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特開2024-33851アンテナ装置及びこれを備えるICカード
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033851
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】アンテナ装置及びこれを備えるICカード
(51)【国際特許分類】
   H01Q 7/00 20060101AFI20240306BHJP
   H01Q 19/02 20060101ALI20240306BHJP
   G06K 19/077 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
H01Q7/00
H01Q19/02
G06K19/077 196
G06K19/077 244
G06K19/077 272
G06K19/077 296
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137728
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】梶木屋 翔磨
【テーマコード(参考)】
5J020
【Fターム(参考)】
5J020BC10
5J020DA02
(57)【要約】
【課題】カップリングコイルとブースターコイルの結合が高められたアンテナ装置を提供する。
【解決手段】アンテナ装置1は、第1コイル110と、第1コイル110と直列接続され、第1コイル110の開口110a内に配置される第2コイル120と、第1コイル110の開口110a内であって、第2コイル120の中心位置とは異なる位置に中心を有する第3コイル130と、第3コイル130の両端に接続された第1キャパシタC1とを備える。第1及び第2コイル110,120は、電流方向が互いに同じとなるよう周回している。第2コイル120は、第1コイル110の開口110aの中心からY方向の一方側寄りにオフセットして配置される。第3コイル130は、Y方向の他方側における第1コイル110との距離よりも、一方側における第2コイル120との距離の方が短い。これにより、第2コイルと第3コイルの結合が高められる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1コイルと、
前記第1コイルと直列接続され、前記第1コイルの開口内に配置される第2コイルと、
前記第1コイルの開口内であって、前記第2コイルの開口の中心位置とは異なる位置に開口の中心を有する第3コイルと、
前記第3コイルの両端に接続された第1キャパシタと、を備え、
前記第1及び第2コイルは、前記第1コイルの一端から前記第2コイルとの接続点に至る経路の周回方向と、前記接続点から前記第2コイルの当該接続点とは反対側の端部に至る経路の周回方向が同じとなるように接続されており、
前記第2コイルは、前記第1コイルの開口の中心から第1方向の一方側寄りにオフセットして配置され、
前記第3コイルは、前記第1方向の他方側における第1コイルとの距離よりも、前記一方側における第2コイルとの距離の方が短い、アンテナ装置。
【請求項2】
前記第1乃至第3コイルは、いずれもターン間のスペース幅よりもパターン幅の方が大きい、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記第3コイルは、前記第1方向におけるサイズが前記第1方向と直交する第2方向におけるサイズより大きく、且つ、前記第1コイルの開口の中心から前記第2方向における一方側寄りにオフセットして配置される、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記第1コイルの両端に接続された第2キャパシタをさらに備え、
前記第2キャパシタのパターン配置領域は、前記第1方向におけるサイズが前記第1方向と直交する第2方向におけるサイズより大きく、且つ、前記第1コイルの前記第1方向に延在する最内周ターンに沿って配置されている、請求項3に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記第1及び第2キャパシタの少なくとも一方は、一方向に延在する第1キャパシタ電極パターンと、前記一方向に延在し、前記第1キャパシタ電極パターンと対向する第2キャパシタ電極パターンと、前記第1キャパシタ電極パターンから分岐する複数の第3キャパシタ電極パターンと、前記複数の第3キャパシタ電極パターンと対向する第4キャパシタ電極パターンとを含む、請求項4に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記第1キャパシタ電極パターンと前記第2キャパシタ電極パターンの対向面積は、前記複数の第3キャパシタ電極パターンと前記第4キャパシタ電極パターンの対向面積より大きい、請求項5に記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記第1キャパシタ電極パターンは、前記第3コイルの周回方向に沿って延在する、請求項5に記載のアンテナ装置。
【請求項8】
コイル軸方向から見て、前記第2コイルと前記第3コイルは重なりを有している、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項9】
前記第2コイルのパターン幅は、前記第1コイルのパターン幅よりも細い、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載のアンテナ装置と、
貫通孔を有するメタルプレートと、
前記メタルプレートの前記貫通孔に配置されたICモジュールと、を備え、
前記第2コイルの開口部は、前記貫通孔と重なる、ICカード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アンテナ装置及びこれを備えるICカードに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、基材の表面に設けられたアンテナコイル、カップリングコイル及びブースターコイルを備えるアンテナ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-195049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたアンテナ装置は、アンテナコイルとブースターコイルが重なっていることから、両者間において高い結合が得られるものの、カップリングコイルとブースターコイルの間では必ずしも高い結合が得られなかった。
【0005】
したがって、本開示は、カップリングコイルとブースターコイルの結合が高められたアンテナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施態様によるアンテナ装置は、第1コイルと、第1コイルと直列接続され、第1コイルの開口内に配置される第2コイルと、第1コイルの開口内であって、第2コイルの開口の中心位置とは異なる位置に開口の中心を有する第3コイルと、第3コイルの両端に接続された第1キャパシタとを備え、第1及び第2コイルは、第1コイルの一端から第2コイルとの接続点に至る経路の周回方向と、接続点から第2コイルの当該接続点とは反対側の端部に至る経路の周回方向が同じとなるように接続されており、第2コイルは、第1コイルの開口の中心から第1方向の一方側寄りにオフセットして配置され、第3コイルは、第1方向の他方側における第1コイルとの距離よりも、一方側における第2コイルとの距離の方が短い。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、第2コイルと第3コイルの結合が高められたアンテナ装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本開示の一実施形態によるアンテナ装置を備えるICカード3の外観を示す略斜視図である。
図2図2は、ICカード3の構造を説明するための略分解斜視図である。
図3図3は、ICカード3の構造を説明するための略断面図である。
図4図4は、基材20の一方の表面21に形成された導体パターンの略平面図である。
図5図5は、基材20の他方の表面22に形成された導体パターンの略平面図である。
図6図6は、キャパシタ電極パターン151~154の形状及びこれらの重なりを説明するための部分的な拡大図である。
図7図7は、ICモジュール50を裏面側から見た略斜視図である。
図8図8は、ICカード3とカードリーダー6が通信を行う状態を示す模式図である。
図9図9は、第1の変形例を説明するための略平面図であり、基材20の一方の表面21に形成された導体パターンの形状を示している。
図10図10は、第1の変形例を説明するための略平面図であり、基材20の他方の表面22に形成された導体パターンの形状を示している。
図11図11は、第2の変形例を説明するための略平面図であり、基材20の一方の表面21に形成された導体パターンの形状を示している。
図12図12は、第2の変形例を説明するための略平面図であり、基材20の他方の表面22に形成された導体パターンの形状を示している。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら、本開示の実施形態について詳細に説明する。
【0010】
図1は、本開示の一実施形態によるアンテナ装置を備えるICカード3の外観を示す略斜視図である。
【0011】
図1に示すように、本開示の一実施形態によるICカード3は、第1方向であるY方向を長手方向、第2方向であるX方向を短手方向、コイル軸方向であるZ方向を厚み方向とする板状体であり、XY面を構成する上面3aと裏面3bを有している。ICカード3には後述するICモジュールが内蔵されており、ICモジュールの端子電極EがICカード3の上面3aに露出している。
【0012】
図2及び図3は、それぞれ本開示の一実施形態によるアンテナ装置1を備えるICカード3の構造を説明するための略分解斜視図及び略断面図である。
【0013】
図2及び図3に示すICカード3は、裏面3b側から上面3a側に向かって、プラスチックプレート10、基材20、磁性シート30及びメタルプレート40がこの順に積層された構造を有している。プラスチックプレート10は、磁束を妨げない樹脂材料からなる。プラスチックプレート10の表面は、ICカード3の裏面3bを構成する。メタルプレート40は、ステンレスやチタンなどの金属材料からなる。メタルプレート40の表面はICカード3の上面3aを構成する。メタルプレート40には貫通孔41が設けられており、貫通孔41の内部にICモジュール50が配置されている。このように、ICカード3は、本体にメタルプレートが用いられたカードである。
【0014】
基材20は、絶縁性樹脂材料からなるフィルムであり、その一方の表面21に第1コイル110及び第2コイル120を含む複数のコイルが設けられている。フィルム状の基材20を構成する絶縁性樹脂材料の例としては、PET(ポリエチレンテレフタレート)やPI(ポリイミド)などが挙げられる。基材20の一方の表面21はプラスチックプレート10と向かい合い、基材20の他方の表面22は、磁性シート30を介してメタルプレート40と向かい合う。プラスチックプレート10と基材20は、接着層61を介して接着される。
【0015】
基材20の他方の表面22は、磁性シート30で覆われる。磁性シート30と基材20は、接着層62を介して接着される。磁性シート30及び接着層62には、ICモジュール50と重なる位置に、それぞれ貫通孔31,64が設けられている。本実施形態によるアンテナ装置1は、基材20の表面21,22に形成された導体パターンによって構成される。メタルプレート40に設けられた貫通孔41は、Z方向から見た平面視で、磁性シート30の貫通孔31と重なりを有している。
【0016】
図4は、基材20の一方の表面21に形成された導体パターンの略平面図である。尚、図4に示すA-A線は、図3の断面位置を示している。図4においては、基材20の他方の表面22側に位置する磁性シート30の貫通孔31が破線で示されている。
【0017】
図4に示すように、基材20の一方の表面21には、第1コイル110、第2コイル120、第3コイル130及びキャパシタ電極パターン151,153,161,163が設けられている。これらのパターンは導電材料から構成されており、例えば、銅、アルミニウム、又はこれらの合金などが挙げられる。第1コイル110は、実使用時に外部のカードリーダーと結合するアンテナコイルとして機能してよい。第2コイル120は、ICモジュール50と結合するカップリングコイルとして機能してよい。第3コイル130は、第1コイル110及び第2コイル120と結合し、これによりアンテナ特性を高めるためのブースターコイルとして機能してよい。
【0018】
第1コイル110は、基材20の外周に沿って約3ターン周回しており、その開口110a内に第2コイル120、第3コイル130及びキャパシタ電極パターン151,153,161,163が配置されている。第1コイル110のパターン幅はW1であり、ターン間のスペース幅よりも大きい。第1コイル110は、X方向に延在する区間111,113と、Y方向に延在する区間112,114とを有しており、外周端を始点とした場合、区間111~114の順に周回する。これらの区間111~114は、いずれも磁性シート30とZ方向に重なる。第1コイル110のサイズは、X方向におけるサイズよりもY方向におけるサイズが大きい形状を有している。つまり、X方向に延在する区間111,113よりもY方向に延在する区間112,114の方が長い。なお、第1コイル110のX方向におけるサイズは、区間112の最外周ターンの外縁と区間114の最外周ターンの外縁との間のX方向と平行な方向に沿う距離であり、第1コイル110のY方向におけるサイズは、区間111の最外周ターンの外縁と区間113の最外周ターンの外縁との間のY方向と平行な方向に沿う距離である。また、第1コイル110のパターン幅W1は、第1コイル110のパターンの延在方向と直交する方向であって、第1コイル110の径方向に沿う方向の幅である。
【0019】
第1コイル110の外周端は、基材20を貫通して設けられたビア導体115に接続される。また、第1コイル110の区間111のうち、最外周ターンから数えて2番目のターン(最内周ターンから数えて2番目のターン)の一部が分断されている。分断された一方及び他方の端部は、基材20を貫通して設けられたビア導体116,117にそれぞれ接続される。第1コイル110の内周端は、キャパシタ電極パターン151,153に接続される。
【0020】
キャパシタ電極パターン151は、第1コイル110の最内周ターンに位置する区間111の一部と、第1コイル110の最内周ターンに位置する区間114から分岐したパターンを有し、いずれもX方向に延在する。図4に示す例では、区間111の一部となる1本のキャパシタ電極パターン151と、区間114から5本のキャパシタ電極パターン151が分岐しているが、キャパシタ電極パターン151の数については特に限定されない。なお、キャパシタ電極151は、いずれも第1コイル110の最内周ターンに位置する区間114から分岐したパターンであってもよい。また、1本のキャパシタ電極パターン151からは、複数のキャパシタ電極パターン153が分岐している。キャパシタ電極パターン153はいずれもY方向に延在する。図4に示す例では、1本のキャパシタ電極パターン151から7本のキャパシタ電極パターン153が分岐しているが、キャパシタ電極パターン153の数については特に限定されない。図4に示すように、キャパシタ電極パターン151,153が配置されたパターン配置領域Bは、Y方向におけるサイズがX方向におけるサイズより大きく、且つ、第1コイル110の最内周ターンに位置する区間114に沿って配置されている。
【0021】
第2コイル120は、磁性シート30の貫通孔31と重なる位置に配置されており、その内周端は、基材20を貫通して設けられたビア導体121に接続される。第2コイル120の外周端は、導体パターン123に接続され、導体パターン123の先端が基材20を貫通して設けられたビア導体122に接続される。第2コイル120は、磁性シート30の貫通孔31と重なる位置で約3ターン周回しており、最外周ターンを含む各ターンが磁性シート30の貫通孔31と重なりを有している。第2コイル120のパターン幅はW2であり、ターン間のスペース幅よりも大きい。第2コイル120のパターン幅W2は、第1コイル110のパターン幅W1よりも小さくても構わない。これによれば、第1コイル110の交流抵抗値を低減しつつ、限られたスペースに配置される第2コイル120のターン数を十分に確保することが可能となる。また、第2コイル120のパターン幅W2は、第2コイル120のパターンの延在方向と直交する方向であって、第2コイル120の径方向に沿う方向の幅である。
【0022】
第2コイル120は、磁性シート30の貫通孔31を介して、メタルプレート40の貫通孔41に配置されたICモジュール50とZ方向に重なる。ICモジュール50は、ICカード3のY方向における一方側(+Y方向側)寄りにオフセットして配置されていることから、第2コイル120についても、第1コイル110の開口110aの中心からY方向の一方側寄りにオフセットして配置される。
【0023】
第3コイル130は、X方向に延在する区間131,133と、Y方向に延在する区間132,134とを有しており、外周端を始点とした場合、区間131~134の順に周回する。第3コイル130の周回数は約5ターンである。これらの区間131~134は、いずれも磁性シート30とZ方向に重なる。第3コイル130のサイズは、X方向におけるサイズよりもY方向におけるサイズが大きい形状を有している。つまり、X方向に延在する区間131,133よりもY方向に延在する区間132,134の方が長い。第3コイル130のパターン幅はW3であり、ターン間のスペース幅よりも大きい。第3コイル130のパターン幅W3は、第1コイル110のパターン幅W1よりも小さく、第2コイル120のパターン幅W2よりも大きくても構わない。第3コイル130の内周端は、基材20を貫通して設けられたビア導体135に接続される。第3コイル130の外周端は、キャパシタ電極パターン161,163に接続される。なお、第3コイル130のX方向におけるサイズは、区間132の最外周ターンの外縁と区間134の最外周ターンの外縁との間のX方向と平行な方向に沿う距離であり、第3コイル130のY方向におけるサイズは、区間131の最外周ターンの外縁と区間133の最外周ターンの外縁との間のY方向と平行な方向に沿う距離である。また、第3コイル130のパターン幅W3は、第3コイル130のパターンの延在方向と直交する方向であって、第3コイル130の径方向に沿う方向の幅である。
【0024】
キャパシタ電極パターン161は、第3コイル130の最外周ターンに位置する区間131の一部であり、X方向に延在する。また、キャパシタ電極パターン161からは、複数のキャパシタ電極パターン163が分岐している。キャパシタ電極パターン163はいずれもY方向に延在する。したがって、キャパシタ電極パターン161は、第3コイル130の最外周ターンに沿って周回方向に延在する。或いは、キャパシタ電極パターン161を第2コイル110の最内周ターンに沿って周回方向に延在させても構わない。図4に示す例では、キャパシタ電極パターン161から25本のキャパシタ電極パターン163が分岐しているが、キャパシタ電極パターン163の数については特に限定されない。また、キャパシタ電極パターン161を複数設け、各キャパシタ電極パターン161から複数のキャパシタ電極パターン163を分岐させても構わない。
【0025】
第3コイル130は、第1コイル110の区間113と第2コイル120の間に配置されている。したがって、第3コイル130の開口の中心位置は、第2コイル120の開口の中心位置とは異なっている。ここで、第3コイル130は、第1コイル110の区間113よりも第2コイル120に近くなるよう配置されている。つまり、第3コイル130の区間131と第1コイル110の区間113のY方向における距離L1よりも、第3コイル130の区間133と第2コイル120のY方向における距離L2の方が短い。これにより、第2コイル120と第3コイル130の結合が高められている。ここで、第3コイル130の区間131と第1コイル110の区間113の間にキャパシタ電極パターン161,163を配置しているため、第1コイル110の区間113と第3コイル130の区間131のY方向における距離が拡大される。これにより、第1コイル110と第3コイル130の結合を抑制することが可能となる。
【0026】
また、第3コイル130は、第1コイル110の開口110aの中心からX方向の一方側(+X方向側)寄りにオフセットして配置されている。つまり、第3コイル130の区間132と第1コイル110の区間114のX方向における距離L3よりも、第3コイル130の区間134と第1コイル110の区間112のX方向における距離L4の方が短い。これにより、第3コイル130とパターン配置領域Bが干渉することなく、互いのY方向位置が部分的に重なるよう配置することが可能となる。各コイル110~130の開口の中心は、コイルの最内周ターンの内縁によって画定される領域の中心である。
【0027】
図5は、基材20の他方の表面22に形成された導体パターンの略平面図である。尚、図5に示すA-A線は、図3の断面位置を示している。
【0028】
図5に示すように、基材20の他方の表面22には、導体パターン141~144及びキャパシタ電極パターン152,154,162,164が設けられている。これらのパターンは導電材料から構成されており、例えば、銅、アルミニウム、又はこれらの合金などが挙げられる。
【0029】
導体パターン141は、キャパシタ電極パターン152,154に接続されるとともに、ビア導体115を介して第1コイル110の外周端に接続される。キャパシタ電極パターン152,154の平面位置は、それぞれキャパシタ電極パターン151,153と一致している。つまり、キャパシタ電極パターン151,152は基材20を介して互いに対向し、キャパシタ電極パターン153,154は基材20を介して互いに対向する。これにより、基材20の一方の表面21に設けられたキャパシタ電極パターン151,153と、基材20の他方の表面22に設けられたキャパシタ電極パターン152,154と、これの間に位置する基材20によって、第2キャパシタC2が構成される。
【0030】
導体パターン142は、一端がビア導体116に接続され、他端がビア導体121に接続される。また、導体パターン143は、一端がビア導体117に接続され、他端がビア導体122に接続される。これにより、第1コイル110と第2コイル120が直列接続されるとともに、第1コイル110の内周端と外周端の間に第2キャパシタC2が接続されることになる。第1コイル110、第2コイル120及び第2キャパシタC2は、外部回路に接続されない閉回路を構成する。第2キャパシタC2は、共振周波数を調整することにより通信特性を高める役割を果たす。第1コイル110、第2コイル120及び第2キャパシタC2による共振周波数を13.56MHz又は13.56MHz近傍の周波数帯に設定することで、近距離無線通信(NFC)が可能となる。
【0031】
第1コイル110と第2コイル120は、電流方向が互いに同じとなるよう周回している。例えば、第1コイル110の外周端を始点とした場合、第1コイル110及び第2コイル120は、いずれも左回り(反時計回り)に周回する。具体的には、第1コイル110及び第2コイル120は、第1コイル110の外周端から内周に向かって左周り(反時計回り)に周回して最外周から2番目のターンにおいて第2コイル120の内周端に接続され、第2コイル120の内周端から外周に向かって左回り(反時計回り)に周回して第1コイル110の2番目のターンに接続され、第1コイル110の2番目のターンからさらに内周に向かって左回りに周回して終点である第1コイル110の内周端に至る。つまり、第1コイル110及び第2コイル120を流れる電流の電流方向は、コイル軸を中心とした電流の周回方向が第1コイル110と第2コイル120で互いに同じ向きとなる。本実施形態では、第1コイル110の外周端を一端とした場合は、第1コイル110の最外周ターンから数えて2番目のターンにおける分断された一方の端部と第2コイル120の内周端が接続される部分が接続点、当該接続点とは反対側の端部が第2コイル120の外周端となり、第1コイル110の一端から接続点に至る経路の周回方向と、当該接続点から第2コイル120の外周端に至る経路の周回方向は同じ左周りとなる。一方、第1コイル110の内周端を一端とした場合は、第1コイル110の最外周ターンから数えて2番目のターンにおける分断された他方の端部と第2コイル120の外周端が接続される部分が接続点、当該接続点とは反対側の端部が第2コイル120の内周端となり、第1コイル110の一端から接続点に至る経路の周回方向と、当該接続点から第2コイル120の内周端に至る経路の周回方向は同じ右周りとなる。これにより、第1コイル110によって生じる磁束の向きと第2コイル120によって生じる磁束の向きが一致することから、磁束の打ち消し合いが生じず、通信距離を拡大することができる。また、第2コイル120は、第1コイル110の最外周ターン又は最内周ターンに接続されているのではなく、これらの間に位置する2番目のターンに挿入されるように接続されている。第1コイル110の2番目のターンは、線路長の約中間位置にあることから、最外周ターン及び最内周ターンよりも電流密度が高く、この部分に第2コイル120を接続することにより、第2コイル120に流れる電流量を十分に確保することが可能となる。なお、第1コイル110及び第2コイル120は、第1コイル110の外周端から内周に向かって周回した後に第2コイル120の外周端に接続されても構わない。この場合、第2コイル120の外周端から内周端に向かう周回方向が、第1コイル110の外周端から内周に向かう周回方向と同じとなるように接続すればよい。
【0032】
導体パターン144は、キャパシタ電極パターン162,164に接続されるとともに、ビア導体135を介して第3コイル130の内周端に接続される。キャパシタ電極パターン162,164の平面位置は、それぞれキャパシタ電極パターン161,163と一致している。つまり、キャパシタ電極パターン161,162は基材20を介して互いに対向し、キャパシタ電極パターン163,164は基材20を介して互いに対向する。これにより、基材20の一方の表面21に設けられたキャパシタ電極パターン161,163と、基材20の他方の表面22に設けられたキャパシタ電極パターン162,164と、これの間に位置する基材20によって、第1キャパシタC1が構成される。つまり、第1コイル130の内周端と外周端の間に第1キャパシタC1が接続されることになる。第3コイル130及び第1キャパシタC1は、外部回路に接続されない閉回路を構成する。また、第3コイル130は、第1コイル110及び第2コイル120にも接続されない。
【0033】
図6は、キャパシタ電極パターン151~154の形状及びこれらの重なりを説明するための部分的な拡大図である。
【0034】
図6に示すように、キャパシタ電極パターン151,152,154についてはX方向に直線的に延在するのに対し、キャパシタ電極パターン153はY方向に延在するとともに、キャパシタ電極パターン151との接続部である根元部分よりも、キャパシタ電極パターン154と重なる先端部分の方がX方向における幅が拡大された形状を有している。ここで、キャパシタ電極パターン152については、対向するキャパシタ電極パターン151とX方向に連続的に重なるのに対し、キャパシタ電極パターン154については、対向するキャパシタ電極パターン153がX方向に分断されている。このため、キャパシタ電極パターン151,152の対向面積は、キャパシタ電極パターン153,154の対向面積より大きい。また、キャパシタ電極パターン152は、キャパシタ電極パターン151のX方向における位置を超えて第1コイル110の最内周ターンに位置する区間114の一部と重なりを有しており、この部分においてもキャパシタンスが発生する。
【0035】
このようなパターン形状を有する第2キャパシタC2のキャパシタンスは、トリミングによっていくつかのキャパシタ電極パターン153を除去することによって微調整することができる。第1キャパシタC1を構成するキャパシタ電極パターン161~164についても同様である。
【0036】
図7は、ICモジュール50を裏面側から見た略斜視図である。
【0037】
図7に示すように、ICモジュール50は、モジュール基板51と、モジュール基板51に搭載又は内蔵されたICチップ52と、カップリングコイル53とを備えている。ICチップ52は、ドーム状の保護樹脂54で覆われることにより保護されている。保護樹脂54は絶縁部材からなる。モジュール基板51の表面側には、図1に示す端子電極Eが設けられる。このような構成を有するICモジュール50は、メタルプレート40に設けられた貫通孔41に収容される。ICモジュール50が貫通孔41に収容されると、カップリングコイル53と基材20に設けられた第2コイル120が電磁界結合する。そして、第2コイル120は、第1コイル110に直列接続されていることから、第1コイル110及び第2コイル120を介して、ICモジュール50が外部と通信可能となる。また、本実施形態によるアンテナ装置1は、ブースターコイルとして機能する第3コイル130を備えていることから、アンテナ特性が向上する。
【0038】
これにより、図8に示すように、ICカード3の裏面3bをカードリーダー6と向かい合わせれば、カードリーダー6とICチップ52との間で通信を行うことができる。つまり、カードリーダー6は、第1コイル110及び第2コイル120を経由して、ICモジュール50のカップリングコイル53と結合し、これによりICチップ52との通信が実現される。
【0039】
以上説明したように、本実施形態によるアンテナ装置1は、第1コイル110の開口110a内に第2コイル120と第3コイル130が配置されているとともに、第2コイル120と第3コイル130の距離が近づけられていることから、カップリングコイルとして機能する第2コイル120とブースターコイルとして機能する第3コイル130の間において高い結合を得ることが可能となる。
【0040】
図9及び図10は、第1の変形例を説明するための略平面図であり、図9は基材20の一方の表面21に形成された導体パターンの形状を示し、図10は基材20の他方の表面22に形成された導体パターンの形状を示している。
【0041】
第1の変形例は、第3コイル130のサイズがY方向よりもX方向に大きい点において、上述した実施形態と相違している。つまり、Y方向に延在する区間132,134よりもX方向に延在する区間131,133の方が長い。第1の変形例においても、第3コイル130は、第1コイル110の区間113よりも第2コイル120に近くなるよう配置されている。つまり、第3コイル130の区間131と第1コイル110の区間113のY方向における距離L1よりも、第3コイル130の区間133と第2コイル120のY方向における距離L2の方が短い。距離L1は、図4に示す構造よりも拡大されている。これにより、より多くのキャパシタ電極パターン161,163を配置することが可能である。
【0042】
また、第1の変形例においては、第3コイル130のX方向における中心が第1コイル110の開口110aのX方向における中心とほぼ一致している。これにより、第3コイル130の区間132と第1コイル110の区間114のX方向における距離L3は、第3コイル130の区間134と第1コイル110の区間112のX方向における距離L4とほぼ同じである。その結果、パターン配置領域BのY方向におけるサイズが図4に示す構造よりも縮小されており、区間114から分岐するキャパシタ電極パターン151の本数が4本に減少している。これに伴い、基材20の他方の表面22に形成されるキャパシタ電極パターン152についても4本となっている。
【0043】
第1の変形例のように、第3コイル130のX方向におけるサイズを拡大すれば、第1コイル110と第3コイル130の結合を高めることが可能となる。
【0044】
図11及び図12は、第2の変形例を説明するための略平面図であり、図11は基材20の一方の表面21に形成された導体パターンの形状を示し、図12は基材20の他方の表面22に形成された導体パターンの形状を示している。
【0045】
第2の変形例は、第3コイル130及びキャパシタ電極パターン161,162が基材20の他方の表面22に形成され、キャパシタ電極パターン162,164が基材20の一方の表面21に形成されている点において、上述した実施形態と相違している。このように、第1コイル110及び第2コイル120を基材20の一方の表面21に形成し、第3コイル130を基材20の他方の表面22に形成しても構わない。これによれば、第1コイル110又は第2コイル120と重なるよう、第3コイル130を配置することが可能となり、設計自由度が向上する。図11及び図12に示す例では、第3コイル130の区間133の一部が貫通孔31とZ方向に重なりを有しており、これにより、第3コイル130の一部と第2コイル120の一部が重なっている。このような構造によれば、第3コイル130と第2コイル120の結合をより高めることが可能となる。
【0046】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記の実施形態に限定されることなく、本開示の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本開示の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0047】
例えば、第1~第3コイル110,120,130は、導線を巻回させて導体パターンを構成しても構わない。
【0048】
また、基材20の表面21,22に設けられる導体パターンは、間に樹脂を含む他の材料層を介して基材20の表面21,22に設けられていても構わない。
【0049】
本開示に係る技術には、以下の構成例が含まれるが、これに限定されるものではない。
【0050】
本開示によるアンテナ装置は、第1コイルと、第1コイルと直列接続され、第1コイルの開口内に配置される第2コイルと、第1コイルの開口内であって、第2コイルの開口の中心位置とは異なる位置に開口の中心を有する第3コイルと、第3コイルの両端に接続された第1キャパシタとを備え、第1及び第2コイルは、第1コイルの一端から第2コイルとの接続点に至る経路の周回方向と、接続点から第2コイルの当該接続点とは反対側の端部に至る経路の周回方向が同じとなるように接続されており、第2コイルは、第1コイルの開口の中心から第1方向の一方側寄りにオフセットして配置され、第3コイルは、第1方向の他方側における第1コイルとの距離よりも、一方側における第2コイルとの距離の方が短い。これによれば、第2コイルと第3コイルの結合を高めることが可能となる。
【0051】
上記アンテナ装置において、第1乃至第3コイルは、いずれもターン間のスペース幅よりもパターン幅の方が大きくても構わない。これによれば、第1乃至第3コイルの抵抗値を低減することが可能となる。
【0052】
上記アンテナ装置において、第3コイルは、第1方向におけるサイズが第1方向と直交する第2方向におけるサイズより大きく、且つ、第1コイルの開口の中心から第2方向における一方側寄りにオフセットして配置されていても構わない。これによれば、第1コイルと第3コイルの結合を抑制しつつ、両者間に第2方向の空きスペースを確保することが可能となる。
【0053】
本開示によるアンテナ装置は、第1コイルの両端に接続された第2キャパシタをさらに備え、第2キャパシタのパターン配置領域は、第1方向におけるサイズが第1方向と直交する第2方向におけるサイズより大きく、且つ、第1コイルの第1方向に延在する最内周ターンに沿って配置されていても構わない。これによれば、第1コイルと第3コイルの間に形成される空きスペースに第2キャパシタを配置することが可能となる。
【0054】
上記アンテナ装置において、第1及び第2キャパシタの少なくとも一方は、一方向に延在する第1キャパシタ電極パターンと、一方向に延在し、第1キャパシタ電極パターンと対向する第2キャパシタ電極パターンと、第1キャパシタ電極パターンから分岐する複数の第3キャパシタ電極パターンと、複数の第3キャパシタ電極パターンと対向する第4キャパシタ電極パターンとを含んでいても構わない。これによれば、十分なキャパシタンスを得ることが可能となるとともに、トリミングによってキャパシタンスの調整を行うことが可能となる。
【0055】
上記アンテナ装置において、第1キャパシタ電極パターンと第2キャパシタ電極パターンの対向面積は、複数の第3キャパシタ電極パターンと第4キャパシタ電極パターンの対向面積より大きくても構わない。これによれば、十分なキャパシタンスを得ることが可能となる。
【0056】
上記アンテナ装置において、第1キャパシタ電極パターンは、第3コイルの周回方向に沿って延在しても構わない。これによれば、第3コイルの一部を第1キャパシタ電極パターンとして用いることが可能となる。
【0057】
上記アンテナ装置において、コイル軸方向から見て、第2コイルと第3コイルは重なりを有していても構わない。これによれば、第2コイルと第3コイルの結合を高めることが可能となる。
【0058】
上記アンテナ装置において、第2コイルのパターン幅は、第1コイルのパターン幅よりも細くても構わない。これによれば、第2コイルのターン数を十分に確保することが可能となる。
【0059】
本開示によるICカードは、上記いずれかのアンテナ装置と、貫通孔を有するメタルプレートと、メタルプレートの貫通孔に配置されたICモジュールとを備え、第2コイルの開口部は貫通孔と重なる。これによれば、第2コイルとICモジュールを結合させることが可能となる。
【符号の説明】
【0060】
1 アンテナ装置
3 ICカード
3a ICカードの上面
3b ICカードの裏面
6 カードリーダー
10 プラスチックプレート
20 基材
21 基材の一方の表面
22 基材の他方の表面
30 磁性シート
31,41,64 貫通孔
40 メタルプレート
50 ICモジュール
51 モジュール基板
52 ICチップ
53 カップリングコイル
54 保護樹脂
61,62 接着層
110 第1コイル
110a 第1コイルの開口
111~114 区間
115~117 ビア導体
120 第2コイル
121,122 ビア導体
123 導体パターン
130 第3コイル
131~134 区間
135 ビア導体
141~144 導体パターン
151~154,161~164 キャパシタ電極パターン
B パターン配置領域
E 端子電極
L1~L4 距離
W1~W3 パターン幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12