(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033804
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】スタッキング用容器の製造方法及びスタッキング用容器
(51)【国際特許分類】
B65D 21/02 20060101AFI20240306BHJP
【FI】
B65D21/02 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137637
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】597053038
【氏名又は名称】中村被服株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111132
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 浩
(72)【発明者】
【氏名】中村 顕
(72)【発明者】
【氏名】山野 聖也
【テーマコード(参考)】
3E006
【Fターム(参考)】
3E006AA02
3E006BA01
3E006CA06
3E006DA03
3E006DB04
(57)【要約】
【課題】製品の製造時に品質にばらつきが生じ難く、生産性に優れたスタッキング用容器の製造方法を提供する。
【解決手段】中空容器2の少なくとも底面2a及び天面2bに配される平板状の支持材3と、底面2aに配されるシート材4である第1のシート材4aに縫着され、樹脂成型体である複数の底鋲5と、天面2bに配されるシート材4である第2のシート材4bに縫着され、樹脂成型体であり、底鋲5と同数の天鋲6と、を備えてなるスタッキング用容器の製造方法であって、第1のシート材4a又は第2のシート材4bを矩形状に裁断する裁断工程と、裁断された第1のシート材4a又は第2のシート材4bにおける任意の角をなす2辺を基準にして底鋲5又は天鋲6の縫着位置を決める位置決め工程と、第1のシート材4a又は第2のシート材4bにおける縫着位置に底鋲5又は天鋲6を縫着して固定する固定工程と、を備えるスタッキング用容器の製造方法による。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空容器の少なくとも底面及び天面に配される平板状の支持材と、
前記支持材の外側面を被覆するシート材と、
前記底面に配される前記シート材である第1のシート材に縫着され、樹脂成型体である複数の底鋲と、
前記天面に配される前記シート材である第2のシート材に縫着され、樹脂成型体であり、前記底鋲と同数の天鋲と、を備えてなるスタッキング用容器の製造方法であって、
前記第1のシート材又は前記第2のシート材を矩形状に裁断する裁断工程と、
裁断された前記第1のシート材又は前記第2のシート材における任意の角をなす2辺を基準にして前記底鋲又は前記天鋲の縫着位置を決める位置決め工程と、
前記第1のシート材又は前記第2のシート材における前記縫着位置に前記底鋲又は前記天鋲を縫着して固定する固定工程と、を備えていることを特徴とするスタッキング用容器の製造方法。
【請求項2】
中空容器の少なくとも底面及び天面に配される平板状の支持材と、
前記支持材の外側面を被覆するシート材と、
前記底面に配される前記シート材である第1のシート材に縫着され、樹脂成型体である複数の底鋲と、
前記天面に配される前記シート材である第2のシート材に縫着され、樹脂成型体であり、前記底鋲と同数の天鋲と、を備え、
前記底鋲は、
縫い代である第1のフランジ部と、
前記第1のフランジ部の中央に設けられ前記第1のフランジ部の厚み方向に突出する第1の突部と、を備え、
前記天鋲は、
縫い代である第2のフランジ部と、
前記第2のフランジ部の中央に設けられ前記第2のフランジ部の厚み方向に突出する第2の突部と、
前記第2の突部の中央に形成され、前記中空容器の前記天面上に他の前記中空容器を積み重ねた際に他の前記中空容器の前記底鋲の前記第1の突部を収容する凹部と、を備えていることを特徴とするスタッキング用容器。
【請求項3】
前記天鋲と前記底鋲を置き換えてなることを特徴とする請求項2に記載のスタッキング用容器。
【請求項4】
前記凹部の平面形状は円形であり、
前記凹部の内径D1と、前記第1の突部の最大幅D2の差は、4mm以上であることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のスタッキング用容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製品の製造時に品質のばらつきが生じ難く、生産性に優れたスタッキング用容器の製造方法及びスタッキング用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンビニエンスストアや、ドラッグストア、あるいはスーパー等の小売り店舗で販売する冷凍・冷蔵食品は、これらの小売り店舗以外の保管・加工施設から必要量分を小売り店舗に配送することが行われている。
この場合に用いられる保温容器としては、例えば発泡樹脂等の断熱性を有する厚板の裸出面を、不透水性を有するシート材からなる外被で被覆したパネルを用いて作製される場合がある。
より具体的には、従来技術に係る保温容器としては、例えば上述のようなパネルを筐体状に連結してなる容器本体と、この容器本体の開口に覆設され、やはり同上のパネルからなる蓋体を備えているものがある。
【0003】
また、上述のようなパネルからなる保温容器では、この容器本体内への物品の出し入れを容易にする目的で、あるいは保温容器の製造コストを廉価にする目的で、個々の容器本体に蓋体を設けずに、容器本体の上部開口の立体形状と、同容器本体底面側の立体形状を符合させておくことで、複数の容器本体同士をスタッキング可能とし、さらに最上段に配される容器本体の開口にのみ蓋体を設ける場合がある(例えば特許文献1)。
【0004】
特許文献1には「保温容器およびその製造方法」という名称で、保冷または保温をしながら物品を輸送するのに適した保温容器およびその製造方法に関する発明が開示されている。
上述の特許文献1に開示される発明は、本発明の出願人と同一の出願人により出願されたものである。
また、上述のような特許文献1に開示される発明によれば、スタッキング可能な保温容器の製造時のばらつきを極力防いで、高品質なスタッキング用容器を量産することができる。
【0005】
他方、上述の特許文献1に開示される発明の場合でかつ、個々の保温容器に蓋体を設ける必要がある場合は、例えば特許文献1の
図1中に示されるような保温容器(1)を鉛直方向に積み重ねて使用することになる。
この場合は、保温容器(1)同士をスタッキングすることができない上、任意の保温容器(1)の蓋体(3)と、他の容器本体(2)の底に設けられる段差構造(6)付きパネル(4)が重なり合うせいで、結果的に物品を収容できないスペースが大きくなり、物品の収容効率を向上させ難いという別の課題も生じていた。
その一方で、上述のような特許文献1に開示される発明が有するような課題に対処可能な先願としては、例えば以下に示すような特許文献2が挙げられる。
【0006】
特許文献2には、「断熱容器」という名称で、断熱容器の積み重ねによる滑落を防ぐ断熱容器及び滑落防止具に関する発明が開示されている。
特許文献2に開示される発明である断熱容器(1)は、同文献中の
図1に示される符号をそのまま用いて説明すると、長方形の底板部(2)と、その底板部(2)の周縁から立設し底板部(2)に対する側に開口を形成する側壁部(3)と、開口を塞ぐ天板部(4)と、を備え、この天板部(4)にはその上面から突出した第一突出部(5)が設けられ、底板部(2)にはその下面から突出した第二突出部(6)が設けられてなる。
上述のような特許文献2に開示される発明によれば、蓋付きの断熱容器をスタッキングできるとともに、そのための第一突出部(5)や第二突出部(6)を、断熱容器(1)の天板部及び/又は底板部を被覆するアルミ積層フィルムに縫着して固定することができるというメリットを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2022-69164号公報
【特許文献2】特開2005-187057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2に開示される断熱容器(1)では上述のような利点を有する反面、第一突出部(5)や第二突出部(6)は、衝撃により折損が起こりやすく、使用に伴って第一突出部(5)や第二突出部(6)が徐々に欠損していき、断熱容器(1)同士を積み重ねた際の位置ずれ防止効果が徐々に発揮されなくなる懸念があった。
【0009】
本発明はかかる従来の事情に対処してなされたものでありその目的は、使用時に複数の中空容器をスタッキングさせるためのパーツが破損し難く、中空容器の製造時に品質にばらつきが生じ難く、しかも量産に適したスタッキング用容器の製造方法及びスタッキング用容器に関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための第1の発明は、中空容器の少なくとも底面及び天面に配される平板状の支持材と、この支持材の外側面を被覆するシート材と、底面に配されるシート材である第1のシート材に縫着され、樹脂成型体である複数の底鋲と、天面に配されるシート材である第2のシート材に縫着され、樹脂成型体であり、底鋲と同数の天鋲と、を備えてなるスタッキング用容器の製造方法であって、第1のシート材又は第2のシート材を矩形状に裁断する裁断工程と、裁断された第1のシート材又は第2のシート材における任意の角をなす2辺を基準にして底鋲又は天鋲の縫着位置を決める位置決め工程と、第1のシート材又は第2のシート材における縫着位置に底鋲又は天鋲を縫着して固定する固定工程と、を備えていることを特徴とする。
上記構成の第1の発明により製造される中空容器は、物品を収容する容器として作用する。また、支持材は、中空容器の少なくとも底面及び天面において、シート材の芯材又は補強材又は保形材、あるいは断熱材として作用する。さらに、シート材は上記支持材の表面を被覆して保護するとともに、底鋲又は天鋲の縫着対象となる。
そして、第1の発明により製造されるスタッキング用容器は、鉛直方向に積み重ねて使用する際に、鉛直上方側に配されるスタッキング用容器の底面に設けられる底鋲又は天鋲と、鉛直下方側に配されるスタッキング用容器の天面に設けられる天鋲又は底鋲が互いに係合することで、積み重ねられたスタッキング用容器が水平方向に位置ずれを起こすのを防ぐという作用を有する。
さらに、第1の発明において、裁断工程は、底鋲又は天鋲の縫着対象となる第1のシート材又は第2のシート材を裁断して矩形状にすることで、底鋲又は天鋲の縫着位置を決めるための基準となる辺(線)を形成するという作用を有する。
また、第1の発明の位置決め工程は、矩形状に裁断された第1のシート材又は第2のシート材における任意の角をなす2辺を基準にして底鋲又は天鋲の縫着位置を決定する工程である。この場合、第1のシート材又は第2のシート材を裁断する際の寸法精度を高めることで、間接的に底鋲又は天鋲の縫着位置を決める際の精度が高まる。
そして、第1の発明の固定工程は、第1のシート材又は第2のシート材における縫着位置に底鋲又は天鋲を、縫い付けて固定するという作用を有する。
よって、第1の発明によれば、第1のシート材又は第2のシート材の所望の位置(縫着位置)に、十分な位置精度を保ちながら底鋲又は天鋲を縫い付けて固定することが可能になる。
【0011】
第2の発明であるスタッキング用容器は、中空容器の少なくとも底面及び天面に配される平板状の支持材と、この支持材の外側面を被覆するシート材と、底面に配されるシート材である第1のシート材に縫着され、樹脂成型体である複数の底鋲と、天面に配されるシート材である第2のシート材に縫着され、樹脂成型体であり、底鋲と同数の天鋲と、を備え、底鋲は、縫い代である第1のフランジ部と、第1のフランジ部の中央に設けられ第1のフランジ部の厚み方向に突出する第1の突部と、を備え、天鋲は、縫い代である第2のフランジ部と、この第2のフランジ部の中央に設けられこの第2のフランジ部の厚み方向に突出する第2の突部と、第2の突部の中央に形成され、中空容器の天面上に他の中空容器を積み重ねた際に他の中空容器の底鋲の第1の突部を収容する凹部と、を備えていることを特徴とする。
上記構成の第2の発明は、上述の第1の発明により製造されるスタッキング用容器を物の発明として特定したものである。よって、第2の発明における中空容器、支持材、シート材(第1のシート材及び第2のシート材)、天鋲及び底鋲のそれぞれによる作用は、上述の第1の発明における中空容器、支持材、シート材(第1のシート材及び第2のシート材)、天鋲及び底鋲のそれぞれによる作用と同じである。
また、第2の発明における底鋲の第1のフランジ部は、底鋲を第1のシート材に縫着する際の縫い代として作用する。また、底鋲における第1の突部は、一の中空容器の底面に取設される底鋲と、他の中空容器の天面に取設される天鋲とを係合させる際の係合用突部として作用する。
さらに、第2の発明における天鋲の第2のフランジ部は、天鋲を第2のシート材に縫着する際の縫い代として作用する。また、天鋲における第2の突部及びその中央に形成される凹部の組み合わせは、一の中空容器の底面に取設される底鋲と、他の中空容器の天面に取設される天鋲とを係合させる際の係合用凹部として作用する。
【0012】
第3の発明であるスタッキング用容器は、先の第2の発明であって、天鋲と底鋲を置き換えてなることを特徴とする。
上記構成の第3の発明は、上述の第2の発明における底鋲と天鋲を置き替えたものであり、その作用は先の第2の発明による作用と同じである。
また、第3の発明では、中空容器の底面に天鋲が配されていることで、この天鋲の凹部内に、雨水や埃等が溜まって汚れるのを好適に防ぐという作用を有する。
【0013】
第4の発明であるスタッキング用容器は、上述の第2又は第3の発明であって、天鋲における凹部の平面形状は円形であり、この凹部の内径D1と、底鋲における第1の突部の最大幅D2の差は、4mm以上であることを特徴とする。
上記構成の第4の発明は、上述の第2又は第3の発明による作用と同じ作用を有する。さらに、第4の発明において、天鋲における凹部の平面形状を円形に特定するとともに、この凹部の内径D1と、底鋲における第1の突部の最大幅D2の差が4mm以上になるよう設定しておくことで、先の第1の発明の固定工程において、天鋲又は底鋲を第1のシート材又は第2のシート材に縫い付けて固定する際に、多少の位置ずれが生じたとしても、複数の第4の発明であるスタッキング用容器同士を鉛直方向にスタッキングすることを可能にするという作用を有する。
【発明の効果】
【0014】
上述のような第1の発明によれば、裁断工程と、位置決め工程と固定工程をセットで備えていることで、第1のシート体又は第2のシート体に対して、底鋲又は天鋲を、当初予定する位置からの位置ずれを極力小さくしながら縫い付けて固定することができる。
つまり、第1の発明によれば、複数の底鋲同士又は複数の天鋲同士の位置関係を所望に保ちつつ、かつこれらの位置精度を十分に保ちながら、第1のシート体又は第2のシート体に縫い付けて固定することができる。
より具体的には、第1の発明により製造されるスタッキング用容器を鉛直方向に積み重ねた状態でこれらを鉛直方向に透視した際に、任意のスタッキング用容器における底鋲同士又は天鋲同士の配置と、他の任意のスタッキング用容器の底鋲同士又は天鋲同士の配置を互いに符合させることができる。
なお、ここでいう「任意のスタッキング用容器における底鋲同士又は天鋲同士の配置と、他の任意のスタッキング用容器の底鋲同士又は天鋲同士の配置が符合している」とは、第1のシート材又は第2のシート材に底鋲又は天鋲を縫い付けて固定する際に生じる不可避な位置ずれは許容され、任意のスタッキング用容器における底鋲同士又は天鋲同士の配置と、他の任意のスタッキング用容器の底鋲同士又は天鋲同士の配置が実質的に符合していて、スタッキング用容器同士を鉛直方向にスタッキングさせるのに支障が生じない」という意味である。
つまり、第1の発明によれば、製造される複数のスタッキング用容器において、底鋲又は天鋲の固定位置が、スタッキングすることが困難な程度にばらつくのを好適に防ぐことができる。
この結果、第1の発明により製造されるスタッキング用容器同士を、高い確実性を持って鉛直方向にスタッキングさせることができる。
また、第1の発明を構成する各工程の作業内容はいずれもシンプルであるため、第1のシート材又は第2のシート材における底鋲又は天鋲の位置精度を十分に保ちながら効率良くスタッキング用容器を製造することができる。
よって、第1の発明によれば、製品の品質のばらつきが小さいスタッキング用容器を効率的に製造することができる。
【0015】
第2の発明によれば、鉛直方向にスタッキングすることができる蓋付きのスタッキング用容器を提供することができる。
また、第2の発明によれば、複数のスタッキング用容器を鉛直方向に積み重ねた際に、一のスタッキング用容器の底面と、この一のスタッキング用容器の直下に配される他のスタッキング用容器の天面が隣接する部分において、底鋲における第1の突部と、天鋲における第2の突部及び凹部の組み合わせ、が互いに係合する。
これにより、他のスタッキング用容器上において一のスタッキング用容器が水平方向に位置ずれを起こすのを好適に防ぐことができる。
また、第2の発明によれば、スタッキング用容器の中空容器内に物品を収容し、かつ複数のスタッキング用容器を鉛直方向にスタッキングした状態で、車両や台車等により運搬する際に、スタッキング用容器群に横揺れが作用しても荷崩れが起こり難い。
また、第2の発明では、天鋲及び底鋲が棒状でなくスポット状であるため、先の特許文献2に開示される第一突出部(5)や第二突出部(6)と比較して、使用時の衝撃により破損が起こり難い。
よって、第2の発明によれば、特許文献2に開示される断熱容器(1)よりも強度及び耐久性が優れたスタッキング用容器を提供することができる。
【0016】
第3の発明は、先にも述べたように先の第2の発明における底鋲と天鋲を置き換えてなるものである。このため、第3の発明によれば、上述の第2の発明による効果と同じ効果を奏する。
さらに、第3の発明では、その使用時に天鋲に形成される凹部の中空部が常に鉛直下方側を向くので、この凹部内に雨水等が溜まり難く、しかも埃等も侵入し難い。
よって、第3の発明によれば、使用時に天鋲に形成される凹部の中空部が常に鉛直上方側を向いている場合に比べて、より汚れ難いスタッキング用容器を提供することができる。
【0017】
第4の発明は、上述の第2又は第3の発明による効果と同じ効果に加えて、第1のシート材又は第2のシート材に底鋲又は天鋲を縫い付けて固定する際に多少の位置ずれが生じてしまった場合でも、製造されたスタッキング用容器同士を鉛直方向に支障なく積み重ねることができる。
よって、第4の発明によれば、製品の製造時に生じる不良品の数を減らして、製品の歩留まりを高めることができる。
このため、第4の発明の発明によれば、天鋲に形成される凹部の内径D1と、底鋲に形成される第1の突部の最大幅D2の差が4mmを下回る場合に比べて、スタッキング用容器の生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】(a)本実施形態に係るスタッキング用容器を天面側から見た斜視図であり、(b)同スタッキング用容器を底面側から見た斜視図である。
【
図2】本実施形態に係るスタッキング用容器をスタッキングした状態の鉛直方向断面図である。
【
図3】(a)本実施形態に係るスタッキング用容器に設けられる底鋲の斜視図であり、(b)同底鋲を備えた本実施形態に係るスタッキング用容器の部分拡大断面図であり、(c)本実施形態に係るスタッキング用容器に設けられる天鋲の斜視図であり、(d)同天鋲を備えた本実施形態に係るスタッキング用容器の部分拡大断面図である。
【
図4】本実施形態に係る一のスタッキング用容器における底鋲と、本実施形態に係る他のスタッキング用容器における天鋲が係合する様子を示す部分拡大断面図である。
【
図5】本実施形態に係るスタッキング用容器の製造方法の各工程を示すフローチャートである。
【
図6】(a)本実施形態に係るスタッキング用容器の製造方法における裁断工程及び位置決め工程の様子を示す斜視図であり、(b)同製造方法において縫着位置に底鋲を仮止めした状態を示す斜視図であり、(c)同製造方法における固定工程を完了した状態を示す斜視図である。
【0019】
[1-1;本発明の基本構成について]
本発明の実施形態に係るスタッキング用容器(以下、単に「本実施形態に係るスタッキング用容器」という。)の基本構成について
図1乃至
図4を参照しながら説明する。
図1(a)は本実施形態に係るスタッキング用容器を天面側から見た斜視図であり、(b)は同スタッキング用容器を底面側から見た斜視図である。また、
図2は本実施形態に係るスタッキング用容器をスタッキングした状態の鉛直方向断面図である。なお、
図2では2つのスタッキング用容器を区別するために鉛直上方側に配されるスタッキング用容器に符号「1」を、その直下に配されるスタッキング用容器に符号「1’」をそれぞれ付している。
また、
図3(a)は本実施形態に係るスタッキング用容器に設けられる底鋲の斜視図であり、(b)は同底鋲を備えた本実施形態に係るスタッキング用容器の部分拡大断面図であり、(c)は本実施形態に係るスタッキング用容器に設けられる天鋲の斜視図であり、(d)は同天鋲を備えた本実施形態に係るスタッキング用容器の部分拡大断面図である。加えて、
図4は本実施形態に係る一のスタッキング用容器における底鋲と、本実施形態に係る他のスタッキング用容器における天鋲が係合する様子を示す部分拡大断面図である。
【0020】
本発明の実施形態に係るスタッキング用容器1は、例えば
図1及び
図2に示すように、図示しない物品を収容する中空容器2の少なくとも底面2a及び天面2bに配されて平板状をなす支持材3と、この支持材3の外側面を被覆するシート材4と、中空容器2の底面2aに配されるシート材4である第1のシート材4aに縫着され、樹脂成型体である複数の底鋲5と、中空容器2の天面2bに配されるシート材4である第2のシート材4bに縫着され、樹脂成型体であり、かつ底鋲5と同数の天鋲6と、を備えてなるものである。
【0021】
さらに、本実施形態に係るスタッキング用容器1における底鋲5は、例えば
図3(a)及び(b)に示すように、第1のシート材4aに底鋲5を縫い付ける際に縫い代となる第1のフランジ部5aと、この第1のフランジ部5aの中央に設けられ、第1のフランジ部5aの厚み方向(より詳細には第1のシート材4aの平面方向から離れる方向)に突出する第1の突部5bを備えてなるものである。
【0022】
また、本実施形態に係るスタッキング用容器1における天鋲6は、例えば
図3(c)及び(d)に示すように、第2のシート材4bに天鋲6を縫い付ける際に縫い代となる第2のフランジ部6aと、この第2のフランジ部6aの中央に設けられ、第2のフランジ部6aの厚み方向(より詳細には第2のシート材4bの平面方向から離れる方向)に突出する第2の突部6bと、この第2の突部6bの中央に形成され、他のスタッキング用容器1の第1のシート材4aに縫着される他の底鋲5の第1の突部5bを収容する凹部6cを備えてなるものである。
【0023】
そして、本実施形態に係るスタッキング用容器1は、例えば
図2及び
図4に示すように、鉛直上方側に配されるスタッキング用容器1の第1のシート材4aに縫着される底鋲5と、その直下に配されるスタッキング用容器1’の第2のシート材4bに縫着される天鋲6とが係合する。
より詳細には、
図2及び
図4に示すように、本実施形態の一のスタッキング用容器1の底面2aに設けられる底鋲5の第1の突部5bが、本実施形態の他のスタッキング用容器1’の天面2bに設けられる天鋲6の第2の突部6bに形成される凹部6cに収容されることで、底鋲5と天鋲6が互いに係合する。
【0024】
[1-2;本発明の基本構成による作用・効果について]
上述のような本実施形態に係るスタッキング用容器1では、例えば
図2及び
図4に示すように、スタッキング用容器1における底鋲5の第1の突部5bは、例えばスタッキング用容器1とスタッキング用容器1’を鉛直方向にスタッキングする際の係合用突部として作用する。
また、本実施形態に係るスタッキング用容器1’ における天鋲6の第2の突部6b及び凹部6cの組み合わせは、スタッキング用容器1とスタッキング用容器1’を鉛直方向にスタッキングさせる際の係合用凹部として作用する。
この結果、本実施形態に係るスタッキング用容器1’の天面2b上に、同じく本実施形態に係るスタッキング用容器1を積み重ねた状態で、これらに対して横揺れが作用した際に、スタッキング用容器1’上においてスタッキング用容器1が荷崩れを起こすほど水平方向にスライドするのを好適に防ぐことができる。
よって、本実施形態に係るスタッキング用容器1によれば、鉛直方向に複数の中空容器2(スタッキング用容器1)をスタッキングさせた状態で運搬したり、保管したりする際に、荷崩れが起こるのを好適に防ぐことができる。
【0025】
加えて、本実施形態に係るスタッキング用容器1では、底鋲5及び天鋲6の形状が先の特許文献2に開示される第一突出部(5)や第二突出部(6)のような棒状でなくスポット状であるため、容易に折れたり破損したりしない。
よって、本実施形態に係るスタッキング用容器1によれば、特許文献2に開示される断熱容器(1)よりも強度及び耐久性が優れたスタッキング用容器を提供することができる。
【0026】
[1-3;本発明の細部構造について]
本実施形態に係るスタッキング用容器1は、
図2に示すように、例えば厚板状の断熱材8の裸出面を直接又は間接的にシート材4で被覆してなるパネルを、縫い糸7により縫い合わせて一体に連結して中空容器2を形作ったものでもよい。
つまり、上述のようなパネルを底面2a、天面2b及び側面2cに配して中空容器2を形作ったものでもよい。
この場合、中空容器2の天面2bに配されるパネルは、つまり第2のシート材4b及び天鋲6を備えるパネルは、中空容器2の上部開口に一体に回動可能に設けられてもよいし、中空容器2と別体に設けられてもよい。
いずれの場合も、中空容器2が断熱材8を備えていることで、本実施形態に係るスタッキング用容器1に優れた断熱性を付加することができる。
この場合、保冷容器や保温容器としての使用に特に適したスタッキング用容器1を提供することができる。
なお、断熱材8に代えて、例えば硬い薄板材、又は厚板材、又は中空板材等からなり、断熱材8よりは断熱性が劣る材質からなる芯材を用いてもよい。この場合は、断熱性がやや劣るものの剛性や強度が高い、あるいは耐久性に優れたスタッキング用容器1を提供することができる。なお、この芯材が、十分な強度を有している場合は、この芯材が支持材3の機能を兼ねる場合もある。
【0027】
また、本実施形態に係るスタッキング用容器1において、断熱材8の表面を直接又は間接的に被覆するシート材4として、例えば表面が樹脂等によりコーティングされたシート材を用いてもよい。
この場合、本実施形態に係るスタッキング用容器1の裸出面に防水性が付加されるので、中空容器2の裸出面の汚損や劣化等を好適に防ぐことができる。
【0028】
さらに、上述のようなシート材4として、特にシート状のアルミ層、又はアルミ蒸着層を有するものを使用してもよい。この場合は、本実施形態に係るスタッキング用容器1の保温性又は断熱性を一層向上させることができる。
【0029】
また、
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係るスタッキング用容器1は中空容器2の天面2bに配されるパネルの周縁に必要に応じて、例えば支持材3の裸出面をシート材4により被覆してなるつば状部9を備えていてもよい。
この場合、上部開口を有する筐体状のパネル群において、上部開口と天面2bに配されるパネルの隙間から雨水が侵入するのを好適に防ぐことができる。
この場合、本実施形態に係るスタッキング用容器1をやむなく一時的に屋外に置く場合でも、中空容器2の上部開口から内部に雨水が侵入してしまい、中空容器2の内部に収容される物品が汚損されたり、不良品化したりするのを好適に防ぐことができる。
【0030】
さらに、本実施形態に係るスタッキング用容器1では、中空容器2を構成する断熱材8が十分な強度を有していない場合も想定される。
このような場合は、例えば
図2に示すように、断熱材8の外側面と、外皮であるシート材4の間に薄板状の支持材3を介設してもよい。
この場合、本実施形態に係るスタッキング用容器1の強度と耐久性を向上させることができる。なお、断熱材8が十分な強度を有している場合は、断熱材8が支持材3の機能を兼ねる場合もある。
【0031】
[1-4;本発明の基本構成に対する任意付加的事項について]
続いて、本発明の基本構成に対して必要に応じて付加することができる任意付加的事項について説明する。
<1-4-1;底鋲と天鋲の置き換えについて>
先の
図1乃至
図4に示すように、本実施形態に係るスタッキング用容器1では、中空容器2の底面2aに底鋲5を、また天面2bに天鋲6を設ける場合を例に挙げて説明しているが、中空容器2の底面2aに天鋲6を、また中空容器2の天面2bに底鋲5を設ける場合も、上述の本実施形態の基本構成に係るスタッキング用容器1と同様の作用・効果を発揮させることができる。
また、本実施形態に係るスタッキング用容器1において特に中空容器2の底面2aに天鋲6を、中空容器2の天面2bに底鋲5を設ける場合は、天鋲6の凹部6cが常に鉛直下方側を向くので、この凹部6cに雨水が溜まったり、埃等が侵入したりするのを好適に防ぐことができる。
よって、本実施形態に係るスタッキング用容器1において中空容器2の底面2aに天鋲6を、中空容器2の天面2bに底鋲5を設ける場合は、使用中の天鋲6の汚損を好適に防ぐことができる。
【0032】
<1-4-2;底鋲と天鋲の細部構造について(1)>
図3(a)~(d)に示すように、本実施形態に係るスタッキング用容器1の底鋲5の第1のフランジ部5aは、平面視した際に環状をなす縫製用のガイド溝5cを備えていてもよい。
同様に、本実施形態に係るスタッキング用容器1の天鋲6の第2のフランジ部6aも、平面視した際に環状をなす縫製用のガイド溝6dを備えていてもよい。
この場合、ガイド溝5c、ガイド溝6dが形成されている部分の第1のフランジ部5a、第2のフランジ部6aの厚みが、その周囲部分の厚みよりもやや薄くなる。そして、ガイド溝5c、ガイド溝6d内に縫い目を形成することで、底鋲5がガイド溝5cを、天鋲6がガイド溝6dをそれぞれ備えない場合に比べて、第1のシート材4a又は第2のシート材4bに底鋲5又は天鋲6を縫い付ける作業を容易に行うことができる。例えば、図示しない縫い針の破損を好適に抑制できる。
さらに、この場合は、第1のシート材4a又は第2のシート材4bに、底鋲5又は天鋲6を縫着した際の縫い糸7が、ガイド溝5cやガイド溝6d内に収容された状態になるので、本実施形態に係るスタッキング用容器1の使用時に、摩擦により天鋲6や底鋲5を縫着する縫い糸7が擦り切れるのを好適に防ぐことができる。
よって、底鋲5の第1のフランジ部5aがガイド溝5cを、また天鋲6の第2のフランジ部6aがガイド溝6dを、それぞれ備える場合は、本実施形態に係るスタッキング用容器1の生産性及び耐久性を向上させることができる。
【0033】
<1-4-3;底鋲と天鋲の細部構造について(2)>
さらに、
図3(a)~(d)に示すように、本実施形態に係るスタッキング用容器1では、天鋲6に形成される凹部6cの平面形状を円形に特定するとともに、この凹部6cの内径D
1と、底鋲5の第1の突部5bの最大幅D
2の差が4mm以上になるよう設定しておいてもよい。
この場合、本実施形態に係るスタッキング用容器1における中空容器2の第1のシート材4a又は第2のシート材4bに、底鋲5又は天鋲6を縫着する際に多少の位置ずれが生じてしまった場合でも、嵌合用凹部である天鋲6の第2の突部6bと凹部6cとの組み合わせに、嵌合用突部である底鋲5の第1の突部5bを確実に収容することが可能になる。この結果、製造された本実施形態に係るスタッキング用容器1が不良品化するリスクを低減することができる。
つまり、本実施形態に係るスタッキング用容器1において凹部6cの内径D
1と、底鋲5の第1の突部5bの最大幅D
2の差が4mmを下回る場合は、第1のシート材4a又は第2のシート材4bに底鋲5又は天鋲6を縫い付ける際に生じる不可避な誤差(位置ずれ)のせいで、製造されたスタッキング用容器1同士をスタッキングすることができず、結果として製品が不良品化してしまうリスクが高くなる。この場合、製品製造時の歩留まりが低下する。
よって、上述のような特徴を備える本実施形態に係るスタッキング用容器1によれば、スタッキング用容器1の生産性を向上させることができる。
【0034】
なお、天鋲6に形成される凹部6cの内径D1と、底鋲5の第1の突部5bの最大幅D2の差を4mm以上に設定する場合の上限値は特に定めていないが、この差が必要以上に大きい場合は、複数の本実施形態に係るスタッキング用容器1を鉛直方向にスタッキングした際の、任意のスタッキング用容器1の水平方向へのスライド防止効果が発揮され難くなってしまう。
このため、目的とする効果を十分に発揮させるためには、天鋲6に形成される凹部6cの内径D1と、底鋲5の第1の突部5bの最大幅D2の差は、4~8mmの範囲内に設定しておくとよい。
【0035】
<1-4-4;その他>
本実施形態に係るスタッキング用容器1では、底鋲5の第1のフランジ部5aの平面形状、天鋲6の第2のフランジ部6aの平面形状、並びに底鋲5又は天鋲6を第1のシート材4a又は第2のシート材4bに縫い付けた際の縫い目の平面形状、がいずれも略円形である場合を例に挙げて説明しているが、これらの平面形状は必ずしも円形ある必要はなく、例えば任意の正多角形状等でもよい。
その一方で、これらの平面形状を円形に特定する場合は、本実施形態に係るスタッキング用容器1の外観上の審美性を高める目的で、第1のシート材4a又は第2のシート材4bに底鋲5又は天鋲6を縫着する際に、第1のシート材4a又は第2のシート材4bの平面方向における底鋲5又は天鋲6の向きを揃える必要がない。
このため、審美性に優れた本実施形態に係るスタッキング用容器1を効率良く製造することができる。
【0036】
また、本実施形態に係るスタッキング用容器1では、底鋲5の第1の突部5bの平面形状が、特に円形である場合を例に挙げて説明しているが、第1の突部5bの平面形状も円形に特定する必要はなく、任意の平面形状を有していてもよい。
より具体的には、底鋲5の第1の突部5bの平面形状は、任意の正多角形状でもよいし、あるいは十字状等の形状でもよい。
ただし、底鋲5の第1の突部5bの平面形状を円形に特定する場合は、本実施形態に係るスタッキング用容器1の外観上の審美性を向上させる目的で、第1のシート材4a又は第2のシート材4bに底鋲5又は天鋲6を縫着する際に、第1のシート材4a又は第2のシート材4bの平面方向における底鋲5又は天鋲6の向きを揃える必要がない。
よって、底鋲5の第1の突部5bの平面形状を円形に特定する場合も、本実施形態に係るスタッキング用容器1の生産性を向上させることができる。
【0037】
[2-1;本発明の基本構成の製造方法について]
続いて、
図5及び
図6を参照しながら、本実施形態に係るスタッキング用容器の製造方法について説明する。
図5は本実施形態に係るスタッキング用容器の製造方法の各工程を示すフローチャートである。また、
図6(a)は本実施形態に係るスタッキング用容器の製造方法における裁断工程及び位置決め工程の様子を示す斜視図であり、(b)は同製造方法において縫着位置に底鋲を仮止めした状態を示す斜視図であり、(c)は同製造方法における固定工程を完了した状態を示す斜視図である。なお、
図1乃至
図4に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
【0038】
本実施形態に係るスタッキング用容器の製造方法10は、例えば先の
図1及び
図2に示すスタッキング用容器1を製造する際の各工程を方法の発明として特定したものである。
より詳細には、本実施形態に係るスタッキング用容器の製造方法10は、先の
図1及び
図2に示す中空容器2の少なくとも底面2a及び天面2bに配される平板状の支持材3と、この支持材3の外側面を被覆するシート材4と、中空容器2の底面2aに配されるシート材4である第1のシート材4aに縫着され、樹脂成型体である複数の底鋲5と、中空容器2の天面2bに配されるシート材4である第2のシート材4bに縫着され、樹脂成型体であり、上記底鋲5と同数の天鋲6、を備えてなるスタッキング用容器1の製造方法であって、
図5に示すように裁断工程(ステップS11)と、位置決め工程(ステップS12)と、固定工程(ステップS13)を備えている。
【0039】
続いて、本実施形態に係るスタッキング用容器の製造方法10における各工程について
図5及び
図6を参照しながら詳細に説明する。
本実施形態に係るスタッキング用容器の製造方法10における裁断工程(ステップS11)は、
図5及び
図6(a)に示すように、大判のシート材4を裁断して所望サイズでかつその平面形状が矩形状を成す第1のシート材4a又は第2のシート材4bを得る工程である。
また、この次の工程では、この裁断工程(ステップS11)において得られる第1のシート材4a又は第2のシート材4bのそれぞれの角をなす2辺を基準にして底鋲5又は天鋲6を縫い付ける位置を決めるため、第1のシート材4a又は第2のシート材4bの四隅の角の内角は、可能な限り高い精度で直角(90°)にしておくことが望ましい。
【0040】
次の位置決め工程(ステップS12)は、先の裁断工程(ステップS11)において得られた矩形状の第1のシート材4a又は第2のシート材4bにおける任意の角をなす2辺を基準にして、底鋲5又は天鋲6の縫着位置(の中心点)を決める工程である。
より具体的には、矩形状の第1のシート材4a又は第2のシート材4bにおける任意の角が例えば
図6(a)中に示す角11aである場合、底鋲5又は天鋲6の縫着位置13(の中心点)を決める際の基準となる2辺は
図6(a)中に示す辺12a及び辺12bである。同様に、任意の角が例えば
図6(a)中に示す角11bである場合、基準となる2辺は
図6(a)中に示す辺12b及び辺12cである。また、任意の角が例えば
図6(a)中に示す角11cである場合、基準となる2辺は
図6(a)中に示す辺12c及び辺12dである。さらに、任意の角が例えば
図6(a)中に示す角11dである場合、基準となる2辺は
図6(a)中に示す辺12d及び辺12aである。
【0041】
そして、底鋲5(又は天鋲6)の縫着位置13(の中心点)を決める際の基準となる2辺が、例えば
図6(a)中に示す辺12a及び辺12bである場合、この縫着位置13(の中心点)は、辺12aから距離x及び辺12bから距離y離れた位置として特定することができる。
さらに、図示していない他の底鋲5(又は天鋲6)の縫着位置13(の中心点)も同様に特定することができる(
図6(a)を参照)。
なお、本実施形態では、第1のシート材4a又は第2のシート材4bのそれぞれの四隅から所望の一定の距離に1つずつ底鋲5又は天鋲6を設ける場合を例に挙げて説明しているが、第1のシート材4a又は第2のシート材4bのそれぞれに設ける底鋲5又は天鋲6の数が4以外の場合は、当然に
図6(a)中の数値x、yも変わる。
【0042】
また、
図6(a)において、辺12a及び辺12bを基準にして特定される底鋲5(又は天鋲6)の縫着位置13(の中心点)を中心として破線で示される円は、縫着位置13に底鋲5(又は天鋲6)を配置した際の底鋲5(又は天鋲6)の周縁位置13aを示している。ただし、この周縁位置13aは、第1のシート材4a又は第2のシート材4bには実際には記されない。
そして、本実施形態に係るスタッキング用容器の製造方法10におけるステップS12では、例えば仮想の周縁位置13a上の任意の2点以上(
図6(a)では3点)にドリル穿孔を行って、底鋲5(又は天鋲6)を第1のシート材4a又は第2のシート材4bに配置する際の目印13bとして用いてもよい。
この場合、第1のシート材4a又は第2のシート材4bにおいて、底鋲5(又は天鋲6)の縫着位置13の(の中心点)に何ら目印等を設けることなく底鋲5(又は天鋲6)の周縁位置13aを正確に特定することができる。
【0043】
さらに、第1のシート材4a又は第2のシート材4bに形成された目印13b同士を結ぶ仮想の円上に底鋲5(又は天鋲6)を、第1のシート材4a又は第2のシート材4bに仮止めした様子を示したものが
図6(b)である。
【0044】
また、上述のステップS12に続く固定工程(ステップS13)は、第1のシート材4a又は第2のシート材4b上の縫着位置13(周縁位置13a)に仮止めされる底鋲5(又は天鋲6)の第1のフランジ部5a(又は第2のフランジ部6a)を、例えばコンピュータ等により自動制御されるミシン(図示せず)により第1のシート材4a又は第2のシート材4bに縫い付けて固定する工程である(
図6(c)を参照)。
なお、他の底鋲5(又は天鋲6)についても同様にして第1のシート材4a又は第2のシート材4bに縫い付けて固定する。
【0045】
さらに、本実施形態に係るスタッキング用容器の製造方法10は、
図5に示すように、先のステップS11~ステップS13により底鋲5(又は天鋲6)が縫着された第1のシート材4a又は第2のシート材4bに加えて、底鋲5(又は天鋲6)を備えない他のシート材4や支持材3、さらには必要に応じて断熱材8を用いて、図示しないパネルを形成し、このパネルを互いに縫い合わるなどして中空容器2を形作る中空容器作製工程(ステップS2)を備えている。
そして、
図5に示すステップS11~ステップS2により、先の
図1及び
図2に示すような本実施形態に係るスタッキング用容器1を製造することができる。
【0046】
[2-2;本発明の基本構成の製造方法による作用・効果について]
上述のような本実施形態に係るスタッキング用容器の製造方法10が、裁断工程(ステップS11)と、位置決め工程(ステップS12)と固定工程(ステップS13)をセットで備えていることで、第1のシート材4a又は第2のシート材4bに底鋲5又は天鋲6を、当初予定する位置(縫着位置13)からの位置ずれを極力小さくしながら縫い付けて固定することができる。
つまり、本実施形態に係るスタッキング用容器の製造方法10によれば、複数の底鋲5同士又は複数の天鋲6同士の位置関係を所望に保ちつつ、かつこれらの位置精度を十分に保ちながら、第1のシート材4a又は第2のシート材4bに縫い付けて固定することができる。
このことは、本実施形態に係るスタッキング用容器の製造方法10により製造されるスタッキング用容器1を鉛直方向に積み重ねた状態でこれらを鉛直方向に透視した際に、任意のスタッキング用容器1における底鋲5同士又は天鋲6同士の配置(相対的な位置関係)と、他の任意のスタッキング用容器1の底鋲5同士又は天鋲6同士の配置(相対的な位置関係)を互いに符合させることができる、ことを意味している。
【0047】
なお、ここでいう「任意のスタッキング用容器1における底鋲5同士又は天鋲6同士の配置(相対的な位置関係)と、他の任意のスタッキング用容器1の底鋲5同士又は天鋲6同士の配置(相対的な位置関係)が符合している」とは、第1のシート材4a又は第2のシート材4bに底鋲5又は天鋲6を縫い付けて固定する際に生じる不可避な位置ずれは許容され、任意のスタッキング用容器1における底鋲5同士又は天鋲6同士の配置(相対的な位置関係)と、他の任意のスタッキング用容器1の底鋲5同士又は天鋲6同士の配置(相対的な位置関係)が実質的に符合していて、スタッキング用容器1同士をスタッキングさせるのに支障が生じない」という意味である。
つまり、本実施形態に係るスタッキング用容器の製造方法10によれば、製造される複数のスタッキング用容器1において、底鋲5又は天鋲6の縫着位置が、スタッキングすることが困難な程度にばらつくのを好適に防ぐことができる。
【0048】
この結果、本実施形態に係るスタッキング用容器の製造方法10により製造されるスタッキング用容器1同士を、高い確実性を持って鉛直方向にスタッキングさせることができる。
また、本実施形態に係るスタッキング用容器の製造方法10を構成する個々の工程(ステップS11~ステップS13)はいずれ作業内容が極めてシンプルであるため再現性が高く、第1のシート材4a又は第2のシート材4bに縫い付けられる底鋲5又は天鋲6位置精度を十分に保ちながら、効率良くスタッキング用容器1を製造することができる。
よって、本実施形態に係るスタッキング用容器の製造方法10によれば、製品の品質のばらつきが小さいスタッキング用容器1を効率良く量産することができる。
【0049】
さらに、本実施形態に係るスタッキング用容器の製造方法10における位置決め工程(ステップS12)において、第1のシート材4a又は第2のシート材4bに目印13bをドリル穿孔により形成する場合は、複数枚の第1のシート材4a又は第2のシート材4bを積層したものに対して同時に、かつ目印13b同士の位置関係のずれやばらつきを極力防ぎながら、目印13bを形成することができるというメリットを有する。
この場合、第1のシート材4a又は第2のシート材4bに底鋲5又は天鋲6を縫い付けて固定する際に、縫い付け位置に誤差が生じるリスクを大幅に低減することができる。
よって、本実施形態に係るスタッキング用容器の製造方法10において、複数枚の第1のシート材4a又は第2のシート材4bを積層してこれらに対してドリル穿孔により目印13bを形成する場合は、品質が安定した製品を効率良く製造するとともに、不良品の発生を抑制して製品の歩留まりを高めることができる。
【0050】
また、本実施形態に係るスタッキング用容器の製造方法10における固定工程(ステップS13)において、第1のシート材4a又は第2のシート材4bに対する底鋲5又は天鋲6の縫い付けをミシンを用いて人手で行うのではなく、コンピュータ等により自動制御されるミシンを用いて全自動又は一部自動で行うことによっても(極力人手を介さないで行うことによっても)、第1のシート材4a又は第2のシート材4b対して底鋲5又は天鋲6を縫い付けて固定する際に生じる誤差を小さくすることができる。
この場合も、品質が安定した製品を効率良く製造することが可能になるとともに、不良品の発生を抑制して製品の歩留まりを高めるという効果を一層確実に発揮させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
以上説明したように本発明は、使用中に中空容器をスタッキングさせるためのパーツが破損し難く、製品の製造時に品質にばらつきが生じ難く、しかも量産に適したスタッキング用容器の製造方法及びスタッキング用容器であり、物流設備やその付属品に関する分野において利用可能である。
【符号の説明】
【0052】
1,1’…スタッキング用容器 2…中空容器 2a…底面 2b…天面 2c…側面 3…支持材 4…シート材 4a…第1のシート材 4b…第2のシート材 5…底鋲 5a…第1のフランジ部 5b…第1の突部 5c…ガイド溝 6…天鋲 6a…第2のフランジ部 6b…第2の突部 6c…凹部 6d…ガイド溝 7…縫い糸 8…断熱材 9…つば状部 10…スタッキング用容器の製造方法 11a~11d…角 12a~12d…辺 13…縫着位置 13a…周縁位置 13b…目印