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特開2024-33810セグメントコイルの検査装置、及びセグメントコイルの検査方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033810
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】セグメントコイルの検査装置、及びセグメントコイルの検査方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/04 20060101AFI20240306BHJP
   G01B 11/24 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
H02K15/04 Z
G01B11/24 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137647
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】宮田 一史
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ジェレミー
【テーマコード(参考)】
2F065
5H615
【Fターム(参考)】
2F065AA51
2F065DD04
2F065FF49
2F065GG04
2F065HH08
2F065HH13
2F065JJ08
5H615AA01
5H615BB01
5H615BB02
5H615BB14
5H615PP01
5H615PP12
5H615QQ03
5H615QQ07
5H615QQ12
5H615RR07
5H615SS22
5H615SS57
5H615TT35
5H615TT39
(57)【要約】
【課題】透明電気絶縁被膜での表面反射光とセグメントコイルの母材での表面反射光の薄膜干渉を抑制し、正確で安定した距離計測を行うことができるセグメントコイルの検査装置を提供する。
【解決手段】コイル検査手段は、レーザー光をセグメントコイルに向けて照射する照射手段21と、照射されたレーザー光を、透明な電気絶縁被膜の分子配向方向に対して所定の角度だけ傾いた方向に偏光してセグメントコイルに照射する偏光手段27と、セグメントコイルから反射した表面反射光を検出する受光手段22と、受光手段で検出された表面反射光の信号に基づいてセグメントコイルの形状を推定する形状推定演算手段23とを有する。
【選択図】図17
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に平面部を有する電気的な導体金属体と、前記導体金属体の前記平面部に形成された略一定方向の分子配向を有する透明な電気絶縁被膜とを備えたセグメントコイルの形状を、レーザー光を用いて検査するコイル検査手段を備えるセグメントコイルの検査装置であって、
前記コイル検査手段は、前記レーザー光を前記セグメントコイルに向けて照射する照射手段と、
照射された前記レーザー光を、前記透明な電気絶縁被膜の前記分子配向の方向に対して所定の角度だけ傾いた方向に偏光して前記セグメントコイルに照射する偏光手段と、
前記セグメントコイルから反射した表面反射光を検出する受光手段と、
前記受光手段で検出された前記表面反射光の信号に基づいて前記セグメントコイルの形状を推定する形状推定演算手段と
を有することを特徴とするセグメントコイルの検査装置。
【請求項2】
表面に平面部を有する電気的な導体金属体と、前記導体金属体の前記平面部に形成された略一定方向の分子配向を有する透明な電気絶縁被膜とを備えたセグメントコイルの形状を、レーザー光を用いて検査するコイル検査手段を備えるセグメントコイルの検査装置であって、
前記コイル検査手段は、前記レーザー光を前記セグメントコイルに向けて照射する照射手段と、
前記照射手段と前記セグメントコイルの間に配置され、照射された前記レーザー光を、前記透明な電気絶縁被膜の前記分子配向の方向に対して所定の角度だけ傾いた方向に偏光して前記セグメントコイルに照射する偏光手段と、
前記セグメントコイルから反射した表面反射光を検出する受光手段と、
前記受光手段で検出された前記表面反射光の信号に基づいて前記セグメントコイルの形状を推定する形状推定演算手段と
を有することを特徴とするセグメントコイルの検査装置。
【請求項3】
請求項1、又は請求項2に記載のセグメントコイルの検査装置において、
前記偏光手段は、前記分子配向の方向に対して直角に傾いた方向で、前記レーザー光を直線偏光する
ことを特徴とするセグメントコイルの検査装置。
【請求項4】
請求項3に記載のセグメントコイルの検査装置において、
前記透明な電気絶縁被膜は、ポリイミド系樹脂、或いはポリアミド系樹脂である
ことを特徴とするセグメントコイルの検査装置。
【請求項5】
請求項3に記載のセグメントコイルの検査装置において、
前記偏光手段は、プリズムまたは偏光フィルムである
ことを特徴とするセグメントコイルの検査装置。
【請求項6】
表面に平面部を有する電気的な導体金属体と、前記導体金属体の前記平面部に形成された略一定方向の分子配向を有する透明な電気絶縁被膜とを備えたセグメントコイルの形状を、レーザー光を用いて検査するセグメントコイルの検査方法であって、
前記レーザー光を前記セグメントコイルに向けて照射する照射工程と、
照射された前記レーザー光を、前記透明な電気絶縁被膜の前記分子配向の方向に対して所定の角度だけ傾いた方向に偏光して前記セグメントコイルに照射する偏光工程と、
前記セグメントコイルから反射した表面反射光を受光手段によって検出する受光工程と、
前記受光手段で検出された前記表面反射光の信号に基づいて前記セグメントコイルの形状を推定する形状推定工程と
を実行することを特徴とするセグメントコイルの検査方法。
【請求項7】
請求項6に記載のセグメントコイルの検査方法において、
前記偏光工程は、前記分子配向の方向に対して直角に傾いた方向で、前記レーザー光を直線偏光する
ことを特徴とするセグメントコイルの検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機の巻線に使用されるセグメントコイルの検査装置、及びセグメントコイルの検査方法に係り、特にセグメントコイルの表面に透明絶縁樹脂が被覆されているセグメントコイルの検査装置、及びセグメントコイルの検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、電動機等の回転電機のステータを構成するステータコイルは、例えば、特開2018-107863号公報(特許文献1)に示されているように、複数のセグメントコイルを溶接して構成されている。
【0003】
そして、このステータコイルは、多くのセグメントコイルが、ステータコアと呼ばれる磁性体に形成されたスロットに差し込まれて組み立てられる。このため、組み込み前のセグメントコイルは、ステータコアのスロットに円滑に組み込むために、寸法形状品質を維持する必要がある。
【0004】
寸法形状品質を維持するためには、基準に満たない寸法形状のセグメントコイルは、ステータコアの組み込み工程へ送らないこと、及びどのような原因で寸法形状品質を満たすことができなかったかを検証することが必要となる。
【0005】
具体的には、ステータコアに組み込む前のセグメントコイルの形状品質が、基準を満たしているか否かを判定して良否選別すること、及び基準の寸法形状に対するずれ量とずれ方向の情報を、製造工程の上流側の成形工程へフィードバックして、成形設備の工程条件の変更や改善等を実施することである。
【0006】
そして、セグメントコイルが完成した時点で、セグメントコイルの寸法形状品質が、基準を満たしているか否かを判定するために、例えば、光表面反射方式による距離計測原理を用いた三次元寸法形状計測システムが使用されている。この三次元寸法形状計測システムは、光学系により生成されたレーザー光をセグメントコイルに照射し、その反射光をCMOSのようなイメージセンサで受光して三角測距することで、セグメントコイルの三次元データが取得できるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2018-107863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、セグメントコイルには透明な電気絶縁樹脂による絶縁被膜(以下、透明電気絶縁被膜と表記する)が形成されているため、透明電気絶縁被膜での表面反射光と、透明電気絶縁被膜を透過したセグメントコイルの母材での表面反射光をイメージセンサが受光してしまう。そして、2つの表面反射光が重なることで薄膜干渉が発生し、正確で安定した距離計測ができないという課題が発現し、これの対応策が求められている。
【0009】
本発明の目的は、透明電気絶縁被膜での表面反射光とセグメントコイルの母材での表面反射光の薄膜干渉を抑制し、主に透明電気絶縁被膜での表面反射光をイメージセンサに受光させて、正確で安定した距離計測を行うことができるセグメントコイルの検査装置、及びセグメントコイルの検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、表面に平面部を有する電気的な導体金属体と、導体金属体の平面部に形成された略一定方向の分子配向を有する透明な電気絶縁被膜とを備えたセグメントコイルの形状を、レーザー光を用いて検査するコイル検査手段を備えるセグメントコイルの検査装置であって、コイル検査手段は、レーザー光をセグメントコイルに向けて照射する照射手段と、照射されたレーザー光を、透明な電気絶縁被膜の分子配向方向に対して所定の角度だけ傾いた方向に偏光してセグメントコイルに照射する偏光手段と、セグメントコイルから反射した表面反射光を検出する受光手段と、受光手段で検出された表面反射光の信号に基づいてセグメントコイルの形状を推定する形状推定演算手段とを有する、ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、偏光手段によって透明電気絶縁被膜の分子配向に対して所定の角度だけ傾いた方向に偏光されたレーザー光をセグメントコイルに照射することで、透明電気絶縁被膜での表面反射光とセグメントコイルの母材での表面反射光の薄膜干渉を抑制し、主に透明電気絶縁被膜での表面反射光を受光手段に受光させることで、正確で安定した距離計測を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】回転電機のロータ、及びステータを示す分解斜視図である。
図2図1に示すステータの斜視図である。
図3】セグメントコイルを示す斜視図である。
図4】ステータの製造工程を説明する工程図である。
図5】セグメントコイルのコイルエンドの溶接部分を示す拡大図である。
図6】セグメントコイルの製造工程を説明する工程図である。
図7】セグメントコイルの製造工程を説明する説明図である。
図8】従来のセグメントコイルの三次元形状寸法を計測するレーザーライン距離計測装置の原理を説明する構成図である。
図9】レーザーライン距離計測装置によるセグメントコイルの三次元形状寸法を計測する方法を説明する説明図である。
図10】セグメントコイルへのレーザー照射の薄膜干渉現象を説明する説明図である。
図11】セグメントコイルに塗布した透明電気絶縁被膜の溶融状態の分子配向を説明する説明図である。
図12】セグメントコイルに塗布した透明電気絶縁被膜の冷却後の分子配向を説明する説明図である。
図13】分子配向の配向方向とレーザー照射光の関係を説明する説明図である。
図14】無偏光のレーザー照射光が透明電気絶縁被膜で反射する反射光と、導体金属の表面で反射することを説明する説明図である。
図15】本発明の実施形態になる直線偏光されたレーザー照射光と透明電気絶縁被膜の分子配向の方向の関係を説明する説明図である。
図16図15に示す直線偏光されたレーザー照射光の反射状態を説明する説明図である。
図17】本発明の第1の実施形態になるコイル検査装置の構成を示す構成図である。
図18】第1の実施形態になるレーザーライン距離計測装置によるセグメントコイルの三次元形状寸法を計測する方法を説明する説明図である。
図19】本発明の第2の実施形態になるコイル検査装置の構成を示す構成図である。
図20】白色LED照明灯の波長と光エネルギの特性を説明する特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されることなく、本発明の技術的な概念の中で種々の変形例や応用例をもその範囲に含むものである。
【0014】
先ず、本発明の実施形態を説明する前に、セグメントコイルの三次元寸法形状を計測する方法と、その場合の課題について説明し、その後に本実施形態を説明する。
【0015】
図1は、本発明の対象となる回転電機1のロータ10、及びステータ11を分解した状態を示し、図2は、ステータ11を斜視した状態を示している。
【0016】
図1において、回転電機1は、例えば図示しない電動車両の駆動輪を駆動する、若しくは駆動輪からの回生制動力によって発電する、3相(U相、V相、W相)8極の交流型の永久磁石同期モータとして構成される。回転電機1は、円筒状のステータ11と、ステータ11の内部に回転自在に収容されるロータ10とを備える。
【0017】
図2において、ステータ11は、複数の円環状の電磁鋼板を積層して構成されるステータコア12と、ステータコア12に波巻き状に巻回される平角線により形成された3相分のステータコイル13U、13V、13W(総称してステータコイル13とも表記する。)と、を備える。
【0018】
ステータコア12にはそれぞれ、多数のティースおよびスロットが周方向(回転電機1の回転方向に同じ)に等間隔で交互に形成され、端部に3相分の端子が接続されている。ステータコイル13は、多くのセグメントコイル131を溶接して形成され、セグメントコイル131は、スロットに差し込まれて配置されている。
【0019】
図3は、セグメントコイル131を示す斜視図である。ステータコイル13は、断面形状が四角形の平角線を「V」字状に折り曲げたセグメントコイル131を、ステータコア12内で円周方向に複数組み合わせて構成される。1周目のコイルの終端と、2周目のコイルの始端との間は、サブコイルセグメントによって連結される。
【0020】
セグメントコイル131の「V」字状の頂点側の折曲部は、周方向に延びて「V」字状の頂点部で隣のレイヤーにシフトする。セグメントコイル131は、周方向に斜めに延びているので、1ピッチずれたセグメントコイルとは、上下に重なって延びることができる。
【0021】
隣のレイヤーにシフトする頂点も1ピッチずれているので、干渉することがなく、上下が入れ替わる交差がなされる。隣接するコイルエンド131a(図3(b)参照)間の溶接位置で前述とは逆のレイヤーにシフトする。ここでも1ピッチずれたセグメントコイル131と上下が入れ替わる。
【0022】
図4は、製造設備におけるステータ製造工程を表す工程図である。
【0023】
「ステップS1」では、ステータコア12を供給する。次に、「ステップS2」では、ステータコア12に製造番号を刻印する。次に、「ステップS3」では、絶縁紙であるスロットライナ12aを成形し、ステータコア12の内周に形成されたスロットに沿って挿入する。
【0024】
「ステップS4」では、コイル挿入治具に複数のセグメントコイル131をセットする。この時点におけるセグメントコイル131のコイルエンド131a付近は、図4(a)に示すように、折り曲げられておらず、直線形状である。
【0025】
「ステップS5」では、複数のセグメントコイル131が一組にセットされたステータコイル13をステータコア12に挿入する。
【0026】
「ステップS6」では、コイル拡張・捻り工程を実施し、図3(b)に示すように、コイルエンド131a付近を折り曲げると共に捻りを加え、コイルエンド131aを隣のレイヤーにシフト可能とする。
【0027】
「ステップS7」では、コイルエンド131aを切断し、所望の適切な長さにする。次に「ステップS8」では、コイルエンド131aと、隣接する隣のレイヤーのコイルエンド131aとを溶接接合する。
【0028】
図5は、コイルエンドの溶接部分を表す拡大図である。溶接部分は、周方向に沿って等間隔で複数配置される。周方向に沿って配置された溶接部分を接合部配列層と定義したとき、接合部配列層は、内径側に沿って外側層及び内側層が配置される。
【0029】
図4に戻り、「ステップS9」では、コイルの所定のセグメントコイル131に端子を接続する。次に、「ステップS10」では、周方向二列に並んだ溶接部分の外側層と内側層との間に絶縁紙である段間紙を挿入する。
【0030】
「ステップS11」では、ステータとコイルとの間の隙間に絶縁ワニスを流し込み、ステータコア12とコイルとを固定するワニス処理を行い、ステータ製造工程を終了する。
【0031】
次に、ステータ製造工程のステップS4で使用されるセグメントコイルの製造工程について説明を行う。
【0032】
図6は、製造設備におけるセグメントコイル製造工程を表す工程表、図7は、製造設備におけるセグメントコイル製造工程を表す概略図である。セグメントコイル製造工程は、工程管理コンピュータ(以下、管理PC)によって、識別コード情報と折り曲げ機の加工量、プレス機の加工条件が設定される。
【0033】
「ステップS101」では、巻線材料をセットする。巻線材料とは、断面が方形の導体金属材料(例えば、銅)301であって、表面が透明電気絶縁被膜300で被覆されたコイル線が巻かれたものである。
【0034】
「ステップS102」では、アンコイラにより巻線材料の歪を取りながらコイル線を送り出す。
【0035】
「ステップS103」では、コイル線が巻線材料として巻かれていた際に付与された歪の水平及び垂直方向の矯正を行い、真っ直ぐなコイル線とする。
【0036】
「ステップS104」では、コイル線の端部(溶接される部分)の透明電気絶縁被膜300を剥離する。
【0037】
「ステップS105」では、折り曲げ機により平面方向においてU字状に曲げ加工を行うと共に、切断する。セグメントコイル131の一本ごとに識別コードとして二次元コード200を付与する。
【0038】
「ステップS106」では、識別コードを読み取ると共に、プレス機によってU字状に折り曲げた折曲部をプレス曲げ加工する。これにより、セグメントコイル131は、隣のレイヤーにシフト可能となる。
【0039】
「ステップS107」では、プレス曲げ加工されたセグメントコイル131に対して三次元寸法計測を行い、識別コード及び計測結果を管理PCに出力する。管理PCでは、加工時刻と三次元寸法計測結果と識別コードとを紐付ける。
【0040】
セグメントコイル131の寸法形状が正規のものでない場合、ステータ製造工程のステップS5における、セグメントコイルの挿入治具への挿入を行うことができない、また、挿入できても挿入ガイドとの擦れにより絶縁膜がはがれる、挿入治具が破損する等の不具合が発生する。これらの不具合の発生を未然に防止するため、挿入治具へのセグメントコイルの挿入前に、寸法形状が設定された基準を満足しているか否かを三次元で寸法計測する。
【0041】
そして、三次元寸法計測結果に基づいて、寸法形状品質が一定の基準を満たしているか否かを判断し、基準を満たしている場合はステップS108へと進み、基準を満たしていない場合は、本加工品を廃棄すると共に、破棄された本加工品の識別情報を管理PCに記録する。
【0042】
具体的には、基準を満たしていない製品の識別情報から、この識別情報と紐付けられた加工時刻に対応する折曲げ機の加工量やプレス機の加工条件を検索し、検索された加工量及び加工条件の補正計算を行う。そして、折曲げ機及びプレス機に対し、補正された加工量及び加工条件を出力する。
【0043】
「ステップS108」では、良否判定されて基準の範囲に合致していると見做されたセグメントコイルが、図4に示すステータ製造工程のステップS4で使用されて、セグメントコイルの製造工程を完了する。
【0044】
次に図8を用いて、上述した「ステップS107」で実施する三次元形状計測に用いるレーザーライン距離計測装置の計測原理を簡単に説明する。尚、この種のレーザーライン距離計測装置は良く知られている。
【0045】
図8において、レーザーライン距離計測装置20のレーザー照射部21から照射されたレーザー照射光Liは、計測対象物表面Sに照射され、表面で反射したレーザー反射光(表面反射光とも表記することもある)Lrは、二次元受光素子(CMOSのようなイメージセンサ)22で受光されて結像される。
【0046】
また、計測対象物表面Sとの距離が破線のように変化すると、レーザー反射光Lrを受光する二次元受光素子22の結像位置が変化する。そして、形状推定演算手段23によって、この二次元受光素子22上の結像位置の変化量から対象物表面Sとの距離の変化を算出する。これにより対象物の寸法形状を推定することができる。
【0047】
次に図9を用いて、ステップ107で実施するセグメントコイルに対する三次元形状計測のやり方について簡単に説明する。
【0048】
図9において、レーザーライン距離計測装置20からレーザー照射光Liの光束をセグメントコイル24の表面に向けて照射し、レーザー反射光Lrの光束を二次元受光素子22により受光する。セグメントコイル24の表面の凹凸に応じて、二次元受光素子22の受光位置が変わるので凹凸寸法を計測することができる。
【0049】
そして、レーザーライン距離計測装置20を垂直方向に走査することにより、レーザー照射光Liの光束の夫々の水平高さ位置毎に、セグメントコイル24の表面とレーザーライン距離計測装置20の距離を計測することで、セグメントコイルの寸法形状を全体的に求めることができる。
【0050】
次に、上述したレーザーライン距離計測装置20を使用したセグメントコイルの三次元形状計測における課題について、図10を用いて説明を行う。
【0051】
図10には、導体金属(銅)24に形成された透明電気絶縁被膜26に距離計測用のレーザー照射光Liを照射した場合にレーザー反射光Lrに発生する薄膜干渉を模式的に示している。
【0052】
図10において、透明電気絶縁被膜26の膜厚と、これを透過した透過光の屈折条件により、透明電気絶縁被膜26の表面を反射したレーザー光Lrrの位相と、導体金属25の表面で反射したレーザー反射光Lrmの位相がほぼ同じで、振幅が逆になった状態で重なり合うことがある。
【0053】
そして、2つのレーザー反射光が、相互干渉して生じたレーザー反射光の合成光Lrcは、その強度が低下して距離計測ができなくなる現象が発生する。特に、レーザー光は指向性が高いので、距離計測に用いられることが多いが、単波長であるため複数の波長からなる合成光と比較すると薄膜干渉という現象は発生しやすいものである。
【実施例0054】
このような薄膜干渉による反射光の強度低下を抑制するためには、導体金属25による反射光をできるだけ少なくしてやれば良い。本実施形態では、このための方法として以下の構成を提案するものである。
【0055】
本実施形態では、表面に平面部を有する電気的な導体金属体と、導体金属体の平面部に形成された略一定方向の分子配向を有する透明な電気絶縁被膜とを備えたセグメントコイルの形状を、レーザー光を用いて検査するコイル検査手段を備えるセグメントコイルの検査装置であって、コイル検査手段は、レーザー光をセグメントコイルに向けて照射する照射手段と、照射されたレーザー光を、透明な電気絶縁被膜の分子配向方向に対して所定の角度だけ傾いた方向に偏光してセグメントコイルに照射する偏光手段と、セグメントコイルから反射した表面反射光を検出する受光手段と、受光手段で検出された表面反射光の信号に基づいてセグメントコイルの形状を推定する形状推定演算手段とを有することを特徴としている。
【0056】
先ず、セグメントコイルの平面部の表面に形成されている、略一定方向の分子配向を有する透明な電気絶縁樹脂材料による透明電気絶縁被膜について説明する。
【0057】
図11図12は、長手方向に直交する断面が「方形」(いわゆる、平角線)に形成されたセグメントコイル24の導体金属25の表面に被覆された、透明電気絶縁被膜26の分子配向性を示している。尚、図11は、溶融状態の分子配向を示し、図12は、冷却後の分子配向を示している。
【0058】
セグメントコイル24の導体金属25を透明な電気絶縁性樹脂で被覆する際は、ポリイミド系樹脂、或いはポリアミド系樹脂(以下、これらを総称して樹脂材料とも表記する。)を高温溶融状態で塗布し、冷却させて透明電気絶縁被膜26を形成する。(実際は、長尺のコイル線に塗布した後にセグメントコイルに形成する)
高温溶融状態での樹脂材料は、図11に示すように分子配向の方向が無秩序(ランダム)であり、配向性は無い。しかしながら、樹脂材料の冷却過程において、セグメントコイル24の導体金属25と樹脂材料の線膨張係数に差があり、樹脂材料の熱収縮率がセグメントコイル24の導体金属25の熱収縮率より大きく、延伸状態となる。
【0059】
そして、樹脂材料が収縮する際に透明電気絶縁被膜26に引張力が発生し、延伸配向現象によって、図12に示すように、セグメントコイル24の外周方向(セグメントコイル24の長手方向に直交する方向)に沿って、分子配向が整列する分子配向性(略一定方向の分子配向)を有することを見出した。
【0060】
したがって本実施形態では、この分子配向性を利用して、分子配向の方向に対して所定の角度で直線偏光されたレーザー照射光Lifを照射することで、薄膜干渉による悪影響を低減して、正確な距離測定ができるようにしたものである。
【0061】
図13図14は、略一定方向に分子配向した透明電気絶縁被膜26を、無偏光の一般的なレーザー光が透過する状態を模式的に示している。
【0062】
図13にあるように、一般的なレーザー照射光Liはあらゆる偏光方向を持つ光の集合である。これらの多くの偏光方向を持つレーザー照射光Liのうち、透明電気絶縁被膜26の配向方向に近い角度を有するレーザー照射光Liの偏光成分が、透明電気絶縁被膜26を透過してセグメントコイル24の導体金属25の表面に照射される。
【0063】
図14は、一般的なレーザー照射光Liを透明電気絶縁被膜26の表面に照射した場合の角度成分別の透過と反射の違いを模式的に示している。
【0064】
図14において、透明電気絶縁被膜26の分子配向角と一致、或いはこれに近い配向角に対応する偏光の角度を有するレーザー照射光Liの光成分は、透明電気絶縁被膜26を透過してセグメントコイル24の導体金属25の表面で反射し、再び透明電気絶縁被膜26を透過してレーザー反射光Lrmとなる。尚、偏光の角度が透明電気絶縁被膜26の分子配向角と一致しない光成分は、透明電気絶縁被膜26の表面で反射してレーザー反射光Lrrとなる。尚、部分的に透明電気絶縁被膜26を透過する場合もある。
【0065】
したがって、透明電気絶縁被膜26の表面で反射してレーザー反射光Lrrと、セグメントコイル24の導体金属25の表面で反射したレーザー反射光Lrmが存在して、上述したように薄膜干渉を生じることになる。
【0066】
次に本発明の実施形態について説明する。本実施形態は上述したように、透明電気絶縁被膜26に形成した分子配向性を利用して、分子配向の方向に対して所定の角度で直線偏光されたレーザー照射光Lifを照射することで、薄膜干渉による悪影響を低減するものである。
【0067】
図15は、略一定方向に分子配向した透明電気絶縁被膜26に対して、分子配向方向と直角な方向で、直線偏光されたレーザー照射光Lifが照射されている。そして、図16に示すように、透明電気絶縁被膜26の分子配向方向と所定の角度、ここでは直角の方向で照射された、直線偏光されたレーザー照射光Lifは、透明電気絶縁被膜26を透過せずに大部分が反射(理想的には全反射)する状態で、レーザー反射光Lrrとなる。
【0068】
図17は、本実施形態になるコイル検査装置を示している。図17において、レーザーライン距離計測装置20のレーザー照射部21から照射されたレーザー照射光Liは、透明電気絶縁被膜の分子配向方向に対して所定の角度(ここでは、直角な方向)だけ傾いた方向に直線偏光する偏光手段27を通過してセグメントコイル24に照射される。
【0069】
そして、セグメントコイル24の表面で反射したレーザー反射光Lrrは、二次元受光素子22で受光されて結像される。また、形状推定演算手段23によって、この二次元受光素子22上の結像位置の変化量からセグメントコイル24との距離の変化を算出する。これにより対象物の寸法形状を推定することができる。
【0070】
ここで、無偏光なレーザー照射光Liを、一定方向の偏光角に直線偏光する光学素子として、グランレーザープリズムを使用することができる。また、一定偏光角を有する成分のみを透過させる光学的な偏向フィルムを用いることもできる。
【0071】
更に偏光手段27は、セグメントコイル24とレーザー照射部21の間に位置するように、レーザーライン距離計測装置20内に、一体的に組み込むこともできるし、別体としてレーザーライン距離計測装置20に後付けで組み付けることもできる。
【0072】
このように、セグメントコイル24の導体金属25の表面から反射されるレーザー反射光Lrmが存在しない、或いはレーザー反射光Lrmが少ないので、薄膜干渉を生じ難く、正確で安定した距離計測ができる。尚、本実施形態では、透明電気絶縁被膜26の分子配向方向に対して直角な方向に直線偏光しているが、導体金属25の表面から反射されるレーザー反射光Lrmが少なくなる所定の角度だけ傾いた方向に直線偏光するようにしても良い。
【実施例0073】
次に、本発明の第2の実施形態について簡単に説明する。
【0074】
図19は複数のセグメントコイル24を編み込んでステータコア12のスロットに差し込んだ状態のセグメントコイル24の部分を検査する実施形態を示している。ステータ11とカメラ28の間には、白色LED照明灯29が配置され、更には白色LED照明灯29とステータ11の間には直線偏光フィルタ30が配置されている。
【0075】
図20は、照明に用いる白色LED照明灯29の波長特性を示している。LEDランプは、特定波長にピークを持っているため薄膜干渉による反射光量の低下、或いは増幅現象により取得画像に明るさむらが発生する。この現象を抑制するためにセグメントコイルの長手方向に、直線偏光フィルタ30を配置して直角、或いは直角に近い角度の直線偏光されたLED光を照射することにより、薄膜干渉現象を抑制することができる。
【0076】
尚、本発明は上記したいくつかの実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記の実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。各実施例の構成について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
【符号の説明】
【0077】
1…回転電機、10…ロータ、11…ステータ、12…ステータコア、13…ステータコイル、20…セグメントコイルの検査装置、21…レーザー照射部、22…受光手段、23…形状推定演算手段、24…セグメントコイル、25…導体金属、26…透明電気絶縁被膜、27…偏光手段。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図11
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図20