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特開2024-33862インクジェット3Dプリンター用サポート材形成用の光硬化性組成物、それを含むインクジェット3Dプリンター用インク及びインクジェット3Dプリンター用カートリッジ、並びに該光硬化性組成物を用いたサポート材の製造方法及び光造形物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033862
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】インクジェット3Dプリンター用サポート材形成用の光硬化性組成物、それを含むインクジェット3Dプリンター用インク及びインクジェット3Dプリンター用カートリッジ、並びに該光硬化性組成物を用いたサポート材の製造方法及び光造形物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/314 20170101AFI20240306BHJP
   B29C 64/112 20170101ALI20240306BHJP
   B29C 64/40 20170101ALI20240306BHJP
   B29C 64/255 20170101ALI20240306BHJP
【FI】
B29C64/314
B29C64/112
B29C64/40
B29C64/255
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137743
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】100161942
【弁理士】
【氏名又は名称】鴨 みどり
(72)【発明者】
【氏名】鯉沼 僚輔
(72)【発明者】
【氏名】桶田 里沙
(72)【発明者】
【氏名】辻野 恭範
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AA21
4F213AA44
4F213AB04
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL12
4F213WL29
4F213WL62
4F213WL96
(57)【要約】      (修正有)
【課題】光硬化による硬化物(サポート材)の溶媒への溶解性に優れるとともに、造形性に優れる造形物が得られる、インクジェット3Dプリンター用サポート材形成用の光硬化性組成物を提供すること。
【解決手段】本発明に係るインクジェット3Dプリンター用サポート材形成用の光硬化性組成物は、アルコキシポリアルキレングリコールメタクリレート(A)と、該アルコキシポリアルキレングリコールメタクリレート(A)以外の化合物である水溶性単量体(B)とを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコキシポリアルキレングリコールメタクリレート(A)と、該アルコキシポリアルキレングリコールメタクリレート(A)以外の化合物である水溶性単量体(B)とを含む、
インクジェット3Dプリンター用サポート材形成用の光硬化性組成物。
【請求項2】
さらに光重合開始剤を含む
請求項1に記載のインクジェット3Dプリンター用サポート材形成用の光硬化性組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のインクジェット3Dプリンター用サポート材形成用の光硬化性組成物を含む、インクジェット3Dプリンター用インク。
【請求項4】
請求項3に記載のインクジェット3Dプリンター用インクを充填したインクジェット3Dプリンター用カートリッジ。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のインクジェット3Dプリンター用サポート材形成用の光硬化性組成物を用いてサポート材を形成する、
サポート材の製造方法。
【請求項6】
請求項3に記載のインクジェット3Dプリンター用インクを用いてサポート材を形成する、
サポート材の製造方法。
【請求項7】
請求項1又は2に記載のインクジェット3Dプリンター用サポート材形成用の光硬化性組成物を用いた光造形物の製造方法であって、
該光硬化性組成物を用いたサポート材の形成工程と、
モデル材の形成工程と、
該サポート材の除去工程と
を含む、光造形物の製造方法。
【請求項8】
請求項3に記載のインクジェット3Dプリンター用インクを用いた光造形物の製造方法であって、
該インクを用いたサポート材の形成工程と、
モデル材の形成工程と、
該サポート材の除去工程と
を含む、光造形物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット3Dプリンター用サポート材形成用の光硬化性組成物、それを含むインクジェット3Dプリンター用インク及びインクジェット3Dプリンター用カートリッジ、並びに該光硬化性組成物を用いたサポート材の製造方法及び光造形物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェット3Dプリンターでは、インクジェットノズルから吐出した液状の光硬化性組成物を硬化させ、積層して光造形するインクジェット方式による光造形法が提案されている。この光造形法を用いたインクジェット3Dプリンター用インクとしては、UV等の光硬化により成型体(モデル材)を構成する光硬化性モデル材用組成物と、モデル材を立体的に積み上げる際に、UV等の光硬化によりサポート材を構成する光硬化性組成物とが用いられる。光硬化されたサポート材の上に光硬化されたモデル材を積層後、該サポート材を除去することにより、オーバーハング構造や中空構造を造形することが可能となる。
【0003】
特許文献1には、硬化後の硬化物が水溶性に優れ且つ硬化物の硬度が十分なインクジェット3Dプリンター用光硬化性サポート材組成物を提供することを目的として、イオン性基と対イオンとを含有する水溶性エチレン性不飽和単量体と、光重合開始剤とを含むインクジェット3Dプリンター用光硬化性サポート材組成物が記載されている。
【0004】
特許文献2には、硬化性に優れ、硬化後の硬化物の硬度が十分であり、且つ、硬化物の溶媒への溶解性に優れたインクジェット3Dプリンター用光硬化性サポート材用組成物を提供することを目的として、イオン性基と対イオンとを含有する水溶性エチレン性不飽和単量体を含み、水の含有量が光硬化性組成物100質量%中、10質量%以下であるインクジェット3Dプリンター用光硬化性サポート材用組成物が記載されている。
【0005】
インクジェット3Dプリンター用サポート材形成用の光硬化性組成物としては、さらに、光硬化による硬化物(サポート材)の溶媒への溶解性に優れるとともに、造形性に優れる造形物が得られるものが求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開2018/043582号公報
【特許文献2】国際公開2019/167948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の課題は、光硬化による硬化物(サポート材)の溶媒への溶解性に優れるとともに、造形性に優れる造形物が得られる、インクジェット3Dプリンター用サポート材形成用の光硬化性組成物、それを含むインクジェット3Dプリンター用インク及びインクジェット3Dプリンター用カートリッジ、並びに該光硬化性組成物を用いたサポート材の製造方法及び光造形物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、アルコキシポリアルキレングリコールメタクリレート(A)と、該アルコキシポリアルキレングリコールメタクリレート(A)以外の化合物である水溶性単量体(B)とを含むことにより、光硬化した場合の硬化物(サポート材)の溶媒への溶解性に優れるとともに、造形性に優れる造形物が得られるインクジェット3Dプリンター用サポート材形成用の光硬化性組成物を提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明のインクジェット3Dプリンター用サポート材形成用の光硬化性組成物は、アルコキシポリアルキレングリコールメタクリレート(A)と、該アルコキシポリアルキレングリコールメタクリレート(A)以外の化合物である水溶性単量体(B)とを含む。
上記インクジェット3Dプリンター用サポート材形成用の光硬化性組成物は、さらに光重合開始剤を含むことが好ましい。
【0010】
また、本発明のインクジェット3Dプリンター用インクは、上記の何れかのインクジェット3Dプリンター用サポート材形成用の光硬化性組成物を含んでいる。
【0011】
また、本発明のインクジェット3Dプリンター用カートリッジでは、上記のインクジェット3Dプリンター用インクを充填している。
【0012】
また、本発明のサポート材の製造方法では、上記の何れかのインクジェット3Dプリンター用サポート材形成用の光硬化性組成物または上記のインクジェット3Dプリンター用インクを用いてサポート材を形成する。
【0013】
また、本発明の光造形物の製造方法は、上記の何れかのインクジェット3Dプリンター用サポート材形成用の光硬化性組成物または上記のインクジェット3Dプリンター用インクを用いた光造形物の製造方法であって、該光硬化性組成物または該インクを用いたサポート材の形成工程と;モデル材の形成工程と;該サポート材の除去工程とを含んでいる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、光により硬化した場合の硬化物(サポート材)の溶媒への溶解性に優れるとともに、造形性に優れる造形物が得られるインクジェット3Dプリンター用サポート材形成用の光硬化性組成物、それを含むインクジェット3Dプリンター用インク及びインクジェット3Dプリンター用カートリッジ、並びに該光硬化性組成物を用いたサポート材の製造方法及び光造形物の製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
1.インクジェット3Dプリンター用サポート材形成用の光硬化性組成物
本発明のインクジェット3Dプリンター用サポート材形成用の光硬化性組成物(以下、単に光硬化性組成物という場合がある)は、アルコキシポリアルキレングリコールメタクリレート(A)と、該アルコキシポリアルキレングルコールメタクリレート(A)以外の化合物である水溶性単量体(B)とを含む。本発明の光硬化性組成物によれば、該光硬化性組成物を光により硬化した硬化物(サポート材)が溶媒への溶解性に優れるとともに、造形性に優れる造形物が得られる。
【0016】
本明細書において造形性に優れるとは、インクジェット3Dプリンターにおいて、サポート材形成用の光硬化性組成物とモデル材形成用の光硬化性組成物を光硬化後、硬化したサポート材を溶媒により溶解除去した場合に、サポート材と接触していたモデル材の表面状態がクリーンな(粗くない)ものが得られることを意味する。該造形性の指標の一つとして、疎水性モノマーに対するサポート材形成用の光硬化性組成物の相溶性があり、疎水性モノマーに対するサポート材形成用の光硬化性組成物の相溶性が優れている場合に、造形性も優れたものとなる。
【0017】
1-1 アルコキシポリアルキレングリコールメタクリレート(A)
本発明の光硬化性組成物は、アルコキシポリアルキレングリコールメタクリレート(A)と水溶性単量体(B)とを含む。これらを含むことにより、光により硬化した硬化物(サポート材)の溶媒への溶解性が優れるとともに、造形性に優れる造形物が得られる。アルコキシポリアルキレングリコールメタクリレート(A)は、光等により重合する単量体である。
【0018】
本発明の光硬化性組成物に含まれるアルコキシポリアルキレングリコールメタクリレート(A)におけるアルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、又はブトキシ基等が挙げられるが、中でもメトキシ基が好ましい。
アルコキシポリアルキレングリコールメタクリレート(A)におけるアルキレン基としては、メチレン、エチレン、プロピレン、又はブチレン基等が挙げられるが、中でもエチレン、又はプロピレン基が好ましい。
【0019】
アルコキシポリアルキレングリコールメタクリレート(A)としては、例えば、下記化学式(1)又は(2)で表される化合物が挙げられる。
【0020】
【化1】
【0021】
【化2】
【0022】
上記化学式(1)及び(2)において、nは2以上の整数である。
上記化学式(1)及び(2)におけるnは、2~90が好ましく、4以上がより好ましい。上限は50以下がより好ましく、25以下がさらにより好ましく、23以下が特に好ましい。
【0023】
上記アルコキシポリアルキレングリコールメタクリレート(A)としては、具体的には、メトキシジエチレングリコールEO2メタクリレート(上記化学式(1)においてn=2である化合物)、メトキシテトラエチレングリコールEO4メタクリレート(上記化学式(1)においてn=4である化合物)、メトキシポリエチレングリコールEO9メタクリレート(上記化学式(1)においてn=9である化合物)、メトキシポリプロピレングリコールPO9メタクリレート(上記化学式(2)においてn=9である化合物)、メトキシポリエチレングリコールEO13メタクリレート(上記化学式(1)においてn=13である化合物)、ポリプロピレングリコールPO13メタクリレート(上記化学式(2)においてn=13である化合物)、メトキシポリエチレングリコールEO23メタクリレート(上記化学式(1)においてn=23である化合物)、メトキシポリエチレングリコールEO45メタクリレート(上記化学式(1)においてn=45である化合物)、又はメトキシポリエチレングリコールEO90メタクリレート(上記化学式(1)においてn=90である化合物)等が挙げられる。
【0024】
上記アルコキシポリアルキレングリコールメタクリレート(A)は、上記化学式(1)又は(2)における、上記アルコキシ基、上記アルキレン鎖、及びnのうち、少なくとも1つが異なるものの混合物であってもよい。上記アルコキシポリアルキレングリコールメタクリレート(A)が、上記化学式(1)又は(2)におけるnの値が異なるものの混合物である場合、上記nはそれらの平均値とすることができる。
【0025】
上記アルコキシポリアルキレングリコールメタクリレート(A)としては、市販品を用いることができる。好ましい市販品としては、新中村化学工業社製のNKエステル M-20G、M-40G、M-90G、M-130G、M-230G、若しくはM-450G、又は日油社製のブレンマーPME-100、PME-200、PME-400、PME-1000、若しくはPME-4000等が挙げられる。
【0026】
上記アルコキシポリアルキレングリコールメタクリレート(A)の分子量は制限されない。重量平均分子量が、160程度以上が好ましく、4500以下が好ましい。
【0027】
重量平均分子量は、以下の装置を用いて、以下の条件にて測定できる。
装置:東ソー製 高速GPC装置(HLC-8320GPC)
検出器:RI
カラム:昭和電工製 SHODEX Asahipak
GF-310-HQ、GF-710-HQ、GF-1G 7B
カラム温度:40℃
流速:0.5ml/min
検量線:創和科学株式会社製 POLYACRYLIC ACID STANDARD
溶離液:0.1N酢酸ナトリウム水溶液/アセトニトリル=3/1(重量比)
【0028】
上記光硬化性組成物中に含まれるアルコキシポリアルキレングリコールメタクリレート(A)の含有量としては、上記組成物100質量%中、上限としては好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下、下限としては好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上である。このような範囲である場合に、光硬化性組成物の光硬化による硬化物(サポート材)の溶媒への溶解性により優れるとともに、造形性により優れる造形物が得られる光硬化性組成物を得ることが可能となる。なお、上記アルコキシポリアルキレングリコールメタクリレート(A)が2種以上含まれる場合、含有量は、各成分の含有量の合計である。
【0029】
また、上記光硬化性組成物中に含まれる単量体総量100質量%に対する上記アルコキシポリアルキレングリコールメタクリレート(A)の含有量は、10~70質量%であることが好ましく、20~60質量%であることがより好ましい。なお、上記アルコキシポリアルキレングリコールメタクリレート(A)が2種以上含まれる場合、含有量は、各成分の含有量の合計である。なお、上記アルコキシポリアルキレングリコールメタクリレート(A)及び水溶性単量体(B)は、単量体であり、上記単量体総量100質量%に含まれる。
【0030】
1-2 水溶性単量体(B)
本発明の光硬化性組成物に含まれる水溶性単量体(B)としては、上記アルコキシポリアルキレングリコールメタクリレート(A)以外の化合物であって、水溶解度(20℃)が20g/L以上の単量体であれば特に限定されず、イオン性基と対イオンとを含有するイオン性単量体でも、非イオン性単量体でもよい。中でも、イオン性基と対イオンとを含有するイオン性単量体が好ましく、また、エチレン性不飽和基を分子内に1つ以上有する単量体が好ましい。より好ましくはイオン性基と対イオンとを含有する水溶性エチレン性不飽和単量体である。なお、単量体とは、光等により重合する化合物を指す。
上記イオン性基と対イオンとを含有する水溶性エチレン性不飽和単量体は、イオン性基と対イオンとを含有することにより、水溶性が高い。水溶解度(20℃)は100g/L以上であることが好ましく、200g/L以上であることがより好ましく、500g/L以上であることがさらに好ましい。
【0031】
上記光硬化性組成物中に含まれる水溶性単量体(B)の含有量としては、上記組成物100質量%中、上限としては好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下、下限としては好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。このような範囲である場合に、光硬化性組成物の光硬化による硬化物(サポート材)の溶媒への溶解性により優れるとともに、造形性により優れる造形物が得られる光硬化性組成物を得ることが可能となる。
【0032】
また、上記光硬化性組成物に含まれる単量体総量100質量%に対する上記水溶性単量体(B)の含有量は、水溶解性を向上させる観点から、30~100質量%であることが好ましく、40~100質量%であることがより好ましい。なお、上記水溶性単量体(B)が2種以上含まれる場合、含有量は、各成分の含有量の合計である。
【0033】
上記エチレン性不飽和基としては、エチレン基、プロペニル基、ブテニル基、ビニルフェニル基、(メタ)アクリル基、アリルエーテル基、ビニルエーテル基、マレイル基、マレイミド基、(メタ)アクリルアミド基、アセチルビニル基又はビニルアミド基などが挙げられる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」は「アクリル」、「メタクリル」の双方又は何れかを意味し、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」、「メタクリレート」の双方又は何れかを意味する。なかでも、(メタ)アクリル基、ビニルエーテル基又は(メタ)アクリルアミド基が好ましく、(メタ)アクリル基がより好ましい。
【0034】
上記イオン性基としては、カルボン酸、リン酸、又はスルホン酸等が挙げられる。中でもカルボン酸が好ましい。
【0035】
上記対イオンとしては、ナトリウムイオン、若しくはカリウムイオン等のアルカリ金属イオン、アンモニウムイオン等の1価の対イオン;又は亜鉛イオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、アルミニウムイオン、若しくはネオジウムイオン等の多価の金属イオンなどが挙げられる。中でも、1価の対イオンが好ましく、ナトリウムイオン、若しくはカリウムイオン等のアルカリ金属イオン、又はアンモニウムイオンがより好ましく用いられ、さらに好ましくはアルカリ金属イオン、特に好ましくはカリウムイオンが用いられる。1価の対イオンに加えて、亜鉛イオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、アルミニウムイオン、又はネオジウムイオンなどの多価の金属イオンを用いることも好ましい。
【0036】
対イオンとして、1価の対イオンを含有する水溶性エチレン性不飽和単量体と、多価の金属イオンを含有する水溶性エチレン性不飽和単量体とを併用した場合に、光硬化性組成物を光硬化して得られる硬化物のサポート性をより向上できる。また、これらに加えて、さらに後述の有機酸及び/又はその塩と併用することは本発明の好ましい形態である。多価金属イオンで好ましくは、亜鉛イオン、マグネシウムイオン、又はカルシウムイオンである。
【0037】
上記光硬化性組成物中に好ましくは含まれるイオン性基と対イオンとを含有する水溶性エチレン性不飽和単量体の含有量としては、上記組成物100質量%中、上限としては好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下、下限としては好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。このような範囲である場合に、光硬化性組成物の光硬化による硬化物(サポート材)の溶媒への溶解性により優れるとともに、造形性により優れる造形物が得られる光硬化性組成物を得ることが可能となる。
【0038】
また、上記光硬化性組成物に含まれる単量体総量100質量%に対する上記イオン性基と対イオンとを含有する水溶性エチレン性不飽和単量体の含有量は、上記光硬化性組成物の水溶性を向上させる観点から、40~100質量%であることが好ましく、50~100質量%であることがより好ましい。なお、上記イオン性基と対イオンとを含有する水溶性エチレン性不飽和単量体が2種以上含まれる場合、含有量は、各成分の含有量の合計である。
【0039】
対イオンとして1価の対イオンを含有する水溶性エチレン性不飽和単量体と、対イオンとして多価の金属イオンを含有する水溶性エチレン性不飽和単量体と、の合計含有量としては、光硬化性組成物100質量%中、上限としては、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下である。下限としては、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。このような範囲である場合に、光硬化性組成物の光硬化による硬化物(サポート材)の溶媒への溶解性により優れるとともに、造形性により優れる造形物が得られる光硬化性組成物を得ることが可能となる。
【0040】
対イオンとして1価の対イオンを含有する水溶性エチレン性不飽和単量体の含有量は、光硬化性組成物100質量%中、上限としては、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。下限としては、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上である。このような範囲である場合に、光硬化性組成物の光硬化による硬化物(サポート材)の溶媒への溶解性により優れるとともに、造形性により優れる造形物が得られる光硬化性組成物を得ることが可能となる。
【0041】
対イオンとして多価の金属イオンを含有する水溶性エチレン性不飽和単量体の含有量は、光硬化性組成物100質量%中、上限としては好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、下限としては好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。このような範囲である場合に、光硬化性組成物の光硬化による硬化物(サポート材)の溶媒への溶解性により優れるとともに、造形性により優れる造形物が得られる光硬化性組成物を得ることが可能となる。
【0042】
上記光硬化性組成物に含まれる、イオン性基としてのカルボン酸と対イオンとを含有する水溶性エチレン性不飽和単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、3-(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、4-(メタ)アクリロイルオキシ安息香酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2-ビニル安息香酸、3-ビニル安息香酸、4-ビニル安息香酸、N-(メタ)アクリロイルアスパラギン酸、若しくはω-(メタ)アクロイルアルカン-1,1ジカルボン酸類の、ナトリウム塩、若しくはカリウム塩等のアルカリ金属塩若しくはアンモニウム塩等の1価塩;又は、亜鉛塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩、若しくはネオジウム塩等の多価塩などが挙げられる。
中でも、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩又はアンモニウム塩等の1価塩が好ましく、より好ましくはナトリウム塩、カリウム塩又はアンモニウム塩である。さらに好ましくはカリウム塩である。
【0043】
カルボン酸の1価塩と多価金属塩を併用した場合に、光硬化性組成物を光硬化して得られる硬化物のサポート性をより向上できる。また、これらに加えて、さらに後述の有機酸及び/又はその塩と併用することは本発明の好ましい形態である。カルボン酸多価金属塩で好ましくは、亜鉛塩、マグネシウム塩、又はカルシウム塩である。
【0044】
カルボン酸の1価塩と多価金属塩の合計含有量としては、光硬化性組成物100質量%中、上限としては、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下である。下限としては、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。このような範囲である場合に、光硬化性組成物の光硬化による硬化物(サポート材)の溶媒への溶解性により優れるとともに、造形性により優れる造形物が得られる光硬化性組成物を得ることが可能となる。
【0045】
カルボン酸の1価塩の含有量は、光硬化性組成物100質量%中、上限としては、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。下限としては、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上である。このような範囲である場合に、光硬化性組成物の光硬化による硬化物(サポート材)の溶媒への溶解性により優れるとともに、造形性により優れる造形物が得られる光硬化性組成物を得ることが可能となる。
【0046】
カルボン酸の多価金属塩の含有量は、光硬化性組成物100質量%中、上限としては好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、下限としては好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。このような範囲である場合に、光硬化性組成物の光硬化による硬化物(サポート材)の溶媒への溶解性により優れるとともに、造形性により優れる造形物が得られる光硬化性組成物を得ることが可能となる。
【0047】
イオン性基としてのカルボン酸と対イオンとを含有する水溶性エチレン性不飽和単量体としては、カルボン酸に含まれる炭素数が3~15のナトリウム塩、カリウム塩、亜鉛塩、又はカルシウム塩が好ましく、炭素数3~12のナトリウム塩、カリウム塩、亜鉛塩、又はカルシウム塩がより好ましい。上記炭素数としては、炭素数3~9がより好ましく、炭素数3~6がさらに好ましい。中でも、(メタ)アクリル酸カリウム、(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸亜鉛、又は(メタ)アクリル酸カルシウムが特に好ましい。炭素数が少ない単量体を用いることにより、分子中の疎水性部分を小さくすることができ、水溶性エチレン性不飽和単量体の水溶性をより高められる。
【0048】
上記光硬化性組成物に好ましくは含まれる、イオン性基としてのリン酸と対イオンとを含有する水溶性エチレン性不飽和単量体としては、例えば、モノ(2-アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、モノ(2-メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、ジフェニル(2-アクリロイルオキシエチル)ホスフェート、ジフェニル(2-メタクリロイルオキシエチル)ホスフェート、フェニル(2-アクリロイルオキシエチル)ホスフェート、アシッドホスホオキシエチルメタクリレート、メタクロイルオキシエチルアシッドホスフェート、ホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノメタクリレート、アシッド・ホスホオキシポリオキシプロピレングリコールメタクリレート、(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、(メタ)アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、(メタ)アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピルアシッドホスフェート、(メタ)アクリロイルオキシ-3-ヒドロキシプロピルアシッドホスフェート、(メタ)アクリロイルオキシ-3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルアシッドホスフェート、ビニルリン酸、又はp-ビニルベンゼンリン酸等の分子内にホスホノ基を有する化合物の、ナトリウム塩、カリウム塩、又はアンモニウム塩が挙げられる。
【0049】
上記光硬化性組成物に好ましくは含まれる、イオン性基としてのスルホン酸と対イオンとを含有する水溶性エチレン性不飽和単量体としては、例えば、アリルスルホン酸、イソプレンスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミドエチルスルホン酸、3-(メタ)アクリルアミドプロピルスルホン酸、4-(メタ)アクリルアミドブチルスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、p-ビニルベンゼンスルホン酸、又はビニルスルホン酸等の化合物の、ナトリウム塩、カリウム塩、又はアンモニウム塩が挙げられる。上記例示のイオン性基と対イオンとを含有する水溶性エチレン性不飽和単量体は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0050】
上記光硬化性組成物に好ましくは含まれる水溶性エチレン性不飽和単量体としては、アクリル酸塩が好ましく、リチウム、ナトリウム、若しくはカリウム等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、又はアミン塩等の、アクリル酸の1価塩がより好ましく、さらに好ましくはアルカリ金属塩又はアンモニウム塩、特に好ましくはナトリウム塩、カリウム塩又はアンモニウム塩である。最も好ましくはカリウム塩である。
【0051】
上記光硬化性組成物に好ましくは含まれる水溶性エチレン性不飽和単量体としては、上記に加えて、亜鉛塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩、又はネオジウム塩等のアクリル酸多価金属塩を含んでいてもよい。アクリル酸多価金属塩で好ましくは、亜鉛塩、マグネシウム塩、又はカルシウム塩である。
【0052】
アクリル酸の1価塩と多価金属塩を併用した場合に、光硬化性組成物を光硬化して得られる硬化物のサポート性をより向上できる。アクリル酸の1価塩と多価金属塩を併用する組み合わせとしては、アクリル酸カリウムとアクリル酸亜鉛の組み合わせが好ましい。アクリル酸亜鉛を併用することにより、より高い強度の硬化物を得ることができる。
【0053】
アクリル酸の1価塩と多価金属塩の合計含有量としては、光硬化性組成物100質量%中、上限としては、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下である。下限としては、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。
中でも、アクリル酸カリウムとアクリル酸亜鉛の合計含有量が、光硬化性組成物100質量%中、1~50質量%であることが好ましく、1~30質量%であることがより好ましい。このようにすることにより、組成物の粘度を低くすることができ、またアクリル酸塩の使用量を抑制することによりコストも低くできる。
【0054】
また、アクリル酸の1価塩の含有量は、光硬化性組成物100質量%中、上限としては、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。下限としては、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。
アクリル酸の多価金属塩の含有量は、光硬化性組成物100質量%中、上限としては好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、下限としては好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。
上記のようにした場合に、光硬化性組成物の光硬化による硬化物(サポート材)の溶媒への溶解性により優れるとともに、造形性により優れる造形物が得られる光硬化性組成物を得ることが可能となる。
【0055】
上記イオン性基と対イオンとを含有する水溶性エチレン性不飽和単量体以外の水溶性エチレン性不飽和単量体としては、(メタ)アクリル酸;アクリロイルモルホリン;N-ビニルピロリドン;(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-ヒドロキシエチルアクリルアミド、若しくはN-イソプロピルアクリルアミド等のアクリルアミド;メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート;エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート;2-(2-エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート;グリセロール(メタ)アクリレート;又はメトキシポリエチレングリコールEO9アクリレート等が挙げられる。
【0056】
上記水溶性単量体(B)は、さらに、架橋成分を含むことが好ましい。上記架橋成分としては、(メタ)アクリル酸の多価金属塩であることが好ましい。
【0057】
上記光硬化性組成物中に含まれるアルコキシポリアルキレングリコールメタクリレート(A)と水溶性単量体(B)との割合としては、質量比で、アルコキシポリアルキレングリコールメタクリレート(A):水溶性単量体(B)=1~99:99~1が好ましく、30~70:70~30がより好ましい。このような範囲である場合に、光硬化性組成物の光硬化による硬化物(サポート材)の溶媒への溶解性により優れるとともに、造形性により優れる造形物が得られる光硬化性組成物を得ることが可能となる。
【0058】
1-3 他の単量体
上記光硬化性組成物は、上記アルコキシポリアルキレングリコールメタクリレート(A)及び上記水溶性単量体(B)以外の他の単量体(例えば、水溶解度(20℃)が20g/L未満)を含んでいてもよい。上記他の単量体としては、例えば、他の不飽和単量体が挙げられ、具体的には例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、n-ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、メトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル-ジグリコール(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-シアノエチル(メタ)アクリレート、メチル=2-(ヒドロキシメチル)アクリレート、および2-エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート;フェニルアリルエーテル、o-,m-,p-クレゾールモノアリルエーテル、ビフェニル-2-オールモノアリルエーテル、ビフェニル-4-オールモノアリルエーテル、ブチルアリルエーテル、シクロヘキシルアリルエーテル、およびシクロヘキサンメタノールモノアリルエーテル等のアリルエーテル;ブチルビニルエーテル、ブチルプロペニルエーテル、ブチルブテニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、エチルヘキシルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、エチルエトキシビニルエーテル、アセチルエトキシエトキシビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、およびアダマンチルビニルエーテル等のビニルエーテル;フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド、およびn-ヘキシルマレイミド等のマレイミド;ベンジルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシエトキシエチルアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、ビスフェノールAのEO付加物ビス(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのPO付加物ビス(メタ)アクリレート、若しくは水添ビスフェノールAのEO付加物ビス(メタ)アクリレート等の芳香族基を有するモノマー若しくは脂環式基を有するモノマー;ポリオキシエチレンジ(メタ)アクリレート、若しくはポリオキシプロピレンジ(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレンジ(メタ)アクリレート;又はヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらは1種で単独使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0059】
上記他の単量体の含有量としては、上記組成物100質量%中、50質量%以下であることが好ましい。より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは10%以下、特に好ましくは2質量%未満である。このようにした場合に、光硬化性組成物の臭気をより抑制できる。
【0060】
1-4 有機酸及び/又はその塩
上記光硬化性組成物は、有機酸及び/又はその塩を含んでいてもよい。有機酸及び/又はその塩は、上記アルコキシポリアルキレングリコールメタクリレート(A)及び上記水溶性単量体(B)、及び上記他の不飽和単量体以外の化合物である。
有機酸としては、例えば、p-トルエンスルホン酸などの有機スルホン酸、フェニルホスホン酸などの有機リン酸、有機カルボン酸、又はリン酸エステルなどが挙げられる。なかでも有機カルボン酸が好ましい。有機カルボン酸としては、例えば、脂肪族カルボン酸、又は芳香族カルボン酸が挙げられる。脂肪族カルボン酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、オクチル酸、ノナン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、トリデカン酸、ペンタデカン酸、ヘプタデカン酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、アジピン酸、安息香酸、グリシン、ポリアクリル酸、又はポリ乳酸などが挙げられる。芳香族カルボン酸としては、例えば、安息香酸、フタル酸、又はサリチル酸などが挙げられる。なかでも、脂肪族カルボン酸がより好ましく、乳酸、プロピオン酸、又はポリアクリル酸がさらに好ましい。
有機酸の塩としては、例えば、金属カルボン酸塩が挙げられる。金属カルボン酸塩の金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、若しくはカリウムなどのアルカリ金属;マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、若しくはバリウムなどのアルカリ土類金属;亜鉛;又はジルコニウムなどが挙げられる。なかでもカリウムなどのアルカリ金属が好ましい。有機酸の塩としては、乳酸カリウム、又はプロピオン酸カリウムが好ましい。
上記光硬化性組成物は、有機酸及び/又はその塩を含んでいる場合に、貯蔵安定性がより向上する。
【0061】
有機酸及び/又はその塩の含有量は、光硬化性組成物100質量%中、上限としては好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下、下限としては好ましくは1質量%以上である。このようにした場合に光硬化性組成物の貯蔵安定性をより向上できる。
【0062】
1-5 光重合開始剤
上記光硬化性組成物は、光重合開始剤を含んでいてもよい。光重合開始剤としては、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、若しくはベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン化合物;アセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-フェニルプロパン-1-オン、ジエトキシアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、若しくは2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン等のアセトフェノン化合物;2-エチルアントラキノン、2-t-ブチルアントラキノン、2-クロロアントラキノン、若しくは2-アミルアントラキノン等のアントラキノン化合物;2,4-ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、若しくは[3-(3,4-ジメチル-9-オキソチオキサンテン-2-イル)オキシ-2-ヒドロキシプロピル]-トリメチルアザニウムクロリド等のチオキサントン化合物;アセトフェノンジメチルケタール、若しくはベンジルジメチルケタール等のケタール化合物;ベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、若しくは4,4’-ビスメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン化合物;2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス-(2、6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド、若しくはビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド等のホスフィンオキシド;又はこれらの混合物等が挙げられる。
これらは1種で単独使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
光重合開始剤の含有量としては、上記組成物100質量%中、好ましくは0.05~10.0質量%、より好ましくは0.1~7.0質量%、さらに好ましくは0.2~5.0質量%である。
【0063】
1-6 溶媒
上記光硬化性組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で溶媒を含んでいてもよい。上記溶媒としては、水;メタノール、エタノール、若しくはプロパノール等の1価アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、1,2-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロール、若しくはポリオキシプロピレングリコール等のグリコール;プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、若しくはプロピレングリコールモノプロピルエーテル等のグリコールエーテル;又はプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールエーテルアセテートなどが挙げられる。上記溶剤は1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0064】
上記溶媒としては、グリコール、グリコールエーテル、又はグリコールエーテルアセテートを含むことが好ましく、なかでもグリコールを含むことが好ましい。グリコールの中でも、グリコール分子を構成するアルキレン鎖として、炭素数が2~6のアルキレン鎖を含むグリコールが好ましく、炭素数が2および/または3のアルキレン鎖を含むグリコールがより好ましく、炭素数が3のアルキレン鎖を含むグリコールがさらに好ましい。
【0065】
上記炭素数が2のアルキレン鎖を含むグリコールとしては、たとえば、エチレングリコール;又はジエチレングリコール、若しくはトリエチレングリコール等のポリエチレングリコールが好ましくあげられる。上記炭素数が3のアルキレン鎖を含むグリコールとしては、たとえば、プロピレングリコール;又はジプロピレングリコール、若しくはトリプロピレングリコール等のポリプロピレングリコールが好ましくあげられる。
【0066】
上記炭素数が2および3のアルキレン鎖を含むグリコールとしては、たとえば、アルキレン鎖としてエチレン鎖とプロピレン鎖とを含むポリアルキレングリコールがあげられる。
【0067】
上記グリコールとして、1分子中に含まれるすべてのアルキレン鎖の炭素数の合計(全アルキレン鎖炭素数とも称する)が2および/または3のグリコールを含むことが好ましく、エチレングリコールおよび/またはプロピレングリコールを含むことがより好ましく、プロピレングリコールを含むことがさらに好ましい。
【0068】
上記グリコールとして、ポリアルキレングリコールを用いる場合、上記全アルキレン鎖炭素数が4~30のポリアルキレングリコールを含むことが好ましい。上記全アルキレン鎖炭素数が25以下のグリコールを含むことがより好ましい。上記ポリアルキレングリコールが、上記炭素数が2および/または3のアルキレン鎖を含み、且つ上記全アルキレン鎖炭素数が上記範囲であることがさらに好ましい形態である。
【0069】
上記グリコールとしては、上記炭素数が2または3のアルキレン鎖を含み、且つ上記全アルキレン鎖炭素数が2または3であるグリコールと、上記炭素数が2および/または3のアルキレン鎖を含み、且つ上記全アルキレン鎖炭素数が4~30であるポリアルキレングリコールとを含むことが好ましい。
【0070】
上記グリコール、上記グリコールエーテル、および上記グリコールエーテルアセテートの合計含有量が、溶媒100質量%に対し、50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは80質量%以上であり、さらに好ましくは95質量%以上であり、特に好ましくは100質量%である。また上記グリコールの含有量が溶媒100質量%に対し、50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは80質量%以上であり、さらに好ましくは95質量%以上であり、特に好ましくは100質量%である。
【0071】
上記溶媒は、光硬化性組成物100質量%中、水の含有量が10質量%以下となるように使用することが好ましい。上記光硬化性組成物における水の含有量は、光硬化性組成物100質量%中、より好ましくは10質量%未満、さらに好ましくは5質量%以下、特に好ましくは3質量%以下である。水の含有量の下限は、好ましくは0質量%である。このような範囲とすることにより、サポート性を向上できる。
【0072】
光硬化性組成物中の水の含有量は、仕込んだ各化合物の水の含有量から計算で求めることができる。また、カールフィッシャー測定法で求めることもできる。サポート性(サポート力)とは、光硬化性組成物の硬化後の硬化物が、硬化後のモデル材を支える性能であり、例えば、100mW/cmの紫外線を10秒間照射して光硬化されることが好ましい。
【0073】
上記組成物100質量%中、上記溶媒の含有量は、下限としては、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上、上限としては、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下である。
【0074】
上記炭素数が2または3のアルキレン鎖を含み、且つ上記全アルキレン鎖炭素数が2または3であるグリコールと、上記炭素数が2および/または3のアルキレン鎖を含み、且つ上記全アルキレン鎖炭素数が4~30であるポリアルキレングリコールは合計で、上記組成物100質量%中、30~90質量%含まれていることが好ましく、40~90質量%含まれていることがより好ましい。中でも、上記組成物100質量%中、プロピレングリコールの含有量が、30~90質量%であることが好ましく、35~80質量%であることがより好ましい。
【0075】
1-7 その他の添加剤
上記光硬化性組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で必要によりその他の添加剤を含有させることができる。具体的には、例えば、光開始助剤、重合禁止剤、界面活性剤、着色剤、酸化防止剤、連鎖移動剤、又は充填剤等が挙げられる。
【0076】
光開始助剤としては、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン、N,N-ジメチル-p-トルイジン、N,N-ジメチルアミノ-p-安息香酸エチルエステル、N,N-ジメチルアミノ-p-安息香酸イソアミルエチルエステル、N,N-ジヒドロキシエチルアニリン、トリエチルアミン又はN,N-ジメチルヘキシルアミン等の第3級アミン化合物が挙げられる。
【0077】
重合禁止剤としては、(アルキル)フェノール、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシン、p-メトキシフェノール、t-ブチルカテコール、t-ブチルハイドロキノン、ピロガロール、1,1-ピクリルヒドラジル、フェノチアジン、p-ベンゾキノン、ニトロソベンゼン、2,5-ジ-t-ブチル-p-ベンゾキノン、ジチオベンゾイルジスルフィド、ピクリン酸、クペロン、アルミニウムN-ニトロソフェニルヒドロキシルアミン、トリ-p-ニトロフェニルメチル、N-(3-オキシアニリノ-1,3-ジメチルブチリデン)アニリンオキシド、ジブチルクレゾール、シクロヘキサノンオキシムクレゾール、グアヤコール、o-イソプロピルフェノール、ブチラルドキシム、メチルエチルケトキシム、又はシクロヘキサノンオキシム等が挙げられる。
【0078】
界面活性剤としては、ノニルフェノールのエチレンオキサイド(以下EOと略記)1~40モル付加物、若しくはステアリン酸EO1~40モル付加物等のPEG型非イオン界面活性剤;ソルビタンパルミチン酸モノエステル、ソルビタンステアリン酸モノエステル、若しくはソルビタンステアリン酸トリエステル等の多価アルコール型非イオン界面活性剤;パーフルオロアルキルEO1~50モル付加物、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、若しくはパーフルオロアルキルベタイン等のフッ素含有界面活性剤;又はポリエーテル変性シリコーンオイル、若しくは(メタ)アクリレート変性シリコーンオイル等の変性シリコーンオイル等が挙げられる。
【0079】
着色剤としては、トルイジンレッド、パーマネントカーミンFB、ファストイエローG、ジスアゾイエローAAA、ジスアゾオレンジPMP、溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニンブルー、インダントロンブルー、キナクリドンレッド、ジオキサジンバイオレット、塩基性染料、酸性染料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、又は無機顔料としての金属酸化物若しくはカーボンブラック等が挙げられる。
【0080】
酸化防止剤としては、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ジラウリル3,3’-チオジプロピオネート、トリフェニルホスファイト、オクチル化ジフェニルアミン、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、又は2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)等が挙げられる。
【0081】
連鎖移動剤としては、ヒドロキノン、ジエチルメチルアミン、ジフェニルアミン、ジエチルジスルフィド、ジ-1-オクチルジスルフィド、トルエン、キシレン、1-ブテン、1-ノネン、ジクロロメタン、四塩化炭素、メタノール、1-ブタノール、エチルチオール、1-オクチルチオール、アセトン、メチルエチルケトン、2-メチル-2-プロピルアルデヒド、1-ペンチルアルデヒド、フェノール、m-クレゾール、p-クレゾール、又はo-クレゾール等が挙げられる。
【0082】
充填剤としては、アルミナ粉、シリカ粉、タルク、マイカ、クレー、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、アルミニウム粉、銅粉、炭素繊維、ガラス繊維、コットン繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、レーヨン繊維、マイクロバルーン、カーボンブラック、金属硫化物、又は木粉等が挙げられる。
【0083】
上記添加物は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記添加物の含有量としては、上記組成物100質量%中、好ましくは0.05~30質量%、より好ましくは0.05~20質量%である。
【0084】
上記光硬化性組成物は、上述した各種成分を用いて調製することができ、その調製手段や条件は特に限定されないが、例えば、一般的な撹拌羽根若しくは超音波ホモジナイザー、高速ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、遊星撹拌装置、3本ロール、ボールミル、キティーミル、ディスクミル、ピンミル、若しくはダイノーミル等の混合又は撹拌できる装置を用いて撹拌・混合する方法が挙げられる。溶液調製後に各種フィルターを用いてろ過をしてもよい。
【0085】
上記光硬化性組成物は、インクジェットヘッドからの吐出性を良好にする観点から、吐出温度での粘度が20mPa・s以下であることが好ましい。上記光硬化性組成物では、25℃における粘度は5~300mPa・sが好ましい。また、表面張力は25~70mN/mが好ましい。なお、光硬化性組成物の粘度測定は、JIS Z 8803に準拠し、R100型粘度計を用いて行われる。
【0086】
上記光硬化性組成物では、外観が均一であり、さらに透明であることが好ましい。また、臭気が抑制されていることが好ましい。具体的には、上記光硬化性組成物に含まれる単量体による刺激臭が僅かであることが好ましく、上記単量体による刺激臭がないことがより好ましい。上記光硬化性組成物では、上記アルコキシポリアルキレングリコールメタクリレート(A)及び水溶性単量体(B)以外の他の単量体の含有量を、好ましくは、光硬化性組成物100質量%中、2質量%未満とすることにより、上記臭気をより効果的に抑制できる。
【0087】
上記光硬化性組成物は、硬化性に優れていることが好ましい。硬化性としては、100~3000mJ/cmの光を照射することにより硬化することが好ましく、100~2000mJ/cmの光を照射することにより硬化することがより好ましく、100~1000mJ/cmの光を照射することにより硬化することがさらに好ましい。ここで、硬化するとは、液状でなくなり、流動性がなくなることをいう。
【0088】
上記光硬化性組成物は、硬化後の硬化物がサポート材として使用されるため、サポート材の必須要件として、硬化後の硬化物の溶媒への溶解性が優れている。溶媒としては、水、メタノール、エタノール、又はプロパノール等の1価アルコールなどが挙げられる。中でも水が好ましい。
硬化後の硬化物の溶媒への溶解性は、例えば、硬化物3.0gを金網の上に置き、常温(例えば25℃前後)の水2.7g中に浸漬し、1時間静置させた後に硬化物が残存しないことが好ましい。
【0089】
上記光硬化性組成物は、媒体で希釈されていてもよい。上記媒体としては、親水性媒体が好ましい。この場合にも、上記光硬化性組成物100質量%中、水の含有量が10質量%以下となることが好ましい。
【0090】
上記光硬化性組成物は必要に応じてその他の添加剤を、本発明の効果を害しない範囲内において含んでいてもよい。その他の添加剤としては、例えば、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、防錆剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散剤、分散安定剤、キレート剤、乾燥防止剤(湿潤剤)、着色剤、褪色防止剤、比抵抗調整剤、皮膜調整剤、酸化防止剤、又は界面活性剤等の公知の添加剤が挙げられる。これらの各種添加剤は、たとえば上記光硬化性組成物に直接添加できる。
【0091】
本発明の光硬化性組成物は、上述した各種成分を用いて調製することができ、その調製手段や条件は特に限定されないが、例えば、一般的な撹拌羽根若しくは超音波ホモジナイザー、高速ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、遊星撹拌装置、3本ロール、ボールミル、キティーミル、ディスクミル、ピンミル、若しくはダイノーミル等の混合又は撹拌できる装置を用いて撹拌・混合する方法が挙げられる。溶液調製後に各種フィルターを用いてろ過をしてもよい。
【0092】
本発明の光硬化性組成物は、インクジェット光造形用であることが好ましく、インクジェット3Dプリンター用インクに好適である。
【0093】
2.インクジェット3Dプリンター用インク
本発明のインクジェット3Dプリンター用インクは、少なくとも上記の何れかの光硬化性組成物を含んでいる。インクジェット3Dプリンター用インクに含まれる上記光硬化性組成物は、媒体で希釈されていてもよい。
【0094】
上記光硬化性組成物をそのまま(あるいは直接)インクジェット3Dプリンター用インクとして用いることもできるし、媒体と上記光硬化性組成物とを混合することによって本発明に係るインクジェット3Dプリンター用インクを製造することもできる。上記媒体としては、親水性媒体が好ましい。この場合にも、インクジェット3Dプリンター用インク100質量%中、水の含有量が10質量%以下となることが好ましい。
【0095】
上記インクジェット3Dプリンター用インクは必要に応じてその他の添加剤を、本発明の効果を害しない範囲内において含んでいてもよい。その他の添加剤としては、例えば、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、防錆剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散剤、分散安定剤、キレート剤、乾燥防止剤(湿潤剤)、着色剤、褪色防止剤、比抵抗調整剤、皮膜調整剤、酸化防止剤、又は界面活性剤等の公知の添加剤が挙げられる。これらの各種添加剤は、たとえばインク液に直接添加できる。
【0096】
上記インクジェット3Dプリンター用インク100質量%中、上記光硬化性組成物の含有量は、下限としては、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましく、上限としては、100質量%以下が好ましい。
【0097】
上記インクジェット3Dプリンター用インクでは、25℃における粘度は5~300mPa・sが好ましい。また、表面張力は25~70mN/mが好ましい。
【0098】
3.インクジェット3Dプリンター用カートリッジ
本発明のインクジェット3Dプリンター用カートリッジでは、上記のインクジェット3Dプリンター用インクを充填している。本発明のインクジェット3Dプリンター用カートリッジは、上記インクジェット3Dプリンター用インクが充填されていればよく、インクジェット3Dプリンター用カートリッジの形態としては公知のものが使用できる。
【0099】
4.サポート材の製造方法
本発明のサポート材の製造方法では、上記の何れかのインクジェット3Dプリンター用サポート材形成用の光硬化性組成物または上記のインクジェット3Dプリンター用インクを用いてサポート材を形成する。本発明のサポート材の製造方法は、上記インクジェット3Dプリンター用インクを使用しておればよく、特に限定されないが、ノズルから噴射、印刷等にて造形後、100mJ/cm~3000mJ/cm程度の紫外線を照射して硬化する等の公知の方法が使用できる。紫外線照射としては、より好ましくは100~2000mJ/cmの光、さらに好ましくは100~1000mJ/cmの光である。
【0100】
5.光造形物の製造方法
本発明の光造形物の製造方法は、上記の何れかのインクジェット3Dプリンター用サポート材形成用の光硬化性組成物または上記のインクジェット3Dプリンター用インクを用いた光造形物の製造方法であって、
上記インクジェット3Dプリンター用サポート材形成用の光硬化性組成物または該インクジェット3Dプリンター用インクを用いたサポート材の形成工程と;
モデル材の形成工程と;
上記サポート材の除去工程とを含んでいる。
【0101】
上記光造形物の製造方法では、サポート材の形成工程において上記インクジェット3Dプリンター用サポート材形成用の光硬化性組成物または上記インクジェット3Dプリンター用インクを用いる他は、公知の方法が使用できる。
【0102】
3Dプリンター光造形法では、サポート材形成用の光硬化性組成物の硬化物により、モデル材用光硬化性組成物の外形を支えて造形するため、両者は接して界面を形成する。モデル材用光硬化性組成物とサポート材形成用の光硬化性組成物とを、各ノズルから噴射、印刷等するのは、同時であってもよい。
【0103】
続いて、上記硬化物から、サポート材形成用の光硬化性組成物が光硬化した硬化物(サポート材)を除去する。本発明のサポート材形成用の光硬化性組成物を光硬化させて得られた硬化物では、硬化物が溶媒への溶解性に優れているため、サポート材を水等の極性溶媒にて容易に除去できる。除去方法としては、安全面やコスト面から、サポート材を水中に静置して除去する方法が好ましい。
【0104】
本発明の光造形物の製造方法では、上記サポート材形成用の光硬化性組成物または上記インクジェット3Dプリンター用インクを硬化したサポート材は、溶媒への溶解性に優れ、且つ、疎水性モノマーに対するサポート材形成用の光硬化性組成物の相溶性が優れていることにより、サポート材と接触していたモデル材の表面状態が良好である(サポート材と隣接していた表面が粗くなることが抑制された)ものが得られるため、造形性に優れた光造形物を容易に製造することができる。
【0105】
上記モデル材用の光硬化性組成物としては、疎水性モノマーと光重合開始剤とを含んでいるものが挙げられる。上記疎水性モノマーとしては、光硬化性を有する単量体で、非水溶性エチレン性不飽和単量体が好ましく、水溶解度(20℃)が20g/L未満の、単官能エチレン性不飽和単量体や多官能エチレン性不飽和単量体等が挙げられる。具体的には、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、若しくはアクリル酸等の直鎖若しくは分岐のアルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4-t-シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、若しくはN-ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート、等の脂環含有(メタ)アクリレート;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、4-(メタ)アクリロイルオキシメチル-2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン、4-(メタ)アクリロイルオキシメチル-2-シクロヘキシル-1,3-ジオキソラン、アダマンチル(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマール(メタ)アクリレート、若しくは(メタ)アクリル酸グリシジル等の複素環含有(メタ)アクリレート;トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、若しくは2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート等の直鎖若しくは分岐のアルキレングリコール(メタ)アクリレート;炭素数が1~12のアルキル基を導入したN-アルキル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、メチルビニルエーテル、スチレン、若しくはN-ビニルカプロラクタム等のビニル化合物;又はアリルオキシメチルアクリル酸メチルなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。またこれらの疎水性モノマーは金属成分を含まない単量体であることが好ましい。
【0106】
上記疎水性モノマーの含有量は、モデル材用の光硬化性組成物の硬化性を向上させる観点から、上記モデル材用の光硬化性組成物全体100質量%に対して、15質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましい。また、90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましい。なお、上記疎水性モノマーが2種以上含まれる場合、含有量は、各成分の含有量の合計である。
【0107】
また、モデル材用の光硬化性組成物に含まれる単量体総量100質量%に対する上記疎水性モノマーの含有量は、モデル材用の光硬化性組成物の硬化性を向上させる観点から、50~100質量%であることが好ましく、60~100質量%であることがより好ましい。なお、上記疎水性モノマーが2種以上含まれる場合、含有量は、各成分の含有量の合計である。
【実施例0108】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0109】
<サポート材形成用の光硬化性組成物>
[実施例1]
20mL褐色スクリュー管に水溶性単量体(B)としてアクリル酸カリウム((株)日本触媒社製)10質量部、アクリル酸亜鉛((株)日本触媒社製)5質量部、アルコキシポリアルキレングリコールメタクリレート(A)としてM-90G((株)新中村化学工業社製)20質量部、溶媒としてプロピレングリコール((株)ADEKA社製)35質量部、ポリプロピレングリコール400((株)日油社製)30質量部、Omnirad184(IGM RESINS社製)1.0質量部を加えて攪拌混合し、光硬化性組成物(1)を得た。
【0110】
[実施例2,3、比較例1,2]
実施例1において、アルコキシポリアルキレングリコールメタクリレート(A)、水溶性単量体(B)ならびに溶媒として、表1に示す化合物、量(質量部)を用いる以外は実施例1と同様にして、実施例2,3にかかる光硬化性組成物(2)、(3)、比較例1,2にかかる光硬化性組成物(c1)、(c2)を得た。
【0111】
<相溶性試験>
得られた各光硬化性組成物を、疎水性モノマーであるイソボルニルアクリレートと、光硬化性組成物:イソボルニルアクリレート=3:1(質量比)となるようにスクリュー管に秤取り、100rpmで30秒間撹拌後の混合物の外観を目視によりそれぞれ確認した。評価基準は、次の通りである。結果を表1に示す。
○:光硬化性組成物とイソボルニルアクリレートとの2液が、白濁することなく混ざっている。
×:光硬化性組成物とイソボルニルアクリレートとの2液の混合液が白濁する。
【0112】
<溶解性試験>
得られた各光硬化性組成物に、100mW/cmの紫外線を10秒間照射して光硬化させた硬化物片3.0gを10mLスクリュー管に入れ、25℃の水2.7gを加え、1時間静置させた後の溶解性を目視により評価した。評価基準は、次の通りである。結果を表1に示す。
○:硬化物が残存せず、溶解する。
×:硬化物が残存する。
【0113】
【表1】
【0114】
表1に記載されたサポート材組成物の成分は以下に示す市販のものを使用した。
M-90G:メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、n平均値:約9、(株)新中村化学工業社製 NKエステル M-90G
M-130G:メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、n平均値:約13、(株)新中村化学工業社製 NKエステル M-130G
M-230G:メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、n平均値:約23、(株)新中村化学工業社製 NKエステル M-230G
アクリル酸カリウム:(株)日本触媒社製
アクリル酸亜鉛:(株)日本触媒社製
ヒドロキシエチルメタクリレート:(株)日本触媒社製
プロピレングリコール:(株)ADEKA社製
ポリプロピレングリコール(ジオール型、Mn=400):(株)日油社製
Omnirad184:IGM RESINS社製
【0115】
実施例の光硬化性組成物では、表1に示すように、光硬化による硬化物(サポート材)の水等の溶媒への溶解性に優れるとともに、疎水性モノマーに対する光硬化性組成物の相溶性に優れ、造形性に優れる造形物が得られる光硬化性組成物が得られた。