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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033801
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】懸架装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/46 20060101AFI20240306BHJP
   B62K 25/08 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
F16F9/46
B62K25/08 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137634
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】514241869
【氏名又は名称】カヤバモーターサイクルサスペンション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】須崎 渓
【テーマコード(参考)】
3D014
3J069
【Fターム(参考)】
3D014DD02
3D014DE04
3D014DE27
3J069AA46
3J069CC15
3J069EE06
3J069EE35
(57)【要約】
【課題】本発明は、側減衰力の調整と圧側減衰力の調整とのフロントフォークの上端側で行える懸架装置の提供を目的とする。
【解決手段】懸架装置Sは、第1フロントフォークF1xおよび第2フロントフォークF2yを備え、第1フロントフォークF1xは、第1車体側チューブ3xの上端を閉塞する第1キャップ5xに伸側減衰力調整バルブ21xが伸側減衰力調整通路20xを通過する液体の流れに与える抵抗を調節可能な伸側調整部22xを有し、第2フロントフォークF2yは、第2車体側チューブ3yの上端を閉塞する第2キャップ5yに圧側減衰力調整バルブ24yが圧側減衰力調整通路23yを通過する液体の流れに与える抵抗を調節可能な圧側調整部25yを有している。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鞍乗型車両の前輪を車体に懸架する第1フロントフォークおよび第2フロントフォークを有する懸架装置であって、
第1フロントフォークは、
第1車体側チューブと、前記第1車体側チューブに対して軸方向へ移動可能な第1車軸側チューブと、前記第1車体側チューブの上端を閉塞する第1キャップと、前記第1車軸側チューブの下端を閉塞するとともに前記前輪の車軸を保持する第1アクスルブラケットとを有して伸縮可能な第1フォーク本体と、
前記第1アクスルブラケットに連結される第1シリンダと、前記第1シリンダ内に軸方向へ移動可能に挿入されるとともに上端が前記第1キャップに連結される第1ピストンロッドと、前記第1ピストンロッドに連結されるとともに前記第1シリンダ内に挿入されて前記第1シリンダ内を第1伸側室と第1圧側室とに区画する第1ピストンとを有して、前記第1フォーク本体の伸縮に伴って伸縮して前記第1フォーク本体の伸縮を妨げる減衰力を発生する第1ダンパとを有して、
前記第1フォーク本体と前記第1ダンパとの間の空間で液体を貯留する第1リザーバを形成しており、
第2フロントフォークは、
第2車体側チューブと、前記第2車体側チューブに対して軸方向へ移動可能な第2車軸側チューブと、前記第2車体側チューブの上端を閉塞する第2キャップと、前記第2車軸側チューブの下端を閉塞するとともに前記前輪の車軸を保持する第2アクスルブラケットとを有して伸縮可能な第2フォーク本体と、
前記第2アクスルブラケットに連結される第2シリンダと、前記第2シリンダ内に軸方向へ移動可能に挿入されるとともに上端が前記第2キャップに連結される第2ピストンロッドと、前記第2ピストンロッドに連結されるとともに前記第2シリンダ内に挿入されて前記第2シリンダ内を第2伸側室と第2圧側室とに区画する第2ピストンとを有して、前記第2フォーク本体の伸縮に伴って伸縮して前記第2フォーク本体の伸縮を妨げる減衰力を発生する第2ダンパとを有して、
前記第2フォーク本体と前記第2ダンパとの間の空間で液体を貯留する第2リザーバを形成しており、
前記第1ダンパは、前記第1伸側室と前記第1圧側室とを連通する伸側減衰力調整通路と、前記伸側減衰力調整通路の途中に設けた伸側減衰力調整バルブと、前記第1キャップに設けられて前記伸側減衰力調整バルブが前記伸側減衰力調整通路を通過する液体の流れに与える抵抗を調節可能な伸側調整部とを有し、
前記第2ダンパは、前記第2ピストンロッド内を通じて前記第2圧側室と前記第2リザーバと連通する圧側減衰力調整通路と、前記圧側減衰力調整通路の途中に設けた圧側減衰力調整バルブと、前記第2キャップに設けられて前記圧側減衰力調整バルブが前記圧側減衰力調整通路を通過する液体の流れに与える抵抗を調節可能な圧側調整部とを有する
ことを特徴とする懸架装置。
【請求項2】
前記圧側減衰力調整通路は、前記第2ピストンロッドの側方から開口するとともに前記第2リザーバに常に対向する横孔と、前記第2ピストンロッドに設けられて前記第2圧側室と前記横孔とを連通させる縦孔とによって形成されており、
前記横孔は、前記第2リザーバの前記液体の液面よりも下方に配置される
ことを特徴とする請求項1に記載の懸架装置。
【請求項3】
前記圧側減衰力調整通路は、前記第2ピストンロッドの側方から開口するとともに前記第2リザーバに常に対向する横孔と、前記第2ピストンロッドに設けられて前記第2圧側室と前記横孔とを連通させる縦孔とによって形成されており、
前記第2ダンパは、前記圧側減衰力調整通路の途中に前記圧側減衰力調整バルブと直列に設けられて前記第2圧側室から前記第2リザーバへ向かう液体の流れのみを許容するチェックバルブを有し、
前記チェックバルブは、前記第2リザーバの前記液体の液面よりも下方に配置される
ことを特徴とする請求項1に記載の懸架装置。
【請求項4】
前記第1ピストンロッドおよび前記第2ピストンロッドは、ともに筒状であり、
前記伸側減衰力調整バルブは、前記第1ピストンロッド内に軸方向へ移動可能に挿入される伸側ニードルと前記第1ピストンロッドの内周に設けた伸側環状弁座とを有し、
前記圧側減衰力調整バルブは、前記第2ピストンロッド内に軸方向へ移動可能に挿入される圧側ニードルと前記第2ピストンロッドの内周に設けた圧側環状弁座とを有し、
前記第1ダンパは、前記第1ピストンロッド内に挿入されて前記伸側調整部の動力を前記伸側ニードルに伝達する伸側コントロールロッドを有し、
前記第2ダンパは、前記第2ピストンロッド内に挿入されて前記圧側調整部の動力を前記圧側ニードルに伝達する圧側コントロールロッドを有し、
前記第1ダンパと前記第2ダンパは、前記第1ピストンロッド、前記第2ピストンロッド、前記伸側ニードル、前記圧側ニードル、前記伸側コントロールロッドおよび前記圧側コントロールロッドを除き、構成部品を共通にしている
ことを特徴とする請求項1に記載の懸架装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、懸架装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鞍乗側車両の車体と前輪との間に介装される懸架装置は、左右一対のフロントフォークを備えて構成されており、各フロントフォークの内部にはダンパが内蔵されている。
【0003】
より詳しくは、各フロントフォークは、たとえば、車体側チューブと、車体側チューブに対して軸方向へ相対移動可能な車軸側チューブと、車体側チューブの上端を閉塞するキャップと、車軸側チューブの下端を閉塞するとともに前輪の車軸を保持するアクスルブラケットとを備えたフォーク本体と、フォーク本体に収容されるダンパとを備えている。
【0004】
また、ダンパは、下端がアクスルブラケットに固定されるシリンダと、上端がキャップに連結されるとともにシリンダ内に挿入されるピストンロッドと、ピストンロッドの先端に装着されるとともにシリンダ内に摺動自在に挿入されてシリンダ内を伸側室と圧側室とに区画するピストンと、シリンダ内の下方側に挿入されてシリンダに設けられた孔を介してシリンダ外のリザーバに連通される部屋と圧側室との間を仕切るバルブディスクと、ピストンに設けられた伸側ポートと圧側ポートと、伸側ポートを開閉して伸側室から圧側室へ向かう液体の流れに抵抗を与える伸側リーフバルブと、圧側ポートを開閉して圧側室から伸側室へ向かう液体の流れのみを許容する圧側チェックバルブと、バルブディスクに設けられた圧側減衰ポートと吸込ポートと、圧側減衰ポートを開閉して圧側室からリザーバへ向かう液体の流れに抵抗を与える圧側リーフバルブと、吸込ポートを開閉してリザーバから圧側室へ向かう液体の流れのみを許容する伸側チェックバルブとを備えている。
【0005】
懸架装置では、左右のフロントフォークにおけるダンパが発生する減衰力の調整を可能とするために、ダンパは、前記構成に加えて、ピストンロッドに伸側ポートを迂回して伸側室と圧側室とを連通する伸側減衰力調整用通路と、当該伸側減衰力調整用通路の途中に設けた伸側ニードルバルブと、アクスルブラケットに設けられて圧側室とリザーバとを連通する圧側減衰力調整用通路と、当該圧側減衰力調整用通路の途中に設けた圧側ニードルバルブとを備えている。このように構成された懸架装置では、伸側ニードルバルブの流路面積をフォーク本体のキャップに設けられた伸側アジャスタの操作によってダンパの伸長時の伸側減衰力を調節できるとともに、圧側ニードルバルブの流路面積をアクスルブラケットに設けられた圧側アジャスタの操作によってダンパの収縮時の圧側減衰力を調整できる(たとえば、特許文献1または2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11-201214号公報
【特許文献2】実開平6-56532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の懸架装置では、各フロントフォークにおけるダンパの伸側減衰力と圧側減衰力とを独立に調整できるが、圧側アジャスタがフロントフォークの下端のアクスルブラケットに設けられているために、圧側減衰力の調整を行うにはユーザは車両から降車して屈みこんで圧側アジャスタを操作する必要がある。このように、従来の懸架装置における圧側減衰力の調整は面倒な作業になっており、伸側減衰力の調整だけではなく、圧側減衰力の調整もフロントフォークの上端側で行える懸架装置が要望されている。
【0008】
また、圧側減衰力をアクチュエータの利用で調整する場合を考えると、従来の懸架装置ではアクチュエータを地面近くに配置する構造となってしまうので、従来の懸架装置ではアクチュエータの設置にも不向きである。
【0009】
そこで、本発明は、伸側減衰力の調整と圧側減衰力の調整とをフロントフォークの上端側で行える懸架装置の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述の課題を解決するため、本発明の懸架装置は、鞍乗型車両の前輪を車体に懸架する第1フロントフォークおよび第2フロントフォークを備え、第1フロントフォークは、第1車体側チューブと、第1車体側チューブに対して軸方向へ移動可能な第1車軸側チューブと、第1車体側チューブの上端を閉塞する第1キャップと、第1車軸側チューブの下端を閉塞するとともに前輪の車軸を保持する第1アクスルブラケットとを有して伸縮可能な第1フォーク本体と、第1アクスルブラケットに連結される第1シリンダと、第1シリンダ内に軸方向へ移動可能に挿入されるとともに上端が第1キャップに連結される第1ピストンロッドと、第1ピストンロッドに連結されるとともに第1シリンダ内に挿入されて第1シリンダ内を第1伸側室と第1圧側室とに区画する第1ピストンとを有して、第1フォーク本体の伸縮に伴って伸縮して第1フォーク本体の伸縮を妨げる減衰力を発生する第1ダンパとを備え、第1フォーク本体と第1ダンパとの間の空間で液体を貯留する第1リザーバを形成しており、第2フロントフォークは第2車体側チューブと、第2車体側チューブに対して軸方向へ移動可能な第2車軸側チューブと、第2車体側チューブの上端を閉塞する第2キャップと、第2車軸側チューブの下端を閉塞するとともに前輪の車軸を保持する第2アクスルブラケットとを有して伸縮可能な第2フォーク本体と、第2アクスルブラケットに連結される第2シリンダと、第2シリンダ内に軸方向へ移動可能に挿入されるとともに上端が第2キャップに連結される第2ピストンロッドと、第2ピストンロッドに連結されるとともに第2シリンダ内に挿入されて第2シリンダ内を第2伸側室と第2圧側室とに区画する第2ピストンとを有して、第2フォーク本体の伸縮に伴って伸縮して第2フォーク本体の伸縮を妨げる減衰力を発生する第2ダンパとを有して、第2フォーク本体と第2ダンパとの間の空間で液体を貯留する第2リザーバを形成しており、第1ダンパは、第1伸側室と第1圧側室とを連通する伸側減衰力調整通路と、伸側減衰力調整通路の途中に設けた伸側減衰力調整バルブと、第1キャップに設けられて伸側減衰力調整バルブが伸側減衰力調整通路を通過する液体の流れに与える抵抗を調節可能な伸側調整部とを有し、第2ダンパは、第2ピストンロッド内を通じて第2圧側室と第2リザーバと連通する圧側減衰力調整通路と、圧側減衰力調整通路の途中に設けた圧側減衰力調整バルブと、第2キャップに設けられて圧側減衰力調整バルブが圧側減衰力調整通路を通過する液体の流れに与える抵抗を調節可能な圧側調整部とを有している。このように構成された懸架装置によれば、伸側減衰力と圧側減衰力の調整を第1フロントフォークおよび第2フロントフォークの上端側で行える。
【0011】
また、懸架装置にあっては、圧側減衰力調整通路が第2ピストンロッドの側方から開口するとともに第2リザーバに常に対向する横孔と、第2ピストンロッドに設けられて第2圧側室と横孔とを連通させる縦孔とによって形成されており、横孔が第2リザーバの液体の液面よりも下方に配置されていてもよい。このように構成された懸架装置によれば、圧側減衰力調整バルブが常に液中に配置されるので、第2ダンパの収縮時に圧側減衰力の調整機能が損なわれることがない。
【0012】
さらに、懸架装置にあっては、圧側減衰力調整通路が第2ピストンロッドの側方から開口するとともに第2リザーバに常に対向する横孔と、第2ピストンロッドに設けられて第2圧側室と横孔とを連通させる縦孔とによって形成されており、第2ダンパが圧側減衰力調整通路の途中に圧側減衰力調整バルブと直列に設けられて第2圧側室から第2リザーバへ向かう液体の流れのみを許容するチェックバルブを有し、チェックバルブが第2リザーバの液体の液面よりも下方に配置されていてもよい。このように構成された懸架装置によれば、圧側減衰力調整バルブが常に液中に配置されるので、第2ダンパの収縮時に圧側減衰力の調整機能が損なわれることがない。
【0013】
そして、懸架装置にあっては、第1ピストンロッドおよび第2ピストンロッドがともに筒状であり、伸側減衰力調整バルブが第1ピストンロッド内に軸方向へ移動可能に挿入される伸側ニードルと第1ピストンロッドの内周に設けた伸側環状弁座とを有し、圧側減衰力調整バルブが第2ピストンロッド内に軸方向へ移動可能に挿入される圧側ニードルと第2ピストンロッドの内周に設けた圧側環状弁座とを有し、第1ダンパが第1ピストンロッド内に挿入されて伸側調整部の動力を伸側ニードルに伝達する伸側コントロールロッドを有し、第2ダンパは、第2ピストンロッド内に挿入されて圧側調整部の動力を圧側ニードルに伝達する圧側コントロールロッドを有し、第1ダンパと第2ダンパは、第1ピストンロッド、第2ピストンロッド、伸側ニードル、圧側ニードル、伸側コントロールロッドおよび圧側コントロールロッドを除き、構成部品を共通にしている。このように構成された懸架装置によれば、第1ダンパと第2ダンパの製造にあたり部品点数を最小に留めることができ、懸架装置の製造コストを低減できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の懸架装置によれば、伸側減衰力の調整と圧側減衰力の調整とのフロントフォークの上端側で行える。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施の形態の懸架装置が適用された鞍乗型車両の正面図である。
図2】本発明の一実施の形態の懸架装置の第1フロントフォークの断面図である。
図3】本発明の一実施の形態の懸架装置の第2フロントフォークの断面図である。
図4】第2ダンパの一変形例を収容する第2フロントフォークの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。図1に示すように、一実施の形態における懸架装置Sは、第1フロントフォークF1xおよび第2フロントフォークF2yとを備えて、自動二輪車やトライク等の鞍乗型車両Vの車体Bに前輪Wを懸架している。
【0017】
以下、懸架装置Sの各部について詳細に説明する。なお、第1フロントフォークF1xと第2フロントフォークF2yとは、互いに共通する部材をいくつか備えており、第1フロントフォークF1xと第2フロントフォークF2yの各部の説明にあたり、本書で部材の名称の前に「第1」および「第2」を付けていない場合、特に断りがない限り、第1フロントフォークF1xおよび第2フロントフォークF2yの双方の部品を示している。また、本書では、部材に付した符号の末尾にxがついている場合、第1フロントフォークF1xの部品であることを示しており、部材に付した符号の末尾にyがついている場合、第2フロントフォークF2yの部品であることを示している。
【0018】
懸架装置Sは、図1に示すように、第1フロントフォークF1xと、第2フロントフォークF2yと、第1フロントフォークF1xと第2フロントフォークF2yとの上端を把持する上下一対のブラケット1,2とを備えている。そして、ブラケット1,2は、鞍乗型車両Vの車体Bの先端に設けられたヘッドパイプP内に回転自在に挿入されるステアリングシャフトに取り付けられて、車体BにヘッドパイプPの周方向へ回転可能に連結されている。第1フロントフォークF1xと第2フロントフォークF2は、車体Bに対してヘッドパイプPの周方向へ回転可能に連結されたブラケット1,2に上端側が把持されており、下端に前輪Wの車軸Wsが連結されている。このように、懸架装置Sは、左右一対のフロントフォークF1x,F2yによって鞍乗型車両Vの車体Bに対して前輪Wを懸架している。
【0019】
第1フロントフォークF1xは、図2に示すように、第1車体側チューブ3xと、第1車体側チューブ3xに対して軸方向へ移動可能な第1車軸側チューブ4xと、第1車体側チューブ3xの上端を閉塞する第1キャップ5xと、第1車軸側チューブ3xの下端を閉塞するとともに前輪Wの車軸Wsを保持する第1アクスルブラケット6xとを有して伸縮可能な第1フォーク本体Fxと、第1フォーク本体Fx内に収容される第1ダンパDxとを備えている。また、第2フロントフォークF2yは、図3に示すように、第2車体側チューブ3yと、第2車体側チューブ3yに対して軸方向へ移動可能な第2車軸側チューブ4yと、第2車体側チューブ3yの上端を閉塞する第2キャップ5yと、第2車軸側チューブ4yの下端を閉塞するとともに前輪Wの車軸Wsを保持する第2アクスルブラケット6yとを有して伸縮可能な第2フォーク本体Fyと、第2フォーク本体Fy内に収容される第2ダンパDyとを備えている。
【0020】
図2および図3に示すように、車体側チューブ3x,3yの上端の開口端には、キャップ5x,5yが装着されており、キャップ5x,5yによって車体側チューブ3x,3yの上端が閉塞されている。キャップ5x,5yは、車体側チューブ3x,3yの上端の内周に螺合する環状の外環部5ax,5ayと、外環部5ax,5ayの内周から図中下方へ向けて突出して後述するピストンロッド11x,11yの上端に螺合される内筒部5bx,5byとを備えている。また、キャップ5x,5yにおける内筒部5bx,5byには、互いに径方向で対向するとともに内筒部5bx,5byの軸方向に沿う一対の長孔5cx,5cyが設けられている。
【0021】
車軸側チューブ4x,4yは、車体側チューブ3x,3yの下方から車体側チューブ3x,3y内に挿入されており、車体側チューブ3x,3yに対して軸方向へ相対移動できる。なお、車体側チューブ3x,3yの下端の内周には、車軸側チューブ4x,4yの外周に摺接する環状のブッシュ7x,7yと環状のシール部材8x,8yとが設けられており、車軸側チューブ4x,4yの上端外周には車体側チューブ3x,3yの内周に摺接する環状のブッシュ9x,9yが装着されている。よって、車体側チューブ3x,3yと車軸側チューブ4x,4yとは、ブッシュ7x,7y,9x,9yによって互いに軸ぶれせずに軸方向へ移動できる。
【0022】
車軸側チューブ4x,4yの下端は、前輪Wの車軸Wsを把持するアクスルブラケット6x,6yによって閉塞されており、アクスルブラケット6x,6yによってフォーク本体Fx,Fyが前輪Wに連結されている。そして、このように構成されたフォーク本体Fx,Fy内は、シール部材8x,8yによって外方から密閉された空間となっている。アクスルブラケット6x,6yは、筒状であって車軸側チューブ4x,4yの下端の外周に螺子締結される有底筒状の筒部6ax,6ayと、筒部6ax,6ayの底部に連なって車軸Wsを把持する把持部6bx,6byとを備えている。なお、図示はしないが、アクスルブラケット6x,6yには、ブレーキキャリパやフェンダ等の装着を可能とする取り付け部が設けられる。
【0023】
第1ダンパDxは、第1アクスルブラケット6xに連結される第1シリンダ10xと、第1シリンダ10x内に軸方向へ移動可能に挿入されるとともに上端が第1キャップ5xに連結される第1ピストンロッド11xと、第1ピストンロッド11xに連結されるとともに第1シリンダ10x内に挿入されて第1シリンダ10x内を液体が充填される第1伸側室R1xと第1圧側室R2xとに区画する第1ピストン12xとを有して、第1フォーク本体Fxの伸縮に伴って伸縮して第1フォーク本体Fxの伸縮を妨げる減衰力を発生する。このように第1ダンパDxが第1フォーク本体Fx内に収容されると、第1ダンパDx外であって第1フォーク本体Fx内は液体が貯留されるリザーバRxが形成される。さらに、第1ダンパDxは、第1伸側室R1xと第1圧側室R2xとを連通する伸側減衰力調整通路20xと、伸側減衰力調整通路20xの途中に設けた伸側減衰力調整バルブ21xと、第1キャップ5xに設けられて伸側減衰力調整バルブ21xが伸側減衰力調整通路20xを通過する液体の流れに与える抵抗を調節可能な伸側調整部としての伸側アジャスタ22xとを備えている。
【0024】
また、第2ダンパDyは、第2アクスルブラケット6yに連結される第2シリンダ10yと、第2シリンダ10y内に軸方向へ移動可能に挿入されるとともに上端が第2キャップ5yに連結される第2ピストンロッド11yと、第2ピストンロッド11yに連結されるとともに第2シリンダ10y内に挿入されて第2シリンダ10y内を液体が充填される第2伸側室R1yと第2圧側室R2yとに区画する第2ピストン12yとを有して、第2フォーク本体Fyの伸縮に伴って伸縮して第2フォーク本体Fyの伸縮を妨げる減衰力を発生する。このように第2ダンパDyが第2フォーク本体Fy内に収容されると、第2ダンパDy外であって第2フォーク本体Fy内は液体が貯留される第2リザーバRyが形成される。さらに、第2ダンパDyは、第2ピストンロッド11y内を通じて第2圧側室R2yと第2フォーク本体Fy内であって第2シリンダ10yの外方へと連通する圧側減衰力調整通路23yと、圧側減衰力調整通路23yの途中に設けた圧側減衰力調整バルブ24yと、第2キャップ5yに設けられて圧側減衰力調整バルブ24yが圧側減衰力調整通路23yを通過する液体の流れに与える抵抗を調節可能な圧側調整部としての圧側アジャスタ25yとを備えている。
【0025】
以下、第1ダンパDxおよび第2ダンパDyを構成する部材について説明する。シリンダ10x,10yは、フォーク本体Fx,Fyにおけるアクスルブラケット6x,6yに固定されるベースバルブ組立体13x,13yを介してアクスルブラケット6x,6yに連結されている。シリンダ10x,10yは、下端の側部から開口してシリンダ10x,10y内とリザーバRx,Ryとを連通する透孔10ax,10ayを備えている。また、シリンダ10x,10yの上端開口端には、環状のロッドガイド15x,15yが装着されている。ロッドガイド15x,15yは、環状であってシリンダ10x,10yの上端の内周に螺合されて内周に挿通されるピストンロッド11x,11yの外周に摺接するガイド部15ax,15ayと、ガイド部15ax,15ayの上端から上方へ向けて突出する筒状のケース部15bx,15byとを備えている。なお、シリンダ10x,10y内およびリザーバRx,Ryに充填される液体は、本実施の形態の懸架装置Sでは作動油とされているが、作動油以外の液体とされてもよい。
【0026】
ベースバルブ組立体13x,13yは、シリンダ10x,10yの透孔10ax,10ayよりも上方側に嵌合する環状の隔壁体13ax,13ayと、アクスルブラケット6x,6yの筒部6ax,6ayの底部を貫くボルト14x,14yによってアクスルブラケット6x,6yに固定されるとともにシリンダ10x,10yの下端に螺合するとともに隔壁体13ax,13ayを保持する保持部材13bx,13byとを備えている。保持部材13bx,13byは、シリンダ10x,10yの下端であって透孔10ax,10ayよりも下方の内周に螺合してシリンダ10x,10yの下端を閉塞する閉塞部13b1x,13b1yと、閉塞部13b1x,13b1yから上方へ向けて突出するとともに外周に隔壁体13ax,13ayが装着される軸部13b2x,13b2yとを備えている。このように、シリンダ10x,10y内であって隔壁体13ax,13ayと閉塞部13b1x,13b1yとの間の空間は、透孔10ax,10ayを介してリザーバRx,Ryに連通されており、隔壁体13ax,13ayは、シリンダ10x、10y内を圧側室R2x,R2yとリザーバRx,Ryに連通される空間とに区画している。
【0027】
また、隔壁体13ax,13ayには、圧側室R2x,R2yと前記空間とを連通する圧側減衰通路13a1x,13a1yと吸込通路13a2x,13a2yとが設けられている。そして、圧側減衰通路13a1x,13a1yには、圧側室R2x,R2yからリザーバRx,Ryへ向かう液体の流れに抵抗を与える圧側減衰バルブ32x,32yが設けられており、吸込通路13a2x,13a2yには、リザーバRx,Ryから圧側室R2x,R2yへ向かう液体の流れのみを許容する伸側チェックバルブ33x,33yが設けられている。
【0028】
ピストンロッド11x,11yは、筒状のピストンロッド本体11ax,11ayと、ピストンロッド本体11ax,11ayの下端に連結されてピストン12x,12yを保持する筒状のセンターロッド11bx,11byとを備えている。そして、ピストンロッド11x,11yは、上端がキャップ5x,5yにおける内筒部5bx,5byに螺合によって連結されており、下端側がロッドガイド15x,15yの内周を通してシリンダ10x,10y内に挿入されている。ピストンロッド11x,11yは、ロッドガイド15x,15yとピストン12x,12yによってシリンダ10x,10yに対して径方向への移動が規制された状態でピストン12x,12yとともに軸方向となる図中上下方向へ相対移動できる。
【0029】
図2に示すように、第1ピストンロッド11xにおけるセンターロッド11bxは、筒状であって、ピストンロッド本体11axの下端外周に螺合する大径部11b1xと、大径部11b1xよりも外径が小径であって外周にピストン12xが装着される小径部11b2xと、大径部11b1xに設けられて大径部11b1xを径方向に貫くポート11b3xと、内周であってポート11b3xよりも小径部11b2x側に設けられた段部によって形成される伸側環状弁座11b4xとを備えている。ピストンロッド本体11axの外周には、第1ダンパDxが最収縮する際にロッドガイド15xのケース部15bx内に侵入する環状のロックピース31xが設けられており、ケース部15bx内にロックピース31xが侵入すると、ケース部15bx内の圧力を上昇させて第1ダンパDxのそれ以上の収縮を抑制する。
【0030】
なお、センターロッド11bxは、筒状であって、センターロッド11bxの先端の開口が第1圧側室R2xに面しているので、センターロッド11bxの内部とポート11b3xと通じて第1伸側室R1xと第1圧側室R2xとが連通されている。このように、ピストンロッド11xの内部に、伸側減衰力調整通路20xが形成されている。
【0031】
第1ピストン12xは、環状であって第1伸側室R1xと第1圧側室R2xとを並列に連通する伸側減衰通路12axと圧側通路12bxとを備えており、センターロッド11bxの小径部11b2xの外周に嵌合されている。
【0032】
第1ピストン12xの第1圧側室R2x側には伸側減衰通路12axを開閉するとともに伸側減衰通路12axを第1伸側室R1xから第1圧側室R2xへ向かって通過する液体の流れに対して抵抗を与える環状の伸側減衰バルブ16xが設けられている。伸側減衰バルブ16xは、本実施の形態の場合、内周がセンターロッド11bxに固定されて外周の撓みが許容されるリーフバルブとされているが、リーフバルブ以外のバルブであってもよく、また、リーフバルブの積層枚数も設計変更できる。
【0033】
第1ピストン12xの第1伸側室R1x側には圧側通路12bxを開閉するとともに圧側通路12bxを第1圧側室R2xから第1伸側室R1xへ向かって通過する液体の流れのみを許容する環状の圧側チェックバルブ17xが重ねられている。圧側チェックバルブ17xは、本実施の形態の場合、環状であってピストン12xに対して軸方向へ移動可能な弁体と、弁体をピストン12xへ向けて付勢されるばねとで構成されているが、他の構造のバルブであってもよい。
【0034】
つづいて、ピストンロッド11x内に設けられた伸側減衰力調整通路20xには、ピストンロッド11x内に軸方向へ移動可能に挿入されて伸側環状弁座11b4xに離着座可能な伸側ニードル21axと、伸側ニードル21axを伸側環状弁座11b4xから離間させる方向へ付勢するばね21bxとを備えた伸側減衰力調整バルブ21xが設けられている。伸側ニードル21axは、ピストンロッド本体11axの下端の内周に摺接する大径なガイド部21a1xと、ガイド部21a1xから下方へ延びて伸側環状弁座11b4xに離着座する円錐形の弁頭21a2xと、ガイド部21a1xの外周に装着されてピストンロッド本体11axの内周に摺接するシールリング21a3xとを備えている。よって、伸側ニードル21axは、ピストンロッド11x内でガイド部21a1xによってガイドされて軸方向へ軸ぶれなく移動できるとともに、シールリング21a3xによって液体がガイド部21a1xを乗り越えてピストンロッド11x内を上方へ移動するのを防止している。
【0035】
伸側減衰力調整バルブ21xは、伸側ニードル21axを伸側環状弁座11b4xに着座させると伸側減衰力調整通路20xを遮断できるとともに、伸側ニードル21axを伸側環状弁座11b4xから後退させると伸側減衰力調整通路20xを開放するとともに、伸側ニードル21axと伸側環状弁座11b4xとの間の隙間の大きさ(流路面積)の調整によって伸側減衰力調整通路20xを通過する液体の流れに与える抵抗を調整できる。
【0036】
伸側減衰力調整バルブ21xにおける流路面積の調整は、第1キャップ5xの内周に収容される伸側アジャスタ22xの操作によって行う。伸側アジャスタ22xは、外周に螺子部を有しており、第1キャップ5xの内筒部5bx内に周方向へ回転可能に装着される筒状のばねアジャスタ26xの内周に周方向へ回転可能に挿入されている。伸側アジャスタ22xとばねアジャスタ26xとで送り螺子機構が形成されており、伸側アジャスタ22xをばねアジャスタ26xに対して回転させると、伸側アジャスタ22xが第1キャップ5x内で図2中上下方向へ移動する。伸側アジャスタ22xと伸側ニードル21axとの間であって、ピストンロッド本体11ax内には円筒状の伸側コントロールロッド27xが軸方向となる図2中上下方向へ移動可能に挿入されており、伸側コントロールロッド27xを介して伸側アジャスタ22xの上下方向へ変位が伸側ニードル21axへ伝達される。このように、第1フロントフォークF1xの上端の第1キャップ5xに設けた伸側アジャスタ22xを操作すれば、伸側減衰力調整バルブ21xの流路面積を大小変更できる。
【0037】
なお、ばねアジャスタ26xの下端外周にも螺子部(符示せず)が形成されており、ばねアジャスタ26xの外周の螺子部にナット28xが取り付けられている。ナット28xは、第1キャップ5xの内筒部5bxの長孔5cxを通じて内筒部5bxの外周側へ突出するばね受28axを備えている。そして、ばね受28axとロッドガイド15xのケース部15bxの上端との間には、懸架ばね29xが介装されており、懸架ばね29xは、第1フォーク本体Fxを伸長させるように付勢して鞍乗型車両Vの車体Bを弾性的に支持する。ばねアジャスタ26xを回転操作すると、ナット28xが内筒部5bxによって回転が規制されるために図2中上下方向へ移動して、ばね受28axの懸架ばね29xの支持位置を上下方向へ変位させるので鞍乗型車両Vの車高を調整できる。
【0038】
他方、図3に示すように、第2ピストンロッド11yにおけるピストンロッド本体11ayは、横孔11a1yを備えている。第1ピストンロッド11xにおけるピストンロッド本体11axは横孔を備えていないが、第2ピストンロッド11yにおけるピストンロッド本体11ayは横孔11a1yを備えており、この点で、ピストンロッド本体11axとピストンロッド本体11ayとでは構造を異にしている。横孔11a1yは、第2ダンパDyが最収縮してシリンダ10y内にピストンロッド11yが最大限に侵入しても、ケース部15byよりも上方に位置して第2リザーバRyに連通される。このように、横孔11a1yは、常に第2リザーバRyに連通されている。さらに、横孔11a1yは、第2ダンパDyが最伸長してシリンダ10yからピストンロッド11yが最大限に図3中上方へ移動しても、第2リザーバRyに貯留されている液体の液面Oyよりも常に下方になる位置に設けられている。
【0039】
なお、ピストンロッド本体11ayの外周であって横孔11a1yよりも下方には、第2ダンパDyが最収縮する際にロッドガイド15yのケース部15by内に侵入する環状のロックピース31yが設けられており、ケース部15by内にロックピース31yが侵入すると、ケース部15by内の圧力を上昇させて第2ダンパDyのそれ以上の収縮を抑制する。
【0040】
また、第2ピストンロッド11yにおけるセンターロッド11byは、筒状であって、ピストンロッド本体11ayの下端外周に螺合する大径部11b1yと、大径部11b1yよりも外径が小径であって外周にピストン12yが装着される小径部11b2yと、内周に設けられた段部によって形成される圧側環状弁座11b3yとを備えている。第1ピストンロッド11xにおけるセンターロッド11bxはポート11b3xを備えているが、第2ピストンロッド11yにおけるセンターロッド11byはポートを備えておらず、この点で、センターロッド11bxとセンターロッド11byとでは構造を異にしている。
【0041】
なお、ピストンロッド本体11ayおよびセンターロッド11byは、筒状であって、センターロッド11byの先端の開口が第2圧側室R2yに面しているので、第2ピストンロッド11yの内部と横孔11a1yとを通じて第2圧側室R2yがリザーバRyに連通されている。このように、第2ピストンロッド11yを筒状とされることで横孔11a1yを第2圧側室R2yに連通させる縦孔が形成されており、第2ピストンロッド11yの内部に圧側減衰力調整通路23yが形成されている。
【0042】
第2ピストン12yは、環状であって第2伸側室R1yと第2圧側室R2yとを並列に連通する伸側減衰通路12ayと圧側通路12byとを備えており、センターロッド11byの小径部11b2yの外周に嵌合されている。
【0043】
第2ピストン12yの第2圧側室R2y側には伸側減衰通路12ayを開閉するとともに伸側減衰通路12ayを第2伸側室R1yから第2圧側室R2yへ向かって通過する液体の流れに対して抵抗を与える環状の伸側減衰バルブ16yが設けられている。伸側減衰バルブ16yは、本実施の形態の場合、内周がセンターロッド11byに固定されて外周の撓みが許容されるリーフバルブとされているが、リーフバルブ以外のバルブであってもよく、また、リーフバルブの積層枚数も設計変更できる。
【0044】
第2ピストン12yの第2伸側室R1y側には圧側通路12byを開閉するとともに圧側通路12byを第2圧側室R2yから第2伸側室R1yへ向かって通過する液体の流れのみを許容する環状の圧側チェックバルブ17yが重ねられている。圧側チェックバルブ17yは、本実施の形態の場合、環状であってピストン12yに対して軸方向へ移動可能な弁体と、弁体をピストン12yへ向けて付勢されるばねとで構成されているが、他の構造のバルブであってもよい。
【0045】
つづいて、ピストンロッド11y内に設けられた圧側減衰力調整通路23yには、ピストンロッド11y内に軸方向へ移動可能に挿入されて圧側環状弁座11b3yに離着座可能な圧側ニードル24ayと、圧側ニードル24ayを圧側環状弁座11b3yから離間させる方向へ付勢するばね24byとを備えた圧側減衰力調整バルブ24yが設けられている。圧側ニードル24ayは、ピストンロッド本体11ayの下端の内周に摺接する大径なガイド部24a1yと、ガイド部24a1yから下方へ延びて圧側環状弁座11b3yに離着座する円錐形の弁頭24a2yとを備えている。よって、圧側ニードル24ayは、ピストンロッド11y内でガイド部24a1yによってガイドされて軸方向へ軸ぶれなく移動できる。
【0046】
圧側減衰力調整バルブ24yは、圧側ニードル24ayを圧側環状弁座11b3yに着座させると圧側減衰力調整通路23yを遮断できるとともに、圧側ニードル24ayを圧側環状弁座11b3yから後退させると圧側減衰力調整通路23yを開放するとともに、圧側ニードル24ayと圧側環状弁座11b3yとの間の隙間の大きさ(流路面積)の調整によって圧側減衰力調整通路23yを通過する液体の流れに与える抵抗を調整できる。なお、ガイド部24a1yの外周には切欠24a3yを備えていて、ガイド部24a1yが圧側減衰力調整通路23yを閉塞しないので、圧側減衰力調整バルブ24yの開弁時に圧側減衰力調整通路23yによる第2圧側室R2yと第2リザーバRyとの連通が確保されている。
【0047】
圧側減衰力調整バルブ24yにおける流路面積の調整は、第2キャップ5yの内周に収容される圧側アジャスタ25yの操作によって行う。圧側アジャスタ25yは、外周に螺子部を有しており、第2キャップ5yの内筒部5by内に周方向へ回転可能に装着される筒状のばねアジャスタ26yの内周に周方向へ回転可能に挿入されている。圧側アジャスタ25yとばねアジャスタ26yとで送り螺子機構が形成されており、圧側アジャスタ25yをばねアジャスタ26yに対して回転させると、圧側アジャスタ25yが第2キャップ5y内で図3中上下方向へ移動する。圧側アジャスタ25yと圧側ニードル24ayとの間であって、ピストンロッド本体11ay内には円筒状の圧側コントロールロッド30yが軸方向となる図3中上下方向へ移動可能に挿入されており、圧側コントロールロッド30yを介して圧側アジャスタ25yの上下方向へ変位が圧側ニードル24ayへ伝達される。このように、第2フロントフォークF2yの上端の第2キャップ5yに設けた圧側アジャスタ25yを操作すれば、圧側減衰力調整バルブ24yの流路面積を大小変更できる。
【0048】
なお、ばねアジャスタ26yの下端外周にも螺子部(符示せず)が形成されており、ばねアジャスタ26yの外周の螺子部にナット28yが取り付けられている。ナット28yは、第2キャップ5yの内筒部5byの長孔5cyを通じて内筒部5byの外周側へ突出するばね受28ayを備えている。そして、ばね受28ayとロッドガイド15yのケース部15byの上端との間には、懸架ばね29yが介装されており、懸架ばね29yは、第2フォーク本体Fyを伸長させるように付勢して鞍乗型車両Vの車体Bを弾性的に支持する。ばねアジャスタ26yを回転操作すると、ナット28yが内筒部5byによって回転が規制されるために図3中上下方向へ移動して、ばね受28ayの懸架ばね29yの支持位置を上下方向へ変位させるので鞍乗型車両Vの車高を調整できる。
【0049】
懸架装置Sは、以上のように構成されており、以下に懸架装置Sの作動について説明する。まず、懸架装置Sにおける第1フロントフォークF1xおよび第2フロントフォークF2yが伸長する場合、第1ダンパDxおよび第2ダンパDyもともに伸長する。第1ダンパDxおよび第2ダンパDyは、伸長すると、シリンダ10x,10y内をピストン12x,12yが図中で上方へ移動して伸側室R1x,R1yを縮小させるとともに圧側室R2x,R2yを拡大させる。すると、液体は、ピストン12x,12yの伸側減衰バルブ16x,16yを押し開いて伸側減衰通路12ax,12ayを通過して伸側室R1x,R1yから圧側室R2x,R2yへ移動する。伸側減衰バルブ16x,16yは、伸側減衰通路12ax,12ayを通過する液体の流れに対して抵抗を与えるので伸側室R1x,R1y内の圧力が上昇する。
【0050】
第1ダンパDxでは、伸側減衰力調整通路20xは、伸側減衰通路12axと並列して第1伸側室R1xと第1圧側室R2xとを連通している。そして、伸側減衰力調整通路20xには、伸側減衰力調整バルブ21xが設けられている。よって、伸側減衰力調整バルブ21xが開弁している状態では、第1伸側室R1x内の液体は、伸側減衰通路12axだけではなく伸側減衰力調整通路20xを通じても第1圧側室R2xへ移動する。よって、伸側アジャスタ22xの操作によって伸側減衰力調整バルブ21xにおける伸側ニードル21axと伸側環状弁座11b4xとの間の流路面積の調整によって、伸側減衰力調整通路20xを通過する液体の流れに与える抵抗を調整でき、これによって第1ダンパDxの伸長時の第1伸側室R1x内の圧力を高低調整し得る。
【0051】
他方、ピストンロッド11x,11yがシリンダ10x,10yから退出するため、拡大する圧側室R2x,R2y内ではピストンロッド11x,11yがシリンダ10x,10yから退出する体積分の液体が不足するが、この不足分の液体は、伸側チェックバルブ33x,33yが開弁して吸込通路13a2x,13a2yを介してリザーバRx,Ryから圧側室R2x,R2yへ供給される。よって、圧側室R2x,R2y内の圧力は、略リザーバRx,Ry内の圧力と等しくなる。
【0052】
このように、懸架装置Sの伸長時には、伸側室R1x,R1y内の圧力が上昇して圧側室R2x,R2y内の圧力よりも高くなって、ピストン12x,12yに作用し、第1ダンパDxは第1フロントフォークF1xの伸長を妨げる伸側減衰力を発生し、第2ダンパDyは第2フロントフォークF2yの伸長を妨げる伸側減衰力を発生する。
【0053】
そして、第1ダンパDxにあっては、伸側減衰力調整バルブ21xが伸側減衰力調整通路20xを第1伸側室R1xから第1圧側室R2xへ向かう液体の流れに与える抵抗を調整して伸側減衰力の調整が可能である。懸架装置Sの全体が伸長する際に当該伸長を妨げる減衰力は、第1ダンパDxと第2ダンパDyとが発生する減衰力の総和であるから、第1フロントフォークF1x内の第1ダンパDxの伸側減衰力の調整によって、懸架装置Sの伸長時の伸側減衰力の調整を行える。
【0054】
つづいて、懸架装置Sにおける第1フロントフォークF1xおよび第2フロントフォークF2yが収縮する場合、第1ダンパDxおよび第2ダンパDyもともに収縮する。第1ダンパDxおよび第2ダンパDyは、収縮すると、シリンダ10x,10y内をピストン12x,12yが図中で下方へ移動して圧側室R2x,R2yを縮小させるとともに伸側室R1x,R1yを拡大させる。すると、液体は、ピストン12x,12yの圧側チェックバルブ17x,17yを押し開いて圧側通路12bx,12byを通過して圧側室R2x,R2yから伸側室R1x,R1yへ移動する。また、ピストンロッド11x,11yがシリンダ10x,10y内に侵入するため、シリンダ10x,10yではピストンロッド11x,11yがシリンダ10x,10y内に侵入する体積分の液体が過剰となり、この過剰分の液体は、圧側減衰バルブ32x,32yを押し開いて圧側減衰通路13a1x,13a1yを通じて圧側室R2x,R2yからリザーバRx,Ryへ移動する。圧側チェックバルブ17x,17yは液体の流れに殆ど抵抗を与えず伸側室R1x,R1y内の圧力と圧側室R2x,R2y内の圧力とを略等しくする一方で、圧側減衰バルブ32x,32yは、圧側減衰通路13a1x,13a1yを通過する液体の流れに対して抵抗を与えるのでシリンダ10x,10y内の圧力が上昇する。
【0055】
第2ダンパDyでは、圧側減衰力調整通路23yは、圧側減衰通路13a1yと並列して第2圧側室R2yと第2リザーバRyとを連通している。そして、圧側減衰力調整通路23yには、圧側減衰力調整バルブ24yが設けられている。よって、圧側減衰力調整バルブ24yが開弁している状態では、第2圧側室R2y内の液体は、圧側減衰通路13a1yだけではなく圧側減衰力調整通路23yを通じても第2リザーバRyへ移動する。よって、圧側アジャスタ25yの操作によって圧側減衰力調整バルブ24yにおける圧側ニードル24ayと圧側環状弁座11b3yとの間の流路面積の調整によって、圧側減衰力調整通路23yを通過する液体の流れに与える抵抗を調整でき、これによって第2ダンパDyの収縮時のシリンダ10y内の圧力を高低調整し得る。
【0056】
このように、懸架装置Sの収縮時には、伸側室R1x,R1y内の圧力と圧側室R2x,R2y内の圧力が略等しく上昇して、伸側室R1x,R1y内の圧力がピストン12x,12yの上面に作用し、圧側室R2x,R2y内の圧力がピストン12x,12yの下面に作用するが、ピストン12x,12yがピストンロッド11x,11yに連結されているのでピストン12x,12yの上面の受圧面積よりも下面の受圧面積の方が大きくなるため、第1ダンパDxは第1フロントフォークF1xの収縮を妨げる圧側減衰力を発生し、第2ダンパDyは第2フロントフォークF2yの収縮を妨げる圧側減衰力を発生する。
【0057】
そして、第2ダンパDyにあっては、圧側減衰力調整バルブ24yが圧側減衰力調整通路23yを第2圧側室R2yから第2リザーバRyへ向かう液体の流れに与える抵抗を調整して伸側減衰力の調整が可能である。懸架装置Sの全体が収縮する際に当該伸長を妨げる減衰力は、第1ダンパDxと第2ダンパDyとが発生する減衰力の総和であるから、第2フロントフォークF2y内の第2ダンパDyの圧側減衰力の調整によって、懸架装置Sの収縮時の伸側減衰力の調整を行える。
【0058】
よって、本実施の形態における懸架装置Sでは、第1フロントフォークF1xの上端の第1キャップ5xに取り付けられた伸側アジャスタ22xの操作によって伸側減衰力の調整を行うことができ、第2フロントフォークF2yの上端の第2キャップ5yに取り付けられた圧側アジャスタ25yの操作によって圧側減衰力の調整を行うことができる。
【0059】
以上、本実施の形態の懸架装置Sは、鞍乗型車両Vの前輪Wを車体Bに懸架する第1フロントフォークF1xおよび第2フロントフォークF2yを備え、第1フロントフォークF1xは、第1車体側チューブ3xと、第1車体側チューブ3xに対して軸方向へ移動可能な第1車軸側チューブ4xと、第1車体側チューブ3xの上端を閉塞する第1キャップ5xと、第1車軸側チューブ3xの下端を閉塞するとともに前輪Wの車軸Wsを保持する第1アクスルブラケット6xとを有して伸縮可能な第1フォーク本体Fxと、第1アクスルブラケット6xに連結される第1シリンダ10xと、第1シリンダ10x内に軸方向へ移動可能に挿入されるとともに上端が第1キャップ5xに連結される第1ピストンロッド11xと、第1ピストンロッド11xに連結されるとともに第1シリンダ10x内に挿入されて第1シリンダ10x内を液体が充填される第1伸側室R1xと第1圧側室R2xとに区画する第1ピストン12xとを有して、第1フォーク本体Fxの伸縮に伴って伸縮して第1フォーク本体Fxの伸縮を妨げる減衰力を発生する第1ダンパDxとを備え、第1フォーク本体Fxと第1ダンパDxとの間の空間で液体を貯留する第1リザーバRxを形成しており、第2フロントフォークF2yは第2車体側チューブ3yと、第2車体側チューブ3yに対して軸方向へ移動可能な第2車軸側チューブ4yと、第2車体側チューブ3yの上端を閉塞する第2キャップ5yと、第2車軸側チューブ4yの下端を閉塞するとともに前輪Wの車軸Wsを保持する第2アクスルブラケット6yとを有して伸縮可能な第2フォーク本体Fyと、第2アクスルブラケット6yに連結される第2シリンダ10yと、第2シリンダ10y内に軸方向へ移動可能に挿入されるとともに上端が第2キャップ5yに連結される第2ピストンロッド11yと、第2ピストンロッド11yに連結されるとともに第2シリンダ10y内に挿入されて第2シリンダ10y内を第2伸側室R1yと第2圧側室R2yとに区画する第2ピストン12yとを有して、第2フォーク本体Fyの伸縮に伴って伸縮して第2フォーク本体Fyの伸縮を妨げる減衰力を発生する第2ダンパDyとを有して、第2フォーク本体Fyと第2ダンパDyとの間の空間で液体を貯留する第2リザーバRyを形成しており、第1ダンパDxは、第1伸側室R1xと第1圧側室R2xとを連通する伸側減衰力調整通路20xと、伸側減衰力調整通路20xの途中に設けた伸側減衰力調整バルブ21xと、第1キャップ5xに設けられて伸側減衰力調整バルブ21xが伸側減衰力調整通路20xを通過する液体の流れに与える抵抗を調節可能な伸側アジャスタ(伸側調整部)22xとを有し、第2ダンパDyは、第2ピストンロッド11y内を通じて第2圧側室R2yと第2リザーバRyと連通する圧側減衰力調整通路23yと、圧側減衰力調整通路23yの途中に設けた圧側減衰力調整バルブ24yと、第2キャップ5yに設けられて圧側減衰力調整バルブ24yが圧側減衰力調整通路23yを通過する液体の流れに与える抵抗を調節可能な圧側アジャスタ(圧側調整部)25yとを有している。
【0060】
このように構成された懸架装置Sでは、第1フロントフォークF1xにおける第1ダンパDxが伸縮時に減衰力を発生可能であって、伸側減衰力調整バルブ21xを操作する伸側アジャスタ(伸側調整部)によって第1ダンパDxの伸側減衰力の調整が可能であり、第2フロントフォークF2yにおける第2ダンパDyが伸縮時に減衰力を発生可能であって、圧側減衰力調整バルブ24yを操作する圧側アジャスタ(圧側調整部)25yによって第2ダンパDyの伸側減衰力の調整が可能である。そして、このように構成された懸架装置Sでは、伸側減衰力調整バルブ21xを操作する伸側アジャスタ(伸側調整部)22xが第1フロントフォークF1xの上端の第1キャップ5xに取り付けられるとともに、圧側減衰力調整バルブ24yを操作する圧側アジャスタ(圧側調整部)25yが、第2フロントフォークF2yの上端の第2キャップ5yに取り付けられている。よって、本実施の形態の懸架装置Sによれば、伸側減衰力と圧側減衰力の調整を第1フロントフォークF1xおよび第2フロントフォークF2yの上端側で行える。
【0061】
また、本実施の形態の懸架装置Sでは、伸側調整部がユーザによる手動操作が可能な伸側アジャスタ22xとされ、圧側調整部がユーザによる手動操作が可能な圧側アジャスタ25yとされている。懸架装置Sのユーザは、鞍乗型車両Vに搭乗したまま、第1フロントフォークF1xの上端の伸側アジャスタ22xを操作することで伸側減衰力の調整を行えるとともに、第2フロントフォークF2yの上端の圧側アジャスタ25yを操作することで圧側減衰力の調整を行える。また、本実施の形態の懸架装置Sでは、伸側減衰力と圧側減衰力の調整のためにユーザにわざわざ降車して屈みこむ等の姿勢を強要することがないので、伸側減衰力と圧側減衰力との調整を容易にできる。
【0062】
また、本実施の形態の懸架装置Sでは、第1ダンパDxおよび第2ダンパDyは、ともに伸縮時に減衰力を発生するので、第1ダンパDxが伸長時にのみ減衰力を発生し、かつ、第2ダンパDyが収縮時にのみ減衰力を発生する場合に比較して、シリンダ10x、10y内の最大圧力を低下させ得る。よって、本実施の形態の懸架装置Sによれば、第1ダンパDxおよび第2ダンパDyを構成する部品の軽量化が可能となるとともにコストも低減できる。
【0063】
なお、前述したところでは、懸架装置Sは、伸側減衰力調整バルブ21xの流路面積の調整のために伸側調整部として伸側アジャスタ22xを備え、圧側減衰力調整バルブ24yの流路面積の調整のために圧側調整部として圧側アジャスタ25yを備えているが、伸側調整部および圧側調整部は、ソレノイドを備えたリニアアクチュエータや、回転型のモータとモータのロータの回転を直線運動に変換する送り螺子機構とで構成されたリニアアクチュエータ等とされてもよい。このように構成された懸架装置Sでは、リニアアクチュエータを地面の至近に配置する必要が無く、リニアアクチュエータが第1フロントフォークF1xと第2フロントフォークF2yの上端に搭載でき、リニアアクチュエータの保護とリニアアクチュエータへの配線の取り回しも容易となる。
【0064】
さらに、本実施の形態の懸架装置Sでは、前述した通り、伸側減衰力調整バルブ21xはニードルバルブとされているが、軸方向への変位或いは周方向への変位によってピストンロッド11xに設けたポート11b3xを開閉するシャッタを備えたバルブであってもよい。さらに、本実施の形態の懸架装置Sでは、前述した通り、圧側減衰力調整バルブ24yはニードルバルブとされているが、軸方向への変位或いは周方向への変位によってピストンロッド11yに設けた横孔11a1yを開閉するシャッタを備えたバルブであってもよい。伸側減衰力調整バルブ21xおよび圧側減衰力調整バルブ24yは、環状弁座11b4x,11b3yに離着座可能な弁体と、弁体を環状弁座11b4x,11b3yに着座させるように付勢するばねとで構成されてもよい。この場合は、伸側アジャスタ22xでばねの付勢力を調整して伸側減衰力調整バルブ21xの開弁圧を変更して伸側減衰力調整通路20xを通過する液体の流れに与える抵抗を調節でき、圧側アジャスタ25yでばねの付勢力を調整して圧側減衰力調整バルブ24yの開弁圧を変更して圧側減衰力調整通路23yを通過する液体の流れに与える抵抗を調節できる。このように、伸側減衰力調整バルブ21xおよび圧側減衰力調整バルブ24yをニードルバルブ以外のバルブへ変更しても、伸側調整部および圧側調整部をアジャスタ22x,25yに代えてリニアアクチュエータとしてもよい。
【0065】
また、本実施の形態の懸架装置Sでは、圧側減衰力調整通路23yが第2ピストンロッド11yの側方から開口するとともに第2リザーバRyに常に対向する横孔11a1yと、第2ピストンロッド11yに設けられて第2圧側室R2yと横孔11a1yとを連通させる縦孔とによって形成されており、横孔11a1yが第2リザーバRyの液体の液面Oyよりも下方に配置されている。このように構成された懸架装置Sによれば、第2フロントフォークF2yが長時間伸縮しなかった場合であっても、横孔11a1yが第2ダンパDyの伸縮状態によらず常時液面Oyよりも下方に配置されるので、圧側減衰力調整通路23y内で液面が圧側減衰力調整バルブ24yよりも下方に下降してしまうことがない。仮に圧側減衰力調整通路23y内で液面が圧側減衰力調整バルブ24yよりも下方に下降してしまうと、第2フロントフォークF2yが何回か伸縮作動を呈して圧側減衰力調整通路23y内で液面が上昇して圧側減衰力調整バルブ24yに到達するまでは圧側減衰力の調整ができなくなる。これに対して、前述のように構成された懸架装置Sによれば、圧側減衰力調整バルブ24yが常に液中に配置され、圧側減衰力調整通路23y内で液面が圧側減衰力調整バルブ24yよりも下方に下降せず、第2ダンパDyの収縮時に圧側減衰力調整バルブ24yによる圧側減衰力の調整機能が損なわれることがない。なお、横孔11a1yが常時液面Oyよりも下方に配置されない場合であっても、伸側減衰力と圧側減衰力との調整を容易にできるとの本願発明の効果は失われない。
【0066】
さらに、本実施の形態の懸架装置Sでは、第1ピストンロッド11xおよび第2ピストンロッド11yは、ともに筒状であり、伸側減衰力調整バルブ21xは、第1ピストンロッド11x内に軸方向へ移動可能に挿入される伸側ニードル21axと第1ピストンロッド11xの内周に設けた伸側環状弁座11b4xとを有し、圧側減衰力調整バルブ24yは、第2ピストンロッド11y内に軸方向へ移動可能に挿入される圧側ニードル24ayと第2ピストンロッド11yの内周に設けた圧側環状弁座11b3yとを有し、第1ダンパDxは、第1ピストンロッド11x内に挿入されて伸側アジャスタ(伸側調整部)22xの軸方向への移動を前記伸側ニードルに伝達する伸側コントロールロッド27xを有し、第2ダンパDyは、第2ピストンロッド11y内に挿入されて圧側アジャスタ(圧側調整部)25yの軸方向への移動を圧側ニードル24ayに伝達する圧側コントロールロッド30yを有し、第1ダンパDxと第2ダンパDyは、第1ピストンロッド11x、第2ピストンロッド11y、伸側ニードル22ax、圧側ニードル24ay、伸側コントロールロッド27xおよび圧側コントロールロッド30yを除き、構成部品を共通にしている。このように構成された懸架装置Sによれば、第1ダンパDxと第2ダンパDyとが、第1ピストンロッド11x、第2ピストンロッド11y、伸側ニードル22ax、圧側ニードル24ay、伸側コントロールロッド27xおよび圧側コントロールロッド30yを除き、同一部品で構成されているので、第1ダンパDxと第2ダンパDyの製造にあたり部品点数を最小に留めることができ、懸架装置Sの製造コストを低減できる。また、本実施の形態の懸架装置Sでは、第1フォーク本体Fxと第2フォーク本体Fyも同一部品で構成されているので、懸架装置Sの製造コストをより一層低減できる。
【0067】
なお、前述した一実施の形態の懸架装置Sにおける第2フロントフォークF2yでは、第2ピストンロッド11yに対して横孔11a1yが常に第2リザーバRy内の液体の液面Oyより下方に配置されるように設置して、第2ダンパDyが伸長から収縮へ切り換わる際の減衰力の発生に遅れが出ないようにしているが、図4に示した一変形例における第2ダンパD1yのように圧側減衰力調整通路23yの途中に圧側減衰力調整バルブ24yと直列に第2圧側室R2yから第2リザーバRyへ向かう液体の流れのみを許容するチェックバルブ34yを常に第2リザーバRyの液体の液面Oyよりも下方に配置されるように設置してもよい。
【0068】
チェックバルブ34yは、フランジ付き円筒状の弁座34ayと、弁座34ayに離着座可能な球状の弁体34byと、弁座34ayの円筒部の外周に装着される有底筒状であって側部および底部に孔を有するケース34cyと、ケース34cyと弁体34byとの間に介装されて弁体34byを弁座34ayに着座させるように付勢するばね34dyとを備えている。このようにチェックバルブ34yは、カートリッジ化されており、ピストン12yを保持するセンターロッド11byの大径部11b1y内に収容される。そして、チェックバルブ34yは、弁座34ayのフランジがピストンロッド本体11ayの先端とセンターロッド11byの大径部11b1yと小径部11b2yとの間の段部とで挟持されて、ピストンロッド11y内で固定されている。このようにチェックバルブ34yをカートリッジ化しておけば、ピストンロッド11y内への設置が容易である。また、この第2ダンパD1yでは、チェックバルブ34yをセンターロッド11by内に収容したので、図4に示したように、第2キャップ5yの内筒部5by内に圧側減衰力調整バルブ24yを設けて、第2キャップ5yに第2リザーバRyとピストンロッド11y内を連通する通路40yを設けている。
【0069】
このように構成された第2ダンパDy1では、チェックバルブ34yが液面Oyより下方に配置されているので、チェックバルブ34yによって圧側減衰力調整通路23y内の液体が下降しなくなり、常に、圧側減衰力調整バルブ24yが液中にある状態となる。よって、第1変形例の第2ダンパDy1を第2フロントフォークF2y内の収容した懸架装置Sによれば、第2ダンパDy1の収縮時に圧側減衰力調整バルブ24yによる圧側減衰力の調整機能が損なわれることがない。
【0070】
なお、圧側減衰力調整通路23yに対する圧側減衰力調整バルブ24yとチェックバルブ34yとの配置に関し、第2ダンパDy1における減衰力発生の遅れを防止するには、圧側減衰力調整バルブ24yとチェックバルブ34yとが直列に配置されており、チェックバルブ34yが常に第2リザーバRyの液体の液面Oyよりも下方に配置されていればよいので、これらの条件を満たす限りにおいて圧側減衰力調整バルブ24yとチェックバルブ34yとの配置を任意に決定できる。よって、図4に示したように、第2キャップ5yの内筒部5by内に圧側減衰力調整バルブ24yを設けて、第2キャップ5yに第2リザーバRyとピストンロッド11y内を連通する構造を採用してもよいし、図3に示したように、ピストンロッド11y内に圧側減衰力調整バルブ24yを設けてもよい。また、センターロッド11by内でスペースを確保できる大径部11b1y内にチェックバルブ34yを収容したことにより、チェックバルブ34yを無理なくピストンロッド11yに設置できるとともに、第2ダンパD1yがフルストロークしてもシリンダ10y外に出ることがないから、チェックバルブ34yを確実に液面Oyよりも下方に配置できる。また、チェックバルブ34yは、前述のようにカートリッジ化されると第2ダンパD1yへの設置が容易となるが、チェックバルブとして機能する限りにおいて構造は自由に設計変更できる。
【0071】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形および変更が可能である。
【符号の説明】
【0072】
3x・・・第1車体側チューブ、3y・・・第2車体側チューブ、4x・・・第1車軸側チューブ、4y・・・第2車軸側チューブ、5x・・・第1キャップ、5y・・・第2キャップ、6x・・・第1アクスルブラケット、6y・・・第2アクスルブラケット、10x・・・第1シリンダ、10y・・・第2シリンダ、11x・・・第1ピストンロッド、11b4x・・・伸側環状弁座、11y・・・第2ピストンロッド、11a1y・・・横孔、11b3y・・・圧側環状弁座、12x・・・第1ピストン、12y・・・第2ピストン、20x・・・伸側減衰量調整通路、21x・・・伸側減衰力調整バルブ、21ax・・・伸側ニードル、22x・・・伸側アジャスタ(伸側調整部)、23y・・・圧側減衰力調整通路、24y・・・圧側減衰力調整バルブ、24ay・・・圧側ニードル、25y・・・圧側アジャスタ(圧側調整部)、27x・・・伸側コントロールロッド、30y・・・圧側コントロールロッド、34y・・・チェックバルブ、B・・・車体、Dx・・・第1ダンパ、Dy,D1y・・・第2ダンパ、F1x・・・第1フロントフォーク、F2y・・・第2フロントフォーク、Fx・・・第1フォーク本体、Fy・・・第2フォーク本体、O・・・液面、S・・・懸架装置、Rx・・・第1リザーバ、Ry・・・第2リザーバ、R1x・・・第1伸側室、R1y・・・第2伸側室、R2x・・・第1圧側室、R2y・・・第2圧側室、V・・・鞍乗型車両、W・・・前輪、Ws・・・車軸
図1
図2
図3
図4