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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033859
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】スターリング冷凍機の伝熱構造
(51)【国際特許分類】
   F25B 9/14 20060101AFI20240306BHJP
【FI】
F25B9/14 520Z
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137738
(22)【出願日】2022-08-31
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】000109325
【氏名又は名称】株式会社ツインバード
(72)【発明者】
【氏名】井上 峰幸
(57)【要約】
【課題】スターリング冷凍機の組立性および断熱性を改善することができるスターリング冷凍機の伝熱構造を提供すること。
【解決手段】伝熱部61が伝熱ブロック62と締付体63とに分割された構成で、前記伝熱ブロック62と伝熱要素70とを接続し、前記伝熱ブロック62の雄螺子66と前記締付体63の雌螺子68とを螺合させることで、前記伝熱ブロック62の伝熱ブロック本体64の下面64Aと、環状部65の内面65Aとが前記スターリング冷凍機11の吸熱部14の外面に押し付けられて伝熱的に接続される。これによって、前記伝熱ブロック62と前記伝熱要素70とを接続した後に、前記スターリング冷凍機11を前記伝熱ブロック62に取り付けることができる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒部に吸熱部を有するスターリング冷凍機と、伝熱部と、この伝熱部と伝熱的に接続される伝熱要素とを有するスターリング冷凍機の伝熱構造において、
前記伝熱部が伝熱ブロックと締付体とで構成され、
前記伝熱ブロックが変形部を有し、
前記変形部が前記伝熱ブロックの環状部に設けられ、
前記締付体が環状であり、
前記円筒部が前記伝熱ブロックに挿入された状態で、前記伝熱ブロックの変形部に前記締付体が固定されることで、前記吸熱部に前記伝熱ブロックが密着し、前記円筒部と前記伝熱部が固定される構造であることを特徴とするスターリング冷凍機の伝熱構造。
【請求項2】
前記環状部に切欠部が設けられることを特徴とする請求項1記載のスターリング冷凍機の伝熱構造。
【請求項3】
前記伝熱ブロックが筒状であると共に前記環状部に切欠部が設けられ、
前記切欠部の長さが、前記変形部の軸方向長さより長く、前記伝熱ブロックの軸方向長さより短く設けられることを特徴とする請求項1記載のスターリング冷凍機の伝熱構造。
【請求項4】
前記切欠部が前記環状部の周方向に等間隔で設けられることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のスターリング冷凍機の伝熱構造。
【請求項5】
前記切欠部が前記環状部の周方向に等間隔で偶数設けられることを特徴とする請求項3に記載のスターリング冷凍機の伝熱構造。
【請求項6】
前記変形部が雄螺子を有し、
前記締付体が雌螺子を有し、
前記雄螺子と前記雌螺子がテーパー螺子であることを特徴とする請求項4に記載のスターリング冷凍機の伝熱構造。
【請求項7】
前記変形部が雄螺子を有し、
前記締付体が雌螺子を有し、
前記雄螺子と前記雌螺子がテーパー螺子であることを特徴とする請求項5に記載のスターリング冷凍機の伝熱構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スターリング冷凍機の伝熱構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、スターリング冷凍機の伝熱構造として、スターリングサイクル機関(本発明のスターリング冷凍機に相当する)の上部円筒部(本発明の円筒部に相当する)に第一の伝熱ブロック(本発明の伝熱ブロックに相当する)を取り付け、その第一の伝熱ブロックにサーモサイフォン(本発明の伝熱要素に相当する)を取り付ける構造が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4352459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このようなスターリング冷凍機の伝熱構造では、スターリングサイクル機関の上部円筒部に第一の伝熱ブロックを取り付けてから、サーモサイフォンを取り付けなければならず、第一の伝熱ブロックにサーモサイフォンを取り付ける際にスターリングサイクル機関ごと持ち上げなければならなかったため、取り付けが困難になるという問題があった。また、寸法誤差が大きくなりがちなサーモサイフォンの場合、第一の伝熱ブロックとの取り付けの調整が難しいという問題があった。
【0005】
本発明は以上の問題点を解決し、スターリング冷凍機と、伝熱ブロックと、伝熱要素とを容易に取り付けることができるスターリング冷凍機の伝熱構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に記載のスターリング冷凍機の伝熱構造は、円筒部に吸熱部を有するスターリング冷凍機と、伝熱部と、この伝熱部と伝熱的に接続される伝熱要素とを有するスターリング冷凍機の伝熱構造において、前記伝熱部が伝熱ブロックと締付体とで構成され、前記伝熱ブロックが変形部を有し、前記変形部が前記伝熱ブロックの環状部に設けられ、前記締付体が環状であり、前記円筒部が前記伝熱ブロックに挿入された状態で、前記伝熱ブロックの変形部に前記締付体が固定されることで、前記吸熱部に前記伝熱ブロックが密着し、前記円筒部と前記伝熱部が固定される構造である。
【0007】
また、本発明の請求項2に記載のスターリング冷凍機の伝熱構造は、請求項1において、前記環状部に切欠部が設けられるものである。
【0008】
また、本発明の請求項3に記載のスターリング冷凍機の伝熱構造は、請求項1において、前記伝熱ブロックが筒状であると共に前記環状部に切欠部が設けられ、前記切欠部の長さが、前記変形部の軸方向長さより長く、前記伝熱ブロックの軸方向長さより短く設けられるものである。
【0009】
また、本発明の請求項4に記載のスターリング冷凍機の伝熱構造は、請求項2または請求項3において、前記切欠部が前記環状部の周方向に等間隔で設けられるものである。
【0010】
また、本発明の請求項5に記載のスターリング冷凍機の伝熱構造は、請求項3において、前記切欠部が前記環状部の周方向に等間隔で偶数設けられるものである。
【0011】
また、本発明の請求項6に記載のスターリング冷凍機の伝熱構造は、請求項4において、前記変形部が雄螺子を有し、前記締付体が雌螺子を有し、前記雄螺子と前記雌螺子がテーパー螺子であるものである。
【0012】
更に、本発明の請求項7に記載のスターリング冷凍機の伝熱構造は、請求項5において、前記変形部が雄螺子を有し、前記締付体が雌螺子を有し、前記雄螺子と前記雌螺子がテーパー螺子であるものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の請求項1に記載のスターリング冷凍機の伝熱構造は、以上のように構成することにより、前記伝熱ブロックと前記伝熱要素とが先に取り付けられた状態で、前記スターリング冷凍機が取り付けられるので、組立性を改善することができる。また、予め前記伝熱ブロックと前記伝熱要素を断熱材で覆っておくことで、前記伝熱ブロックと前記伝熱要素の断熱性を向上することができる。また、前記スターリング冷凍機が後から前記伝熱ブロックに取り付けられるので、寸法誤差の大きい前記伝熱要素の場合でも、取り付け時の調整が容易にできる。
【0014】
また、前記伝熱ブロックの環状部に切欠部が設けられることにより、変形部がより小さな力で変形できるようになるので、締付体が固定された時に、前記伝熱ブロックと吸熱部との密着が良好となる。
【0015】
また、前記伝熱ブロックが筒状であると共に前記環状部に切欠部が設けられ、前記切欠部の長さが、前記変形部の軸方向長さより長く、前記伝熱ブロックの軸方向長さより短く設けられることにより、前記伝熱ブロックを押し出し材や規格品のパイプから作製することができるので、より安価な前記伝熱ブロックが得られる。
【0016】
また、前記切欠部が前記環状部の周方向に等間隔に設けられることにより、前記伝熱ブロックが前記吸熱部に均等に押し当てられるので、より前記伝熱ブロックと前記吸熱部との密着が良好となる。
【0017】
また、前記切欠部が前記環状部の周方向に等間隔で偶数設けられることにより、対となる前記切欠部を一度の加工で作製することができるので、より安価な前記伝熱ブロックが得られる。
【0018】
更に、前記変形部が雄螺子を有し、前記締付体が雌螺子を有し、前記雄螺子と前記雌螺子がテーパー螺子であることにより、確実に前記吸熱部に前記伝熱ブロックが密着し、前記伝熱ブロックに前記締付体を固定することができるので、伝熱性および組立性が改善する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第一の実施形態を示すスターリング冷凍機の吸熱部を示す正面図である。
図2】同、伝熱ブロックの平面図である。
図3】同、締付体の平面図である。
図4】同、伝熱ブロックのスターリング冷凍機の吸熱部への取り付けを説明する説明図であり、固定前の状態を示すものである。
図5】同、伝熱ブロックのスターリング冷凍機の吸熱部への取り付けを説明する説明図であり、固定後の状態を示すものである。
図6】本発明の第二の実施形態を示すスターリング冷凍機の吸熱部を示す正面図である。
図7】同、伝熱ブロックの平面図である。
図8】同、伝熱ブロックのスターリング冷凍機の吸熱部への取り付けを説明する説明図であり、固定前の状態を示すものである。
図9】同、伝熱ブロックのスターリング冷凍機の吸熱部への取り付けを説明する説明図であり、固定後の状態を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の第一の実施形態について、図1乃至図5に基づいて説明する。11はスターリング冷凍機である。このスターリング冷凍機11は、円筒部12を有する。前記円筒部12の先端側は吸熱部14である。また、前記円筒部12の下方側には、前記スターリング冷凍機11の胴部(図示しない)があり、この胴部は、前記円筒部12の外径より大きい。
【0021】
前記スターリング冷凍機11の円筒部12の吸熱部14には、伝熱部61が取り付けられる。この伝熱部61は、伝熱ブロック62と締付体63とを有して構成される。前記伝熱ブロック62は、アルミニウム合金等の熱伝導性の良好な金属によって形成される。この伝熱ブロック62は、上方に設けられた伝熱ブロック本体64と、下方に設けられた環状部65とを有する。そして、前記伝熱ブロック本体64の下面64A及び前記環状部65の内面65Aは、前記吸熱部14との接触面であり、前記吸熱部14の外面とほぼ同じ形状とされる。また、前記環状部65の外面65Bには、雄螺子66が形成される。この雄螺子66はテーパー螺子であり、先端側(図4,5における下方)が狭部、基端側(図4,5における上方)が広部である。更に、前記伝熱ブロック62の外周部には、上下方向に8箇所の切欠部67(67A~67H)が形成される。これらの切欠部67(67A~67H)によって、前記環状部65は8分割される。そして、これらの切欠部67(67A~67H)の間の前記環状部65がそれぞれ変形部71(71A~71H)である。なお、前記各切欠部67(67A~67H)は、前記伝熱ブロック62の周方向に等間隔で形成されるのが望ましい。また、前記各切欠部67の数、即ち前記変形部71の数は任意である。
【0022】
また、前記締付体63は環状であり、この締付体63には雌螺子68が形成される。そして、この雌螺子68は、前記雄螺子66と螺合可能に構成される。なお、前記雌螺子68はテーパー螺子であり、狭部と広部を有する。従って、前記環状部65が周方向に複数に分割されていることと相まって、前記締付体63の雌螺子68を広部側から前記伝熱ブロック62の雄螺子66と螺合させることで、前記変形部71が内側へ移動する。即ち、前記伝熱ブロック62を前記吸熱部14に接触させた状態で前記雄螺子66と前記締付体63の雌螺子68とを螺合させることで、前記伝熱ブロック62の環状部65の内面65A(即ち接触面)が、前記吸熱部14に密着する。なお、前記伝熱ブロック本体64の上面69は平面状に形成されると共に、前記スターリング冷凍機11の中心軸線Xに対し傾斜する。
【0023】
また、前記伝熱ブロック本体64の上面69には伝熱要素70が伝熱的に接続される。そして、この伝熱要素70は図示しない冷却空間と伝熱的に接続される。
【0024】
次に、前記スターリング冷凍機11の吸熱部14へ前記伝熱部61を取り付ける手順について説明する。まず、前記伝熱ブロック62と前記伝熱要素70を接続する。次に、前記スターリング冷凍機11の円筒部12が前記締付体63に差し込まれるように、この締付体63を前記円筒部12に遊嵌させる。この際、前記雌螺子68の広部が上方で狭部が下方になるように遊嵌させる。次に、前記スターリング冷凍機11の円筒部12の先端が前記伝熱ブロック本体64の下面64Aに接触するまで挿入する。この状態では、前記伝熱ブロック62の接触面である前記環状部65の内面65Aは、前記吸熱部14との間に僅かな隙間を有する。更に、前記締付体63の雌螺子68を前記伝熱ブロック62の雄螺子66と螺合させる。前記雄螺子66と雌螺子68とが共にテーパー螺子であると共に、前記環状部65が周方向に複数に分割されているため、両者を螺合させると、前記変形部71が内側に押されて動き、前記内面65Aが前記吸熱部14の外面に圧接する。これによって、前記伝熱部61が前記吸熱部14に固定されると共に、前記吸熱部14と前記伝熱部61と前記伝熱要素70とが伝熱的に接続される。また、前記切欠部67が前記環状部65に等間隔、即ち前記変形部71が前記環状部65に等間隔に設けられているので、各前記変形部71A~71Hが均等に変形するため、前記吸熱部14へ均等に密着する。これによって、前記伝熱ブロック62と前記吸熱部14の伝熱性が良好となる。さらに、前述したように、各前記変形部71A~71Hが均等に変形することで、各前記変形部71A~71Hに均等に負荷を分散させるため、各前記変形部71A~71Hの破損のリスクを抑えられる。
【0025】
次に、本実施形態の作用について説明する。前述したように、前記伝熱部61が前記伝熱ブロック62と締付体63とに分割された構成で、前記伝熱ブロック62と前記伝熱要素70とを接続し、前記伝熱ブロック62の雄螺子66と前記締付体63の雌螺子68とを螺合させることで、前記伝熱ブロック62の伝熱ブロック本体64の下面64Aと、環状部65の内面65Aとが前記吸熱部14の外面に押し付けられて伝熱的に接続される。これによって、前記伝熱ブロック62と前記伝熱要素70と図示しない冷却空間が伝熱的に接続された状態で、前記伝熱ブロック62と前記伝熱要素70と図示しない冷却空間を図示しない断熱材によって一体に覆うことができ、その後、前記スターリング冷凍機11の吸熱部14と伝熱ブロック62とを伝熱的に接続することができる。したがって、前記伝熱ブロック62と前記伝熱要素70とを接続した後に、前記スターリング冷凍機11を前記伝熱ブロック62に接続することができるため、組立性が改善する。また、前記伝熱ブロック62から図示しない冷却空間までの断熱性を高めることができる。また、前記伝熱要素70が、寸法誤差が大きくなりがちなもの、例えばサーモサイフォンであった場合、このサーモサイフォンのパイプを前記伝熱部61に接続する際に、前記伝熱ブロック62を前記中心軸線X回りに回動させて調整することで、前記サーモサイフォンと伝熱部61との接続を容易にすることができる。
【0026】
以上のように本発明は、円筒部12に吸熱部14を有するスターリング冷凍機11と、伝熱部61と、この伝熱部61と伝熱的に接続される伝熱要素70とを有するスターリング冷凍機の伝熱構造において、前記伝熱部61が伝熱ブロック62と締付体63とを有して構成され、前記伝熱ブロック62が変形部71を有し、前記変形部71が前記伝熱ブロック62の環状部65に設けられ、前記締付体63が環状であり、前記円筒部12が前記伝熱ブロック62に挿入された状態で、前記伝熱ブロック62の変形部71に前記締付体63が固定されることで、前記吸熱部14に前記伝熱ブロック62が密着し、前記円筒部14と前記伝熱部61が固定される構造であるので、組立性を改善することができる。また、前記スターリング冷凍機11を取り付ける前に、前記伝熱ブロック62と前記伝熱要素70を断熱材で覆うことができるので、断熱性を向上することができる。また、寸法誤差の大きい前記伝熱要素70の場合でも、取り付け時の調整を容易に行うことができる。
【0027】
また、本発明は、前記環状部65に切欠部67が設けられることで、前記変形部71がより小さな力で変形できるようになるので、前記伝熱ブロック62に前記締付体63が固定された時に、前記伝熱ブロック62と前記吸熱部14との密着を良好にし、伝熱性を良くすることができる。
【0028】
また、本発明は、前記切欠部67が前記環状部65の周方向に等間隔に設けられることで、前記伝熱ブロック62の環状部65の内面65Aが前記吸熱部14に均等に押し当てられるので、より前記伝熱ブロック62と前記吸熱部14との密着を良好にし、伝熱性を良くすることができる。また、各前記変形部71A~71Hが均等に変形するので、負荷が均等にかかり、破損のリスクを抑えることができる。
【0029】
更に、本発明は、前記変形部71が雄螺子66を有し、前記締付体63が雌螺子68を有し、前記雄螺子66と前記雌螺子68がテーパー螺子であることで、確実に前記吸熱部14に前記伝熱ブロック62が密着し、前記伝熱ブロック62に前記締付体63を固定することができるので、伝熱性および組立性が改善する。
【0030】
次に、本発明の第二の実施形態について、図6乃至図9に基づいて説明する。なお、第一の実施形態と共通する部分については、共通の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0031】
前記スターリング冷凍機11の円筒部12の吸熱部14には、伝熱部81が取り付けられる。この伝熱部81は、伝熱ブロック82と締付体63とを有して構成される。前記伝熱ブロック82は、アルミニウム合金等の熱伝導性の良好な金属によって形成される。また、前記伝熱ブロック82は筒状であるので、押し出し材や規格品のパイプを加工して、作製することができる。この伝熱ブロック82は、上方に設けられた伝熱ブロック本体84と、下方に設けられた環状部85とを有する。そして、前記環状部85の内面85Aは、前記吸熱部14との接触面であり、前記吸熱部14の外面とほぼ同じ形状とされる。また、前記環状部85の外面85Bには、雄螺子86が形成される。この雄螺子86はテーパー螺子であり、先端側(図8における下方)が狭部、基端側(図8における上方)が広部である。更に、前記伝熱ブロック82の外周部には、8箇所の切欠部87(87A~87H)が形成される。また、前記切欠部87(87A~87H)の中心軸線X方向のそれぞれの長さは、前記雄螺子86の螺子部の中心軸線X方向の長さより長く、前記伝熱ブロック82の中心軸線X方向の長さより短い。これらの切欠部87(87A~87H)によって、前記環状部85は8分割される。そして、これらの切欠部87(87A~87H)の間の前記環状部85がそれぞれ変形部91(91A~91H)である。なお、前記各切欠部87(87A~87H)は、前記伝熱ブロック82の周方向に等間隔で形成されるのが望ましい。また、前記各切欠部87の数、即ち前記変形部91の数は任意である。
【0032】
なお、本実施形態では、前記伝熱ブロック82と前記締付体63との固定にテーパー螺子による螺合を用いたが、前記伝熱ブロック82と前記締付体63との固定にテーパー螺子を用いない実施形態の場合、前記切欠部87(87A~87H)のそれぞれの長さは、前記変形部91の中心軸線X方向の変形部長さLより長く、前記伝熱ブロック82の中心軸線X方向の長さより短ければ良い。即ち第二の実施形態における前記雄螺子86の螺子部の中心軸線X方向の長さが、前記変形部長さLに相当する。
【0033】
また、前記締付体63は環状であり、この締付体63には雌螺子68が形成される。そして、この雌螺子68は、前記雄螺子86と螺合可能に構成される。なお、前記雌螺子68はテーパー螺子であり、狭部と広部を有する。従って、前記環状部85が周方向に複数に分割されていることと相まって、前記締付体63の雌螺子68を広部側から前記伝熱ブロック82の雄螺子86と螺合させることで、前記変形部91が内側へ移動する。即ち、前記伝熱ブロック82を前記吸熱部14に接触させた状態で前記雄螺子86と前記締付体63の雌螺子68とを螺合させることで、前記伝熱ブロック82の環状部85の内面85A(即ち接触面)が、前記吸熱部14に密着する。なお、前記伝熱ブロック本体84の上面89は平面状に形成されると共に、前記スターリング冷凍機11の中心軸線Xに対し傾斜する。
【0034】
また、前記吸熱部14の先端と前記伝熱ブロック82の内壁との空間には、伝熱部材92が取り付けられる。この伝熱部材92は、アルミニウム合金等の熱伝導性の良好な金属によって形成される。前記伝熱部材92の外径は、前記伝熱ブロック82の内径とほぼ同じである。また、前記伝熱部材92の下面94は、前記吸熱部14との接触面であり、前記吸熱部14の外面とほぼ同じ形状とされる。そして、前記伝熱部材92の上面93は、前記伝熱ブロック82の上面89と同じ傾斜を持つ面である。そして、前記伝熱部材92の上面93は、前記伝熱ブロック82の上面89と面一になる向きに取り付けられる。
【0035】
また、前記伝熱ブロック本体84の上面89および前記伝熱部材92の上面93には、伝熱要素70が伝熱的に接続される。そして、この伝熱要素70は図示しない冷却空間と伝熱的に接続される。
【0036】
次に、前記伝熱ブロック82の切欠部87の加工について説明する。前記伝熱ブロック82の切欠部87は、エンドミルや側フライス等による溝加工によって作成することができる。また、前記伝熱ブロック82の切欠部87が本実施例のように偶数である場合、対向する一対の前記切欠部87の加工を一度の溝加工で作製することができる。例えば、図7において、上下方向にエンドミルを移動させると、前記切欠部87Aと87Eを加工できる。また、同様に左右方向にエンドミルを移動させると、前記切欠部87Cと87Gが加工できる。このように、一度の溝加工で2つの切欠部を作成することができるので、加工工数を減らすことができる。
【0037】
次に、前記スターリング冷凍機11の吸熱部14へ前記伝熱部81を取り付ける手順について説明する。まず、前記伝熱ブロック82に前記伝熱部材92を固定する。この際、前記伝熱部材92の上面93が、前記伝熱ブロック82の上面89と面一になるように固定される。次に、前記伝熱要素70を前記伝熱ブロック82と接続する。このとき、前記伝熱要素70と前記伝熱部材92も伝熱的に接続されることが望ましい。次に、前記スターリング冷凍機11の円筒部12が前記締付体63に差し込まれるように、この締付体63を前記円筒部12に遊嵌させる。この際、前記雌螺子68の広部が上方で狭部が下方になるように遊嵌させる。次に、前記スターリング冷凍機11の円筒部12の先端が前記伝熱部材92の下面94に接触するまで挿入する。この状態では、前記伝熱ブロック82の接触面である前記環状部85の内面85Aは、前記吸熱部14との間に僅かな隙間を有する。そして、前記締付体63の雌螺子68を前記伝熱ブロック82の雄螺子86と螺合させる。前記雄螺子86と雌螺子68とが共にテーパー螺子であると共に、前記環状部85が周方向に複数に分割されているため、両者を螺合させると、前記変形部91が内側に押されて動き、前記内面85Aが前記吸熱部14の外面に圧接する。これによって、前記伝熱部81が前記吸熱部14に固定されると共に、前記吸熱部14と前記伝熱部81と前記伝熱要素70とが伝熱的に接続される。また、前記切欠部87が前記環状部85に等間隔、即ち前記変形部91が前記環状部85に等間隔に設けられているので、各前記変形部91A~91Hが均等に変形するため、前記吸熱部14へ均等に密着する。これによって、前記伝熱ブロック82と前記吸熱部14の伝熱性が良好となる。さらに、前述したように、各前記変形部91A~91Hが均等に変形することで、各前記変形部91A~91Hに均等に負荷を分散させるため、各前記変形部91A~91Hの破損のリスクを抑えられる。
【0038】
前述した取り付け手順では、前記伝熱部材92を前記伝熱ブロック82に固定する構成を述べたが、前記伝熱部材92を前記伝熱要素70に固定する構成や前記伝熱部材92を前記伝熱ブロック82と前記伝熱要素70とで挟持する構成でもよい。また、前記伝熱ブロック82に前記伝熱部材92を固定した後に、前記伝熱ブロック82の上面89と前記伝熱部材92の上面93を切削等により、同時に面一になるように加工しても良い。
【0039】
次に、本実施形態の作用について説明する。前述したように、前記伝熱部81が前記伝熱ブロック82と締付体63とに分割された構成で、前記伝熱部材92を前記伝熱ブロック82に固定し、前記伝熱ブロック82と前記伝熱要素70とを接続し、前記伝熱ブロック82の雄螺子86と前記締付体63の雌螺子68とを螺合させることで、前記伝熱ブロック82の環状部85の内面85Aと前記伝熱部材92の下面94とが、前記吸熱部14の外面に押し付けられて伝熱的に接続される。これによって、前記伝熱ブロック82と前記伝熱要素70と図示しない冷却空間が伝熱的に接続された状態で、前記伝熱ブロック82と前記伝熱要素70と図示しない冷却空間を図示しない断熱材によって一体に覆うことができ、その後、前記スターリング冷凍機11の吸熱部14と伝熱ブロック82とを伝熱的に接続することができる。したがって、前記伝熱ブロック82と前記伝熱要素70とを接続した後に、前記スターリング冷凍機11を前記伝熱ブロック82に接続することができるため、組立性が改善する。また、前記伝熱ブロック82から図示しない冷却空間までの断熱性を高めることができる。また、前記伝熱要素70が、寸法誤差が大きくなりがちなもの、例えばサーモサイフォンであった場合、このサーモサイフォンのパイプを前記伝熱部81に接続する際に、前記伝熱ブロック82を前記中心軸線X回りに回動させて調整することで、前記サーモサイフォンと伝熱部81との接続を容易にすることができる。
【0040】
以上のように本発明は、円筒部12に吸熱部14を有するスターリング冷凍機11と、伝熱部81と、この伝熱部81と伝熱的に接続される伝熱要素70とを有するスターリング冷凍機の伝熱構造において、前記伝熱部81が伝熱ブロック82と締付体63とを有して構成され、前記伝熱ブロック82が変形部91を有し、前記変形部91が前記伝熱ブロック82の環状部85に設けられ、前記締付体63が環状であり、前記円筒部12が前記伝熱ブロック82に挿入された状態で、前記伝熱ブロック82の変形部91に前記締付体63が固定されることで、前記吸熱部14に前記伝熱ブロック82が密着し、前記円筒部14と前記伝熱部81が固定される構造であるので、組立性を改善することができる。また、前記スターリング冷凍機11を取り付ける前に、前記伝熱ブロック82と前記伝熱要素70を断熱材で覆うことができるので、断熱性を向上することができる。また、寸法誤差の大きい前記伝熱要素70の場合でも、取り付け時の調整を容易に行うことができる。
【0041】
また、本発明は、前記環状部85に切欠部87が設けられることで、前記変形部91がより小さな力で変形できるようになるので、前記伝熱ブロック82に前記締付体63が固定された時に、前記伝熱ブロック82と前記吸熱部14との密着を良好にし、伝熱性を良くすることができる。
【0042】
また、本発明は、前記伝熱ブロック82が筒状であると共に前記環状部85に切欠部87が設けられ、前記切欠部87の長さが、前記変形部91の中心軸線X方向の変形部長さLより長く、前記伝熱ブロック82の中心軸線X方向の長さより短く設けられることで、前記伝熱ブロック82を押し出し材や規格品のパイプから作製することができ、より安価な前記伝熱ブロック82が得られる。
【0043】
また、本発明は、前記切欠部87が前記環状部85の周方向に等間隔で設けられることで、前記伝熱ブロック82の環状部85の内面85Aが前記吸熱部14に均等に押し当てられるので、より前記伝熱ブロック82と前記吸熱部14との密着を良好にし、伝熱性を良くすることができる。また、各前記変形部91A~91Hが均等に変形するので、負荷が均等に分散し、破損のリスクを抑えることができる。
【0044】
また、本発明は、前記切欠部87が前記環状部85の周方向に等間隔で偶数設けられることで、対向する対となる前記切欠部87を一度の加工で作製することができるので、より安価な前記伝熱ブロック82が得ることができる。
【0045】
更に、本発明は、前記変形部91が雄螺子86を有し、前記締付体63が雌螺子68を有し、前記雄螺子86と前記雌螺子68がテーパー螺子であることで、確実に前記吸熱部14に前記伝熱ブロック82が密着し、前記伝熱ブロック82に前記締付体63を固定することができるので、伝熱性および組立性が改善する。
【0046】
なお、本発明は以上の実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、第一の実施形態および第二の実施形態において、伝熱ブロックと締付体がテーパー螺子の螺合で取り付けられているが、伝熱ブロックの環状部の外径を先端側(図4,5における下方)が狭部、基端側(図4,5における上方)が広部となるようなテーパー状の円筒形状とし、締付体の内径をその円筒形状に合わせた寸法とし、締付体を伝熱ブロックに圧入することで取り付ける方法もある。また、締付体をベルトのようなものとし、伝熱ブロックの変形部にベルトを巻きつけて締めることで、スターリング冷凍機の円筒部と伝熱ブロックを固定する方法もある。また、変形部が変形しやすいように切欠部を設けたが、伝熱ブロックの外周に溝を設けてたり、変形部の肉厚を薄くしたり、また、それらを本発明の切欠部と組合わせたりして、変形しやすいようにしてもよい。
【符号の説明】
【0047】
11 スターリング冷凍機
12 円筒部
14 吸熱部
61,81 伝熱部
62,82 伝熱ブロック
63 締付体
65,85 環状部
66,86 雄螺子
67(67A~67H),87(87A~87H) 切欠部
68 雌螺子
69,89 上面
70 伝熱要素
71(71A~71H),91(91A~91H) 変形部
X 中心軸線
L 変形部長さ
図1
図2
図3
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図9