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特開2024-33815エレベーター保守支援システム及びエレベーター保守支援方法、並びにエレベーターの保守支援に用いる保守用端末
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033815
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】エレベーター保守支援システム及びエレベーター保守支援方法、並びにエレベーターの保守支援に用いる保守用端末
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/00 20060101AFI20240306BHJP
   B66B 1/14 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
B66B5/00 G
B66B1/14 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137658
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 一朗
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 洋
【テーマコード(参考)】
3F304
3F502
【Fターム(参考)】
3F304BA26
3F304CA16
3F304EB02
3F304EB07
3F502HB15
3F502JA15
3F502JA18
3F502MA07
(57)【要約】
【課題】エレベーターの各現場、各号機に新たな機構を追加することなく、点検作業者の作業効率を向上させる。
【解決手段】
本発明のエレベーター保守支援システムは、センタ装置10と、エレベーター30と、点検作業者が携帯する保守用端末20とがネットワークで接続され、エレベーターに不停止階が設定されている。
センタ装置10は、点検対象のエレベーターの情報と、保守用端末20から送信された位置情報に基づいて、設定された不停止階の一時解除要否を判定する不停止一時解除モード実行判定部15を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
センタ装置と、エレベーターと、点検作業者が携帯する保守用端末とがネットワークで接続され、不停止階が設定されたエレベーター保守支援システムであって、
前記センタ装置は、点検対象のエレベーターの情報と、前記保守用端末から送信された位置情報に基づいて、設定された不停止階の一時解除要否を判定する不停止一時解除モード実行判定部を備えたことを特徴とするエレベーター保守支援システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記センタ装置は、点検対象のエレベーターの保守作業内容を計画する作業スケジュール計画部を備えたことを特徴とするエレベーター保守支援システム。
【請求項3】
請求項2において、
前記センタ装置は、エレベーターの不停止階設定情報を記憶する記憶部を備えたことを特徴とするエレベーター保守支援システム。
【請求項4】
請求項1において、
前記保守用端末は、前記点検作業者が入力する入館階情報、若しくはGPS(Global Positioning system)情報を前記位置情報として前記センタ装置に送信することを特徴とするエレベーター保守支援システム。
【請求項5】
請求項3において、
前記不停止一時解除モード実行判定部は、設定された不停止階の一時解除が要と判定した場合、不停止一時解除モード指令を前記エレベーターへ送信し、
前記エレベーターは、前記不停止一時解除モード指令を受信した場合に設定された不停止階の一時解除を実行する不停止一時解除モード実行部を備えたことを特徴とするエレベーター保守支援システム。
【請求項6】
請求項5において、
前記不停止一時解除モード実行部は、前記エレベーターに設置された機器により暗号操作の実施することにより、不停止一時解除モードへ移行するようにしたことを特徴とするエレベーター保守支援システム。
【請求項7】
センタ装置と、エレベーターと、点検作業者が携帯する保守用端末とがネットワークで接続され、不停止階が設定されたエレベーター保守支援方法であって、
点検対象のエレベーターの情報と、前記保守用端末から送信された位置情報に基づいて、設定された不停止階の一時解除要否を判定し、
設定された不停止階の一時解除が要の場合、不停止一時解除モード指令を前記エレベーターへ送信し、設定された不停止階の一時解除を実行することを特徴とするエレベーター保守支援方法。
【請求項8】
ネットワークを介してセンタ装置とエレベーターに接続され、不停止階が設定されたエレベーターの保守支援に用いる保守用端末であって、
前記センタ装置では、点検対象のエレベーターの情報と、点検作業者の位置情報に基づいて、設定された不停止階の一時解除要否が判定され、
前記保守用端末は、前記判定に用いる前記点検作業者の位置情報を送信することを特徴とする保守用端末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベーター保守支援システム及びエレベーター保守支援方法、並びにエレベーターの保守支援に用いる保守用端末に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベーターは、建物内へ第三者が不正に入館することを防止するため、建物のエントランスやエレベーターホールに設置された認証盤にて、例えばICチップを搭載した電子キーや、顔認証・静脈認証などの本人確認を実施し、承認されないと乗りかごを呼ぶことができない仕様(不停止設定付きエレベーター)が一般的になってきている。
【0003】
このような不停止設定付きエレベーターでは、点検・整備作業を行う場合に点検作業者がエレベーターの呼び出しを行えるよう不停止設定を解除する必要がある。不停止設定を解除するエレベーターとして、例えば特許文献1に記載の技術がある。
【0004】
特許文献1には、点検作業者が所有する携帯端末からホールに設置される受信機を介して、エレベーターの制御盤へ不停止解除指令を出力することで、不停止階設定を解除するエレベーターの不停止解除システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-256850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術においては、エレベーターの各号機毎に、不停止設定を解除するための信号を受信する機器が必要となることから、機器設置のために費用が増加する課題があった。
【0007】
また、特許文献1に記載の技術においては、不停止設定が解除されている間、第三者が乗りかごに乗込み、乗りかごが別の階床へ運転しないよう点検作業者が監視する必要があり、作業効率が劣っていた。
【0008】
本発明の目的は、上記課題を解決し、エレベーターの各現場、各号機に新たな機構を追加することなく、点検作業者の作業効率を向上することができるエレベーター保守支援システム及びエレベーター保守支援方法、並びにエレベーターの保守支援に用いる保守用端末を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のレベーター保守支援システムは、センタ装置と、エレベーターと、点検作業者が携帯する保守用端末とがネットワークで接続され、不停止階が設定されたエレベーター保守支援システムであって、
前記センタ装置は、点検対象のエレベーターの情報と、前記保守用端末からの受信した位置情報に基づいて、不停止階設定の一時解除要否を判定する不停止一時解除モード実行判定部を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、エレベーターの各現場、各号機に新たな機構を追加することなく、点検作業者の作業効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施例に係るエレベーター保守支援システム1の全体構成とその機能を示すブロック図である。
図2】本発明の実施例に係るエレベーター保守支援システム1のシーケンス図である。
図3】エレベーター保守支援システム1のエレベーター30が不停止一時解除モードに移行した際のシーケンス図である。
図4】エレベーター保守支援システム1を構成するセンタ装置10、保守用端末20及びエレベーター30のそれぞれに共通するハードウェア構成を示す図である。
図5】不停止階情報のデータの一例を示す図である。
図6】不停止一時解除モードのデータの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施例について説明する。なお、同一の要素については、全ての図において、原則として同一の符号を付している。また、同一の機能を有する部分については、説明を省略する。なお、以下に説明する構成はあくまで実施例に過ぎず、本発明に係る実施様態が、以下の具体的様態に限定されることを意図する趣旨ではない。
【0013】
<エレベーター保守支援システムの構成と機能>
図1図4を参照して、エレベーター保守支援システムの構成とその機能について説明する。図1は、本発明の実施例に係るエレベーター保守支援システム1の全体構成とその機能を示すブロック図である。なお、本実施例でのエレベーターの「不停止」とは、例えばICチップを搭載した電子キーや、顔認証・静脈認証などの本人確認を実施し、承認されないと乗りかごを呼ぶことができない仕様のものを意味するものである。
【0014】
図1に示すように、本実施例のエレベーター保守支援システム1は、センタ装置10、保守用端末20、エレベーター30及び広域ネットワーク40を備えて構成される。
【0015】
すなわち、センタ装置10と保守用端末20とエレベーター30は、広域ネットワーク40を介して接続され、互いの送受信部によりデータ通信が可能な構成になっている。
【0016】
[センタ装置10の構成と機能]
まず、センタ装置10の構成とその機能について説明する。センタ装置10は、複数箇所に存在するエレベーターを統合的に管理する管理装置であって、例えば、サーバとデータベースによって実現される。
【0017】
センタ装置10は、概して点検作業者が整備作業を実施する場所から遠隔の地、例えば点検作業者が所属するメンテナンス会社の建物等に設置される。
【0018】
図1に示すように、センタ装置10は、送受信部11、作業スケジュール計画部12、表示部13、作業者GPS情報処理部14、不停止一時解除モード実行判定部15、顧客通知手段16、及び記憶部17を備えて構成される。
【0019】
送受信部11は、通信インタフェースであり、広域ネットワーク40を介して、保守用端末20及びエレベーター30との間でデータの送受信を行う。
【0020】
作業スケジュール計画部12は、点検作業者の点検作業において、いつ、どの現場を巡回し、点検対象のエレベーターに対し、どのような点検作業を行うのかなどを示す作業指示内容を計画する。作業スケジュール計画部12による作業スケジュールの計画は、点検作業者または点検作業者を管理する管理者によって作成される。作成された作業スケジュールの情報は、記憶部17へ作業スケジュール173として格納される。なお、管理者は、作業スケジュール計画部12により作業スケジュールを作成する際には、記憶部17に記憶されているエレベーター仕様情報171を参照して行う。エレベーター仕様情報171とは、エレベーターの機種や階床数、不停止階設定など、製品仕様に関わる情報やエレベーターが設置される建物の住所や、建物自体のGPS情報等であり、エレベーター毎に異なる。
【0021】
表示部13は、例えば液晶ディスプレイであり、表示機能の他、タブレットパソコンやスマートホンのように、数字や文字情報を入力することができるキーボード機能(入力機能)も備えている。
【0022】
作業者GPS情報処理部14は、点検作業者が携帯する保守用端末20のGPS情報取得部23で得られた位置情報を送受信部11を介して受信し、記憶部17へ作業者GPS情報172として格納する。点検作業者が携帯する複数の保守用端末20から送信されたGPS情報を一度に処理することができる。
【0023】
不停止一時解除モード実行判定部15は、作業スケジュール計画部12で計画された内容と、点検作業者の位置情報を基に、不停止設定の一時解除要否を判定する。なお、不停止一時解除モード実行判定部15における不停止一時解除要否の判定は、後述する図2に示すシーケンス図に従って行われる。また、不停止一時解除モード実行判定部15による判定は、保守用端末20から受信する点検開始連絡により開始する。この点検開始連絡には、保守用端末20で入力された点検作業者が建物に入館した階(点検作業者がいる階の情報)が含まれる。そして、不停止一時解除モード実行判定部15は、設定された不停止階の一時解除が要と判定し、不停止設定の一時解除を実施する際、エレベーター30へ不停止一時解除モードの指令を送信する。この指令には、不停止設定を解除する階の情報が含まれている。
【0024】
顧客通知手段16は、不停止一時解除モード実行判定部15で不停止設定の一時解除が必要と判定され、エレベーター30に対して不停止一時解除モードの指令が行われた際、エレベーターを保守するために不停止設定を解除した旨、当該エレベーターの保守を契約する建物のオーナーや、建物の管理者、乗客等へ通知する手段である。一例として、建物を所有するオーナーや建物の管理者、乗客等が所有するスマートホンに搭載されるアプリケーションやメール等で通知し、点検が開始されたことと合わせて周知する。不停止の設定は、建物を所有するオーナーや建物の管理者が行っているケースがあるため、これを周知するため重要である。
【0025】
記憶部17は、制御プログラム等のソフトウェアやデータを記録するメモリである。記憶部17には、エレベーター仕様情報171、作業者GPS情報172、作業スケジュール173等が格納されている。
【0026】
エレベーター仕様情報171とは、既に述べたように、エレベーターの機種や階床数、不停止階設定情報など、製品仕様に関わる情報やエレベーターが設置される建物の住所や、建物自体のGPS情報等であり、エレベーター毎に異なる。
【0027】
作業者GPS情報172とは、既に述べたように、保守用端末20から送信されたGPS情報であり、GPSを取得した時刻と共に格納されている。
【0028】
作業スケジュール173とは、既に述べたように、管理者が作業スケジュール計画部12により計画し、点検作業者が携帯する保守用端末20に提供する具体的な作業スケジュールである。
【0029】
[保守用端末20の構成と機能]
次に、保守用端末20の構成とその機能について説明する。保守用端末20は、エレベーターの点検・整備作業を行う点検作業者が作業時に携帯する端末である。
【0030】
保守用端末20は、送受信部21、操作表示部22、GPS情報取得部23、エレベーター情報取得部24、点検開始連絡送信部25、及び記憶部26を備えて構成される。
【0031】
送受信部21は、通信インタフェースであり、広域ネットワーク40を介して、センタ装置10及びエレベーター30とデータの送受信を行う。
【0032】
操作表示部22は、例えば液晶ディスプレイであり、表示機能の他、タブレットパソコンや、スマートホンのように、数字や文字情報を入力することが可能なキーボード機能(入力機能)も備えている。
【0033】
GPS情報取得部23は、保守用端末20の位置情報をGPS(Global Positioning system)センサにより取得する機能であり、近年のスマートホンでは標準的に搭載されている。取得されたGPS情報は変化次第逐次、送受信部21を介してセンタ装置10へ送信されている。
【0034】
エレベーター情報取得部24は、エレベーター30に対して、乗りかごの位置やトラブル情報等の情報を取得するための指令を送受信部21を介して送信するものであり、取得したデータは操作表示部22で参照できる。
【0035】
点検開始連絡送信部25は、点検作業者による操作表示部22の操作により、不停止階の解除や点検開始の操作が行われた際、エレベーター30の点検開始連絡を送受信部21を介してセンタ装置10に送信する。その際、点検作業者は建物に入館した階(点検作業者がいる階の情報)を操作表示部22で入力し、点検開始連絡と共に入館した階の情報がセンタ装置10へ送信される。
【0036】
記憶部26は、制御プログラム等のソフトウェアやデータを記録するメモリである。記憶部26には、作業スケジュール261が格納されている。作業スケジュール261とは、センタ装置10の記憶部17に格納される作業スケジュール173のうち、点検作業者が巡回する現場の作業スケジュールであり、作業日の前日など、作業開始前にセンタ装置10から保守用端末20へ自動的にダウンロードされる。
【0037】
[エレベーター30の構成と機能]
次に、エレベーター30の構成とその機能について説明する。ここで示すエレベーター30の構成は、昇降機であるエレベーター30の運行を制御する制御装置としての構成であるので、エレベーター30の機構的な構成の説明は省略する。
【0038】
エレベーター30は、送受信部31、エレベーター制御プログラム32、不停止一時解除モード実行部33、エレベーター制御コマンド処理部34を備えて構成される。
【0039】
送受信部31は、通信インタフェースであり、広域ネットワーク40を介して、センタ装置10及び保守用端末20とデータの送受信を行う。
【0040】
エレベーター制御プログラム32は、エレベーター30のモータ(不図示)を制御して乗りかごを昇降させる制御プログラムである。
【0041】
不停止一時解除モード実行部33は、センタ装置10から送信された不停止一時解除モード実行指令を送受信部31を介して受信した際、前記エレベーター制御プログラム32に対して、不停止設定の一時解除を実行する。なお、不停止一時解除モード実行部33における不停止設定の一時解除は、後述する図3に示すシーケンス図に従って行われる。
【0042】
エレベーター制御コマンド処理部34は、エレベーター30に対して要求された制御コマンドをエレベーター制御プログラム32に対して実行する。ここで制御コマンドとは、保守用端末20から送信されるエレベーター情報(乗りかごの位置やトラブル情報等)の取得指令や、乗りかごに設置される運転盤の行先階を指定するボタンの操作信号などが該当する。
【0043】
本実施例のエレベーター保守支援システム1は上記構成と機能を備えている。
【0044】
<エレベーター保守支援システム1のハードウェア構成>
図4は、エレベーター保守支援システム1を構成するセンタ装置10、保守用端末20及びエレベーター30のそれぞれに共通するハードウェア構成を示す図である。
【0045】
図1で説明したセンタ装置10、保守用端末20及びエレベーター30は、それぞれバス50に接続されたCPU(Central Processing Unit)51、ROM(Read Only Memory)52、RAM(Random Access Memory)53、不揮発性ストレージ54から構成される。
【0046】
CPU51は、センタ装置10、保守用端末20及びエレベーター30の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードをROM52から読み出して演算処理を実行する。RAM53には、CPU51で実行される演算処理の途中で発生した変数等が一時的に書き込まれる。CPU51は、ROM52に記録されているプログラムコードを実行することにより、センタ装置10、保守用端末20及びエレベーター30の機能を実現する。
【0047】
不揮発性ストレージ54は、SSD(Solid State Drive)等の不揮発性のメモリで構成される。この不揮発性ストレージ54には、CPU51が動作するために必要な制御プログラムやデータ等が格納される。また、不揮発性ストレージ54は、センタ装置10の記憶部17、保守用端末20の記憶部26に相当する他、エレベーター30に備えられる不図示の記憶部に相当する。
【0048】
また、センタ装置10、保守用端末20及びエレベーター30は、入力部55と出力部56を備える。センタ装置10の入力部55からは、管理者により作業スケジュール等の入力がなされる。また、センタ装置10の出力部56としては、例えば図1の表示部13が相当する。
【0049】
保守用端末20においては、入力部55と出力部56は、図1の操作表示部22がこれに相当する。
【0050】
なお、図1に示すエレベーター30では、ハードウェアとしての入力部55と出力部56は必ず必要とされるものではない。
【0051】
さらに、センタ装置10、保守用端末20及びエレベーター30は、通信インタフェース(通信部IF)57を備える。通信インタフェース57としては、例えば、NIC(Network Interface Card)等が用いられる。この通信インタフェース57は、センタ装置10の送受信部11、保守用端末20の送受信部21及びエレベーター30の送受信部31がこれに相当する。
【0052】
<不停止階解除の決定>
図2は、本発明の実施例に係るエレベーター保守支援システム1のシーケンス図である。図2では、エレベーター保守支援システム1のセンタ装置10が作業スケジュール173と作業者GPS情報172に基づいて、不停止階の解除を判定する状態を示している。また、図2では、不停止階解除の判定の流れを、点検作業者、保守用端末、エレベーター、センタ装置に分けてチャート化している。
【0053】
以下、図2について、図1の機能ブロック図と関連付けてセンタ装置10が不停止階の解除を判定する流れを説明する。なお、各処理は、センタ装置10、保守用端末20,エレベーター30に備えられたCPU51が実行する。
【0054】
図2に示すように、センタ装置10は記憶部17に格納する作業スケジュール173を保守用端末20へ送信する(ステップS1)。作業スケジュール173は、点検作業者または点検作業者を管理する管理者が作業日の前日までに作業スケジュール計画部12にて作成し、作成後は保守用端末20へ自動的にダウンロードされる。
【0055】
作業スケジュール173を受信した保守用端末20は、作業スケジュール173を受信し、記憶部26に作業スケジュール261として格納する(ステップS2)。作業スケジュール261は、保守用端末20の操作表示部22にて、点検作業者が巡回中に参照可能である。
【0056】
点検作業者はエレベーターの点検・整備作業を行うために、建物内へ入館する。このとき、入館階のエレベーターの階床が不停止に設定されている場合、点検作業者はエレベーターへ乗り込むことができないため、点検を開始することができない。そこで、不停止の設定を解除するため、保守用端末20を操作し、点検開始操作を行う(ステップS3)。このとき、保守用端末20の操作表示部22を操作し、作業を行う現場と入館階を選択する。
【0057】
なお、保守用端末20は、バックグラウンド処理でGPS情報取得部23がGPS情報を逐次取得し、取得の都度、センタ装置10へ送信している(ステップS4)。GPS情報を受信したセンタ装置10の作業者GPS情報処理部14は、記憶部17へ作業者GPS情報172として、GPS情報を記憶部17に格納する(ステップS5)。
【0058】
保守用端末20の操作表示部22で、点検作業者による点検開始操作が行われた場合(ステップS6のYes)、保守用端末20の点検開始連絡送信部25がセンタ装置10に対して、点検開始連絡を送信する。ここで、点検開始操作が行われない場合(ステップS6のNo)、点検開始操作が行われるまで保守用端末20は待機状態となる。点検開始連絡送信部25が送信する点検開始連絡には、点検作業者が操作表示部22で選択した作業現場と入館階の情報が含まれている。
【0059】
保守用端末20から点検開始連絡を受信したセンタ装置10は、不停止一時解除モード実行判定部15の処理を開始する(ステップS8)。不停止一時解除モード実行判定部15は、はじめに顧客通知手段16にて、建物を所有するオーナーや、建物を管理する管理者、乗客へ点検を開始することを通知する(ステップS9)。この通知を行うことで、点検が完了するまで、エレベーターが使用できないことを周知する。
【0060】
次に不停止一時解除モード実行判定部15は、保守用端末20から送信された点検開始連絡に含まれる作業現場の情報を基に、作業スケジュール173で計画される点検予定時刻、およびエレベーター仕様情報171に含まれる建物自体のGPS情報を抽出する。そして、点検作業者が点検予定時刻内に点検を行う作業現場にいることを判定する(ステップS10)。点検作業者が点検を行う作業現場にいることは、保守用端末20から送信された最新の作業者GPS情報172とエレベーター仕様情報171に含まれる建物自体のGPS情報を比較し、おおよそ一致(たとえば誤差5m以内)であれば、作業現場にいると判定し、一致しない場合は作業現場にいないと判定する。判定で作業現場にいないと判定された場合、処理を終了する(ステップS10のNo)。処理終了後、管理者・点検作業者により作業スケジュールが再度計画される。
【0061】
ステップS10の判定で作業現場にいると判定された場合(ステップS10のYes)、不停止一時解除モード実行判定部15は、エレベーター仕様情報171に含まれる不停止階情報を取得する。この不停止階情報は、建物の階床毎に不停止が設定されているか、未設定かが判別できる。
【0062】
ここで、不停止階情報について説明する。図5は、不停止階情報のデータの一例を示す図である。図5に示すように、1号機エレベーターは1階~3階が不停止階に設定されており、2号機エレベーターは途中階である4階~5階が不停止階に設定されており、3号機エレベーターは6階~7階が不停止階に設定されている。エレベーター仕様情報171には、図5に示すような不停止階情報が含まれている。
【0063】
図2に戻り、不停止一時解除モード実行判定部15は、保守用端末20から送信された点検開始連絡に含まれる入館階の位置情報を基に、点検作業者がいる階が不停止階に設定されているかを判定する(ステップS12)。この判定は、前のステップS11で取得した不停止階情報と入館階の情報の比較で行う。なお、入館階の位置情報は、保守用端末20から逐一送信されるGPS情報(高さ方向の情報)で代用してもよい。
【0064】
センタ装置10の不停止一時解除モード実行判定部15は、ステップS12の判定で点検作業者の入館階が不停止の設定ではないと判定された場合(ステップS12のNo)、処理を終了する。
【0065】
センタ装置10の不停止一時解除モード実行判定部15は、ステップS12の判定で点検作業者の入館階が不停止の設定の場合(ステップS12のYes)、点検時の不停止一時解除モード指令をエレベーターへ送信する(ステップS13)。この時、不停止の解除を行う階床の情報を含めて送信する。
【0066】
この送信が完了後、センタ装置10の顧客通知手段16は、建物を所有するオーナーや、建物を管理する管理者、乗客に対して、点検のために不停止設定が解除されたことを通知し、センタ装置10の処理を終了する(ステップS14)。不停止の設定は、建物を所有するオーナーや建物の管理者がエレベーター保守会社のアプリケーションにて、設定しているケースがあるため、不停止設定を解除する際は点検時の一時的な解除であっても、周知が必要となる。
【0067】
エレベーター30の不停止一時解除モード実行部33は、点検時の不停止一時解除モード指令の受信を待機しており(ステップS15のNo)、指令を受信すると(ステップS15のYes)、不停止一時解除モードの設定を行う(ステップS16)。点検時の不停止一時解除モードの詳細は図3の説明として後述する。
【0068】
不停止一時解除モードが設定されると、エレベーター制御コマンド処理部34は、エレベーター制御プログラム32に対して、点検作業者の入館階へ乗りかごを運転させることを指令する(ステップS17)。ここで入館階とは、前述の点検時の不停止一時解除モード指令に含まれる階床情報である。乗りかごが点検作業者のいる階まで運転し着床すると、ドアを開き点検作業者が乗り込めるように制御する。
【0069】
点検作業者は点検のために乗りかごへ乗込み(ステップS18)、暗号操作で乗りかごを運転する(ステップS19)。暗号操作はエレベーター30の不停止一時解除モード処理となるため、詳細は図3の説明として後述する。
<点検時の不停止一時解除モード>
図3は、エレベーター保守支援システム1のエレベーター30が不停止一時解除モードに移行した際のシーケンス図を示している。
【0070】
以下、図3について、図1の機能ブロック図と関連付けて不停止一時解除モードの流れを説明する。
【0071】
エレベーターの不停止一時解除モード実行部33は、前述した通り、点検時の不停止一時解除モード指令の受信を待機しており(ステップS15のNo)、指令を受信すると(ステップS15のYes)、不停止一時解除モードの設定を行う(ステップS16)。
【0072】
ここで、不停止一時解除モードの設定について、図6を用いて説明する。図6は、不停止一時解除モードのデータの一例を示す図である。
【0073】
前述したように、エレベーター仕様情報171には、図5に示す不停止階情報のデータが格納されている。例えば、点検作業者が1階に居て、1号機の点検を行おうとしている。しかしながら、1号機は1階が不停止階に設定されているので、1号機の乗りかごをホール呼びで1階に呼ぶことができない。そこで、1号機に対して不停止一時解除モードを設定し、1階の不停止設定を解除し、停止階に設定する。2階、3階は不停止階の状態を維持される。
【0074】
不停止一時解除モードが設定されると、エレベーター制御コマンド処理部34は、エレベーター制御プログラム32に対して、点検作業者の入館階へ乗りかごを運転させることを指令する(ステップS17)。ここまでの説明は、図2に記載のステップ番号と同じである。
【0075】
エレベーター30の不停止一時解除モード実行部33は、点検時の不停止一時解除モード設定中は、乗りかごのドアが開き、人が乗り込めるものの、別の階床へ運転できないようにエレベーター制御プログラム32に制御させる。これにより、仮に点検作業者とは別の第三者が乗り込んでしまっても、別の階床へ運転できないようになっている。
【0076】
乗りかごを運転させるためには、エレベーター30の暗号操作を行う必要がある。暗号操作は、エレベーターに設置された機器を使用して行う。例えば、エレベーター30の乗りかご内に設置された図示しない行先階ボタンを予め決められた順序で操作する、乗りかご内に設置される点検作業者のみが所有する鍵で開錠することができる操作盤内のスイッチを切り替える、乗りかご内に設置される防犯カメラを使用した画像解析による点検作業者の本人確認等で行うことができる。すなわち、乗りかごに乗込んだ人物が点検作業者であることが特定できれば、手段は何でもよい。暗号差操作により乗りかごに乗込んだ人物が点検作業者が特定されると、不停止一時解除モードへ移行する。
【0077】
前記暗号操作が行われず(ステップT1のNo)、所定時間経過すると(ステップT2のYes)、不停止一時解除モードを解除し、不停止設定に戻る(ステップT5)。
【0078】
前記暗号操作が行われると(ステップT1のYes)、不停止が一時的に解除され点検作業者が乗りかごを運転したり、点検のための低速運転や整備のための測定運転等のエレベーター制御を行ったりすることができる。
【0079】
そして、予め決められた所定回数の運転操作を実行もしくは所定時間経過した場合(ステップT4のYes)、不停止一時解除モードを解除し、不停止設定に戻る(ステップT5)。
【0080】
このようにしたことで、エレベーターの点検・整備作業において、不停止設定の解除条件が成立すれば、センタ装置経由で一時解除する構成としたため、各現場に新たな機構を追加することなく、点検作業者への負担も最小限にすることが可能である。また、万が一、不停止階解除時に第三者が乗りかごに乗込んでしまったとしても、別の階床へ運転できない仕組みとなっている。
【0081】
なお、本発明は前述した実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形態様が含まれる。また、前述した実施の形態は、本発明を分かりやすく説明するために説明したものであり、本発明は、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではなく、適宜、その他の構成にも応用できる。
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【符号の説明】
【0082】
1…エレベーター保守支援システム、10…センタ装置、11…送受信部、12…作業スケジュール計画部、13…表示部、14…作業者GPS情報処理部、15…不停止一時解除モード実行判定部、16…顧客通知手段、17…記憶部、20…保守用端末、21…送受信部、22…操作表示部、23…GPS情報取得部、24…エレベーター情報取得部、25…点検開始連絡送信部、26…記憶部、30…エレベーター、31…送受信部、32…エレベーター制御プログラム、33…不停止一時解除モード実行部、34…エレベーター制御コマンド処理部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6