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特開2024-33831墜落制止用器具の監視システム及びフックホルダー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033831
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】墜落制止用器具の監視システム及びフックホルダー
(51)【国際特許分類】
   A62B 35/00 20060101AFI20240306BHJP
   G08B 25/04 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
A62B35/00 J
G08B25/04 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137690
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】509338994
【氏名又は名称】株式会社IHIインフラシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110001863
【氏名又は名称】弁理士法人アテンダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小松原 和也
(72)【発明者】
【氏名】中村 善彦
【テーマコード(参考)】
2E184
5C087
【Fターム(参考)】
2E184KA11
2E184LA16
2E184MA01
2E184MA10
5C087AA44
5C087BB20
5C087DD03
5C087EE10
5C087FF01
5C087FF02
5C087FF11
5C087GG84
(57)【要約】
【課題】電池管理に関する手間が不要であり、管理者がどこからでも管理可能で、且つ導入コストが低い墜落制止用器具の監視システムを提供する。
【解決手段】監視システムは、作業員に装着されるフックホルダー100と、高所作業現場に設置される中継ユニット200を備える。フックホルダー100は、フックの着脱状態を検出するフック着脱状態検出手段と、フック着脱状態情報を中継ユニット200に無線で送信する無線送信回路114と、無線送信回路114に電力を供給する発電回路115とを備える。発電回路115は、フック12をフック掛止部材103に掛けたり外したりする際に発電する。中継ユニット200は、フックホルダー100から受信したフック着脱状態情報をネットワークを介して管理サーバ300に中継する中継処理部212を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業員が着用する墜落制止用器具の使用状況を監視する監視システムであって、
作業員に装着されるフックホルダーと、
高所作業現場に設置される中継ユニットとを備え、
前記フックホルダーは、墜落制止用器具のランヤードの先端に設けられたフックを保持するフック保持部と、フック保持部に対するフックの着脱状態を検出するフック着脱状態検出手段と、フック着脱状態検出手段により検出されたフックの着脱状態に係る情報であるフック着脱状態情報を前記中継ユニットに無線で送信する第1送信回路と、作業員の運動に係る運動エネルギーにより発電して前記第1送信回路に電力を供給する第1発電部とを備え、
前記中継ユニットは、前記第1送信回路からのフック着脱状態情報を受信する第1受信回路と、前記第1受信回路で受信したフック着脱状態情報をネットワークを介して所定の管理サーバに中継する中継手段とを備えた
ことを特徴とする墜落制止用器具の監視システム。
【請求項2】
前記フック着脱状態検出手段は、フック保持部にフックを掛けるフック掛動作が行われたこと及びフック保持部からフックを外すフック外し動作が行われたことを検出し、
前記第1発電部は、前記フック掛動作及びフック外し動作に係る運動エネルギーを電力に変換する
ことを特徴とする請求項1記載の墜落制止用器具の監視システム。
【請求項3】
前記フック着脱状態検出手段は、フック掛動作により第1開閉状態となりフック外し動作により第2開閉状態となるスイッチを含み、
前記第1発電部は、前記スイッチの可動切片とリンクした可動部を備え、この可動部の運動に係る運動エネルギーを電力に変換する
ことを特徴とする請求項2記載の墜落制止用器具の監視システム。
【請求項4】
前記フックホルダーは、さらに、周囲にビーコンを無線で送信する第2送信回路と、作業員の運動エネルギーにより発電して前記第2送信回路に電力を供給する第2発電部とを備え、
前記中継ユニットは、前記第2送信回路からのビーコンを検出するビーコン検出回路と、前記ビーコン検出回路がビーコンを検出すると作業員に対して所定の警報を発する報知手段とを備えた
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項記載の墜落制止用器具の監視システム。
【請求項5】
作業員が着用する墜落制止用器具の使用状況を監視する監視システムで用いられ、作業員に装着されるフックホルダーであって、
墜落制止用器具のランヤードの先端に設けられたフックを保持するフック保持部と、フック保持部に対するフックの着脱状態を検出するフック着脱状態検出手段と、フック着脱状態検出手段により検出されたフックの着脱状態に係る情報であるフック着脱状態情報を前記中継ユニットに無線で送信する第1送信回路と、作業員の運動に係る運動エネルギーにより発電して前記第1送信回路に電力を供給する第1発電部とを備えた
ことを特徴とするフックホルダー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高所作業現場における作業員の墜落制止用器具の使用状況を監視するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
工事現場等の高所での作業の際には、作業員には墜落制止用器具の着用が義務づけられている。墜落制止用器具は、作業員の体に装着される人体ベルトと、人体ベルトに一端が連結するとともに他端にフックが設けられたランヤードとを備える。作業員は、高所作業に先立ち墜落制止用器具を装着し、高所作業現場においては親綱や足場の手すりや建築物などの取り付け設備にフックを掛け、その後に高所作業を行う。なお、墜落制止用器具は安全帯とも呼ばれる。
【0003】
墜落事故を防止するためには、作業員が墜落制止用器具を正しく且つ確実に使用することが肝要である。そこで、作業員に対して墜落制止用器具の装着を促すとともに使用状況を管理するためのシステムが提案されている(特許文献1参照)。特許文献1に記載のものでは、感圧センサや開閉センサなどのセンサ類及びセンサ信号を無線で送信する送信回路をフックに設けるとともに、人体ベルトにコントロールボックスを設けている。コントロールボックスは、センサ信号受信部と、スピーカと、LEDと、制御装置とを備えている。コントロールボックスの制御装置は、フックから受信したセンサ信号に基づき、スピーカやLEDを用いた各種報知制御を行うとともに、無線通信によりパーソナルコンピュータに墜落制止用器具の使用状態を送信する。パーソナルコンピュータは、コントロールボックスから受信した使用状態を管理するとともに、必要に応じて報知制御を行う。管理者は、パーソナルコンピュータを操作することにより、作業員の墜落制止用器具の使用状況を監視する。
【0004】
また、非特許文献1に記載のものは、墜落制止用器具に装着するLEDランプであって、フックを保持するフックハンガーユニットと、注意喚起用のLED発光部とを備えたものである。フックハンガーユニットにはフックの保持状態を検知するセンサが設けられており、LED発光部は当該センサの検知結果に基づきLEDの発光制御を行う。このような構成により、作業員から離れた位置にいる管理者は、LEDの発光状態を確認することにより、作業員の墜落制止用器具の使用状況を監視する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5116815号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「GENTI MITEL (ミテル) 安全帯用LEDランプ」, [online], [令和4年7月11日検索], インターネット<URL: https://33ryou.com/products1195>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載のものでは、墜落制止用器具としてセンサ類を取り付けた専用フックを用いており、既存の墜落制止用器具を用いることができず導入コストが高いという問題がある。一方、非特許文献1に記載のものは、作業員が管理者からみて死角にいる場合には監視ができないという問題がある。
【0008】
また、特許文献1及び非特許文献1に記載のものは、それぞれ墜落制止用器具に装着する装置には電池が必要である。電池としは充電不可な一次電池や充電可能な二次電池(蓄電池)を用いることができるが、一次電池の場合には定期的な電池交換が必要であり、二次電池の場合には定期的な充電が必要であり、適切な運用を行うには非常に手間がかかるという問題がある。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、電池管理に関する手間が不要であり、管理者がどこからでも管理可能で、且つ導入コストが低い墜落制止用器具の監視システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本願発明は、作業員が着用する墜落制止用器具の使用状況を監視する監視システムであって、作業員に装着されるフックホルダーと、高所作業現場に設置される中継ユニットとを備え、前記フックホルダーは、墜落制止用器具のランヤードの先端に設けられたフックを保持するフック保持部と、フック保持部に対するフックの着脱状態を検出するフック着脱状態検出手段と、フック着脱状態検出手段により検出されたフックの着脱状態に係る情報であるフック着脱状態情報を前記中継ユニットに無線で送信する第1送信回路と、作業員の運動に係る運動エネルギーにより発電して前記第1送信回路に電力を供給する第1発電部とを備え、前記中継ユニットは、前記第1送信回路からのフック着脱状態情報を受信する第1受信回路と、前記第1受信回路で受信したフック着脱状態情報をネットワークを介して所定の管理サーバに中継する中継手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、フックホルダーの第1送信回路は、作業員の運動エネルギーにより発電する第1発電部からの電力供給による動作するので、フックホルダーの電池管理に関する手間が不要となる。また、本発明によれば、管理者はネットワークを介して所定の管理サーバにアクセスすることにより墜落制止用器具の使用状況としてフックの着脱状態情報を監視することができる、すなわち管理者はどこにいても墜落制止用器具の使用状況を管理することができる。また、本発明によれば、従来の墜落制止用器具をそのまま使用することができるので導入コストが低いものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】墜落制止用器具の監視システムのシステム構成図
図2】フックホルダーの正面図及び側面図
図3】フックホルダーの機能構成図
図4】中継ユニットの機能構成図
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施の形態に係る墜落制止用器具の監視システムについて図面を参照して説明する。図1は墜落制止用器具の監視システムのシステム構成図、図2はフックホルダーの正面図及び側面図、図3はフックホルダーの機能構成図、図4は中継ユニットの機能構成図である。
【0014】
本実施の形態に係る墜落制止用器具の監視システムは、作業員が着用する墜落制止用器具10の使用状況を監視するものである。本監視システムは、図1に示すように、墜落制止用器具10を着用した作業員1に装着されるフックホルダー100と、高所作業現場2に設置される中継ユニット200と、管理サーバ300と、管理者が用いる管理者端末400とを備えている。中継ユニット200は、一つの現場2に対して複数配置することができる。
【0015】
本実施の形態では、フックホルダー100は墜落制止用器具10に装着される。ここで、フックホルダー100は、1つの墜落制止用器具10に対して、墜落制止用器具10に含まれるフック12の数、換言すればランヤード11の数と同数装着される。図1の例では、墜落制止用器具10は2本のランヤード11を備えているので、2つのフックホルダー100を備える。
【0016】
墜落制止用器具10は、従来周知のフルハーネス型の墜落制止用器具である。この墜落制止用器具10は、作業員1の体に装着される人体ベルトと、人体ベルトに一端が連結するとともに他端にフック12が設けられた1本又は2本のランヤード11とを備える。人体ベルトは、人体の両肩に掛けられる背中側で交差する一対の肩ベルトと、肩ベルトと連結し人体の腿に装着される腿ベルトと、人体の胸部において一対の肩ベルトを連結する胸ベルトとを備える。フックホルダー100は、墜落制止用器具10の一対の肩ベルトにそれぞれ着脱自在に装着される。
【0017】
フックホルダー100は、図2に示すように、箱状の筐体101と、筐体101に背面側に連結されたバックル102とを備えている。フックホルダー100は、このバックル102の上下に形成された挿通部102aに肩ベルトを挿通することにより墜落制止用器具10の肩ベルトに装着される。
【0018】
筐体101は、前面上部及び前面下部が傾斜した略直方体形状の箱体からなる。筐体101の前面中央には、矩形の窓101aが形成されている。この窓101aからは、フック着脱状態検出手段を構成する駆動レバー111が筐体101の内側から前方に向かって突出した状態で露出している。この駆動レバー111は、筐体101の内側において支持されており、駆動レバー111の前端部が上下に回動可能に構成されている。ここで、駆動レバー111の前端部は、通常時はバネ付勢により上下の可動範囲の略中央に位置するよう構成されている。筐体101の上面には、後述するLED121が設けられている。
【0019】
バックル102には、フック12を保持するための部材として、フック掛止部材103が付設されている。フック掛止部材103は、全体が略U字状に屈曲形成された棒状部材からなる。フック掛止部材103のU字の開放側端部は、バックル102の下部に固定されている。そして、フック掛止部材103は、バックル102の下部から下方に向けて延び、さらに前方から上方に向かって屈曲形成され、筐体101の前面と所定の間隔をおいて上方に延びている。フック掛止部材103のU字の屈曲側端部、すなわち上端部は、やや斜め前方に屈曲している。ここで、フック掛止部材103の下部がフック12の保持部となる。また、フック掛止部材103にフック12を掛ける又は外す際には、フック12がフック掛止部材103と筐体101の前面との間隙を通過する。この時、フック12は駆動レバー111と当接し、当該駆動レバー111を下方又は上方に回動させる。なお、フック12の通過後は、駆動レバー111は可動範囲の略中央に復帰する。
【0020】
図3に示すように、フックホルダー100は、フックの着脱状態情報を管理サーバ300に送信するためのフック着脱状態情報送信部110と、フックの着脱状態情報を表示するためのフック着脱状態情報表示部120と、無線ビーコン信号を送信するためのビーコン送信部130とを備えている。
【0021】
フック着脱状態情報送信部110は、前述した駆動レバー111と、スイッチ112と、駆動レバー111の動作とスイッチ112の可動切片112aの動作とをリンクさせるリンク機構113と、無線送信回路114と、発電回路115と、スイッチ112の可動切片112aの動作と発電回路115の可動部115aとをリンクさせるリンク機構116とを備えている。
【0022】
スイッチ112は、単極双投のスイッチであり、第1端子112b・第2端子112c・共通端子112dは無線送信回路114に接続している。また、スイッチ112は、バネ付勢等により可動切片112aが第1端子112bと短絡した第1開閉状態又は第2端子112cと短絡した第2開閉状態のいずれか一方の状態で維持されるロッカースイッチである。すなわち、スイッチ112は、開閉状態が切り替わる過渡期以外は、必ず第1開閉状態又は第2開閉状態の何れかの状態にある。
【0023】
リンク機構113は、駆動レバー111を下方に動作させるとスイッチ112が第1開閉状態から第2開閉状態に遷移するよう可動切片112aを駆動する。したがって、スイッチ112が第2開閉状態に遷移したことは、フック掛止部材103にフック12を掛けるフック掛動作が行われたことを意味する。なお、前述したように、駆動レバー111は下方へ動作させた後にはバネ付勢等により可動範囲の中央に復帰するが、この復帰時にはスイッチ112の状態遷移は行われない点に留意されたい。したがって、スイッチ112が第2開閉状態にある場合は、フック掛止部材103にフック12が掛けられている状態、換言すれば、フック12が使用されていない状態にある。
【0024】
同様に、リンク機構113は、駆動レバー111を上方に動作させるとスイッチ112が第2開閉状態から第1開閉状態に遷移するよう可動切片112aを駆動する。したがって、スイッチ112が第1開閉状態に遷移したことは、フック掛止部材103からフック12を外すフック外し動作が行われたことを意味する。なお、前述したように、駆動レバー111は上方へ動作させた後にはバネ付勢等により可動範囲の中央に復帰するが、この復帰時にはスイッチ112の状態遷移は行われない点に留意されたい。したがって、スイッチ112が第1開閉状態にある場合は、フック掛止部材103にフック12が掛けられていない状態、換言すれば、フック12が使用されていると推測できる状態にある。
【0025】
このような構成により、駆動レバー111と、スイッチ112と、リンク機能113とは、フック掛止部材103に対するフック12の着脱状態を検出するフック着脱状態検出手段として機能する。
【0026】
発電回路115は、リンク機構116によってスイッチ112の可動切片112aの動作とリンクして往復運動を行う可動部115aと、可動部115aに付設された永久磁石115bと、永久磁石115bの近傍に配置された電磁誘導コイル115cと、電磁誘導コイル115cから出力される電力を無線送信回路114に供給するための電源回路115dとを備えている。電源回路115dは、整流回路や、一時的な蓄電のためのキャパシタなど周知の回路を含む。このような構成により、発電回路115は、スイッチ112の開閉動作の際に、すなわちスイッチ112の開閉状態が遷移した際に発電が行われ、電力が無線送信回路114に供給される。ここで、スイッチ112の状態遷移は、前述したように駆動レバー111が上方向又は下方向に移動した際に行われる。そして、駆動レバー111は、フック掛動作或いはフック外し動作の際に駆動する。したがって、駆動レバー111と、リンク機構113と、リンク機構116と、発電回路115とは、作業員の動作に係る運動エネルギー、より具体的には、フック掛動作或いはフック外し動作に係る運動エネルギーを電力に変換する発電部として機能する。
【0027】
無線送信回路114は、スイッチ112の開閉状態(第1開閉状態又は第2開閉状態)が遷移した際に、遷移後の開閉状態をフックの着脱状態に係る情報であるフック着脱状態情報として中継ユニット200に無線で送信する。ここで、無線送信回路114から送信されるデータには、フック着脱状態情報の他に少なくともタイムスタンプと自身の識別情報とが含まれる。タイムスタンプは、無線送信回路114に含まれるタイマによって計時している時刻情報を用いればよい。自身の識別情報は、データ送信用プロトコルで用いられる自身のアドレスを用いてもよいし、当該アドレスとは別に設定した独自の識別情報を用いてもよい。なお、本実施の形態では、無線送信回路114はEnOcean(登録商標)の国際標準通信規格(ISO/IEC 14543-3-10:2012)に準拠するものとして実装した。
【0028】
フック着脱状態情報表示部120は、LED121と、スイッチ112の開閉状態に応じてLED121を駆動制御するLED駆動制御回路122と、LED駆動制御回路122に電力を供給する振動発電部123とを備えている。
【0029】
本実施の形態では、LED駆動制御回路122は、スイッチ112が第2開閉状態である場合、すなわちフック掛止部材103にフック12が掛けられている状態である場合にのみLED121を発光させるよう制御する。なお別の実施の形態では、LED駆動制御回路122は、スイッチ112が第1開閉状態である場合、すなわちフック掛止部材103にフック12が掛けられていない状態である場合にのみLED121を発光させるよう制御する。
【0030】
振動発電部123は、作業員の動作に係る運動エネルギー、より具体的には作業員の動作にともなう振動に係る運動エネルギーを電力に変換する。振動発電部123は、LED駆動制御回路122に常時電力を供給するために、蓄電池及び充電回路を備えていてもよい。なお、フック着脱状態情報表示部120は、振動発電部123にかえて或いは振動発電部123に加えて、太陽光発電などの環境発電部を備えていてもよい。
【0031】
ビーコン送信部130は、周囲にビーコンを無線で送信するビーコン送信回路131と、ビーコン送信回路131に電力を供給する振動発電部132とを備えている。
【0032】
ビーコン送信回路131は、自己の識別情報(ビーコンID)をビーコン信号として周期的に無線で周囲に広告する。ここで、ビーコンで用いられる識別情報は前記フック着脱状態情報とともに送信される識別情報と同一であっても異なっていてもよい。本実施の形態では、ビーコン送信の規格として、BLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)ビーコンを用いた。
【0033】
振動発電部132は、作業員の動作に係る運動エネルギー、より具体的には作業員の動作にともなう振動に係る運動エネルギーを電力に変換する。振動発電部132は、ビーコン送信回路131に常時電力を供給するために、蓄電池及び充電回路を備えていてもよい。なお、ビーコン送信部130は、振動発電部132にかえて或いは振動発電部132に加えて、太陽光発電などの環境発電部を備えていてもよい。
【0034】
次に、中継ユニット200について図4を参照して説明する。本発明ではフックホルダー100に電池を設けることなく、作業員の運動に係る運動エネルギーから変換した電力により動作するものとしている。このため、発電量の限界により、LTE(Long Term Evolution)網などの移動体通信網に直接アクセスするような消費電力の大きい通信回路を採用することができない。そこで、本発明では、フックホルダー100では消費電力の小さい通信回路を採用するとともに、中継ユニット200により管理サーバ300へのデータ通信を中継するよう構成した。なお、中継ユニット200には複数のフックホルダー100が収容される。
【0035】
図4に示すように、中継ユニット200は、中継部210と、警報部220とを備えている。中継部210は、無線受信回路211と、中継処理部212と、ネットワーク送受信部213と、表示部214とを備えている。警報部220は、ビーコン受信回路221と、警報制御部222と、スピーカ223とを備えている。
【0036】
無線受信回路211は、フックホルダー100の無線送信回路114に対応するものであり、無線送信回路114が送信するフック着脱状態情報、タイムスタンプ、識別情報を受信する。
【0037】
中継処理部212は、無線受信回路211で受信したデータ(フック着脱状態情報、タイムスタンプ、識別情報)を、ネットワーク送受信部213を用いて管理サーバ300に中継する。また、中継処理部212は、無線受信回路211で受信したデータ(フック着脱状態情報、タイムスタンプ、識別情報)に基づき表示部214の表示制御を行う。具体的には、中継処理部212は、前記識別情報とともにフック着脱状態情報を表示部214に表示するよう制御を行う。
【0038】
ネットワーク送受信部213は、ネットワークとの接続機能及びネットワークを介した管理サーバ300との通信インタフェイスを有する。ネットワーク送受信部213は、接続するネットワークに対応する1又は複数の通信インタフェイスを有する。本実施の形態では、ネットワーク送受信部213はLTE(Long Term Evolution)通信モジュールを有する。なお、ネットワーク送受信部213と管理サーバ300との間の通信経路は不問である。
【0039】
表示部214は、例えばLED素子や液晶パネルからなる周知の表示手段である。
【0040】
ビーコン受信回路221は、フックホルダー100のビーコン送信回路131に対応するものであり、ビーコン送信回路131が送信するビーコン信号を受信する。
【0041】
警報制御部222は、ビーコン受信回路221によるビーコン信号の受信により、近傍領域に作業員が侵入してきたこと検知する。そして、警報制御部222は、近傍領域に作業員が侵入してきたを検知すると、スピーカ223から所定の警告を発するよう制御する。ここで、作業員の識別は、ビーコン信号に含まれる識別情報(ビーコンID)に参照すればよい。
【0042】
本実施の形態では、中継ユニット200は、一次電池又は二次電池を内蔵し、この電池の電力により動作する。別の実施の形態では、中継ユニット200は、外部電源からの電力供給により動作する。なお、中継ユニット200は管理者により電池管理などの管理が行われる。
【0043】
管理サーバ300は、ネットワーク上に配置された周知のコンピュータである。本実施の形態では、管理サーバ300はインターネット上に配置されている。すなわち、管理サーバ300はいわゆるクラウドサーバとして実装されている。別の実施の形態では、管理サーバ300は、中継ユニット200が接続する移動体通信網内に配置されている。すなわち、管理サーバ300はいわゆるエッジサーバとして実装されている。
【0044】
管理サーバ300は、中継ユニット200を介してフックホルダー100から受信したデータ(フック着脱状態情報、タイムスタンプ、識別情報)を記憶・保持する。管理サーバ300は、前記データに加えて、当該データを中継した中継ユニット200の識別情報を記憶・保持することができる。また、管理サーバ300は、管理者が使用する管理者端末400に対して、各種データの閲覧や管理機能を提供するユーザインタフェイス部を有する。したがって、管理者は管理者端末400が管理サーバ300にアクセス環境であればどこでもフック着脱状態情報を参照することができる。なお、管理サーバ300と管理者端末400との間の通信経路は不問である。
【0045】
本実施の形態に係る墜落制止用器具の監視システムによれば、フックホルダー100には電池が不要であり、作業員の運動エネルギーから変換された電力により動作する。具体的には、フック着脱状態情報の送信処理は、フック掛止部材103にフック12を掛けたりフック12を外したりする動作に係る運動エネルギーから変換された電力により動作する。また、LED121の発光動作やビーコンの送信処理に、振動エネルギーから変換された電力により動作する。これにより、フックホルダー100の電池管理に関する手間が不要となる。また、フックホルダー100に電池が不要となるのでフックホルダー100をコンパクトに実装することができる。
【0046】
また、本実施の形態に係る墜落制止用器具の監視システムによれば、管理者は管理者端末400を用いてネットワークを介して管理サーバ300にアクセスすることにより墜落制止用器具10の使用状況としてフックの着脱状態情報を監視することができる、すなわち管理者はどこにいても墜落制止用器具10の使用状況を管理することができる。また、管理者は、フックホルダー100のLED121を視認することでも墜落制止用器具10の使用状況を監視することができる。したがって、利便性の高いものとなる。
【0047】
また、本実施の形態に係る墜落制止用器具の監視システムによれば、従来の墜落制止用器具10をそのまま使用することができるので導入コストが低いものとなる。
【0048】
以上、本発明の一実施の形態について詳述したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよい。
【0049】
例えば、上記実施の形態では、無線送信回路114の電源としてフック掛動作及びフック外し動作により発電する発電回路115を用いているが、さらに補助電源として振動発電などの生体発電や太陽光発電などの環境発電及びこれらにより発電された電力を蓄電する蓄電池を設けてもよい。
【0050】
また、上記実施の形態では、ビーコン送信部130をフックホルダー100の筐体101に内蔵する形態として実装したが、フックホルダー100とは別体として実装するようにしてもよい。この場合、ビーコン送信部130を内蔵した筐体を紐やステー等によりフックホルダー100の筐体101に連結すればよい。
【0051】
また、上記実施の形態では、管理者が墜落制止用器具の使用状況についての何らかの情報を取得するには、管理者端末400を用いて能動的に管理サーバ300にアクセスする必要があるが、管理サーバ300から管理者端末400に情報を通知するようにしてもよい。この場合、管理サーバ300から管理者端末400への通知は、墜落制止用器具の使用状況そのものを通知してもよいし、当該使用状況に何らかの変化・異常等が生じたことを通知してもよい。
【符号の説明】
【0052】
10…墜落制止用器具
12…フック
100…中継ユニット
103…フック掛止部材
110…フック着脱状態情報送信部
111…駆動レバー
112…スイッチ
113…リンク機構
114…無線送信回路
115…発電回路
116…リンク機構
120…フック着脱状態情報表示部
130…ビーコン送信部
200…中継ユニット
210…中継部
220…警報部
図1
図2
図3
図4