは、第1比較例を、便宜的に奇数フレーム期間のみの構成としている。第1比較例では、例えばパネル画素p22が、単位期間f1-1において映像画素C22を、単位期間f1-2において映像画素B22を、単位期間f1-3において映像画素C22を、単位期間f1-4において映像画素D22を、それぞれ表現する。
【0061】
図16の上欄は、図14で示される特定パターンを第1比較例によってスクリーンScrに投射した場合に、ユーザにどのように視認されるかを示す図である。第1比較例では、図15における単位期間f1-1からf1-4までの奇数フレーム期間の動作が繰り返される。この動作が繰り返されると、図16の上欄に示されように、スクリーンScrでは、4つの単位期間のうち、2回の割合で黒表示となる投射画素と、4つの単位期間のうち、1回の割合で黒表示となる投射画素と、4つの単位期間のうち、1回の割合で黒から白に遷移する際に表れる灰表示の投射画素(遷移画素)と、が表れる。
【0062】
図16の下欄は、特定パターンを第1実施形態に係る投射型表示装置1によってスクリーンScrに投射した場合に、ユーザにどのように視認されるかを示す図である。第1実施形態では、図15における奇数フレーム期間の単位期間f1-1からf1-4まで、および、偶数フレーム期間の単位期間f2-1からf2-4までの2フレーム期間を単位とした動作が繰り返される。
図16の下欄に示されように、スクリーンScrでは、8つの単位期間のうち、4回の割合で黒表示となる投射画素と、8つの単位期間のうち、2回の割合で黒表示となる投射画素と、8つの単位期間のうち、1回の割合で黒から白に遷移する際に表れる灰表示の投射画素(遷移部分)と、が表れる。
【0063】
第1実施形態において、8つの単位期間のうち4回の割合で黒表示となる投射画素の視認性は、第1比較例において、4つの単位期間のうち2回の割合で黒表示となる投射画素と視認性が同等である。また、第1実施形態において、8つの単位期間のうち2回の割合で黒表示となる投射画素の視認性は、第1比較例において、4つの単位期間のうち1の割合で黒表示となる投射画素の視認性と同等である。したがって、第1比較例と第1実施形態とにおいて、黒表示となる投射画素の視認性に相違はない。
【0064】
しかしながら、第1比較例では、4つの単位期間のうち1回の割合で発生する灰表示の投射画素が、次のフレーム期間においても同じ位置に表れる。このため、当該灰表示の投射画素は、8つの単位期間でみれば、同じ位置に2回表れることになる。
これに対して、第1実施形態では、8つの単位期間のうち1回の割合で発生する灰表示の投射画素が、異なる位置に表れる。このため、当該灰表示の投射画素は、8つの単位期間でみてば、異なる位置に1回ずつ表れることになる。すなわち、第1実施形態では、遷移部分である灰表示の投射画素が、第1比較例に対して分散するので、特定パターンを表示する場合に、表示品位の低下を抑えることができる。
【0065】
第1実施形態では、特定パターンを表示する場合における表示品位の低下が抑えられるとともに、フリッカーを低減することができるが、この点について言及する前に、第2比較例について説明する。
第1実施形態では、パネル画素p11が、図11に示されるように、奇数フレーム期間において枠Bk1に含まれる2×2の映像画素を、C11を始点として反転時計回りで順番に単位期間毎に表現し、偶数フレーム期間においても枠Bk2に含まれる2×2の映像画素を、C11を始点として反時計回りで順番に単位期間毎に表現する。
第2比較例では、パネル画素p11が、図17に示されるように、奇数フレーム期間において2×2の映像画素を、C11を始点として反転時計回りで順番に単位期間毎に表現する点では第1実施形態と共通であるが、偶数フレーム期間において、2×2の映像画素を、C11を始点として時計回りで順番に単位期間毎に表現する点において第1実施形態と相違する。
【0066】
図18は、フリッカーについて説明するための図である。
第2比較例および第1実施形態では、パネル画素p11が、奇数フレーム期間の単位期間f1-1~f1-4において順に、映像画素C11、B11、A11、D11を表現する点で共通である。第2比較例では、図18の上欄に示されるようにパネル画素p11が、偶数フレーム期間の単位期間f2-1~f2-4において順に、映像画素C11、D21、A22、B12を表現する。これに対し、第1実施形態では、図18の中欄に示されるようにパネル画素p11が、偶数フレーム期間の単位期間f2-1~f2-4において順に、映像画素C11、B12、A22、D21を表現する点において、第2比較例および第1実施形態が相違する。
【0067】
ここで、パネル画素p11が表現する映像画素のうち、例えば映像画素B11、B12に着目すると、当該パネル画素p11は、第2比較例では、奇数フレーム期間における第2番目の単位期間f1-2にて映像画素B11を表現し、次の偶数フレーム期間における第4番目の単位期間f2-4にて映像画素B12を表現する。このため、パネル画素p11は、映像画素B11を表現した後、6つの単位期間経過に映像画素B12を表現し、この後、2つの単位期間経過後に映像画素B11を再度表現し、以降、この繰り返しになる。したがって、第2比較例では、パネル画素p11によって映像画素B11およびB12が表現される時間の間隔が不均一になる。
映像画素B11およびB12では、静止画であれば階調レベルの相関性が高い。このため、パネル画素p11によって映像画素B11およびB12が表現されるの時間の間隔が不均一であれば、フリッカー、すなわち明滅として視認されやすい。このような時間間隔が不均一で表現される映像画素は、奇数フレーム期間の単位期間f1-1および偶数フレーム期間の単位期間f2-1で表現される映像画素を除いたすべてであり、全映像画素の3/4に相当する。
【0068】
これに対し、第1実施形態では、パネル画素p11が、奇数フレーム期間における第2番目の単位期間f1-2にて映像画素B11を表現し、偶数フレーム期間における第2番目の単位期間f2-2にて映像画素B12を表現する。このため、パネル画素p11は、映像画素B11を表現した後、4つの単位期間経過に映像画素B12を表現し、この後、2つの単位期間経過後に映像画素B11を再度表現し、以降、この繰り返しになる。したがって、第1実施形態では、パネル画素p11によって映像画素B11およびB12が表現される時間の間隔が均一になる。第1実施形態では、パネル画素p11によって表現される他の映像画素C11を含め、A11・A22や、D11・D21についても同様に、時間の間隔が均一になる。すなわち、第1実施形態において、時間の間隔が均一で表現される映像画素は、映像画素のすべてである。このため、第1実施形態では、第2比較例と比較して、フリッカーを低減することができる。
【0069】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係る投射型表示装置1について説明する。第2実施形態は、第1実施形態に対し、奇数フレーム期間の単位期間f1-1~f1-4および偶数フレーム期間の単位期間f2-1~f2-4においてパネル画素が表現する映像画素の順番を変更するとともに、この順番に合わせて投射位置のシフト方向を変更したものである。
【0070】
図19は、第2実施形態において光路シフト素子230に供給される制御信号P_xおよびP_yの波形の一例を示す図であり、図20は、第2実施形態においてパネル画素p11が、奇数フレーム期間と偶数フレーム期間とにおいて表現する映像画素の順番を示す図である。
【0071】
光路シフト素子230に供給される制御信号P_xおよびP_yの波形は、図8に示される波形と異なるが、制御信号P_xおよびP_yが、単位期間f1-1~f1-4およびf2-1~f2-4における後端期間以外において+A、0または-Aの三値のいずれかをとる点、制御信号P_xおよびP_yのレベルが変化する期間が、単位期間f1-1~f1-4およびf2-1~f2-4における後端期間である点において第1実施形態と共通である。
【0072】
図20に示されるように第2実施形態において、パネル画素p11は、奇数フレーム期間の単位期間f1-1~1-4において、順に映像画素C11、A11、B11、D11を表現し、偶数フレーム期間の単位期間f2-1~2-4において、順に映像画素C11、A22、B12、D21を順に表現する。
【0073】
すなわち、パネル画素p11は、奇数フレーム期間では、枠Bk1に含まれる2×2の映像画素を、第1に映像画素C11、第2に、当該映像画素C11の対角に位置する映像画素A11、第3に、当該映像画素C11に対しX方向で隣に位置するB11、第4に、当該映像画素B11の対角に位置する映像画素D11という順番で表現する。
このため、第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、パネル画素p11が、枠Bk1において映像画素を表現する順序および枠Bk2において映像画素を表現する順序は、映像画素C11を基準にして点対称の関係にある。
【0074】
図21および図22は、第2実施形態に係る投射型表示装置1において、パネル画素が、どの映像画素を、どの投射位置で表現するのかを示す図である。
【0075】
図21に示されるように、奇数フレーム期間の単位期間f1-1において、パネル画素p11、p21、p31、p12、p22およびp32は、規準位置においてハッチングが付された映像画素C11、C21、C31、C12、C22およびC32をそれぞれ表現する。
単位期間f1-1の後端期間において、光路シフト素子230は、投射位置を、破線で示される単位期間f1-1における基準位置から、図において斜め左上方向にシフトさせる。なお、ここでいう斜め左上方向とは、X方向の反対方向にパネル画素の0.5画素分、かつ、Y方向の反対方向にパネル画素の0.5画素分シフトさせた場合の合成方向である。また、斜め左上の軸が、詳細にはY軸を反時計回りに45度回転させた軸が第3軸の一例である。
次の単位期間f1-2では、パネル画素p11、p21、p31、p12、p22およびp32は、ハッチングが付された映像画素A11、A21、A31、A12、A22およびA32をそれぞれ表現する。
単位期間f1-2の後端期間において、光路シフト素子230は、投射位置を、破線で示される単位期間f1-2における投射位置から、図において右方向(X方向)にパネル画素の0.5画素分シフトさせる。次の単位期間f1-3では、パネル画素p11、p21、p31、p12、p22およびp32は、ハッチングが付された映像画素B11、B21、B31、B12、B22およびB32をそれぞれ表現する。
単位期間f1-3の後端期間において、光路シフト素子230は、投射位置を、破線で示される単位期間f1-3における投射位置から、図において斜め左下方向にシフトさせる。なお、ここでいう斜め左下方向とは、X方向の反対方向にパネル画素の0.5画素分、かつ、Y方向にパネル画素の0.5画素分シフトさせた場合の合成方向である。また、斜め左下の軸が、詳細にはY軸を時計回りに45度回転させた軸が第4軸の一例である。
次の単位期間f1-4では、パネル画素p11、p21、p31、p12、p22およびp32は、ハッチングが付された映像画素D11、D21、D31、D12、D22およびD32をそれぞれ表現する。
【0076】
単位期間f1-4の後端期間において、光路シフト素子230は、投射位置を、破線で示される単位期間f1-4における投射位置から、図において右方向(X方向)にパネル画素の0.5画素分シフトさせて基準位置に戻す。偶数フレーム期間における最初の単位期間f2-1では、パネル画素p11、p21、p31、p12、p22およびp32は、ハッチングが付された映像画素C11、C21、C31、C12、C22およびC32をそれぞれ表現する。すなわち、第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、ある1つのパネル画素が単位期間1-1において表現する映像画素と、当該1つのパネル画素が単位期間2-1において表現する映像画素とは同一である。
単位期間f2-1の後端期間において、光路シフト素子230は、投射位置を、破線で示される単位期間f2-1における基準位置から、図において斜め右下方向にシフトさせる。なお、ここでいう斜め右下方向とは、X方向にパネル画素の0.5画素分、かつ、Y方向にパネル画素の0.5画素分シフトさせた場合の合成方向である。
次の単位期間f2-2では、パネル画素p11、p21、p31、p12、p22およびp32は、ハッチングが付された映像画素A22、A32、A42、A23、A33およびA43をそれぞれ表現する。
単位期間f2-2の後端期間において、光路シフト素子230は、投射位置を、破線で示される単位期間f2-2における投射位置から、図において左方向(X方向の反対方向)にパネル画素の0.5画素分シフトさせる。また、単位期間f2-3では、パネル画素p11、p21、p31、p12、p22およびp32は、ハッチングが付された映像画素B12、B22、B32、B13、B23およびB33をそれぞれ表現する。
単位期間f2-3の後端期間において、光路シフト素子230は、投射位置を、破線で示される単位期間f2-3における投射位置から、図において斜め右上方向にシフトさせる。なお、ここでいう斜め右上方向とは、X方向にパネル画素の0.5画素分、かつ、Y方向の反対方向にパネル画素の0.5画素分シフトさせた場合の合成方向である。
次の単位期間f2-4では、パネル画素p11、p21、p31、p12、p22およびp32は、ハッチングが付された映像画素D21、D31、D41、D22、D32およびD42をそれぞれ表現する。
単位期間f2-4の後端期間において、光路シフト素子230は、投射位置を、破線で示される投射位置から、図において左方向(X方向の反対方向)にパネル画素の0.5画素分シフトさせて基準位置に戻す。
【0077】
次に、第2実施形態において、映像データVid-inで指定される画像に特定パターンが表れた場合でも、表示品位の低下が抑えられる点について説明する。なお、ここでいう特定パターンとは、第1実施形態と同様に、図14に示される静止画像であって、白の映像画素を背景として黒の映像画素による斜め45度のラインとするパターンである。
【0078】
図23は、映像画素が特定パターンである場合に、奇数フレーム期間の単位期間f1-1~f1-4および偶数フレーム期間の単位期間f2-1~f2-4において、パネル画素が、どの映像画素を、どの投射位置で表現するのかを示す図である。
なお、図23では、図5と比較して、説明のためにY方向にパネル画素の1行分が追加されている。また、図23において太い破線は、単位期間f1-1および2-1において黒の映像画素C22を表現するパネル画素p22を示す。パネル画素p22が、奇数フレーム期間の単位期間f1-1~f1-4および偶数フレーム期間の単位期間f2-1~f2-4において、どの映像画素を、どの投射位置で表現するかについては、すでに図21および図22で説明した通りである。
【0079】
図23において、パネル画素p22が、単位期間f1-2、f1-3、f2-2およびf2-3おいて灰色で表されているのは、図15と同様に、黒から白に遷移する際に灰として視認される遷移画素である。
【0080】
図24は、第2実施形態において、図14で示される特定パターンを投射型表示装置1でスクリーンScrに投射した場合に、ユーザにどのように視認されるかを示す図である。
図に示されように、第2実施形態において、スクリーンScrでは、8つの単位期間のうち、4回の割合で黒表示となる投射画素と、8つの単位期間のうち、2回の割合で黒表示となる投射画素と、8つの単位期間のうち、2回の割合で灰表示の投射画素(遷移画素)と、8つの単位期間のうち、1回の割合で灰表示の投射画素と、が表れる。
【0081】
図16の上欄に示される第1比較例では、8つの単位期間のうち2回の割合で発生する灰表示の投射画素における間に白表示の投射画素が表れるので、いわゆるジャギーとして視認されやすい。
これに対して第2実施形態では、図24で示されるように8つの単位期間のうち2回の割合で発生する灰表示の投射画素における間に、8つの単位期間のうち1回の割合で発生する灰表示の投射画素が表れて、遷移画素が分散するので、ジャギーとして視認されにくい。
したがって、第2実施形態においても、特定パターンを表示する場合に、表示品位の低下を抑えることができる。
なお、第2実施形態では、8つの単位期間のうち1回の割合で発生する灰表示の投射画素はY方向2つ連続するが、当該灰色は白に近いので、表示品位の低下に繋がりにくい。
【0082】
図18の下欄は、第2実施形態におけるフリッカー低減を説明するための図である。
第2実施形態では、パネル画素p11が、奇数フレーム期間の単位期間f1-1~f1-4において順に、映像画素C11、A11、B11、D11を表現し、偶数フレーム期間の単位期間f2-1~f2-4において順に、映像画素C11、A22、B12、D12を表現する。
ここで、パネル画素p11が表現する映像画素のうち、例えば映像画素B11、B12に着目すると、当該パネル画素p11は、奇数フレーム期間における第2番目の単位期間f1-3にて映像画素B11を表現し、偶数フレーム期間における第3番目の単位期間f2-3にて映像画素B12を表現し、以降、この繰り返しになる。このため、第2実施形態では、パネル画素p11によって表現される映像画素B11およびB12の時間の間隔が均一になる。第2実施形態では、パネル画素p11によって表現される他の映像画素C11を含め、A11・A22や、D11・D21についても同様に、時間の間隔が均一になる。すなわち、時間の間隔が均一で表現される映像画素は、第2実施形態では、映像画素のすべてである。このため、第2実施形態では、第1実施形態と同様に、フリッカーを低減することができる。
【0083】
<変形例または応用例>
上述した第1実施形態および第2実施形態(以下「実施形態等」と称呼する)では、以下のように種々の変形または応用が可能である。
【0084】
実施形態では、1フレーム期間を4つの単位期間に分けた構成とした。すなわち、1フレーム期間に含まれる単位期間の個数であるnとして「4」を一例として挙げて説明した。nは「4」に限られず、「2」以上であればよい。
【0085】
実施形態等では、実施形態等では、特定パターンとして、静止画像であって、白背景として黒の映像画素による斜め45度のラインの例として、右上方向に向かうラインを例に挙げて説明したが、左上方向に向かうラインでも同様に、表示品位の低下を抑えることができる。また、黒背景として白の映像画素による斜め45度のラインである場合も同様に表示品位の低下を抑えることができる。
【0086】
実施形態等では、光路シフト素子230に供給される制御信号P_xおよびP_yのレベルが変化する期間を、単位期間f1-1~f1-4およびf2-1~f2-4における垂直走査期間に相当する後端期間としたが、上述したように、光路シフト素子230による投射位置のシフトは、制御信号P_xおよびP_yのレベル通りではなく、時間遅れを伴う場合がある。このような場合、例えば単位期間において液晶パネル100によって形成される画像が、当該単位期間に対応する投射位置にシフトされるように、時間遅れを見越して、制御信号P_xおよびP_yのレベル変化を開始させてもよい。
【0087】
<付記>
以上に例示した形態から、例えば以下の態様が把握される。
【0088】
ひとつの態様(態様1)に係る投射型表示装置は、パネル画素を有する液晶パネルと、前記パネル画素から投射された投射画素の位置を、1フレーム期間に含まれる、第1単位期間から第n(nは2以上の整数)単位期間までのn個の単位期間毎にシフトする光路シフト素子と、前記液晶パネルおよび前記光路シフト素子を制御する表示制御回路と、を含み、前記表示制御回路は、映像データを構成する画素データに対応したデータ信号を前記単位期間毎に前記パネル画素に供給し、前記光路シフト素子に対し、前記投射画素の位置のシフトを前記単位期間毎に制御し、第1フレーム期間におけるn個の単位期間のうち先頭の第1単位期間、および、前記第1フレーム期間の後の第2フレーム期間におけるn個の単位期間のうち先頭の第1単位期間において、それぞれ同一の画素データに対応したデータ信号を前記液晶パネルに供給し、前記投射画素の位置が同位置になるように制御し、前記第1フレーム期間の第2単位期間から第n単位期間までにおいてシフト前の投射画素の位置からシフト後の投射画素の位置に向かうシフト方向が前記第2フレーム期間の第2単位期間から第n単位期間までにおいてシフト前の投射画素の位置からシフト後の投射画素の位置に向かうシフト方向と反対方向になるように前記光路シフト素子を制御する。
態様1によれば、映像データで指定される画像に特定の表示パターンが表れた場合でも表示品位の低下が抑えられるとともに、フリッカーを目立たなくすることができる。
【0089】
態様1の具体的な態様(態様2)では、前記映像データを構成する画素データは、第1軸および第2軸に沿って配列し、前記光路シフト素子は、前記単位期間毎に前記投射画素を、前記第1軸に沿った方向または前記第2軸に沿った方向にシフトする。
態様2によれば、光路シフト素子が投射画素をシフトする方向が、第1軸または第2軸に沿った方向になるので、単位期間毎における投射画素のシフト量を揃えることができる。
【0090】
態様2の具体的な態様(態様3)では、前記nは4であり、前記光路シフト素子は、前記投射画素の位置を、前記第1フレーム期間において、第1単位期間から第2単位期間までにおいて前記第1軸に沿った一方方向にシフトし、第2単位期間から第3単位期間までにおいて前記第2軸に沿った一方方向にシフトし、第3単位期間から第4単位期間までにおいて前記第1軸に沿った他方方向にシフトし、第4単位期間から前記第2フレーム期間の第1単位期間までにおいて前記第2軸に沿った他方方向にシフトする。
態様3によれば、第1フレーム期間における投射画素の位置が4地点になるので、ユーザに視認される投射画像の解像度は、液晶パネルの解像度と比較して擬似的に4倍に高められる。なお、態様4において、第1フレーム期間における投射画素の4地点が例えば反時計回りでシフトしたならば、第2フレーム期間で投射画素の4地点は反時計回りでシフトする。また、軸に沿った一方方向とは、当該軸に沿った二方向のうち一方であり、軸に沿った他方方向とは、当該軸に沿った二方向のうち他方である。
【0091】
態様1の具体的な別の態様(態様4)では、前記映像データを構成する画素データは、第1軸および第2軸に沿った配列し、前記光路シフト素子は、前記単位期間毎に前記投射画素の位置を、前記第1軸に沿った方向、前記第1軸と前記第2軸と交差する第3軸に沿った方向、または、前記第1軸と前記第2軸と前記第3軸と交差する第4軸に沿った方向にシフトする。
態様4によれば、映像データで指定される画像に特定の表示パターンが表れた場合でも表示品位の低下が抑えられるとともに、フリッカーを目立たなくすることができる。なお、第3軸および第4軸は、具体的には、第1軸または第2軸に対して斜めの軸である。
【0092】
態様4の具体的な態様(態様5)では、前記nは4であり、前記光路シフト素子は、前記投射画素の位置を、前記第1フレーム期間において、第1単位期間から第2単位期間までにおいて前記第3軸に沿った一方方向にシフトし、第2単位期間から第3単位期間までにおいて前記第1軸に沿った一方方向にシフトし、第3単位期間から第4単位期間までにおいて前記第4軸に沿った一方方向にシフトし、第4単位期間から前記第2フレーム期間の第1単位期間までにおいて前記第1軸に沿った一方方向にシフトする。
態様5によれば、第1フレーム期間における投射画素の位置が4地点になるので、ユーザに視認される投射画像の解像度は、液晶パネルの解像度と比較して擬似的に4倍に高められる。
【符号の説明】
【0093】
1…投射型表示装置、100R、100G、100B…液晶パネル、110…画素回路、118…画素電極、120…液晶素子、200…表示制御回路、220R、220R、220G…処理回路、230…光路シフト素子。
図1
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