(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033812
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】電動機および圧縮機
(51)【国際特許分類】
H02K 1/18 20060101AFI20240306BHJP
H02K 3/04 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
H02K1/18 A
H02K3/04 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137651
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】平山 宏
【テーマコード(参考)】
5H601
5H603
【Fターム(参考)】
5H601AA08
5H601AA30
5H601BB11
5H601CC01
5H601CC15
5H601DD01
5H601DD09
5H601DD11
5H601DD19
5H601EE03
5H601EE12
5H601EE18
5H601GA03
5H601GA23
5H601GA33
5H601GB05
5H601GC02
5H601GC12
5H601JJ04
5H601JJ10
5H601KK18
5H601KK30
5H603AA03
5H603BB01
5H603BB12
5H603CA01
5H603CA05
5H603CB01
5H603CC11
5H603CC17
5H603CD21
(57)【要約】
【課題】
本発明の目的は、電動機において、銅損の増加を抑制しつつ、固定具による局所荷重を低減することにある。
【解決手段】
本発明の電動機1は、回転軸32を有する回転子3と、ヨーク216およびヨーク216から径方向内側に突出する複数のティース213を含み回転軸32の軸方向に積層部材が積層されて構成される固定子鉄心21とティース213に巻回された巻線22とを有する固定子2と、軸方向における固定子鉄心21の一端部に配される端部部材41Aと、固定子2が固定具6により固定される固定子固定部品5と、を備える。ティース213の少なくとも1つは、端部部材41Aから露出する露出部(411Aの内側)を有し、巻線22は、露出部に巻回されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を有する回転子と、
ヨークおよび前記ヨークから径方向内側に突出する複数のティースを含み前記回転軸の軸方向に積層部材が積層されて構成される固定子鉄心と、前記ティースに巻回された巻線と、を有する固定子と、
前記軸方向における前記固定子鉄心の一端部に配される端部部材と、
前記固定子が固定具により固定される固定子固定部品と、
を備え、
前記ティースの少なくとも1つは、前記端部部材から露出する露出部を有し、
前記巻線は、前記露出部に巻回されている電動機。
【請求項2】
請求項1に記載の電動機において、
前記複数のティースの全ては、前記端部部材から露出する露出部を有する電動機。
【請求項3】
請求項2に記載の電動機において、
前記複数のティースは、前記ヨークとの接続部から、前記回転子と対向する先端側まで、前記端部部材から露出して前記露出部が構成されている電動機。
【請求項4】
請求項1に記載の電動機において、
前記端部部材は、複数の固定具により前記固定子固定部品に固定されている電動機。
【請求項5】
請求項4に記載の電動機において、
前記端部部材は、円形穴が形成されており、
前記複数のティースの全ては、前記露出部として、前記端部部材の前記円形穴から露出する露出部を有し、
前記巻線のコイルエンドは、前記円形穴の内側に配置されている電動機。
【請求項6】
請求項1に記載の電動機において、
前記端部部材は、複数の端部部材で構成され、
前記複数の端部部材は、前記軸方向における前記固定子鉄心の一端部で、前記巻線のコイルエンドを挟んで対向するように配置される電動機。
【請求項7】
請求項6に記載の電動機において、
前記複数の端部部材は、2つの端部部材からなり、
前記2つの端部部材のそれぞれは、前記固定具の挿通部材が挿通する2つの挿通孔を有する電動機。
【請求項8】
請求項6に記載の電動機において、
前記固定具は、前記固定子固定部品に螺合するボルトで構成され、
前記複数の端部部材のそれぞれは、前記固定子鉄心の前記一端部の側から他端部の側に向かって延設された延設部を有し、
前記延設部は、前記固定子固定部品の側面に当接することで、前記ボルトの螺合時における前記端部部材の連れ回りが規制される電動機。
【請求項9】
請求項8に記載の電動機において、
前記複数の端部部材のそれぞれは、前記ボルトが挿通する1つの挿通孔を有する電動機。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の電動機を備えた圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電動機、およびこの電動機を用いた圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、圧縮機構部を駆動する電動機部を、固定子の外周部に回転子を配置したアウターローター構成とし、かつ更に、固定子の固定子積層板はアモルファス合金またはナノ結晶材で形成した構成とした圧縮機が記載されている(要約参照)。特許文献1の圧縮機は、電動機部の固定子積層板を構成するアモルファス合金またはナノ結晶材が持つ低鉄損、高飽和磁束密度により、高回転数領域であっても高い電動機効率、ひいては高い圧縮機効率を発揮することができる(要約参照)。さらに特許文献1の圧縮機では、固定子の両面に、固定子積層板と略同形状の補強板を配しており、これにより、ボルト等の締結具による局所荷重を低減し、固定子積層板の変形や亀裂等を防止することに配慮している(段落0071,0072参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の圧縮機の電動機部(以下、電動機という)では、固定子の両面に配される補強板が、固定子積層板と略同形状である。この場合、巻線を施すティース部上に補強板が重なっているため、補強板の厚み分だけ、巻線の長さが長くなり、巻線抵抗が増加して、銅損が増加することになる。すなわち、特許文献1の電動機は、固定子を固定する締結具による局所荷重を低減することに配慮しているものの、銅損の増加に対する配慮が十分になされていると言えない。なお本発明では、固定子を固定する固定具は締結具に限定されない。このため、締結具を含め、固定具と呼んで説明する。
【0005】
本発明の目的は、電動機において、銅損の増加を抑制しつつ、固定具による局所荷重を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の電動機は、
回転軸を有する回転子と、
ヨークおよび前記ヨークから径方向内側に突出する複数のティースを含み前記回転軸の軸方向に積層部材が積層されて構成される固定子鉄心と、前記ティースに巻回された巻線と、を有する固定子と、
前記軸方向における前記固定子鉄心の一端部に配される端部部材と、
前記固定子が固定具により固定される固定子固定部品と、
を備え、
前記ティースの少なくとも1つは、前記端部部材から露出する露出部を有し、
前記巻線は、前記露出部に巻回されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、巻線長さの増大による銅損増加を招くことなく、固定具により固定子に作用する局所荷重を低減することができる。これにより、省エネ効果の高い電動機を提供することができる。
【0008】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施例(実施例1)に係る電動機の斜視図である。
【
図2】
図1の電動機を回転軸の中心軸線上に分解して示す分解立体図である。
【
図3】
図1の電動機を矢印III方向から見た平面図である。
【
図4】本発明の一実施例(実施例2)に係る電動機の斜視図である。
【
図5】
図4の電動機を回転軸の中心軸線上に分解して示す分解立体図である。
【
図6】
図4の電動機を矢印VI方向から見た平面図である。
【
図7】本発明の一実施例(実施例3)に係る電動機の斜視図である。
【
図8】
図7の電動機を回転軸の中心軸線上に分解して示す分解立体図である。
【
図9】
図7の電動機を矢印IX方向から見た平面図である。
【
図10】固定子鉄心の固定具として用いるリベットの外観を示す斜視図である。
【
図11】固定子鉄心の固定具としてリベット用いた場合の、中心軸線に平行な断面図である。
【
図12】本発明に係る電動機を搭載可能な密閉型圧縮機の断面図である。
【
図13】本発明に係る電動機を搭載した密閉型圧縮機を適用した冷蔵庫の断面図である。
【
図14】本発明に係る電動機を搭載可能なスクロール圧縮機の断面図である。
【
図15】固定鉄心におけるボルトの締め付け方向のねじれの様子(21’はねじれ後の固定鉄心)を示す概念図であり、1つのボルト締結部における軸方向に垂直な平面図である。
【
図16】固定鉄心におけるボルトの締め付け方向のねじれの様子(21’はねじれ後の固定鉄心)を示す概念図であり、軸方向に平行な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る電動機は、例えば空気調和機や冷蔵庫やヒートポンプ式給湯機などの密閉型圧縮機に用いられる家電機器用電動機に用いるのに好適である。本発明は家電機器用電動機に限定される訳ではない。
【0011】
電動機の高効率化の為には、電動機の損失である銅損および鉄損の低減が必要であり、銅損の低減の為には固定子の永久磁石に磁束密度の高い材料を採用し、鉄損低減の為には鉄心の材料としてより低鉄損の電磁鋼板を採用する必要がある。高効率化の為に、電磁鋼板には0.2t~0.5tの薄板を使用し、この薄板を積層して固定子鉄心を構成する。最近では、固定子鉄心の材料としては、アモルファスのような0.1t以下の薄膜の電磁鋼帯を固定子鉄心の材料として採用する研究が行われている。薄膜の電磁鋼帯を使用することで、鉄損を電磁鋼板時に比べ、1/10以下に低減することができ、大きく省エネに貢献できる。
【0012】
電動機では、鉄心の材料として薄膜の電磁鋼帯を使用することで、鉄損を低減することができ、省エネに貢献することができる一方で、課題として、剛性の弱さが挙げられる。剛性の弱さに係る課題は、薄膜の電磁鋼帯に限らず、電磁鋼板を薄型化することによっても生じる。以下の説明では、電磁鋼帯および電磁鋼板を区別することなく、固定鉄心積層部材、または単に積層部材と呼んで説明する。
【0013】
各実施例および各図面について、同様な構成には同じ符号を付し、重複する説明を省略する。また同じ符号を付した構成であっても、異なる部分のある場合には、適宜、説明を行う。
【0014】
以下の説明では、電動機1の回転軸(シャフト)32を基準にして、回転軸32の中心軸線(軸心)に沿う方向を「軸方向」と呼び、回転軸32の中心軸線に直交する方向を「径方向」と呼ぶことにする。
【0015】
[実施例1]
図1乃至
図3を参照して、本発明に係る電動機1について説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施例(実施例1)に係る電動機1の斜視図である。
本実施例の電動機1は、固定子2と、固定子2の内側に配置された回転子3と、回転子鉄心21の端部(端面)に配置された端部部材4と、回転子3の軸受部品5と、固定子2を固定部に固定する固定具6と、を有する。固定子2は、固定子鉄心21と、固定子鉄心21に巻回された巻線22と、を有する。回転子3は、図示しない磁石を保持した回転子鉄心31と、回転子鉄心31に接続された回転軸32と、を有する。端部部材4は、固定子鉄心21の軸方向両端部に配される部材であり、固定子鉄心21を補強する部材(補強部材)である。軸受部品5は、回転軸32を回転可能に支持する軸受が設けられる部品であり、固定子2が固定される固定部(固定子固定部)51を有する。固定具6は、固定子2を軸受部品5に設けられた固定子固定部51に固定する部品であり、本実施例ではボルト61と座金62とを有する。
【0017】
なお軸受部品5は、固定子2が固定される部品であることから、固定子固定部品と呼んで説明する場合がある。
【0018】
固定子鉄心21は、電磁鋼帯または電磁鋼板等の積層部材211が軸方向に積層されて構成される。固定子鉄心21の軸方向両端部には端部部材4が配される。すなわち、
図1の紙面上において、固定子鉄心21の上端面側(反軸受部品5側)には端部部材(第1端部部材)41Aが配され、固定子鉄心21の下端面側(軸受部品5側)には端部部材(第2端部部材)42Aが配される。
【0019】
図2は、
図1の電動機1を回転軸32の中心軸線上に分解して示す分解立体図である。
固定子2、端部部材4および軸受部品5は、
図1の紙面上、上側(反軸受部品5側)から下側(軸受部品5側)に向かって、第1端部部材41A、固定子2、第2端部部材42A、および軸受部品5の順番に配置され、固定具6によって一体的に固定されている。回転子3は、回転軸32が軸受部品5の軸受に回転可能に軸支され、回転子鉄心31が固定子2の内側(内部)に配置されている。
【0020】
軸受部品5には固定子2が固定される固定子固定部51が設けられており、ボルト61が第1端部部材41A、固定子2の固定子鉄心21および第2端部部材42Aを挿通して固定子固定部51に固定されることで、固定子2は第1端部部材41Aおよび第2端部部材42Aと共に、軸受部品5に固定される。このために、第1端部部材41A、固定子鉄心21および第2端部部材42Aのそれぞれには、ボルト61が挿通する挿通孔412、212および422が設けられている。
【0021】
なお、ボルト61は挿通孔412、212および422を挿通する部材であることから、挿通部材と呼んで説明する場合がある。
【0022】
本実施例では、軸受部品5は略矩形状に形成され、固定子固定部51は略矩形状を成す軸受部品5の4つの角部に設けられている。ここで、軸受部品5の形状を略矩形状と説明したのは、矩形状の角部に面取り部53が形成されているためである。
【0023】
第1端部部材41A、固定子鉄心21および第2端部部材42Aも略矩形状に形成され、挿通孔412、212および422は略矩形状を成す第1端部部材41A、固定子鉄心21および第2端部部材42Aの角部に設けられている。ここで、第1端部部材41A、固定子鉄心21および第2端部部材42Aの形状を略矩形状と説明したのは、軸受部品5と同様に、矩形状の角部に面取り部413、218aおよび423が形成されているためである。
【0024】
本実施例では、固定具6はボルト61で構成され、軸受部品5の固定子固定部51にはボルト61が螺合する雌ネジ52が形成されている。すなわち、第1端部部材41A、固定子鉄心21および第2端部部材42Aは、ボルト61で、軸受部品5の固定子固定部51に締結されている。
【0025】
第1端部部材41Aおよび第2端部部材42Aにはそれぞれ、円形の穴(開口)411Aおよび421Aが形成されており、固定子2の巻線22は第1端部部材41Aの円形穴(開口)411Aの内側および第2端部部材42Aの円形穴(開口)421Aの内側に配置されている。
【0026】
図3は、
図1の電動機1を矢印III方向から見た平面図である。すなわち
図3は、電動機1を中心軸線1aに垂直な平面に投影した平面図である。
【0027】
本実施例の第1端部部材41Aには円形穴(開口)411Aが形成され、第2端部部材42Aには円形穴(開口)421Aが形成されている。第1端部部材41Aは、
図3の紙面上、上側(反軸受部品5側)から固定子鉄心21の上端面に取り付けられ、第2端部部材42Aは、
図3の紙面上、下側(軸受部品5側)から固定子鉄心21の下端面に取り付けられる。それ以外については、第1端部部材41Aと第2端部部材42Aとは同様に構成されるため、以下、第1端部部材41Aについて説明する。
【0028】
固定子鉄心21は、外周部のヨーク216から中心軸線1aに向かう方向(以下、中心方向)に向かって突状に設けられたティース213を有する。ティース213の先端部は回転子鉄心31の外周面に対向している。ティース213は点線215で示す位置から径方向内側に設けられている。すなわち、ティース213は点線215から径方向内側に突出しており、点線215から径方向外側の部分は円環状のヨーク216となる。
【0029】
ティース213は中心軸線1aを中心とする周方向に複数設けられており、隣り合う2つのティース213の間にスロット214が形成される。巻線22は、周方向においてはスロット214を埋めるように、軸方向においては固定子鉄心21の端面からはみ出すようにして、ティース213に巻回される。巻線22の固定子鉄心21の端面からはみ出した部分はコイルエンドと呼ばれる。
【0030】
第1端部部材41Aは、円形穴411Aが設けられていることで、固定子鉄心21の、巻線22が巻回されている領域に対して径方向外側(外周側)で、固定子鉄心21の端面を覆う。この場合、巻線22は、円形穴411Aの内側に配置され、第1端部部材41Aよりも軸方向において反軸受部品5側に飛び出している。すなわち巻線22のコイルエンドは、第1端部部材41Aよりも軸方向において反軸受部品5側に飛び出している。
【0031】
本実施例では、第1端部部材41Aは、
図3の平面図上において、巻線22と重複する範囲に第1端部部材41Aは存在しない。すなわちティース217には、第1端部部材41Aから露出する露出部が構成されており、この露出部に巻線22が巻回されている。巻線22の巻回領域を広げて巻き数を多くするためには、ティース217の全体が第1端部部材41Aから露出していることが好ましい。このためには、円形穴411Aの内周縁がティース217とヨーク216との境界215、すなわちティース217とヨーク216との接続部(接続位置)215と一致しているか、境界215よりも径方向外側(外周側)に位置していることが好ましい。すなわち、中心軸線1aを中心とする円形穴411Aの半径R411Aは、ティース217とヨーク216との境界215の半径R215以上の大きさにすることが好ましい(R411A≧R215)。
【0032】
なお固定具6は、第1端部部材41Aの円形穴(開口)411Aよりも径方向外側(外周側)に、配置されている。
【0033】
図15および
図16を参照して、固定具6としてボルト61を用いた場合の、積層部材211における課題を説明する。
図15は、固定鉄心21におけるボルト61の締め付け方向のねじれの様子(21’はねじれ後の固定鉄心)を示す概念図であり、1つのボルト締結部6における軸方向に垂直な平面図である。
図16は、固定鉄心21におけるボルト61の締め付け方向のねじれの様子を示す概念図であり、軸方向に平行な平面図である。
なお
図15および
図16では、本実施例の端部部材4(41A,42A)を設けない場合の構成を図示している。
【0034】
積層部材211を積層した固定子鉄心21では、剛体としての強度が弱く、ボルト61の座面の回転による摩擦で軸方向端部に配された数枚の積層部材211が座面の回転方向に歪んでしまったり、ボルト61の締め付け時の軸力が、複数個所(本実施例では4カ所)の座面に集中したりする。このため、ボルト61の軸力を受けている部位と受けていない部位との間で、たわみが発生する。
【0035】
ボルト41の締め付けにより、積層部材211に
図15および
図16に示すようなゆがみが生じ、このゆがみにより固定子2の内径が変形する虞がある。固定子2の内径が変形すると、固定子2と回転子3との間の隙間が周方向および軸方向で不均一となり、電動機1の性能低下および騒音の増加を招くことになる。さらに、ボルト41の締め付けにより、固定子鉄心21に圧縮応力が加わると鉄損が増加する。そのため、積層部材211のゆがみを抑え応力の発生を抑制することで、電動機1の性能の悪化を抑制する必要がある。
【0036】
また、ボルト41の座面の回転による摩擦力を直接受ける、軸方向端部に配される積層部材211では、ボルト61の締め付け時におけるボルト締め付け方向のねじれにより、積層部材211の破断が生じることも懸念される。積層部材211に破断が生じると磁気回路が途切れることになり、電動機1の性能低下を招くことになる。
【0037】
本実施例では、端部部材4(41A,42A)を設けることで、積層部材211の広い面積でボルト41の軸力を受けることができ、積層部材211のたわみを抑制することができる。
【0038】
また、端部部材41A,42Aのそれぞれには複数の挿通孔412,422が設けられて複数のボルト61が挿通することで、ボルト61の締め付け時に、端部部材41A,42Aの連れ回りが規制される。すなわち端部部材41A,42Aのそれぞれは、固定子固定部品(軸受部品)5に対する複数の固定部(挿通孔)412,422を有し、複数の固定部(挿通孔)412,422にボルト61が挿通していることで、ボルト61の螺合に伴う端部部材41Aの回転(連れ回り)が規制される。端部部材41A,42Aの挿通孔412,422とボルト61とは端部部材41A,42Aの回転を規制する規制部を構成する。さらに端部部材41A,42Aにより、ボルト41の締め付け力は積層部材211に直接伝達されなくなる。これらの作用効果により、積層部材211のゆがみが抑制され、固定子2の内径の変形が抑制される。
【0039】
またボルト61の締結部に発生する局所荷重を低減することができ、固定子鉄心21に圧縮応力が加わるのを抑制して鉄損の増加を抑制することができる。
【0040】
さらに、端部部材41Aの連れ回りが規制されると共に、ボルト61の締め付け力が積層部材211に直接伝達されることがなくなることで、軸方向端部に配される積層部材211に作用するボルト締め付け方向のねじれを抑制することができ、積層部材211の破断を防止することができる。
【0041】
積層部材211のねじれや破断に係る課題は、特に薄型化された電磁鋼帯の場合に生じ易く、積層部材211として電磁鋼帯を用いた場合に、端部部材4(41A,42A)の効果が大きくなる。
【0042】
一方で、端部部材4(41A,42A)を設ける場合には、巻線22を施すティース217上に端部部材4(41A,42A)が重なっていると、端部部材4の厚み分だけ、巻線22の長さが長くなり、巻線抵抗が増加して、銅損が増加する。本実施例では、端部部材4で固定子鉄心21を覆う範囲を上述した範囲に限定したことにより、巻線長さの増加を抑制することができ、銅損の増加を抑制することができる。
【0043】
以上のことから、本実施例では、電動機1において、銅損の増加を抑制しつつ、固定具6による局所荷重を低減することができる。
【0044】
巻線22の長さを最短にするためには、第2端部部材42Aも第1端部部材41Aと同様に構成されることが好ましい。しかし、第1端部部材41Aまたは第2端部部材42Aのいずれか一方が上述した様に構成されていれば巻線22の長さを短くすることができる。従って第2端部部材42Aと第1端部部材41Aとが同様に構成される必要はない。本実施例では、第2端部部材42Aも第1端部部材41Aと同様に、上述した様に構成されるものとする。
【0045】
[実施例2]
図4乃至
図6を参照して、本発明に係る電動機1の第2実施例(実施例2)について説明する。
図4は、本発明の一実施例(実施例2)に係る電動機の斜視図である。
図5は、
図4の電動機を回転軸の中心軸線上に分解して示す分解立体図である。
図6は、
図4の電動機を矢印VI方向から見た平面図である。なお
図6は、電動機1を中心軸線1aに垂直な平面に投影した平面図である。
【0046】
本実施例では、端部部材4の構成が実施例1と異なり、その他の構成は実施例1と同様であるため、以下、実施例1と異なる端部部材4の構成について説明する。
【0047】
図4の紙面上において、固定子鉄心21の上端面側(反軸受部品5側)には第1端部部材として2つの端部部材41B1,41B2が配され、固定子鉄心21の下端面側(軸受部品5側)には第2端部部材として2つの端部部材42B1,42B2が配される。
【0048】
図5に示すように、2つの第1端部部材41B1,41B2には、それぞれ2つの挿通孔412が設けられ、第1端部部材41B1および41B2はそれぞれ2つのボルト61により軸受部品5の2つの固定子固定部51に固定される。このため本実施例の2つの第1端部部材41B1,41B2においても、実施例1と同様に、ボルト61の締め付け時に第1端部部材41B1,41B2の連れ回りが規制される。
【0049】
また、2つの第2端部部材42B1,42B2には、それぞれ2つの挿通孔422が設けられ、第2端部部材42B1および42B2のそれぞれは、2つのボルト61により軸受部品5の2つの固定子固定部51に固定される。第2端部部材42B1,42B2の面積は、軸受部品5の2つの固定子固定部51よりも広い面積である。このため本実施例の2つの第2端部部材42B1,42B2においても、実施例1と同様に、ボルト61の締め付け時に、締結部に発生する局所荷重を低減することができ、固定子鉄心21に圧縮応力が加わるのを抑制して鉄損の増加を抑制することができる。
【0050】
2つの第1端部部材41B1,41B2のうち一方の第1端部部材41B1は、2つの第2端部部材42B1,42B2のうち一方の第2端部部材42B1と共に、軸受部品5の4つの固定子固定部51のうち同じ2つの固定子固定部51に固定される。他方の第1端部部材41B2は、他方の第2端部部材42B2と共に、軸受部品5の4つの固定子固定部51のうち、第1端部部材41B1および第2端部部材42B1が固定される2つの固定子固定部51とは異なる2つの固定子固定部51に固定される。
【0051】
第1端部部材41B1および第1端部部材41B2はそれぞれ、略矩形状を成す軸受部品5の対向する二辺に沿って長手方向を有する形状を成し、長手方向の両端部に挿通孔412が設けられている。第1端部部材41B1と第1端部部材41B2とは、巻線22のコイルエンドを挟んで対向するように、配置される。第1端部部材41B1および第1端部部材41B2のそれぞれには、巻線22のコイルエンドを避けるように、円弧形状部411Bが形成されている。
【0052】
第2端部部材42B1および第2端部部材42B2はそれぞれ、略矩形状を成す軸受部品5の対向する二辺に沿って長手方向を有する形状を成し、長手方向の両端部に挿通孔422が設けられている。第2端部部材42B1と第2端部部材42B2とは、巻線22のコイルエンドを挟んで対向するように、配置される。第2端部部材42B1および第2端部部材42B2のそれぞれには、巻線22のコイルエンドを避けるように、円弧形状部421Bが形成されている。
【0053】
図6の平面図上において、巻線22と重複する範囲に第1端部部材41B1,41B2は存在しない。
第1端部部材41B1の円弧形状部411Bと第1端部部材41B2の円弧形状部411Bとは、同一円411B1の円周上に配置されている。
【0054】
本実施例では、円411B1の半径R411B1は、ティース213とヨーク216との境界215の半径R215以上の大きさを有する(R411B1≧R215)。半径R411B1と半径R215とが等しい場合(R411B1=R215)、第1端部部材41B1の円弧形状部411Bと第1端部部材41B2の円弧形状部411Bとは、ティース213とヨーク216との境界(接続部)215と一致する。半径R411B1が半径R215よりも大きい場合(R411B1>R215)、全てのティース213において、その全体が第1端部部材41B1,41B2から露出する。
【0055】
巻線22の長さを短くするためには、いずれか1つのティース213の、巻線22の巻回部において、巻線22とティース213との間に第1端部部材41B1,41B2が介在しないようにすればよい。この場合、半径R411B1を半径R215よりも小さくしても、2つに分割された第1端部部材41B1,41B2によって覆われないティース213が少なくとも1つは存在することになる。従って本実施例の場合、半径R411B1を半径R215よりも小さくすることも可能である。
【0056】
巻線22の長さを最短にするためには、全てのティース213の、巻線22の巻回部において、巻線22とティース213との間に第1端部部材41B1,41B2が介在しないようにすることが好ましい。この場合、全てのティース213の、巻線22の巻回部を第1端部部材41B1,41B2から露出させることが好ましい。この場合、円411B1の半径R411B1は、ティース217とヨーク216との境界215の半径R215以上の大きさを有するようにするとよい。
【0057】
巻線22の長さを最短にするためには、第2端部部材42B1,42B2も第1端部部材41B1,41B2と同様に構成されることが好ましい。しかし、第1端部部材41B1,41B2または第2端部部材42B1,42B2のいずれか一方が上述した様に構成されていれば巻線22の長さを短くすることができる。従って第2端部部材42B1,42B2と第1端部部材41B1,41B2とが同様に構成される必要はない。本実施例では、第2端部部材42B1,42B2も第1端部部材41B1,41B2と同様に、上述した様に構成されるものとする。
【0058】
本実施例の第1端部部材41B1,41B2および第2端部部材42B1,42B2は、実施例1の第1端部部材41Aおよび第2端部部材42Aと同様な作用効果を奏することができる。さらに本実施例の第1端部部材41B1,41B2および第2端部部材42B1,42B2は、実施例1の第1端部部材41Aおよび第2端部部材42Aと同等の機能を有しながら、それぞれ2つの部材に分割されることで、固定子鉄心21上に占める面積または体積を小さくすることができる。このため本実施例では、実施例1に対して、固定子鉄心21の近傍に配される他の部品との干渉を避けることが容易になるという利点を有する。
【0059】
[実施例3]
図7乃至
図9を参照して、本発明に係る電動機1の第3実施例(実施例3)について説明する。
図7は、本発明の一実施例(実施例3)に係る電動機の斜視図である。
図8は、
図7の電動機を回転軸の中心軸線上に分解して示す分解立体図である。
図9は、
図7の電動機を矢印IX方向から見た平面図である。なお
図9は、電動機1を中心軸線1aに垂直な平面に投影した平面図である。
【0060】
本実施例では、端部部材4の構成が実施例1および実施例2と異なり、その他の構成は実施例1および実施例2と同様であるため、以下、実施例1および実施例2と異なる端部部材4の構成について説明する。
【0061】
図7の紙面上において、固定子鉄心21の上端面側(反軸受部品5側)には第1端部部材として4つの端部部材41C1~41C4が配され、固定子鉄心21の下端面側(軸受部品5側)には第2端部部材として4つの端部部材42C1~42C4が配される。
【0062】
固定子鉄心21の下端面側に配される第2端部部材42C1~42C4は、第1端部部材41C1~41C4と同様に構成されるため、以下、第1端部部材41C1~41C4について説明する。
【0063】
図8に示すように、本実施例の第1端部部材41C1~41C4は、4つの固定具6ごとに分割されている。4つの第1端部部材41C1~41C4には、それぞれ1つの挿通孔412が設けられている。なお、4つの第2端部部材42C1~42C4には、挿通孔422が設けられている。
【0064】
図9の平面図上において、巻線22と重複する範囲に第1端部部材41C1~41C4は存在しない。第1端部部材41C1~41C4は、最も径方向内側に位置する部位が中心軸線1aを中心とする円411Cの円周上にある。
【0065】
本実施例では、円411Cの半径R411Cは、ティース213とヨーク216との境界215の半径R215以上の大きさを有する(R411C≧R215)。半径R411Cと半径R215とが等しい場合(R411C=R215)、第1端部部材41C1~41C4の、最も径方向内側に位置する部位は、ティース213とヨーク216との境界(接続部)215と一致する。半径R411Cが半径R215よりも大きい場合(R411C>R215)、全てのティース213において、その全体が第1端部部材41C1~41C4から露出する。
【0066】
巻線22の長さを短くするためには、いずれか1つのティース213の、巻線22の巻回部において、巻線22とティース213との間に第1端部部材41C1~41C4が介在しないようにすればよい。この場合、半径R411Cを半径R215よりも小さくしても、4つに分割された第1端部部材41C1~41C4によって覆われないティース213が少なくとも1つは存在することになる。従って本実施例の場合、半径R411Cを半径R215よりも小さくすることも可能である。
【0067】
巻線22の長さを最短にするためには、全てのティース213の、巻線22の巻回部において、巻線22とティース213との間に第1端部部材41C1~41C4が介在しないようにすることが好ましい。この場合、全てのティース213の、巻線22の巻回部を第1端部部材41C1~41C4から露出させることが好ましい。この場合、円411Cの半径R411Cは、ティース217とヨーク216との境界215の半径R215以上の大きさを有するようにするとよい。
【0068】
巻線22の長さを最短にするためには、第2端部部材42C1~42C4も第1端部部材41C1~41C4と同様に構成されることが好ましい。しかし、第1端部部材41C1~41C4または第2端部部材42C1~42C4のいずれか一方が上述した様に構成されていれば巻線22の長さを短くすることができる。従って第2端部部材42C1~42C4と第1端部部材41C1~41C4とが同様に構成される必要はない。本実施例では、第2端部部材42C1~42C4も第1端部部材41C1~41C4と同様に、上述した様に構成されるものとする。
【0069】
第1端部部材41C2を例にとって、第1端部部材の構成を詳細に説明する。第1端部部材41C2には、
図7および
図8に示すように、この第1端部部材41C2が覆う、固定子鉄心21の一端面218e側から他端面218f側に向かって延設された延設部41Ca,41Cb,41Ccが設けられている。延設部41Caは、矩形状を成す軸受部品5の角部に設けられた面取り部218aと対向する。延設部41Cbは、面取り部218aに接続される軸受部品5の一方の側面218bと対向する。延設部41Ccは、面取り部218aに接続される軸受部品5の他方の側面218cと対向する。
【0070】
第1端部部材41C2が固定具(ボルト)61によって固定子鉄心21と締結される際に、3つの延設部41Ca,41Cb,41Ccのうち少なくともいずれか1つの延設部は、軸受部品5の面取り部218a、側面218bまたは側面218cの少なくともいずれか1つと接触する。すなわち固定具(ボルト)61の締結時に、延設部41Caと面取り部218aとの接触、延設部41Cbと側面218bとの接触、または延設部41Ccと側面218cとの接触のうち、少なくともいずれか1つの接触が起こる。これにより、固定具(ボルト)61の締結時における第1端部部材41C2の連れ回りを防止することができる。
【0071】
この場合、第1端部部材41C2は、3つの延設部41Ca,41Cb,41Ccのうち少なくとも2つの延設部を備えていれば、固定具(ボルト)61の締結時における第1端部部材41C2の連れ回りを防止することができる。第1端部部材41C2は、特に延設部41Caを備えることなく、2つの延設部41Cb,41Ccを備える場合に、これらの延設部41Cb,41Ccを確実に2つの側面218b,218cに当接させた状態で、固定具(ボルト)61の締結を行うことができる。
【0072】
本実施例では、第2端部部材42B1,42B2も第1端部部材41B1,41B2と同様に構成される。
【0073】
本実施例でも、実施例1および実施例2と同様な作用効果を奏することができる。本実施例の第1端部部材41C1~41C4および第2端部部材42C1~42C4は、実施例1および実施例2の端部部材4と同等の機能を有しながら、それぞれ4つの部材に分割されることで、固定子鉄心21上に占める面積または体積を実施例2の端部部材4よりもさらに小さくすることができる。このため本実施例では、実施例1および実施例2の端部部材4に対して、固定子鉄心21の近傍に配される他の部品との干渉を避けることが容易になるという利点を有する。
【0074】
実施例1~3の端部部材4は、高い剛性を有する鉄などの金属材料が望ましいが、ボルト61などによる締結に耐えられ、補強効果も十分に得られるのであれば、樹脂材料でもよい。金属材料を選択する場合は、磁気回路への影響が小さい、SUS材、亜鉛、真鍮などの非磁性の材料を選択すると尚良い。
【0075】
[変更例]
図10および
図11を参照して、実施例1乃至実施例3に適用可能な変更例を説明する。
図10は、固定子鉄心21の固定具6として用いるリベット63の外観を示す斜視図である。
図11は、固定子鉄心21の固定具6としてリベット63用いた場合の、中心軸線1aに平行な断面図である。
【0076】
固定具6として、ボルト61の代りにリベット63を用いることができる。リベット63は頭部631と軸部632とを有し、頭部631は軸部632に対して拡径されている。
【0077】
第1端部部材41および第2端部部材42は、実施例1乃至実施例3の第1端部部材および第2端部部材を用いることができる。
【0078】
軸受部品5の固定子固定部51には雌ネジ52ではなく、リベット63が挿通する挿通孔54が形成されている。リベット63は、固定子固定部51の挿通孔54、第2端部部材42の挿通孔422、固定子鉄心21の挿通孔212および第1端部部材41の挿通孔412を挿通して、先端部633が加締められることで、固定子鉄心21が第1端部部材41および第2端部部材42と共に固定子固定部51に固定される。
【0079】
なお、リベット63は挿通孔54,422,212および412を挿通する部材であることから、挿通部材と呼んで説明する場合がある。
【0080】
本例では、ボルト61による締結とは異なり、固定子鉄心21や第1端部部材41および第2端部部材42に、これらの部材を回転させる力が作用しない。このため、固定子2の内径の変形や、積層部材211の破断の発生を抑制することができる。
【0081】
[電動機1の適用例]
図12乃至
図14を参照して、電動機1を適用可能な製品について説明する。
【0082】
図12は、本発明に係る電動機1を搭載可能な密閉型圧縮機1000の断面図である。
この密閉型圧縮機(密閉型電動圧縮機)1000は、密閉容器1001内の中心部に縦軸にシャフト1010を配置し、下部に配置した電動機1007が上部に配置した圧縮要素1006を回転駆動する構成になっている。圧縮要素1006は、フレーム1003と一体的に成形されたシリンダ1004内をピストン1005が往復動するレシプロ式の圧縮機で構成される。シャフト1010の回転中心から偏心した位置には、クランクピン1011が設けられており、ピストン1005を往復動させる。圧縮要素1006の下部に配置される電動機1007は、固定子2及び回転子3を有している。
【0083】
シャフト1010は、フレーム1003の中間部に保持された軸受部1002を貫通してフレーム1003の下方及び上方へ延在しており、フレーム1003の上方側にクランクピン1011が位置している。シャフト1010の下部には回転子3が固定して取り付けられている。電動機1007の固定子2と回転子3との間で発生する動力によってシャフト1010が回転する。クランクピン1011とピストン1005との間はコンロッド1012で連結されており、クランクピン1011の回転運動がコンロッド1012を介してピストン1005の往復動に変換される。
【0084】
密閉容器1001内の底部には、潤滑油1014が貯留されている。潤滑油1014は、シャフト1010が回転すると、シャフト1010の下端部に取り付けられた給油ピース1020のポンプ作用により、給油ピース1020の上端部からシャフト1010内に形成された潤滑油通路1022を通ってシャフト1010の外周部に導かれる。その後、シャフト1010の外周部に形成された外周螺旋溝1021から再びシャフト1010内に入り、シャフト1010の上端部から潤滑油1014の流れとして噴出する。
【0085】
この潤滑油1014の流れの一部がシリンダ1004の内部に流入する。シリンダ1004の頂部(ピストン1005の上死点側)の開口端面は、弁座1015によって閉塞されると共に、バルブカバー(弁座カバー)1016で覆われている。電動機1007に通電してシャフト1010を回転駆動すると、コンロッド1012とボールジョイント機構部1012eとを介してピストン1005がシリンダ1004内を往復動する仕組みになっている。
【0086】
このような密閉型圧縮機1000の電動機1007として、上述した実施例1~3に係る電動機1を適用することで、密閉型圧縮機1000の省エネ化を図ることができる。
【0087】
図13は、本発明に係る電動機1を搭載した密閉型圧縮機2050を適用した冷蔵庫2000の断面図である。
図13に示すように、冷蔵庫2000は、冷蔵庫本体2061を複数の収納室2062,2063,2064,2065に分けて構成されている。例えば、収納室2062は冷蔵室、収納室2063は上段冷凍室、収納室2064は下段冷凍室、収納室2065は野菜室である。なお、各収納室2062,2063,2064,2065の位置関係は
図13の限りではない。密閉型圧縮機2050は、収納室2065の引出し2065aの奥側下部(冷蔵庫本体2061の背面側の最下部)の機械室に配置されている。密閉型圧縮機2050から吐出された冷媒は、冷蔵庫2000内に設けられた凝縮器(不図示)、減圧機構(不図示)を通り、冷却器2066で冷蔵庫内の熱を吸収して、再び密閉型圧縮機2050内へと戻される。
【0088】
このような密閉型圧縮機2050の電動機として、上述した実施例1~3に係る電動機1を適用することで、密閉型圧縮機2050および冷蔵庫2000の省エネ化を図ることができる。
【0089】
図14は、本発明に係る電動機1を搭載可能なスクロール圧縮機3000の断面図である。
スクロール圧縮機3000は、密閉容器3001の内部に、電動機3002と、電動機3002により駆動される旋回スクロール3011と固定スクロール3012とを有している。これらスクロール3011,3012の間で吸込みパイプ3017より吸い込まれた冷媒は圧縮される。圧縮された冷媒は吐出パイプ3016より冷凍サイクルへ排出される。フレーム3013は密閉容器3001に溶接により締結されている。電動機3002は、固定子3002aと回転子3002bとから構成されている。固定子3002aは密閉容器3001に固定され、回転子3002bはシャフト3015に圧入固定されている。
【0090】
このようなスクロール圧縮機3000の電動機3002として、上述した実施例1~3に係る電動機1を適用することで、スクロール圧縮機3000の省エネ化を図ることができる。
【0091】
上述した電動機1の特徴を整理すると、以下のようになる。
(1)電動機1は、
回転軸32を有する回転子3と、
ヨーク216およびヨーク216から径方向内側に突出する複数のティース213を含み回転軸32の軸方向に積層部材211が積層されて構成される固定子鉄心21と、ティース213に巻回された巻線22と、を有する固定子2と、
軸方向における固定子鉄心21の一端部に配される端部部材41A,41B1,41B2,41c1~41c4と、
固定子2が固定具6により固定される固定子固定部品5と、
を備え、
ティース213の少なくとも1つは、端部部材41A,41B1,41B2,41c1~41c4から露出する露出部を有し、
巻線22は、前記露出部に巻回されている。
【0092】
(2)(1)において、複数のティース213の全ては、端部部材41A,41B1,41B2,41c1~41c4から露出する露出部を有する電動機。
【0093】
(3)(2)において、複数のティース213は、ヨーク216との接続部から、回転子3と対向する先端側まで、端部部材41A,41B1,41B2,41c1~41c4から露出して前記露出部が構成されている。
【0094】
(4)(1)において、端部部材41A,41B1,41B2は、複数の固定具により固定子固定部品5に固定されている。
【0095】
(5)(4)において、
端部部材41Aは、円形穴411Aが形成されており、
複数のティース213の全ては、前記露出部として、端部部材41Aの円形穴411Aから露出する露出部を有し、
巻線22のコイルエンドは、円形穴411Aの内側に配置されている。
【0096】
(6)(1)において、
端部部材は、複数の端部部材41B1,41B2,41c1~41c4で構成され、
複数の端部部材41B1,41B2,41c1~41c4は、軸方向における固定子鉄心21の一端部で、巻線22のコイルエンドを挟んで対向するように配置される。
【0097】
(7)(6)において、
複数の端部部材は、2つの端部部材41B1,41B2からなり、
2つの端部部材41B1,41B2のそれぞれは、固定具6の挿通部材61,63が挿通する2つの挿通孔412を有する。
【0098】
(8)(6)において、
固定具6は、固定子固定部品5に螺合するボルト61で構成され、
複数の端部部材41c1~41c4のそれぞれは、固定子鉄心21の一端部218eの側から他端部218fの側に向かって延設された延設部41Ca,41Cb,41Ccを有し、
延設部41Ca,41Cb,41Ccは、固定子固定部品5の側面(218a,218b,218cのいずれか)に当接することで、ボルト61の螺合時における端部部材41c1~41c4の連れ回りが規制される。
【0099】
(9)(8)において、複数の端部部材41c1~41c4のそれぞれは、ボルト61が挿通する1つの挿通孔412を有する。
【0100】
(10)圧縮機は(1)~(9)のいずれかに記載の電動機1を備える。
【0101】
なお、本発明は上記した各実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0102】
1…電動機、2…固定子、3…回転子、5…固定子固定部品、6…固定具、21…固定子鉄心、22…巻線、32…回転軸、41A,41B1,41B2,41c1~41c4…端部部材、41Ca,41Cb,41Cc…端部部材41c1~41c4の延設部、61…固定具6の挿通部材(ボルト)、63…固定具6の挿通部材(リベット)、211…積層部材、213…ティース、216…ヨーク、218a,218b,218c…固定子固定部品5の側面、218e…固定子鉄心21の一端部、218f…固定子鉄心21の他端部、411A…端部部材41Aの円形穴、412…挿通孔。