(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003380
(43)【公開日】2024-01-15
(54)【発明の名称】水抜き配管装置
(51)【国際特許分類】
E04B 1/64 20060101AFI20240105BHJP
E04G 15/06 20060101ALI20240105BHJP
E02D 27/01 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
E04B1/64 B
E04G15/06 A
E02D27/01 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102482
(22)【出願日】2022-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】000201582
【氏名又は名称】前澤化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100206911
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 岳彦
(72)【発明者】
【氏名】大島 ゆかり
(72)【発明者】
【氏名】羽鳥 博之
【テーマコード(参考)】
2D046
2E001
2E150
【Fターム(参考)】
2D046BA01
2E001DA02
2E001EA02
2E001FA04
2E001FA21
2E001GA01
2E001GA66
2E001GA67
2E001HD11
2E001HE01
2E150HF09
(57)【要約】
【課題】コンクリートの圧力による位置ずれが生じにくく、作業性に優れた水抜き配管装置を提供すること。
【解決手段】建物の基礎コンクリート1の立上部3によって囲まれた空間と基礎コンクリート1の外部とを連通する水抜き配管装置111であって、連接される複数の管体(例えば、外スリーブ管121と内スリーブ管122)と、弾性体としての伸縮ゴム150と、を備え、連接される外スリーブ管121と内スリーブ管122との間に伸縮ゴム150が配置されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の基礎の立上部によって囲まれた空間と、基礎の外部と、を連通する水抜き配管装置であって、
連接される複数の管体と、
弾性体と、
を備え、
少なくとも1つの連接される前記管体間に前記弾性体が配置されている
ことを特徴とする水抜き配管装置。
【請求項2】
前記弾性体の自然状態において、該弾性体が配置された管体同士は互いに重合している
ことを特徴とする請求項1に記載の水抜き配管装置。
【請求項3】
前記弾性体は、前記管体同士の重合範囲における管体周面間に設けられている
ことを特徴とする請求項2に記載の水抜き配管装置。
【請求項4】
前記弾性体は、ゴム材からなり、外側の前記管体の端面と内側の前記管体の端面との間に掛け渡されている
ことを特徴とする請求項3に記載の水抜き配管装置。
【請求項5】
内外の管体同士の過挿入を規制する規制部を備える
ことを特徴とする請求項2~4のいずれかに記載の水抜き配管装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の基礎内に溜まった水を外部に排出するための水抜き配管装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ベタ基礎工法等によって形成された基礎の立上部を貫通するように排水管を設けることで、基礎の立上部で囲まれた空間に水が溜まった際に、その水を水抜き配管装置によって外部に排出できるようにしたものが提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
これらの水抜き配管装置は、施工の際に型枠内に流し込まれるコンクリートの圧力により所定位置からずれやすいという問題があるため、例えば、水抜き配管装置と型枠との間に弾性材からなるパッドを介在させることにより、パッドの弾性により水抜き配管装置を型枠内の所定位置に固定できるようにしたものがある(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-207499号公報
【特許文献2】特開2020-66941号公報
【特許文献3】特開2000-110348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献3に記載の水抜き配管装置にあっては、パッドの弾性によって所定位置に固定されるのでコンクリートの圧力による位置ずれは生じにくいが、コンクリートの打設が完了して脱型する際にパッドを取外し、水抜き配管装置の両端側に水抜き穴が形成されることで立上部を貫通する水抜き流路が完成するものであるため、コンクリートの打設前に水抜き配管の両端側にパッドを取付けたり、コンクリートの打設後にパッドを取外したりする作業等の手間がかかるという問題がある。
【0006】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、コンクリートの圧力による位置ずれが生じにくく、作業性に優れた水抜き配管装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に記載の水抜き配管装置は、
建物の基礎の立上部によって囲まれた空間と、基礎の外部と、を連通する水抜き配管装置であって、
連接される複数の管体と、
弾性体と、
を備え、
少なくとも1つの連接される前記管体間に前記弾性体が配置されている
ことを特徴としている。
この特徴によれば、複数の管体同士が弾性体の弾性により離れる方向に付勢されることで、位置ずれが防止されるとともに、水抜き流路を構成した状態で型枠内に設置できるため、作業性が向上する。
【0008】
本発明の請求項2に記載の水抜き配管装置は、請求項1に記載の水抜き配管装置であって、
前記弾性体の自然状態において、該弾性体が配置された管体同士は互いに重合している
ことを特徴としている。
この特徴によれば、弾性体が管体外のコンクリートに接触しないため、コンクリートによる悪影響を受けることがない。
【0009】
本発明の請求項3に記載の水抜き配管装置は、請求項2に記載の水抜き配管装置であって、
前記弾性体は、前記管体同士の重合範囲における管体周面間に設けられている
ことを特徴としている。
この特徴によれば、弾性体を水抜き流路に影響を及ぼすことなく配置できる。
【0010】
本発明の請求項4に記載の水抜き配管装置は、請求項3に記載の水抜き配管装置であって、
前記弾性体は、ゴム材からなり、外側の前記管体の端面と内側の前記管体の端面との間に掛け渡されている
ことを特徴としている。
この特徴によれば、外側の管体に内側の管体を挿入するだけで、管体間に弾性体を簡単に配置することができる。
【0011】
本発明の請求項5に記載の水抜き配管装置は、請求項2~4のいずれかに記載の水抜き配管装置であって、
内外の管体同士の過挿入を規制する規制部を備える
ことを特徴としている。
この特徴によれば、過度な力が弾性体に加わることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施例1としての水抜き配管装置を用いた床下排水構造を示す断面図である。
【
図2】水抜き配管装置の構成を示す分解斜視図である。
【
図3】水抜き配管装置の内部構造を示す分解断面図である。
【
図4】(a)は弾性体を示す斜視図、(b)は(a)の縦断面図である。
【
図5】第1状態の水抜き配管装置の内部構造を示す断面図である。
【
図6】第2状態の水抜き配管装置の内部構造を示す断面図である。
【
図7】(a)~(c)は水抜き配管装置を用いた床下排水構造の施工の一例を示す図である。
【
図8】(a)、(b)は水抜き配管装置を型枠に設置する状態を示す断面図、(c)は脱型後の立上部の内部構造を示す断面図である。
【
図9】(a)は本発明の変形例としての水抜き配管装置を型枠に設置する状態を示す断面図、(b)は(a)のA-A断面図である。
【
図10】本発明の変形例としての弾性体が設けられた水抜き配管装置を示す断面図である。
【
図11】本発明の実施例2としての水抜き配管装置を用いた床下排水構造を示す断面図である。
【
図12】水抜き配管装置の構成を示す分解斜視図である。
【
図13】蓋部材を除く水抜き配管装置の内部構造を示す分解斜視図である。
【
図14】水抜き配管装置の内部構造を示す断面図である。
【
図15】外スリーブ管の凹溝部と内スリーブ管の凸条部との係止状態を示す拡大断面図である。
【
図16】(a)、(b)は重合長さ寸法を変更する一例を示す断面図である。
【
図17】(a)~(c)は水抜き配管装置を用いた床下排水構造の施工の一例を示す図である。
【
図18】(a)は蓋部材が外スリーブ管に取り付けられた状態、(b)は化粧処理後に蓋部材が外スリーブ管に取り付けられた状態を示す断面図である。
【
図19】本発明の変形例1としての水抜き配管装置の内部構造を示す縦断面図である。
【
図20】本発明の実施例3としての水抜き配管装置の構成を示す分解斜視図である。
【
図21】
図20の水抜き配管装置の内部構造を示す断面図である。
【
図22】(a)~(c)は排水経路長さ寸法を変更する一例を示す断面図である。
【
図23】(a)は蓋部材が外スリーブ管に取り付けられた状態、(b)は化粧処理後に蓋部材が外スリーブ管に取り付けられた状態を示す断面図である。
【
図24】(a)は本発明の変形例2としての蓋部材が本体管に取り付けられた状態、(b)は化粧処理後に蓋部材が本体管に取り付けられた状態を示す断面図である。
【
図25】(a)は本発明の変形例4としての係合管が本体管に連結された状態を示す断面図、(b)は本発明の変形例5としての係合管が本体管に連結された状態を示す断面図である。
【
図26】(a)は本発明の変形例6としての水抜き配管装置の構成を示す斜視図、(b)、(c)は係合管の係合態様を変えて排水経路長さ寸法を変更した状態を示す断面図である。
【
図27】(a)は本発明の変形例7としての水抜き配管装置の構成を示す断面図、(b)、(c)は係合管の係合態様を変えて排水経路長さ寸法を変更した状態を示す断面図である。
【
図28】(a)、(b)は水抜き配管装置の形状の変形例を示す縦断面図である。
【
図29】(a)、(b)は水抜き配管装置を勾配を付けて設置した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[形態1-1]
形態1-1の水抜き配管装置は、
建物の基礎の立上部によって囲まれた空間と、基礎の外部と、を連通する水抜き配管装置であって、
連接される複数の管体と、
弾性体と、
を備え、
少なくとも1つの連接される前記管体間に前記弾性体が配置されている
ことを特徴としている。
この特徴によれば、複数の管体同士が弾性体の弾性により離れる方向に付勢されることで、位置ずれが防止されるとともに、水抜き流路を構成した状態で型枠内に設置できるため、作業性が向上する。
【0014】
[形態1-2]
形態1-2の水抜き配管装置は、形態1-1に記載の水抜き配管装置であって、
前記弾性体の自然状態において、該弾性体が配置された管体同士は互いに重合している
ことを特徴としている。
この特徴によれば、弾性体が管体外のコンクリートに接触しないため、コンクリートによる悪影響を受けることがない。
【0015】
[形態1-3]
形態1-3の水抜き配管装置は、形態1-2に記載の水抜き配管装置であって、
前記弾性体は、前記管体同士の重合範囲における管体周面間に設けられている
ことを特徴としている。
この特徴によれば、弾性体を水抜き流路に影響を及ぼすことなく配置できる。
【0016】
[形態1-4]
形態1-4の水抜き配管装置は、形態1-3に記載の水抜き配管装置であって、
前記弾性体は、ゴム材からなり、外側の前記管体の端面と内側の前記管体の端面との間に掛け渡されている
ことを特徴としている。
この特徴によれば、外側の管体に内側の管体に挿入するだけで、管体間に弾性体を簡単に配置することができる。
【0017】
[形態1-5]
形態1-5の水抜き配管装置は、形態1-2~形態1-4のいずれかに記載の水抜き配管装置であって、
内外の管体同士の過挿入を規制する規制部を備える
ことを特徴としている。
この特徴によれば、過度な力が弾性体に加わることを防止できる。
【0018】
[形態1-6]
形態1-6の水抜き配管装置は、形態1-3~形態1-5のいずれかに記載の水抜き配管装置であって、
前記弾性体には、周方向に複数の開口部が形成されている
ことを特徴としている。
この特徴によれば、弾性体が伸縮しやすくなる。
【0019】
[形態1-7]
形態1-7の水抜き配管装置は、形態1-6に記載の水抜き配管装置であって、
前記弾性体において、前記開口部が形成された領域の方が、該開口部が形成されていない領域よりも広い
ことを特徴としている。
この特徴によれば、弾性体の伸縮の柔軟性が向上する。
【0020】
[形態1-8]
形態1-8の水抜き配管装置は、形態1-3~形態1-7のいずれかに記載の水抜き配管装置であって、
前記弾性体は、
伸縮可能な伸縮部と、
外側の前記管体に嵌合可能な嵌合部と、
を有する
ことを特徴としている。
この特徴によれば、嵌合部を外側の管体に固定した状態で、伸縮部により内側の管体を管軸方向へ移動させることができる。
【0021】
[形態1-9]
形態1-9の水抜き配管装置は、形態1-1または形態1-2に記載の水抜き配管装置であって、
前記弾性体は、外側の前記管体の内部において、内側の前記管体の端面が当接可能に配置されている
ことを特徴としている。
この特徴によれば、弾性体の構造を簡素化できる。
【0022】
[形態1-10]
形態1-10の水抜き配管装置は、形態1-1~形態1-9のいずれかに記載の水抜き配管装置であって、
外側の前記管体は、位置ずれ抑止用の位置ずれ抑止部を有する
ことを特徴としている。
この特徴によれば、型枠内の所定位置に設置しやすいとともに、位置ずれが生じにくくなる。
【0023】
[形態2-1]
従来、ベタ基礎工法等によって形成された基礎の立上部を貫通するように排水管を設けることで、基礎の立上部で囲まれた空間に水が溜まった際に、その水を水抜き配管によって外部に排出できるようにしたものが提案されている(例えば、特開2012-207499号公報、特開2020-66941号公報)。
【0024】
一般的に基礎の立上部の厚さは120mm以上であるが、その厚さは住宅メーカーや住宅の仕様等により150mm、160mm、またはそれ以上の厚さとなる場合がある。このため、それぞれの厚さに対応した長さの水抜き配管を製造する必要があり、また、基礎の立上部の厚さが既存の水抜き配管の長さでは対応できない場合に、既存の長さの水抜き配管を現場で加工する必要があった。
【0025】
これに対し、形態2-1の水抜き配管装置は、建物の基礎の立上部によって囲まれた空間と、基礎の外部と、を連通する水抜き配管装置であって、
前記立上部の厚さに応じて前記水抜き配管装置の両端開口間の長さを変更可能である
ことを特徴としている。
この特徴によれば、基礎の立上部の厚さに応じて水抜き配管装置の両端開口間の長さを変更可能であるため、長さの異なる複数種類の水抜き配管を用意せずとも、厚さの異なる基礎の立上部分に対応可能となる。
【0026】
[形態2-2]
形態2-2の水抜き配管装置は、形態2-1に記載の水抜き配管装置であって、
互いに重合する複数の管体からなり、
前記管体同士の重合範囲を変更することで前記水抜き配管装置の両端開口間の長さを変更可能である
ことを特徴としている。
この特徴によれば、管体同士の重合範囲を変更することで水抜き配管装置の両端開口間の長さを変更可能となる。
【0027】
[形態2-3]
形態2-3の水抜き配管装置は、形態2-1に記載の水抜き配管装置であって、
一方の管体に対して他方の管体をスライドさせることで前記重合範囲を変更可能である
ことを特徴としている。
この特徴によれば、簡単な作業で重合範囲を変更することができる。
【0028】
[形態2-4]
形態2-4の水抜き配管装置は、形態2-3に記載の水抜き配管装置であって、
前記一方の管体に対して前記他方の管体を係止可能な係止部を備え、
前記係止部は、前記重合範囲が異なる複数の係止部を含む
ことを特徴としている。
この特徴によれば、一方の管体に対して他方の管体を基礎の立ち上げ部の厚さに応じた係止部に係止させることで、一方の管体と他方の管体との位置ずれを防止できる。
【0029】
[形態2-5]
形態2-5の水抜き配管装置は、形態2-4に記載の水抜き配管装置であって、
前記係止部は、前記重合範囲を大きくする方向への係止力が、前記重合範囲を小さくする方向への係止力よりも大きい
ことを特徴としている。
この特徴によれば、施工時に、設定した長さよりも短い長さとなってしまうことを防止できる。
【0030】
[形態2-6]
形態2-6の水抜き配管装置は、形態2-2に記載の水抜き配管装置であって、
一方の管体に対して他方の管体が螺合し、
前記一方の管体に対して前記他方の管体を回転させることで前記重合範囲を変更可能である
ことを特徴としている。
この特徴によれば、簡単な作業で重合範囲を変更することができる。
【0031】
[形態2-7]
形態2-7の水抜き配管装置は、形態2-2~2-6のいずれかに記載の水抜き配管装置であって、
前記一方の管体または前記他方の管体の少なくとも一方の端部に指掛け部を備える
ことを特徴としている。
この特徴によれば、重合範囲を変更する作業が容易となる。
【0032】
[形態2-8]
形態2-8の水抜き配管装置は、形態2-1に記載の水抜き配管装置であって、
複数の管体からなり、
前記管体同士を連結させることで前記水抜き配管装置の両端開口間の長さを変更可能である
ことを特徴としている。
この特徴によれば、管体同士を連結させることで、水抜き配管装置の両端開口間の長さを変更可能となる。
【0033】
[形態2-9]
形態2-9の水抜き配管装置は、形態2-8に記載の水抜き配管装置であって、
複数の管体は、本体管と、連結管と、を含み、
前記本体管に前記連結管を連結させることが可能である
ことを特徴としている。
この特徴によれば、本体管に連結管を連結させることで、水抜き配管装置の両端開口間の長さを変更可能となる。
【0034】
[形態2-10]
形態2-10の水抜き配管装置は、形態2-9に記載の水抜き配管装置であって、
前記連結管に前記連結管を連結させることが可能である
ことを特徴としている。
この特徴によれば、本体管に連結管を連結させるだけでなく、連結管にさらに連結管を連結させることを可能とすることで、3種類以上の長さに対応可能となる。
【0035】
[形態2-11]
形態2-11の水抜き配管装置は、形態2-2~2-10のいずれかに記載の水抜き配管装置であって、
前記管体の外周面に弾性部材または非加硫部材を設ける
ことを特徴としている。
この特徴によれば、基礎のコンクリートと管体との間に隙間が生じることがなく、隙間からの害虫等の侵入を防止できる。
【0036】
[形態2-12]
形態2-12の水抜き配管装置は、形態2-11に記載の水抜き配管装置であって、
前記弾性部材または前記非加硫部材は、防蟻剤を含有する
ことを特徴としている。
この特徴によれば、シロアリに対する防蟻効果を高めることができる。
【0037】
[形態2-13]
形態2-13の水抜き配管装置は、形態2-11または2-12に記載の水抜き配管装置であって、
前記弾性部材または前記非加硫部材は、前記管体の外周面のうち少なくとも外部側端部または外部側端部近傍を被覆するように設けられる
ことを特徴としている。
この特徴によれば、害虫等の侵入を効果的に防止できる。
【0038】
[形態2-14]
形態2-14の水抜き配管装置は、形態2-13に記載の水抜き配管装置であって、
前記弾性部材または前記非加硫部材は、
第1部材と、前記第1部材よりも硬度の低い第2部材と、を含み、
前記管体の外周面のうち外部側端部または外部側端部近傍に前記第1部材が設けられ、前記第1部材よりも内部側に前記第2部材が設けられる
ことを特徴としている。
この特徴によれば、外部側端部または外部側端部近傍には、相対的に硬度の高い第1部材が設けられることで、弾性部材または非加硫部材の流出を防止できる一方、第1部材よりも内部側に相対的に硬度の低い第2部材が設けられることで、基礎のコンクリートと管体との間に隙間が生じることを確実に防止できる。
【0039】
[形態2-15]
形態2-15の水抜き配管装置は、形態2-1~2-14のいずれかに記載の水抜き配管装置であって、
外部側開口には、該開口を閉鎖する閉鎖部材が取り付けられる
ことを特徴としている。
この特徴によれば、外部側開口からの害虫等の侵入を防止できる。
【0040】
[形態2-16]
形態2-16の水抜き配管装置は、形態2-15に記載の水抜き配管装置であって、
前記閉鎖部材は、鍔部を備え、
前記鍔部は、中心側から外縁側にかけて肉薄となるように前記外部側開口への取付方向に向けて傾斜する傾斜面が形成されている
ことを特徴としている。
この特徴によれば、閉鎖部材を取り付けた際の意匠性が向上する。
【0041】
[形態2-17]
形態2-17の水抜き配管装置は、形態2-15または2-16に記載の水抜き配管装置であって、
前記閉鎖部材は、鍔部を備え、
前記鍔部の外径は、前記外部側開口の外径よりも大きい
ことを特徴としている。
この特徴によれば、閉鎖部材を取り付けた際に、鍔部により外部側開口の周囲の基礎の外側面または化粧処理が施された場合の化粧面に重なるため、意匠性が向上する。
【0042】
[形態2-18]
形態2-18の水抜き配管装置は、形態2-15~2-17のいずれかに記載の水抜き配管装置であって、
前記閉鎖部材は、管内周面に対して螺合する螺合部を備える
ことを特徴としている。
この特徴によれば、閉鎖部材による外部側開口の閉鎖が容易に解かれてしまうことを防止できる。
【0043】
[形態2-19]
形態2-19の水抜き配管装置は、形態2-18に記載の水抜き配管装置であって、
前記閉鎖部材は、管内周面と接触するシール部材を備え、
前記シール部材は、前記螺合部を螺合する場合に、管内周面に螺合する範囲よりも前記外部側開口側の所定範囲にわたり管内周面と接触する
ことを特徴としている。
この特徴によれば、基礎の外側面に化粧処理が施され、外部側開口から基礎の外側面または化粧処理を施した場合の化粧面までの厚みが増すことで、閉鎖部材の螺合部を最奥まで螺合できない場合でも、シール部材を管内周面と接触させることができる。
【0044】
[形態2-20]
形態2-20の水抜き配管装置は、形態2-18に記載の水抜き配管装置であって、
前記閉鎖部材は、管内周面と接触するシール部材を備え、
前記シール部材は、前記螺合部を螺合する場合に、管内周面に螺合する範囲よりも内部側の所定範囲にわたり管内周面と接触する
ことを特徴としている。
この特徴によれば、基礎の外側面に化粧処理が施され、外部側開口から基礎の外側面または化粧処理を施した場合の化粧面までの厚みが増すことで、閉鎖部材の螺合部を最奥まで螺合できない場合でも、シール部材を管内周面と接触させることができる。
【0045】
[形態2-21]
形態2-21の水抜き配管装置は、形態2-1~2-20のいずれかに記載の水抜き配管装置であって、
管体を所定角度傾斜して配置したときに外部側開口の端面が垂直となる
ことを特徴としている。
この特徴によれば、管体を所定角度勾配を付けて設置した場合に、基礎の外側面と外部側開口の端面とを揃えることができる。
【0046】
以下に、本発明に係る水抜き配管装置の実施形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例0047】
本発明の実施例1としての水抜き配管装置について、
図1~
図8を参照して説明する。
図1は、本発明の実施例1としての水抜き配管装置を用いた床下排水構造を示す断面図である。
図2は、水抜き配管装置の構成を示す分解斜視図である。
図3は、水抜き配管装置の内部構造を示す分解断面図である。
図4は、(a)は弾性体を示す斜視図、(b)は(a)の縦断面図である。
図5は、第1状態の水抜き配管装置の内部構造を示す断面図である。
図6は、第2状態の水抜き配管装置の内部構造を示す断面図である。
図7は、(a)~(c)は水抜き配管装置を用いた床下排水構造の施工の一例を示す図である。
図8は、(a)、(b)は水抜き配管装置を型枠に設置する状態、(c)は脱型後の立上部の内部構造を示す断面図である。
【0048】
[水抜き配管装置の構成]
図1に示されるように、住宅等の建物の床下構造としての本実施例の基礎コンクリート1(基礎)は、主に配筋とコンクリートとから構成され、底盤コンクリート部2(床スラブ)と、該底盤コンクリート部2の周縁部に立設される立上部3と、からなる所謂ベタ基礎とされている。底盤コンクリート部2及び立上部3の内部には、複数の鉄筋(図示略)が縦横に交差するように配設されている。立上部3は、平面視で底盤コンクリート部2の周縁部に枠状に設けられているため、例えば、住宅建築中の降雨、または住宅建築後の大雨による床下浸水により、立上部3で囲まれた空間に水が溜まることがある。そして、この立上部3で囲まれた空間に溜まった水を基礎コンクリート1外へ排水するための排水経路(水抜き流路)として、床下排水構造110が設けられている。
【0049】
図1に示されるように、床下排水構造110は、建物の基礎コンクリート1の立上部3によって囲まれた空間と基礎コンクリート1の外部とを連通する水抜き配管装置111と、蓋部材112と、を有している。水抜き配管装置111は、立上部3で囲まれた空間に溜まった水を基礎コンクリート1外へ排水するためのものであって、管軸方向の両端開口のうち基礎内に臨む流入口13Aと、この流入口13Aに連通して基礎外に臨む流出口13Bと、を有し、立上部3で囲まれた空間に溜まった基礎内の水が流入口13Aから水抜き配管装置111の内部に流入し、流出口13Bから基礎外に流出されるようになっている。水抜き配管装置111を用いて排水しないときには、流出口13Bを蓋部材112により閉鎖することで、基礎コンクリート1内への水やシロアリ等の害虫や小動物、埃、ごみ等の進入が防止されるようになっている。
【0050】
図2~
図5に示されるように、水抜き配管装置111は、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂材(PVC)等により円筒状に形成される外スリーブ管121(管体)と、例えば、ポリエチレン樹脂材(PE)等により円筒形状に形成される内スリーブ管122(管体)と、連接される外スリーブ管121と内スリーブ管122との間に配置される弾性体としての伸縮ゴム150と、から主に構成されている。
【0051】
外スリーブ管121の管軸方向の長さは所定の長さ寸法L71(例えば、L71=120mm)とされ、内スリーブ管122の管軸方向の長さは所定の長さ寸法L72(例えば、L72=60mm)とされている。また、外スリーブ管121の流入口13A側には大径部114が形成されており、大径部114の内径寸法L75は、内スリーブ管122の外径寸法L77よりも長寸とされていることで(L75>L77)、内スリーブ管122を外スリーブ管121内に挿入可能とされている。
【0052】
一方、外スリーブ管121の流出口13B側には小径部115が形成されており、小径部115の内径寸法L76A、L76Bは、内スリーブ管122の外径寸法L77よりも短寸とされていることで(L76A<L77、L76B<L77)、内スリーブ管122を小径部115内に挿入不可とされている。
【0053】
大径部114と小径部115との間には段部116が形成されており、この段部116により、内スリーブ管122の流出口13B側への移動が規制されるようになっている。尚、段部116は、内周面の最下位置にはほぼ形成されておらず、最上位置に向けて漸次大きくなるように形成されているため、内周面の最下位置に段部116が形成されることで排水が滞ることが防止されている。
【0054】
このように構成される段部116は、内スリーブ管122と外スリーブ管121との過挿入を規制する規制部として機能する。また、大径部114は、伸縮ゴム150の伸長を許容する許容部として機能する。
【0055】
外スリーブ管121の小径部115には、流出口13B側から蓋部材112が挿入可能とされている。また、小径部115の内周面所定位置には、流出口13B側から見て下向きに開口する略C字形の雄ねじ部117が形成されている。尚、雄ねじ部117は螺旋状に形成されていてもよい。
【0056】
また、外スリーブ管121の外周面下部には、水抜き配管装置111の底盤コンクリート部2上の所定位置からの位置ずれを抑止する位置ずれ抑止部としての座部131が設けられている。詳しくは、座部131は、水平板131Aと、該水平板131A上に立設される立板131Bと、から断面視略T字形に形成され、立板131Bが管軸に対し直交するように、つまり、周方向に沿うように外スリーブ管121の下部に固定されている。
【0057】
このように座部131は、略水平に配置される水平板131Aを有することで、コンクリートを打設する際における外スリーブ管121の管軸方向への位置ずれや、管軸を中心とする回転及び浮き上がりが防止される。また、立板131Bが周方向に沿うように配置されることで、コンクリートの管体下部への流入が阻害されることがない。
【0058】
内スリーブ管122は、一端側が外スリーブ管121内に挿入可能とされ、他端側に流入口13Aを有する。内スリーブ管122の外径寸法L77及び内径寸法は管軸方向の全ての位置で同寸法とされている。
【0059】
蓋部材112は、外径寸法L80が外スリーブ管121の小径部115の内径寸法L76Aよりも短寸(L80<L76A)の筒状部140と、筒状部140の一端開口を閉鎖するように設けられる円盤状の蓋板141と、から構成される。筒状部140の外周面には、外スリーブ管121に形成された雄ねじ部117に螺合可能な雌ネジ部142が設けられているとともに、雌ネジ部142の蓋板141側に突設された大径部146の外周面に形成された凹溝状のシール部材取付部146aには(
図3参照)、ゴム材等からなる環状のシール部材143が嵌装されている。
【0060】
よって、外スリーブ管121の流出口13Bに筒状部140を挿入し、蓋板141が外スリーブ管121の端面に当接するまで管軸を中心として第1方向に回転させ、シール部材143を小径部115の内周面に圧接させることで、流出口13Bが蓋部材112により水封状態で閉鎖される。
【0061】
また、筒状部140の外周面における蓋板141とシール部材取付部143aとの間には、管軸方向に延びるリブ145が周方向の複数個所に設けられている。詳しくは、シール部材取付部143aが蓋板141から管軸方向に離れた位置に設けられていることにより、蓋板141とシール部材取付部143aとの間にシール部材143が間違えて装着される可能性があるが、リブ145により外周面に管軸方向に延びる凸部が形成されていることで、シール部材143が筒状部140の外周面に密接しないこと、つまり、シール部材取付部ではないことを認識しやすくなるため、シール部材取付部143a以外の箇所にシール部材143が間違えて装着されることを防止できる。
【0062】
また、蓋板141の外径寸法L81は、外スリーブ管121の小径部115の内径寸法L78よりも長寸とされていることで(L81>L78)、蓋板141が外スリーブ管121の流出口13Bの周囲の端面に当接して流出口13Bが閉鎖されたときに、蓋板141の鍔部141Aが外スリーブ管121の外周面よりも外側に突出するように配置される。また、蓋板141の外周縁部には、中心側から外側にかけて肉薄となるように流出口13B側に傾斜する傾斜面141Bが形成されている。
【0063】
蓋板141の外面略中央位置には、矩形状の開口を有する凹部144が形成されており、該凹部144内にドライバー等の工具等を嵌入し、蓋部材112を、管軸を中心として第1方向と反対の第2方向に回転させることで、蓋部材112を外スリーブ管121から取り外すことができるようになっている。
【0064】
尚、蓋部材112は外スリーブ管121内に螺合することで取り付けられる構造であるが、蓋部材112が外スリーブ管121内に挿入することで取り付けられる構造であってもよい。
【0065】
図4(a)、(b)に示されるように、伸縮ゴム150は、ゴム材からなり、略筒状に形成される伸縮部151と、伸縮部151の流出口13B側の端部から内径側に突出する環状の第1当接部152と、伸縮部151の流入口13A側の端部から外径側に突出する環状の第2当接部153と、から主に構成される。
【0066】
伸縮部151には、略四角形状をなす開口部151Aが周方向の複数個所に形成されており、これら複数の開口部151Aが形成されていることにより、各開口部151A間に管軸方向に延びる帯板状の伸縮片151Bが複数形成されている。このように伸縮ゴム150は、伸縮部151の周方向に複数形成された伸縮片151Bを有し、この伸縮部151が管軸方向に伸縮することで、
図4(b)において実線で示される自然状態(非変形状態)と、2点鎖線で示される伸長状態と、に変形可能とされている。
【0067】
また、これら開口部151Aに対応する領域よりも、伸縮片151Bに対応する領域の方が狭くなるように形成されていることで、伸縮部151が脆弱になり、管軸方向に伸縮しやすくなっている。
【0068】
また、伸縮部151における第2当接部153側には環状の嵌合部154が形成されており、嵌合部154の外周面における各伸縮片151Bに対応する位置には、管軸方向に延びる嵌合用のリブ154Aが突設されている。
【0069】
図4(b)に示されるように、管軸を挟んで対向する2つのリブ154Aの外端面間の離間寸法L90は、外スリーブ管121の大径部114の内径寸法L75よりも長寸とされる一方で、嵌合部154の外径寸法L91は、外スリーブ管121の大径部114の内径寸法L75よりも短寸とされている(L90>L75、L91<L75)。
【0070】
また、嵌合部154の内径寸法L92は、内スリーブ管122の外径寸法L77よりも長寸である一方で、伸縮部151の第1当接部152側の内径寸法L93は、内スリーブ管122の外径寸法L77とほぼ同寸とされている(L92>L77、L93=L77)。つまり、伸縮部151の内径寸法は、流入口13A側から流出口13B側に向けて漸次短寸となっている。
【0071】
図3に示されるように、伸縮ゴム150は、外スリーブ管121の大径部114側の開口に第1当接部152及び伸縮部151を挿入可能であるとともに、嵌合部154の開口に内スリーブ管122を挿入可能とされている。
【0072】
図5に示されるように、伸縮ゴム150は、第1当接部152及び伸縮部151を外スリーブ管121の大径部114側の開口から挿入して管軸方向に押し込むと、嵌合部154の複数のリブ154Aが内径方向に押し潰されるように弾性変形することで、嵌合部154が大径部114内に嵌合される。そして、第2当接部153が外スリーブ管121の流入口13A側の端面121aに当接することで、伸縮ゴム150全体が外スリーブ管121の内部に入り込んでしまうことが防止される。
【0073】
また、嵌合部154の開口に内スリーブ管122が挿入された後、第1当接部152に近づくにつれて内スリーブ管122の流出口13B側の外周面が伸縮片151Bの内周面に近接し、内スリーブ管122の端面122aが第1当接部152に当接することで、内スリーブ管122が伸縮ゴム150を挿通して外スリーブ管121の内部に入り込んでしまうことが防止される。
【0074】
このように、外スリーブ管121の大径部114側の開口に伸縮ゴム150が嵌合された状態で、内スリーブ管122の一部が外スリーブ管121の一部に重合するように挿入されることで、外スリーブ管121と内スリーブ管122とが管軸方向に連接されるとともに、外スリーブ管121と内スリーブ管122との間に伸縮ゴム150が設けられる。
【0075】
より詳しくは、伸縮ゴム150は、第1当接部152が内スリーブ管122の端面122aに当接して係止されるとともに、第2当接部153が外スリーブ管121の端面121aに当接して係止され、外スリーブ管121の内周面121bと内スリーブ管122の外周面122bとの間の隙間に伸縮部151が配置される。つまり、伸縮ゴム150は外スリーブ管121と内スリーブ管122との重合範囲Eに配置される。
【0076】
また、
図5の拡大図に示されるように、外スリーブ管121に内スリーブ管122が重合するように連接された状態において、伸縮ゴム150の伸縮部151は、外周面151bにおけるリブ154Aを除く部分と外スリーブ管121の内周面121bとの間に隙間が設けられるとともに、内周面151cと内スリーブ管122の外周面122bとの間に、第1当接部152から第2当接部153に向けて漸次大きくなる隙間が設けられている。つまり、伸縮部151は、外スリーブ管121の内周面121bと内スリーブ管122の外周面122bとのいずれに対しても接触しないように離間しているため、外スリーブ管121の内周面121bや内スリーブ管122の外周面122bとの接触により伸縮が阻害されにくくなっている。
【0077】
このように伸縮ゴム150は、内スリーブ管122の端面122aに係止される第1当接部152と、外スリーブ管121の端面121aに係止される第2当接部153とを有し、内スリーブ管122の端面122aと外スリーブ管121の端面121aとの間に掛け渡されるため、外スリーブ管121の流入口13A側の開口から伸縮ゴム150と内スリーブ管122とを挿入するだけで、外スリーブ管121と内スリーブ管122との間に伸縮ゴム150を簡単に配置することができる。
【0078】
また、伸縮ゴム150の管軸方向の両側の端部が、外スリーブ管121の端面121aと内スリーブ管122の端面122aとに係止されることで、外スリーブ管121の内部に対し内スリーブ管122を挿入して押し込むことによって伸縮ゴム150が伸長する。
【0079】
このように構成される水抜き配管装置111は、
図5に示されるように、伸縮ゴム150が自然状態であるときは、外スリーブ管121に内スリーブ管122が重合するように連接され、伸縮ゴム150の第1当接部152が外スリーブ管121の段部116よりもやや流入口13A側に位置し、外スリーブ管121の流出口13B側の端部から内スリーブ管122の流入口13A側の端部までの排水経路長さ寸法L95が第1寸法となる第1状態となる。
【0080】
この第1状態において、内スリーブ管122を流出口13B側に向けて管軸方向に向けて押し込むと、
図6に示されるように、伸縮部151における伸縮片151Bが伸長して伸縮ゴム150が伸長状態に変化し、外スリーブ管121と内スリーブ管122との重合範囲E(重合寸法)が大きくなることで、水抜き配管装置111は、排水経路長さ寸法L95が第1寸法よりも短寸となる第2状態に変化する。伸縮片151Bの伸長に伴い弾性復帰力が漸次高くなることで、押し込む力を弱めると、内スリーブ管122が伸縮部151の弾性復帰力により流入口13A側に向けて押し戻されるため、外スリーブ管121に対し内スリーブ管122が突出して第1状態に戻ろうとする。
【0081】
よって、水抜き配管装置111は、
図5に示される第1状態において、外スリーブ管121の内部に向けて内スリーブ管122が押し込まれ、排水経路長さ寸法L95が第1寸法よりも短寸となる第2状態に変化すると、伸縮ゴム150の弾性復帰力により内スリーブ管122が流入口13A側に向けて押し戻される。よって、
図7及び
図8にて後述するように、外スリーブ管121と内スリーブ管122とが互いに離れる方向に付勢されて型枠FA、FBに押し付けられることで、設置位置からの位置ずれが防止される。
【0082】
また、
図6に示されるように、排水経路長さ寸法L95が第1寸法よりも短寸の第2寸法になると、第1当接部152が段部116に当接し、内スリーブ管122の管軸方向における流出口13B側への移動、つまり、内スリーブ管122の過挿入が規制されるため、過度な力が伸縮ゴム150に加わって損傷することが防止される。
【0083】
[水抜き配管装置を用いた床下排水構造の施工例]
次に、水抜き配管装置111を用いた床下排水構造110の施工例について、
図7及び
図8に基づいて説明する。
【0084】
まず、
図7(a)に示されるように、底盤コンクリート部2と立上部3とを構成するためのコンクリートが打設される部分に鉄筋(図示略)を配設する。また、立上部3の外面を構成するための外側の型枠FAを設置しておく。また、使用する水抜き配管装置111については、第1状態の排水経路長さ寸法L95が施工する立上部3の厚み寸法よりもやや長寸であればよい。尚、蓋部材112は外スリーブ管121から取り外しておく。
【0085】
次いで、
図7(b)に示されるように、底盤コンクリート部2を打設する。底盤コンクリート部2が硬化状態となる前に、水抜き配管装置111を載置する。例えば、水抜き配管装置111を底盤コンクリート部2に押しつけることにより、水抜き配管装置111の座部131を含む下側部分を底盤コンクリート部2に埋め込むように設置することができる。水抜き配管装置111の下面を硬化前の底盤コンクリート部2に押しつけることにより、水抜き配管装置111の下面と底盤コンクリート部2との間の空気を好適に抜くことができる。
【0086】
また、水抜き配管装置111の座部131及び下面を硬化前の底盤コンクリート部2に押しつける際に、内スリーブ管122の流入口13Aの下端を、底盤コンクリート部2の上面と同高さまたはやや下方に配置することで、底盤コンクリート部2の上面にたまる水が流入口13Aに流入しやすくなる。また、外スリーブ管121の流出口13B側の端面を外側の型枠FAの内面に押し付けるように当接させて、型枠FAの内面と端面との間からコンクリートが進入しないようにする。尚、ここで流入口13Aに水を流入し易くするための集水路や誘導路を別途設置、もしくは、コンクリート面上に形成するようにしてもよい。
【0087】
次いで、
図7(c)に示されるように、内側の型枠FBを設置する。詳しくは、
図8(a)に示されるように、水抜き配管装置111が第1状態で底盤コンクリート部2に配置されている状態において、
図8(b)に示されるように、内側の型枠FBの内面を内スリーブ管122の流入口13A側の端面に当接させて、型枠FBの内面と端面との間からコンクリートが進入しないようにしつつ、内側の型枠FBと外側の型枠FAとの離間寸法が立上部3の厚み寸法となるまで、内側の型枠FBを外側の型枠FA方向(
図8(b)の黒矢印参照)に向けて押し込む。これにより水抜き配管装置111は管軸の両側から型枠FA、FBによって挟まれた状態になる。
【0088】
内側の型枠FBにより内スリーブ管122が外スリーブ管121内に押し込まれることにより伸縮ゴム150が伸長するため、
図8(b)の状態において、水抜き配管装置111は、伸縮ゴム150の弾性復帰力により、外スリーブ管121と内スリーブ管122とが互いに管軸方向に離れるように(
図8(b)の白矢印参照)に付勢される。これにより、外スリーブ管121の流出口13B側の端面が型枠FAに圧接されるとともに、内スリーブ管122の流入口13A側の端面が型枠FBに圧接されるため、型枠FA、FB間の所定の設置位置にて管軸方向に突っ張るようにして固定される。その後、
図7(c)に示されるように、立上部3のコンクリートを打設する。
【0089】
そして、立上部3のコンクリートが硬化した後、
図8(c)に示されるように、型枠FA、FBを撤去すると、水抜き配管装置111が立上部3を厚み方向に貫通するように配設された床下排水構造110が構成される。脱型後において伸縮ゴム150の弾性力は作用しているが、外スリーブ管121及び内スリーブ管122の外周は硬化したコンクリートにより覆われているため、外スリーブ管121や内スリーブ管122が立上部3の外面から突出してしまうことはない。
【0090】
このように、コンクリートを打設する前に弾性体としての伸縮ゴム150を型枠FA、FBと外スリーブ管121や内スリーブ管122との間に設置したり、また、脱型後に弾性体としての伸縮ゴム150を撤去したりすることなく、水抜き配管装置111を設置したままの状態で床下排水構造110が構成されるため、床下排水構造110の施工に関わる作業性が向上する。
【0091】
床下排水構造110が構成された状態において、立上部3の内面に対し流入口13Aが略面一に配置され、立上部3の外面に対し流出口13Bが略面一に配置される。また、流入口13Aの下端が底盤コンクリート部2の上面と同高さまたはやや下方に配置されることで、底盤コンクリート部2の上面に溜まる水が流入口13Aに流入しやすくなる。
【0092】
流入口13Aから内部に流入された水は、水抜き配管装置111内を流出口13B側に向けて誘導された後、流出口13Bから基礎外へ流出される。また、外スリーブ管121の内部に内スリーブ管122が重合するように挿入されることで、内スリーブ管122の内周面下部の方が外スリーブ管121の内周面下部よりも高くなるので、流入口13Aから内部に流入された水は内スリーブ管122から外スリーブ管121にスムーズに誘導される。尚、内スリーブ管122の内部に外スリーブ管121が挿入されるように外スリーブ管121と内スリーブ管122とを重合させてもよい。
【0093】
また、特に図示しないが、外スリーブ管121の外周面に防蟻剤を含有する防蟻シートを配置することで、コンクリートと外スリーブ管121との間に隙間が生じることがなく、隙間からのシロアリ等の害虫、埃、ごみ等の侵入を防止できるとともに、シロアリに対する防蟻効果が高められる。
【0094】
また、
図8(c)に示されるように、立上部3のコンクリートの硬化後に、流出口13Bに蓋部材112を取り付けることで、流出口13Bからのシロアリの侵入を防止できる。蓋部材112が取り付けられた状態において、蓋板141の鍔部141Aが、流出口13Bの周囲の外スリーブ管121の端面のさらに外側に拡がるコンクリートの表面に重なることで、流出口13Bの周囲の外スリーブ管121の端面とコンクリートの表面との境界部が隠蔽されるため、意匠性が向上する。
【0095】
また、蓋板141の外周縁部には、中心側から外側にかけて肉薄となるように流出口13B側に傾斜する傾斜面141Bが形成されているため、蓋部材112とコンクリート表面との境界部が目立ち難く、蓋部材112にて流出口13Bを閉鎖した際の意匠性が向上する。
【0096】
また、特に図示しないが、立上部3のコンクリートの硬化後、底盤コンクリート部2及び立上部3の外面(表面)に、モルタル等を塗布するなどの化粧処理を施すことにより塗膜部が設けられることがある。
【0097】
また、本実施例では、外スリーブ管121の一端に流出口が形成され、内スリーブ管122の他端に流入口が形成される構成であるが、外スリーブ管121の一端に流入口が形成され、内スリーブ管122の他端に流出口が形成される構成としても良い。
【0098】
[作用・効果]
以上説明したように、本発明の実施例1における水抜き配管装置111は、建物の基礎コンクリート1の立上部3によって囲まれた空間と基礎コンクリート1の外部とを連通する水抜き配管装置111であって、連接される複数の管体(例えば、外スリーブ管121と内スリーブ管122)と、弾性体としての伸縮ゴム150と、を備え、連接される外スリーブ管121と内スリーブ管122との間に伸縮ゴム150が配置されている。これによれば、外スリーブ管121と内スリーブ管122とが、伸縮ゴム150の弾性により離れる方向に付勢されることで、位置ずれが防止されるとともに、床下排水構造110を構成した状態で型枠FA、FB内に設置できるため、作業性が向上する。
【0099】
また、伸縮ゴム150の自然状態において、該伸縮ゴム150が配置された外スリーブ管121と内スリーブ管122とは互いに重合していることで、施工後において、伸縮ゴム150が外スリーブ管121及び内スリーブ管122の外のコンクリートに接触しないため、コンクリートにより劣化したり損傷したりするといった悪影響を受けることがない。
【0100】
また、伸縮ゴム150は、外スリーブ管121と内スリーブ管122との重合範囲Eにおける外スリーブ管121の内周面121bと内スリーブ管122の外周面122bとの間に設けられている。これによれば、排水経路上に伸縮ゴム150が配置されて排水が滞るなどの影響を及ぼすことなく配置することができる。
【0101】
また、伸縮ゴム150は、ゴム材からなり、外スリーブ管121の端面121aと内スリーブ管122の端面122aとの間に掛け渡されている。これによれば、外スリーブ管121に内スリーブ管122に挿入するだけで、外スリーブ管121と内スリーブ管122との間に伸縮ゴム150を簡単に配置することができる。また、排水経路長さ寸法L95に影響を与えることなく伸縮ゴム150を配置することができるとともに、伸縮ゴム150が管体の内周面に露呈して排水に接することがないように、外スリーブ管121と内スリーブ管122との径方向の間に収容することができる。
【0102】
また、伸縮ゴム150は、内スリーブ管122が押し込まれることにより伸縮部151が伸長するように設けられ、収縮の弾性力により外スリーブ管121と内スリーブ管122とが離れる方向に付勢されて型枠FA、FBに押し付けられるようになっていることで、伸縮ストローク寸法を大きく設定できるため、厚み寸法が異なる様々な立上部3に対応して、水抜き配管装置111を容易に突っ張らせて設置することができる。
【0103】
また、外スリーブ管121と内スリーブ管122同士の過挿入を規制する規制部としての段部116を備えることで、過度な力が伸縮ゴム150に加わることを防止できる。
【0104】
また、伸縮ゴム150には、周方向に複数の開口部151Aが形成されていることで、伸縮ゴム150が管軸方向に伸縮しやすくなる。
【0105】
また、伸縮ゴム150において、開口部151Aが形成された領域の方が、該開口部151Aが形成されていない領域よりも広いことで、伸縮ゴム150の伸縮の柔軟性が向上する。
【0106】
また、伸縮ゴム150は、伸縮可能な伸縮部151と、外スリーブ管121に嵌合可能な嵌合部154のリブ154Aと、を有することで、嵌合部154を外スリーブ管121の開口に固定した状態で、伸縮部151により内スリーブ管122を管軸方向へ移動させることができる。
【0107】
また、外スリーブ管121は、位置ずれ抑止用の位置ずれ抑止部としての座部131、135を有することで、型枠FA,FB内の所定位置に設置しやすいとともに、位置ずれが生じにくくなる。
【0108】
尚、本実施例では、外スリーブ管121の外面下部に、板状の座部131が周方向に沿うように突設された形態を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、
図9(a)、(b)に示されるように、外周面下部における管軸の両側方に、底盤コンクリート部2の上面に固定するための一対の座部135を突設してもよい。尚、座部135は、水平板135Aと水平板135Aから上方に屈曲する立板135Bとからなり、コンクリートに埋設される下部は櫛歯状に形成されている。
【0109】
このように座部135は、立板135Bが管軸の両側に沿うように配置されることで、コンクリートを打設する際に、水抜き配管装置111が周方向に転がることを防止できる。また、櫛歯状に形成されていることで、コンクリートが外スリーブ管121の下部に入り込みやすいので、外スリーブ管121の下部に隙間が形成されることを防止できる。
【0110】
尚、座部131、135の形態、配置位置、配置数などは上記実施例に記載のものに限定されるものではなく、種々に変更可能である。また、座部131及び座部135のうち少なくともいずれか一方が設けられていることが好ましいが、いずれの座部も設けられていなくてもよい。
【0111】
また、前記実施例では、弾性体としての伸縮ゴム150は、外スリーブ管121の内周面121bと内スリーブ管122の外周面122bとの間の隙間に伸縮部151が配置される形態を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、
図10に示されるように、弾性体は、外スリーブ管121の内周面121bにおける段部116と、内スリーブ管122の端面122aと、の間に配置される環状の伸縮ゴム160等であってもよい。
【0112】
この場合、内スリーブ管122が流出口13B側に向けて押圧されると(
図10の黒矢印方向参照)、伸縮ゴム160の弾性復帰力により流入口13A側を向く付勢力(
図10の白矢印参照)が生じる。この伸縮ゴム160のように、押し潰されて変形した伸縮ゴム160の弾性復帰力により、外スリーブ管121と内スリーブ管122とが離れる方向に付勢されることで型枠FA、FBに押し付けられ、型枠FA、FB内に突っ張った状態で固定されるようにしてもよい。
【0113】
このように、伸縮ゴム160は、外スリーブ管121の内部において、内スリーブ管122の端面122aが当接して押し潰されるように変形可能に配置されていてもよい。このようにすることで、伸縮ゴム160の構造を簡素化できる。
尚、以下に説明する実施例2においては、前記実施例1に記載の外スリーブ管121に該当する管体として、立上部3の厚み寸法に応じて水抜き配管装置11の両端開口間の排水経路長さ寸法を変更可能とする外スリーブ管11A及び内スリーブ管11Bのうちの内スリーブ管11Bを適用する形態を例示する。
尚、上記したように、内スリーブ管122と伸縮ゴム150については前記実施例1と同様に構成されているため、本実施例2においては、前記実施例1と同様の符号を付すことで詳細な説明については省略する。
外スリーブ管11Aの管軸方向の長さは所定の長さ寸法L1(例えば、L1=120mm)とされ、内スリーブ管11Bの管軸方向の長さは所定の長さ寸法L2(例えば、L1=120mm)とされている。また、内スリーブ管11Bの外径寸法L7は、外スリーブ管11Aの内径寸法L5よりも短寸とされていることで(L7<L5)、内スリーブ管11Bは外スリーブ管11A内に挿入可能とされており、外スリーブ管11Aに対し内スリーブ管11Bを管軸方向にスライド移動させて重合(重複)する重合寸法L3(重合範囲)を変更することで、水抜き配管装置11の全長寸法、つまり、流入口13Aから流出口13Bまでの排水経路長さ寸法L4を、長さ寸法L1よりも長寸の任意の長さ寸法に段階的に変更可能とされている。
外スリーブ管11Aの流出口13B側の端部には、内径寸法及び外径寸法が他の部分よりも長寸の拡径部21が形成されており、該拡径部21側から蓋部材12が挿入可能とされている。また、外スリーブ管11Aの内周面には、管軸に対し直交する円環状の凹溝部22が、流入口13A側の開口端部から所定間隔L20(例えば、L20=10mm)おきに複数(本実施例では10個)形成されている。
内スリーブ管11Bは、一端側が外スリーブ管11A内に挿入可能とされ、他端側には内スリーブ管122が挿入可能とされている。内スリーブ管11Bの外周面には、管軸に対し直交する円環状の凸条部32が、流出口13Bと反対側の開口端部から所定間隔L20(例えば、L20=10mm)おきに複数(本実施例では10個)形成されている。凸条部32の外径寸法L8は、外スリーブ管11Aの内径寸法L5よりも若干長寸とされており(L8>L5)、凸条部32が弾性変形することにより外スリーブ管11A内に挿入可能であり、凸条部32が凹溝部22内に嵌入して係止されることで、外スリーブ管11Aに対する内スリーブ管11Bの管軸方向への移動が規制される。
また、凸条部32は、流入口13A側の傾斜面32Aと流出口13B側の傾斜面32Bとを有し、傾斜面32Aの下端と傾斜面32Bの下端とを結ぶ管軸に平行な線に対する傾斜面32Bの傾斜角度θ2は、管軸に平行な線に対する傾斜面32Aの傾斜角度θ1よりも大きくなるように形成されている(θ2>θ1)。
つまり、傾斜面32Bの方が傾斜面32Aよりも管軸に対する傾斜角度が大きいため、外スリーブ管11A内に内スリーブ管11Bを押し込む際に傾斜面32Bが凹溝部22の内面に当接するときの係止力の方が、外スリーブ管11Aから内スリーブ管11Bを引き抜く際に傾斜面32Aが凹溝部22の内面に係止されるときの係止力よりも大きくなっている。このような構造により、施工時に、設定した長さよりも短い長さとなってしまうことを防止できる。
尚、本実施例では、内スリーブ管11Bの外周面に形成された複数の凸条部32と、外スリーブ管11Aの内周面に形成された複数の凹溝部22とからなる複数の係止手段のうち、同時に係止状態となる係止手段の個数を変更することで重合寸法L3を変更可能な形態を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、外スリーブ管11Aの内周面に形成された複数の凹溝部22のいずれかに、内スリーブ管11Bの外周面に形成された1個の凸条部32を係止させることで重合寸法L3を変更可能、または、外スリーブ管11Aの内周面に形成された1個の凹溝部22に、内スリーブ管11Bの外周面に形成された複数の凸条部32のうちいずれかを係止させることで重合寸法L3を変更可能としてもよい。
また、内スリーブ管11Bの流出口13B側の端部にシール部材を設け、外スリーブ管11Aの内周面に対して密着するようにしてもよく、このようにすることで、基礎の施工後に外スリーブ管11Aと内スリーブ管11Bの隙間からコンクリート内に水がしみ出ることを防止できる。
また、内スリーブ管11Bの外周面における流入口13A側の端部には、外側に突出する指掛け部としてのフランジ部33が形成されている。フランジ部33の外径寸法L9は、外スリーブ管11Aの外径寸法L6よりも長寸とされているため(L9>L6)、フランジ部33が外スリーブ管11Aの端部に近づいたときでも、フランジ部33が外スリーブ管11Aの外周面より外方に突出するため、フランジ部33に容易に指を掛けることができる。
尚、本実施例では、指掛け部の一例として、内スリーブ管11Bの外周面に環状に形成されたフランジ部33を適用した形態を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、内スリーブ管11Bの周方向の一部にのみ指掛け部が形成されていてもよい。また、指掛け部は端部でなく端部近傍に形成されていてもよい。
防蟻シート11C、11C’は、弾性部材または非加硫部材に防蟻剤を含有させたものを、所定厚み寸法(例えば、2~5mm)のシート状物として形成したものであり、例えば、ブチル再生ゴムが挙げられ、ブチル再生ゴム単独、またはブチル再生ゴムに天然ゴム、合成ゴム、熱可塑性エラストマー等を一種以上混合したものであってもよい。また、弾性部材または非加硫部材に補強剤、充填剤、可塑剤、軟化剤、老化防止剤、粘着剤、加工助剤、着色剤、架橋剤、架橋助剤等を適宜配合しても良い。
また、第1部材としての防蟻シート11C’は、第2部材としての防蟻シート11Cよりも硬度が高く、流出口13B側の端部(外部側端部)に設けられ、防蟻シート11Cは、防蟻シート11C’よりも流入口13A側(内部側)に設けられている。尚、本実施例では、流出口13B側の端部に設けられる防蟻シート11C’の方が流入口13A側の防蟻シート11Cよりも硬度が高い形態を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、防蟻シート11C、11C’の硬度は同一または略同一でもよい。また、防蟻シート11C、11C’は別個に形成されていてもよいし、2色成形等により一体に形成されていてもよい。さらに、少なくとも外スリーブ管11Aの外周面における流出口13B側の端部(外部側端部)または流出口13B側の端部近傍(外部側端部近傍)に設けられていれば、他の部分は設けられていなくてもよい。
蓋部材12は、外径寸法L10が外スリーブ管11Aの拡径部21の内径寸法L5’よりも短寸(L10<L5’)の筒状部40と、筒状部40の一端開口を閉鎖するように設けられる円盤状の蓋板41と、から構成される。筒状部40の外周面には、外スリーブ管11Aの拡径部21内に挿入可能、かつ、拡径部21より奥側に挿入不可な環状のガイド部42が突設されており、該ガイド部42の外周面に形成された凹溝内には、ゴム材等からなるシール部材43が嵌装されている。
よって、外スリーブ管11Aの流出口13Bに筒状部40が挿入され、ガイド部42が拡径部21内に位置すると、シール部材43が拡径部21の内周面に圧接されることで、流出口13Bが蓋部材12により水封状態で閉鎖される。
また、蓋板41の外径寸法L11は、外スリーブ管11Aの拡径部21の外径寸法L6’よりも長寸とされていることで(L11>L6’)、蓋板41が外スリーブ管11Aの流出口13Bの周囲の端面に当接して流出口13Bが閉鎖されたときに、蓋板41の鍔部41Aが外スリーブ管11Aの外周面よりも外側に突出するように配置される。また、蓋板41の外周縁部には、中心側から外側にかけて肉薄となるように流出口13B側に傾斜する傾斜面41Bが形成されている。
蓋板41の外面略中央位置には、矩形状の開口を有する凹部44が形成されており、該凹部44内にドライバー等の工具等を嵌入し、蓋部材12を管軸方向に引きぬくことで、蓋部材12を外スリーブ管11Aから取り外すことができるようになっている。
尚、蓋部材12は外スリーブ管11A内に挿入されることで取り付けられる構造であるが、後述する実施例3のように蓋部材12が外スリーブ管11A内に螺合して取り付けられる構造であってもよい。
また、伸縮ゴム150は、第1当接部152が内スリーブ管122の流出口13B側の端面に係止され、第2当接部153が内スリーブ管11Bの流入口13A側の端面に係止され、伸縮部151が内スリーブ管11Bの内周面と内スリーブ管122の外周面との間に配置される。つまり、伸縮ゴム150は、内スリーブ管11Bの端面と内スリーブ管122の端面との間に掛け渡されている。
また、外スリーブ管11Aに対し内スリーブ管11Bを管軸方向にスライド移動させるときに、凸条部32が凹溝部22内に嵌入して係止されることで、所望の排水経路長さ寸法L4に変更した後、接着剤やねじ部材等を用いて外スリーブ管11Aに対する内スリーブ管11Bの管軸方向への移動を規制しなくても、所望の排水経路長さ寸法L4に維持されるため、外スリーブ管11Aに対する内スリーブ管11Bの位置ずれが防止でされる。尚、係止状態において管軸方向に係止力よりも大きい外力を加えることで係止状態が解除されるため、長さの変更を容易に行うことができる。
本実施例では、外スリーブ管11Aの長さ寸法が120mm、外スリーブ管11Aの凹溝部22及び内スリーブ管11Bの凸条部32がそれぞれ10mmおきに10個形成された例を示しており、排水経路長さ寸法L4を120~220mm(+フランジ部33の厚み)の範囲で変更可能であるが、凹溝部22及び凸条部32の間隔を10mm以外の間隔(例えば、1mm、2mm、5mm、15mm等)としても良く、凹溝部22及び凸条部32の数を10個以外の数(例えば、2個、5個、15個等)としても良い。また、排水経路長さ寸法L4を変更可能な範囲についても120~220mm(+フランジ部33の厚み)に限らず、外スリーブ管11Aや内スリーブ管11Bの長さを異なる長さとすることで、それ以外の範囲に変更可能としても良い。
また、水抜き配管装置11の下面を硬化前の底盤コンクリート部2に押しつける際に、内スリーブ管11Bの流入口13Aの下端を、底盤コンクリート部2の上面と同高さまたはやや下方に配置することで、底盤コンクリート部2の上面にたまる水が流入口13Aに流入しやすくなる。また、外スリーブ管11Aの流出口13B側の端面を外側の型枠FAの内面に押し付けるように当接させて、型枠FAの内面と端面との間からコンクリートが進入しないようにする。尚、ここで流入口13Aに水を流入し易くするための集水路や誘導路を別途設置、もしくは、コンクリート面上に形成するようにしてもよい。
また、水抜き配管装置11は、凸条部32の傾斜面32Bの傾斜角度θ2の方が、傾斜面32Aの傾斜角度θ1よりも大きいことで(θ2>θ1)、重合寸法L3を長寸とするスライド方向への係止力が、重合寸法L3を短寸とするスライド方向への係止力よりも大きい、つまり、内スリーブ管11Bの挿入方向へのスライド移動を規制する係止力の方が、抜脱方向へのスライド移動を規制する係止力よりも大きいため、水抜き配管装置11を硬化前の底盤コンクリート部2に配置してからコンクリートが硬化するまでの間に、例えば、型枠FBを設置するときに接触するなどの外力が加わるなどして、設定した長さよりも短い長さとなってしまうことを防止できる。
また、内スリーブ管11Bのフランジ部33の下部がコンクリートに埋め込まれるように設置されるので、底盤コンクリート部2のコンクリートが硬化した後、立上部3のコンクリートが打設されるときに、流れ込むコンクリートに押されるなどして、内スリーブ管11Bが管軸方向に位置ずれすることが防止される。
尚、特に図示しないが、外スリーブ管11Aの外周面下部における管軸の両側方に、底盤コンクリート部2の上面に固定するための一対の座部を突設したり、あるいは、外スリーブ管11Aの外周面下部に底盤コンクリート部2内に埋設される杭部を突設することで、水抜き配管装置11が周方向に転がることを防止するようにしてもよい。更に、前記した一対の座部における外スリーブ管11Aの載置面を僅かに傾斜して形成してもよく、このようにすることで、水抜き配管装置11を立上部3の内部から外部に向けて下方に傾斜させ易く、排水を促進させることができる。
そして、立上部3のコンクリートが硬化した後、型枠FA、FBを撤去すると、水抜き配管装置11が立上部3を厚み方向に貫通するように配設された床下排水構造10が構成される。
床下排水構造10が構成された状態において、立上部3の内面に対し流入口13Aが略面一に配置され、立上部3の外面に対し流出口13Bが略面一に配置される。また、流入口13Aの下端が底盤コンクリート部2の上面と同高さまたはやや下方に配置されることで、底盤コンクリート部2の上面に溜まる水が流入口13Aに流入しやすくなる。
流入口13Aから内部に流入された水は、水抜き配管装置11内を流出口13B側に向けて誘導された後、流出口13Bから基礎外へ流出される。また、外スリーブ管11Aの内部に内スリーブ管11Bが重合するように挿入されることで、内スリーブ管11Bの内周面下部の方が外スリーブ管11Aの内周面下部よりも高くなるので、流入口13Aから内部に流入された水は、内スリーブ管122、内スリーブ管11Bから外スリーブ管11Aにスムーズに誘導される。尚、内スリーブ管11Bの内部に外スリーブ管11Aが挿入されるように外スリーブ管11Aと内スリーブ管11Bとを重合させてもよい。
また、外スリーブ管11Aの外周面に防蟻剤を含有する防蟻シート11C、11C’が配置されることで、コンクリートと外スリーブ管11Aとの間に隙間が生じることがなく、隙間からのシロアリ等の害虫、埃、ごみ等の侵入を防止できるとともに、シロアリに対する防蟻効果が高められる。
また、防蟻シート11C’は、外スリーブ管11Aの外周面のうち少なくとも流出口13B側の端部を被覆するように設けられることで、シロアリの侵入を効果的に防止できる。また、防蟻シート11C’の方が防蟻シート11Cよりも硬度が高いため、防蟻シート11C’の流出を防止できる一方、防蟻シート11C’よりも流入口13A側に相対的に硬度の低い防蟻シート11Cが設けられることで、コンクリートと外スリーブ管11Aの外周面との間に隙間が生じることを確実に防止できる。
また、蓋板41の外周縁部には、中心側から外側にかけて肉薄となるように流出口13B側に傾斜する傾斜面41Bが形成されているため、蓋部材12とコンクリート表面との境界部が目立ち難く、蓋部材12にて流出口13Bを閉鎖した際の意匠性が向上する。
また、この場合、蓋部材12の蓋板41は塗膜部5の表面側に配置されることで、蓋板41が外スリーブ管11Aの端面から離れることになるが、シール部材43は拡径部21の内周面に当接されるため、流出口13Bの水封状態は維持される。
また、本実施例では、外スリーブ管11Aと内スリーブ管11Bとの重合範囲を変更することで排水経路長さ寸法L4を変更可能な形態を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、4本以上の管体を互いに重合させて排水経路長さ寸法L4を変更可能としてもよい。
また、本実施例では、外スリーブ管11Aの一端に流出口が形成され、内スリーブ管11Bの他端に流入口が形成される構成であるが、外スリーブ管11Aの一端に流入口が形成され、内スリーブ管11Bの他端に流出口が形成される構成としても良い。
また、伸縮ゴム150の自然状態において、該伸縮ゴム150が配置された内スリーブ管11Bと内スリーブ管122とは互いに重合していることで、施工後において、伸縮ゴム150が内スリーブ管11B及び内スリーブ管122の外のコンクリートに接触しないため、コンクリートにより劣化したり損傷したりするといった悪影響を受けることがない。
また、伸縮ゴム150は、内スリーブ管11Bと内スリーブ管122との重合範囲における内スリーブ管11Bの内周面と内スリーブ管122の外周面との間に設けられている。これによれば、伸縮ゴム150を排水経路に影響を及ぼすことなく配置することができる。
また、伸縮ゴム150は、ゴム材からなり、内スリーブ管11Bの端面と内スリーブ管122の端面との間に掛け渡されている。これによれば、内スリーブ管11Bに内スリーブ管122に挿入するだけで、内スリーブ管11Bと内スリーブ管122との間に伸縮ゴム150を簡単に配置することができる。
また、伸縮ゴム150は、内スリーブ管122が押し込まれることにより伸縮部151が伸長するように設けられ、収縮する弾性力を利用して内スリーブ管11Bと内スリーブ管122とが離れる方向に付勢されることで、伸縮ストローク寸法を大きく設定できるため、厚み寸法が異なる様々な立上部3に対応して、水抜き配管装置11を容易に突っ張らせて設置することができる。
また、特に詳細な図示はしないが、内スリーブ管11Bと内スリーブ管122同士の過挿入を規制する規制部(例えば、実施例1の段部116など)を備えることで、過度な力が伸縮ゴム150に加わることを防止できる。
また、伸縮ゴム150において、開口部151Aが形成された領域の方が、該開口部151Aが形成されていない領域よりも広いことで、伸縮ゴム150の伸縮の柔軟性が向上する。
この場合、内スリーブ管11Bを管軸周りに正回転または逆回転させることで重合寸法L3(重合範囲)を変更することで、水抜き配管装置11の排水経路長さ寸法L4を、長さ寸法L1よりも長寸の長さ寸法に無段階に変更可能とされている。この際、内スリーブ管11Bを管軸周りに回転させるだけの簡単な作業で長さを変更し、かつ変更後の長さ寸法を維持することができる。尚、外スリーブ管11Aの内周面に螺旋状の雄ねじ部を形成するとともに、内スリーブ管11Bの外周面に螺旋状の雌ねじ部を形成してもよい。
また、特に図示しないが、外スリーブ管11Aの内周面に対して内スリーブ管11Bの外周面が接触した状態で管軸方向へスライド移動可能にするようにしてもよい。このような構成では、内スリーブ管11Bの流出口13B側の端部にシール部材を設け、外スリーブ管11Aの内周面に対して密着するようにしてもよく、このようにすることで、基礎の施工後に外スリーブ管11Aと内スリーブ管11Bの隙間からコンクリート内に水がしみ出ることを防止できる。