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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033794
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】スライド式切換弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 11/065 20060101AFI20240306BHJP
【FI】
F16K11/065 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137623
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中野 誠一
(72)【発明者】
【氏名】笠井 宣
(72)【発明者】
【氏名】横田 純一
【テーマコード(参考)】
3H067
【Fターム(参考)】
3H067AA15
3H067CC02
3H067CC32
3H067DD02
3H067DD32
3H067EA16
3H067EA24
3H067EB26
3H067EC13
3H067FF11
3H067GG23
3H067GG24
(57)【要約】
【課題】弁本体の材料として、樹脂材料を採用するとともに、弁本体及び弁座部の変形を抑制することにより、弁座部と弁体とのシール性を向上させ、弁漏れの発生を抑制することができるスライド式切換弁を提供することである。
【解決手段】樹脂により形成される弁本体2と、弁体4と、弁座部3と、軸線Lと直交する方向に対向する一対の弁本体2の内周面2bに沿って、軸線L方向に延在する一対の補強部46aと、を備え、弁座部3は、複数の弁ポート30~32と、摺接面33と、接合面34と、を有し、弁座部3の接合面34は、弁本体2の固定面2bfに固定され、一対の補強部46aは、複数の弁ポート30~32の全てが、一対の補強部46aの間に位置するように、弁本体2及び弁座部3のうち少なくとも前記弁座部に固定されている。これにより、弁座部3と弁体4とのシール性を向上させることができる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライド式切換弁であって、
樹脂により形成されるとともに、軸線方向に沿って延在し、軸線方向に並ぶ複数の接続流路を有する中空筒状の弁本体と、
前記弁本体の内部に、軸線方向に沿ってスライド自在に設けられた弁体と、
前記弁本体の固定面に固定されて、前記弁体が摺接する金属材料からなる板状の弁座部と、
軸線と直交する方向に対向する一対の前記弁本体の内周面に沿って、軸線方向に延在する一対の補強部と、
を備え、
前記弁座部は、前記複数の接続流路のそれぞれに連通する複数の弁ポートと、前記弁体が摺接する摺接面と、前記摺接面の反対側に位置する接合面と、を有し、
前記弁座部の前記接合面は、前記弁本体の前記固定面に固定され、
前記一対の補強部は、前記複数の弁ポートの全てが、前記一対の補強部の間に位置するように、前記弁本体及び前記弁座部のうち少なくとも前記弁座部に、固定されていることを特徴とするスライド式切換弁。
【請求項2】
前記一対の補強部は、前記固定面に対する垂直方向に、前記弁座部の厚さより大きい高さを有することを特徴とする請求項1に記載のスライド式切換弁。
【請求項3】
前記一対の補強部は、前記弁座部と別体であることを特徴とする請求項2に記載のスライド式切換弁。
【請求項4】
前記一対の補強部は、前記弁本体及び前記弁座部のそれぞれに固定されていることを特徴とする請求項3に記載のスライド式切換弁。
【請求項5】
前記一対の補強部は、前記弁座部に溶接固定されているとともに、前記弁本体に固定されていることを特徴とする請求項3に記載のスライド式切換弁。
【請求項6】
前記一対の補強部は、前記弁座部と一体成形されているとともに、前記一対の補強部及び前記弁座部のうち少なくとも前記弁座部が、前記弁本体に固定されていることを特徴とする請求項2に記載のスライド式切換弁。
【請求項7】
前記弁本体の内周面には、前記一対の補強部を保持する一対の保持部が設けられていることを特徴とする請求項3から請求項5のいずれか1項に記載のスライド式切換弁。
【請求項8】
前記一対の補強部は、前記弁本体にインサート成形されていることを特徴とする請求項2に記載のスライド式切換弁。
【請求項9】
前記弁座部を固定する前の前記弁本体の前記固定面は、軸線方向からみて、前記弁本体における両端側の開口部を介し、軸線Lと直交する方向に、軸線方向の全てに亘って、各前記接続流路の全縁部を含めて、視認可能であることを特徴とする請求項1に記載のスライド式切換弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁本体の内周面に沿って、軸線方向に延在し、弁座部及び弁本体のうち少なくとも弁座部に固定される一対の補強部を備えるスライド式切換弁に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、冷凍サイクルシステムにおける成績係数(COP)の向上の目的のため、冷凍サイクルシステムの各機器(スライド式切換弁)におけるシール性の向上が要望されていた。
【0003】
ここで、例えば、特許文献1(特に、第7頁第20行-第8頁第1行及び図5a参照)には、スライド式切換弁であって、金属材料からなる板状の弁座部と金属材料からなる弁本体との固定手段として、溶接固定を採用しているものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】中国特許出願公開第101614288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1では、弁本体が金属材料からなるため、スライド式切換弁の重量が重くなるという問題があった(以下、「従来の第1の問題点(金属材料からなる弁本体による重量増加)」という)。
【0006】
これに対し、特許文献1における弁本体の材料として、金属に代えて、樹脂材料を採用することにより、従来の第1の問題点(金属材料からなる弁本体による重量増加)を解消することが考えられる。
【0007】
しかしながら、弁本体の材料として、樹脂材料を採用する場合には、弁室内の温度変化に起因して、弁本体に軸線方向に対する曲げ変形、つまり、撓みが生じ、この撓みに伴い、弁本体に固定された金属材料からなる板状の弁座部に反りや歪みが生じることがあった。このため、弁座部と弁体とのシール性が損なわれ、弁漏れが発生するおそれがあった(以下、「従来の第2の問題点(樹脂材料からなる弁本体の撓み及び弁座部の変形)」という)。
【0008】
本発明の目的は、このような課題に鑑みてなされたものであり、弁本体の材料として、樹脂材料を採用するとともに、弁本体及び弁座部の変形を抑制することにより、弁座部と弁体とのシール性を向上させ、弁漏れの発生を抑制することができるスライド式切換弁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、樹脂により形成されるとともに、軸線方向に沿って延在し、軸線方向に並ぶ複数の接続流路を有する中空筒状の弁本体と、前記弁本体の内部に、軸線方向に沿ってスライド自在に設けられた弁体と、前記弁本体の固定面に固定されて、前記弁体が摺接する金属材料からなる板状の弁座部と、軸線と直交する方向に対向する一対の前記弁本体の内周面に沿って、軸線方向に延在する一対の補強部と、を備え、前記弁座部は、前記複数の接続流路のそれぞれに連通する複数の弁ポートと、前記弁体が摺接する摺接面と、前記摺接面の反対側に位置する接合面と、を有し、前記弁座部の前記接合面は、前記弁本体の前記固定面に固定され、前記一対の補強部は、前記複数の弁ポートの全てが、前記一対の補強部の間に位置するように、前記弁本体及び前記弁座部のうち少なくとも前記弁座部に、固定されているスライド式切換弁である。
【0010】
また、上記スライド式切換弁であって、前記一対の補強部は、前記固定面に対する垂直方向に、前記弁座部の厚さより大きい高さを有するものとしてもよい。
【0011】
また、上記スライド式切換弁であって、前記一対の補強部は、前記弁座部と別体であるものとしてもよい。
【0012】
また、上記スライド式切換弁であって、前記一対の補強部は、前記弁本体及び前記弁座部のそれぞれに固定されているものとしてもよい。
【0013】
また、上記スライド式切換弁であって、前記一対の補強部は、前記弁座部に溶接固定されているとともに、前記弁本体に固定されているものとしてもよい。
【0014】
また、上記スライド式切換弁であって、前記一対の補強部は、前記弁座部と一体成形されているとともに、前記一対の補強部及び前記弁座部のうち少なくとも前記弁座部が、前記弁本体に固定されているものとしてもよい。
【0015】
また、上記スライド式切換弁であって、前記弁本体の内周面には、前記一対の補強部を保持する一対の保持部が設けられているものとしてもよい。
【0016】
また、上記スライド式切換弁であって、前記一対の補強部は、前記弁本体にインサート成形されているものとしてもよい。
【0017】
また、上記スライド式切換弁であって、前記弁座部を固定する前の前記弁本体の前記固定面は、軸線方向からみて、前記弁本体における両端側の開口部を介し、軸線Lと直交する方向に、軸線方向の全てに亘って、各前記接続流路の全縁部を含めて、視認可能であるものとしてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、弁本体の材料として、樹脂材料を採用するとともに、弁本体及び弁座部の変形を抑制することにより、弁座部と弁体とのシール性を向上させ、弁漏れの発生を抑制することができるスライド式切換弁を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1の実施形態に係るスライド式切換弁の断面図である。
図2】本発明の冷凍サイクルシステムを示す図である。
図3】第1の実施形態の様態1-1における図1に示される弁本体に弁座部を取り付けた状態を説明する図であり、(a)は、全体図、(b)は、(a)に示されるIIIb-IIIb線に沿った断面図、(c)は、(a)に示されるIIIc-IIIc線に沿った断面図を、それぞれ表す。
図4】第1の実施形態の様態1-2における図1に示される弁本体に弁座部を取り付けた状態を説明する図であり、(a)は、全体図、(b)は、(a)に示されるIVb-IVb線に沿った断面図、(c)は、(a)に示されるIVc-IVc線に沿った断面図を、それぞれ表す。
図5】第1の実施形態の様態1-3における図1に示される弁本体に弁座部を取り付けた状態を説明する図であり、(a)は、全体図、(b)は、(a)に示されるVb-Vb線に沿った断面図、(c)は、(a)に示されるVc-Vc線に沿った断面図を、それぞれ表す。
図6】第1の実施形態の様態1-4における図1に示される弁本体に弁座部を取り付けた状態を説明する図であり、(a)は、全体図、(b)は、(a)に示されるVIb-VIb線に沿った断面図、(c)は、(a)に示されるVIc-VIc線に沿った断面図を、それぞれ表す。
図7】第1の実施形態の様態1-5における図1に示される弁本体に弁座部を取り付けた状態を説明する図であり、(a)は、全体図、(b)は、(a)に示されるVIIb-VIIb線に沿った断面図、(c)は、(a)に示されるVIIc-VIIc線に沿った断面図を、それぞれ表す。
図8】本発明の第2の実施形態に係るスライド式切換弁の断面図である。
図9図8に示される弁本体の断面図であり、(a)は、全体図、(b)は、(a)に示されるIXb-IXb線に沿った断面図、(c)は、(a)に示される矢印IXc方向から見た矢視図、(d)は、(a)に示される矢印IXd方向から見た矢視図を、それぞれ表す。
図10】比較例(第1の実施形態)における図9に対応する弁本体の断面図であり、(a)は、全体図、(b)は、(a)に示されるXb-Xb線に沿った断面図、(c)は、(a)に示される矢印Xc方向から見た矢視図、(d)は、(a)に示される矢印Xd方向から見た矢視図を、それぞれ表す。
図11】第2の実施形態及び比較例(第1の実施形態)における弁本体の固定面を説明する図であり、(a)は、第2の実施形態における図9(b)に対応する断面斜視図、(b)は、比較例(第1の実施形態)における図10(b)に対応する断面斜視図を、それぞれ表す。
図12】第2の実施形態における図9に示される弁本体に弁座部を取り付けた状態を説明する図であり、(a)は、全体図、(b)は、(a)に示されるXIIb-XIIb線に沿った断面図、(c)は、(a)に示される矢印XIIc方向から見た矢視図、(d)は、(a)に示されるXIId-XIId線に沿った断面図、(e)は、(a)に示される矢印XIIe方向から見た矢視図を、それぞれ表す。
図13図12に示される弁本体に弁座部を取り付けた状態を説明する図であり、(a)は、図12(c)に示されるXIIIa-XIIIa線に沿った断面図、(b)は、(a)に示される破線XIIIbで囲まれる領域の拡大断面図を、それぞれ表す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態について、図1から図13を参照しながら詳細に説明する。ただし、本発明は本実施形態の様態に限定されるものではない。
【0021】
<用語について>
本明細書および特許請求の範囲の記載において、「左」、「右」、「上」、「下」とは、図1図2図3(a)、図4(a)、図5(a)、図6(a)、図7(a)、図8図9(a)、図10(a)、図12(a)に示される方向を示す。本明細書および特許請求の範囲の記載において、「一端側」、「他端側」とは、「軸線方向の左側(X軸方向のマイナス側)」、「軸線方向の右側(X軸方向のプラス側)」をそれぞれ示す。本明細書および特許請求の範囲の記載において、「側方」とは、「軸線と直交する方向(Y軸方向)」を示す。本明細書および特許請求の範囲の記載において、「一側方」、「他側方」とは、「Y軸方向のプラス側」、「Y軸方向のマイナス側」を示す。本明細書および特許請求の範囲の記載において、「垂直方向」とは、「Z軸方向」を示す。本明細書および特許請求の範囲の記載において、「水平方向」とは、「XY平面方向」を示す。本明細書および特許請求の範囲の記載において、「視認」とは、「検査を実施すること」を示す。本明細書および特許請求の範囲の記載において、「アクセス」とは、「研磨などによる平面加工を施すこと」を示す。
【0022】
(第1の実施形態)
<スライド式切換弁について>
図1を用いて、第1の実施形態のスライド式切換弁100(100A)について説明する。スライド式切換弁100(100A)は、中空筒状のハウジング1、中空筒状の弁本体2、弁本体2に設けられ、軸線L方向に並ぶ複数の弁ポート30~32を有する弁座部3(3A)、弁本体2の内部である弁室2aにスライド自在に設けられる弁体4、弁体4をスライド駆動する駆動部5、から主に構成される。以下、スライド式切換弁100(100A)のそれぞれの構成を順に説明する。ここで、図中の軸線Lは、ハウジング1、弁本体2、駆動部5の中心軸である。なお、本実施形態におけるスライド式切換弁100(100A)は、説明のために、四方切換弁とするものであるが、これに限らず、例えば、二方弁や三方切換弁であってもよい。
【0023】
ここで、詳細は後述するが、第1の実施形態におけるスライド式切換弁100Aでは、弁本体2の材料として、樹脂材料を採用することにより、第1の問題点(金属材料からなる弁本体による重量増加)を解消するとともに、一対の補強部46a~46c,3Bbを採用することにより、第2の問題点(樹脂材料からなる弁本体の撓み及び弁座部の変形)を解消するものである。
【0024】
ハウジング1は、アルミ材料からなり、有底筒状に形成される。ハウジング1において、左側壁には、入口経路1dが形成され、右側壁には、弁本体2を挿入するための挿入口1aが形成される。また、ハウジング1の底壁には、複数の円筒状の流路として、第1経路1e、出口経路1s、第2経路1cが、軸線L方向に沿って順に形成される。ここで、詳細は後述するが、入口経路1d及び出口経路1sは、圧縮機200(図2参照)の吐出口及び吸入口にそれぞれ接続され、第1経路1e及び第2経路1cは、凝縮器及び蒸発器の何れか一方にそれぞれ接続される。
【0025】
弁本体2は、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等の樹脂材料からなり、有底筒状に形成され、内周面2b(図3(a)参照)、一端側壁部2c(図3(a)参照)、及び、他端側開口部2d(図3(a)参照)を備え、内部に弁室(弁本体の内部)2aが画定される。弁本体2の一端側壁部2cには、弁室2aに連通する入口ポート20が形成される。また、弁本体2の下方の内周面2bには、水平方向に沿って平坦、かつ、矩形形状を有する固定面2bf(図3(a)参照)が形成されており、この固定面2bfには、複数の円筒状の流路からなる、第1接続流路(接続流路)21、出口接続流路(接続流路)22、第2接続流路(接続流路)23が、軸線L方向に沿って順に形成される。ここで、入口ポート20及び出口接続流路22は、入口経路1d及び出口経路1sにそれぞれ接続され、第1接続流路21及び第2接続流路23は、第1経路1e及び第2経路1cにそれぞれ接続される。さらに、弁本体2の右側の端部には、金属材料からなる筒状の下蓋24がインサート成形にて固定される。詳細は後述するが、この下蓋24には、隔壁部材54にインサート成形にて固定された上蓋25が、溶接等により固定される。加えて、弁本体2の外周面及びハウジング1の内周面のいずれかに、軸線L方向に沿って、所定間隔で複数の溝部Gに配置されたOリング26を備える。よって、弁本体2が、ハウジング1の挿入口1aより、ハウジング1の内部に挿入され、C型形状の止め輪27により、上蓋25を介してハウジング1に固定された際、Oリング26により、弁本体2とハウジング1との間の、入口経路1d、第2経路1c、出口経路1s、第1経路1e、ハウジング1の外側(大気)の各間がシールされる。なお、詳細は後述するが、弁本体2に弁座部3(3A)は接着固定されている。
【0026】
弁座部3(3A)は、矩形形状を有する板状の金属材料からなり、弁体4が摺接する摺接面33と、摺接面33の反対側に位置し、接着剤が塗布される接合面34(図3(a)参照)と、を備える。この接合面34は、弁本体2の固定面2bfに接着固定される。また、弁座部3(3A)は、第1接続流路21に連通する第1ポート(弁ポート)30、出口接続流路22に連通する出口ポート(弁ポート)31、第2接続流路23に連通する第2ポート(弁ポート)32がそれぞれ軸線L方向に所定の間隔を空けて形成される。第1ポート30、出口ポート31、及び、第2ポート32は、第1接続流路21、出口接続流路22、第2接続流路23よりも内径の寸法が小さい円筒状に形成される。
【0027】
弁体4は、主に、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等の樹脂材料からなり、椀状の容器を裏返した形状である弁体本体40と、右側の端部から軸線L方向に突出する連結部44と、を備える。この弁体4は、弁座部3(3A)の摺接面33に対して、下面を当接させながら摺接し、弁座部3との間で空間を形成する。
【0028】
弁体本体40は、弁座部3(3A)の摺接面33と対向し、軸線L方向に延びる長円形状の開口縁部40aと、開口縁部40aから弁室2a側に突出する椀状部(弁体の外周面)40bと、椀状部40bの内部に設けられる椀状凹部40cと、椀状凹部40cの側壁が変形するのを抑制する支持部材40dと、を備える。
【0029】
開口縁部40aは、摺接面33に摺接可能なシール部sを構成する。椀状部40bの頂部と弁本体2の内周面との間には、ばね部材42が挟持され、このばね部材42により、弁体本体40が弁座部3(3A)に付勢され、椀状部40bの外部の弁室2aと椀状部40bの内部の椀状凹部40cとの間はシールされる。椀状凹部40cには、軸線Lと直交する方向のそれぞれの側壁に一対の台座41が形成される。この台座41は、軸線L方向に延在する嵌合溝41aを有する。
【0030】
支持部材40dは、板状の金属材料からなり、プレス加工により一体成形されており、軸線Lと直交する方向である側方に延在する長方形状の平面部40daと、平面部40daの側方両端縁から立ち上がる一対の立上部40dbと、を備える。この一対の立上部40dbが、嵌合溝41aにそれぞれ嵌合することにより、平面部40daが、椀状凹部40cのそれぞれの側壁に亘って設けられる。この支持部材40dが、高圧の弁室2a内と低圧の椀状凹部40c内との圧力差に抗することにより、椀状凹部40cが変形することを抑制できる。
【0031】
連結部44は、フック状に形成され、軸材59を介して、駆動部5と連結される。
【0032】
駆動部5は、弁体4をスライド駆動する部分であり、回転可能なロータを有する電動モータとしてのステッピングモータ5aと、ステッピングモータ5aの回転を直線運動に変換して弁体4に伝達する直動機構5bと、を備える。
【0033】
ステッピングモータ5aは、有底筒状を有するキャン50と、マグネットロータ51と、ステータコイル52と、を備える。
【0034】
キャン50は、薄板状の金属材料からなり、有底筒状に形成される。
【0035】
マグネットロータ51は、回転子であり、キャン50の内部に配置される。
【0036】
ステータコイル52は、固定子であり、キャン50を挟んでマグネットロータ51の外周を軸線L回りに取り囲むように配置される。
【0037】
直動機構5bは、軸受け部材53と、隔壁部材54と、雄ねじ部材55と、雌ねじ部材56と、を備える。
【0038】
軸受け部材53は、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等の樹脂材料からなり、キャン50の底側の内部に配置され、軸線Lと同軸上に、雄ねじ部材55の右側端部を軸支する第一軸受孔53aを有する。軸受け部材53は、キャン50に対して、堅固に支持されるように、ステンレス鋼の薄板からなり、テーパー形状を有する付勢部材53bにより、軸線L方向の右側に沿って付勢される。
【0039】
隔壁部材54は、樹脂材料からなり、有底筒状に形成される。隔壁部材54の外周側には、金属材料からなり、テーパー状に形成される上蓋25が、インサート成形にて固定される。ここで、上蓋25の小径部25aが、キャン50に溶接等により固定され、駆動部5内を密閉する。また、上蓋25の大径部25bが、下蓋24に溶接等により固定される。これにより、隔壁部材54、キャン50、軸受け部材53、及び、弁本体2の中心軸は、軸線Lと同軸に配置される。さらに、隔壁部材54の底部である仕切壁54dは、軸線Lと同軸上に、雄ねじ部材55の左側端部を軸支する第二軸受孔54aと、第二軸受孔54aを挟んで配置される一対の隔壁孔54b(図1には片側のみ図示)と、を有する。
【0040】
雄ねじ部材55は、外周面に雄ねじ部55dを有するロータ軸であり、マグネットロータ51の中心に固定部材55aを介して間接的に固定される。
【0041】
雌ねじ部材56は、内周面に雌ねじ部56a1が形成され、隔壁部材54内に径方向の隙間を有して収容されるねじ筒部56aと、隔壁部材54の一対の隔壁孔54bに挿通することにより、雌ねじ部材56の軸線L回りの回転を規制する一対の連結腕部56b(図1及び図2には片側のみ図示)と、を備える。この一対の連結腕部56bは、軸材59及びクリップ45を介して、弁体4と連結される。ここで、雌ねじ部56a1及び雄ねじ部55dが互いに螺合することにより、ねじ送り機構を構成する。この雌ねじ部56a1と雄ねじ部55dとの螺合領域Saは、常に、キャン50及び隔壁部材54により画定されるねじ収容空間Ss内に収容される。
【0042】
駆動部5において、ステッピングモータ5aにより、雄ねじ部材55が回転すると、ねじ送り機構により、雄ねじ部材55の回転が、雌ねじ部材56の直線運動に変換される。この雌ねじ部材56の直線運動によって、雌ねじ部材56と連結する弁体4が、軸線L方向にスライドするように進退駆動される。
【0043】
本実施形態において、弁体4を進退駆動する駆動部5は、雄ねじ部材55がマグネットロータ51に間接的に固定されるものであるが、これに限らず、例えば、雄ねじ部材55が、マグネットロータ51に直接的に固定されたものであってもよい。また、本実施形態における直動機構5bは、雄ねじ部材55がハウジング1に対して、回転可能に固定されるとともに、雌ねじ部材56が軸線L方向に進退可能にスライドする様態である。しかしながら、これに限らず、例えば、雌ねじ部材56がハウジング1に対して、回転可能に固定されるとともに、雄ねじ部材55が軸線L方向に進退可能にスライドする様態であってもよい。さらに、本実施形態におけるスライド式切換弁100(100A)は、長手方向の軸線Lを水平方向とし、弁体4を水平方向にスライドさせる使用様態としているが、これに限らず、例えば、長手方向の軸線Lを垂直方向とし、弁体4を垂直方向にスライドさせる使用様態であってもよい。また、本実施形態の駆動部5は、説明のために、ステッピングモータ5aを備えたものとしたが、これに限らず、例えば、弁本体2内に設けたピストンにて区画された室の圧力をパイロット弁により切換え、差圧を利用して弁体を駆動する駆動部5としてもよい。
【0044】
<スライド式切換弁の動作について>
スライド式切換弁100(100A)は、図2に示すように、冷凍サイクルシステムに用いられ、入口経路1d、第2経路1c、出口経路1s、第1経路1eには、D継手管1D、C継手管1C、S継手管1S、E継手管1Eがそれぞれ取り付けられる。スライド式切換弁100(100A)は、駆動部5により、弁体4を軸線L方向にスライドするように進退駆動させることにより、圧縮機200の吐出口と接続されるD継手管1D、及び、圧縮機200の吸入口と接続されるS継手管1Sを、室外熱交換機300に接続されるC継手管1C、及び、室内熱交換機400に接続されるE継手管1Eのいずれか一方に、それぞれ連通させる。これにより、スライド式切換弁100は、冷凍サイクルシステムの流体経路を切り換える。
【0045】
<冷凍サイクルシステムの動作について>
まず、暖房運転時では、図2に示すように、スライド式切換弁100は、駆動部5を駆動し、弁体4を軸線L方向の左側位置へとスライドさせると、弁体本体40と弁座部3(3A)により、C継手管1CとS継手管1Sとが、椀状凹部40cを介して連通するとともに、D継手管1DとE継手管1Eとが、弁室2a及び第1ポート30を介して連通する。これにより、圧縮機200で圧縮された高圧の冷媒は、図2中の実線で示すように、D継手管1Dから弁室2aを介して、E継手管1Eに流入され、室内熱交換機400、絞り装置500、室外熱交換機300の順に流れ、C継手管1Cから椀状凹部40cを介して、S継手管1Sへ流入された後、圧縮機200へと循環する。この際、室外熱交換機300は、蒸発器(エバポレータ)として機能するとともに、室内熱交換機400は、凝縮器(コンデンサ)として機能する。
【0046】
次に、冷房運転時では、図1に示すように、スライド式切換弁100(100A)は、駆動部5を駆動し、弁体4を軸線L方向の右側位置へとスライドさせると、弁体本体40と弁座部3(3A)により、S継手管1SとE継手管1Eとが、椀状凹部40cを介して連通するとともに、D継手管1DとC継手管1Cとが、弁室2a及び第2ポート32を介して連通する。これにより、圧縮機200で圧縮された高圧の冷媒は、図2中の破線矢印で示すように、D継手管1Dから弁室2aを介して、C継手管1Cに流入され、室外熱交換機300、絞り装置500、室内熱交換機400の順に流れ、E継手管1Eから椀状凹部40cを介して、S継手管1Sへ流入された後、圧縮機200へと循環する。この際、冷房運転時には、冷媒が暖房運転時とは逆に循環されており、室外熱交換機300は、凝縮器(コンデンサ)として機能するとともに、室内熱交換機400は、蒸発器(エバポレータ)として機能する。なお、図2の冷凍サイクルシステムでは、C継手管1Cを室外熱交換機300に接続し、E継手管1Eを室内熱交換機400に接続したが、これに限らず、例えば、C継手管1Cを室内熱交換機400に接続し、E継手管1Eを室外熱交換機300に接続してもよい。
【0047】
<補強部について>
前述したように、特許文献1における弁本体の材料として、金属に代えて、樹脂材料を採用することにより、従来の第1の問題点(金属材料からなる弁本体による重量増加)を解消することができる。しかしながら、弁本体の材料として、樹脂材料を採用する場合には、弁室内の温度変化に起因して、弁本体に軸線方向に対する撓みが生じ、この変形に伴い、弁本体に固定された板状の弁座部に反りや歪みが生じることがあった。このため、弁座部と弁体とのシール性が損なわれ、弁漏れが発生するため、従来の第2の問題点(樹脂材料からなる弁本体の撓み及び弁座部の変形)を有していた。
【0048】
これに対して、詳細は後述するが、第1の実施形態におけるスライド式切換弁100Aでは、弁本体2の内周面2bに沿って、軸線L方向に延在する一対の補強部46a~46c,3Bbを採用するとともに、弁座部3A,3Bにおける複数の弁ポート30~32の全てが、この一対の補強部46a~46c,3Bbの間に位置するように、一対の補強部46a~46c,3Bbを、弁本体2及び弁座部3A,3Bのそれぞれに固定する。これにより、第2の問題点(樹脂材料からなる弁本体の撓み及び弁座部の変形)を解消するものである。
【0049】
ここで、第1の実施形態は、図3から図7に示すように、弁本体2及び弁座部3A,3Bに対する一対の補強部46a~46c,3Bbの取り付け構造により、様態1-1から様態1-5までの5つの様態からなる。よって、以下では、様態1-1から様態1-5まで、順に、弁本体2、弁座部3A,3B及び一対の補強部46a~46c,3Bbの詳細構造について説明する。
【0050】
(様態1-1について)
図3を用いて、本実施形態の様態1-1における、弁本体2、弁座部3A及び一対の補強部46aの詳細構造について説明する。
【0051】
様態1-1では、図3(c)に示すように、弁本体2、弁座部3A、及び、一対の補強部46aは、それぞれ、別部材となっている。以下では、それぞれの構成を順に説明する。なお、図3では、説明のために、弁体4及び弁体4に接続される直動機構5bなどを省略して示している。
【0052】
<弁本体の詳細構造について>
弁本体2の材料として、樹脂材料を採用する。この弁本体2の下方の内周面2bには、水平方向(XY平面方向)に沿って平坦、かつ、矩形形状を有する固定面2bf(図3(a),(c)参照)が形成されており、この固定面2bfには、複数の円筒状の流路からなる、第1接続流路21、出口接続流路22、第2接続流路23が、軸線L方向に沿って順に形成される。また、弁本体2の側方(Y軸方向)に対向する一対の内周面2bには、図3(b)に示すように、固定面2bfを挟むように、一端側壁部2cから他端側開口部2dまで、軸線L方向に延在するとともに、図3(c)に示すように、軸線L方向からみて、L字断面形状を有する、一対の取り付け溝2bmが形成される。ここで、一対の取り付け溝2bmの間隔は、取り付け誤差を考慮し、弁座部3及び一対の補強部46aの合計幅より、僅かに大きく設定される。この一対の取り付け溝2bm及び固定面2bfは、他端側開口部2dを介して、軸線L方向に、視認及びアクセスが可能となっている。さらに、弁本体2の固定面2bfの一端側(X軸マイナス側)周縁部には、一端側壁部2cの内面からなる一端側ガイド部2cgが形成される。この一端側ガイド部2cgは、弁座部3A及び一対の補強部46aを取り付ける際に、位置決めとして用いられるものであり、側方(Y軸方向)に沿った連続する位置で、弁座部3A及び一対の補強部46aと当接する。このように、様態1-1においては、弁本体2の材料として、樹脂材料を採用していることから、従来の第1の問題点(金属材料からなる弁本体による重量増加)を解消することができる。
【0053】
<弁座部の詳細構造について>
弁座部3Aは、矩形形状を有する板状の金属材料からなり、第1ポート30、出口ポート31、第2ポート32が、軸線L方向に沿って所定の間隔を空けて形成される。また、弁座部3は、図3(a)に示すように、弁体4が摺接する摺接面33と、摺接面33の反対側に位置し、接着剤が塗布される接合面34と、を備える。さらに、弁座部3は、図3(b)に示すように、弁本体2の一端側ガイド部2cgに当接する一端側弁座部3Atを有する。
【0054】
なお、様態1-1において、弁座部3Aの軸線L方向の他端側(X軸方向のプラス側)の形状が、図3(b)に示すように、非直線形状を有しているため、目視により、取り付け方向(軸線L方向及び表裏方向)の間違いを防止することができる。
【0055】
<補強部の詳細構造について>
一対の補強部46aは、それぞれ、軸線L方向に延在する角柱形状を有するステンレス鋼等からなり、比較的大きい剛性を有する。各補強部46aの断面形状は、図3(c)に示すように、矩形形状を有し、垂直方向(Z軸方向)の高さh1を、側方(Y軸方向)の幅b1より大きく(h1>b1)することにより、各補強部46aの断面二次モーメント(I1=b1×h1^3/12)を、比較的大きく設定している。これにより、断面二次モーメントI1に反比例する、軸線L方向に対する撓みを比較的小さくすることができる。ここで、補強部46aの側方(Y軸方向)の幅b1が、弁座部3Aの厚さThと、略同じ値(b1≒Th)を有することから、補強部46aの高さh1が、弁座部3Aの厚さThより大きく(h1>Th)設定される。なお、様態1-1では、補強部46aの断面形状を、長辺を垂直方向(Z軸方向)とする矩形形状としたが、これに限らず、断面二次モーメントを大きく設定し得るものであれば、様々な断面形状を選択することができる。
【0056】
<弁座部及び補強部の取り付け工程について>
ここから、弁座部3A及び補強部46aの弁本体2への取り付け工程を説明する。まず、弁本体2の固定面2bf及び一対の取り付け溝2bmと対向配置される、弁座部3Aの接合面34(図3(a)参照)と、一対の補強部46aの下面及び外方側面と、に接着剤(例えば、エポキシ樹脂系、アクリル樹脂系、ウレタン樹脂系、シリコーン系、酢酸ビニル系を含む)が塗布される。そして、一対の補強部46aを、弁本体2の他端側開口部2dを介して、弁室2a内にそれぞれ挿入させ、各補強部46aの一端側を、一端側ガイド部2cgに当接させることにより、軸線L方向の位置決めを行う。さらに、一対の補強部46aを、弁本体2の固定面2bf及び一対の取り付け溝2bmに押圧させながら接着固定させる。これにより、一対の補強部46aは、一対の弁本体2の内周面2bに沿って、軸線L方向に延在する。同様に、弁座部3Aを、弁本体2の他端側開口部2dを介して、弁室2a内に挿入させ、一端側弁座部3Atを、一端側ガイド部2cgに当接させることにより、軸線L方向の位置決めを行う。さらに、弁座部3Aを、弁本体2の固定面2bfに押圧させながら接着固定させる。また、図3(c)に示すように、弁座部3Aを弁本体2に取り付けることより、各補強部46aは、弁本体2及び弁座部3Aとの間に挟持される。これにより、弁座部3Aと補強部46aとの隙間は、極めて小さくなり、固定面2bf側の接着剤は、毛細管現象により、弁座部3Aと補強部46aとの隙間に積極的に導入され、結果、一対の補強部46aは、弁本体2及び弁座部3Aのそれぞれと、堅固に接着固定される。
【0057】
なお、様態1-1において、説明のために、弁本体2に対して、一対の補強部46a、弁座部3Aの順で取り付けるものを用いたが、これに限らず、例えば、弁座部3A、一対の補強部46aの順で取り付けるものや、弁座部3A及び一対の補強部46aを同時に取り付けるものであってもよい。また、様態1-1において、説明のために、弁座部3及び一対の補強部46aに接着剤を塗布するものを用いたが、これに限らず、例えば、弁本体2の固定面2bf及び一対の取り付け溝2bmに接着剤を塗布するものであってもよい。
【0058】
以上より、様態1-1において、別体である一対の補強部46aを採用し、この一対の補強部46aを、互いに接着固定された弁本体2及び弁座部3Aに固定することにより、従来の第1及び第2の問題点(金属材料からなる弁本体による重量増加、樹脂材料からなる弁本体の撓み及び弁座部の変形)を解消することができる。また、様態1-1において、一対の補強部46aの間に、弁座部3Aにおける複数の弁ポート30~32の全てを配置することにより、弁座部3Aの各弁ポート30~32周辺における軸線L方向に対する撓みを確実に抑制でき、結果、弁座部3Aと弁体4とのシール性を向上させ、弁漏れの発生を抑制することができる。さらに、スライド式切換弁100Aの用途によって、本体2及び弁座部3Aに対して要求されるスペックが異なるが、様態1-1において、一対の補強部46aを別体とすることにより、最適な剛性や断面二次モーメントを有する補強部46aを選択できるため、結果、スライド式切換弁100Aの適用範囲を広げることができる。
【0059】
(様態1-2について)
ここで、図4を用いて、本実施形態の様態1-2における、弁本体2、弁座部3A及び一対の補強部46bの詳細構造について説明する。この様態1-2において、一対の補強部46bが、弁本体2にインサート成形されている点で、様態1-1と相違するが、その他の基本構成は、様態1-1と同一である。ここで、同一部材には同一符号を付して、重複する説明(<弁座部の詳細構造について>)は省略し、<補強部の詳細構造について>、<弁本体の詳細構造について>、及び、<弁座部の取り付け工程について>を説明する。
【0060】
<補強部の詳細構造について>
様態1-2における一対の補強部46bは、様態1-1における一対の補強部46aと同様に、それぞれ、軸線L方向に延在する角柱形状を有するステンレス鋼等からなり、比較的大きい剛性を有する。各補強部46bの断面形状は、図4(c)に示すように、矩形形状を有し、垂直方向(Z軸方向)の高さh2を、側方(Y軸方向)の幅b2より大きく(h2>b2)することにより、各補強部46bの断面二次モーメント(I2=b2×h2^3/12)を、比較的大きく設定している。これにより、断面二次モーメントI2に反比例する、軸線L方向に対する撓みを比較的小さくすることができる。ここで、補強部46bの側方(Y軸方向)の幅b2が、弁座部3Aの厚さThと、略同じ値(b2≒Th)を有することから、補強部46bの高さh2が、弁座部3Aの厚さThより大きく(h2>Th)設定される。なお、様態1-2では、補強部46bの断面形状を、長辺を垂直方向(Z軸方向)とする矩形形状としたが、これに限らず、断面二次モーメントを大きく設定し得るものであれば、様々な断面形状を選択することができる。
【0061】
<弁本体の詳細構造について>
弁本体2の側方(Y軸方向)に対向する一対の内周面2bの内部には、一対の補強部46bが、一対の弁本体2の内周面2bに沿って、軸線L方向に延在するように、インサート成形されている。これにより、インサート部品である一対の補強部46bは、樹脂材料からなる弁本体2の内部に、完全に埋設されている。また、弁本体2の側方(Y軸方向)に対向する一対の内周面2bには、図4(b)に示すように、固定面2bfを挟むように、一端側壁部2cから他端側開口部2dまで、軸線L方向に延在するとともに、図4(c)に示すように、軸線L方向からみて、L字断面形状を有する、一対の側方ガイド部2bgが形成される。ここで、側方(Y軸方向)における、一対の側方ガイド部2bgの間隔は、取り付け誤差を考慮し、弁座部3の幅より、僅かに大きく設定される。この一対の側方ガイド部2bg及び固定面2bfは、他端側開口部2dを介して、軸線L方向にそれぞれ、視認及びアクセスが可能となっている。さらに、弁本体2の固定面2bfの一端側(X軸マイナス側)周縁部には、一端側壁部2cの内面からなる一端側ガイド部2cgが形成される。この一端側ガイド部2cgは、弁座部3Aを取り付ける際に、位置決めとして用いられるものであり、側方(Y軸方向)に沿った連続する位置で、弁座部3Aと当接する。
【0062】
<弁座部の取り付け工程について>
ここから、弁座部3Aの弁本体2への取り付け工程を説明する。まず、弁本体2の固定面2bfと対向配置される、弁座部3Aの接合面34(図4(a)参照)に接着剤が塗布される。そして、弁座部3Aを、弁本体2の他端側開口部2dを介して、弁室2a内に挿入させ、弁座部3Aの一対の側方部を、一対の側方ガイド部2bgに当接させて、側方(Y軸方向)の位置決めを行うとともに、一端側弁座部3Atを、一端側ガイド部2cgに当接させて、軸線L方向の位置決めを行う。さらに、弁座部3Aを、弁本体2の固定面2bfに押圧させながら接着固定させる。
【0063】
以上より、様態1-2において、弁本体2にインサート成形される一対の補強部46bを採用し、弁本体2及び弁座部3Aを互いに接着固定することにより、様態1-1と同様に、従来の第1及び第2の問題点(金属材料からなる弁本体による重量増加、樹脂材料からなる弁本体の撓み及び弁座部の変形)を解消し、弁座部3Aと弁体4とのシール性を向上させ、弁漏れの発生を抑制することができる。また、様態1-2において、弁本体2に弁座部3Aを取り付ける際に、一対の補強部46bを取り付ける必要がないため、作業時間を短縮させることができる。さらに、様態1-2において、一対の補強部46bは、樹脂材料からなる弁本体2の内部に、完全に埋設されており、作動流体に晒されることがないため、腐食等による経時的な劣化を抑制することができる。
【0064】
(様態1-3について)
ここで、図5を用いて、本実施形態の様態1-3における、弁本体2、弁座部3A及び一対の補強部46cの詳細構造について説明する。この様態1-3において、別体の一対の補強部46cが、弁座部3Aに溶接固定されている点で、様態1-1と相違するが、その他の基本構成は、様態1-1と同一である。ここで、同一部材には同一符号を付して、重複する説明(<弁本体の詳細構造について>、及び、<弁座部の詳細構造について>)は省略し、<補強部の詳細構造について>、及び<弁座部及び補強部の取り付け工程について>を説明する。
【0065】
<補強部の詳細構造について>
様態1-3における一対の補強部46cは、様態1-1における一対の補強部46aと同様に、それぞれ、軸線L方向に延在する角柱形状を有するステンレス鋼からなり、比較的大きい剛性を有する。各補強部46cの断面形状は、図5(c)に示すように、略矩形形状を有し、弁本体2の固定面2bfからの垂直方向(Z軸方向)の高さh3を、側方(Y軸方向)の幅b3より大きく(h3>b3)することにより、各補強部46cの断面二次モーメント(I3=b3×h3^3/12)を、比較的大きく設定している。これにより、断面二次モーメントI3に反比例する、軸線L方向に対する撓みを比較的小さくすることができる。ここで、補強部46cの側方(Y軸方向)の幅b3が、弁座部3Aの厚さThと、略同じ値(b3≒Th)を有することから、補強部46cの高さh3が、弁座部3Aの厚さThより大きく(h3>Th)設定される。ここで、一対の補強部46cの対向面には、弁座部3Aの位置決めとして機能するために、側方(Y軸方向)の内側に延出する位置決め凸部46cpを備える。なお、様態1-3では、補強部46cの断面形状を、長辺を垂直方向(Z軸方向)とする略矩形形状としたが、これに限らず、断面二次モーメントを大きく設定し得るものであれば、様々な断面形状を選択することができる。
【0066】
<弁座部及び補強部の取り付け工程について>
ここから、弁座部3A及び補強部46cの弁本体2への取り付け工程を説明する。まず、弁座部3Aの側方(Y軸方向)角部を、一対の補強部46cの位置決め凸部46cpの下側にそれぞれ係合させた状態で、一対の補強部46cを弁座部3Aに溶接固定する。これにより、一対の補強部46aが、弁座部3Aの所望位置に健固に溶接固定される。その後、弁本体2の固定面2bf及び一対の取り付け溝2bmと対向配置される、弁座部3Aの接合面34(図5(a)参照)と、弁座部3Aに溶接固定された一対の補強部46aの下面及び外方側面と、に接着剤が塗布される。そして、一対の補強部46cが溶接固定された弁座部3Aを、弁本体2の他端側開口部2dを介して、弁室2a内に挿入させ、一対の補強部46cを、弁本体2の一対の取り付け溝2bmに当接させて、側方(Y軸方向)の位置決めを行うとともに、一端側弁座部3Atを、一端側ガイド部2cgに当接させて、軸線L方向の位置決めを行う。さらに、弁座部3A及び一対の補強部46cを、弁本体2の固定面2bfに押圧させながら接着固定させる。なお、弁座部3Aの弁本体2への取り付けの際、一対の補強部46cを弁座部3Aに溶接固定した後、弁座部3Aの接合面34にのみ接着剤を塗布して、弁本体2の固定面2bfに押圧させながら接着固定させてもよい。ただし、一対の補強部46cの下面及び外方側面にも接着剤が塗布された方が、弁本体2の軸線L方向の変形が抑制され好ましい。また、弁座部3Aに溶接固定された一対の補強部46cを、様態1-2と同様に、弁本体2の内周面2bの内部にインサート成形されてもよい。これにより、弁座部3Aを取り付ける必要がないため、作業時間を短縮させることができる。
【0067】
なお、様態1-3における、一対の補強部46cと弁座部3Aとの溶接加工は、アーク溶接(接合させる部品と電極の間に発生させたアークにより、部品を溶かし接合するもの)やレーザー溶接(レンズで集光させたレーザー光を照射することにより、部品を溶かし接合するもの)等により、軸線L方向に沿って、連続的に形成されるものであるが、弁座部3Aに対する熱影響が極めて小さくなるように、局所的に部品を溶かすアークスポット溶接や、レーザースポット溶接が採用されるとともに、軸線L方向に沿って、不連続に形成されるものであると、溶接時の熱による弁座部3Aの変形が抑制され、より好ましい。
【0068】
以上より、様態1-3において、弁座部3Aに溶接固定される一対の補強部46cを採用し、弁本体2及び弁座部3Aを互いに接着固定することにより、様態1-1と同様に、従来の第1及び第2の問題点(金属材料からなる弁本体による重量増加、樹脂材料からなる弁本体の撓み及び弁座部の変形)を解消し、弁座部3Aと弁体4とのシール性を向上させ、弁漏れの発生を抑制することができる。また、スライド式切換弁100Aの用途によって、本体2及び弁座部3Aに対して要求されるスペックが異なるが、様態1-3において、様態1-1と同様に、一対の補強部46cを別体とすることにより、最適な剛性や断面二次モーメントを有する補強部46cを選択できるため、結果、スライド式切換弁100Aの適用範囲を広げることができる。さらに、様態1-3において、弁本体2に弁座部3Aを取り付ける際に、弁座部3Aと一対の補強部46cとを同時に取り付けることができるため、作業時間を短縮させることができる。加えて、様態1-3において、一対の補強部46cと弁座部3Aとの接合強度が、様態1-1と比べ、比較的大きいことと、弁座部3Aの側方角部の上面を一対の補強部46cの位置決め凸部46cpの下面に当接させて溶接固定することから、弁座部3Aの剛性を確実に大きく設定できる。なお、様態1-3では、一対の補強部46cに位置決め凸部46cpを設けたがこれに限らない。例えば、様態1-1の補強部46aの様に位置決め凸部46cpを設けずに、弁座部3Aに溶接固定されてもよい。ただし、位置決め凸部46cpを設けた方が、弁座部3Aの剛性を大きく設定できるので好ましい。
【0069】
(様態1-4について)
ここで、図6を用いて、本実施形態の様態1-4における、弁本体2、及び、弁座部3Bの詳細構造について説明する。この様態1-4において、弁座部3Bが、平板部3Ba及び一対の補強部3Bbからなり、互いに一体成形されている点で、様態1-3と相違するが、その他の基本構成は、様態1-3と同一である。ここで、同一部材には同一符号を付して、重複する説明(<弁本体の詳細構造について>)は省略し、<弁座部の詳細構造について>、及び、<弁座部の取り付け工程について>を説明する。
【0070】
<弁座部の詳細構造について>
弁座部3Bは、板状のステンレス鋼等からなり、プレス加工により一体成形されるものであり、水平方向(XY平面方向)に沿って配置され、矩形形状を有する平板部3Baと、平板部3Baの側方(Y軸方向)両端縁から立ち上がる一対の補強部3Bbと、を備える。ここで、平板部3Baについては、様態1-3における弁座部3Aと略同一の構成を有することから、説明は省略する。
【0071】
次に、一対の補強部3Bbについては、様態1-1における一対の補強部46aと略同様であり、各補強部3Bbに対応する断面形状は、図3(c)に示すように、略矩形形状を有し、弁本体2の固定面2bfからの垂直方向(Z軸方向)の高さh4を、側方(Y軸方向)の幅b4より大きく(h4>b4)することにより、各補強部3Bbの断面二次モーメント(I4=b4×h4^3/12)を、比較的大きく設定している。これにより、断面二次モーメントI4に反比例する、軸線L方向に対する撓みを比較的小さくすることができる。ここで、補強部3Bbの側方(Y軸方向)の幅b4が、弁座部3Bの厚さTh’と、同一(b4=Th’)であるから、補強部3Bbの高さh4が、弁座部3Bの厚さTh’より大きく(h4>Th’)設定される。なお、様態1-4では、補強部3Bbの断面形状を、長辺を垂直方向(Z軸方向)とする矩形形状としたが、これに限らず、断面二次モーメントを大きく設定し得るものであれば、様々な断面形状を選択することができる。
【0072】
なお、様態1-4における弁座部3Bは、様態1-3における弁座部3Aのように、平板部3Baの軸線L方向の他端側(X軸方向のプラス側)の形状を、非直線形状とするのではなく、図6(a)に示すように、一対の補強部3Bbの軸線L方向の他端側(X軸方向のプラス側)の形状を、テーパー形状とすることにより、目視により、取り付け方向(軸線L方向)の間違いを防止することができる。
【0073】
<弁座部の取り付け工程について>
ここから、弁座部3Bの弁本体2への取り付け工程を説明する。まず、弁本体2の固定面2bf及び一対の取り付け溝2bmと対向配置される、平板部3Baの接合面34(図6(a)参照)と、一対の補強部3Bbの下面及び外方側面と、に接着剤が塗布される。そして、弁座部3Bを、弁本体2の他端側開口部2dを介して、弁室2a内に挿入させ、一対の補強部3Bbを、弁本体2の一対の取り付け溝2bmに当接させて、側方(Y軸方向)の位置決めを行うとともに、一端側弁座部3Btを、一端側ガイド部2cgに当接させて、軸線L方向の位置決めを行う。さらに、平板部3Ba及び一対の補強部3Bbを、弁本体2の固定面2bfに押圧させながら接着固定させる。なお、一対の取り付け溝2bmは、図6(c)に示すように、軸線L方向からみて、一対の補強部3Bbに対応する、略L字断面形状を有する。なお、弁座部3Bの弁本体2への取り付けの際、平板部3Baの接合面34にのみ接着剤を塗布して、弁本体2の固定面2bfに押圧させながら接着固定させてもよい。ただし、一対の補強部3Bbの下面及び外方側面にも接着剤が塗布された方が、弁本体2の軸線L方向の変形が抑制され好ましい。また、弁座部3Bの平板部3Baに一体成形された一対の補強部3Bbを、様態1-2と同様に、弁本体2の内周面2bの内部にインサート成形されてもよい。これにより、弁座部3Bを取り付ける必要がないため、作業時間を短縮させることができる。
【0074】
以上より、様態1-4において、平板部3Baに一体成形される一対の補強部3Bbを採用し、弁本体2及び弁座部3Bを互いに接着固定することにより、様態1-3と同様に、従来の第1及び第2の問題点(金属材料からなる弁本体による重量増加、樹脂材料からなる弁本体の撓み及び弁座部の変形)を解消し、弁座部3Bと弁体4とのシール性を向上させ、弁漏れの発生を抑制することができる。また、様態1-4において、様態1-3と同様に、弁本体2に平板部3Baを取り付ける際に、一対の補強部3Bbも同時に取り付けることができるため、作業時間を短縮させることができる。加えて、様態1-4において、一対の補強部3Bbと平板部3Baとは、一体成形されることから、平板部3Baの剛性をさらに確実に大きく設定できるとともに、低コスト化を図ることができる。なお、様態1-1から様態1-4において、一対(2本)の補強部46a,46b,46c,3Bbの軸線L方向の長さは同一のものとしたが、これに限らず、例えば、複数の弁ポート30~32の全てが、一対の補強部の間に位置するものであれば、一対の補強部が互いに非対称(異なる長さ、形状)であってもよいし、一対の補強部における片側が、軸線L方向に延在する複数部材から構成されたものであってもよい。また、様態1-1から様態1-4において、一対の補強部46a,46b,46c,3Bbは、軸線L方向に延在するものとしたが、これに限らず、例えば、垂直方向(Z軸方向)からみて、軸線L方向に延在する一対の補強部に加え、一端側弁座部3At,3Btに固定された補強部を含む、コの字状の補強部、又は、垂直方向(Z軸方向)からみて、前述のコの字状の補強部に加え、他端側弁座部に固定された補強部を含む、ロの字状の補強部としてもよい。これにより、弁座部3及び弁本体2の軸線L方向の変形に加え、軸線Lと直交する方向(Y軸方向)の、弁座部3及び弁本体2の変形も抑制することができる。
【0075】
(様態1-5について)
ここで、図7を用いて、本実施形態の様態1-5における、弁本体2、及び、弁座部3Bの詳細構造について説明する。この様態1-5において、弁座部3Bにおける一対の補強部3Bbが、弁本体2の内周面2bに設けられる一対の保持部2eに保持されている点で、様態1-4と相違するが、その他の基本構成は、様態1-4と同一である。ここで、同一部材には同一符号を付して、重複する説明(<弁座部の詳細構造について>)は省略し、<弁本体の詳細構造について>、及び、<弁座部の取り付け工程について>を説明する。
【0076】
<弁本体の詳細構造について>
弁本体2の側方(Y軸方向)に対向する一対の内周面2bには、図7(b)に示すように、固定面2bfを挟むように、一端側壁部2cから他端側開口部2dまで、軸線L方向に延在するとともに、図7(c)に示すように、軸線L方向からみて、略C字断面形状を有する、一対の取り付け溝2bm及び一対の保持部2eがそれぞれ形成される。この一対の取り付け溝2bm、一対の保持部2e、及び、固定面2bfは、他端側開口部2dを介して、軸線L方向にそれぞれ、視認及びアクセスが可能となっている。
【0077】
<弁座部の取り付け工程について>
ここから、弁座部3Bの弁本体2への取り付け工程を説明する。まず、弁本体2における、固定面2bf、一対の取り付け溝2bm、及び、一対の保持部2eと対向配置される、平板部3Baの接合面34(図7(a)参照)と、一対の補強部3Bbの下面及び外方側面と、に接着剤が塗布される。そして、弁座部3Bを、弁本体2の他端側開口部2dを介して、弁室2a内に挿入させ、さらに、一対の補強部3Bbの上方端及び下方端を、弁本体2の一対の取り付け溝2bm及び一対の保持部2eにそれぞれ係合させて、側方(Y軸方向)の位置決めを確実に行うとともに、一端側弁座部3Btを、一端側ガイド部2cgに当接させて、軸線L方向の位置決めを行う。さらに、平板部3Ba及び一対の補強部3Bbを、弁本体2の固定面2bfに押圧させながら接着固定させる。なお、弁座部3Bを弁本体2への取り付けの際、接合面34と、一対の補強部3Bbの下面及び外方側面に加え、一対の補強部3Bbの上面と、に接着剤が塗布されてもよいし、接合面34にのみ接着剤が塗布されてもよい。
【0078】
以上より、様態1-5において、一対の保持部2eを採用すること以外は、様態1-4と同一の構成を有するため、様態1-4と同様の効果、つまり、従来の第1及び第2の問題点(金属材料からなる弁本体による重量増加、樹脂材料からなる弁本体の撓み及び弁座部の変形)を解消し、弁座部3Bと弁体4とのシール性を向上させ、弁漏れの発生を抑制することができる。また、様態1-5において、様態1-4と同様に、一対の補強部3Bbの取り付け時間を短縮させること、及び、弁座部3Bのさらなる剛性の向上及び低コスト化を図ることができる。さらに、様態1-5において、一対の補強部3Bbの上方端が、弁本体2の内周面2bである一対の保持部2eに保持されることにより、弁本体2の軸線L方向に対する撓みに加え、弁本体2に加わる内圧P(図7(c)参照)により作用する、弁本体2の半径方向外側への変形も抑制することができる。
【0079】
なお、様態1-5における一対の保持部2eは、説明のために、保持対象を、プレス加工により一体成形される弁座部3B(様態1-4)とするものであるが、これに限らず、例えば、一対の補強部46cが溶接固定される弁座部3A(様態1-3)や、別体である一対の補強部46aが接着固定された弁座部3A(様態1-1)としてもよい。ただし、保持対象は、プレス加工により一体成形される弁座部3Bや、一対の補強部46cが溶接固定される弁座部3Aとした方が、一対の保持部2eの耐力が得られるので好ましい。また、様態1-5における一対の保持部2eは、軸線L方向に沿って、連続して形成されるものであるが、これに限らず、例えば、軸線L方向に沿って、不連続に形成されるものであってもよい。
【0080】
(第2の実施形態)
図8から図13を用いて、第2の実施形態に係るスライド式切換弁100Bについて説明する。
【0081】
第1の実施形態の様態1-1から様態1-5におけるスライド式切換弁100Aでは、図1から図7に示すように、弁本体2の内周面2bに沿って、軸線L方向に延在する一対の補強部46a~46c,3Bbを採用し、この一対の補強部46a~46c,3Bbを、弁本体2及び弁座部3A,3Bのそれぞれに固定している。これにより、弁本体2及び弁座部3A,3Bに軸線L方向に対する撓みが生じることを抑制し、平板部3Baと弁体4とのシール性を向上させ、弁漏れの発生を抑制するものである。
【0082】
しかしながら、弁座部3A,3B及び一対の補強部46a~46c,3Bbを弁本体2に取り付ける前において、弁本体2自体の軸線L方向に対する撓みが比較的大きいと、この弁本体2の固定面2bfの撓みを矯正するために、固定面2bfの平面度を視認、及び、平面加工が必要となり、結果、スライド式切換弁100Aにおけるコスト高を引き起こすおそれがあった。
【0083】
よって、この弁本体2自体に生じ得る軸線L方向に対する撓み、及び、この撓みに対する平面加工について、詳細に考察する。まず、図1図10図11(b)に示すように、弁本体2の他端側(X軸プラス側)には、他端側壁部が形成されていない一方、弁本体2の一端側(X軸マイナス側)には、入口ポート20を有する一端側壁部2cが形成されている。よって、弁本体2は、この一端側壁部2cが形成されているために、以下の新たな課題を有していた。
【0084】
第1に、弁本体2が樹脂成形される際に、一端側壁部2cが形成されている部分、及び、各接続流路21~23が形成されている部分では、軸線L方向に沿ったその他の部分と比べ、樹脂材料の半径方向への肉厚差が大きくなっている。このため、樹脂材料が冷えて固まる際に、この樹脂材料の半径方向への肉厚差に起因して、収縮率の差が生じ、この結果、弁本体2の表面が凹んでしまう現象、いわゆる、ヒケが発生するおそれがあった。特に、一端側壁部2c、及び、各接続流路21~23に近接する固定面2bfでは、ヒケに起因して、軸線L方向に対する撓みが生じ、平面度が低くなるおそれがあった(以下、「第1の新たな課題(ヒケにより固定面の平面度が低い)」という)。
【0085】
第2に、樹脂成形後の弁本体2において、前述のヒケに起因する影響などを検品するために、軸線L方向に沿って固定面2bfの平面度を視認する必要がある。ここで、固定面2bfは、弁本体2の他端側(X軸プラス側)から、視認可能(図10(d)参照)である一方、弁本体2の一端側(X軸マイナス側)からは、入口ポート20を有する一端側壁部2cが形成されているため、視認することが困難(図10(c)参照)となっていた。また、視認の結果、固定面2bfの平面度が低い部分を確認した場合には、軸線L方向に沿った固定面2bfに対して研磨などによる平面加工を施す必要があるが、一端側壁部2cが形成されているため、特に、一端側の固定面2bfに対して、平面加工を施すようなアクセスが困難となっていた(以下、「第2の新たな課題(固定面の視認及びアクセスが困難)」という)。
【0086】
第3に、弁座部3A,3B及び一対の補強部46a~46c,3Bbを弁本体2に取り付けた後に、軸線L方向に沿って弁座部3A,3Bの摺接面33における平面度を視認し、場合によっては、摺接面33に対して、軸線L方向に沿って、研磨などによる平面加工を施す必要があるが、第2で述べた内容と同様に、弁本体2の一端側(X軸マイナス側)からは、入口ポート20を有する一端側壁部2cが形成されているため、特に、一端側の摺接面33に対して、視認及びアクセスすることが困難(図10(c)参照)となっていた(以下、「第3の新たな課題(摺接面の視認及びアクセスが困難)」という)。
【0087】
そこで、第2の実施形態に係るスライド式切換弁100Bでは、前述の第1から第3の新たな課題(ヒケにより固定面の平面度が低い、固定面及び摺接面の視認及びアクセスが困難)を解消するために、一端側壁部2cを省略するとともに、新たに、一端側開口部(入口ポート)2c’(20)を形成するものである。
【0088】
ここで、第2の実施形態に係るスライド式切換弁100Bは、弁本体2’が一端側壁部2cを有さない点で、第1の実施形態の様態1-4のスライド式切換弁100Aと相違するが、その他の基本構成は第1の実施形態と同一である。ここで、同一部材には同一符号を付して、重複する説明(<弁座部の詳細構造について>)は省略し、<弁本体の詳細構造について>、<弁座部の取り付け工程について>を説明する。
【0089】
<弁本体の詳細構造について>
ここから、図9から図11を用いて、弁本体2’の詳細構造を説明する。なお、図11(a)の弁本体2’、図11(b)の弁本体2では、下蓋24を省略して示している。弁本体2’は、図9図11(a)に示すように、軸線L方向に対向するように、比較的大きな開口面積を有し、入口ポート20である一端側開口部2c’(両端側の開口部)と、他端側開口部2d(両端側の開口部)と、を備える。また、弁本体2’の下方の内周面2bには、水平方向(XY平面方向)に沿って平坦、かつ、矩形形状を有する固定面2bf(図9図11(a)参照)が形成されており、この固定面2bfには、複数の円筒状の流路からなる、第1接続流路21、出口接続流路22、第2接続流路23が、軸線L方向に沿って順に形成される。ここで、一端側開口部2c’には、図9(b),図9(c)及び図11(a)に示すように、側方(Y軸方向)に対向する位置に、固定面2bfと面一である一対の一端側切欠き部2fが形成される。この一対の一端側切欠き部2fにより、一端側開口部2c’を介して、視認及びアクセスが可能となる、側方(Y軸方向)の固定面2bfの領域を拡大することができる。よって、第2の実施形態において、弁本体2’の固定面2bfは、軸線L方向からみて、一端側開口部2c’及び他端側開口部2dを介して、軸線L方向の全てに亘って、複数の接続流路21,22,23の全縁部を含めて、視認及びアクセスが可能となっている。
【0090】
さらに、弁本体2’の側方(Y軸方向)に対向する一対の内周面2bには、固定面2bfを挟むように、一端側開口部2c’から他端側開口部2dまで、軸線L方向に延在する(図9(b)参照)とともに、軸線L方向からみて、略L字断面形状を有する(図12(d)参照)、一対の取り付け溝2bmが形成される。この一対の取り付け溝2bmは、他端側開口部2dを介して、軸線L方向に、視認及びアクセスが可能となっている。さらに、弁本体2’の固定面2bfの一端側(X軸マイナス側)周縁部には、一端側開口部2c’の内面からなる一対の一端側ガイド部2cgが形成される。
【0091】
このように、第2の実施形態の弁本体2’では、第1の実施形態の様態1-4の弁本体2における一端側壁部2cを省略することにより、ヒケに起因して、一端側の固定面2bfに近接する固定面2bfの平面度が低くなることを抑制することができる。加えて、第2の実施形態の弁本体2’では、ヒケに起因して、各接続流路21,22,23に近接する固定面2bfの平面度が低くなるおそれがあるが、一端側開口部2c’及び他端側開口部2dを介して、軸線L方向の全てに亘って、各接続流路21,22,23の全縁部を含めて、視認及びアクセスが可能、つまり、検査を実施すること及び研磨などによる平面加工を施すことができる。以上より、第2の実施形態の弁本体2’では、第1及び第2の新たな課題(ヒケにより固定面の平面度が低い、固定面の視認及びアクセスが困難)を解消することができる。
【0092】
<弁座部の取り付け工程について>
ここから、図12及び図13を用いて、弁座部3Bの弁本体2’への取り付け工程を説明する。まず、弁本体2’の固定面2bf及び一対の取り付け溝2bmと対向配置される、平板部3Baの接合面34(図12(a)参照)と、一対の補強部3Bbの下面及び外方側面と、に接着剤が塗布される。そして、弁座部3Bを、弁本体2’の他端側開口部2dを介して、弁室2a内に挿入させ、一対の補強部3Bbを、弁本体2’の一対の取り付け溝2bmに当接させて、側方(Y軸方向)の位置決めを行うとともに、一端側弁座部3Btの一側方(Y軸方向のプラス側)及び他側方(Y軸方向のマイナス側)を、一端側ガイド部2cgにそれぞれ当接させて、軸線L方向の位置決めを行う。そして、平板部3Ba及び一対の補強部3Bbを、弁本体2’の固定面2bfに押圧させながら接着固定させる。この弁本体2’に接着固定された弁座部3Bは、図12(c)及び図12(e)に示すように、軸線L方向からみて、一端側開口部2c’及び他端側開口部2dを介して、軸線L方向の全てに亘って、複数の弁ポート30,31,32の全縁部を含めて、視認及びアクセスが可能となっている。
【0093】
このように、第2の実施形態の弁本体2’では、弁座部3Bを弁本体2’に取り付けた後に、一端側開口部2c’及び他端側開口部2dを介して、軸線L方向の全てに亘って、複数の弁ポート30~32の全縁部を含めて、視認及びアクセスが可能、つまり、検査を実施すること及び研磨などによる平面加工を施すことができる。以上より、第2の実施形態の弁本体2’では、第3の新たな課題(摺接面の視認及びアクセスが困難)を解消することができる。
【0094】
以上より、第2の実施形態において、弁本体2’に対して、一端側壁部を省略する一方、比較的大きな開口面積を有する一端側開口部2c’を採用することにより、第1から第3の新たな課題(ヒケにより固定面の平面度が低い、固定面及び摺接面の視認及びアクセスが困難)を解消した上で、第1の実施形態の様態1-4と同様の効果、つまり、従来の従来の第1及び第2の問題点(金属材料からなる弁本体による重量増加、樹脂材料からなる弁本体の撓み及び弁座部の変形)を解消することができる。これにより、弁座部3Bと弁体4とのシール性をさらに向上させ、弁漏れの発生をより抑制することができる。
【0095】
なお、第2の実施形態における弁本体2’は、説明のために、第1の実施形態の様態1-4における弁座部3Bに対して採用されるものであるが、これに限らず、例えば、第1の実施形態の様態1-1から様態1-3における弁座部3A及び一対の補強部46a~46cや、様態1-5における弁座部3Bに対して採用されるものであってもよい。
【0096】
<その他>
本実施形態のスライド式切換弁100(100A,100B)は、例示する冷凍サイクルシステムだけでなく、あらゆる流体装置及び流体回路に適用可能であることは言うまでもない。また、本発明は、上述した各形態や、各実施形態、随所に述べた変形例に限られることなく、本発明の技術的思想から逸脱しない範囲で、適宜の変更や変形が可能である。
【符号の説明】
【0097】
100,100A,100B スライド式切換弁
1 ハウジング
1a 挿入口
1c 第2経路
1d 入口経路
1e 第1経路
1s 出口経路
1C C継手管
1D D継手管
1E E継手管
1S S継手管
2,2’ 弁本体
2a 弁室(弁本体の内部)
2b 内周面
2bf 固定面
2bg 一対の側方ガイド部
2bm 一対の取り付け溝
2c 一端側壁部
2c’ 一端側開口部(両端側の開口部)
2cg 一端側ガイド部
2d 他端側開口部(両端側の開口部)
2e 一対の保持部
2f 一対の一端側切欠き部
20 入口ポート
21 第1接続流路(接続流路)
22 出口接続流路(接続流路)
23 第2接続流路(接続流路)
24 下蓋
25 上蓋
25a 小径部
25b 大径部
26 Oリング
27 止め輪
3,3A,3B 弁座部
3At,3Bt 一端側弁座部
3Ba 平板部
3Bb 補強部
30 第1ポート(弁ポート)
31 出口ポート(弁ポート)
32 第2ポート(弁ポート)
33 摺接面
34 接合面
4 弁体
40 弁体本体
40a 開口縁部
40b 椀状部
40c 椀状凹部
41 一対の台座
41a 嵌合溝
42 ばね部材
40d 支持部材
40da 平面部
40db 一対の立上部
44 連結部
45 クリップ
46a,46b,46c 補強部
5 駆動部
5a ステッピングモータ
5b 直動機構
50 キャン
51 マグネットロータ
52 ステータコイル
53 軸受け部材
53a 第一軸受孔
53b 付勢部材
54 隔壁部材
54a 第二軸受孔
54b 一対の隔壁孔
54d 仕切壁
55 雄ねじ部材
55a 固定部材
55d 雄ねじ部
56 雌ねじ部材
56a ねじ筒部
56a1 雌ねじ部
56b 一対の連結腕部
59 軸材
200 圧縮機
300 室外熱交換機
400 室内熱交換機
500 絞り装置

b1~b4 補強部の幅
G 溝部
h1~h4 補強部の高さ
I1~I4 断面二次モーメント
L 軸線
P 内圧
s シール部
Sa 螺合領域
Ss ねじ収容空間
Th,Th’ 弁座部の厚さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13