IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツングの特許一覧

<>
  • 特開-制御装置及び制御方法 図1
  • 特開-制御装置及び制御方法 図2
  • 特開-制御装置及び制御方法 図3
  • 特開-制御装置及び制御方法 図4
  • 特開-制御装置及び制御方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033795
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】制御装置及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/02 20120101AFI20240306BHJP
【FI】
B60W30/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137625
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】金子 勝一朗
【テーマコード(参考)】
3D241
【Fターム(参考)】
3D241AA40
3D241AA47
3D241AA71
3D241BA16
3D241BB27
3D241CA12
3D241CC08
3D241DA39Z
3D241DB14Z
3D241DB20Z
3D241DC43Z
(57)【要約】
【課題】本発明は、リーン車両の制動力を適切に調節することができる制御装置及び制御方法を得るものである。
【解決手段】本発明に係る制御装置20及び制御方法では、制御装置20の実行部が、リーン車両1のライダーによるブレーキ操作時にリーン車両1の車輪挙動又は車体挙動に応じて当該リーン車両1に生じさせる制動力を調節する制動力調節動作を実行し、実行部は、リーン車両1の旋回姿勢情報、及び、リーン車両1に生じている高さ方向加速度の指標値である高さ方向加速度指標値に基づいて、制動力調節動作を実行する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リーン車両(1)の挙動を制御する制御装置(20)であって、
前記リーン車両(1)のライダーによるブレーキ操作時に前記リーン車両(1)の車輪挙動又は車体挙動に応じて当該リーン車両(1)に生じさせる制動力を調節する制動力調節動作を実行する実行部(22)を備え、
前記実行部(22)は、前記リーン車両(1)の旋回姿勢情報、及び、前記リーン車両(1)に生じている高さ方向加速度の指標値である高さ方向加速度指標値に基づいて、前記制動力調節動作を実行する、
制御装置。
【請求項2】
前記実行部(22)は、前記旋回姿勢情報が、前記リーン車両(1)が直進していることを示す情報である状態と、前記旋回姿勢情報が、前記リーン車両(1)が旋回していることを示す情報である状態とで、前記制動力調節動作を変化させる、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記実行部(22)は、前記旋回姿勢情報が、前記リーン車両(1)が直進していることを示す情報である状態において、前記高さ方向加速度指標値が前記リーン車両(1)に大きい高さ方向加速度が生じていることを示す値である場合、当該高さ方向加速度指標値が当該リーン車両(1)に小さい高さ方向加速度が生じていることを示す値である場合と比べて、前記制動力調節動作において前記リーン車両(1)に生じさせる前記制動力を大きくする、
請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記実行部(22)は、前記旋回姿勢情報が、前記リーン車両(1)が直進していることを示す情報である状態において、前記高さ方向加速度指標値が前記リーン車両(1)に大きい高さ方向加速度が生じていることを示す値である場合、当該高さ方向加速度指標値が当該リーン車両(1)に小さい高さ方向加速度が生じていることを示す値である場合と比べて、前記制動力を低減するための前記制動力調節動作の実行条件を当該制動力調節動作が実行されにくい条件にする、
請求項2又は3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記実行部(22)は、前記旋回姿勢情報が、前記リーン車両(1)が直進していることを示す情報である状態において、前記高さ方向加速度指標値が前記リーン車両(1)に大きい高さ方向加速度が生じていることを示す値である場合、当該高さ方向加速度指標値が当該リーン車両(1)に小さい高さ方向加速度が生じていることを示す値である場合と比べて、前記制動力を増加するための前記制動力調節動作の実行条件を当該制動力調節動作が実行されやすい条件にする、
請求項2又は3に記載の制御装置。
【請求項6】
前記実行部(22)は、前記旋回姿勢情報が、前記リーン車両(1)が直進していることを示す情報である状態において、前記高さ方向加速度指標値が前記リーン車両(1)に大きい高さ方向加速度が生じていることを示す値である場合、当該高さ方向加速度指標値が当該リーン車両(1)に小さい高さ方向加速度が生じていることを示す値である場合と比べて、前記制動力を低減するための前記制動力調節動作の開始タイミングを遅くする、
請求項2又は3に記載の制御装置。
【請求項7】
前記実行部(22)は、前記旋回姿勢情報が、前記リーン車両(1)が直進していることを示す情報である状態において、前記高さ方向加速度指標値が前記リーン車両(1)に大きい高さ方向加速度が生じていることを示す値である場合、当該高さ方向加速度指標値が当該リーン車両(1)に小さい高さ方向加速度が生じていることを示す値である場合と比べて、前記制動力を増加するための前記制動力調節動作の開始タイミングを早める、
請求項2又は3に記載の制御装置。
【請求項8】
前記実行部(22)は、前記旋回姿勢情報が、前記リーン車両(1)が旋回していることを示す情報である状態において、前記高さ方向加速度指標値が前記リーン車両(1)に大きい高さ方向加速度が生じていることを示す値である場合、当該高さ方向加速度指標値が当該リーン車両(1)に小さい高さ方向加速度が生じていることを示す値である場合と比べて、前記制動力調節動作において前記リーン車両(1)に生じさせる前記制動力を小さくする、
請求項2に記載の制御装置。
【請求項9】
前記実行部(22)は、前記旋回姿勢情報が、前記リーン車両(1)が旋回していることを示す情報である状態において、前記高さ方向加速度指標値が前記リーン車両(1)に大きい高さ方向加速度が生じていることを示す値である場合、当該高さ方向加速度指標値が当該リーン車両(1)に小さい高さ方向加速度が生じていることを示す値である場合と比べて、前記制動力を低減するための前記制動力調節動作の実行条件を当該制動力調節動作が実行されやすい条件にする、
請求項2又は8に記載の制御装置。
【請求項10】
前記実行部(22)は、前記旋回姿勢情報が、前記リーン車両(1)が旋回していることを示す情報である状態において、前記高さ方向加速度指標値が前記リーン車両(1)に大きい高さ方向加速度が生じていることを示す値である場合、当該高さ方向加速度指標値が当該リーン車両(1)に小さい高さ方向加速度が生じていることを示す値である場合と比べて、前記制動力を増加するための前記制動力調節動作の実行条件を当該制動力調節動作が実行されにくい条件にする、
請求項2又は8に記載の制御装置。
【請求項11】
前記実行部(22)は、前記旋回姿勢情報が、前記リーン車両(1)が旋回していることを示す情報である状態において、前記高さ方向加速度指標値が前記リーン車両(1)に大きい高さ方向加速度が生じていることを示す値である場合、当該高さ方向加速度指標値が当該リーン車両(1)に小さい高さ方向加速度が生じていることを示す値である場合と比べて、前記制動力を低減するための前記制動力調節動作の開始タイミングを早める、
請求項2又は8に記載の制御装置。
【請求項12】
前記実行部(22)は、前記旋回姿勢情報が、前記リーン車両(1)が旋回していることを示す情報である状態において、前記高さ方向加速度指標値が前記リーン車両(1)に大きい高さ方向加速度が生じていることを示す値である場合、当該高さ方向加速度指標値が当該リーン車両(1)に小さい高さ方向加速度が生じていることを示す値である場合と比べて、前記制動力を増加するための前記制動力調節動作の開始タイミングを遅くする、
請求項2又は8に記載の制御装置。
【請求項13】
リーン車両(1)の挙動の制御方法であって、
制御装置(20)の実行部(22)が、前記リーン車両(1)のライダーによるブレーキ操作時に前記リーン車両(1)の車輪挙動又は車体挙動に応じて当該リーン車両(1)に生じさせる制動力を調節する制動力調節動作を実行し、
前記実行部(22)は、前記リーン車両(1)の旋回姿勢情報、及び、前記リーン車両(1)に生じている高さ方向加速度の指標値である高さ方向加速度指標値に基づいて、前記制動力調節動作を実行する、
制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、リーン車両の制動力を適切に調節することができる制御装置及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モータサイクル等のリーン車両に関する従来の技術として、ライダーの運転を支援する技術がある。例えば、特許文献1では、走行方向又は実質的に走行方向にある障害物を検出するセンサ装置により検出された情報に基づいて、不適切に障害物に接近していることをモータサイクルのライダーへ警告する運転者支援システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-116882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、運転を支援するための技術として、運転者によるブレーキ操作時に車両の車輪挙動又は車体挙動に応じて車両に生じさせる制動力を調節する制動力調節動作を実行する技術がある。ここで、リーン車両は四輪を有する自動車と比較して軽量であるため、リーン車両のタイヤ荷重は変化しやすい。それにより、制動力調節動作がライダーの意図通りに行われない状況が生じ得る。例えば、リーン車両の直進時に、路面の起伏によりタイヤ荷重が変化することに起因して、ライダーのブレーキ入力に対して意図しないタイミングで制動力調節動作が実行される場合がある。また、リーン車両の旋回時に、タイヤ荷重が抜けた場合、車輪挙動又は車体挙動の適正化が不十分となる場合がある。ゆえに、制動力調節動作によって、リーン車両の制動力をより適切に調節することが望ましい。
【0005】
本発明は、上述の課題を背景としてなされたものであり、リーン車両の制動力を適切に調節することができる制御装置及び制御方法を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る制御装置は、リーン車両の挙動を制御する制御装置であって、前記リーン車両のライダーによるブレーキ操作時に前記リーン車両の車輪挙動又は車体挙動に応じて当該リーン車両に生じさせる制動力を調節する制動力調節動作を実行する実行部を備え、前記実行部は、前記リーン車両の旋回姿勢情報、及び、前記リーン車両に生じている高さ方向加速度の指標値である高さ方向加速度指標値に基づいて、前記制動力調節動作を実行する。
【0007】
本発明に係る制御方法は、リーン車両の挙動の制御方法であって、制御装置の実行部が、前記リーン車両のライダーによるブレーキ操作時に前記リーン車両の車輪挙動又は車体挙動に応じて当該リーン車両に生じさせる制動力を調節する制動力調節動作を実行し、前記実行部は、前記リーン車両の旋回姿勢情報、及び、前記リーン車両に生じている高さ方向加速度の指標値である高さ方向加速度指標値に基づいて、前記制動力調節動作を実行する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る制御装置及び制御方法では、制御装置の実行部が、リーン車両のライダーによるブレーキ操作時にリーン車両の車輪挙動又は車体挙動に応じて当該リーン車両に生じさせる制動力を調節する制動力調節動作を実行し、実行部は、リーン車両の旋回姿勢情報、及び、リーン車両に生じている高さ方向加速度の指標値である高さ方向加速度指標値に基づいて、制動力調節動作を実行する。それにより、タイヤ荷重に基づく制動力の調節をリーン車両の旋回状況に応じて行うことができる。ゆえに、リーン車両の制動力を適切に調節することができる。よって、制動力調節動作がライダーの意図通りに行われない状況が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係るリーン車両の概略構成を示す模式図である。
図2】本発明の実施形態に係るブレーキシステムの概略構成を示す模式図である。
図3】本発明の実施形態に係る制御装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
図4】本発明の実施形態に係る制御装置が行う第1の処理例の流れを示すフローチャートである。
図5】本発明の実施形態に係る制御装置が行う第2の処理例の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明に係る制御装置について、図面を用いて説明する。
【0011】
なお、以下では、二輪のモータサイクルに用いられる制御装置について説明しているが(図1中のリーン車両1を参照)、本発明に係る制御装置の制御対象となる車両は、リーン車両であればよく、二輪のモータサイクル以外の他のリーン車両であってもよい。リーン車両は、右方向への旋回走行に際して車体が右側に倒れ、左方向への旋回走行に際して車体が左側に倒れる車両を意味する。リーン車両には、例えば、モータサイクル(自動二輪車、自動三輪車)、自転車等が含まれる。モータサイクルには、エンジンを駆動源とする車両、電気モータを駆動源とする車両等が含まれる。モータサイクルには、例えば、オートバイ、スクーター、電動スクーター等が含まれる。自転車は、ペダルに付与されるライダーの踏力によって路上を推進することが可能な車両を意味する。自転車には、電動アシスト自転車、電動自転車等が含まれる。
【0012】
また、以下では、車輪を駆動するための動力を出力可能な駆動源としてエンジン(具体的には、後述される図1中のエンジン11)が搭載されている場合を説明しているが、駆動源としてエンジン以外の他の駆動源(例えば、電気モータ)が搭載されていてもよく、複数種類の駆動源が搭載されていてもよい。
【0013】
また、以下では、リーン車両を制動する機構として、ブレーキ液を用いて車輪を制動する液圧制御ユニット(具体的には、後述される図1中の液圧制御ユニット12)が採用される場合を説明しているが、リーン車両を制動する機構は、液圧制御ユニット以外であってもよい。例えば、リーン車両を制動する機構として、電力を用いて車輪を制動する機構が採用されてもよい。
【0014】
また、以下で説明する構成及び動作等は一例であり、本発明に係る制御装置及び制御方法は、そのような構成及び動作等である場合に限定されない。
【0015】
また、以下では、同一の又は類似する説明を適宜簡略化又は省略している。また、各図において、同一の又は類似する部材又は部分については、符号を付すことを省略しているか、又は同一の符号を付している。また、細かい構造については、適宜図示を簡略化又は省略している。
【0016】
<リーン車両の構成>
図1図3を参照して、本発明の実施形態に係るリーン車両1の構成について説明する。
【0017】
図1は、リーン車両1の概略構成を示す模式図である。リーン車両1は、本発明に係るリーン車両の一例に相当する二輪のモータサイクルである。リーン車両1は、図1に示されるように、前輪2と、後輪3と、エンジン11と、液圧制御ユニット12と、慣性計測装置(IMU)13と、前輪車輪速センサ14と、後輪車輪速センサ15と、制御装置(ECU)20とを備える。
【0018】
エンジン11は、リーン車両1の駆動源の一例に相当し、車輪を駆動するための動力を出力可能である。例えば、エンジン11には、内部に燃焼室が形成される1又は複数の気筒と、燃焼室に向けて燃料を噴射する燃料噴射弁と、点火プラグとが設けられている。燃料噴射弁から燃料が噴射されることにより燃焼室内に空気及び燃料を含む混合気が形成され、当該混合気が点火プラグにより点火されて燃焼する。それにより、気筒内に設けられたピストンが往復運動し、クランクシャフトが回転するようになっている。また、エンジン11の吸気管には、スロットル弁が設けられており、スロットル弁の開度であるスロットル開度に応じて燃焼室への吸気量が変化するようになっている。
【0019】
液圧制御ユニット12は、車輪に生じる制動力を制御する機能を担うユニットである。例えば、液圧制御ユニット12は、マスタシリンダとホイールシリンダとを接続する油路上に設けられ、ホイールシリンダのブレーキ液圧を制御するためのコンポーネント(例えば、制御弁及びポンプ)を含む。液圧制御ユニット12のコンポーネントの動作が制御されることによって、車輪に生じる制動力が制御される。
【0020】
なお、液圧制御ユニット12を含むブレーキシステム10の詳細については、後述する。また、液圧制御ユニット12には、制御装置20が設けられており、液圧制御ユニット12の動作は制御装置20によって制御される。制御装置20の詳細については、後述する。
【0021】
慣性計測装置13は、3軸のジャイロセンサ及び3方向の加速度センサを備えており、リーン車両1の姿勢を検出する。慣性計測装置13は、例えば、リーン車両1の胴体に設けられている。慣性計測装置13が、3軸のジャイロセンサ及び3方向の加速度センサの一部のみを備えていてもよい。
【0022】
例えば、慣性計測装置13は、リーン車両1のリーン角を検出し、検出結果を出力する。慣性計測装置13が、リーン車両1のリーン角に実質的に換算可能な他の物理量を検出するものであってもよい。リーン角は、鉛直上方向に対するリーン車両1の車体(具体的には、胴体)のロール方向の傾きを表す角度に相当する。リーン角は、リーン車両1の旋回姿勢情報の一例に相当する。旋回姿勢情報は、リーン車両1が旋回することにより変化するリーン車両1の姿勢が反映される物理量に関する情報である。なお、旋回姿勢情報は、リーン車両1の横加速度を含んでもよく、リーン車両1のヨーレートを含んでもよい。リーン車両1の横加速度は、車両座標系での横加速度、又は、当該横加速度に実質的に換算可能な他の物理量を含む。
【0023】
また、例えば、慣性計測装置13は、リーン車両1に生じている高さ方向加速度を検出し、検出結果を出力する。慣性計測装置13が、リーン車両1に生じている高さ方向加速度に実質的に換算可能な他の物理量を検出するものであってもよい。高さ方向加速度は、上向きの加速度である場合に正の値となり、下向きの加速度である場合に負の値となる。高さ方向加速度は、上向きの加速度である場合、絶対値が大きいほど、大きな値となる。高さ方向加速度は、下向きの加速度である場合、絶対値が大きいほど、小さな値となる。高さ方向加速度は、リーン車両1に生じている高さ方向加速度の指標値である高さ方向加速度指標値の一例に相当する。高さ方向加速度は、リーン車両1の車体の高さ方向の軸である縦軸に平行な方向での加速度であってもよく、重力方向に平行な方向での加速度であってもよい。高さ方向加速度指標値は、それらの加速度の値自体であってもよく、それらの加速度に実質的に換算可能な他の物理量であってもよい。
【0024】
前輪車輪速センサ14は、前輪2の車輪速(例えば、前輪2の単位時間当たりの回転数[rpm]又は単位時間当たりの移動距離[km/h]等)を検出する車輪速センサであり、検出結果を出力する。前輪車輪速センサ14が、前輪2の車輪速に実質的に換算可能な他の物理量を検出するものであってもよい。前輪車輪速センサ14は、前輪2に設けられている。
【0025】
後輪車輪速センサ15は、後輪3の車輪速(例えば、後輪3の単位時間当たりの回転数[rpm]又は単位時間当たりの移動距離[km/h]等)を検出する車輪速センサであり、検出結果を出力する。後輪車輪速センサ15が、後輪3の車輪速に実質的に換算可能な他の物理量を検出するものであってもよい。後輪車輪速センサ15は、後輪3に設けられている。
【0026】
ここで、図2を参照して、リーン車両1のブレーキシステム10の概略構成、及び、リーン車両1に生じる制動力の制御について説明する。図2は、ブレーキシステム10の概略構成を示す模式図である。ブレーキシステム10は、図2に示されるように、前輪制動機構31と、後輪制動機構32と、第1ブレーキ操作部41と、第2ブレーキ操作部42とを備える。第1ブレーキ操作部41は、例えば、ブレーキレバーである。前輪制動機構31は、少なくとも第1ブレーキ操作部41に連動して前輪2を制動する。第2ブレーキ操作部42は、例えば、ブレーキペダルである。後輪制動機構32は、少なくとも第2ブレーキ操作部42に連動して後輪3を制動する。前輪制動機構31の一部、及び、後輪制動機構32の一部は、液圧制御ユニット12に含まれる。
【0027】
前輪制動機構31及び後輪制動機構32のそれぞれは、ピストン(図示省略)を内蔵しているマスタシリンダ51と、マスタシリンダ51に付設されているリザーバ52と、リーン車両1の胴体に保持され、ブレーキパッド(図示省略)を有しているブレーキキャリパ53と、ブレーキキャリパ53に設けられているホイールシリンダ54と、マスタシリンダ51のブレーキ液をホイールシリンダ54に流通させる主流路55と、ホイールシリンダ54のブレーキ液を逃がす副流路56とを備える。
【0028】
主流路55には、込め弁(EV)61が設けられている。副流路56は、主流路55のうちの、込め弁61に対するホイールシリンダ54側とマスタシリンダ51側との間をバイパスする。副流路56には、上流側から順に、弛め弁(AV)62と、アキュムレータ63と、ポンプ64とが設けられている。
【0029】
込め弁61は、例えば、非通電状態で開き、通電状態で閉じる電磁弁である。弛め弁62は、例えば、非通電状態で閉じ、通電状態で開く電磁弁である。
【0030】
液圧制御ユニット12は、込め弁61、弛め弁62、アキュムレータ63及びポンプ64を含むブレーキ液圧を制御するためのコンポーネントと、それらのコンポーネントが設けられ、主流路55及び副流路56を構成するための流路が内部に形成されている基体12aを含む。
【0031】
なお、基体12aは、1つの部材によって形成されていてもよく、複数の部材によって形成されていてもよい。また、基体12aが複数の部材によって形成されている場合、各コンポーネントは、異なる部材に分かれて設けられていてもよい。
【0032】
液圧制御ユニット12の上記のコンポーネントの動作は、制御装置20によって制御される。それにより、前輪制動機構31によって前輪2に生じる制動力、及び、後輪制動機構32によって後輪3に生じる制動力が制御される。
【0033】
通常時(つまり、ライダーによるブレーキ操作に応じた制動力を車輪に生じさせるように設定している時)には、制御装置20によって、込め弁61が開放され、弛め弁62が閉鎖される。その状態で、第1ブレーキ操作部41が操作されると、前輪制動機構31において、マスタシリンダ51のピストン(図示省略)が押し込まれてホイールシリンダ54のブレーキ液の液圧が増加し、ブレーキキャリパ53のブレーキパッド(図示省略)が前輪2のロータ2aに押し付けられて、前輪2に制動力が生じる。また、第2ブレーキ操作部42が操作されると、後輪制動機構32において、マスタシリンダ51のピストン(図示省略)が押し込まれてホイールシリンダ54のブレーキ液の液圧が増加し、ブレーキキャリパ53のブレーキパッド(図示省略)が後輪3のロータ3aに押し付けられて、後輪3に制動力が生じる。
【0034】
図3は、制御装置20の機能構成の一例を示すブロック図である。制御装置20は、リーン車両1の挙動を制御する。例えば、制御装置20の一部又は全ては、マイコン、マイクロプロセッサユニット等で構成されている。また、例えば、制御装置20の一部又は全ては、ファームウェア等の更新可能なもので構成されてもよく、CPU等からの指令によって実行されるプログラムモジュール等であってもよい。制御装置20は、例えば、1つであってもよく、また、複数に分かれていてもよい。
【0035】
制御装置20は、図3に示されるように、例えば、取得部21と、実行部22とを備える。また、制御装置20は、リーン車両1の各装置と通信する。
【0036】
取得部21は、リーン車両1の各装置から情報を取得し、実行部22へ出力する。例えば、取得部21は、慣性計測装置13、前輪車輪速センサ14及び後輪車輪速センサ15から情報を取得する。なお、本明細書において、情報の取得には、情報の抽出又は生成等が含まれ得る。
【0037】
実行部22は、リーン車両1の各装置の動作を制御することによって、各種制御を実行する。特に、実行部22は、制動力調節動作を実行する。制動力調節動作は、リーン車両1のライダーによるブレーキ操作時にリーン車両1の車輪挙動又は車体挙動に応じて当該リーン車両1に生じさせる制動力を調節する制御である。例えば、実行部22は、制動力調節動作として、アンチロックブレーキ動作を実行する。以下、アンチロックブレーキ動作について説明する。
【0038】
アンチロックブレーキ動作は、車輪の制動力を増減させて当該車輪のスリップ度をスリップ度目標に制御することによって当該車輪のロックを抑制する制御である。実行部22は、アンチロックブレーキ動作において、ブレーキシステム10の液圧制御ユニット12の各コンポーネントの動作を制御することによって、リーン車両1の車輪に生じる制動力を制御する。
【0039】
スリップ度は、車輪が路面に対して滑っている度合いを示す指標であり、スリップ度としては、例えば、車速と車輪速との差を車速で除算して得られるスリップ率が用いられる。実行部22は、例えば、前輪2及び後輪3の車輪速に基づいてリーン車両1の車速(つまり、車体の速度)を特定し、各車輪速と車速との比較結果に基づいて、各車輪のスリップ率を算出する。なお、スリップ度として、スリップ率以外のパラメータ(例えば、スリップ率に実質的に換算可能な他の物理量)が用いられてもよい。
【0040】
スリップ度目標は、例えば、上限値と下限値とを有する数値範囲である。以下では、スリップ度目標が数値範囲である例を説明するが、スリップ度目標は、数値範囲ではなく、単なる数値であってもよい。
【0041】
実行部22は、車輪にロック又はロックの可能性が生じた場合に、アンチロックブレーキ動作を開始する。アンチロックブレーキ動作では、車輪の制動力が、ロックを回避し得るような制動力に調整される。具体的には、実行部22は、車輪のスリップ度が上昇して当該車輪のスリップ度目標の上限値を超えた場合に、アンチロックブレーキ動作を開始する。
【0042】
アンチロックブレーキ動作が開始されると、実行部22は、まず、車輪の制動力を低減することによって、当該車輪のスリップ度を低減する。具体的には、実行部22は、込め弁61が閉鎖され、弛め弁62が開放された状態にし、その状態で、ポンプ64を駆動させることにより、ホイールシリンダ54のブレーキ液の液圧を低減して車輪に生じる制動力を低減する。
【0043】
そして、実行部22は、込め弁61及び弛め弁62の双方を閉鎖することにより、ホイールシリンダ54のブレーキ液の液圧を保持し車輪に生じる制動力を保持する。その後、実行部22は、車輪のスリップ度が下降して当該車輪のスリップ度目標の下限値を下回った場合に、当該車輪の制動力を増加することによって、当該車輪のスリップ度を増加する。具体的には、実行部22は、込め弁61を開放し、弛め弁62を閉鎖することにより、ホイールシリンダ54のブレーキ液の液圧を増加して車輪に生じる制動力を増加する。
【0044】
その後、車輪のスリップ度が上昇して当該車輪のスリップ度目標の上限値を再度超えた場合、車輪の制動力を低減することにより当該車輪のスリップ度を低減する制御が再度行われる。このように、車輪の制動力を低減することにより当該車輪のスリップ度を低減する制御、当該車輪の制動力を保持する制御、及び、当該車輪の制動力を増加することにより当該車輪のスリップ度を増加する制御が、繰り返し行われる。なお、実行部22は、上記のように、アンチロックブレーキ動作において、車輪のスリップ度がスリップ度目標の上限値と下限値との間である場合に、車輪の制動力を保持する制御を行ってもよい。
【0045】
上記の例では、実行部22は、前輪制動機構31及び後輪制動機構32の各々の動作を個別に制御することによって、前輪2に生じる制動力と後輪3に生じる制動力とを個別に制御することができる。ただし、液圧制御ユニット12は、前輪2に生じる制動力、および、後輪3に生じる制動力の一方のみを制御できるものであってもよい。
【0046】
<制御装置の動作>
図4及び図5を参照して、本発明の実施形態に係る制御装置20の動作について説明する。
【0047】
上述したように、制御装置20の実行部22は、制動力調節動作を実行する。本実施形態では、実行部22は、リーン車両1の旋回姿勢情報、及び、リーン車両1に生じている高さ方向加速度の指標値である高さ方向加速度指標値に基づいて、制動力調節動作を実行する。それにより、後述するように、リーン車両1の制動力を適切に調節することが実現される。具体的には、後述するように、以下で説明する処理例によれば、リーン車両1の直進時に、ライダーが意図しないタイミングで制動力調節動作が実行されることを抑制でき、リーン車両1の旋回時に、制動力調節動作による車輪挙動又は車体挙動の適正化が不十分になることを抑制できる。
【0048】
以下では、車輪挙動に応じてリーン車両1に生じさせる制動力を低減するための制動力調節動作について主に説明する。リーン車両1に生じさせる制動力を低減するための制動力調節動作は、上述したように、車輪のスリップ度が上昇して当該車輪のスリップ度目標の上限値を超えた場合に実行される。ただし、旋回姿勢情報、及び、高さ方向加速度指標値に基づいて実行される制動力調節動作は、後述するように、このような動作に限定されない。
【0049】
以下、制御装置20が行う制動力調節動作に関する処理例として、図4の第1の処理例と、図5の第2の処理例とを順に説明する。なお、図4に示される第1の処理例の制御フローと、図5に示される第2の処理例の制御フローとが並行して実行されてもよい。ただし、図4に示される第1の処理例の制御フローと、図5に示される第2の処理例の制御フローとのうちの一方のみが実行されてもよい。
【0050】
図4は、制御装置20が行う第1の処理例の流れを示すフローチャートである。図4におけるステップS101は、図4に示される制御フローの開始に対応する。
【0051】
図4に示される制御フローが開始されると、ステップS102において、実行部22は、リーン車両1が直進しているか否かを判定する。リーン車両1が直進していると判定された場合(ステップS102/YES)、ステップS103に進む。一方、リーン車両1が旋回していると判定された場合(ステップS102/NO)、ステップS106に進む。
【0052】
ステップS102では、実行部22は、リーン車両1の旋回姿勢情報に基づいて、リーン車両1が直進しているか否かを判定する。旋回姿勢情報が、リーン車両1が直進していることを示す情報である場合、実行部22は、リーン車両1が直進していると判定する。一方、旋回姿勢情報が、リーン車両1が旋回していることを示す情報である場合、実行部22は、リーン車両1が旋回していると判定する。
【0053】
リーン車両1のリーン角が旋回姿勢情報として用いられる場合、例えば、リーン角が基準リーン角より小さい場合、実行部22は、リーン車両1が直進していると判定する。一方、リーン角が基準リーン角より大きい場合、実行部22は、リーン車両1が旋回していると判定する。基準リーン角は、例えば、リーン車両1が直進しているか否かを判定できる程度に小さな角度に設定される。なお、リーン角が基準リーン角と一致する場合、実行部22は、リーン車両1が直進していると判定してもよく、リーン車両1が旋回していると判定してもよい。ただし、ステップS102において、リーン車両1の横加速度、又は、リーン車両1のヨーレート等のリーン角以外の情報が旋回姿勢情報として用いられてもよい。
【0054】
リーン車両1が直進しており、ステップS102でYESと判定された場合、ステップS103において、実行部22は、リーン車両1に生じている高さ方向加速度が基準加速度より大きいか否かを判定する。
【0055】
ステップS103の基準加速度は、例えば、タイヤ荷重が抜けてしまい過度に小さくなったことを判断できる程度に小さな値(例えば、重力加速度の半分程度の値、又は、0に近い値)に設定される。実行部22は、高さ方向加速度が基準加速度より大きい場合、タイヤ荷重が抜けてしまい過度に小さくなったと判断できる。
【0056】
高さ方向加速度が基準加速度より小さいと判定された場合(ステップS103/NO)、ステップS104に進み、ステップS104において、実行部22は、制動力調節動作における制動力の調節量の制御モードを通常モードに設定する。一方、高さ方向加速度が基準加速度より大きいと判定された場合(ステップS103/YES)、ステップS105に進み、ステップS105において、実行部22は、制動力調節動作における制動力の調節量の制御モードを調節量低減モードに設定する。なお、高さ方向加速度が基準加速度と一致する場合、ステップS104に進んでもよく、ステップS105に進んでもよい。ステップS104又はステップS105の次に、ステップS102に戻る。
【0057】
実行部22は、調節量の制御モードが調節量低減モードである場合、調節量の制御モードが通常モードである場合と比較して、リーン車両1に生じさせる制動力を低減するための制動力調節動作における制動力の調節量を小さくする。例えば、実行部22は、制動力調節動作において、調節量の制御モードが通常モードである場合、車輪のスリップ率等に基づいて、制動力の低減量を決定し、決定した低減量でリーン車両1に生じさせる制動力を低減する。ここで、実行部22は、調節量の制御モードが調節量低減モードである場合、調節量の制御モードが通常モードである場合と比較して、制動力調節動作における制動力の低減量を小さくする。それにより、制動力調節動作においてリーン車両1に生じさせる制動力が大きくなる。
【0058】
上記のように、実行部22は、旋回姿勢情報が、リーン車両1が直進していることを示す情報である状態において、高さ方向加速度指標値がリーン車両1に大きい高さ方向加速度が生じていることを示す値(つまり、リーン車両1に大きい高さ方向加速度が生じてタイヤ荷重が小さくなっていることを示す値)である場合、当該高さ方向加速度指標値が当該リーン車両1に小さい高さ方向加速度が生じていることを示す値(つまり、リーン車両1に小さい高さ方向加速度が生じてタイヤ荷重が大きくなっていることを示す値)である場合と比べて、制動力調節動作においてリーン車両1に生じさせる制動力を大きくする。それにより、リーン車両1の直進時に、タイヤ荷重が抜けて小さくなった後にタイヤ荷重が通常に戻った場合に、リーン車両1に生じさせる制動力が小さくなることを抑制できる。なお、実行部22は、リーン車両1の直進時に、制動力調節動作においてリーン車両1に生じさせる制動力を、リーン車両1に生じている高さ方向加速度に応じて段階的に変化させてもよく、連続的に変化させてもよい。
【0059】
ここで、リーン車両1が起伏の大きい路面を直進する場合において、ライダーはリーン車両1を制動する性能がある程度の水準に維持されることを望む。上記のように、リーン車両1の直進時に、タイヤ荷重が抜けて小さくなった後にタイヤ荷重が通常に戻った場合に、リーン車両1に生じさせる制動力が小さくなることを抑制することによって、リーン車両1に生じさせる制動力が不足してリーン車両1の制動が妨げられる状況が抑制される。それにより、制動力調節動作がライダーの意図通りに行われない状況が抑制される。
【0060】
リーン車両1が旋回しており、ステップS102でNOと判定された場合、ステップS106において、実行部22は、ステップS103と同様に、リーン車両1に生じている高さ方向加速度が基準加速度より大きいか否かを判定する。
【0061】
ステップS106の基準加速度は、ステップS103の基準加速度と同様である。つまり、ステップS106においても、ステップS103と同様に、実行部22は、高さ方向加速度が基準加速度より大きい場合、タイヤ荷重が抜けてしまい過度に小さくなったと判断できる。
【0062】
高さ方向加速度が基準加速度より小さいと判定された場合(ステップS106/NO)、ステップS107に進み、ステップS107において、実行部22は、制動力調節動作における制動力の調節量の制御モードを通常モードに設定する。一方、高さ方向加速度が基準加速度より大きいと判定された場合(ステップS106/YES)、ステップS108に進み、ステップS108において、実行部22は、制動力調節動作における制動力の調節量の制御モードを調節量増大モードに設定する。なお、高さ方向加速度が基準加速度と一致する場合、ステップS107に進んでもよく、ステップS108に進んでもよい。ステップS107又はステップS108の次に、ステップS102に戻る。
【0063】
実行部22は、調節量の制御モードが調節量増大モードである場合、調節量の制御モードが通常モードである場合と比較して、リーン車両1に生じさせる制動力を低減するための制動力調節動作における制動力の調節量を大きくする。つまり、実行部22は、調節量の制御モードが調節量増大モードである場合、調節量の制御モードが通常モードである場合と比較して、制動力調節動作における制動力の低減量を大きくする。それにより、制動力調節動作においてリーン車両1に生じさせる制動力が小さくなる。
【0064】
上記のように、実行部22は、旋回姿勢情報が、リーン車両1が旋回していることを示す情報である状態において、高さ方向加速度指標値がリーン車両1に大きい高さ方向加速度が生じていることを示す値である場合、当該高さ方向加速度指標値が当該リーン車両1に小さい高さ方向加速度が生じていることを示す値である場合と比べて、制動力調節動作においてリーン車両1に生じさせる制動力を小さくする。それにより、リーン車両1の旋回時に、タイヤ荷重が抜けて小さくなった場合に、リーン車両1に生じさせる制動力が効果的に小さくなる。なお、実行部22は、リーン車両1の旋回時に、制動力調節動作においてリーン車両1に生じさせる制動力を、リーン車両1に生じている高さ方向加速度に応じて段階的に変化させてもよく、連続的に変化させてもよい。
【0065】
ここで、リーン車両1が起伏の大きい路面を旋回する場合において、ライダーはリーン車両1の車輪挙動又は車体挙動が適正化されることを望む。上記のように、リーン車両1の旋回時に、タイヤ荷重が抜けて小さくなった場合に、リーン車両1に生じさせる制動力を効果的に小さくすることによって、車輪のロックの抑制が不十分となる状況が抑制される。それにより、制動力調節動作がライダーの意図通りに行われない状況が抑制される。
【0066】
図5は、制御装置20が行う第2の処理例の流れを示すフローチャートである。図5におけるステップS201は、図5に示される制御フローの開始に対応する。
【0067】
図5に示される制御フローでは、上述した図4に示される制御フロー中のステップS104、S105、S107、S108をステップS204、S205、S207、S208に置き換えた制御フローである。
【0068】
図5に示される制御フローが開始されると、上述した図4に示される制御フローと同様に、ステップS102において、実行部22は、リーン車両1が直進しているか否かを判定する。
【0069】
リーン車両1が直進しており、ステップS102でYESと判定され、ステップS103において、高さ方向加速度が基準加速度より小さいと判定された場合(ステップS103/NO)、ステップS204に進み、ステップS204において、実行部22は、スリップ度目標の上限値(つまり、リーン車両1に生じさせる制動力を低減するための制動力調節動作の実行可否の判定で用いられる閾値)を基準値に設定する。一方、ステップS103において、高さ方向加速度が基準加速度より大きいと判定された場合(ステップS103/YES)、ステップS205に進み、ステップS205において、実行部22は、スリップ度目標の上限値を基準値より大きな値に設定する。なお、高さ方向加速度が基準加速度と一致する場合、ステップS204に進んでもよく、ステップS205に進んでもよい。ステップS204又はステップS205の次に、ステップS102に戻る。
【0070】
上述したように、例えば、実行部22は、車輪のスリップ度が上昇して当該車輪のスリップ度目標の上限値を超えた場合に、リーン車両1に生じさせる制動力を低減するための制動力調節動作を実行する。ゆえに、スリップ度目標の上限値を基準値よりも大きくすることによって、スリップ度目標の上限値が基準値である場合と比較して、制動力を低減するための制動力調節動作の実行条件が、当該制動力調節動作が実行されにくい条件となる。また、スリップ度目標の上限値を基準値よりも大きくすることによって、例えば、車輪のスリップ度が上昇する過程において、スリップ度目標の上限値が基準値である場合と比較して、制動力を低減するための制動力調節動作の開始タイミングが遅くなる。
【0071】
上記のように、実行部22は、旋回姿勢情報が、リーン車両1が直進していることを示す情報である状態において、高さ方向加速度指標値がリーン車両1に大きい高さ方向加速度が生じていることを示す値である場合、当該高さ方向加速度指標値が当該リーン車両1に小さい高さ方向加速度が生じていることを示す値である場合と比べて、制動力を低減するための制動力調節動作の実行条件を当該制動力調節動作が実行されにくい条件にする。それにより、リーン車両1の直進時に、タイヤ荷重が抜けて小さくなった後にタイヤ荷重が通常に戻った場合に、リーン車両1に生じさせる制動力を低減する制御が残存することを抑制できる。なお、実行部22は、リーン車両1の直進時に、制動力調節動作の実行されやすさを、リーン車両1に生じている高さ方向加速度に応じて段階的に変化させてもよく、連続的に変化させてもよい。
【0072】
上述したように、リーン車両1が起伏の大きい路面を直進する場合において、ライダーはリーン車両1を制動する性能がある程度の水準に維持されることを望む。上記のように、リーン車両1の直進時に、タイヤ荷重が抜けて小さくなった後にタイヤ荷重が通常に戻った場合に、リーン車両1に生じさせる制動力を低減する制御が残存することを抑制することによって、リーン車両1に生じさせる制動力が不足してリーン車両1の制動が妨げられる状況が抑制される。それにより、制動力調節動作がライダーの意図通りに行われない状況が抑制される。
【0073】
また、上記のように、実行部22は、旋回姿勢情報が、リーン車両1が直進していることを示す情報である状態において、高さ方向加速度指標値がリーン車両1に大きい高さ方向加速度が生じていることを示す値である場合、当該高さ方向加速度指標値が当該リーン車両1に小さい高さ方向加速度が生じていることを示す値である場合と比べて、制動力を低減するための制動力調節動作の開始タイミングを遅くする。それにより、リーン車両1の直進時に、タイヤ荷重が抜けて小さくなった後にタイヤ荷重が通常に戻った場合に、リーン車両1に生じさせる制動力を低減する制御が残存することを抑制できる。なお、実行部22は、リーン車両1の直進時に、制動力調節動作の開始タイミングを、リーン車両1に生じている高さ方向加速度に応じて段階的に変化させてもよく、連続的に変化させてもよい。
【0074】
上述したように、リーン車両1が起伏の大きい路面を直進する場合において、ライダーはリーン車両1を制動する性能がある程度の水準に維持されることを望む。上記のように、リーン車両1の直進時に、タイヤ荷重が抜けて小さくなった後にタイヤ荷重が通常に戻った場合に、リーン車両1に生じさせる制動力を低減する制御が残存することを抑制することによって、リーン車両1に生じさせる制動力が不足してリーン車両1の制動が妨げられる状況が抑制される。それにより、制動力調節動作がライダーの意図通りに行われない状況が抑制される。
【0075】
リーン車両1が旋回しており、ステップS102でNOと判定され、ステップS106において、高さ方向加速度が基準加速度より小さいと判定された場合(ステップS106/NO)、ステップS207に進み、ステップS207において、実行部22は、スリップ度目標の上限値(つまり、リーン車両1に生じさせる制動力を低減するための制動力調節動作の実行可否の判定で用いられる閾値)を基準値に設定する。一方、高さ方向加速度が基準加速度より大きいと判定された場合(ステップS106/YES)、ステップS208に進み、ステップS208において、実行部22は、スリップ度目標の上限値を基準値より小さな値に設定する。なお、高さ方向加速度が基準加速度と一致する場合、ステップS207に進んでもよく、ステップS208に進んでもよい。ステップS207又はステップS208の次に、ステップS102に戻る。
【0076】
上述したように、例えば、実行部22は、車輪のスリップ度が上昇して当該車輪のスリップ度目標の上限値を超えた場合に、リーン車両1に生じさせる制動力を低減するための制動力調節動作を実行する。ゆえに、スリップ度目標の上限値を基準値よりも小さくすることによって、スリップ度目標の上限値が基準値である場合と比較して、制動力を低減するための制動力調節動作の実行条件が、当該制動力調節動作が実行されやすい条件となる。また、スリップ度目標の上限値を基準値よりも小さくすることによって、例えば、車輪のスリップ度が上昇する過程において、スリップ度目標の上限値が基準値である場合と比較して、制動力を低減するための制動力調節動作の開始タイミングが早まる。
【0077】
上記のように、実行部22は、旋回姿勢情報が、リーン車両1が旋回していることを示す情報である状態において、高さ方向加速度指標値がリーン車両1に大きい高さ方向加速度が生じていることを示す値である場合、当該高さ方向加速度指標値が当該リーン車両1に小さい高さ方向加速度が生じていることを示す値である場合と比べて、制動力を低減するための制動力調節動作の実行条件を当該制動力調節動作が実行されやすい条件にする。それにより、リーン車両1の旋回時に、タイヤ荷重が抜けて小さくなった場合に、リーン車両1に生じさせる制動力を低減する調節が行われやすくなる。なお、実行部22は、リーン車両1の旋回時に、制動力調節動作の実行されやすさを、リーン車両1に生じている高さ方向加速度に応じて段階的に変化させてもよく、連続的に変化させてもよい。
【0078】
上述したように、リーン車両1が起伏の大きい路面を旋回する場合において、ライダーはリーン車両1の車輪挙動又は車体挙動が適正化されることを望む。上記のように、リーン車両1の旋回時に、タイヤ荷重が抜けて小さくなった場合に、リーン車両1に生じさせる制動力を低減する調節を行われやすくすることによって、車輪のロックの抑制が不十分となる状況が抑制される。それにより、制動力調節動作がライダーの意図通りに行われない状況が抑制される。
【0079】
また、上記のように、実行部22は、旋回姿勢情報が、リーン車両1が旋回していることを示す情報である状態において、高さ方向加速度指標値がリーン車両1に大きい高さ方向加速度が生じていることを示す値である場合、当該高さ方向加速度指標値が当該リーン車両1に小さい高さ方向加速度が生じていることを示す値である場合と比べて、制動力を低減するための制動力調節動作の開始タイミングを早める。それにより、リーン車両1の旋回時に、車輪のタイヤ荷重が抜けて小さくなった場合に、リーン車両1に生じさせる制動力を低減する調節の開始タイミングが早くなる。なお、実行部22は、リーン車両1の旋回時に、制動力調節動作の開始タイミングを、リーン車両1に生じている高さ方向加速度に応じて段階的に変化させてもよく、連続的に変化させてもよい。
【0080】
上述したように、リーン車両1が起伏の大きい路面を旋回する場合において、ライダーはリーン車両1の車輪挙動又は車体挙動が適正化されることを望む。上記のように、リーン車両1の旋回時に、タイヤ荷重が抜けて小さくなった場合に、リーン車両1に生じさせる制動力を低減する調節の開始タイミングを早くすることによって、車輪のロックの抑制が不十分となる状況が抑制される。それにより、制動力調節動作がライダーの意図通りに行われない状況が抑制される。
【0081】
上記では、車輪挙動に応じてリーン車両1に生じさせる制動力を低減するための制動力調節動作について主に説明した。ただし、旋回姿勢情報、及び、高さ方向加速度指標値に基づいて実行される制動力調節動作は、リーン車両1の車輪挙動又は車体挙動に応じて当該リーン車両1に生じさせる制動力を調節する動作であればよく、上記の動作に限定されない。例えば、旋回姿勢情報、及び、高さ方向加速度指標値に基づいて実行される制動力調節動作は、車体挙動に応じてリーン車両1に生じさせる制動力を低減するための動作であってもよい。また、例えば、旋回姿勢情報、及び、高さ方向加速度指標値に基づいて実行される制動力調節動作は、車輪挙動又は車体挙動に応じてリーン車両1に生じさせる制動力を増加するための動作であってもよい。車輪挙動に応じた制動力調節動作は、例えば、車輪挙動を適正化するために行われる。車体挙動に応じた制動力調節動作は、例えば、車体挙動を適正化するために行われる。
【0082】
まず、車体挙動に応じてリーン車両1に生じさせる制動力を低減するための制動力調節動作が旋回姿勢情報、及び、高さ方向加速度指標値に基づいて実行される例について説明する。
【0083】
この例では、図4及び図5を参照して説明した例と同様に、実行部22は、旋回姿勢情報が、リーン車両1が直進していることを示す情報である状態において、高さ方向加速度指標値がリーン車両1に大きい高さ方向加速度が生じていることを示す値である場合、当該高さ方向加速度指標値が当該リーン車両1に小さい高さ方向加速度が生じていることを示す値である場合と比べて、制動力調節動作においてリーン車両1に生じさせる制動力を大きくしてもよく、制動力を低減するための制動力調節動作の実行条件を当該制動力調節動作が実行されにくい条件にしてもよく、制動力を低減するための制動力調節動作の開始タイミングを遅くしてもよい。それにより、リーン車両1の直進時に、リーン車両1に生じさせる制動力が不足してリーン車両1の制動が妨げられる状況が抑制される。
【0084】
また、この例では、図4及び図5を参照して説明した例と同様に、実行部22は、旋回姿勢情報が、リーン車両1が旋回していることを示す情報である状態において、高さ方向加速度指標値がリーン車両1に大きい高さ方向加速度が生じていることを示す値である場合、当該高さ方向加速度指標値が当該リーン車両1に小さい高さ方向加速度が生じていることを示す値である場合と比べて、制動力調節動作においてリーン車両1に生じさせる制動力を小さくしてもよく、制動力を低減するための制動力調節動作の実行条件を当該制動力調節動作が実行されやすい条件にしてもよく、制動力を低減するための制動力調節動作の開始タイミングを早めてもよい。それにより、リーン車両1の旋回時に、車体挙動の適正化が不十分となる状況が抑制される。
【0085】
次に、車輪挙動又は車体挙動に応じてリーン車両1に生じさせる制動力を増加するための制動力調節動作が旋回姿勢情報、及び、高さ方向加速度指標値に基づいて実行される例について説明する。例えば、リーン車両1に生じさせる制動力を増加するための制動力調節動作は、上述したように、車輪のスリップ度が下降して当該車輪のスリップ度目標の下限値を下回った場合に実行される。
【0086】
この例では、図4及び図5を参照して説明した例と同様に、実行部22は、旋回姿勢情報が、リーン車両1が直進していることを示す情報である状態において、高さ方向加速度指標値がリーン車両1に大きい高さ方向加速度が生じていることを示す値である場合、当該高さ方向加速度指標値が当該リーン車両1に小さい高さ方向加速度が生じていることを示す値である場合と比べて、制動力調節動作においてリーン車両1に生じさせる制動力を大きくしてもよい(例えば、制動力の増加量を大きくしてもよい)。それにより、リーン車両1の直進時に、リーン車両1に生じさせる制動力が不足してリーン車両1の制動が妨げられる状況が抑制される。
【0087】
ここで、実行部22は、旋回姿勢情報が、リーン車両1が直進していることを示す情報である状態において、高さ方向加速度指標値がリーン車両1に大きい高さ方向加速度が生じていることを示す値である場合、当該高さ方向加速度指標値が当該リーン車両1に小さい高さ方向加速度が生じていることを示す値である場合と比べて、制動力を増加するための制動力調節動作の実行条件を当該制動力調節動作が実行されやすい条件にしてもよく、制動力を増加するための制動力調節動作の開始タイミングを早めてもよい。それにより、リーン車両1の直進時に、リーン車両1に生じさせる制動力が不足してリーン車両1の制動が妨げられる状況が抑制される。
【0088】
例えば、実行部22は、スリップ度目標の下限値(つまり、リーン車両1に生じさせる制動力を増加するための制動力調節動作の実行可否の判定で用いられる閾値)を基準値よりも大きくすることによって、制動力を増加するための制動力調節動作の実行条件を当該制動力調節動作が実行されやすい条件にすること、及び、制動力を増加するための制動力調節動作の開始タイミングを早めることができる。
【0089】
また、この例では、図4及び図5を参照して説明した例と同様に、実行部22は、旋回姿勢情報が、リーン車両1が旋回していることを示す情報である状態において、高さ方向加速度指標値がリーン車両1に大きい高さ方向加速度が生じていることを示す値である場合、当該高さ方向加速度指標値が当該リーン車両1に小さい高さ方向加速度が生じていることを示す値である場合と比べて、制動力調節動作においてリーン車両1に生じさせる制動力を小さくしてもよい(例えば、制動力の増加量を小さくしてもよい)。それにより、リーン車両1の旋回時に、車輪挙動又は車体挙動の適正化が不十分となる状況が抑制される。
【0090】
ここで、実行部22は、旋回姿勢情報が、リーン車両1が旋回していることを示す情報である状態において、高さ方向加速度指標値がリーン車両1に大きい高さ方向加速度が生じていることを示す値である場合、当該高さ方向加速度指標値が当該リーン車両1に小さい高さ方向加速度が生じていることを示す値である場合と比べて、制動力を増加するための制動力調節動作の実行条件を当該制動力調節動作が実行されにくい条件にしてもよく、制動力を増加するための制動力調節動作の開始タイミングを遅くしてもよい。それにより、リーン車両1の旋回時に、車輪挙動又は車体挙動の適正化が不十分となる状況が抑制される。
【0091】
例えば、実行部22は、スリップ度目標の下限値(つまり、リーン車両1に生じさせる制動力を増加するための制動力調節動作の実行可否の判定で用いられる閾値)を基準値よりも小さくすることによって、制動力を増加するための制動力調節動作の実行条件を当該制動力調節動作が実行されにくい条件にすること、及び、制動力を増加するための制動力調節動作の開始タイミングを遅くすることができる。
【0092】
なお、上記で図4及び図5を参照して説明した処理に対して、一部の処理の追加、削除又は変更等が適宜行われてもよい。
【0093】
例えば、上記の例では、ステップS103において、高さ方向加速度としてリーン車両1に生じている高さ方向加速度が用いられている。ただし、実行部22は、リーン車両1に生じている高さ方向加速度、及び、リーン車両1のピッチ角速度に基づいて、前輪2に生じている高さ方向加速度と、後輪3に生じている高さ方向加速度とをそれぞれ特定してもよい。その場合、実行部22は、前輪2に対する制動力調整動作に関する処理では、高さ方向加速度として前輪2に生じている高さ方向加速度を用い、後輪3に対する制動力調整動作に関する処理では、高さ方向加速度として後輪3に生じている高さ方向加速度を用いることができる。
【0094】
また、例えば、実行部22は、リーン車両1に生じている高さ方向加速度に対して、座標変換又はローパスフィルタ等の必要な前処理を事前に行った上で、ステップS103の処理を行ってもよい。
【0095】
<制御装置の効果>
本発明の実施形態に係る制御装置20の効果について説明する。
【0096】
制御装置20において、実行部22は、リーン車両1のライダーによるブレーキ操作時にリーン車両1の車輪挙動又は車体挙動に応じて当該リーン車両1に生じさせる制動力を調節する制動力調節動作を実行する。ここで、実行部22は、リーン車両1の旋回姿勢情報、及び、リーン車両1に生じている高さ方向加速度の指標値である高さ方向加速度指標値に基づいて、制動力調節動作を実行する。それにより、タイヤ荷重に基づく制動力の調節をリーン車両1の旋回状況に応じて行うことができる。ゆえに、リーン車両1の制動力を適切に調節することができる。よって、制動力調節動作がライダーの意図通りに行われない状況が抑制される。
【0097】
好ましくは、制御装置20において、実行部22は、旋回姿勢情報が、リーン車両1が直進していることを示す情報である状態と、旋回姿勢情報が、リーン車両1が旋回していることを示す情報である状態とで、制動力調節動作を変化させる。それにより、タイヤ荷重に基づく制動力の調節をリーン車両1の旋回状況に応じて行うことが適切に実現される。ゆえに、リーン車両1の制動力をより適切に調節することができる。よって、制動力調節動作がライダーの意図通りに行われない状況が適切に抑制される。
【0098】
好ましくは、制御装置20において、実行部22は、旋回姿勢情報が、リーン車両1が直進していることを示す情報である状態において、高さ方向加速度指標値がリーン車両1に大きい高さ方向加速度が生じていることを示す値である場合、当該高さ方向加速度指標値が当該リーン車両1に小さい高さ方向加速度が生じていることを示す値である場合と比べて、制動力調節動作においてリーン車両1に生じさせる制動力を大きくする。それにより、リーン車両1の直進時に、タイヤ荷重が抜けて小さくなった場合に、リーン車両1に生じさせる制動力が小さくなることを抑制できる。ゆえに、リーン車両1の直進時に、リーン車両1に生じさせる制動力が不足してリーン車両1の制動が妨げられる状況が抑制される。
【0099】
好ましくは、制御装置20において、実行部22は、旋回姿勢情報が、リーン車両1が直進していることを示す情報である状態において、高さ方向加速度指標値がリーン車両1に大きい高さ方向加速度が生じていることを示す値である場合、当該高さ方向加速度指標値が当該リーン車両1に小さい高さ方向加速度が生じていることを示す値である場合と比べて、制動力を低減するための制動力調節動作の実行条件を当該制動力調節動作が実行されにくい条件にする。それにより、リーン車両1の直進時に、タイヤ荷重が抜けて小さくなった場合に、リーン車両1に生じさせる制動力を低減する制御が残存することを抑制できる。ゆえに、リーン車両1の直進時に、リーン車両1に生じさせる制動力が不足してリーン車両1の制動が妨げられる状況が抑制される。
【0100】
好ましくは、制御装置20において、実行部22は、旋回姿勢情報が、リーン車両1が直進していることを示す情報である状態において、高さ方向加速度指標値がリーン車両1に大きい高さ方向加速度が生じていることを示す値である場合、当該高さ方向加速度指標値が当該リーン車両1に小さい高さ方向加速度が生じていることを示す値である場合と比べて、制動力を増加するための制動力調節動作の実行条件を当該制動力調節動作が実行されやすい条件にする。それにより、リーン車両1の直進時に、タイヤ荷重が抜けて小さくなった場合に、リーン車両1に生じさせる制動力を増加する調節が行われやすくなる。ゆえに、リーン車両1の直進時に、リーン車両1に生じさせる制動力が不足してリーン車両1の制動が妨げられる状況が抑制される。
【0101】
好ましくは、制御装置20において、実行部22は、旋回姿勢情報が、リーン車両1が直進していることを示す情報である状態において、高さ方向加速度指標値がリーン車両1に大きい高さ方向加速度が生じていることを示す値である場合、当該高さ方向加速度指標値が当該リーン車両1に小さい高さ方向加速度が生じていることを示す値である場合と比べて、制動力を低減するための制動力調節動作の開始タイミングを遅くする。それにより、リーン車両1の直進時に、タイヤ荷重が抜けて小さくなった場合に、リーン車両1に生じさせる制動力を低減する制御が残存することを抑制できる。ゆえに、リーン車両1の直進時に、リーン車両1に生じさせる制動力が不足してリーン車両1の制動が妨げられる状況が抑制される。
【0102】
好ましくは、制御装置20において、実行部22は、旋回姿勢情報が、リーン車両1が直進していることを示す情報である状態において、高さ方向加速度指標値がリーン車両1に大きい高さ方向加速度が生じていることを示す値である場合、当該高さ方向加速度指標値が当該リーン車両1に小さい高さ方向加速度が生じていることを示す値である場合と比べて、制動力を増加するための制動力調節動作の開始タイミングを早める。それにより、リーン車両1の直進時に、タイヤ荷重が抜けて小さくなった場合に、リーン車両1に生じさせる制動力を増加する調節の開始タイミングが早まる。ゆえに、リーン車両1の直進時に、リーン車両1に生じさせる制動力が不足してリーン車両1の制動が妨げられる状況が抑制される。
【0103】
好ましくは、制御装置20において、実行部22は、旋回姿勢情報が、リーン車両1が旋回していることを示す情報である状態において、高さ方向加速度指標値がリーン車両1に大きい高さ方向加速度が生じていることを示す値である場合、当該高さ方向加速度指標値が当該リーン車両1に小さい高さ方向加速度が生じていることを示す値である場合と比べて、制動力調節動作においてリーン車両1に生じさせる制動力を小さくする。それにより、リーン車両1の旋回時に、タイヤ荷重が抜けて小さくなった場合に、制動力調節動作においてリーン車両1に生じさせる制動力が効果的に小さくなる。ゆえに、リーン車両1の旋回時に、車輪挙動又は車体挙動の適正化が不十分となる状況が抑制される。
【0104】
好ましくは、制御装置20において、実行部22は、旋回姿勢情報が、リーン車両1が旋回していることを示す情報である状態において、高さ方向加速度指標値がリーン車両1に大きい高さ方向加速度が生じていることを示す値である場合、当該高さ方向加速度指標値が当該リーン車両1に小さい高さ方向加速度が生じていることを示す値である場合と比べて、制動力を低減するための制動力調節動作の実行条件を当該制動力調節動作が実行されやすい条件にする。それにより、リーン車両1の旋回時に、タイヤ荷重が抜けて小さくなった場合に、リーン車両1に生じさせる制動力を低減する調節が行われやすくなる。ゆえに、リーン車両1の旋回時に、車輪挙動又は車体挙動の適正化が不十分となる状況が抑制される。
【0105】
好ましくは、制御装置20において、実行部22は、旋回姿勢情報が、リーン車両1が旋回していることを示す情報である状態において、高さ方向加速度指標値がリーン車両1に大きい高さ方向加速度が生じていることを示す値である場合、当該高さ方向加速度指標値が当該リーン車両1に小さい高さ方向加速度が生じていることを示す値である場合と比べて、制動力を増加するための制動力調節動作の実行条件を当該制動力調節動作が実行されにくい条件にする。それにより、リーン車両1の旋回時に、タイヤ荷重が抜けて小さくなった場合に、リーン車両1に生じさせる制動力を増加する調節が行われにくくなる。ゆえに、リーン車両1の旋回時に、車輪挙動又は車体挙動の適正化が不十分となる状況が抑制される。
【0106】
好ましくは、制御装置20において、実行部22は、旋回姿勢情報が、リーン車両1が旋回していることを示す情報である状態において、高さ方向加速度指標値がリーン車両1に大きい高さ方向加速度が生じていることを示す値である場合、当該高さ方向加速度指標値が当該リーン車両1に小さい高さ方向加速度が生じていることを示す値である場合と比べて、制動力を低減するための制動力調節動作の開始タイミングを早める。それにより、リーン車両1の旋回時に、タイヤ荷重が抜けて小さくなった場合に、リーン車両1に生じさせる制動力を低減する調節の開始タイミングが早くなる。ゆえに、リーン車両1の旋回時に、車輪挙動又は車体挙動の適正化が不十分となる状況が抑制される。
【0107】
好ましくは、制御装置20において、実行部22は、旋回姿勢情報が、リーン車両1が旋回していることを示す情報である状態において、高さ方向加速度指標値がリーン車両1に大きい高さ方向加速度が生じていることを示す値である場合、当該高さ方向加速度指標値が当該リーン車両1に小さい高さ方向加速度が生じていることを示す値である場合と比べて、制動力を増加するための制動力調節動作の開始タイミングを遅くする。それにより、リーン車両1の旋回時に、タイヤ荷重が抜けて小さくなった場合に、リーン車両1に生じさせる制動力を増加する調節の開始タイミングが遅くなる。ゆえに、リーン車両1の旋回時に、車輪挙動又は車体挙動の適正化が不十分となる状況が抑制される。
【0108】
本発明は実施形態の説明に限定されない。例えば、実施形態の一部のみが実施されてもよい。また、実施形態の一例同士が組み合わされてもよい。
【0109】
例えば、実行部22は、旋回姿勢情報が、リーン車両1が直進していることを示す情報である状態において、上記で説明した各種処理(具体的には、制動力調節動作においてリーン車両1に生じさせる制動力を大きくする処理、制動力を低減するための制動力調節動作の実行条件を当該制動力調節動作が実行されにくい条件にする処理、制動力を増加するための制動力調節動作の実行条件を当該制動力調節動作が実行されやすい条件にする処理、制動力を低減するための制動力調節動作の開始タイミングを遅くする処理、及び、制動力を増加するための制動力調節動作の開始タイミングを早める処理)のうちの全ての処理を行ってもよく、任意の一部の処理を行ってもよい。
【0110】
また、例えば、実行部22は、旋回姿勢情報が、リーン車両1が旋回していることを示す情報である状態において、上記で説明した各種処理(具体的には、制動力調節動作においてリーン車両1に生じさせる制動力を小さくする処理、制動力を低減するための制動力調節動作の実行条件を当該制動力調節動作が実行されやすい条件にする処理、制動力を増加するための制動力調節動作の実行条件を当該制動力調節動作が実行されにくい条件にする処理、制動力を低減するための制動力調節動作の開始タイミングを早める処理、及び、制動力を増加するための制動力調節動作の開始タイミングを遅くする処理)のうちの全ての処理を行ってもよく、任意の一部の処理を行ってもよい。
【符号の説明】
【0111】
1 リーン車両、2 前輪、2a ロータ、3 後輪、3a ロータ、10 ブレーキシステム、11 エンジン、12 液圧制御ユニット、12a 基体、13 慣性計測装置、14 前輪車輪速センサ、15 後輪車輪速センサ、20 制御装置、21 取得部、22 実行部、31 前輪制動機構、32 後輪制動機構、41 第1ブレーキ操作部、42 第2ブレーキ操作部、51 マスタシリンダ、52 リザーバ、53 ブレーキキャリパ、54 ホイールシリンダ、55 主流路、56 副流路、61 込め弁、62 弛め弁、63 アキュムレータ、64 ポンプ。
図1
図2
図3
図4
図5