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特開2024-33808細胞増殖状況把握方法、及び細胞増殖状況把握プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033808
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】細胞増殖状況把握方法、及び細胞増殖状況把握プログラム
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/06 20060101AFI20240306BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20240306BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20240306BHJP
【FI】
C12Q1/06
C12M1/34 D
G06T7/00 630
G06T7/00 350B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137645
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】508268654
【氏名又は名称】株式会社イノテック
(74)【代理人】
【識別番号】100146020
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 善光
(74)【代理人】
【識別番号】100062328
【弁理士】
【氏名又は名称】古田 剛啓
(72)【発明者】
【氏名】城谷 建二
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
5L096
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029BB01
4B029FA10
4B029GB06
4B063QA01
4B063QQ05
4B063QX01
5L096AA02
5L096BA06
5L096BA13
5L096EA05
5L096FA32
5L096FA54
5L096FA59
5L096GA30
5L096GA40
5L096GA55
5L096KA04
5L096KA15
(57)【要約】
【課題】細胞増殖状況を撮影した画像から自動的に細胞の増殖状況を定量的に把握する細胞増殖状況把握方法及びプログラムを提供することを課題とする。
【解決手段】細胞群を撮像した被写体画像を複数の分割画像に分割する分割し、分割画像ごとに色成分が一致する画素の数をカウントし発生確率を算出し、分割画像ごとに色成分の情報量と色成分の発生確率から平均情報量を算出し、被写体画像ごとに分割画像ごとの平均情報量の平均を算出し、それぞれの被写体画像のコンフルエント率を評価し、平均情報量及びコンフルエント率を基にして平均情報量単位当たりのコンフルエント率パラメータを算出し、コンフルエント率パラメータを使用して、新たな細胞群を撮像した被写体画像の平均情報量から細胞増殖状況を自動的に把握する細胞増殖状況把握する細胞増殖状況把握方法により課題解決できた。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
培養される異なる複数の細胞群を撮像した複数の被写体画像を読込む画像読込工程と、
前記被写体画像を所定の画素数からなる複数の分割画像に分割する分割工程、あるいは、前記分割工程、ノイズ除去工程及びグレースケール化工程を組み合わせた分割・画像変換工程と、
前記分割工程又は前記分割・画像変換工程後に、前記分割画像ごとに、色成分が一致する画素の数をカウントし、同一の色成分の画素の発生確率を算出する色成分発生確率算出工程と、
前記分割画像ごとに、前記色成分の情報量と前記色成分の発生確率から平均情報量を算出する分割画像平均情報量算出工程と、
前記被写体画像ごとに、前記分割画像ごとの平均情報量の平均値を算出する分割画像平均情報量の平均値算出工程と、
複数のそれぞれの前記被写体画像内における細胞が占める面積の割合であるコンフルエント率をそれぞれ評価し、前記平均情報量及び前記コンフルエント率を基にして平均情報量単位当たりのコンフルエント率パラメータを算出し、コンフルエント率パラメータ関数を作成するパラメータ関数作成工程と、
前記平均情報量単位当たりのコンフルエント率パラメータ関数を使用して、新たな細胞群を撮像した被写体画像の平均情報量から細胞増殖状況指標であるコンフルエント率を算出して細胞増殖状況を把握する細胞増殖状況把握工程と、を備えることを特徴とする細胞増殖状況把握方法。
【請求項2】
前記分割・画像変換工程が、
カラー画像又はグレースケール画像である前記被写体画像のノイズを除去するノイズ除去工程、及び、分割工程を組み合わせた第一形態、
カラー画像である前記被写体画像をグレースケール化するグレースケール化工程、その下流側に設けるノイズ除去工程、並びに、分割工程を組み合わせた第二形態、
カラー画像である前記被写体画像のノイズを除去するノイズ除去工程、その下流側に設ける、カラー画像である前記被写体画像をグレースケール化するグレースケール化工程、並びに、分割工程を組み合わせた第三形態、あるいは、
カラー画像である前記被写体画像のノイズを除去するノイズ除去工程と、その下流側に設ける、カラー画像である前記被写体画像をグレースケール化するグレースケール化工程と、その下流側に設ける、グレースケール画像のノイズを除去するノイズ除去工程、並びに、分割工程を組み合わせた第四形態であることを特徴とする請求項1に記載の細胞増殖把握方法。
【請求項3】
前記ノイズ除去工程が、平滑化フィルタ又はメディアンフィルタを施すように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の細胞増殖把握方法。
【請求項4】
前記細胞状況把握工程において、前記コンフルエント率パラメータ関数を用いて算出したコンフルエント率が0%未満の場合はコンフルエント率を0%とし、算出したコンフルエント率が100%超の場合はコンフルエント率を100%とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の細胞増殖状況把握方法。
【請求項5】
培養される異なる複数の細胞群を撮像した複数の被写体画像の分割画像、前記分割画像のノイズ処理された分割画像、又は、前記分割画像のノイズ処理及びグレースケール処理された分割画像を含む学習データと、
培養される異なる複数の細胞群を撮像した複数の被写体画像の分割画像、前記分割画像のノイズ処理された分割画像、又は、前記分割画像のノイズ処理及びグレースケール処理された分割画像のコンフルエント率とを教師データとして、コンフルエント率把握モデルの機械学習を行う機械学習工程と、
培養されている細胞群について、前記細胞群を撮像した被写体画像に基づいて、
前記機械学習工程で機械学習を行ったコンフルエント率把握モデルを用いて、被写体画像のコンフルエント率を把握する、機械学習を用いた細胞増殖状況把握工程と、を備えることを特徴とする細胞増殖状況把握方法。
【請求項6】
請求項1又は請求項2に記載の細胞増殖状況把握方法の工程をコンピュータに実行させるための細胞増殖状況把握プログラム。
【請求項7】
請求項5に記載の細胞増殖状況把握方法の工程をコンピュータに実行させるための細胞増殖状況把握プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、培養容器で増殖させる細胞の増殖状況を把握する細胞増殖状況把握方法、及び、細胞増殖状況把握プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
細胞の増殖状況の把握は、一般的に細胞自動培養装置で増殖中の細胞をカメラで撮影して、その撮影した画像を観察者が見て細胞の増殖状況を経時的に把握している。
【0003】
特許文献1には、載置面上に配置された透明な培養容器内に培養環境において収容された植物培養細胞塊であるカルスを巨視的な大きさで撮影したカルスのカラー画像からカルスの状態がフライアブルであるかコンパクトであるかを判別する植物培養細胞塊の状態を判別する方法であって、前記カルスのカラー画像における背景部分を除去したカルスのカラー画像を生成することと、該背景部分を除去したカルスのカラー画像をグレースケール変換した画像と該背景部分を除去したカルスのカラー画像の少なくとも1種類の色成分画像をグレースケール変換した画像とを生成することと、前記カラー画像をグレースケール変換した画像と前記カラー画像の少なくとも1種類の色成分画像をグレースケール変換した画像とについてそれぞれ濃度共起行列法によるテクスチャ解析を行い各々のグレースケール変換したカルスの画像のエントロピー値を算出することと、算出された該エントロピー値を対比することによりカルスの状態がフライアブルであるかコンパクトであるかを定量的に判別することと、からなり、カルスの画像を撮影装置での撮影により取得する際に、前記カルスを収容する培養容器の載置面内で側方からの照明光を前記培養容器外から照射し撮影して側方照明によるカルスのカラー画像を取得するとともに、前記カルスを収容する培養容器の載置面に斜め前方から照明光を前記培養容器外から照射し撮影して斜め方向照明によるカルスのカラー画像を取得し、前記側方照明によるカルスのカラー画像と斜め方向照明によるカルスのカラー画像との両方についてそれぞれ前記濃度共起行列法によるテクスチャ解析を行いエントロピー値を対比するようにした植物培養細胞塊の状態を判別する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4848520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
増殖中の細胞を撮影した画像を観察者が見て細胞の増殖状況をコンフルエント率で把握するが、このコンフルエント率が観察者によって相違が生ずるという問題があった。また、観察者が増殖状況を把握するときにしか細胞の増殖状況が把握できないので、時間軸で直線状には増殖することがない細胞の増殖過程を正確に把握しきれないという問題があった。さらに、観察者による細胞増殖状況把握には時間を要するので業務効率が低下するという問題もあった。
【0006】
特許文献1の発明は、細胞のカラー画像やグレースケール画像から細胞を判定する方法であるが、細胞の状態がフライアブルであるかコンパクトであるかを判別する方法であり、細胞の増殖状況が現在どのレベルにあるかを把握することはできないという問題があった。
【0007】
本発明はこうした問題に鑑み創案されたもので、細胞増殖状況を撮影した画像から自動的に細胞の増殖状況の指標であるコンフルエント率を算出する細胞増殖状況把握方法、及び細胞増殖状況把握プログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の細胞増殖状況把握方法は、培養される異なる複数の細胞群を撮像した複数の被写体画像を読込む画像読込工程と、前記被写体画像を所定の画素数からなる複数の分割画像に分割する分割工程、あるいは、前記分割工程、ノイズ除去工程及びグレースケール化工程を組み合わせた分割・画像変換工程と、前記分割工程又は前記分割・画像変換工程後に、前記分割画像ごとに、色成分が一致する画素の数をカウントし、同一の色成分の画素の発生確率を算出する色成分発生確率算出工程と、前記分割画像ごとに、前記色成分の情報量と前記色成分の発生確率から平均情報量を算出する分割画像平均情報量算出工程と、前記被写体画像ごとに、前記分割画像ごとの平均情報量の平均値を算出する分割画像平均情報量の平均値算出工程と、複数のそれぞれの前記被写体画像内における細胞が占める面積の割合であるコンフルエント率をそれぞれ評価し、前記平均情報量及び前記コンフルエント率を基にして平均情報量単位当たりのコンフルエント率パラメータを算出し、コンフルエント率パラメータ関数を作成するパラメータ関数作成工程と、前記平均情報量単位当たりのコンフルエント率パラメータ関数を使用して、新たな細胞群を撮像した被写体画像の平均情報量から細胞増殖状況指標であるコンフルエント率を算出して細胞増殖状況を把握する細胞増殖状況把握工程と、を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の細胞増殖状況把握方法は、請求項1において、前記分割・画像変換工程が、カラー画像又はグレースケール画像である前記被写体画像のノイズを除去するノイズ除去工程、及び、分割工程を組み合わせた第一形態、カラー画像である前記被写体画像をグレースケール化するグレースケール化工程、その下流側に設けるノイズ除去工程、並びに、分割工程を組み合わせた第二形態、カラー画像である前記被写体画像のノイズを除去するノイズ除去工程、その下流側に設ける、カラー画像である前記被写体画像をグレースケール化するグレースケール化工程、並びに、分割工程を組み合わせた第三形態、あるいは、カラー画像である前記被写体画像のノイズを除去するノイズ除去工程と、その下流側に設ける、カラー画像である前記被写体画像をグレースケール化するグレースケール化工程と、その下流側に設ける、グレースケール画像のノイズを除去するノイズ除去工程、並びに、分割工程を組み合わせた第四形態であることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の細胞増殖状況把握方法は、請求項2において、前記ノイズ除去工程が、平滑化フィルタ又はメディアンフィルタを施すように構成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の細胞増殖状況把握方法は、請求項1又は2において、前記細胞状況把握工程において、前記コンフルエント率パラメータ関数を用いて算出したコンフルエント率が0%未満の場合はコンフルエント率を0%とし、算出したコンフルエント率が100%超の場合はコンフルエント率を100%とすることを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の細胞増殖状況把握方法は、培養される異なる複数の細胞群を撮像した複数の被写体画像の分割画像、前記分割画像のノイズ処理された分割画像、又は、前記分割画像のノイズ処理及びグレースケール処理された分割画像を含む学習データと、培養される異なる複数の細胞群を撮像した複数の被写体画像の分割画像、前記分割画像のノイズ処理された分割画像、又は、前記分割画像のノイズ処理及びグレースケール処理された分割画像のコンフルエント率とを教師データとして、コンフルエント率把握モデルの機械学習を行う機械学習工程と、培養されている細胞群について、前記細胞群を撮像した被写体画像に基づいて、前記機械学習工程で機械学習を行ったコンフルエント率把握モデルを用いて、被写体画像のコンフルエント率を把握する、機械学習を用いた細胞増殖状況把握工程と、を備えることを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の細胞増殖状況把握プログラムは、請求項1又は請求項2に記載の細胞増殖状況把握方法の処理をコンピュータに実行させるための細胞増殖状況把握プログラムである。
【0014】
請求項7に記載の細胞増殖状況把握プログラムは、請求項5に記載の細胞増殖状況把握方法の工程をコンピュータに実行させるための細胞増殖状況把握プログラムである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の細胞増殖状況把握方法は、例えば細胞自動培養装置で培養している細胞の増殖状況を内蔵されているカメラで撮像した画像から自動的にコンフルエント率を把握できるので、同じ画像であっても観察者が異なるとコンフルエント率が相違するという事態を避けることができ、異なる観察者であっても同一の種の細胞やほぼ同じ大きさの細胞であれば、同一の基準でコンフルエント率を把握できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の細胞増殖状況把握方法のフロー図である。
図2】本発明の機械学習の場合の細胞増殖状況把握方法のフロー図である。
図3】分割・画像変換工程で、カラー画像又はグレースケール画像のノイズ除去工程と分割工程との組み合わせをする場合のフロー図であり、(a)は分割工程を先にする場合のフロー図で、(b)はノイズ除去工程を先にする場合のフロー図である。
図4】分割・画像変換工程で、カラー画像のグレースケール化工程後にノイズ除去工程、及び、分割工程の組み合わせをする場合のフロー図であり、(a)は分割工程を最初にする場合のフロー図で、(b)はグレースケール化工程後に分割工程をする場合のフロー図で、(c)は分割工程を最後にした場合のフロー図である。
図5】分割・画像変換工程で、ノイズ除去工程後にカラー画像のグレースケール化工程、及び、分割工程の組み合わせをする場合のフロー図であり、(a)は分割工程を最初にする場合のフロー図で、(b)はノイズ除去工程後に分割工程をする場合のフロー図で、(c)は分割工程を最後にした場合のフロー図である。
図6】分割・画像変換工程で、ノイズ除去工程後にカラー画像のグレースケール化工程そして再びノイズ除去工程、及び、分割工程の組み合わせをする場合のフロー図であり、(a)は分割工程を最初にする場合のフロー図で、(b)は最初のノイズ除去工程後に分割工程をする場合のフロー図で、(c)はグレースケール化工程後に分割工程をする場合のフロー図で、(d)は分割工程を最後にした場合のフロー図である。
図7】培養容器内における被写体範囲の事例の説明図で、(a)は被写体範囲が重なっていない場合の説明図で、(b)は被写体画像が隣接している場合の説明図で、(c)は被写体範囲が重なっている場合の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の細胞増殖状況把握方法1は、細胞自動培養装置の培養容器21等で培養している細胞の増殖状況を把握する方法である。本発明の細胞増殖状況把握方法1は、図1に示すように、培養される異なる複数の細胞群を撮像した複数の被写体画像を読込む画像読込工程2と、前記被写体画像を所定の画素数からなる複数の分割画像に分割する分割工程3、あるいは、前記分割工程3、ノイズ除去工程42及びグレースケール化工程41を組み合わせた分割・画像変換工程4と、前記分割工程3又は前記分割・画像変換工程4後に、前記分割画像ごとに、色成分が一致する画素の数をカウントし、同一の色成分の画素の発生確率を算出する色成分発生確率算出工程5と、前記分割画像ごとに、前記色成分の情報量と前記色成分の発生確率から平均情報量を算出する分割画像平均情報量算出工程6と、前記被写体画像ごとに、前記分割画像ごとの平均情報量の平均値を算出する分割画像平均情報量の平均値算出工程7と、複数のそれぞれの前記被写体画像内における細胞が占める面積の割合であるコンフルエント率をそれぞれ評価し、前記平均情報量及び前記コンフルエント率を基にして平均情報量単位当たりのコンフルエント率パラメータを算出し、コンフルエント率パラメータ関数を作成するパラメータ関数作成工程8と、前記平均情報量単位当たりのコンフルエント率パラメータ関数を使用して、新たな細胞群を撮像した被写体画像の平均情報量から細胞増殖状況指標であるコンフルエント率を算出して細胞増殖状況を把握する細胞増殖状況把握工程9と、を備える。
【0018】
まず、前記画像読取工程2について説明する。前記画像読取工程2は、培養される異なる複数の細胞群を撮影してその撮影した複数の被写体画像を読み取る、又は、すでに撮影済みの複数の被写体画像を読み取る。読み込んだ画像から、細胞を撒種してから時間経過が短い細胞の増殖が進んでおらずコンフルエント率が低いのか、細胞の増殖が進み前記培養容器21の中で細胞の占有面積率が増加しコンフルエント率が高まってきているのかを評価する。
【0019】
また、培養容器21内における細胞の撮影対象範囲は、細胞の種が同じであるか、又は、同一拡大画像内で細胞の大きさ及び形状がほぼ同じであれば、培養容器21内の任意で定めた範囲でよく、同一培養容器21内で異なる箇所で培養されている複数の細胞群でもよく、異なる培養容器21で培養されている複数の細胞群でもよい。さらに、例えば、図7(a)に示すように培養容器21内において被写体範囲22が重なっていない場合や、図7(b)に示すように培養容器21内において被写体範囲22が重なっている場合でもよい。
【0020】
次に、前記画像読込工程2と前記色成分発生確率算出工程5との間に、図1に示すように、前記分割工程3、あるいは、前記分割工程3、ノイズ除去工程42及びグレースケール化工程41を組み合わせた分割・画像変換工程4を設定する。
【0021】
まず、前記分割工程3について説明する。前記分割工程3は、カラー画像又はグレースケール画像である前記被写体画像を所定の画素数からなる複数の分割画像に分割する。前記画像読取工程2で取得した複数の被写体画像の拡大画像ごとに、さらに所定の画素数からなる複数の分割画像に分割する。前記分割画像は、図7(a)に示すように互いに離隔した位置の分割画像でも、図7(b)に示すように互いに隣接した分割画像でも、図7(c)に示すように部分的に重なった範囲がある分割画像でもよい。
【0022】
前記所定の画素数は、前記被写体画像を分析し、前記被写体画像のカラー画像又はグレースケール画像において、例えば「128画素×128画素」からなるサイズでもよく、「100画素×200画素」のサイズでもよく、細胞の形状や大きさによって増殖状況が評価できる範囲であればいずれのサイズでもよい。例えば大きさが小さい細胞の場合は縦横の画素数は少なくてよいが、大きさが大きい細胞の場合は縦横の画素数が多くなる。
【0023】
次に、分割・画像変換工程4について説明する。前記分割・画像変換工程4は、前記分割工程3の設定に加えて、前記被写体画像又は前記分割画像における異常値を除去するときにノイズ除去工程42を設定し、前記分割画像に対する平均情報量の算出時間を短縮させるときにグレースケール化工程41を設定する。
【0024】
前記分割・画像変換工程4は、図3に示すように、カラー画像又はグレースケール画像である前記被写体画像のノイズを除去するノイズ除去工程42、及び、分割工程3を組み合わせた第一形態、図4に示すように、カラー画像である前記被写体画像をグレースケール化するグレースケール化工程41、その下流側に設けるノイズ除去工程42、並びに、分割工程3を組み合わせた第二形態、図5に示すように、カラー画像である前記被写体画像のノイズを除去するノイズ除去工程42、その下流側に設ける、カラー画像である前記被写体画像をグレースケール化するグレースケール化工程41、並びに、分割工程3を組み合わせた第三形態、あるいは、図6に示すように、カラー画像である前記被写体画像のノイズを除去するノイズ除去工程42aと、その下流側に設ける、カラー画像である前記被写体画像をグレースケール化するグレースケール化工程41と、その下流側に設ける、グレースケール画像のノイズを除去するノイズ除去工程42b、並びに、分割工程3を組み合わせた第四形態がある。
【0025】
前記分割・画像変換工程は、分割工程3を必須工程とし、追加する工程が、図3に示すように、ノイズ除去工程42のみの第一形態があり、さらに図3(a)に示すように分割工程3を先に設定する形態と、図3(b)に示すように分割工程3をノイズ除去工程の後に設定する形態がある。
【0026】
次に、前記追加する工程が、図4に示すように、前記グレースケール化工程41、及び、その下流側に設けるノイズ除去工程42の2つの工程がある第二形態があり、図4(a)に示すように分割工程3を最初に設定する形態、図4(b)に示すようにグレースケール化工程41後に分割工程3を設定する形態、図4(c)に示すように分割工程3を最後に設定する形態がある。
【0027】
次に、前記追加する工程が、図5に示すように、ノイズ除去工程42、及び、その下流側に設けるグレースケール化工程41の2つの工程がある第三形態があり、図5(a)に示すように分割工程3を最初に設定する形態、図5(b)に示すようにノイズ除去工程42後に分割工程3を設定する形態、図5(c)に示すように分割工程3を最後に設定する形態がある。
【0028】
次に、前記追加する工程が、図6に示すように、ノイズ除去工程42a、その下流側に設けるグレースケール化工程41、及び、その下流側に設けるノイズ除去工程42bの3つの工程がある第四形態があり、図6(a)に示すように分割工程3を最初に設定する形態、図6(b)に示すように最初のノイズ除去工程42a後に分割工程3を設定する形態、図6(c)に示すようにグレースケール化工程41後に分割工程3を設定する形態、図6(d)に示すように分割工程3を最後に設定する形態がある。
【0029】
前記グレースケール化工程41は、例えば、赤、青、緑の3つの独立した原色が混ざり合い、赤、青、緑の原色のそれぞれの光の強さからなるカラー画像から、赤、青、緑それぞれを、0を含む任意の割合で混合させて、この任意の割合で混合させたカラー画像の輝度だけで表されるグレースケールに変換する工程である。言い換えると、前記グレースケール化工程は、RGB成分を有する前記画素のカラー画像データからグレースケール化したグレースケール画像を生成する工程である。
【0030】
前記ノイズ除去工程42は、前記カラー画像又はグレースケール画像からノイズを除去する工程であり、ノイズを除去する平滑化を実行するフィルタとしては、例えば平均値フィルタ、重み付け平均値フィルタ、ガウシアンフィルタ、メディアンフィルタ等があり、いずれでもよい。
【0031】
平滑化を実行するフィルタとして、前記メディアンフィルタを構成した場合は、前記カラー画像又はグレースケール画像を構成する画素の内の1つの画素及び当該画素を中心に周辺の所定数の画素の領域を画素値判定ブロックとして設定し、前記画素値判定ブロック内で画素ごとの色成分のうちで中央値の色成分を前記中心の画素の色成分とする色成分置換画像を生成する。
【0032】
前記画素値判定ブロックの範囲は、例えば5画素×5画素の範囲、3画素×3画素の範囲、7画素×5画素の範囲など、中央の画素を決めることができる縦横の画素数が奇数の画素数であればいずれでもよい。
【0033】
次に、前記色成分発生確率算出工程5について説明する。前記色成分発生確率算出工程5は、前記分割画像ごとに、前記色成分置換画像の色成分が一致する画素の頻度をカウントし、同一の色成分の発生確率を算出する。前記発生確率は、分母を分割画像の画素数とし、分子をカウントした一致する画素数として算出する。
【0034】
次に、前記分割画像平均情報量算出工程6を説明する。前記分割画像平均情報量算出工程6は、前記分割画像ごとに、前記色成分の情報量と前記色成分の発生確率から平均情報量を算出する。
【0035】
前記色成分の情報量をIとすると、あるRGB値の画素の発生確率がpの場合に、当該RGB値の色成分の情報量Iは、数式(1)で算出される。
【0036】
【数1】
【0037】
次に、前記分割画像の平均情報量をHとし、n個の異なるRGB値の色成分の発生確率を、p1、p2、p3、・・・、pnすると、平均情報量Hは数式(2)で算出される。なお、p1、p2、p3、・・・、pn合計は1すなわち100%である。
【0038】
【数2】
【0039】
次に、分割画像平均情報量の平均値算出工程7について説明する。前記分割画像平均情報量の平均値算出工程7は、前記被写体画像ごとに、前記分割画像ごとの平均情報量の平均を算出する。
【0040】
前記分割画像平均情報量の平均値をA、前記分割画像の数をm、i番目の分割画像の平均情報量Hiとすると、分割画像平均情報量の平均値Aは数式(3)に示すように算出される。
【0041】
【数3】
【0042】
例えば、1つの被写体画像から30個の分割画像を取り出した場合は、前記30個の分割画像ごとの平均情報量を合計し、その合計値を分割画像数の30で除算する。
【0043】
次に、パラメータ関数作成工程8を説明する。前記パラメータ関数作成工程8は、複数のそれぞれの前記被写体画像内における細胞占有面積率であるコンフルエント率をそれぞれ評価し、前記平均情報量及び前記コンフルエント率を基にして平均情報量単位当たりのコンフルエント率パラメータを算出し、前記被写体画像の平均情報量からコンフルエント率を算出するパラメータ関数を作成する。
【0044】
前記コンフルエント率の評価は、観察者が目視で評価するか、コロニー法、チミジン取り込み法又はMTT法などの試薬や機器を使用した生細胞数測定方法でもよく、死んだ細胞の数の測定方法でもよい。培養容器21の接着面を培養細胞が覆った状態の割合を評価できればいずれの方法でもよい。
【0045】
前記平均情報量と前記コンフルエント率との相関を表すパラメータ関数は、一次関数式、二次関数式、三次関数式、三角関数を用いた数式、又は、対数関数を用いた数式のうち、適する数式を用いればよい。例えば、簡易な式としては、前記平均情報量の最小値と最大値から算出する方法や最小二乗法等がある。
【0046】
次に、前記細胞増殖状況把握工程9を説明する。前記細胞増殖状況把握工程9は、平均情報量単位当たりのコンフルエント率パラメータを基にした前記パラメータ関数を使用して、新たな細胞群を撮像した被写体画像の平均情報量から細胞増殖状況指標であるコンフルエント率を算出して細胞増殖状況を把握する。
【0047】
前記細胞増殖状況把握工程9において、算出したコンフルエント率が0%未満の場合はコンフルエント率を0%とし、算出したコンフルエント率が100%超の場合はコンフルエント率を100%とする。
【0048】
次に、機械学習を用いた細胞増殖状況把握方法について説明する。前記機械学習を用いた細胞増殖状況把握方法1aは、図2に示すように、培養される異なる複数の細胞群を撮像した複数の被写体画像の分割画像、前記分割画像のノイズ処理された分割画像、又は、前記分割画像のノイズ処理及びグレースケール処理された分割画像を含む学習データと、培養される異なる複数の細胞群を撮像した複数の被写体画像の分割画像、前記分割画像のノイズ処理された分割画像、又は、前記分割画像のノイズ処理及びグレースケール処理された分割画像のコンフルエント率とを教師データとして、コンフルエント率把握モデルの機械学習を行う機械学習工程10と、培養されている細胞群について、前記細胞群を撮像した被写体画像に基づいて、前記機械学習工程で機械学習を行ったコンフルエント率把握モデルを用いて、被写体画像のコンフルエント率を把握する、機械学習を用いた細胞増殖状況把握工程11と、を備える。
【0049】
次に、細胞増殖状況把握プログラムは、前記細胞増殖状況把握方法1又は1aの処理をコンピュータに実行させるための細胞増殖状況把握プログラムである。
【符号の説明】
【0050】
1 細胞増殖状況把握方法
2 画像読込工程
3 分割工程
4 画像変換工程
5 色成分発生確率算出工程
6 分割画像平均情報量算出工程
7 分割画像平均情報量の平均値算出工程
8 パラメータ算出工程
9 細胞増殖状況把握工程
10 機械学習工程
11 細胞増殖状況把握工程
21 培養容器
22 被写体範囲
41 グレースケール化工程
42 ノイズ除去工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7