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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033816
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】光干渉測距センサ
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/00 20060101AFI20240306BHJP
   G01B 9/02056 20220101ALI20240306BHJP
   G01B 9/02004 20220101ALI20240306BHJP
【FI】
G01B11/00 G
G01B9/02056
G01B9/02004
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137663
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100108213
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 豊隆
(72)【発明者】
【氏名】長崎 裕介
(72)【発明者】
【氏名】木村 和哉
【テーマコード(参考)】
2F064
2F065
【Fターム(参考)】
2F064AA01
2F064CC01
2F064EE05
2F064FF01
2F064FF08
2F064GG02
2F064GG55
2F064HH01
2F064HH06
2F064JJ04
2F064JJ15
2F065AA06
2F065DD04
2F065FF52
2F065GG04
2F065GG25
2F065HH04
2F065HH13
2F065JJ01
2F065JJ05
2F065JJ09
2F065JJ15
2F065LL02
2F065LL04
2F065LL21
2F065LL33
2F065LL35
2F065LL42
2F065LL46
2F065LL64
2F065NN06
(57)【要約】
【課題】センサヘッド内に配置された光学素子による反射光の影響を軽減し、計測対象物までの距離を適切に計測可能な光干渉測距センサを提供することである。
【解決手段】光干渉測距センサ100は、波長を変化させながら光を投光する光源110と、光源110から投光された光が供給され、センサヘッド102により計測対象物Tに照射して反射される測定光と、測定光とは少なくとも一部異なる光路を辿る参照光とに基づく干渉光を生成する干渉計120と、干渉光を受光して電気信号に変換する受光部130と、電気信号に基づいて計測対象物Tまでの距離を算出する処理部140と、を備え、センサヘッド102は、光ファイバ150から当該センサヘッド102内に出射される光の光軸Lの垂直方向に対して、所定角度だけ傾けて配置された光学素子170を含む。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長を変化させながら光を投光する光源と、
前記光源から投光された光が供給され、センサヘッドにより計測対象物に照射して反射される測定光と、前記測定光とは少なくとも一部異なる光路を辿る参照光とに基づく干渉光を生成する干渉計と、
前記干渉計からの干渉光を受光して電気信号に変換する受光部と、
前記受光部によって変換された電気信号に基づいて、前記センサヘッドから前記計測対象物までの距離を算出する処理部と、を備え、
前記センサヘッドは、
前記光源から投光された光を当該センサヘッドに導くための光ファイバに接続され、
前記光ファイバから当該センサヘッド内に出射される光の光軸の垂直方向に対して、所定角度だけ傾けて配置された光学素子を含む、
光干渉測距センサ。
【請求項2】
前記所定角度だけ傾けて配置された光学素子は、コリメートレンズ、対物レンズ、光学フィルタ、偏光素子、波長板、ビームスプリッター、回折格子、プリズム、及び回折光学素子のうち少なくとも1つ以上である、
請求項1に記載の光干渉測距センサ。
【請求項3】
前記センサヘッドは、前記光ファイバとの接続側から順に、コリメートレンズ、及び前記所定角度だけ傾けて配置された対物レンズを含み、
前記光ファイバから当該センサヘッド内に出射される光が前記対物レンズで反射し、当該反射光は前記コリメートレンズを介して、当該反射光のスポットの中心が前記光ファイバのコア径より外側になる、
請求項1に記載の光干渉測距センサ。
【請求項4】
前記コリメートレンズの焦点距離f、前記光ファイバの開口数NA、前記光ファイバのコア半径r及び前記光の波長λを用いて、前記所定角度θは、
θ>arctan{(r+1.64λ/NA)/f}
を満たす、
請求項3に記載の光干渉測距センサ。
【請求項5】
前記所定角度が閾値よりも小さくなると、その旨を通知する、
請求項1に記載の光干渉測距センサ。
【請求項6】
波長を変化させながら光を投光する光源と、
前記光源から投光された光が供給され、センサヘッドにより計測対象物に照射して反射される測定光と、前記測定光とは少なくとも一部異なる光路を辿る参照光とに基づく干渉光を生成する干渉計と、
前記干渉計からの干渉光を受光して電気信号に変換する受光部と、
前記受光部によって変換された電気信号に基づいて、前記センサヘッドから前記計測対象物までの距離を算出する処理部と、を備え、
前記センサヘッドは、
前記光源から投光された光を当該センサヘッドに導くための光ファイバに接続され、
前記光ファイバから当該センサヘッド内に出射される光が反射し、当該反射光のスポットの中心が前記光ファイバのコア径より外側になるように、所定角度だけ傾けて配置された光学素子を含む、
光干渉測距センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光干渉測距センサに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、非接触で計測対象物までの距離を計測する光測距センサが普及している。例えば、光測距センサとして、波長掃引光源から投光される光から、参照光と測定光とに基づく干渉光を生成し、当該干渉光に基づいて計測対象物までの距離を計測する光干渉測距センサが知られている。
【0003】
このような光干渉測距センサでは、干渉光に基づいて計測対象物までの距離を計測しているため、例えば、当該干渉光を受光するフォトディテクタなどによって受光される光にノイズや不要なピークを混在させないようにすることが求められる。
【0004】
例えば、特許文献1では、参照光と、被測定物により反射された測定光とを合波することにより干渉信号を生成し、当該干渉信号に基づいて被測定物を測定する光干渉測定装置に関する技術が開示されている。当該光干渉測定装置では、参照光について、参照光用デバイスを透過した参照光と、参照光用デバイスで反射した参照光との光路長を調整することにより、干渉信号の波形全体に発生するノイズを低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-205203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示される光学測定装置では、光路長を調整することにより干渉信号の波形全体に発生するノイズを低減するようにしているが、センサヘッド内に配置された光学素子による反射光に関する対策はなされていない。特に、光干渉測距センサでは、計測対象物による反射光と、他の光路を辿る参照光とにより生成される干渉信号に基づいて計測対象物までの距離を計測するため、センサヘッド内に配置された光学素子による反射光は、他の光路を辿る参照光と干渉することにより、波形全体に不要なピークが発生し、計測対象物までの距離を適切に計測できないという問題が生じるおそれがある。
【0007】
そこで、本発明は、センサヘッド内に配置された光学素子による反射光の影響を軽減し、計測対象物までの距離を適切に計測可能な光干渉測距センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る光干渉測距センサは、波長を変化させながら光を投光する光源と、光源から投光された光が供給され、センサヘッドにより計測対象物に照射して反射される測定光と、測定光とは少なくとも一部異なる光路を辿る参照光とに基づく干渉光を生成する干渉計と、干渉計からの干渉光を受光して電気信号に変換する受光部と、受光部によって変換された電気信号に基づいて、センサヘッドから計測対象物までの距離を算出する処理部と、を備え、センサヘッドは、光源から投光された光を当該センサヘッドに導くための光ファイバに接続され、光ファイバから当該センサヘッド内に出射される光の光軸の垂直方向に対して、所定角度だけ傾けて配置された光学素子を含む。
【0009】
この態様によれば、センサヘッドにおける光学素子は、光ファイバから当該センサヘッド内に出射される光の光軸の垂直方向に対して、所定角度だけ傾けて配置されているため、当該光学素子による反射光の影響を軽減し、計測対象物までの距離を適切に計測することができる。
【0010】
上記態様において、所定角度だけ傾けて配置された光学素子は、コリメートレンズ、対物レンズ、光学フィルタ、偏光素子、波長板、ビームスプリッター、回折格子、プリズム、及び回折光学素子のうち少なくとも1つ以上であってもよい。
【0011】
この態様によれば、所定角度だけ傾けて配置された光学素子は、コリメートレンズ、対物レンズ、光学フィルタ、偏光素子、波長板、ビームスプリッター、回折格子、プリズム、及び回折光学素子のうち少なくとも1つ以上であるため、具体的に、これらの光学素子の形状や特性に応じて、適切に、当該光学素子による反射光の影響を軽減することができる。
【0012】
上記態様において、センサヘッドは、光ファイバとの接続側から順に、コリメートレンズ、及び所定角度だけ傾けて配置された対物レンズを含み、光ファイバから当該センサヘッド内に出射される光が対物レンズで反射し、当該反射光はコリメートレンズを介して、当該反射光のスポットの中心が光ファイバのコア径より外側になってもよい。
【0013】
この態様によれば、センサヘッドは、コリメートレンズ及び所定角度だけ傾けて配置された対物レンズを含み、対物レンズでの反射光のスポットの中心が光ファイバのコア径より外側になるため、当該反射光の影響を軽減しつつ、精度良く計測対象物までの距離を適切に計測することができる。
【0014】
上記態様において、コリメートレンズの焦点距離f、光ファイバの開口数NA、光ファイバのコア半径r及び光の波長λを用いて、所定角度θは、θ>arctan{(r+1.64λ/NA)/f}を満たしてもよい。
【0015】
この態様によれば、対物レンズでの反射光のスポットの中心が光ファイバのコア径より外側にずれて、当該反射光の一部が光ファイバのコア径に入射されたとしても、その光の強度が小さいため、当該反射光の影響を軽減しつつ、より精度良く計測対象物までの距離を適切に計測することができる。
【0016】
上記態様において、所定角度が閾値よりも小さくなると、その旨を通知してもよい。
【0017】
この態様によれば、所定角度が閾値よりも小さくなると、その旨を通知するため、センサヘッドにおける光学素子の配置を適切に調整することができる。
【0018】
本発明の一態様に係る光干渉測距センサは、波長を変化させながら光を投光する光源と、光源から投光された光が供給され、センサヘッドにより計測対象物に照射して反射される測定光と、測定光とは少なくとも一部異なる光路を辿る参照光とに基づく干渉光を生成する干渉計と、干渉計からの干渉光を受光して電気信号に変換する受光部と、受光部によって変換された電気信号に基づいて、センサヘッドから計測対象物までの距離を算出する処理部と、を備え、センサヘッドは、光源から投光された光を当該センサヘッドに導くための光ファイバに接続され、光ファイバから当該センサヘッド内に出射される光が反射し、当該反射光のスポットの中心が光ファイバのコア径より外側になるように、所定角度だけ傾けて配置された光学素子を含む。
【0019】
この態様によれば、センサヘッドにおける光学素子は、当該光学素子での反射光のスポットの中心が光ファイバのコア径より外側になるように所定角度だけ傾けて配置されているため、当該反射光の影響を軽減しつつ、精度良く計測対象物までの距離を適切に計測することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、センサヘッド内に配置された光学素子による反射光の影響を軽減し、計測対象物までの距離を適切に計測可能な光干渉測距センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本開示に係る変位センサ10の概要を示す外観模式図である。
図2】本開示に係る変位センサ10によって計測対象物Tが計測される手順を示すフローチャートである。
図3】本開示に係る変位センサ10が用いられるセンサシステム1の概要を示す機能ブロック図である。
図4】本開示に係る変位センサ10が用いられるセンサシステム1によって計測対象物Tが計測される手順を示すフローチャートである。
図5A】本開示に係る変位センサ10によって計測対象物Tが計測される原理を説明するための図である。
図5B】本開示に係る変位センサ10によって計測対象物Tが計測される別の原理を説明するための図である。
図6A】センサヘッド20の概略構成を示す斜視図である。
図6B】センサヘッド20の内部構造を示す模式図である。
図7】コントローラ30における信号処理について説明するためのブロック図である。
図8】コントローラ30における処理部59によって実行される、計測対象物Tまでの距離を算出する方法を示すフローチャートである。
図9A】波形信号(電圧vs時間)がスペクトル(電圧vs周波数)に周波数変換される様子を示す図である。
図9B】スペクトル(電圧vs周波数)がスペクトル(電圧vs距離)に距離変換される様子を示す図である。
図9C】スペクトル(電圧vs距離)に基づいてピークを検出し、それに対応する距離値が算出される様子を示す図である。
図10】本発明の一実施形態に係る光干渉測距センサ100の構成概要を示す模式図である。
図11A図11Aは、計測対象物Tがセンサヘッド102から遠い場合における、対物レンズ170での反射光及び計測対象物Tでの反射光の様子を示す図である。
図11B図11Aは、計測対象物Tがセンサヘッド102から近い場合における、対物レンズ170での反射光及び計測対象物Tでの反射光の様子を示す図である。
図12】光ファイバ150からセンサヘッド102内に出射される光の光軸Lの垂直方向に対して、対物レンズ170が所定角度θだけ傾けて配置されている様子を模式的に示す図である。
図13】1枚のレンズで構成されるセンサヘッドの具体例を示す図である。
図14】測定光と参照光とを用いて干渉光を発生させる干渉計のバリエーションを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好適な各実施形態について、添付図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下で説明する各実施形態は、あくまで、本発明を実施するための具体的な一例を挙げるものであって、本発明を限定的に解釈させるものではない。また、説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する場合がある。
【0023】
[変位センサの概要]
先ず、本開示に係る変位センサの概要について説明する。
図1は、本開示に係る変位センサ10の概要を示す外観模式図である。図1に示されるように、変位センサ10は、センサヘッド20とコントローラ30とを備え、計測対象物Tの変位(計測対象物Tまでの距離)を計測する。
【0024】
センサヘッド20とコントローラ30とは、光ファイバ40で接続されており、センサヘッド20には対物レンズ21が取り付けられている。また、コントローラ30は、表示部31と、設定部32と、外部インタフェース(I/F)部33と、光ファイバ接続部34と、外部記憶部35とを含み、さらに、内部には、計測処理部36を有する。
【0025】
センサヘッド20は、コントローラ30から出力される光を計測対象物Tに照射し、当該計測対象物Tからの反射光を受光する。センサヘッド20は、コントローラ30から出力されて光ファイバ40を介して受光した光を反射させ、上述した計測対象物Tからの反射光と干渉させるための参照面を、内部に有している。
【0026】
なお、センサヘッド20には対物レンズ21が取り付けられているが、当該対物レンズ21は着脱可能な構成となっている。対物レンズ21は、センサヘッド20と計測対象物Tとの距離に応じて、適切な焦点距離を有する対物レンズに交換可能であって、又は可変焦点の対物レンズを適用してもよい。
【0027】
さらに、センサヘッド20を設置する際には、ガイド光(可視光)を計測対象物Tに照射して、当該変位センサ10の計測領域内に計測対象物Tが適切に位置するようにセンサヘッド20及び/又は計測対象物Tを設置してもよい。
【0028】
光ファイバ40は、コントローラ30に配置される光ファイバ接続部34に接続されて延伸し、当該コントローラ30とセンサヘッド20とを接続する。これにより、光ファイバ40は、コントローラ30から投光される光をセンサヘッド20に導き、さらに、センサヘッド20からの戻り光をコントローラ30へ導くように構成されている。なお、光ファイバ40は、センサヘッド20及びコントローラ30に着脱可能であって、長さ、太さ及び特性等において種々の光ファイバを適用することができる。
【0029】
表示部31は、例えば、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイ等で構成される。表示部31には、変位センサ10の設定値、センサヘッド20からの戻り光の受光量、及び変位センサ10によって計測された計測対象物Tの変位(計測対象物Tまでの距離)等の計測結果が表示される。
【0030】
設定部32は、例えば、機械式ボタンやタッチパネル等をユーザが操作することによって、計測対象物Tを計測するために必要な設定が行われる。これらの必要な設定の全部又は一部は、予め設定されていてもよいし、外部I/F部33に接続された外部接続機器(図示せず)から設定されてもよい。また、外部接続機器は、ネットワークを介して有線又は無線で接続されていてもよい。
【0031】
ここで、外部I/F部33は、例えば、Ethernet(登録商標)、RS232C、及びアナログ出力等で構成される。外部I/F部33には、他の接続機器に接続されて当該外部接続機器から必要な設定が行われたり、変位センサ10によって計測された計測結果等を外部接続機器に出力したりしてもよい。
【0032】
また、コントローラ30が外部記憶部35に記憶されたデータを取り込むことにより、計測対象物Tを計測するために必要な設定が行われてもよい。外部記憶部35は、例えば、USB(Universal Serial Bus)メモリ等の補助記憶装置であって、計測対象物Tを計測するために必要な設定等が予め記憶されている。
【0033】
コントローラ30における計測処理部36は、例えば、連続的に波長を変化させながら光を投光する波長掃引光源、センサヘッド20からの戻り光を受光して電気信号に変換する受光素子、及び電気信号を処理する信号処理回路等を含む。計測処理部36では、センサヘッド20からの戻り光に基づいて、最終的には、計測対象物Tの変位(計測対象物Tまでの距離)が算出されるように制御部及び記憶部等を用いて様々な処理がなされている。これらの処理についての詳細は後述する。
【0034】
図2は、本開示に係る変位センサ10によって計測対象物Tが計測される手順を示すフローチャートである。図2に示されるように、当該手順は、ステップS11~S14を含む。
【0035】
ステップS11では、センサヘッド20を設置する。例えば、センサヘッド20から計測対象物Tにガイド光を照射して、それを参考にして、センサヘッド20を適切な位置に設置する。
【0036】
具体的には、コントローラ30における表示部31に、センサヘッド20からの戻り光の受光量を表示し、ユーザは、当該受光量を確認しながら、センサヘッド20の向き及び計測対象物Tとの距離(高さ位置)等を調整してもよい。基本的には、センサヘッド20からの光を計測対象物Tに対して垂直に(より垂直に近い角度で)照射できれば、当該計測対象物Tからの反射光の光量が大きく、センサヘッド20からの戻り光の受光量も大きくなる。
【0037】
また、センサヘッド20と計測対象物Tとの距離に応じて、適切な焦点距離を有する対物レンズ21に交換してもよい。
【0038】
さらに、計測対象物Tを計測するに際して適切な設定ができない場合(例えば、計測に必要な受光量を得られない、又は対物レンズ21の焦点距離が不適切である等)には、エラー又は設定未完了等を、表示部31に表示したり、外部接続機器に出力したりして、ユーザに通知するようにしてもよい。
【0039】
ステップS12では、計測対象物Tを計測するに際して種々の計測条件を設定する。例えば、センサヘッド20が有する固有の校正データ(線形性を補正する関数等)を、ユーザがコントローラ30における設定部32を操作することによって設定する。
【0040】
また、各種パラメータを設定してもよい。例えば、サンプリング時間、計測範囲、及び計測結果を正常とするか異常とするかの閾値等が設定される。さらに、計測対象物Tの反射率及び材質等の計測対象物Tの特性に応じて測定周期が設定され、及び計測対象物Tの材質に応じた測定モード等が設定されるようにしてもよい。
【0041】
なお、これらの計測条件及び各種パラメータの設定は、コントローラ30における設定部32を操作することによって設定されるが、外部接続機器から設定されてもよいし、外部記憶部35からデータを取り込むことによって設定されてもよい。
【0042】
ステップS13では、ステップS11で設置されたセンサヘッド20で、ステップS12で設定された計測条件及び各種パラメータに従って、計測対象物Tを計測する。
【0043】
具体的には、コントローラ30の計測処理部36において、波長掃引光源から光が投光され、センサヘッド20からの戻り光を受光素子で受光し、信号処理回路によって周波数解析、距離変換及びピーク検出等がなされて、計測対象物Tの変位(計測対象物Tまでの距離)が算出される。具体的な計測処理についての詳細は、後述する。
【0044】
ステップS14では、ステップS13で計測された計測結果を出力する。例えば、ステップS13で計測された計測対象物Tの変位(計測対象物Tまでの距離)等を、コントローラ30における表示部31に表示したり、外部接続機器に出力したりする。
【0045】
また、ステップS13で計測された計測対象物Tの変位(計測対象物Tまでの距離)が、ステップS12で設定された閾値に基づいて、正常の範囲内であるか異常かについても計測結果として表示又は出力されてもよい。さらに、ステップS12で設定された計測条件、各種パラメータ及び測定モード等も共に表示又は出力されてもよい。
【0046】
[変位センサを含むシステムの概要]
図3は、本開示に係る変位センサ10が用いられるセンサシステム1の概要を示す機能ブロック図である。図3に示されるように、センサシステム1は、変位センサ10と、制御機器11と、制御信号入力用センサ12と、外部接続機器13とを備える。なお、変位センサ10は、制御機器11及び外部接続機器13とは、例えば、通信ケーブル又は外部接続コード(例えば、外部入力線、外部出力線及び電源線等を含む)で接続され、制御機器11と制御信号入力用センサ12とは信号線で接続される。
【0047】
変位センサ10は、図1及び図2を用いて説明したように、計測対象物Tの変位(計測対象物Tまでの距離)を計測する。そして、変位センサ10は、その計測結果等を制御機器11及び外部接続機器13に出力してもよい。
【0048】
制御機器11は、例えば、PLC(Programmable Logic Controller)であって、変位センサ10が計測対象物Tを計測するに際して、当該変位センサ10に対して各種の指示を与える。
【0049】
例えば、制御機器11は、制御機器11に接続された制御信号入力用センサ12からの入力信号に基づいて、測定タイミング信号を変位センサ10に出力してもよいし、ゼロリセット命令信号(現在の計測値を0に設定するための信号)等を変位センサ10に出力してもよい。
【0050】
制御信号入力用センサ12は、変位センサ10が計測対象物Tを計測するタイミングを指示するオン/オフ信号を、制御機器11に出力する。例えば、制御信号入力用センサ12は、計測対象物Tが移動する生産ラインの近傍に設置され、計測対象物Tが所定の位置に移動してきたことを検知して、制御機器11にオン/オフ信号を出力すればよい。
【0051】
外部接続機器13は、例えば、PC(Personal Computer)であって、ユーザが操作することによって、変位センサ10に対して様々な設定を行うことができる。
【0052】
具体例としては、測定モード、動作モード、測定周期、及び計測対象物Tの材質等が設定される。
【0053】
測定モードの設定として、制御機器11内部で周期的に計測開始する「内部同期計測モード」、又は制御機器11外部からの入力信号に応じて計測開始する「外部同期計測モード」等が選択される。
【0054】
動作モードの設定として、実際に計測対象物Tを計測する「運転モード」、又は計測対象物Tを計測するための計測条件を設定する「調整モード」等が選択される。
【0055】
測定周期は、計測対象物Tを測定する周期であり、計測対象物Tの反射率に応じて設定すればよいが、仮に、計測対象物Tの反射率が低い場合であっても、測定周期を長くして適切に測定周期を設定すれば、計測対象物Tを適切に測定することができる。
【0056】
計測対象物Tについて、反射光の成分として拡散反射が比較的多い場合に適した「粗面モード」、反射光の成分として鏡面反射が比較的多い場合に適した「鏡面モード」、又はこれらの中間的な「標準モード」等が選択される。
【0057】
このように、計測対象物Tの反射率及び材質に応じて、適切な設定を行うことによって、より高精度に計測対象物Tを計測することができる。
【0058】
図4は、本開示に係る変位センサ10が用いられるセンサシステム1によって計測対象物Tが計測される手順を示すフローチャートである。図4に示されるように、当該手順は、上述した外部同期計測モードの場合の手順であって、ステップS21~S24を含む。
【0059】
ステップS21では、センサシステム1は、計測される対象である計測対象物Tを検知する。具体的には、制御信号入力用センサ12は、生産ライン上において、計測対象物Tが所定の位置に移動してきたことを検知する。
【0060】
ステップS22では、センサシステム1は、ステップS21で検知された計測対象物Tを変位センサ10によって計測するように計測指示する。具体的には、制御信号入力用センサ12は、制御機器11にオン/オフ信号を出力することにより、ステップS21で検知された計測対象物Tを測定するタイミングを指示し、制御機器11は、当該オン/オフ信号に基づいて、変位センサ10に測定タイミング信号を出力して、計測対象物Tを計測するように計測指示する。
【0061】
ステップS23では、変位センサ10によって計測対象物Tが計測される。具体的には、変位センサ10は、ステップS22で受け取った計測指示に基づいて、計測対象物Tを計測する。
【0062】
ステップS24では、センサシステム1は、ステップS23で計測された計測結果を出力する。具体的には、変位センサ10は、計測処理の結果を、表示部31に表示したり、外部I/F部33を経由して制御機器11又は外部接続機器13等に出力したりする。
【0063】
なお、ここでは、図4を用いて、制御信号入力用センサ12によって計測対象物Tが検知されることにより計測対象物Tを計測する外部同期計測モードの場合についての手順を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、内部同期計測モードの場合は、ステップS21及びS22に代わって、予め設定された周期に基づいて測定タイミング信号が生成されることにより、計測対象物Tを計測するように変位センサ10に指示する。
【0064】
次に、本開示に係る変位センサ10によって計測対象物Tが計測される原理を説明する。
図5Aは、本開示に係る変位センサ10によって計測対象物Tが計測される原理を説明するための図である。図5Aに示されるように、変位センサ10は、センサヘッド20及びコントローラ30を備える。センサヘッド20は、対物レンズ21と、複数のコリメートレンズ22a~22cとを含み、コントローラ30は、波長掃引光源51と、光増幅器52と、複数のアイソレータ53及び53a~53bと、複数の光カプラ54及び54a~54eと、減衰器55と、複数の受光素子(例えば、フォトディテクタ(PD))56a~56cと、複数の増幅回路57a~57cと、複数のアナログデジタル(AD)変換部(例えば、アナログデジタルコンバータ)58a~58cと、処理部(例えば、プロセッサ)59と、バランスディテクタ60と、補正信号生成部61とを含む。
【0065】
波長掃引光源51は、波長を掃引したレーザ光を投光する。波長掃引光源51としては、例えば、VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser)を電流で変調する方式を適用すれば、共振器長が短いためにモードホップを起こしにくく、波長を変化させることが容易であり、低コストで実現することができる。
【0066】
光増幅器52は、波長掃引光源51から投光される光を増幅する。光増幅器52は、例えば、EDFA(erbium-doped fiber amplifier)を適用し、例えば、1550nm専用の光増幅器であってもよい。
【0067】
アイソレータ53は、入射した光を一方向に透過させる光学素子であって、戻り光によって発生するノイズの影響を防ぐために、波長掃引光源51の直後に配置されてもよい。
【0068】
このように、波長掃引光源51から投光された光は、光増幅器52によって増幅され、アイソレータ53を介して、光カプラ54によって主干渉計と副干渉計とに分岐される。例えば、光カプラ54では、主干渉計と副干渉計とに分岐する光の割合は、主干渉計側に90%以上分岐させるようにしてもよい。
【0069】
主干渉計に分岐された光は、さらに、1段目の光カプラ54aによって、センサヘッド20の方向と2段目の光カプラ54bの方向とに分岐される。
【0070】
1段目の光カプラ54aによってセンサヘッド20の方向に分岐された光は、センサヘッド20において、光ファイバの先端からコリメートレンズ22a及び対物レンズ21を通過して計測対象物Tに照射される。そして、当該光ファイバの先端(端面)が参照面となり、当該参照面で反射した光と、計測対象物Tで反射した光とが干渉し、干渉光が生成されて、1段目の光カプラ54aに戻り、その後、受光素子56aで受光されて電気信号に変換される。
【0071】
1段目の光カプラ54aによって2段目の光カプラ54bの方向に分岐された光は、アイソレータ53aを介して2段目の光カプラ54bに向かい、当該2段目の光カプラ54bによって、さらにセンサヘッド20の方向と3段目の光カプラ54cの方向とに分岐される。光カプラ54bからセンサヘッド20の方向に分岐された光は、1段目と同様に、センサヘッド20において、光ファイバの先端からコリメートレンズ22b及び対物レンズ21を通過して計測対象物Tに照射される。そして、当該光ファイバの先端(端面)が参照面となり、当該参照面で反射した光と、計測対象物Tで反射した光とが干渉し、干渉光が生成されて、2段目の光カプラ54bに戻り、当該光カプラ54bによってアイソレータ53a及び受光素子56bそれぞれの方向へ分岐される。光カプラ54bから受光素子56bの方向へ分岐された光は、受光素子56bで受光されて電気信号に変換される。一方、アイソレータ53aは、前段の光カプラ54aから後段の光カプラ54bへ光を透過し、後段の光カプラ54bから前段の光カプラ54aへの光を遮断するため、光カプラ54bからアイソレータ53aの方向へ分岐された光は、遮断される。
【0072】
2段目の光カプラ54bによって3段目の光カプラ54cの方向に分岐された光は、アイソレータ53bを介して3段目の光カプラ54cに向かい、当該3段目の光カプラ54cによって、さらにセンサヘッド20の方向と減衰器55の方向とに分岐される。光カプラ54cからセンサヘッド20の方向に分岐された光は、1段目及び2段目と同様に、センサヘッド20において、光ファイバの先端からコリメートレンズ22c及び対物レンズ21を通過して計測対象物Tに照射される。そして、当該光ファイバの先端(端面)が参照面となり、当該参照面で反射した光と、計測対象物Tで反射した光とが干渉し、干渉光が生成されて、3段目の光カプラ54cに戻り、当該光カプラ54cによってアイソレータ53b及び受光素子56cそれぞれの方向へ分岐される。光カプラ54cから受光素子56cの方向へ分岐された光は、受光素子56cで受光されて電気信号に変換される。一方、アイソレータ53bは、前段の光カプラ54bから後段の光カプラ54cへ光を透過し、後段の光カプラ54cから前段の光カプラ54bへの光を遮断するため、光カプラ54cからアイソレータ53bの方向へ分岐された光は、遮断される。
【0073】
なお、3段目の光カプラ54cによってセンサヘッド20でない方向に分岐された光は、計測対象物Tの計測に用いられないため、反射して戻ってこないように、例えば、ターミネータ等の減衰器55によって減衰されるとよい。
【0074】
このように、主干渉計では、3段の光路(3チャネル)を有し、それぞれセンサヘッド20の光ファイバの先端(端面)から計測対象物Tまでの距離の2倍(往復)を光路長差とした干渉計であり、それぞれ光路長差に応じた3つの干渉光を生成している。
【0075】
受光素子56a~56cは、上述したように主干渉計からの干渉光を受光し、当該受光した受光量に応じた電気信号を生成する。
【0076】
増幅回路57a~57cは、それぞれ受光素子56a~56cから出力される電気信号を増幅する。
【0077】
AD変換部58a~58cは、それぞれ増幅回路57a~57cによって増幅された電気信号を受信して、当該電気信号に関してアナログ信号からデジタル信号に変換する(AD変換)。ここで、AD変換部58a~58cは、副干渉計における補正信号生成部61からの補正信号に基づいて、AD変換する。
【0078】
副干渉計では、波長掃引光源51の掃引時における波長の非線形性を補正するために、副干渉計にて干渉信号を取得し、Kクロックと呼ばれる補正信号を生成する。
【0079】
具体的には、光カプラ54によって副干渉計に分岐された光は、光カプラ54dによって、さらに分岐される。ここで、分岐された各光の光路は、例えば、光カプラ54dと光カプラ54eとの間において異なる長さの光ファイバを用いて光路長差を有するように構成されて、当該光路長差に応じた干渉光が光カプラ54eから出力される。そして、バランスディテクタ60は、光カプラ54eからの干渉光を受光し、その逆位相の信号との差分を取ることによってノイズを除去しつつ、光信号を増幅して電気信号に変換する。
【0080】
なお、光カプラ54d及び光カプラ54eは、いずれも50:50の割合で光を分岐すればよい。
【0081】
補正信号生成部61は、バランスディテクタ60からの電気信号に基づいて、波長掃引光源51の掃引時における波長の非線形性を把握し、当該非線形に応じたKクロックを生成し、AD変換部58a~58cに出力する。
【0082】
波長掃引光源51の掃引時における波長の非線形性から、主干渉計においてそれぞれAD変換部58a~58cに入力されるアナログ信号の波の間隔は等間隔ではない。AD変換部58a~58cでは、波の間隔が等間隔になるように、上述したKクロックに基づいてサンプリング時間を補正してAD変換(サンプリング)される。
【0083】
なお、Kクロックは、上述したように、主干渉計のアナログ信号をサンプリングするために用いられる補正信号であるため、主干渉計のアナログ信号よりも高周波に生成される必要がある。具体的には、副干渉計における光カプラ54dと光カプラ54eとの間で設けられた光路長差を、主干渉計における光ファイバの先端(端面)と計測対象物Tとの間で設けられた光路長差よりも長くしてもよいし、補正信号生成部61で周波数を逓倍(例えば、8倍等)して高周波化してもよい。
【0084】
処理部59は、それぞれAD変換部58a~58cによって非線形性が補正されつつAD変換されたデジタル信号を取得し、当該デジタル信号に基づいて、計測対象物Tの変位(計測対象物Tまでの距離)を算出する。具体的には、処理部59では、高速フーリエ変換(FFT:fast Fourier transform)を用いてデジタル信号を周波数変換し、それらを解析することによって距離が算出される。処理部59における詳細な処理については後述する。
【0085】
なお、処理部59では、高速処理が要求されることから、FPGA(field-programmable gate array)等の集積回路で実現される場合が多い。
【0086】
また、ここでは、主干渉計において3段の光路を設けて、センサヘッド20によってそれぞれの光路から計測対象物Tに対して測定光が照射され、それぞれから得られる干渉光(戻り光)に基づいて、計測対象物Tまでの距離等が計測される(マルチチャネル)。主干渉計におけるチャネルは、3段に限定されるものではなく、1段又は2段であってもよいし、4段以上であってもよい。
【0087】
図5Bは、本開示に係る変位センサ10によって計測対象物Tが計測される別の原理を説明するための図である。図5Bに示されるように、変位センサ10は、センサヘッド20及びコントローラ30を備える。センサヘッド20は、対物レンズ21と、複数のコリメートレンズ22a~22cとを含み、コントローラ30は、波長掃引光源51と、光増幅器52と、複数のアイソレータ53及び53a~53bと、複数の光カプラ54及び54a~54jと、減衰器55と、複数の受光素子(例えば、フォトディテクタ(PD))56a~56cと、複数の増幅回路57a~57cと、複数のアナログデジタル(AD)変換部(例えば、アナログデジタルコンバータ)58a~58cと、処理部(例えば、プロセッサ)59と、バランスディテクタ60と、補正信号生成部61とを含む。図5Bに示された変位センサ10は、主に、光カプラ54f~54jを備えている点で、図5Aに示された変位センサ10の構成とは異なり、当該異なる構成による原理について、図5Aと比較しながら詳しく説明する。
【0088】
波長掃引光源51から投光された光は、光増幅器52によって増幅され、アイソレータ53を介して、光カプラ54によって主干渉計側と副干渉計側とに分岐されるが、主干渉計側に分岐された光は、さらに、光カプラ54fによって測定光と参照光とに分岐される。
【0089】
測定光は、図5Aで説明したように、1段目の光カプラ54aによってコリメートレンズ22a及び対物レンズ21を通過して計測対象物Tに照射され、当該計測対象物Tで反射する。ここで、図5Aでは、光ファイバの先端(端面)を参照面として、当該参照面で反射した光と計測対象物Tで反射した光とが干渉し、干渉光が生成されていたが、図5Bでは、光が反射する参照面を設けていない。すなわち、図5Bでは、図5Aのように参照面で反射する光が発生しないため、計測対象物Tで反射された測定光が1段目の光カプラ54aに戻ることなる。
【0090】
同様に、1段目の光カプラ54aから2段目の光カプラ54bの方向に分岐された光は、当該2段目の光カプラ54bによってコリメートレンズ22b及び対物レンズ21を通過して計測対象物Tに照射され、当該計測対象物Tで反射して2段目の光カプラ54bに戻る。2段目の光カプラ54bから3段目の光カプラ54cの方向に分岐された光は、当該3段目の光カプラ54cによってコリメートレンズ22c及び対物レンズ21を通過して計測対象物Tに照射され、当該計測対象物Tで反射して3段目の光カプラ54cに戻る。
【0091】
一方、光カプラ54fによって分岐された参照光は、さらに、光カプラ54gによって光カプラ54h、54i及び54jに分岐される。
【0092】
光カプラ54hでは、光カプラ54aから出力される計測対象物Tで反射された測定光と、光カプラ54gから出力される参照光とが干渉し、干渉光が生成されて、受光素子56aで受光されて電気信号に変換される。換言すれば、光カプラ54fによって測定光と参照光とに分岐され、当該測定光の光路(光カプラ54fから、光カプラ54a、コリメートレンズ22a、対物レンズ21を介して計測対象物Tで反射し、光カプラ54hまで到達する光路)と、当該参照光の光路(光カプラ54fから、光カプラ54gを介して光カプラ54hまで到達する光路)との光路長差に応じた干渉光が生成されて、当該干渉光が受光素子56aで受光されて電気信号に変換される。
【0093】
同様に、光カプラ54iでは、測定光の光路(光カプラ54fから、光カプラ54a、54b、コリメートレンズ22b、対物レンズ21を介して計測対象物Tで反射し、光カプラ54iまで到達する光路)と、参照光の光路(光カプラ54fから、光カプラ54gを介して光カプラ54iまで到達する光路)との光路長差に応じた干渉光が生成されて、当該干渉光が受光素子56bで受光されて電気信号に変換される。
【0094】
光カプラ54jでは、測定光の光路(光カプラ54fから、光カプラ54a、54b、54c、コリメートレンズ22c、対物レンズ21を介して計測対象物Tで反射し、光カプラ54jまで到達する光路)と、参照光の光路(光カプラ54fから、光カプラ54gを介して光カプラ54jまで到達する光路)との光路長差に応じた干渉光が生成されて、当該干渉光が受光素子56cで受光されて電気信号に変換される。なお、受光素子56a~56cは、例えば、バランスフォトディテクタであってもよい。
【0095】
このように、主干渉計では、3段の光路(3チャネル)を有し、それぞれ計測対象物Tで反射されて光カプラ54h、54i及び54jに入力される測定光と、光カプラ54f及び54gを介してそれぞれ光カプラ54h、54i及び54jに入力される参照光との光路長差に応じた3つの干渉光を生成している。
【0096】
なお、測定光と参照光との光路長差は、3チャネルにおいてそれぞれ異なるように、例えば、光カプラ54gと、各光カプラ54h、54i及び54jとの光路長を異なるように設定してもよい。
【0097】
そして、それぞれから得られる干渉光に基づいて、計測対象物Tまでの距離等が計測される(マルチチャネル)。
【0098】
[センサヘッドの構造]
ここで、変位センサ10に用いられるセンサヘッドの構造について説明する。
図6Aは、センサヘッド20の概略構成を示す斜視図であり、図6Bは、センサヘッドの内部構造を示す模式図である。
【0099】
図6Aに示されるように、センサヘッド20は、レンズホルダ23に対物レンズ21及びコリメートレンズが格納されている。例えば、レンズホルダ23のサイズは、対物レンズ21を囲う一辺の長さが20mm程度であり、光軸方向への長さが40mm程度である。
【0100】
図6Bに示されるように、レンズホルダ23には、1つの対物レンズ21及び3つのコリメートレンズ22a~22cが格納されている。光ファイバからの光は、光ファイバアレイ24を介して3つのコリメートレンズ22a~22cに導かれるように構成されており、さらに、3つのコリメートレンズ22a~22cを通過した光は、対物レンズ21を介して計測対象物Tに照射される。
【0101】
このように、これらの光ファイバ、コリメートレンズ22a~22c及び光ファイバアレイ24は、対物レンズ21とともに、レンズホルダ23によって保持されて、センサヘッド20を構成している。
【0102】
また、センサヘッド20を構成するレンズホルダ23は、高強度で、また高精度に加工できる金属(例えば、A2017)で作製されていてもよい。
【0103】
図7は、コントローラ30における信号処理について説明するためのブロック図である。図7に示されるように、コントローラ30は、複数の受光素子71a~71eと、複数の増幅回路72a~72cと、複数のAD変換部74a~74cと、処理部75と、差動増幅回路76と、補正信号生成部77とを備える。
【0104】
コントローラ30では、図5Aで示されたように、波長掃引光源51から投光された光を光カプラ54によって主干渉計と副干渉計とに分岐し、それぞれより得られる主干渉信号及び副干渉信号を処理することによって、計測対象物Tまでの距離値を算出している。
【0105】
複数の受光素子71a~71cは、図5Aに示された受光素子56a~56cに相当し、主干渉計からの主干渉信号をそれぞれ受光して、電流信号としてそれぞれ増幅回路72a~72cに出力する。
【0106】
複数の増幅回路72a~72cは、電流信号を電圧信号に変換(I-V変換)して増幅する。
【0107】
複数のAD変換部74a~74cは、図5Aに示されたAD変換部58a~58cに相当し、後述する補正信号生成部77からのKクロックに基づいて、電圧信号をデジタル信号に変換する(AD変換)。
【0108】
処理部75は、図5Aに示された処理部59に相当し、AD変換部74a~74cからのデジタル信号をFFTを用いて周波数に変換し、それらを解析して、計測対象物Tまでの距離値を算出する。
【0109】
複数の受光素子71d~71e及び差動増幅回路76は、図5Aに示されたバランスディテクタ60に相当し、副干渉計における干渉光をそれぞれ受光して、一方は位相の反転した干渉信号を出力し、2つの信号の差分を取ることによってノイズを除去しつつ、干渉信号を増幅して電圧信号に変換する。
【0110】
補正信号生成部77は、図5Aに示された補正信号生成部61に相当し、電圧信号をコンパレータで2値化し、Kクロックを生成し、AD変換部74a~74cに出力する。Kクロックは、主干渉計のアナログ信号よりも高周波に生成される必要があるため、補正信号生成部77で周波数を逓倍(例えば、8倍等)して高周波化してもよい。
【0111】
図8は、コントローラ30における処理部59によって実行される、計測対象物Tまでの距離を算出する方法を示すフローチャートである。図8に示されるように、当該方法は、ステップS31~S34を含む。
【0112】
ステップS31では、処理部59は、下記FFTを用いて、波形信号(電圧vs時間)をスペクトル(電圧vs周波数)に周波数変換する。図9Aは、波形信号(電圧vs時間)がスペクトル(電圧vs周波数)に周波数変換される様子を示す図である。
【数1】
【0113】
ステップS32では、処理部59は、スペクトル(電圧vs周波数)をスペクトル(電圧vs距離)に距離変換する。図9Bは、スペクトル(電圧vs周波数)がスペクトル(電圧vs距離)に距離変換される様子を示す図である。
【0114】
ステップS33では、処理部59は、スペクトル(電圧vs距離)に基づいてピークに対応する距離値を算出する。図9Cは、スペクトル(電圧vs距離)に基づいてピークを検出し、それに対応する距離値が算出される様子を示す図である。図9Cに示されるように、ここでは、3チャネルにおいて、それぞれスペクトル(電圧vs距離)に基づいてピークが検出され、それぞれピークに対応する距離値が算出される。
【0115】
ステップS34では、処理部59は、ステップS33で算出された距離値を平均化する。具体的には、処理部59は、ステップS33で3チャネルにおいてそれぞれスペクトル(電圧vs距離)に基づいてピークが検出され、それに対応する距離値が算出されているため、それらを平均化して、当該平均化した算出結果を計測対象物Tまでの距離として出力する。
【0116】
なお、ステップS34では、処理部59は、ステップS33で算出された距離値を平均化する際に、SNRが閾値以上である距離値平均化することが好ましい。例えば、3チャンネルのうち、いずれかのチャンネルにおいて、そのスペクトル(電圧vs距離)に基づいてピークが検出されたものの、SNRが閾値未満の場合には、当該スペクトルに基づいて算出される距離値は、信頼性が低いと判断し、採用しない。
【0117】
次に、本開示に関して、より特徴的な構成、機能及び性質を中心に、具体的な実施形態として詳細に説明する。なお、以下に示される光干渉測距センサは、図1図9を用いて説明した変位センサ10に相当し、当該光干渉測距センサに含まれる基本的な構成、機能及び性質の全部又は一部は、図1図9を用いて説明した変位センサ10に含まれる構成、機能及び性質と共通している。
【0118】
<一実施形態>
[光干渉測距センサの構成]
図10は、本発明の一実施形態に係る光干渉測距センサ100の構成概要を示す模式図である。図10に示されるように、光干渉測距センサ100は、コントローラ101とセンサヘッド102とを備える。コントローラ101は、波長掃引光源110と、干渉計120と、受光部130と、処理部140とを備える。センサヘッド102は、光ファイバ150を介してコントローラ101と接続され、コリメートレンズ160及び対物レンズ170を含む。なお、波長掃引光源110から投光された光が供給され、計測対象物Tまでの距離を算出するための干渉光を生成するということから、干渉計120にセンサヘッド102を含めて干渉計と言うこともできる。
【0119】
波長掃引光源110は、連続的に波長を変化させながら光を投光する。すなわち、波長掃引光源110から投光される光は、継続して波長が変化している。
【0120】
干渉計120は、波長掃引光源110から投光された光が供給され、センサヘッド102により計測対象物Tに照射して反射される測定光と、測定光とは少なくとも一部異なる光路を辿る参照光とに基づく干渉光を生成する。例えば、干渉計120は、光カプラやサーキュレータ等で構成され、波長掃引光源110から投光された光を、光ファイバ150を介してセンサヘッド102に供給し、さらに、センサヘッド102からの戻り光を受光部130に導く。
【0121】
具体的には、波長掃引光源110から投光された光が干渉計120に供給され、光カプラ等の光分岐部によって光ファイバ150を介してセンサヘッド102に導かれる。センサヘッド102において、光ファイバ150から出射された光は、測定光としてコリメートレンズ160及び対物レンズ170を介して、計測対象物Tに照射される。計測対象物Tで反射された測定光は、対物レンズ170及びコリメートレンズ160を介して光ファイバ150に入射される。
【0122】
また、干渉計120から光ファイバ150を介してセンサヘッド102に供給される光の一部は、参照光として、光ファイバ150の先端に設けられた参照面で反射される。そして、上述した測定光と当該参照光とが干渉することにより、測定光及び参照光の光路長差に応じた干渉光が生成される。
【0123】
さらに、対物レンズ170は、例えば、表面に反射防止膜(ARコート)をコーティングする等の対策により、光ファイバ150から出射された光の反射を軽減している場合もあるものの、光ファイバ150から出射された光は、対物レンズ170の表面で反射され、当該反射光がコリメートレンズ160を介して光ファイバ150側に戻る。光干渉測距センサ100のセンサヘッド102では、対物レンズ170を傾けて配置することにより、対物レンズ170の反射光のうち、光ファイバ150側に戻って当該光ファイバ150に入射される反射光を軽減している。当該反射光についての詳細は、後述する。
【0124】
受光部130は、干渉計120からの干渉光を受光して電気信号に変換する。具体的には、受光部130は、受光回路及びAD変換部を有し、受光回路は、例えば、フォトディテクタである受光素子を含み、干渉計120からの光を受光し、受光量に応じた電気信号に変換する。AD変換部は、当該電気信号をアナログ信号からデジタル信号に変換する。
【0125】
処理部140は、受光部130によって変換された電気信号に基づいて、センサヘッド102から計測対象物Tまでの距離を算出する。例えば、処理部140は、FPGA等の集積回路で実現されるプロセッサであって、入力された各デジタル信号を、FFTを用いて周波数変換し、それに基づいて計測対象物Tまで距離が算出される。
【0126】
なお、センサヘッド102から計測対象物Tまでの距離とは、典型的には、センサヘッド102の先端から計測対象物Tまでの距離であり、処理部140は、当該距離を算出するが、これに限定されるものではない。例えば、処理部140は、センサヘッド102から計測対象物Tまでの距離として、センサヘッド102に接続される光ファイバの先端から計測対象物Tまでの距離、センサヘッド102に配置される対物レンズ170から計測対象物Tまでの距離、又はセンサヘッド102内部において予め設定された基準位置から計測対象物Tまでの距離等を算出してもよい。
【0127】
ここで、対物レンズ170での反射光、及び計測対象物Tでの反射光に基づいて、処理部140によって処理される波形信号について説明する。
【0128】
図11Aは、計測対象物Tがセンサヘッド102から遠い場合における、対物レンズ170での反射光及び計測対象物Tでの反射光の様子を示す図であり、図11Bは、計測対象物Tがセンサヘッド102から近い場合における、対物レンズ170での反射光及び計測対象物Tでの反射光の様子を示す図である。
【0129】
図11Aに示されるように、計測対象物Tがセンサヘッド102から遠い場合には、処理部140によって処理される波形信号において、対物レンズ170での反射光に伴うピークと、計測対象物Tでの反射光に伴うピークとが離れている。
【0130】
図11Aにおいて、センサヘッド102に供給される光は、光ファイバ150から出射され、測定光として、コリメートレンズ160及び対物レンズ170を介してセンサヘッド102より計測対象物Tに照射される。当該計測対象物Tで反射された光は、センサヘッド102に戻り、対物レンズ170及びコリメートレンズ160を介して再び光ファイバ150に入射する。一方、センサヘッド102に供給される光の一部は、参照光として、光ファイバ150の先端(端面)が参照面となり、当該参照面で反射する。
【0131】
そして、計測対象物Tで反射された測定光と、参照面で反射された参照光とが干渉して、干渉光が生成され、処理部140は、当該干渉光に基づいて、計測対象物Tまでの距離を算出する。図11Aの波形信号は、受光部130によって受光された干渉光に基づくものであって、処理部140は、計測対象物Tで反射された測定光と参照面で反射された参照光との干渉で現れるピークから、計測対象物Tまでの距離を算出する。
【0132】
また、センサヘッド102に供給される光は、光ファイバ150から出射され、その一部は、コリメートレンズ160を介して対物レンズ170の表面で反射される。当該対物レンズ170で反射された光は、コリメートレンズ160を介して再び光ファイバ150側に戻る。ここで、対物レンズ170は、光ファイバ150から当該センサヘッド102内に出射される光の光軸Lの垂直方向に対して、所定角度だけ傾けて配置されているため、光ファイバ150に戻る反射光を軽減している。すなわち、対物レンズ170で反射された光のスポットの中心が光ファイバ150のコア径より外側になるようにしている。
【0133】
仮に、対物レンズ170で反射された反射光が光ファイバ150に戻った場合には、当該反射光と参照面で反射された参照光との干渉でピークが現れるが、上述したように、対物レンズ170を傾けて配置していることにより、光ファイバ150に戻る対物レンズ170での反射光は軽減される。これにより、図11Aの波形信号において、当該反射光と参照面で反射された参照光との干渉によるピークは、現れ難くなる。
【0134】
このように、図11Aの波形信号において、計測対象物Tで反射された測定光と参照面で反射された参照光との干渉で現れるピーク以外の不要なピークを現れ難くすることによって、処理部140は、計測対象物Tまでの距離を適切に算出することができる。
【0135】
特に、図11Bに示されるように、計測対象物Tがセンサヘッド102に近い場合には、その効果が顕著である。図11Bにおいて、図11Aと同様に、計測対象物Tで反射された測定光と、光ファイバ150の先端(端面)の参照面で反射された参照光との干渉でピークが現れている。
【0136】
ここで、計測対象物Tがセンサヘッド102に近い場合には、当該計測対象物Tと対物レンズ170との距離が近い。このため、仮に、対物レンズ170で反射された反射光が光ファイバ150に戻った場合には、当該反射光と参照面で反射された参照光との干渉でピークが発生し、そのピークは、計測対象物Tで反射された測定光と、光ファイバ150の先端(端面)の参照面で反射された参照光との干渉で発生するピークと近くなる(図11Bでは一部重なっている)。
【0137】
上述した図11Aと同様に、対物レンズ170を傾けて配置していることにより、光ファイバ150に戻る対物レンズ170での反射光は軽減され、図11Bの波形信号においても、当該反射光と参照面で反射された参照光との干渉によるピークは、現れ難くなる。
【0138】
このように、図11Bの波形信号において、計測対象物Tで反射された測定光と参照面で反射された参照光との干渉で現れるピーク以外の不要なピークを現れ難くすることによって、処理部140は、計測対象物Tまでの距離を適切に算出することができる。
【0139】
次に、対物レンズ170の傾きについて、詳しく説明する。
図12は、光ファイバ150からセンサヘッド102内に出射される光の光軸Lの垂直方向に対して、対物レンズ170が所定角度θだけ傾けて配置されている様子を模式的に示す図である。図12に示されるように、コリメートレンズ160の焦点距離f、光ファイバ150の開口数NA、光ファイバ150のコア半径r及び光の波長λとする。
【0140】
光の強度が中心強度の(1/e)となる半径であるスポット半径Wは、下記(数2)で表すことができる。
≒0.82λ/NA ・・・(数2)
【0141】
光軸Lの垂直方向に対して、対物レンズ170が所定角度θだけ傾けて配置されているため、対物レンズ170での反射光は、コリメートレンズ160を介して再び光ファイバ150側に戻るところ、その反射光のスポットの中心Sは、光ファイバ150のコアの中心から距離dだけずれることになる。距離dは、下記(数3)を用いて表すことができる。
d=ftanθ ・・・(数3)
【0142】
そして、スポット半径Wの2倍の位置におけるビーム強度は、ピーク強度の0.1%(例えば、ガウシアン分布では、ガウシアン半径の2倍の位置における強度は、ピーク値の0.0003)となり、ほとんど無視できるレベルであると考えられる。つまり、距離dは、下記(数4)を満たすことで、対物レンズ170での反射光のうち、光ファイバ150のコアに戻る光は無視できると考えられる。
d>r+2W ・・・(数4)
【0143】
すなわち、上記(数2)~(数4)を用いて、対物レンズ170が光軸Lの垂直方向に対して傾けて配置される所定角度θは、下記(数5)を満たすとよい。
θ>arctan{(r+1.64λ/NA)/f} ・・・(数5)
【0144】
これにより、対物レンズ170での反射光のスポットの中心Sが光ファイバ150のコア径より外側になって、光ファイバ150のコア径に入射される反射光の強度は、無視できる程度まで小さくなる。
【0145】
換言すると、上記(数5)を満たさない場合には、対物レンズ170での反射光のうち、光ファイバ150のコアに戻る光は無視できない程度に大きくなり、例えば、図11Bに示された波形信号において、不要ピークが現れると、計測対象物Tまでの距離を適切に算出することができなくなるおそれがある。例えば、振動などが原因で、対物レンズ170の角度が光軸Lの垂直方向に近づいた場合、その旨を通知し、上記(数4)を満たさなくなる前に、対物レンズ170の配置を調整するとよい。
【0146】
より具体的には、対物レンズ170が光軸Lの垂直方向に対して傾けて配置される所定角度θが閾値よりも小さくなると、その旨を通知するとよい。ここで、閾値は、上記(数5)に示されたarctan{(r+1.64λ/NA)/f}以上である。
【0147】
以上のように、本発明の一態様に係る光干渉測距センサ100によれば、センサヘッド102における対物レンズ170は、光ファイバ150から当該センサヘッド102内に出射される光の光軸Lの垂直方向に対して、所定角度θだけ傾けて配置されているため、当該対物レンズ170による反射光の影響を軽減し、計測対象物Tまでの距離を適切に計測することができる。
【0148】
特に、図11Bに示されたように、計測対象物Tがセンサヘッド102と近い場合において、対物レンズ170による反射光の影響で不要ピークが現れ難くし、光干渉測距センサ100で計測不可能な不感帯が存在しないようにすることができる。すなわち、計測対象物Tがセンサヘッド102と近い場合であっても、計測対象物Tまでの距離を適切に計測することができる。
【0149】
なお、本実施形態では、センサヘッド102には、コリメートレンズ160及び対物レンズ170が配置されていたが、これに限定されるものではなく、例えば、さらに、コリメートレンズを配置したり、逆に、レンズを1枚の構成にしたりしてもよい。
【0150】
図13は、1枚のレンズで構成されるセンサヘッドの具体例を示す図である。図13(A)に示されるように、センサヘッド202は、所定角度だけ傾けたコリメートレンズ161が配置されている。また、図13(B)に示されるように、センサヘッド203は、所定角度だけ傾けた対物レンズ171が配置されている。
【0151】
このように、コリメートレンズ161及び対物レンズ171が所定角度だけ傾けて配置されることにより、コリメートレンズ161及び対物レンズ171による反射光のうち、光ファイバ150のコアに戻る光を軽減し、不要ピークが現れ難くすることができる。
【0152】
なお、1枚のレンズで構成されるセンサヘッドでは、配置されるコリメートレンズ161及び対物レンズ171は、所定角度として、5度以上傾けて配置されることが好ましい。
【0153】
また、ここでは、コリメートレンズ161の表面は、光ファイバ150からの光が入射される側を平面形状である例に挙げているが、本実施形態において、コリメートレンズの表面は、凸形状であってもよい。
【0154】
さらに、本実施形態では、所定角度だけ傾けて配置された光学素子として、コリメートレンズ及び対物レンズを例に挙げて説明したが、これらに限定されるものではなく、例えば、光学フィルタ、偏光素子、波長板、ビームスプリッター、回折格子、プリズム、及び回折光学素子やその他の光学レンズ等であってもよい。また、これらの光学素子は、典型的には、透過型の光学素子であり、少なくとも1つ以上配置されればよい。
【0155】
[干渉計の変形例]
上述した実施形態では、光干渉測距センサ100は、干渉計120において光ファイバの先端を参照面とすることで参照光を発生させるフィゾー型干渉計を用いていたが、干渉計は、これに限定されるものではない。
【0156】
図14は、測定光と参照光とを用いて干渉光を発生させる干渉計のバリエーションを示す図である。図14(a)では、干渉計における光分岐部121によって分岐された光路において、光ファイバの先端(端面)を参照面とする参照光と、センサヘッドから照射され計測対象物Tで反射される測定光との光路長差に基づいて干渉光が生成される。上述した実施形態に係る光干渉測距センサ100の干渉計の構成であり(フィゾー型干渉計)、当該参照面は、光ファイバと空気との屈折率の違いによって光が反射するように構成されていてもよい(フレネル反射)。また、光ファイバの先端に反射膜をコーティングしてもよいし、光ファイバの先端に無反射コーティングを施して、別途、レンズ面等の反射面を配置してもよい。
【0157】
図14(b)では、干渉計における光分岐部121によって分岐された光路において、計測対象物Tに測定光を導く測定光路Lmと、参照光を導く参照光路Lrとを形成し、参照光路Lrの先には参照面が配置されている(マイケルソン型干渉計)。参照面は、光ファイバの先端に反射膜をコーティングしてもよいし、光ファイバの先端に無反射コーティングを施して、別途、ミラー等を配置してもよい。当該構成では、測定光路Lmの光路長と参照光路Lrの光路長とで光路長差を設けることによって干渉光が生成される。
【0158】
図14(c)では、干渉計における光分岐部121によって分岐された光路において、計測対象物Tに測定光を導く測定光路Lmと、参照光を導く参照光路Lrとを形成し、参照光路Lrには、バランスディテクタが配置されている(マッハツェンダ型干渉計)。当該構成では、測定光路Lmと参照光路Lrの光路長とで光路長差を設けることによって、干渉光が生成される。
【0159】
このように、干渉計は、実施形態で説明したフィゾー型干渉計に限定されるものではなく、例えば、マイケルソン型干渉計やマッハツェンダ型干渉計であってもよいし、測定光と参照光との光路長差を設定することによって干渉光を発生させることができれば、どのような干渉計を適用してもよいし、これらの組み合わせ等やその他の構成を適用してもよい。
【0160】
なお、本発明の実施形態では、光干渉測距センサ100は、シングルチャネルとして説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、波長掃引光源110から投光された光を、複数の光カプラ等を用いて分岐させて、多段式の光干渉測距センサとして構成してもよい。本発明は、多段式の光干渉測距センサに適用することも可能である。
【0161】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【0162】
[附記]
波長を変化させながら光を投光する光源(110)と、
前記光源から投光された光が供給され、センサヘッドにより計測対象物に照射して反射される測定光と、前記測定光とは少なくとも一部異なる光路を辿る参照光とに基づく干渉光を生成する干渉計(120)と、
前記干渉計からの干渉光を受光して電気信号に変換する受光部(130)と、
前記受光部によって変換された電気信号に基づいて、前記センサヘッドから前記計測対象物までの距離を算出する処理部(140)と、を備え、
前記センサヘッド(102)は、
前記光源から投光された光を当該センサヘッドに導くための光ファイバ(150)に接続され、
前記光ファイバから当該センサヘッド内に出射される光の光軸(L)の垂直方向に対して、所定角度だけ傾けて配置された光学素子を含む、
光干渉測距センサ(100)。
【符号の説明】
【0163】
1…センサシステム、10…変位センサ、11…制御機器、12…制御信号入力用センサ、13…外部接続機器、20…センサヘッド、21…対物レンズ、22a~22c…コリメートレンズ、23…レンズホルダ、24…光ファイバアレイ、30…コントローラ、31…表示部、32…設定部、33…外部インタフェース(I/F)部、34…光ファイバ接続部、35…外部記憶部、36…計測処理部、40…光ファイバ、51…波長掃引光源、52…光増幅器、53,53a~53b…アイソレータ、54,54a~54e…光カプラ、55…減衰器、56a~56c…受光素子、58…AD変換部、59…処理部、60…バランスディテクタ、61…補正信号生成部、71a~71e…受光素子、72a~72c…増幅回路、74a~74c…AD変換部、75…処理部、76…差動増幅回路、77…補正信号生成部、100…光干渉測距センサ、101…コントローラ、102,202,203…センサヘッド、110…波長掃引光源、120…干渉計、121…光分岐部、130…受光部、140…処理部、150…光ファイバ、160,161…コリメートレンズ、170,171…対物レンズ、T…計測対象物、L…光軸、Lm…測定光路、Lr…参照光路
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図10
図11A
図11B
図12
図13
図14