(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033820
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】O/D相組成物及び水中油型乳化組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/63 20060101AFI20240306BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20240306BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20240306BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240306BHJP
A61K 8/92 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
A61K8/63
A61K8/34
A61K8/06
A61Q19/00
A61K8/92
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137670
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】592215011
【氏名又は名称】東洋ビューティ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(72)【発明者】
【氏名】福岡 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】坂尾(下岡) 愛
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雅大
(72)【発明者】
【氏名】久間 將義
(72)【発明者】
【氏名】山口 剛史
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA122
4C083AB012
4C083AB032
4C083AC112
4C083AC121
4C083AC122
4C083AC131
4C083AC302
4C083AC352
4C083AC422
4C083AC532
4C083AC582
4C083AD042
4C083AD092
4C083AD111
4C083AD201
4C083AD202
4C083AD352
4C083AD531
4C083AD532
4C083DD31
4C083DD33
4C083EE01
(57)【要約】
【課題】O/D相組成物が、汎用の攪拌混合機を用いて水中油型乳化組成物を調製可能であり、希釈しても微細な乳化粒子の分散状態が安定し、肌に刺激の少ない水中油型乳化組成物とすることである。
【解決手段】グリチルリチン酸及びその塩類から選ばれる1種以上を3価以上の多価アルコールに溶解した界面活性成分(Detergent)相成分に、油性成分が添加され、10質量%水溶液のpHが5.0以下に調整されたO/D相組成物とし、ホモミキサー等の攪拌混合機を用いて粒子径(メジアン径)1.0μm未満の水中油型乳化組成物とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリチルリチン酸及びその塩類から選ばれる1種以上と、3価以上の多価アルコールとを含むD(Detergent)相成分に、油性成分が添加された組成物からなり、10質量%水溶液のpHが5.0以下のO/D相組成物。
【請求項2】
上記グリチルリチン酸の塩類が、グリチルリチン酸ジカリウムまたはグリチルリチン酸アンモニウムである請求項1に記載のO/D相組成物。
【請求項3】
上記3価以上の多価アルコールが、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、ソルビトール、マルチトール及びグリセリルグルコシドから選ばれる1種以上である請求項1または2に記載のO/D相組成物。
【請求項4】
上記D(Detergent)相成分に、水が含有されている請求項1または2に記載のO/D相組成物。
【請求項5】
上記D(Detergent)相成分に、水が含有されている請求項3に記載のO/D相組成物。
【請求項6】
請求項1または2に記載のO/D相組成物が形成したD相中油型の乳化粒子を、水性成分中に分散させた水中油型乳化組成物。
【請求項7】
請求項4に記載のO/D相組成物が形成したD相中油型の乳化粒子を、水性成分中に分散させた水中油型乳化組成物。
【請求項8】
上記水中油型乳化組成物中の乳化粒子の粒子径(メジアン径)が、1.0μm未満である請求項6に記載の水中油型乳化組成物。
【請求項9】
上記水中油型乳化組成物中の乳化粒子の粒子径(メジアン径)が、1.0μm未満である請求項7に記載の水中油型乳化組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、化粧料等の水中油型乳化物を調製するために用いるO/D相組成物及びそのO/D相組成物から調製された水中油型乳化組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、クリームや乳液などの化粧料に汎用される乳化組成物には、水と油を均一に分散するために界面活性剤が用いられており、このような界面活性成分は、特に皮膚が様々な刺激に対して感受性が高まっている状態、すなわち敏感肌と呼ばれる状態では、刺激因子の一つになりやすいことが知られている。
【0003】
因みに、痒み、かぶれ、刺激感、ニキビ、日光過敏、ひりひり感などの症状が引き起こされやすい敏感肌に対応した外用剤を開発する場合は、肌に刺激となるような防腐剤、界面活性剤、安定化剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤などをできる限り使用せず、もしくは最小限量のみ使用し、または代替成分などを用いて所要の特性を保てるように調製する必要がある。
【0004】
例えば、皮膚への刺激の少ない界面活性剤としては、イオン性界面活性剤ではなく、非イオン性界面活性剤が好ましい。敏感肌をもつ人だけではなく、健常な人でも刺激成分の少ない化粧料が好まれるので、できれば界面活性剤を無添加で化粧料その他の皮膚外用剤を構成することが好ましい。
【0005】
ただし、化粧料に用いる乳化組成物における乳化粒子の粒子径は、乳化状態の安定性、化粧料の使用感、有効性の面で重要な要因となり、配合される成分や調製工程によって粒子径をより小さくすることによって、肌なじみや浸透性を高める検討がされている。
【0006】
微細な粒子径に調製するために加圧機構を備えた圧力式ホモジナイザーとも呼ばれる高圧乳化機が用いられており、これによって機械力による微細化が可能であり、例えば10~100MPaまで加圧して装置内のホモバルブを通過させる際に、衝突によるせん断作用を受けて乳化粒子は、粉砕されて分散し、微細な乳化粒子となる。
【0007】
このような高圧乳化機を用いる場合でも界面活性作用を有する成分は必須であり、皮膚刺激性の低い界面活性剤の一種であるホスホリルコリン基を有する重合体を用い、油滴の平均粒径が10~3000nmのO/W型乳化物を製造する方法が知られている(特許文献1、段落[0033])。
【0008】
界面活性作用を有する成分を配合し、かつ機械力によって微細な乳化粒子を生成する乳化方法には、上述した高圧乳化機のような特殊な設備が必要であり、加圧機構の無いホモミキサーのような攪拌に汎用される製造設備だけを用いて製造することは困難であった。
【0009】
ところで、大きな機械力を必要としない乳化方法として「D相乳化法」が周知である。D相乳化法は、グリセリンなどの多価アルコールに界面活性剤を溶解させ、そこに油相(O相)を撹拌条件下でゆっくりと投入してO/D(Oil/Detergent-Phase)相を得て、さらに水などで希釈することによって水中油型乳化物を調製できる。
【0010】
このような乳化法を用いると、ホモミキサー等のような汎用の攪拌混合機を用いて乳化することが可能である。しかし、特許文献2に記載される方法では、D相乳化法を行なう際に、融点が70℃以上の油性成分を0.01~10質量%配合する必要があると共に、70℃以上の高温でD相を乳化する必要があり、また界面活性剤としてはポリグリセリン脂肪酸エステルを用いる必要があり、グリチルリチン酸塩は用いられていなかった。
【0011】
ところで、界面活性剤に分類されない成分であって穏やかな界面活性作用を期待できるグリチルリチン酸塩を用いてD相乳化を行ない、皮膚化粧料用の乳化物を得る方法が知られている(特許文献3)。
また、上記のグリチルリチン酸もしくはその塩類は、分子内に3つのカルボキシル基を有するので、アルカリ剤による中和度が高いほど水への溶解性が高く、一般的にはpHが5.0を超えるように調整されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第3975895号公報
【特許文献2】特許第6386738号公報
【特許文献3】特開2006-124319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、特許文献3に記載される乳化方法では、グリチルリチン酸塩を用いて、D相乳化法とホモミキサー処理とを組み合わせて平均粒径2.0~5.0μmの乳化物を得ることはできるが、1.0μm未満の微細な平均粒径に調製することはできず、そのような調製をするためには前記乳化物を、さらにマイクロフルイダイザーによる高圧乳化処理しなければならなかった(特許文献3の[0057]~[0059])。
【0014】
すなわち、グリチルリチン酸塩を用いたD相乳化法とホモミキサー処理を組み合わせた従来の乳化方法では、平均粒径1.0μm未満の微小なサブミクロンの粒子径の乳化物は得られていなかった。
【0015】
また、上記した特許文献3の乳化方法では、水中油型乳化組成物に配合される油性成分の配合割合は60質量%以下に制限する必要があり、化粧料として汎用性の高い水中油型乳化組成物は得られなかった。
【0016】
そこで、この発明の課題は、上記した問題点を解決し、グリチルリチン酸塩を用いたO/D相組成物が、高圧乳化機のような加圧機構を有する特殊な製造設備を必要とせず、ホモミキサーのような汎用の攪拌混合機を用いて水中油型乳化組成物を調製可能であり、希釈しても微細な乳化粒子の分散状態が安定し、肌に刺激の少ない水中油型乳化組成物とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本願の発明者らは鋭意研究を重ねた結果、グリチルリチン酸もしくはその塩類またはそれらの両方の化合物と、3価以上の多価アルコール及び油性成分を含ませたO/D相組成物について、その10質量%水溶液のpHが5.0以下になるように調整することにより、高圧乳化機を使用せずに乳化させても粒子径(メジアン径)が1.0μm未満のサブミクロンの乳化物が得られることを見出し、この発明を完成させるに至った。
【0018】
すなわち、上記課題を解決するために、この発明は、グリチルリチン酸及びその塩類から選ばれる1種以上と、3価以上の多価アルコールとを含むD(Detergent)相成分に、油性成分が添加された組成物からなり、10質量%水溶液のpHが5.0以下のO/D相組成物としたのである。
【0019】
上記したように構成されるこの発明のO/D相組成物は、上記所定成分のD(Detergent)相と、油(Oil)相とからなり、その10質量%水溶液のpHが5.0以下に調整されているので、乳化粒子の生成に必要なエネルギーが比較的小さくなり、そのため水中に乳化粒子が分散されやすく、汎用的な攪拌混合機を用いて乳化することができる。特にホモミキサーのような汎用的な攪拌混合機を用いると、粒子径(メジアン径)1.0μm未満の水中油型乳化組成物を得ることができる。
【0020】
このようなO/D相組成物を用い、例えばホモミキサーのような特殊な加圧機構を有しない汎用的な攪拌混合機を用いて乳化する場合、O/D相組成物中に油性成分を30質量%以上配合することができ、さらには60質量%以上、例えば60質量%を超えて65質量%、または60~70質量%を配合することが可能である。
【0021】
このようにして得られる水中油型乳化組成物は、乳化粒子が安定して分散した乳化物になり、さらにはグリチルリチン酸もしくはその塩類を界面活性剤として用いているので、敏感肌の症状のある需要者にも刺激が少なく、抗炎症効果も期待できるものになる。
【発明の効果】
【0022】
この発明は、グリチルリチン酸及びその塩類から選ばれる1種以上の化合物と3価以上の多価アルコールを用いて所定のpH域に調製されたO/D相組成物としたので、水性成分で希釈して乳化する際に、高圧乳化機のような特殊な製造設備を必要とせずに、汎用の攪拌混合機を用いて簡便に乳化できるという利点がある。
【0023】
また、O/D相組成物が形成したD相中油型の乳化粒子の微細な分散状態が安定し、そのO/D相組成物を水性成分中に分散させた粒子径(メジアン径)1.0μm未満のサブミクロンサイズの乳化粒子が得られ、グリチルリチン酸もしくはその塩類の抗炎症効果も効率よく生かされるので、肌に対する刺激が少なく、化粧料等に好適で汎用性のある水中油型乳化組成物になるという利点もある。
【発明を実施するための形態】
【0024】
この発明の実施形態の水中油型乳化組成物は、グリチルリチン酸及びその塩類から選ばれる1種以上の化合物と、3価以上の多価アルコールとを含むD(Detergent)相成分に、油性成分が添加された組成物からなり、酸性側の所定pH域のO/D相組成物の形成したD相中油型の乳化粒子を、水性成分中に分散させたものである。
【0025】
すなわち、前記O/D相組成物は、10質量%水溶液のpHが5.0以下に調整されているので、乳化粒子を形成しやすく、すなわち乳化のためのエネルギー消費量が小さいので、加圧機構の無い攪拌混合機を用いて水中油型乳化組成物を調製できる。
【0026】
この発明に用いるグリチルリチン酸またはその塩類は、界面活性作用に加えて、化粧品や医薬部外品、医薬品などで抗炎症効果も期待できる成分であり、植物で生合成され、特に甘草に多く含まれる天然の有機化合物である。
【0027】
グリチルリチン酸の塩類としては、例えばグリチルリチン酸モノカリウム、グリチルリチン酸ジカリウム、グリチルリチン酸ジナトリウム、グリチルリチン酸トリナトリウム、グリチルリチン酸アンモニウムなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
また上記のグリチルリチン酸もしくはその塩類は、界面活性化合物として1種類を用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。またグリチルリチン酸もしくはその塩類を含む甘草根抽出物のような植物エキスを配合してもよく、中でもグリチルリチン酸ジカリウム、グリチルリチン酸アンモニウムを用いることが好ましい。
【0029】
グリチルリチン酸もしくはその塩類の配合割合は、特に限定されることなく、所期した乳化特性が得られるようにO/D相組成物中に0.1質量%~6質量%配合されることが好ましく、0.5質量%~4質量%の配合がより好ましい。0.1質量%未満の配合量ではO/D相組成物を調製することが容易でなくなり、6質量%以上では多価アルコールへの溶解が、かなり困難になるので好ましくない。
【0030】
この発明のO/D相(Oil/Detergent-Phase)組成物は、グリセリンなどの3価以上の多価アルコールに界面活性作用のあるグリチルリチン酸等の成分を溶解させ、そこに油相成分を撹拌条件下でゆっくりと投入してD相中に油相を分散させることによってD相中油型の乳化組成物として得られ、これを水などの水性成分で希釈して水性成分中に乳化粒子を分散させれば水中油型乳化組成物が得られる。D相成分には、水が含有されていてもよい。
【0031】
O/D相組成物の10質量%水溶液のpHが5.0以下であれば、pH調整剤を配合する必要はないが、必要に応じて有機酸、無機酸、ビタミン、アミノ酸などをpH調整剤として用い、5.0以下(またはpH5.0未満)にpH調整をする。
例えば、クエン酸、リン酸、リンゴ酸、乳酸、グリコール酸、アスコルビン酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、酢酸、酒石酸などをO/D相組成物に配合することが好ましく、中でもクエン酸、リン酸、リンゴ酸、乳酸を配合することがより好ましい。これらを配合する際には、特に限定するものではないが、水に溶解して配合しても良い。配合する水は、O/D相組成物中に0.5質量%~5質量%配合することが好ましく、1質量%~4質量%配合することがより好ましい。
【0032】
この発明に用いる3価以上の多価アルコールは、分子内に有する水酸基の数を価数として、例えばグリセリンのように3価またはそれ以上の多価アルコールを採用する。
【0033】
この発明で使用できる3価以上の多価アルコールは、例えば3価以上の水溶性多価アルコールが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また1種類の多価アルコールを用いてもよいし2種類以上を組み合わせてもよい。中でも3価以上のグリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリンや糖類であるソルビトール、マルチトール、グリセリルグルコシドなどを採用することが好ましく、さらに好ましくは、グリセリン、マルチトール、グリセリルグルコシドである。
【0034】
この発明に用いる油性成分は、特に限定されるものではないが、動植物油、ロウ、炭化水素油、脂肪酸、高級アルコール、エステル油、トリグリセライド、シリコーン油などが例示でき、これらを単独で使用してもよくまた、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0035】
油性成分の例としては、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ナタネ油、ヒマワリ油、ヒマシ油、オリーブ油、カカオ油、椿油、ヤシ油、木ロウ、ホホバ油、グレープシード油、アボガド油、コメヌカ油、月見草油、大豆油、綿実油、ゴマ油、サフラワー油、パーム油、アマニ油、シソ油、シア油、メドウフォーム油、サル油等の植物油脂類、馬油、ぼたん油(イノシシ)、エミュー油、シカ脂、ミンク油、卵黄油等の動物油脂類、ミツロウ、鯨ロウ、ラノリン、カルナウバロウ、キャンデリラロウ等のロウ類、流動パラフィン、スクワレン、マイクロクリスタリンワックス、セレシンワックス、パラフィンワックス、ワセリン等の炭化水素油、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノレン酸、リノール酸、オキシステアリン酸等の天然及び合成脂肪酸類、セタノール、ステアリルアルコール、ヘキシルデカノール、オクチルデカノール、ラウリルアルコール、コレステロール、フィトステロール等の天然及び合成高級アルコール類、イソプロピルミリスチン酸、イソプロピルパルミチン酸、イソプロピルステアリン酸、オクチルドデシルミリスチン酸、オクチルドデシルオレイン酸、2-エチルヘキサン酸グリセロール、コレステロールオレート等のエステル類、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、トリ(カプリル・カプリン・ミリスチン・ステアリン酸)グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル等のトリグリセライド、ジメチルポリシロキサン、高重合ジメチルポリシロキサン、アミノ変性シリコーン、ジメチコノール、ポリエーテル変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーン、メチルフェニルシリコーン、ベタイン変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、アルコキシ変性シリコーン、環状シリコーン等のシリコーン類が挙げられる。
【0036】
水中に分散する乳化粒子の粒子径(メジアン径)は、乳化状態が安定であれば特に限定する必要性はないが、例えば5.0μm以上の大きさの乳化粒子は、クリーミングや合一と言った不安定化を引き起こす傾向があるので、それよりも微細であることが好ましく、より好ましい粒子径(メジアン径)は1.0μm未満である。
【0037】
また、この発明の水中油型乳化組成物は、化粧料として、通常用いられる各種の添加成分をこの発明の効果を阻害しないよう適宜に添加してもよい。
そのような添加成分としては、例えば保湿剤、金属封鎖剤、糖、アミノ酸、ビタミン、酸化防止剤、色素、香料、植物エキス、ホルモン、美白成分などが添加成分として挙げられる。
【0038】
保湿剤としては、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキサンジオール、プロパンジオール、メチルプロパンジオール等の多価アルコールが挙げられる。
【0039】
金属封鎖剤としては、エデト酸、ジエチレントリアミン五酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン酢酸、フィチン酸、ニトロ三酢酸、及びその塩類が挙げられる。
糖としては、グルコース、ショ糖、フルクトース、キシリトース、マルトトリオース、スレイトール、エリスリトール等が挙げられる。
【0040】
アミノ酸としてはタウリン、指針、グルタミン酸、グリシン、リシン、ヒスチジン、セリン、バリン、アスパラギン酸、トレオニン、アラニン、イソロイシン、フェニルアラニン、アルギニン、プロリン、チロシン、イノシン酸、グアニル酸、PCA、グリシン等が挙げられる。
【0041】
ビタミンとしては、レチノール、リボフラビン、ピリドキシン、アスコルビン酸、トコフェロール、ヘスペリジン、パントテン酸、シアノコバラミン、ビオチン及びこれらの誘導体等が挙げられる。
酸化防止剤としては、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸プロピル、トコフェロール等が挙げられる。
【0042】
色素としては、法定色素に挙げられるタール色素、クチナシエキス、トウガラシエキス、パプリカエキス、モナスカスエキス、カカオエキス、沙棘果実油、炭、コチニール、キハダ樹皮エキス、オウゴンエキス、カラメル等の動植物由来成分、酸化鉄、酸化チタン、カオリン、酸化バリウムなどの顔料成分等が挙げられる。
【0043】
ホルモンとしては、エストラジオール、エストロン、エチニルエストラジオール、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン等が挙げられる。
美白成分としては、アスコルビン酸、アルブチン、エラグ酸、トラネキサム酸、ハイドロキノン、プラセンタエキス、カミツレエキス、コウジ酸、リノール酸及びこれらの誘導体等が挙げられる。
【実施例0044】
実施例及び比較例のO/D相組成物は、以下の表1-4に示す配合割合で、3価以上の多価アルコールとグリチルリチン酸またはその塩類を溶解させ、油性成分を20分程度かけて徐々に投入しながら500~1000rpmの条件で撹拌し、1kgのO/D相組成物を調製した。
【0045】
攪拌機は東京理化器械社製攪拌機マゼラZZ-1100を用いた。油性成分及び3価以上の多価アルコールの配合量と種類によって、O/D相組成物が高い粘性を持って撹拌が困難になった場合には加温によりその粘度を減少させた。
【0046】
O/D相組成物は、ホモミキサーを用いて3000~5000rpmの撹拌によってD相中油型の乳化粒子を微細化した。その後、残りの希釈水溶性溶媒による希釈を行なって水中油型乳化組成物を調製した。前記ホモミキサーは、プライミクス社製HOMOGENIZING MIXER MARKIIを用いた。
【0047】
(評価方法:外観確認)
O/D相組成物(O/Dゲル)を調製し、ゲルについて外観を目視し、以下の基準で評価し、表中に判定結果を記号で示した。
[評価] [判定]
均一なゲル : ○
油浮きもしくは分離 : ×
【0048】
(評価方法:希釈時外観)
O/D相組成物を精製水で10質量%希釈したエマルションの外観を目視して、以下の基準で評価し、表中に判定結果を記号で示した。
[評価] [判定]
均一なエマルション : ○
油浮きもしくは分離 : ×
【0049】
(評価方法:エマルション粒子径(μm))
エマルション粒子をレーザー回折式粒度分布測定装置:Malvern社製MASTERSIZER3000で測定し、そのメジアン径を確認した。
【0050】
(評価方法:pH)
O/D相組成物を精製水で10質量%希釈したエマルションのpHを測定した。
【0051】
【0052】
表1に示される結果からも明らかなように、比較例1では、クエン酸による酸性へのpH調整において、pH5.0を超えるとO/D相組成物の分離が確認された。
【0053】
一方、実施例1~4ではpH調整によってpH5.0以下に下げられていて、外観と希釈状態は安定し、粒子径(メジアン径)も1.0μm未満に小さくなることが確認された。実施例1~4のO/D相組成物の10質量%希釈した際のエマルションは、pH5.0以下であった。
【0054】
【0055】
表2に示される結果からも明らかなように、実施例5~9では、pH調整の為にクエン酸以外のリンゴ酸、リン酸、乳酸を使用したが、いずれもクエン酸と同様の効果が得られた。
また、比較例2及び3では、水酸化カリウムもしくはアルギニンを配合してpHが5.0以上であったため、油浮きもしくは分離が視認され、均一なゲルからなるO/D相組成物は得られなかった。
【0056】
【0057】
表3に示される結果からも明らかなように、実施例10~12では、3価以上の多価アルコールは、グリセリン以外のグリセリルグルコシドやマルチトールを用いたが、いずれもO/D相組成物が形成された。
また、実施例12及び実施例16では、油性成分がパルミチン酸オクチルより極性の高い植物油であるヒマワリ種子油やトリオクタン酸グリセリルを用いたが、O/D相組成物が視認できた。
【0058】
また、実施例12~15の結果から、3価以上の多価アルコールの配合量及び油剤の配合量の制約がなくてもO/D相組成物の形成は確認された。
【0059】
しかし、2価の多価アルコールである1,3-ブチレングリコールを用いた比較例4では、O/D相組成物が形成されなかった。さらに、多価アルコールを含まない比較例5では、比較例4と同様にO/D相組成物は形成されなかった。
【0060】
実施例17~19の水中油型乳化組成物は、下記の表4に示す割合で実施例11のO/D相組成物を用いて調製した。実施例11以外の成分を精製水に混合し、70~85℃、15分間で加温撹拌溶解させた。その後冷却し、実施例11組成物を投入し撹拌することで最終製剤とした。攪拌機は東京理化機械社製攪拌機マゼラZZ-1100を用いた。
【表4】
【0061】
表4に示される結果からも明らかなように、実施例17では、前記した実施例11のO/D相組成物を使用して乳液を調製し、実施例18及び実施例19ではクリームを調製した。
【0062】
得られた水中油型乳化組成物は、粒子径(メジアン径)がサブミクロンサイズ(1.0μm未満)であり、製剤として乳化粒子の分散状態が安定していた。