IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オムロンヘルスケア株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-手首用血圧計 図1
  • 特開-手首用血圧計 図2
  • 特開-手首用血圧計 図3
  • 特開-手首用血圧計 図4
  • 特開-手首用血圧計 図5
  • 特開-手首用血圧計 図6
  • 特開-手首用血圧計 図7
  • 特開-手首用血圧計 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024003386
(43)【公開日】2024-01-15
(54)【発明の名称】手首用血圧計
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/022 20060101AFI20240105BHJP
【FI】
A61B5/022 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102491
(22)【出願日】2022-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】503246015
【氏名又は名称】オムロンヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松村 直美
(72)【発明者】
【氏名】澤野井 幸哉
【テーマコード(参考)】
4C017
【Fターム(参考)】
4C017AA08
4C017AB02
4C017AC03
4C017AD01
4C017FF08
4C017FF11
(57)【要約】
【課題】左手首と右手首とで兼用可能に設けられ、精度よく血圧測定することができる手首用血圧計を提供する。
【解決手段】手首式血圧計100は、本体部10と、帯状部材20と、センシングカフ22および押圧カフ23とを備える。帯状部材20は、幅方向に位置する第1端部および第2端部を有する。第1端部が左手の指側に位置し、第2端部が左手の肘側に位置し、かつ、本体部10が、左手の親指側の左腕60の側面60cに配置されるように、帯状部材20を左手首に巻き付けた第1状態において、センシングカフ22が、手のひら側の左腕60の表面60d側から左手首の橈骨静脈63を圧迫可能に配置される。第2端部が右手の指側に位置し、第1端部が右手の肘側に位置し、かつ、本体部10が、右手の親指側の右腕の側面に配置された第2状態において、センシングカフ22が、手のひら側の右腕の表面側から右手首の橈骨動脈を圧迫可能に配置される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、
前記本体部に接続された帯状部材と、
前記帯状部材に設けられた袋状のセンシングカフおよび押圧カフと、を備え、
前記帯状部材は、左手首および右手首のいずれにも巻付可能に構成されており、
前記押圧カフは、前記帯状部材を左手首または右手首に巻き付けた場合に、前記センシングカフを左手首側または右手首側に向けて押圧可能に設けられており、
前記帯状部材は、左手首に巻き付けられた場合に、周方向に直交する幅方向に位置する第1端部および第2端部を有し、
前記第1端部が左手の指側に位置し、前記第2端部が左手の肘側に位置し、かつ、前記本体部が、左手の親指側の左腕の側面に配置されるように、前記帯状部材を左手首に巻き付けた第1状態において、前記センシングカフが、手のひら側の左腕の表面側から左手首の橈骨静脈を圧迫可能に配置され、
前記第2端部が右手の指側に位置し、前記第1端部が右手の肘側に位置し、かつ、前記本体部が、右手の親指側の右腕の側面に配置されるように、前記帯状部材を右手首に巻き付けた第2状態において、前記センシングカフが、手のひら側の右腕の表面側から右手首の橈骨動脈を圧迫可能に配置される、手首用血圧計。
【請求項2】
前記第1状態において、前記センシングカフは、左腕の周面のうち左手の親指側の側面の頂部から橈側手根屈筋に至るまでの部分で左手首の橈骨静脈を圧迫可能に配置され、
前記第2状態において、前記センシングカフは、右腕の周面のうち、右手の親指側の側面の頂部から橈側手根屈筋に至るまでの部分で右手首の橈骨静脈を圧迫可能に配置される、請求項1に記載の手首用血圧計。
【請求項3】
前記本体部は、表示部を含み、
前記表示部は、前記第1状態において、左手の指側に位置する一端と、左手の肘側に位置する他端と、を有し、
前記第2状態において、前記表示部の前記一端は、右手の肘側に位置し、前記表示部の前記他端は、右手の指側に位置する、請求項1または2に記載の手首用血圧計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、手首用血圧計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の手首用血圧計として、特開2006-149682号公報(特許文献1)には、装置本体と、装置本体に結合され、手首に巻き付けられるカフ帯とを備え、手首に巻け付けた際に手のひらの指先側に位置するカフ帯の側縁部に、所定の距離だけ指先側に突出する指先側に突出する帯片が設けられた手首用血圧計が開示されている。特許文献1に開示の手首用血圧計にあっては、手首の付け根に帯片の先端を合わせることにより、カフ帯に設けられた空気袋を適切な位置に配置することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-149682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、手首の周方向における周面を、手のひら側に位置する腕の表面、親指側に位置する腕の側面、小指側に位置する腕の側面、手の甲側に位置する腕の表面とした場合に、特許文献1に開示の手首用血圧計にあっては、手首に装着した際に、装置本体が、手のひら側に位置する腕の表面に位置するように配置され、カフ帯に設けられた空気袋も手のひら側に位置する腕の表面を覆うように配置される。このため、空気袋を膨張させた場合には、親指の付け根側を走行する橈骨動脈と小指の付け根側を走行する尺骨動脈の2本の動脈が圧迫される。
【0005】
尺骨動脈は、腕の内部において橈骨動脈よりも深い位置を走行している。このため、単一のカフ(空気袋)で手のひら側に位置する腕の表面を圧迫していくと、橈骨動脈と尺骨動脈とで動脈がつぶれ始めるカフ圧や完全につぶれるカフ圧に微妙な差が発生する。これにより、取得される脈波振幅の変化が低圧から高圧まで広がった状態となり、人によってはその頂点が2カ所現れることもある。この結果、測定誤差が生じてしまう。
【0006】
このような測定誤差を改善する検討として、カフの構造として、空気系が独立した押圧カフとセンシングカフとを設け、センシングカフで橈骨動脈の脈波信号を選択的に取得することが考えられる。
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示のように、カフ帯の幅方向の一方側に設けられた帯片の先端を手首の付け根に合わせて、装置本体が手のひら側に位置する腕の表面に位置するように手首用血圧計を手首に装着する場合に、左手の橈骨動脈の位置に合うようにセンシングカフを設けると、手首用血圧計を右手に装着した場合には、センシングカフが右手の橈骨動脈からずれてしまう。これにより、手首用血圧計を左手首と右手首とで兼用することが困難となる。
【0008】
本開示は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、本開示の目的は、左手首と右手首とで兼用可能に設けられ、精度よく血圧測定することができる手首用血圧計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に一例に基づく手首用血圧計は、本体部と、上記本体部に接続された帯状部材と、上記帯状部材に設けられた袋状のセンシングカフおよび押圧カフと、を備える。上記帯状部材は、左手首および右手首のいずれにも巻付可能に構成されている。上記押圧カフは、上記帯状部材を左手首または右手首に巻き付けた場合に、上記センシングカフを左手首側または右手首側に向けて押圧可能に設けられている。上記帯状部材は、左手首に巻き付けられた場合に、周方向に直交する幅方向に位置する第1端部および第2端部を有する。上記第1端部が左手の指側に位置し、上記第2端部が左手の肘側に位置し、かつ、上記本体部が、左手の親指側の左腕の側面に配置されるように、上記帯状部材を左手首に巻き付けた第1状態において、上記センシングカフが、手のひら側の左腕の表面側から左手首の橈骨静脈を圧迫可能に配置される。上記第2端部が右手の指側に位置し、上記第1端部が右手の肘側に位置し、かつ、上記本体部が、右手の親指側の右腕の側面に配置されるように、上記帯状部材を右手首に巻き付けた第2状態において、上記センシングカフが、手のひら側の右腕の表面側から右手首の橈骨動脈を圧迫可能に配置される。
【0010】
上記本開示の一例に基づく手首用血圧計にあっては、上記第1状態において、上記センシングカフは、左腕の周面のうち左手の親指側の側面の頂部から橈側手根屈筋に至るまでの部分で左手首の橈骨動脈を圧迫可能に配置されることが好ましい。また、上記第2状態において、上記センシングカフは、右腕の周面のうち、右手の親指側の側面の頂部から橈側手根屈筋に至るまでの部分で右手首の橈骨動脈を圧迫可能に配置されることが好ましい。
【0011】
上記本開示の一例に基づく手首用血圧計にあっては、上記本体部は、表示部を含んでいてもよい。この場合には、上記表示部は、上記第1状態において、左手の指側に位置する一端と、左手の肘側に位置する他端と、を有し、上記第2状態において、上記表示部の上記一端は、右手の肘側に位置し、上記表示部の上記他端は、右手の指側に位置することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、左手首と右手首とで兼用可能に設けられ、精度よく血圧測定することができる手首用血圧計を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施の形態に係る手首用血圧計の外観斜視図である。
図2】実施の形態に係る手首用血圧計の概略断面図である。
図3】実施の形態に係る手首用血圧計を左手首に装着した第1状態を示す斜視図である。
図4図3に示すIV-IV線に沿った概略断面図である。
図5】実施の形態に係る手首用血圧計を右手首に装着した第2状態を示す斜視図である。
図6図5に示すVI-VI線に沿った断面図である。
図7】実施の形態に係る手首用血圧計の制御構成を示すブロック図である。
図8】実施の形態に係る手首用血圧計の測定フローを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分について図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0015】
図1は、実施の形態に係る手首用血圧計の外観斜視図である。図2は、実施の形態に係る手首用血圧計の概略断面図である。図3は、実施の形態に係る手首用血圧計を左手首に装着した第1状態を示す斜視図である。なお、図1は、図3とほぼ対応する方向から手首用血圧計を見た場合の斜視図を示している。図1から図3を参照して実施の形態に係る手首用血圧計100について説明する。
【0016】
図1から図3に示すように、実施の形態に係る手首用血圧計100は、本体部10と、帯状部材20と、センシングカフ22と、押圧カフ23とを備える。
【0017】
帯状部材20は、左手首および右手首のいずれにも巻き付け可能に設けられている。帯状部材20は、左手首に巻き付けた状態において、周方向に直交する幅方向(図1中DR1方向)に位置する第1端部20aおよび第2端部20bを有する。帯状部材20を左手首に巻き付ける場合には、帯状部材20は、第1端部20aが左手の指側に位置し、第2端部20bが左手の肘側に位置するように巻き付けられる。
【0018】
帯状部材20は、巻付状態において、径方向外側に位置することとなる外側カバー部材と、巻付状態において径方向内側に位置して手首の周面に接触する内側カバー部材を含んでいる。
【0019】
帯状部材20は、外側カバー部材と内側カバー部材とが重ね合わされてそれらの周縁がバイアステープによって覆われた状態で接合(たとえば縫合や溶着等)されることで袋状に形成されている。
【0020】
帯状部材20の長手方向(巻付状態における周方向)の一端部20cよりの外周面には、面ファスナ(不図示)が設けられており、当該一端部20cとは反対側に位置する帯状部材20の他端部20d寄りの内周面には、面ファスナ24が設けられている。一端部20c側の面ファスナは、たとえばフックファスナによって構成されており、他端部20d側の面ファスナ24は、たとえばループファスナによって構成されている。
【0021】
帯状部材20には、センシングカフ22および押圧カフ23が設けられている。センシングカフ22および押圧カフ23は、帯状部材20を構成する外側カバー部材と内側カバー部材との間に配置されている。
【0022】
押圧カフ23は、センシングカフ22を手首に向けて押圧可能に設けられている。具体的には、押圧カフ23は、巻付状態において手首が位置する側とは反対側から、センシングカフ22を覆うように設けられている。
【0023】
センシングカフ22および押圧カフ23は、流体が出入りすることにより膨縮可能に設けられている。センシングカフ22および押圧カフ23は、筐体11内に収容されたポンプ52(図7参照)に接続されている。センシングカフ22および押圧カフ23は、当該ポンプ52によって流体としての空気が導入されることで膨張する。
【0024】
なお、上述においては、帯状部材20が外側カバー部材と内側カバー部材とによって袋状に構成される場合を例示して説明したが、帯状部材20がベルト部材等で構成される場合には、センシングカフ22および押圧カフ23は、巻付状態において、径方向内側に位置する帯状部材20の内表面側に設けられていてもよい。
【0025】
本体部10は、略箱形形状を有する筐体11を含む。筐体11は、第1側面11a、第2側面11b、上面11c、および底面11dを有する。なお、筐体11の内部には、後述するように、各種電子部品を搭載した回路基板、ポンプ52(図7参照)等が収容されている。
【0026】
第1側面11aは、帯状部材20の第1端部20a側に位置する。第1側面11aは、当該第1端部20a側に位置する上面11cおよび底面11dの端部同士を接続する。第2側面11bは、帯状部材20の第2端部20b側に位置する。第2側面11bは、当該第2端部20b側に位置する上面11cおよび底面11dの端部同士を接続する。
【0027】
上面11cおよび底面11dは、上下方向(図1中DR2方向)に相対する。上面11cには、表示部12、および操作部13が設けられている。表示部12および操作部13は、上記幅方向に平行な方向に並んで配置されている。表示部12は、帯状部材20の第2端部20b側に位置する。すなわち、表示部12は、第2側面11b側に位置する。操作部13は、帯状部材20の第1端部20a側に位置する。すなわち、操作部13は、第1側面11a側に位置する。底面11dには、親指側に位置する腕の側面に適合する湾曲部18が設けられている。
【0028】
表示部12は、一端12aおよび他端12bを有する。一端12aは、帯状部材20の第1端部20a側に位置し、他端12bは、帯状部材20の第2端部20b側に位置する。すなわち、一端12aは、第1側面11a側に位置し、他端12bは、第2側面11b側に位置する。
【0029】
表示部12は、血圧測定結果などの血圧測定に関する情報、およびその他の情報を表示する。なお、表示部12は、有機ELディスプレイ、液晶ディスプレイ等の表示器によって構成されている。操作部13は、たとえば、測定スイッチ14、およびメモリスイッチ15を有する。測定スイッチ14、およびメモリスイッチ15は、横並びで配置されている。
【0030】
測定スイッチ14は、測定を開始する際に押されるボタンである。メモリスイッチ15は、測定値等を記憶させる際、あるいは、記憶された測定値等を表示させる際に、押されるボタンである。
【0031】
なお、操作部13は、プッシュ式スイッチに限定されず、たとえば感圧式(抵抗式)または近接式(静電容量式)のタッチパネル式スイッチ等であってもよく、この場合には、表示部12に当該スイッチが表示される。また、図示しないマクロフォンを備えて、使用者の音声によって血圧測定開始の指示を入力するようにしてもよい。操作部13には、電源スイッチが設けられていてもよい。
【0032】
図4は、図3に示すIV-IV線に沿った概略断面図である。図3および図4を参照して、手首用血圧計100を左手首に巻き付けた状態について説明する。
【0033】
図3に示すように、左手首側で血圧を測定する場合には、帯状部材20の第1端部20aが左手の指側に位置し、第2端部20bが左手の肘側に位置し、かつ、本体部10が、左手の親指側の左腕60の側面60c(図4参照)に配置されるように、帯状部材20が左手首に巻き付けられる。本体部10は、上述の湾曲部18によって左手首に対して位置決めされ、左腕60の側面60cに適合するように配置される。
【0034】
このように帯状部材20が左手首に巻き付けられた第1状態においては、左手の指側に表示部12の一端12aが位置し、左手の肘側に表示部12の他端12bが位置する。また、上面11cにおいて、左手の肘側に表示部12が位置し、左手の指側に操作部13が位置する。
【0035】
使用者は、帯状部材20の第1端部20aと第2端部20bの位置関係、表示部12の一端12aおよび他端12bの位置関係、あるいは、表示部12と操作部13との位置関係を確認することによって、左手首に手首用血圧計100が適切に装着されていることを確認することができる。
【0036】
なお、左手首に手首用血圧計100が適切に装着されていることを確認する手立てとして、帯状部材20の第2端部20b側に位置する部分、筐体11の第2側面11b、あるいは、上面11cの第2側面11b側に位置する部分に、左手首に手首用血圧計100が装着された場合に指側とは反対側(肘側)に位置することを示す目印が設けられていてもよい。
【0037】
また、帯状部材20の第1端部20a側に位置する部分、筐体11の第1側面11a、あるいは、上面11cの第1側面11a側に位置する部分に、左手首に手首用血圧計100が装着された場合に、指側に位置することを示す目印が設けられていてもよい。
【0038】
図4に示すように、左手首側において左腕60の内部には、橈骨61、尺骨62、橈骨動脈63、尺骨動脈64、橈側手根屈筋65、長掌筋66が走行している。左手の親指が上方を向くように手の位置を調整した場合には、上下方向に橈骨61および尺骨62が並び、橈骨61が尺骨62の上方に位置する。また、橈骨動脈63は、橈骨61に対して手のひら側に位置し、尺骨動脈64は、尺骨62に対して手のひら側に位置する。橈側手根屈筋65、長掌筋66は、橈骨動脈63と尺骨動脈64との間に配置される。
【0039】
上述のように左手首に帯状部材20が巻き付けられた第1状態においては、センシングカフ22は、手のひら側の左腕の表面60d側から左手首の橈骨動脈63を圧迫可能に配置される。より特定的には、センシングカフ22は、左手首において、左腕60の周面のうち左手の親指側の側面60cの頂部から橈側手根屈筋65に至るまでの部分で左手首の橈骨動脈63を圧迫可能に配置される。これにより、橈骨61および橈側手根屈筋65の影響を軽減しつつ、センシングカフ22によって橈骨動脈63を安定して圧迫することができる。
【0040】
図5は、実施の形態に係る手首用血圧計を右手首に装着した状態を示す斜視図である。図6は、図5に示すVI-VI線に沿った断面図である。
【0041】
図5に示すように、右手首側で血圧を測定する場合には、帯状部材20の第2端部20bが右手の指側に位置し、第1端部20aが右手の肘側に位置し、かつ、本体部10が、右手の親指側の右腕70の側面70c(図6参照)に配置されるように、帯状部材20が右手首に巻き付けられる。本体部10は、上述の湾曲部18によって右手首に対して位置決めされ、右腕70の側面70cに適合するように配置される。
【0042】
このように帯状部材20を右手首に巻き付けた第2状態においては、表示部12の一端12aは、右手の肘側に位置し、表示部12の他端12bは、右手の指側に位置する。また、上面11cにおいて、表示部12が右手の指側に位置し、操作部13が右手の肘側に位置する。
【0043】
使用者は、帯状部材20の第1端部20aと第2端部20bの位置関係、表示部12の一端12aおよび他端12bの位置関係、あるいは、表示部12と操作部13との位置関係を確認することによって、右手首に手首用血圧計100が適切に装着されていることを確認することができる。
【0044】
なお、右手首に手首用血圧計100が適切に装着されていることを確認する手立てとして、帯状部材20の第1端部20a側に位置する部分、筐体11の第1側面11a、あるいは、上面11cの第1側面11a側に位置する部分に、右手首に手首用血圧計100が装着された場合に、指側とは反対側(肘側)に位置することを示す目印が設けられていてもよい。
【0045】
また、帯状部材20の第2端部20b側に位置する部分、筐体11の第2側面11b、あるいは、上面11cの第2側面11b側に位置する部分に、右手首に手首用血圧計100が装着された場合に、指側に位置することを示す目印が設けられていてもよい。
【0046】
図6に示すように、右手首側において右腕70の内部には、橈骨71、尺骨72、橈骨動脈73、尺骨動脈74、橈側手根屈筋75、長掌筋77が走行している。右手の親指が上方を向くように手の位置を調整した場合には、上下方向に橈骨71および尺骨72が並び、橈骨71が尺骨72の上方に位置する。また、橈骨動脈73は、橈骨71に対して手のひら側に位置し、尺骨動脈74は、尺骨72に対して手のひら側に位置する。橈側手根屈筋75、長掌筋77は、橈骨動脈73と尺骨動脈74との間に配置される。
【0047】
上述のように右手首に帯状部材20が巻き付けられた第2状態においては、センシングカフ22は、手のひら側の右腕の表面70d側から右手首の橈骨動脈73を圧迫可能に配置される。より特定的には、センシングカフ22は、右手首において、右腕70の周面のうち右手の親指側の側面70cの頂部から橈側手根屈筋75に至るまでの部分で右手首の橈骨動脈73を圧迫可能に配置される。これにより、橈骨71および橈側手根屈筋75の影響を軽減しつつ、センシングカフ22によって橈骨動脈73を安定して圧迫することができる。
【0048】
図7は、実施の形態に係る手首用血圧計の制御構成を示すブロック図である。図7を参照して、手首用血圧計の機能ブロックについて説明する。
【0049】
図7に示すように、本体部10は、上述の表示部12、および操作部13に加えて、制御部40、A/D変換回路41、ポンプ駆動回路42、弁駆動回路43、A/D変換回路44,45、メモリ46、電源47、圧力センサ51、ポンプ52、排気弁53、圧力センサ54、加速度センサ55、および切替弁56を含む。これらは、筐体11内に収容されている。
【0050】
電源47は、本体部10に搭載された各要素に電力を供給する。電源47は、たとえば、充電可能な二次電池である。
【0051】
メモリ46は、手首用血圧計100を制御するために用いられるプログラム等の各種データ、手首用血圧計100の各種機能を設定するための設定データ、血圧値の測定結果のデータ等を非一時的に記憶する。また、メモリ46は、プログラムが実行されるときのワークメモリなどとして用いられる。
【0052】
制御部40は、メモリ46に記憶された手首用血圧計100を制御するためのプログラムに従って、各種機能を実行する。制御部40は、オシロメトリック法に基づく血圧測定を実行することができる。
【0053】
制御部40は、ポンプ駆動回路42を駆動させ、ポンプ52の動作を制御する。また、制御部40は、弁駆動回路43を駆動させ、排気弁53および切替弁56の動作を制御する。ポンプ52、排気弁53、および切替弁56は、配管を介してセンシングカフ22および押圧カフ23に接続されている。
【0054】
ポンプ52は、たとえば、圧電ポンプによって構成されている。切替弁56は、ポンプ52および排気弁53の接続先をセンシングカフ22または押圧カフ23に切り替える。排気弁53は、開閉可能に設けられており、排気弁53の開閉状態、および切替弁56を制御することにより、センシングカフ22、押圧カフ23が排気可能な状態を制御することができる。
【0055】
圧力センサ51(第1圧力センサ)は、押圧カフ23内の圧力を検知する。圧力センサ51は、たとえば、ピエゾ抵抗式圧力センサである。圧力センサ51によって検出された圧力データは、A/D変換回路41によって所定のデータに変換されて制御部40に入力される。
【0056】
圧力センサ54(第2圧力センサ)は、センシングカフ22内の圧力を検知する。圧力センサ54は、たとえば、ピエゾ抵抗式圧力センサである。圧力センサ54によって検出された圧力データは、A/D変換回路44によって所定のデータに変換されて制御部40に入力される。
【0057】
加速度センサ55は、たとえば3軸加速度センサである。加速度センサ55は、互いに直交する3方向の加速度を表す加速度情報を検知する。加速度センサ55によって検知された加速度情報は、A/D変換回路45によって所定のデータに変換されて制御部40に入力される。
【0058】
加速度情報は、被測定者の動きを表す情報の一例である。制御部40は、加速度情報を用いて、被測定者の歩行だけでなく、家事やデスクワークなどの様々な活動における活動量を算出することができる。活動量は、例えば、移動(歩行)距離、消費カロリー、又は、脂肪燃焼量などの被測定者の活動に関連する指標である。制御部40は、加速度情報を用いて、被測定者の就寝前、就寝中、及び起床後を推定することもできる。また、制御部40は、加速度情報を用いて、被測定者が運動中か否かを推定することもできる。
【0059】
図8は、実施の形態に係る手首用血圧計の測定フローを示すフロー図である。図8を参照して、手首用血圧計の測定フローについて説明する。
【0060】
手首用血圧計100を左手首または右手首に装着して、血圧測定を開始するに際して、まず、工程(S11)において、初期化を実施する。なお、当該初期化は、測定スイッチ14が押される等、測定指示の検出に基づいて実施される。具体的には、工程(S11)において、制御部40は、メモリ46の処理用メモリ領域を初期化する。また、工程(S11)において、制御部40は、ポンプ駆動回路42を制御してポンプ52をオフし、弁駆動回路43を制御して、切替弁56を調整しつつ、排気弁53を開状態にし、押圧カフ23およびセンシングカフ22内の空気を排気する。これにより、圧力センサ51,54の0mmHgの調整が行われ、圧力センサ51,54が初期化される。
【0061】
次に、工程(S12)において、排気弁53を閉じる。具体的には、制御部40は、弁駆動回路43を介して排気弁53を閉状態にする。
【0062】
続いて、工程(S13)において、制御部40は、ポンプ駆動回路42を制御して、ポンプ52を駆動させる。工程(S13)は、切替弁56を制御する工程(S131)を含む。工程(S131)では、まず、制御部40は、弁駆動回路43を制御して、センシングカフ22に流体を供給可能となるように切替弁56の状態を制御する。これにより、ポンプ52からセンシングカフ22に流体として空気を供給することで、センシングカフ22を加圧する。
【0063】
この際、制御部40は、センシングカフ22に供給した流体が目標供給量に達したか判断する。たとえば、制御部40は、圧力センサ51,54の出力から、センシングカフ22の圧力が所定の圧力(たとえば、15mmHg)に到達したか、あるいは、ポンプ52の駆動時間が所定の時間を経過したかを判断する。
【0064】
制御部40が、センシングカフ22が所定の圧力に達していない、あるいは、ポンプ52の駆動時間が所定の時間を経過していないと判断した場合には、継続して加圧が実施される。
【0065】
制御部40が、所定の圧力に達した、あるいは、所定の時間を経過したと判断した場合には、工程(S131)において、制御部40は、弁駆動回路43を制御して、センシングカフ22の流体量が一定に維持されるように切替弁56を制御する。具体的には、制御部40は、押圧カフ22に流体を供給可能となるように切替弁56の状態を制御する。これにより、ポンプ52から押圧カフ23に空気を供給することで、押圧カフ23を加圧する。
【0066】
これにより、押圧カフ23の圧力が徐々に高まる。当該圧力上昇によって生じる押圧力で、押圧カフ23はセンシングカフ22を左手首または右手首に向けて押圧し、センシングカフ22が橈骨動脈を圧迫する。この加圧過程で、制御部40は、圧力センサ54によって、センシングカフ22の圧力を検知し、変動成分としての脈波信号を取得する。
【0067】
次に、工程(S14)において、制御部40は、取得した脈波信号に基づいて血圧値(収縮期血圧SBPと拡張期血圧DBP)を算出する。血圧値の算出方法としては、オシロメトリック法により公知のアルゴリズムを用いることができる。
【0068】
この際、制御部40は、血圧値を計測できたかを判断する。制御部40が血圧値を計測できていないと判断した場合(工程(S14):NO)には、押圧カフ23の圧力が上限圧力(たとえば、安全のために予め定められた値である300mmHg)に達していない限り、工程(S13)に戻り、押圧カフ23を加圧する。
【0069】
一方、制御部40が血圧値を計測できたと判断した場合(工程(S14):YES)には、工程(S15)を実施する。工程(S15)では、制御部40は、ポンプ駆動回路42を制御して、ポンプ52を停止させる。
【0070】
続いて、工程(S16)において、制御部40は、弁駆動回路43を制御し、切替弁56を調整しつつ、排気弁53を開状態にする。これにより、押圧カフ23およびセンシングカフ22内の流体を排出する。次に、工程(S17)において、血圧値の測定結果を表示部12に表示する。このような工程(S11)~工程(S17)を経て、血圧を測定することができる。
【0071】
以上のように、実施の形態に係る手首用血圧計100にあっては、左手首側で血圧を測定する場合には、第1端部20aが左手の指側に位置し、第2端部20bが左手の肘側に位置し、かつ、本体部10が、左手の親指側の左腕の側面に配置されるように、帯状部材20を左手首に巻き付ける。このような状態において、センシングカフ22が、手のひら側の左腕60の表面60d側から左手首の橈骨動脈63を圧迫可能に配置される。
【0072】
また、右手首側で血圧を測定する場合には、第2端部20bが右手の指側に位置し、第1端部20aが右手の肘側に位置し、かつ、本体部10が、右手の親指側の右腕の側面に配置されるように、帯状部材20を右手首に巻き付ける。このような状態において、センシングカフ22が、手のひら側の右腕70の表面70d側から右手首の橈骨動脈73を圧迫可能に配置される。
【0073】
このため、左手首および右手首のいずれに帯状部材20を巻き付けた場合であっても、センシングカフ22で左手首あるいは右手首の橈骨動脈を圧迫することができる。この結果、手首用血圧計100を左手首と右手首とで兼用することができ、精度よく血圧を測定することができる。
【0074】
[付記]
以上のように、本実施形態は以下のような開示を含む。
【0075】
[構成1]
本体部と、
前記本体部に接続された帯状部材と、
前記帯状部材に設けられた袋状のセンシングカフおよび押圧カフと、を備え、
前記帯状部材は、左手首および右手首のいずれにも巻付可能に構成されており、
前記押圧カフは、前記帯状部材を左手首または右手首に巻き付けた場合に、前記センシングカフを左手首側または右手首側に向けて押圧可能に設けられており、
前記帯状部材は、左手首に巻き付けられた場合に、周方向に直交する幅方向に位置する第1端部および第2端部を有し、
前記第1端部が左手の指側に位置し、前記第2端部が左手の肘側に位置し、かつ、前記本体部が、左手の親指側の左腕の側面に配置されるように、前記帯状部材を左手首に巻き付けた第1状態において、前記センシングカフが、手のひら側の左腕の表面側から左手首の橈骨静脈を圧迫可能に配置され、
前記第2端部が右手の指側に位置し、前記第1端部が右手の肘側に位置し、かつ、前記本体部が、右手の親指側の右腕の側面に配置されるように、前記帯状部材を右手首に巻き付けた第2状態において、前記センシングカフが、手のひら側の右腕の表面側から右手首の橈骨動脈を圧迫可能に配置される、手首用血圧計。
【0076】
[構成2]
前記第1状態において、前記センシングカフは、左腕の周面のうち左手の親指側の側面の頂部から橈側手根屈筋に至るまでの部分で左手首の橈骨静脈を圧迫可能に配置され、
前記第2状態において、前記センシングカフは、右腕の周面のうち、右手の親指側の側面の頂部から橈側手根屈筋に至るまでの部分で右手首の橈骨静脈を圧迫可能に配置される、構成1に記載の手首用血圧計。
【0077】
[構成3]
前記本体部は、表示部を含み、
前記表示部は、前記第1状態において、左手の指側に位置する一端と、左手の肘側に位置する他端と、を有し、
前記第2状態において、前記表示部の前記一端は、右手の肘側に位置し、前記表示部の前記他端は、右手の指側に位置する、構成1または2に記載の手首用血圧計。
【0078】
以上、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0079】
10 本体部、11 筐体、11a 第1側面、11b 第2側面、11c 上面、11d 底面、12 表示部、12a 一端、12b 他端、13 操作部、14 測定スイッチ、15 メモリスイッチ、18 湾曲部、20 帯状部材、20a 第1端部、20b 第2端部、20c 一端部、20d 他端部、22 センシングカフ、23 押圧カフ、24 面ファスナ、40 制御部、41 A/D変換回路、42 ポンプ駆動回路、43 弁駆動回路、44,45 A/D変換回路、46 メモリ、47 電源、51 圧力センサ、52 ポンプ、53 排気弁、54 圧力センサ、55 加速度センサ、56 切替弁、60 左腕、60c 側面、60d 表面、61 橈骨、62 尺骨、63 橈骨動脈、64 尺骨動脈、65 橈側手根屈筋、66 長掌筋、70 右腕、70c 側面、70d 表面、71 橈骨、72 尺骨、73 橈骨動脈、74 尺骨動脈、75 橈側手根屈筋、77 長掌筋、100 手首用血圧計。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8