(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033819
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
F16K 1/32 20060101AFI20240306BHJP
【FI】
F16K1/32 Z
F16K1/32 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137666
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】517304705
【氏名又は名称】株式会社コスにじゅういち
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】飯尾 逸史
【テーマコード(参考)】
3H052
【Fターム(参考)】
3H052AA01
3H052BA22
3H052CD02
3H052CD09
3H052DA01
3H052EA02
3H052EA16
(57)【要約】
【課題】 ロアディスク及びアッパーディスクの対向する箇所に摩耗痕が発生したとき、この摩耗痕に流体が集中して流れることを抑制する。
【解決手段】 液体吐出装置(200)は、液体供給装置(100)から加圧供給される液体を吐出させる。液体吐出装置(200)は、ロアディスク(219)及びアッパーディスク(217)と、アッパーディスク回転機構と、を備える。ロアディスク(219)及びアッパーディスク(217)は、互いに対向する位置に配置されており、液体を流通させるクリアランスを形成する。アッパーディスク回転機構は、ロアディスク(219)に対して、上記対向する方向に延びる軸の周りでアッパーディスク(217)を回転させる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体供給装置から加圧供給される液体を吐出させる液体吐出装置であって、
互いに対向する位置に配置されており、前記液体を流通させるクリアランスを形成するロアディスク及びアッパーディスクと、
前記ロアディスクに対して、前記対向する方向に延びる軸の周りで前記アッパーディスクを回転させるアッパーディスク回転機構と、
を備えることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記アッパーディスク回転機構は、
前記アッパーディスクの外周面に嵌合し、前記アッパーディスクの回転軸を回転中心とするウォームホイールと、
前記ウォームホイールと噛み合い、前記ウォームホイールを介して前記アッパーディスクを回転させるウォームと、を有することを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記アッパーディスクを回転可能にガイドするガイド部材と、
前記ウォームホイールを回転可能に保持するとともに、前記ガイド部材とともに前記ウォームホイールを挟む保持部材と、をさらに備え、
前記アッパーディスクの先端部は、前記ウォームホイールから前記ロアディスクに向かって突出していることを特徴とする請求項2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記アッパーディスクは、前記ロアディスクに近づく方向及び前記ロアディスクから離れる方向に移動可能であり、
前記アッパーディスクの外周面には、前記アッパーディスクの回転軸方向に延びるキー溝が形成されており、
前記ウォームホイールの内周面には、前記キー溝と係合するキー部材が設けられていることを特徴とする請求項2又は3に記載の液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を加圧して吐出させる液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のように、液体吐出装置は、液体供給装置から加圧供給される液体を所定の圧力で吐出させ、均質バルブを構成するアッパーディスクとロアディスクとの間のクリアランスに液体を流通させて該液体内の粒子の均質化を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高圧式ホモゲナイザーの液体吐出装置は、円環状のロアディスクに対して円柱状のアッパーディスクが所定のクリアランスを開けて対向配置されており、クリアランスに高圧の液体が高速で通過する。このとき、
図7に示すように、アッパーディスク及びロアディスクの各ディスク表面(液体の通過面)には、液体に含まれる粒子によって摩耗痕(切り欠き等、
図7の点線で囲った領域)が発生する。
【0005】
従来から、均質バルブに発生する摩耗痕は、均質機能(分散、乳化機能)の低下を招くことが知られており、技術的な課題となっていた。具体的には、摩耗痕が発生すると当該箇所に液体の流れが集中して圧力が低下し、所定の均質機能を発揮できなくなる。特に、摩耗痕が発生した箇所に液体の流れが集中した状態が続くと、摩耗痕が拡大し(摩耗痕の領域がさらに拡大したり、切り欠きの深さが大きくなったり)、所定の均質機能を発揮できなくなるまでのスパンが短くなる。
【0006】
このような摩耗痕による均質機能の低下に対し、均質バルブ(アッパーディスク、ロアディスク)の部品交換メンテナンスを行っているが、当該交換メンテナンスは、液体吐出装置の稼働時間、すなわち、ホモゲナイザーの稼働時間の減少に繋がる。さらには、上述したように、摩耗痕が発生した箇所に液体の流れが集中した状態が続くことで、所定の均質機能を発揮できなくなるまでのスパンが短くなるため、均質バルブの部品交換頻度が高くなり、稼働時間がさらに減少する。
【0007】
そこで、本発明の目的は、ロアディスク及びアッパーディスクにおいて、互いに対向する箇所に摩耗痕が発生したとき、これらの摩耗痕が対向している箇所に流体が集中して流れることを抑制できる液体吐出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、液体供給装置から加圧供給される液体を吐出させる液体吐出装置であり、ロアディスク及びアッパーディスクと、アッパーディスク回転機構とを備える。ロアディスク及びアッパーディスクは、互いに対向する位置に配置されており、液体を流通させるクリアランスを形成する。アッパーディスク回転機構は、ロアディスクに対して、上記対向する方向に延びる軸の周りでアッパーディスクを回転させる。
【0009】
アッパーディスク回転機構では、ウォームホイール及びウォームを用いることができる。ウォームホイールは、アッパーディスクの外周面に嵌合し、アッパーディスクの回転軸を回転中心とする。ウォームは、ウォームホイールと噛み合い、ウォームホイールを介してアッパーディスクを回転させる。
【0010】
液体吐出装置には、ガイド部材及び保持部材を設けることができる。ガイド部材は、アッパーディスクを回転可能にガイドする。保持部材は、ウォームホイールを回転可能に保持するとともに、ガイド部材とともにウォームホイールを挟む。ここで、アッパーディスクの先端部は、ウォームホイールからロアディスクに向かって突出している。
【0011】
アッパーディスクは、ロアディスクに近づく方向及びロアディスクから離れる方向に移動させることができる。ここで、アッパーディスクの外周面には、アッパーディスクの回転軸方向に延びるキー溝を形成することができる。そして、ウォームホイールの内周面には、キー溝と係合するキー部材を設けることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ロアディスク及びアッパーディスクにおいて、互いに対向する箇所に摩耗痕が発生したとき、ロアディスクに対してアッパーディスクを回転させることにより、対向する一対の摩耗痕の位相をずらすことができる。これにより、一対の摩耗痕が対向している箇所に流体が集中して流れることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態である液体供給装置の内部構造を示す概略図である。
【
図2】実施形態である液体吐出装置の内部構造を示す概略図(ウェッジの長手方向図)である。
【
図3】実施形態である液体吐出装置の内部構造を示す概略図(ウェッジの断面方向図)である。
【
図4】実施形態において、アッパーディスク回転機構を互いに異なる方向から見たときの拡大図である。
【
図5】実施形態のアッパーディスク回転機構の構成概略図である。
【
図6】実施形態のアッパーディスク回転機構により、摩耗痕の位相をずらす態様を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本実施形態について、図面を参照して説明する。液体吐出装置200は、液体供給装置100と共に、液体内の粒子の均質化を行う高圧式ホモゲナイザー(ホモジナイザー)を構成する装置である。
【0015】
(液体供給装置100の構造)
図1に示す液体供給装置100は、後述する液体吐出装置200に液体を供給するものである。液体供給装置100の構造について、
図1を用いて説明する。
図1は、液体供給装置100の内部構造を示す概略図である。なお、液体供給装置100の構造は、
図1に示す構造に限るものではなく、液体吐出装置200に液体を供給できる構造であればよい。
【0016】
液体供給装置100は、一対のプランジャ駆動機構101を有し、各プランジャ駆動機構101は、プランジャ102を矢印Dp1の方向又は矢印Dp2の方向に移動させる。プランジャ駆動機構101は、プランジャ102を駆動するための駆動力を発生する動力源(モータ等、不図示)と、駆動源からの駆動力をプランジャ102に伝達する伝達機構(不図示)とを有する。
【0017】
プランジャ102の先端部102aは、加圧シリンダ103の加圧室103aに挿入されている。プランジャ102の外周面と加圧室103aの内壁面との間には、シーリング部材104が配置されている。
【0018】
加圧シリンダ103は、液体を吸い込むための吸込口103bを有しており、吸込口103bには、配管(不図示)を介して、液体を収容するタンク(不図示)が接続されている。これにより、タンク内の液体は、配管を介して吸込口103bに移動することができる。吸込口103bにはチェック弁105が設けられており、吸込口103bは、連絡通路103cを介して加圧室103aにつながっている。これにより、吸込口103bから吸い込まれた液体を、連絡通路103cを介して加圧室103aに導くことができる。チェック弁105を設けることにより、液体は、吸込口103bから加圧室103aに向かう方向にのみ移動する。
【0019】
加圧シリンダ103は、液体を送り出すための送出口103dを有しており、送出口103dは、連絡通路103eを介して加圧室103aにつながっている。これにより、加圧室103a内の液体は、連絡通路103eを移動して送出口103dに導かれる。送出口103dにはチェック弁107が設けられており、液体は、連絡通路103eから送出口103dの外部に向かう方向にのみ移動する。
【0020】
一対の加圧シリンダ103には、合流管106が接続されている。合流管106は、2つの吸込口106aを有する。一方の吸込口106aは、一方の加圧シリンダ103の送出口103dと接続されており、他方の吸込口106aは、他方の加圧シリンダ103の送出口103dと接続されている。合流管106は、
図2及び
図3に示す液体吐出装置200に接続されており、合流管106から液体吐出装置200に液体が供給される。
【0021】
(液体供給装置100の動作)
上述した液体供給装置100の動作について、以下に説明する。
【0022】
加圧室103aに液体が収容されているとき、プランジャ102が矢印Dp1の方向に移動することにより、加圧室103a内の液体が圧縮されて加圧室103a内の圧力が上昇する。これにより、加圧された液体を加圧室103aから液体吐出装置200に供給することができる。加圧室103aから液体が送り出された後、プランジャ102が矢印Dp2の方向に移動することにより、このプランジャ102の移動に伴う吸引力によって、吸込口103bに供給されている液体が、連絡通路103cを移動して加圧室103aに移動する。これにより、加圧室103aに液体を収容させることができる。
【0023】
プランジャ102が矢印Dp1及び矢印Dp2の方向に移動することにより、加圧室103aに液体を吸い込む工程(吸込工程という)と、加圧室103aから液体を送り出して液体吐出装置200に液体を供給する工程(供給工程という)とを交互に行うことができる。ここで、2つのプランジャ102のうち、一方のプランジャ102において吸込工程が行われているとき、他方のプランジャ102では供給工程が行われる。これにより、2つのプランジャ102から交互に液体吐出装置200に液体を供給することができる。
【0024】
(液体吐出装置200の構造)
図2及び
図3に示す液体吐出装置200は、液体供給装置100から供給された液体を所定の圧力で吐出させるものである。液体吐出装置200の構造について、
図2及び
図3を用いて説明する。
図2は、液体吐出装置200の内部構造を示す概略図であり、
図3は、
図2に示す矢印Dsの方向から液体吐出装置200を見たときにおける、液体吐出装置200の内部構造を示す概略図である。
【0025】
合流管106は、液体吐出装置200と接続されている。合流管106には、合流管106内を移動する液体の圧力を検出するための圧力センサ301が設けられている。圧力センサ301によって検出された圧力は、コントローラ302に送信される。
図2に示す点線は、電気的な接続を意味する。コントローラ302は、圧力センサ301によって検出された圧力が予め設定された目標圧力となるようにモータ201を駆動する。目標圧力は、固定値であってもよいし、上限圧力及び下限圧力によって規定される所定範囲の圧力であってもよい。モータ201の駆動方法については、後述する。
【0026】
モータ201の出力軸201aには駆動プーリ202が固定されており、駆動プーリ202は、出力軸201aの回転に伴って回転する。タイミングベルト203は、駆動プーリ202及び従動プーリ204に掛けられており、駆動プーリ202の回転力を従動プーリ204に伝達する。従動プーリ204は、ボールスクリュー205の一端部に固定されており、ボールスクリュー205を矢印Rの方向に回転させる。ボールスクリュー205は、ベアリング206によって回転可能に支持されている。
【0027】
なお、モータ201の回転力をボールスクリュー205に伝達する機構は、
図2に示す機構に限るものではない。すなわち、モータ201の回転力をボールスクリュー205に伝達してボールスクリュー205を回転させることができればよく、回転力を伝達するための公知の機構を適宜採用することができる。ここで、モータ201の回転力をボールスクリュー205に伝達する機構には、ギヤ等によって構成された減速機構を含めることができる。
【0028】
ボールスクリュー205は、ボールスプライン207と係合しており、ボールスクリュー205及びボールスプライン207の係合部分によって、ボールスクリュー205の回転運動がボールスプライン207の直進運動(矢印Dlの方向の移動)に変換される。
【0029】
ボールスプライン207の先端部にはウェッジ208が接続されており、ウェッジ208は、ボールスプライン207と共に移動する。具体的には、ウェッジ208は、矢印Dhの方向に移動する。
図3に示すように、ウェッジ208の長手方向(
図2の左右方向)と直交する断面の形状は十字状に形成されており、ウェッジ208は、上面208a、下面208b及び一対の側面208cを有する。上面208a及び一対の側面208cのそれぞれは、ウェッジ208の移動方向(矢印Dhの方向)と略平行に延びており、平坦な面で構成されている。
【0030】
下面208bは、ウェッジ208の移動方向(矢印Dhの方向)に対して傾斜するテーパ面で構成されている。具体的には、ウェッジ208の基端部(ボールスプライン207との接続部分)において、下面208b及び上面208aの間の距離(
図2の上下方向の長さ)が最も大きくなっている。また、ウェッジ208の先端部(基端部とは反対側の端部)において、下面208b及び上面208aの間の距離(
図2の上下方向の長さ)が最も小さくなっている。そして、ウェッジ208の基端部から先端部に向かうにつれて、下面208b及び上面208aの間の距離が連続的に小さくなっている。
【0031】
図3に示すように、ウェッジ208の上面208a及び一対の側面208cのそれぞれにはローラ軸受209aが接触しており、ウェッジ208の下面208bにはローラ軸受209bが接触している。これにより、ウェッジ208は、ローラ軸受209a,209bによって支持されながら、矢印Dhの方向に移動することができる。3つのローラ軸受209aは、装置本体210に固定されており、ローラ軸受け209bは、装置本体210に対して
図2又は
図3の上下方向に移動可能である。ローラ軸受209a,209bを用いることにより、ウェッジ208及びローラ軸受209a,209bの接触部分における摩擦抵抗を低減することができる。
【0032】
図2に示すように、ウェッジ208は装置本体210を貫通可能であり、ウェッジ208の先端部分(
図2の一点鎖線で示す部分)は装置本体210から突出することがある。ここで、装置本体210から突出したウェッジ208の先端部分を覆うためのカバー211が装置本体210に取り付けられている。
【0033】
ローラ軸受209bの下端面には、スプリング212の上端面が接触しており、スプリング212の下端面には、スプラインナット213の上端面が接触している。スプリング212は、
図2又は
図3の上下方向で圧縮された状態において、ローラ軸受209b及びスプラインナット213の間に配置されて支持されている。これにより、ローラ軸受209b及びスプラインナット213の間には、
図2又は
図3の上下方向において、ローラ軸受209b及びスプラインナット213を引き離す付勢力が発生する。スプラインナット213の下端面は、スプリング212の付勢力を受けてナット押さえ部材214に押しつけられる。
【0034】
スプラインナット213の内周面は、スプラインシャフト215の外周面と係合しており、スプラインナット213は、
図2又は
図3の上下方向においてスプラインシャフト215を移動可能に支持する。スプラインシャフト215の上端面は、ローラ軸受209bの下端面と接触している。後述するようにローラ軸受209bが
図2又は
図3の下方向に移動したとき、ローラ軸受209bは、スプリング212の付勢力に抗してスプラインシャフト215を
図2又は
図3の下方向に押しつける。ここで、スプラインシャフト215は、ローラ軸受209bの移動に応じて移動する。
【0035】
スプラインシャフト215は穴部215aを有しており、穴部215aは、スプラインシャフト215の下端面から
図2又は
図3の上方向(スプラインシャフト215の移動方向)に延びている。穴部215aには、受けシャフト216が固定されており、受けシャフト216は、スプラインシャフト215と共に移動する。
【0036】
受けシャフト216の下端面には、アッパーディスク217の基端部(言い換えれば、上端部)が連結している。後述するように、アッパーディスク217は
図2又は
図3の上下方向に延びる軸の周りで回転可能であり、受けシャフト216は、アッパーディスク217を軸周りに回転可能に支持する。また、アッパーディスク217は、受けシャフト216と共に
図2又は
図3の上下方向に移動する。アッパーディスク217の外周面にはガイド部材218が設けられており、ガイド部材218は、アッパーディスク217を
図2又は
図3の上下方向、すなわち、アッパーディスク217の軸方向にガイドする。
【0037】
アッパーディスク217の先端部(言い換えれば、下端部)よりも下方には、液体が移動するスペースSが形成されている。このスペースSは、主に、装置本体210、アッパーディスク217、ロアディスク219及びインパクトリング220によって囲まれたスペースである。ロアディスク219の下端面は、ディスクサポート221によって支持されている。
【0038】
ロアディスク219、ディスクサポート221及び装置本体210には、スペースSに液体を導くための連絡通路222が設けられている。連絡通路222は、上述した合流管106に接続されている。一方、
図3に示すように、スペースSには連絡通路223が接続されており、連絡通路223は、スペースSから排出された液体を排出管224に導く。排出管224からは、所定圧力の液体が吐出される。
【0039】
(液体吐出装置200の動作)
液体吐出装置200では、モータ201を駆動してアッパーディスク217を移動させることにより、アッパーディスク217及びロアディスク219の間のクリアランス(以下、「バルブ開度」という)を調整して、液体吐出装置200から吐出する液体の圧力を上述した目標圧力となるように調整する。上述したように、モータ201を回転させると、ボールスクリュー205が矢印Rの方向に回転することにより、ボールスプライン207が矢印Dlの方向に移動するとともに、ウェッジ208が矢印Dhの方向に移動する。
【0040】
上述したように、ウェッジ208は、ローラ軸受209b、スプラインシャフト215及び受けシャフト216を介して、アッパーディスク217に連結されている。ここで、ローラ軸受209bがウェッジ208の下面(テーパ面)208bに接触する位置に応じて、アッパーディスク217の位置を変位させることができる。下面(テーパ面)208bのテーパ角は、ウェッジ208の移動量に応じたアッパーディスク217の移動量を考慮して適宜決めることができる。
【0041】
ローラ軸受209bが下面(テーパ面)208bに接触している場合において、例えば、ウェッジ208が移動すると、下面(テーパ面)208bがローラ軸受209bを下方に押し込むことにより、アッパーディスク217がロアディスク219に近づく方向に移動することができる。アッパーディスク217がロアディスク219に近づくことにより、バルブ開度が狭くなり、液体吐出装置200から吐出される液体の圧力を上昇させることができる。ウェッジ208の移動方向を逆向きに移動させると、アッパーディスク217がロアディスク219から遠ざかり、バルブ開度が広がり、液体吐出装置200から吐出される液体の圧力を低下させることができる。
【0042】
このように、ウェッジ208の下面(テーパ面)208bに対するローラ軸受209bの接触位置を変化させることにより、ロアディスク219に対するアッパーディスク217の位置、言い換えれば、バルブ開度を調整することができる。
【0043】
上述のバルブ開度の調整は、コントローラ302によって行われる。圧力センサ301によって検出された圧力が上述した目標圧力よりも低いとき、コントローラ302は、モータ201を駆動してアッパーディスク217をロアディスク219に近づく方向に移動させることにより、液体吐出装置200から吐出される液体の圧力を上昇させる。これにより、液体吐出装置200から吐出される液体の圧力を目標圧力に到達させることができる。
【0044】
一方、圧力センサ301によって検出された圧力が上述した目標圧力よりも高いとき、コントローラ302は、モータ201を駆動してアッパーディスク217をロアディスク219から離れる方向に移動させることにより、液体吐出装置200から吐出される液体の圧力を低下させる。これにより、液体吐出装置200から吐出される液体の圧力を目標圧力に到達させることができる。
【0045】
なお、本実施形態のバルブ開度の調整機構は、ウェッジ208の下面(テーパ面)208bに対するローラ軸受209bの接触位置を変化させる態様を一例に説明したが、これに限るものではない。空気圧を変化させるエアシリンダを利用した機構や、電動アクチュエータを利用した機構、または、エアシリンダの代わりに、例えば、特許6714229号に記載のような液体を利用した機構(例えば、油圧機構)であってもよい。
【0046】
(アッパーディスク回転機構の構成及び動作)
上述のように、アッパーディスク217とロアディスク219は、液体内の粒子を均質化する均質バルブを構成する。アッパーディスク217がロアディスク219に対して移動することにより、アッパーディスク217とロアディスク219の間のクリアランスが調整可能となる。クリアランスに液体を流通させて該液体内の粒子の均質化を行うと共に、クリアランス(すなわち、バルブ開度)を調整することにより、所定の均質機能を発揮させることができる。
【0047】
例えば、乳化処理や破砕処理を行うことができる。乳化処理では、脂肪球を含む液体がアッパーディスク217及びロアディスク219の間のクリアランスを通過するときに、脂肪球が破壊されて微小の脂肪球を生成することができる。破砕処理では、例えば、原料繊維を含む液体がアッパーディスク217及びロアディスク219の間のクリアランスを通過するときに、原料繊維を破壊して微小繊維を生成することができる。
【0048】
このとき、上述のように、アッパーディスク217とロアディスク219の間のクリアランスにおいて、液体が通過する各ディスク217,219の通過面217A,219Aに摩耗痕が発生することがある。摩耗痕の発生は、粒子が通過面217A,219Aに接触して疵が形成されることが要因である。さらには、アッパーディスク217がロアディスク219に対して移動する構造では、クリアランスが均一になりにくいことがあり、このクリアランスのばらつきによって摩耗痕が発生する要因になる。これは、アッパーディスク217及びロアディスク219の位置精度を高めてもクリアランスのばらつきを完全に無くすことは難しく、液体の流れが集中する箇所が発生してしまうことがある。そして、液体の流れが集中してしまうと、摩耗痕が発生しやすくなる。
【0049】
そこで、本実施形態の液体吐出装置200は、アッパーディスク217を軸周りに回転させるアッパーディスク回転機構を備える。
図4は、アッパーディスク回転機構の拡大図であり、
図4の左図は、アッパーディスク217を一方向から見たときの図(
図2に示す断面に相当する)であり、
図4の右図は、左図の左方向(
図2に示す矢印Dsの方向)からアッパーディスク217を見たときの図(
図3に示す断面に相当する)である。
図5は、アッパーディスク回転機構の構成概略図であり、アッパーディスク217の軸方向から見たときの図である。
【0050】
まず、
図2,3に示すように、アッパーディスク217の基端部は、受けシャフト216の下端面に連結されており、受けシャフト216は、アッパーディスク217を軸周りに回転可能に支持している。アッパーディスク217の外周面にはガイド部材218が設けられている。
【0051】
ガイド部材218は、アッパーディスク217の軸方向への移動をガイドするとともに、アッパーディスク217を軸周りに回転可能にガイドする。ガイド部材218及びスペースSの間には、ウォームホイール231が設けられている。ウォームホイール231は、アッパーディスク217の外周面に嵌合し、アッパーディスク217の軸を回転中心とする歯車である。
【0052】
ウォームホイール231の周囲には、保持部材233が設けられ、保持部材233は、アッパーディスク217に嵌合したウォームホイール231を回転可能に保持する。ウォームホイール231は、ガイド部材218と保持部材233とに挟まれ、ウォームホイール231からアッパーディスク217の先端部がロアディスク219に向かって突出している。
【0053】
アッパーディスク217とガイド部材218の間、ガイド部材218とウォームホイール231の間、保持部材233と装置本体210の間は、それぞれシールされており、スペースSの水密性が保たれている。
【0054】
図5に示すように、ウォーム232は、筒状のねじ歯車であり、ウォームホイール231と噛み合い、ウォームホイール231を介してアッパーディスク217を回転させる。ウォーム232は、ベアリングによって回転可能に支持されており、歯車を構成するウォーム本体232aの一端には、回転軸232bが延設されている。回転軸232bの一端部には、ウォーム232を回転させるためのハンドル232cが連結されている。ウォーム本体232a及び回転軸232bは、アッパーディスク217の軸と直交する方向に設けられており、ウォーム232(ウォーム本体232a及び回転軸232b)の回転は、ウォーム本体232a及びウォームホイール231の噛み合いによって、アッパーディスク217の軸周りの回転へと変換される。
【0055】
装置本体210には、ウォーム232が設置されるスペースが設けられると共に(不図示)、回転軸232bが装置本体210の外側に延設され、回転軸232bにハンドル232cが取り付けられる。なお、本実施形態では、ウォームホイール231及びウォーム232で構成されるアッパーディスク回転機構の駆動方式として、ハンドル232cを用いて手動で回転させる態様を一例に説明したが、これに限らず、例えば、モータ等の回転駆動装置を回転軸232bに連結してアッパーディスク回転機構を駆動させてもよい。モータ等の回転駆動装置でアッパーディスク217を回転させる場合、例えば、遠隔からアッパーディスク217の回転操作を行うことも可能である。
【0056】
アッパーディスク217とウォームホイール231は、キー部材234を用いて嵌合しており、アッパーディスク217の外周面にキー溝217aが形成されている。キー溝217aは、アッパーディスク217の軸方向に延びる溝であり、キー部材234の一部を構成する頂部234aがキー溝217aに係合する。キー部材234の頂部234aは、
図4の左図に示すように、キー溝217aの側面と面接触しており、ウォームホイール231の回転をアッパーディスク217に伝達する。キー溝217aがアッパーディスク217の軸方向に延びていることにより、上述したバルブ開度の調整時におけるアッパーディスク217の移動を許容する。
【0057】
ウォームホイール231は、所定の厚さを有しており、アッパーディスク217が挿通する挿通孔231aの内周面には、当該内周面からウォームホイール231の径方向外側に向かって穿孔されたキー挿入孔231bが設けられている。キー部材234は、アッパーディスク217のキー溝217aに嵌合する頂部234aから延設され、キー挿入孔231bに挿入される挿入キー234bが設けられている。
図4に示すように、キー溝217aは、アッパーディスク217の軸対称(対角)に2箇所設けられ、これに対応してウォームホイール231にも軸対称に2つのキー挿入孔231bが形成されている。
【0058】
ウォームホイール231の各キー挿入孔231bにキー部材234の挿入キー234bを挿入し、アッパーディスク217のキー溝217aに、挿通孔231aの内周面から突出する頂部234aを係合させることで、アッパーディスク217にウォームホイール231を回転自在に連結することができる。
【0059】
図6は、本実施形態のアッパーディスク回転機構によって摩耗痕の位相をずらす態様を説明するための図である。
【0060】
摩耗痕は、アッパーディスク217及びロアディスク219のクリアランスを液体が通過する際に液体に含まれる粒子によって形成され、アッパーディスク217及びロアディスク219のうち、互いに向かい合う任意の領域に形成される。すなわち、アッパーディスク217及びロアディスク219の各通過面217A,219Aにおいて、摩耗痕が対となって形成される。
【0061】
このように通過面217A,219Aにおいて対となる摩耗痕が形成されると、この対の摩耗痕に液体の流れが集中することにより、クリアランスの全体に亘って均等に液体が流れにくくなり、圧力が低下する箇所が生じてしまい、所定の均質機能を発揮することができない。
【0062】
ロアディスク219に対してアッパーディスク217を軸周りに回転させると、ロアディスク219に形成された摩耗痕の箇所と、アッパーディスク217に形成された摩耗痕の箇所とをアッパーディスク217の回転方向にずらすことができる。つまり、アッパーディスク217に形成された摩耗痕を、ロアディスク219のうち、摩耗痕が形成されていない領域と向い合せることができる。また、ロアディスク219に形成された摩耗痕を、アッパーディスク217のうち、摩耗痕が形成されていない領域と向い合せることができる。
【0063】
これにより、各通過面217A,219Aにおいて対となって形成された摩耗痕に液体の流れが集中することを抑制することができる。また、対向する一対の摩耗痕に液体の流れが集中することを避け、液体の流れを分散させやすくなる。したがって、摩耗痕が発生した状態であっても、アッパーディスク217及びロアディスク219のクリアランスにおける液体の流れを均等な状態に近づけて、液体吐出装置200を稼働し続けることができ、液体吐出装置200の稼働効率が低下することを抑制できる。また、摩耗による部品(アッパーディスク217やロアディスク219)の交換周期を延長することができ、ランニングコストを低減させることができる。
【0064】
なお、アッパーディスク217を回転させるタイミングは、適宜決めることができる。例えば、アッパーディスク217の回転操作は、均質バルブが加圧状態ではないとき(例えば、液体吐出装置200の運転休止中)に行ったり、所定の運転時間が経過したときに行ったりすることができる。また、圧力センサ301によって検出される液体の圧力挙動を考慮して、アッパーディスク217の回転操作を行うタイミングを決めることができる。さらに、液体吐出装置200の動作中において、アッパーディスク217を任意の極低速の回転速度で回転させ続けることもできる。
【0065】
一方、本実施形態は、アッパーディスク217を上下方向に移動させてクリアランスを調整するようにしているが、アッパーディスク217を上下方向に移動させずに、クリアランスが固定された構造であっても、本発明を適用することができる。クリアランスが固定された場合であっても、粒子が通過面217A,219Aに接触して摩耗痕が発生することがあるため、ロアディスク219に対してアッパーディスク217を回転させることの意義がある。
【符号の説明】
【0066】
100:液体供給装置、200:液体吐出装置、201:モータ、
205:ボールスクリュー、207:ボールスプライン、208:ウェッジ、
209a,209b:ローラ軸受、212:スプリング、213:スプラインナット、
215:スプラインシャフト、216:受けシャフト、217:アッパーディスク、
217A:通過面、217a:キー溝、218:ガイド部材、219:ロアディスク、
219A:通過面、231:ウォームホイール、231a:挿通孔、
231b:キー挿入孔、232:ウォーム、233:保持部材、234:キー部材、
234a:頂部、234b:挿入キー