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特開2024-33865マイクロ波照射装置およびマイクロ波熟成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033865
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】マイクロ波照射装置およびマイクロ波熟成装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 6/68 20060101AFI20240306BHJP
   H05B 6/66 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
H05B6/68 340
H05B6/66 C
H05B6/68 370
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137747
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000180313
【氏名又は名称】四国計測工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123984
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 晃伸
(74)【代理人】
【識別番号】100102314
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 阿佐子
(74)【代理人】
【識別番号】100159178
【弁理士】
【氏名又は名称】榛葉 貴宏
(72)【発明者】
【氏名】中井 敦志
(72)【発明者】
【氏名】山本 真
(72)【発明者】
【氏名】曽我 博文
【テーマコード(参考)】
3K086
【Fターム(参考)】
3K086AA08
3K086AA10
3K086BA07
3K086CD07
3K086DA02
3K086DA15
(57)【要約】
【課題】無線通信機器への通信干渉を低減することができる、マイクロ波照射装置およびマイクロ波熟成装置を提供する。
【解決手段】マイクロ波を照射する半導体発振器を備えるマイクロ波発振部30と、マイクロ波発振部30の動作を制御する制御部70と、を備え、制御部70は、設定された上限周波数値から下限周波数値の範囲内で、マイクロ波発振部30の発振周波数を開始周波数から高い周波数または低い周波数に、経時的に変化させながらマイクロ波を照射させる掃引照射機能を備え、掃引照射機能は、発振周波数の掃引周期を10~300ミリ秒の範囲内の周期とするとともに、発振周波数を経時的に変化させることにより上限周波数値または下限周波数値の範囲内を超えることになる場合に、前回とは異なる開始周波数を設定する機能を含む、マイクロ波照射装置。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波を照射する半導体発振器を備えるマイクロ波発振部と、
前記マイクロ波発振部の動作を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、設定された上限周波数値から下限周波数値の範囲内で、前記マイクロ波発振部の発振周波数を開始周波数から高い周波数または低い周波数に、経時的に変化させながらマイクロ波を照射させる掃引照射機能を備え、
前記掃引照射機能は、前記発振周波数の掃引周期を10~300ミリ秒の範囲内の周期とするとともに、前記発振周波数を経時的に変化させることにより前記上限周波数値または前記下限周波数値の範囲内を超えることになる場合に、前回とは異なる開始周波数を設定する機能を含む、マイクロ波照射装置。
【請求項2】
前記掃引照射機能は、前記発振周波数の時間当たりの変化幅を20MHz/秒以上として、前記発振周波数を経時的に変化させる、請求項1に記載のマイクロ波照射装置。
【請求項3】
前記掃引照射機能は、
前記発振周波数を周波数の増加方向に経時的に変化させることにより前記上限周波数値を超えることになる場合に、前記下限周波数値に、前記上限周波数値を超えた分の周波数を加えた周波数を前記開始周波数に設定する、または、
前記発振周波数を周波数の減少方向に経時的に変化させることにより前記下限周波数値を超えることになる場合に、前記上限周波数値から、前記下限周波数値を超えた分の周波数を引いた周波数を前記開始周波数に設定する、請求項1に記載のマイクロ波照射装置。
【請求項4】
前記掃引照射機能は、
前記発振周波数を周波数の増加方向に経時的に変化させることにより前記上限周波数値の範囲内を超えることになる場合に、前記上限周波数値から、前記上限周波数値を超えた分の周波数を引いた周波数を前記開始周波数に設定し、前記発振周波数を前記開始周波数から周波数の減少方向に経時的に変化させる第1掃引を行い、
前記第1掃引を行った後に、前記発振周波数を周波数の減少方向に経時的に変化させることにより前記下限周波数値の範囲内を超えることになる場合に、前記下限周波数値に、前記下限周波数値を超えた分の周波数を加えた周波数を前記開始周波数に設定し、前記発振周波数を前記開始周波数から周波数の増加方向に経時的に変化させる第2掃引を行う、請求項1に記載のマイクロ波照射装置。
【請求項5】
前記上限周波数値から前記下限周波数値を減算した値が素数となる、請求項1に記載のマイクロ波照射装置。
【請求項6】
前記上限周波数値および前記下限周波数値が、2400~2500MHzの範囲内で設定される、請求項1に記載のマイクロ波照射装置。
【請求項7】
前記下限周波数値が、2420MHz以上に設定される、請求項6に記載のマイクロ波照射装置。
【請求項8】
前記掃引照射機能は、前記発振周波数を3~20MHzの間隔で連続的に逓増変化させる、請求項1に記載のマイクロ波照射装置。
【請求項9】
前記掃引照射機能が、下記(A)、(B)または(C)の各工程を含む、請求項1に記載のマイクロ波照射装置。
(A)前記発振周波数を開始周波数から所定の変化量で高い周波数に更新することを繰り返す第1の工程、
前記第1の工程を実行することにより、前記発振周波数が前記上限周波数値を超えることになる場合に、前記発振周波数を前回の開始周波数とは異なる開始周波数に更新し、当該更新された開始周波数から前記発振周波数を所定の変化量で高い周波数に更新することを繰り返し、前回の発振周波数と重複しない周波数で発振を行う第2の工程、
前記第2の工程を実行することにより、前記発振周波数が前記上限周波数値を超えることになる場合に、前記発振周波数を前回および前々回の開始周波数とは異なる開始周波数に更新し、当該更新された開始周波数から前記発振周波数を所定の変化量で高い周波数に更新することを繰り返し、前回および前々回の発振周波数と重複しない周波数で発振を行う第3の工程、
前記第1ないし第3の工程を繰り返す第4の工程
(B)前記発振周波数を開始周波数から所定の変化量で低い周波数に更新することを繰り返す第1の工程、
前記第1の工程を実行することにより、前記発振周波数が前記下限周波数値を超えることになる場合に、前記発振周波数を前回の開始周波数とは異なる開始周波数に更新し、当該更新された開始周波数から前記発振周波数を所定の変化量で低い周波数に更新することを繰り返し、前回の発振周波数と重複しない周波数で発振を行う第2の工程、
前記第2の工程を実行することにより、前記発振周波数が前記下限周波数値を超えることになる場合に、前記発振周波数を前回および前々回の開始周波数とは異なる開始周波数に更新し、当該更新された開始周波数から前記発振周波数を所定の変化量で低い周波数に更新することを繰り返し、前回および前々回の発振周波数と重複しない周波数で発振を行う第3の工程、
前記第1ないし第3の工程を繰り返す第4の工程
(C)前記発振周波数を開始周波数から所定の変化量で高い周波数に更新することを繰り返す第1の工程、
前記第1の工程を実行することにより、前記発振周波数が前記上限周波数値を超えることになる場合に、前記発振周波数を前回の開始周波数とは異なる開始周波数に更新し、当該更新された開始周波数から前記発振周波数を所定の変化量で低い周波数に更新することを繰り返し、前回の発振周波数と重複しない周波数で発振を行う第2の工程、
前記第2の工程を実行することにより、前記発振周波数が前記下限周波数値を超えることになる場合に、前記発振周波数を前回および前々回の開始周波数とは異なる開始周波数に更新し、当該更新された開始周波数から前記発振周波数を所定の変化量で高い周波数に更新することを繰り返し、前回および前々回の発振周波数と重複しない周波数で発振を行う第3の工程、
前記第3の工程を実行することにより、前記発振周波数が前記上限周波数値を超えることになる場合に、前記発振周波数を前回、前々回および3回前の開始周波数とは異なる開始周波数に更新し、当該更新された開始周波数から前記発振周波数を所定の変化量で低い周波数に更新することを繰り返し、前回、前々回および3回前の発振周波数と重複しない周波数で発振を行う第4の工程、
前記第1ないし第4の工程を繰り返す第5の工程
【請求項10】
マイクロ波を照射する半導体発振器を備えるマイクロ波発振部と、
前記マイクロ波発振部の動作を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、ホッピングテーブルを記憶しており、前記ホッピングテーブルに基づいて、前記マイクロ波発振部により発振させるマイクロ波の発振周波数を経時的に変化させる掃引照射機能を備え、
前記ホッピングテーブルでは、連続して照射されるマイクロ波の周波数の間隔がランダムに設定されており、
前記掃引照射機能は、前記発振周波数の経時変化を10~300ミリ秒の範囲内の周期で行うとともに、前記ホッピングテーブルを用いて発振周波数を決定する、マイクロ波照射装置。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれかに記載のマイクロ波照射装置と、
食品が収容され、前記マイクロ波発振部により、収容された食品に対してマイクロ波が照射される収容室と、
前記収容室内の空気を冷却する冷却器と、を有し、
前記制御部は、前記冷却器により前記収容室を冷却しながら、前記マイクロ波発振部により前記マイクロ波を照射することで、食品の熟成を促進させる、マイクロ波熟成装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記収容室に前記食品を収容した状態のまま、前記マイクロ波発振部にマイクロ波を1時間以上、継続して、または、断続的に照射させる、請求項11に記載のマイクロ波熟成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波を対象物に照射する、マイクロ波照射装置およびマイクロ波熟成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ波を照射して食品を熟成させるマイクロ波熟成装置が知られている(たとえば特許文献1)。このようなマイクロ波熟成装置では、所定の周波数のマイクロ波を照射し、食品に含まれる水分を振動させることで食品を加熱するものであるが、照射するマイクロ波の周波数が、無線通信機器が使用する周波数と重複してしまうと、無線通信機器の通信に干渉してしまうという問題があった。特に、マイクロ波熟成装置は、電子レンジなどの加熱調理器具と比べて、マイクロ波を照射している時間が長いため、無線通信機器への干渉は大きな問題となる。
この点、特許文献1~5では、マイクロ波を照射して食品を熟成させる際に、特定の周波数に固定してマイクロ波を照射する固定照射に加えて、熟成室での電磁界の分布を均一化し、食品の均一加熱(均一熟成)を促進するために、マイクロ波の周波数を数Hz~数GHzごとに変化させながらマイクロ波を照射する掃引照射を行う技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-184533号公報
【特許文献2】国際公開第2019/093365号
【特許文献3】特開2020-181756号公報
【特許文献4】特開2020-184532号公報
【特許文献5】特開2020-184533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1において、マイクロ波の周波数を変化させる掃引照射を行う場合も、予め決められた特定の周波数だけに繰り返し変更する場合には、当該特定の周波数を含む周波数帯域(通信チャネル)において通信を行う無線通信機器との間で、高い頻度で通信信号の衝突が起きてしまい干渉が生じてしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、無線通信機器への通信干渉を低減することができる、マイクロ波照射装置およびマイクロ波熟成装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の観点に係るマイクロ波照射装置は、マイクロ波を照射する半導体発振器を備えるマイクロ波発振部と、前記マイクロ波発振部の動作を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、設定された上限周波数値から下限周波数値の範囲内で、前記マイクロ波発振部の発振周波数を開始周波数から高い周波数または低い周波数に、経時的に変化させながらマイクロ波を照射させる掃引照射機能を備え、前記掃引照射機能は、前記発振周波数の掃引周期を10~300ミリ秒の範囲内の周期とするとともに、前記発振周波数を経時的に変化させることにより前記上限周波数値または前記下限周波数値の範囲内を超えることになる場合に、前回とは異なる開始周波数を設定する機能を含む。
上記マイクロ波照射装置において、前記掃引照射機能は、前記発振周波数の時間当たりの変化幅を20MHz/秒以上として、前記発振周波数を経時的に変化させる構成とすることができる。
上記マイクロ波照射装置において、前記掃引照射機能は、前記発振周波数を周波数の増加方向に経時的に変化させることにより前記上限周波数値を超えることになる場合に、前記下限周波数値に、前記上限周波数値を超えた分の周波数を加えた周波数を前記開始周波数に設定し、または、前記発振周波数を周波数の減少方向に経時的に変化させることにより前記下限周波数値を超えることになる場合に、前記上限周波数値から、前記下限周波数値を超えた分の周波数を引いた周波数を前記開始周波数に設定する構成とすることができる。
上記マイクロ波照射装置において、前記掃引照射機能は、前記発振周波数を周波数の増加方向に経時的に変化させることにより前記上限周波数値の範囲内を超えることになる場合に、前記上限周波数値から、前記上限周波数値を超えた分の周波数を引いた周波数を前記開始周波数に設定し、前記発振周波数を前記開始周波数から周波数の減少方向に経時的に変化させる第1掃引を行い、前記第1掃引を行った後に、前記発振周波数を周波数の減少方向に経時的に変化させることにより前記下限周波数値の範囲内を超えることになる場合に、前記下限周波数値に、前記下限周波数値を超えた分の周波数を加えた周波数を前記開始周波数に設定し、前記発振周波数を前記開始周波数から周波数の増加方向に経時的に変化させる第2掃引を行う構成とすることができる。
上記マイクロ波照射装置において、前記上限周波数値から前記下限周波数値を減算した値が素数となる構成とすることができる。
上記マイクロ波照射装置において、前記上限周波数値および前記下限周波数値が、2400~2500MHzの範囲内で設定される構成とすることができる。
上記マイクロ波照射装置において、前記下限周波数値が、2420MHz以上に設定される構成とすることができる。
上記マイクロ波照射装置において、前記掃引照射機能は、前記発振周波数を3~20MHzの間隔で連続的に逓増変化させる構成とすることができる。
上記マイクロ波照射装置において、前記掃引照射機能が、下記(A)、(B)または(C)の各工程を含む構成とすることができる。(A)前記発振周波数を開始周波数から所定の変化量で高い周波数に更新することを繰り返す第1の工程、前記第1の工程を実行することにより、前記発振周波数が前記上限周波数値を超えることになる場合に、前記発振周波数を前回の開始周波数とは異なる開始周波数に更新し、当該更新された開始周波数から前記発振周波数を所定の変化量で高い周波数に更新することを繰り返し、前回の発振周波数と重複しない周波数で発振を行う第2の工程、前記第2の工程を実行することにより、前記発振周波数が前記上限周波数値を超えることになる場合に、前記発振周波数を前回および前々回の開始周波数とは異なる開始周波数に更新し、当該更新された開始周波数から前記発振周波数を所定の変化量で高い周波数に更新することを繰り返し、前回および前々回の発振周波数と重複しない周波数で発振を行う第3の工程、前記第1ないし第3の工程を繰り返す第4の工程(B)前記発振周波数を開始周波数から所定の変化量で低い周波数に更新することを繰り返す第1の工程、前記第1の工程を実行することにより、前記発振周波数が前記下限周波数値を超えることになる場合に、前記発振周波数を前回の開始周波数とは異なる開始周波数に更新し、当該更新された開始周波数から前記発振周波数を所定の変化量で低い周波数に更新することを繰り返し、前回の発振周波数と重複しない周波数で発振を行う第2の工程、前記第2の工程を実行することにより、前記発振周波数が前記下限周波数値を超えることになる場合に、前記発振周波数を前回および前々回の開始周波数とは異なる開始周波数に更新し、当該更新された開始周波数から前記発振周波数を所定の変化量で低い周波数に更新することを繰り返し、前回および前々回の発振周波数と重複しない周波数で発振を行う第3の工程、前記第1ないし第3の工程を繰り返す第4の工程(C)前記発振周波数を開始周波数から所定の変化量で高い周波数に更新することを繰り返す第1の工程、前記第1の工程を実行することにより、前記発振周波数が前記上限周波数値を超えることになる場合に、前記発振周波数を前回の開始周波数とは異なる開始周波数に更新し、当該更新された開始周波数から前記発振周波数を所定の変化量で低い周波数に更新することを繰り返し、前回の発振周波数と重複しない周波数で発振を行う第2の工程、前記第2の工程を実行することにより、前記発振周波数が前記下限周波数値を超えることになる場合に、前記発振周波数を前回および前々回の開始周波数とは異なる開始周波数に更新し、当該更新された開始周波数から前記発振周波数を所定の変化量で高い周波数に更新することを繰り返し、前回および前々回の発振周波数と重複しない周波数で発振を行う第3の工程、前記第3の工程を実行することにより、前記発振周波数が前記上限周波数値を超えることになる場合に、前記発振周波数を前回、前々回および3回前の開始周波数とは異なる開始周波数に更新し、当該更新された開始周波数から前記発振周波数を所定の変化量で低い周波数に更新することを繰り返し、前回、前々回および3回前の発振周波数と重複しない周波数で発振を行う第4の工程、前記第1ないし第4の工程を繰り返す第5の工程
本発明の第2の観点に係るマイクロ波照射装置は、マイクロ波を照射する半導体発振器を備えるマイクロ波発振部と、前記マイクロ波発振部の動作を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、ホッピングテーブルを記憶しており、前記ホッピングテーブルに基づいて、前記マイクロ波発振部により発振させるマイクロ波の発振周波数を経時的に変化させる掃引照射機能を備え、前記ホッピングテーブルでは、連続して照射されるマイクロ波の周波数の間隔がランダムに設定されており、前記掃引照射機能は、前記発振周波数の経時変化を10~300ミリ秒の範囲内の周期で行うとともに、前記ホッピングテーブルを用いて発振周波数を決定する。
本発明に係るマイクロ波熟成装置は、上記マイクロ波照射装置と、食品が収容され、前記マイクロ波発振部により、収容された食品に対してマイクロ波が照射される収容室と、前記収容室内の空気を冷却する冷却器と、を有し、前記制御部は、前記冷却器により前記収容室を冷却しながら、前記マイクロ波発振部により前記マイクロ波を照射することで、食品の熟成を促進させる。
上記マイクロ波熟成装置において、前記制御部は、前記収容室に前記食品を収容した状態のまま、前記マイクロ波発振部にマイクロ波を1時間以上、継続して、または、断続的に照射させる構成とすることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、無線通信機器の通信への干渉を低減することができる、マイクロ波照射装置およびマイクロ波熟成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係るマイクロ波熟成装置の構成図である。
図2】参考例に係る掃引照射を説明するための図である。
図3】本実施形態に係る掃引照射を説明するための図である。
図4】連続照射を説明するための図である。
図5】間欠照射を説明するための図である(その1)。
図6】間欠照射を説明するための図である(その2)。
図7】掃引照射を行っている場合の、pingによる無線通信の試験結果を示す図である。
図8】他の実施形態に係る掃引照射を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係るマイクロ波照射装置の実施形態を図に基づいて説明する。特に、本実施形態では、本発明に係るマイクロ波照射装置として、マイクロ波被照射物である食品に、マイクロ波を照射しながら、食品の表面を冷却することで、食品の熟成を促進するマイクロ波熟成装置を例示して説明する。
【0010】
図1は、本実施形態に係るマイクロ波熟成装置の構成図である。本実施形態に係るマイクロ波熟成装置1は、ドライエイジングおよびウェットエイジングが可能な装置であり、肉類(ハムなどの加工肉食品を含む)、魚介類、チーズなどの乳製品、コーヒー豆などの豆類、野菜類、果物類、麺類、パン類、ワインなどの酒類、発酵食品(味噌や醤油などの発酵調味料を含む)などを熟成させることができる。
【0011】
マイクロ波熟成装置1は、2.4~2.5GHz周辺の周波数のマイクロ波を照射することで、食品に含まれる水分子を振動させて食品を加熱するが、無線通信においても2.4GHz周辺の周波数帯域を利用する無線通信機器が提供されており、マイクロ波熟成装置により照射されたマイクロ波が、無線通信機器の通信に干渉してしまうという問題があった。特に、本実施形態に係るマイクロ波熟成装置1は、食品工場での使用に加えて、レストランや家庭でも使用することが可能であり、このような場所では、無線通信機器による無線通信が利用されているため、マイクロ波熟成装置により照射されたマイクロ波が、無線通信機器の通信に干渉してしまうと問題となってしまう。また、マイクロ波熟成装置1は、熟成のため、1時間以上の長時間、マイクロ波を照射する場合があり、無線通信機器が長時間使用できなくなる場合もある。本発明は、このような問題に鑑み、発振周波数を一定時間ごとに切り替えてマイクロ波を照射する掃引照射を行うことで、マイクロ波熟成装置によるマイクロ波の照射が、無線通信機器の通信に干渉してしまう頻度を低減させることを特徴とする。
【0012】
図1は、本実施形態に係るマイクロ波熟成装置1の構成図である。マイクロ波熟成装置1は、図1に示すように、冷却器10、冷媒流路20、マイクロ波発振部30、熟成室40、断熱部50、内部温度センサ60、制御部70、UVランプ80および表面温度センサ90を備える。
【0013】
冷却器10は、図1に示すように、冷媒流路20と接続しており、冷媒流路20を循環する冷媒を冷却する。なお、冷却器10としては、たとえば、コンプレッサーやコンデンサーなどを有し、外部との熱交換により冷媒を冷却することができる公知の装置を用いることができる。
【0014】
冷媒流路20は、冷却器10と接続しており、熟成室40の内部空間の空気を冷却するための冷媒が循環する。冷媒流路20は、熟成室40の壁部41と直に接しており、冷媒流路20を循環する冷媒が、熟成室40の壁部41と熱交換を行うことで、熟成室40の壁部41が冷却され、壁部41と接する熟成室40内の空気が冷却される。そして、熱交換を行い温まった冷媒は、再度、冷却器10へと戻り、冷却器10により冷却されることとなる。なお、冷媒は、特に限定されず、たとえばHFC(ハイドロフルオロカーボン)やHC(ハイドロカーボン)などを用いることができる。
【0015】
マイクロ波発振部30は、食品Mに照射するためのマイクロ波を発振する。本実施形態では、マイクロ波発振部30として、半導体素子を用いたソリッドステート方式の半導体発振器が用いられる。半導体発振器は、マグネトロンと比べて、高い周波数および出力安定度が得られるとともに、出力値および周波数を数μ秒単位で精密に制御することができる。たとえば、半導体発振器では、数μ秒単位で発振と停止とを繰り返したり、数μ秒単位で出力値を数百ミリワット(0.数W)ごとに変更したり、あるいは、数μ秒単位で周波数を数Hzごとに変更したりすることができる。マイクロ波発振部30で発振されたマイクロ波は、ケーブル31を介して、熟成室40の照射口42から熟成室40内に照射される。
【0016】
熟成室40には、熟成するための食品Mが載置される。マイクロ波発振部30により発振されたマイクロ波は、ケーブル31を介して、照射口42から熟成室40内に照射され、熟成室40内に載置された食品Mを均一加熱する。本実施形態においては、照射口42に、小型で利得が高いパッチアンテナ(平面アンテナ)が取り付けられており、これにより、マイクロ波発振部30により発振されたマイクロ波が熟成室40内に照射される。また、熟成室40の壁部41には、冷媒流路20が隙間なく直に接しており、冷媒流路20を流通する冷媒が熟成室40の壁部41を冷却し、壁部41が壁部41と接触する熟成室40内の空気を冷却することで、食品Mを表面から冷却することができる。これにより、食品Mの内部温度を食品Mの表面温度よりも高くすることが可能となる。
【0017】
また、熟成室40は、図1に示すように、熟成室40の内壁に設置されたファン43および扉(不図示)を備えている。ファン43は、たとえばドライエイジングに適した風量(たとえば0.5~10.0m/秒)で送風を行うことができるものを採用することができる。ファン43は、熟成室40内の空気を対流させることで、冷媒により冷却された冷気を食品Mに当てることができ、これにより、食品Mの表面を効率良く冷却することができる。また、扉には、マイクロ波が外部に漏洩することを防止するために、チョーク構造を有しており、外部から開閉可能となっている。なお、チョーク構造は公知の構造とすることができる。ユーザは、扉を開け閉めして、熟成を行う食品Mを熟成室40に出し入れすることができる。また、熟成室40の壁部41の内面(内壁)の全ての面には、マイクロ波を反射するための反射板が設置されている。熟成室40には、テフロン(登録商標)やポリプロピレンなどのマイクロ波透過性材により構成された任意の形状の棚を設置してもよい。またステンレスなどの金属材料を使用する場合は、間隔が20mm以上の格子状の棚や、直径20mm以上の開口部を持つパンチングメタル形状の棚を設置しても良い。
【0018】
断熱部50は、冷媒流路20を流通する冷媒が熟成室40に到達する前に外気と熱交換してしまうことを抑制するための部材である。断熱部50は、図1に示すように、冷媒流路20と隙間なく直に接しており、熟成室40の壁部41と伴に冷媒流路20を挟持する。断熱部50の素材としては、特に限定されず、たとえば発泡スチロールやウレタンなどを用いることができる。
【0019】
内部温度センサ60は、食品Mの内部温度を測定する。たとえば、内部温度センサ60の先端部は、一対の熱電対素線が金属保護管内に挿入されて構成することができ、当該先端部を食品Mの内部まで挿入することで、一対の熱電対素線の接点で生じる熱起電力に応じて食品Mの内部温度を測定することができる。また、本実施形態において、マイクロ波熟成装置1は、熟成室40の内壁に設置された食品Mの表面温度を測定する表面温度センサ90を有している。表面温度センサ90として、たとえば非接触により赤外線や可視光線の強度を測定する放射型温度センサを用いることができる。なお、表面温度センサ90の設置場所は、図示の場所に限定されず、熟成室40の内壁の任意の場所に設置可能である。
【0020】
内部温度センサ60により測定された食品Mの内部温度、および/または、表面温度センサ90により測定された食品Mの表面温度は、制御部70へと出力される。そして、後述するように、制御部70により、内部温度センサ60により測定された食品Mの内部温度と、表面温度センサ90により測定された食品Mの表面温度とに基づいて、温度制御が行われる。
【0021】
制御部70には、熟成させる食品Mの表面温度および内部温度がそれぞれ所定の温度となるように温度制御を行うプログラムが組み込まれている。具体的には、制御部70は、冷却器10、マイクロ波発振部30およびファン43の動作を制御することで、冷却器10による冷気の温度、マイクロ波発振部30によるマイクロ波の出力、ファン43の風量を制御して温度制御を行う。たとえば、制御部70は、マイクロ波発振部30のマイクロ波の出力を高くすることで食品Mの内部温度を高くすることができ、また、冷却器10による冷気の温度を低くし、あるいは、ファン43の風量を高くすることで食品Mの表面温度を低くすることができる。たとえば、制御部70は、マイクロ波発振部30,冷却器10およびファン43の動作を制御することで、食品Mの表面温度を室温よりも低くすることができ、また、食品Mの内部温度を食品Mの表面温度よりも高くすることができる。
【0022】
また、制御部70は、マイクロ波発振部30によるマイクロ波の発振を制御することができる。特に、本実施形態では、マイクロ波発振部30が半導体発振器であり、マイクロ波の発振を高い精度で制御することができる。たとえば、制御部70は、食品Mを熟成室40に収容した状態のまま、マイクロ波発振部30によるマイクロ波の照射を1時間以上継続して、あるいは、1時間以上断続的に照射させる構成とすることもできる。さらに、本実施形態において、制御部70は、マイクロ波発振部30によるマイクロ波の発振を制御することで、発振周波数を変化させながらマイクロ波を照射する掃引照射機能を有する。
【0023】
掃引照射機能とは、周波数を経時的に変化させながらマイクロ波発振部30にマイクロ波を発振させる照射方法である。掃引照射を行う場合、制御部70は、たとえばマイクロ波の発振周波数を2.40~2.50GHzの間で連続的に変化させながら、マイクロ波を照射することができる。また、発振周波数の範囲は2.40~2.50GHzに限定されず、たとえば300MHz~300GHzの範囲で周波数を変化させる構成とすることもできる。さらに、発振周波数を変化する幅も、特に限定されず、たとえば、数Hz~数GHzごとに発振周波数を変化させる構成とすることができる。掃引照射によりマイクロ波の発振周波数を変化させながらマイクロ波を照射することで、熟成室40での電磁界の分布が均一化されるため、食品Mにも均一な分布でマイクロ波が照射され、食品Mの均一加熱(均一熟成)を促進することができる。
【0024】
ここで、無線LANの規格であるIEEE802.11b(2.4GHz)では、2401MHzから2495MHzまでの95MHzの周波数帯域において、14のチャネルが設定されている。これによれば、各チャネルの帯域は22MHzであり、5MHzずつずらしながら相互に重複して設定される。具体的には、1チャネルは、2412MHzを中心とする2401~2423MHzまでの22MHzの帯域であり、2チャネルは、2417MHzを中心とする2406~2428MHzまでの22MHzの帯域であり、3チャネルは、2422MHzを中心とする2411~2433MHzまでの22MHzの帯域であり、4チャネルは、2427MHzを中心とする2416~2438MHzまでの22MHzの帯域であり、以降は13チャンネルまで同様である。なお、14チャネルは2484MHzを中心とする2473~2495MHzまでの22MHzの帯域である。このように、2401MHzから2495MHzまでの周波数帯域に、14のチャネルが設定される。無線通信機器は、これらのチャネルのうちいずれかのチャネルを使用して通信を行う。ここで、無線通信機器がたとえば1チャネルを使用している場合に、マイクロ波熟成装置1が1チャネルに対応する2401~2423MHzの周波数帯域における発振周波数でマイクロ波を照射する場合、マイクロ波熟成装置1が無線通信機器の通信に干渉してしまい、通信を妨害してしまう。
【0025】
そこで、本実施形態において、制御部70は、以下の方法で、掃引照射におけるマイクロ波の発振周波数を変化させる。以下に、図2および図3に基づいて、本実施形態に係る掃引照射における周波数の変化方法を説明する。なお、図2は、参考例に係る掃引照射方法を説明するための図であり、図3は、本実施形態に係る掃引照射方法を説明するための図である。
【0026】
参考例に係るマイクロ波熟成装置では、図2に示すように、2401MHzから2495MHzまでの95MHzの周波数帯域を、1秒周期で1MHzずつ高い周波数に連続変化させながらマイクロ波を掃引照射した。なお、以下においては、掃引照射において周波数を1回で変化させる量を周波数の変化量といい、掃引照射において周波数を変化させる周期を掃引周期という。さらに、参考例に係るマイクロ波熟成装置では、掃引速度1MHz/秒で周波数を高い周波数に連続変化させ、2495MHzを超える場合には、2401MHzに戻し、また、2401MHzから1秒周期で1MHzずつ高い周波数に変化させる方法で掃引照射を行った。このような掃引照射では、22MHzあるチャネル1つを通過するまでに22秒かかってしまい、無線通信装置の通信に干渉してしまうという問題が生じた。
【0027】
これに対して、本実施形態では、2401MHzから2495MHzまでの95MHzの周波数帯域全体を用いるのではなく、2421MHzを、掃引照射を行う周波数帯域のうち最も低い周波数の値である下限周波数値(掃引開始値)として設定し、2480MHzを、掃引照射を行う周波数帯域のうち最も高い発振周波数の値である上限周波数値として設定する。このように、2421MHzを下限周波数値として設定することで、無線通信装置において使用頻度が比較的多い1チャンネルの周波数帯域の大部分を発信周波数から除外し、無線通信装置の通信との干渉を低減することができる。また、本実施形態では、下限周波数値から上限周波数値の範囲内で発振周波数を3MHzより大きい所定値ずつ逓増させながら掃引照射を行う。具体的には、図3に示すように、制御部70は、予め設定した2421MHzから2480MHzまでの59MHzの周波数帯域を、周波数の変化量を9MHzおよび掃引周期を250ミリ秒とした掃引速度36MHz/秒(9MHz/250ミリ秒)で、2421MHzから変化量9MHzで高い周波数に連続変化させる掃引照射を行う。
【0028】
また、本実施形態では、上限周波数値から下限周波数値までの周波数帯域で、マイクロ波発振部30の発振周波数を高い周波数に経時的に変化させながらマイクロ波を照射し、変化後のマイクロ波の周波数が上限周波数値を超えることになる場合には、下限周波数値に上限周波数値を超えた分を加えた周波数を、次周の開始周波数として設定し、設定した開始周波数から、次周の掃引照射を開始する。なお、図3では、各周における開始周波数をグレーの丸で示している。
【0029】
具体的には、図3に示すように、制御部70は、1周目において、下限周波数値である2421MHzを開始周波数として設定する。そして、制御部70は、掃引周期250ミリ秒、変化量9MHzで発振周波数を変化させる。たとえば図3に示す例において、制御部70は、1周目において、250ミリ秒周期で、2421MHz、2430MHz、2439MHz、2448MHz、2457MHz、2466MHz、2475MHzに発振周波数を経時的に変化させる。ここで、1周目において、発振周波数を2475MHzに変化させた後に、2475MHzに9MHzを追加した2484MHzに変更させてしまうと、上限周波数値である2480MHzを4MHz超えてしまうこととなる。そのため、この場合、制御部70は、2周目における開始周波数を設定し、設定した開始周波数から2周目の掃引照射を開始する。具体的には、制御部70は、上限周波数値である2480MHzを超える分の4MHzを、下限周波数値である2421MHzに加えた2425MHzを、2周目の開始周波数に設定する。そして、制御部70は、2周目において、開始周波数である2425MHzから開始して、掃引周期250ミリ秒、変化量9MHzで発振周波数を変化させ、上限周波数値である2480MHzを超えてしまう場合には、同様に、3周目の掃引照射の開始周波数を設定し、3周目の掃引照射を行う。
【0030】
このように、本実施形態において、制御部70は、発振周波数を経時的に変化させることにより上限周波数値を超えることになる場合に、開始周波数を前回とは異なる開始周波数に設定する。たとえば、図3に示す例では、1周目の開始周波数は2421MHzに設定され、2周目の開始周波数は2425MHzに設定され、3周目の開始周波数は2429MHzに設定され、4周目の開始周波数は2424MHzに設定され、5周目の開始周波数は2428MHzに設定され、6周目の開始周波数は2423MHzに設定され、7周目の開始周波数は2427MHzに設定され、8周目の開始周波数は2422MHzに設定され、9周目の開始周波数は2426MHzに設定される。このように、本実施形態では、開始周波数が続けて同じ数値に設定されないように、掃引照射が行われる。なお、図3に示す例では、開始周波数が同じ数値となるのは、10周目であり、10周目以降においては、1~9周目と同様に、発振周波数の掃引を繰り返すこととなる。
【0031】
加えて、本実施形態において、制御部70は、マイクロ波を変化させる周波数帯域の値を素数として設定する。言い換えると、制御部70は、上限周波数値から下限周波数値を減算した値が素数となるように、周波数帯域を設定する。たとえば、制御部70は、上限周波数値を2421MHzとし、下限周波数値を2480MHzとした、59MHzの周波数帯域において、発振周波数を変化させる構成とする。この場合、周波数帯域は59MHzの素数となる。なお、周波数帯域の幅は素数であれば59MHzに限定されず、たとえば11,13,17,19,23,29,31,37,41,43,47,53,61,67,71,79,83,89,97MHzなどの周波数帯域とすることができる。
【0032】
また、制御部70は、発振周波数を変化させる場合に、発振周波数を所定値だけ逓増させる。ここで、上述したように、無線通信機器の規格では1チャンネルは22MHzであり、同一のチャネル内に長時間留まってしまうと、そのチャンネルでの通信を妨害してしまうこととなる。そのため、周波数を変化させる際の変化量は、3~20MHzが好ましく、5~20MHzがより好ましい。また、制御部70は、500ミリ秒以下の周期で、好ましくは10~300ミリ秒の周期で、マイクロ波の発振周波数を変化させる。さらに、制御部70は、発振周波数が同一のチャネル内に長時間留まってしまわないように、発振周波数の掃引速度を20MHz/秒以上、より好ましくは30MHz/秒以上として掃引照射を行う。掃引速度を30MHz/秒以上とした場合、1チャンネルにおけるマイクロ波の発振周波数の滞留時間を1秒未満(30MHz/秒である場合は0.73秒)とすることができる。なお、本実施形態では、発振周波数の変化量を9MHzとし、発振周波数の掃引周期を250ミリ秒で行うことで、掃引速度36MHz/秒(9MHz/250ミリ秒)で掃引照射が行われる。
【0033】
また、本実施形態において、制御部70は、上述した掃引照射の他に、固定照射、連続照射または間欠照射を行う構成としてもよい。固定照射は、マイクロ波発振部30を一定の出力値および一定の周波数に固定して発振させる照射方法である。
【0034】
また、連続照射は、出力値を経時的に変化させながらマイクロ波発振部30にマイクロ波を発振させる照射方法である。ここで、図4は、マイクロ波発振部30の出力値を経時的に変化させる連続照射を説明するための図である。連続照射を行う場合、制御部70は、たとえば図2に示すように、マイクロ波発振部30の出力値を、2ミリ秒ごとに、0.2W単位で変化させながら、マイクロ波を発振させることで、連続照射を行うことができる。また、出力値の変更幅は特に限定されず、数ミリW~数Wごとに出力値を変更することができる。さらに、出力値を変更する時間間隔も特に限定されず、数ミリ秒~数時間ごとに出力値を変更することができる。なお、制御部70は、マイクロ波発振部30の出力値の昇降を、内部温度センサ60の測定結果に基づいて決定することができる。また、本実施形態において、連続照射におけるマイクロ波発振部30の最大出力値は50Wとしているが、これに限定されず、100W以下の任意の出力値とすることができる。
【0035】
間欠照射は、短い周期(たとえば数ミリ秒周期)でマイクロ波発振部30に発振と停止とを繰り返させる照射方法である。ここで、図5および図6は、間欠照射を説明するための図である。なお、間欠照射において、最大出力値は100Wまで任意に設定することができ、また、周期も数ミリ秒から数時間まで任意に設定することができる。図5に示す例では、周期を2ミリ秒とし、1周期における発振時間を約7.8マイクロ秒(周期の1/256)単位で制御している。この場合、1周期における発振時間は、可変とすることができ、約7.8マイクロ秒×N(Nは整数)の長さとなる。また、図6に示す例では、周期を1秒とし、1周期における発振時間を約1ミリ秒単位で制御している。この場合、1周期における発振時間は、約1ミリ秒×N(Nは整数)の長さとなる。なお、制御部70は、デューティ比を設定することで、1周期における発振時間を設定することもできる。
【0036】
このように、制御部70は、掃引照射に加えて、固定照射、連続照射または間欠照射を行う構成とすることができるため、たとえば、掃引照射と、固定照射、連続照射または間欠照射とを経時的に切り替える構成とすることができる。たとえば、制御部70は、掃引照射と連続照射とを組み合わせて、マイクロ波の周波数を2421MHz~2480MHzの範囲で掃引させるとともに、牛モモ肉の内部温度が10℃となるように2ミリ秒ごとに0.2Wごと出力値を変更させて、マイクロ波を照射する構成とすることもできる。また、制御部70は、掃引照射と間欠照射とを組み合わせて、マイクロ波の周波数を2421MHz~2480MHzの範囲で掃引させるとともに、1周期を2ミリ秒とし、1周期における発振時間を約7.8マイクロ秒(周期の1/256)単位で変えて、マイクロ波を照射する構成とすることもできる。さらに、制御部70は、連続照射または間欠照射を行う場合に、連続照射と間欠照射とを組み合わせて、2ミリ秒ごとに0.2Wごと出力値を変更するとともに、1周期を2ミリ秒とし、1周期における発振時間を約7.8マイクロ秒(周期の1/256)単位で変えて、マイクロ波を照射する構成とすることもできる。加えて、制御部70は、連続照射と間欠照射とを組み合わせて、数~数十ミリ秒ごとに0.2Wごと出力値を変更するとともに、1周期を数~数十ミリ秒とし、さらに1周期における発振時間を約1ミリ秒単位で制御する構成とし、デューティ比を設定することで、1周期におけるマイクロ波発振部30の発振時間を設定してマイクロ波を照射する構成とすることもできる。
【0037】
また、制御部70は、マイクロ波の照射のON-OFFを一定時間(たとえば数時間)ごとに切り替えるように(間欠照射の場合は、間欠照射を行う期間と間欠照射を行わず発振を長期間停止する期間とを一定時間ごとに切り替えるように)、マイクロ波発振部30を制御する構成とすることもできる。たとえば、制御部70は、マイクロ波を3時間照射した後、マイクロ波の照射を3時間停止し、同様に、マイクロ波の照射と停止とを3時間ごとに、たとえば熟成期間である7日間ずっと繰り返すように、マイクロ波発振部30を制御することができる。
【0038】
このようにマイクロ波を照射して食品Mを熟成する場合、マイクロ波は誘電加熱により食品内部まで加熱するため、食品Mの表面に加えて食品Mの内部まで加熱することができる。通常、食品Mの内部を温めることで食品Mの熟成を促進することができるが、食品Mの表面を温めることは食品Mの表面に付着した菌の増殖を促すこととなる。これに対して、本実施形態に係るマイクロ波熟成装置1では、冷却機構、すなわち、冷却器10およびファン43の動作により食品Mの表面を冷却することで、食品Mの表面に付着した菌の増殖を抑制することができる。
【0039】
特に、本実施形態に係るマイクロ波熟成装置1では、制御部70の制御により、加熱機構(マイクロ波発振部30)による食品Mの加熱と、冷却機構(冷却器10およびファン43)による食品Mの表面の冷却とを同時に行うことで、食品Mの表面温度が内部温度よりも低くなるように、加熱機構および冷却機構の動作が制御されている。具体的には、制御部70は、食品Mの表面温度が内部温度よりも低くなるように、冷却器10による冷気の温度、マイクロ波発振部30の出力、ファン43による風量を制御する。なお、食品Mを熟成している間中、マイクロ波を連続して照射する必要はなく、少なくとも1時間以上(好ましくは3時間以上、より好ましくは5時間以上)、マイクロ波の照射が行なわれる構成とすることができる。
【0040】
UVランプ80は、紫外線を発生させる装置である。本実施形態では、UVランプを熟成室40内に直接設置することで、食品Mの熟成中に、UVランプ80で発生させた紫外線を、熟成室40内に置かれた食品Mの表面に照射することができる。このように、熟成中に、紫外線を食品Mの表面に直接照射することで、食品Mの表面に存在する菌の増殖をより抑制することができる。なお、制御部70は、UVランプ80の動作も制御することができる。たとえば、制御部70は、熟成を開始したタイミングまたは熟成室40の扉を(開けた後に)閉じたタイミングから、一定時間(たとえば数時間)、UVランプ80に紫外線を照射させるように制御を行うことができる。
【実施例0041】
(実施例1)
次に、本実施形態に係るマイクロ波熟成装置1の実施例1について説明する。
同一室内に、Wi-Fi(登録商標)ルーターと、Wi-Fi通信が可能なノートパソコンと、マイクロ波熟成装置1を設置し、通信障害の発生の有無を検証した。ノートパソコンは、DHCP設定として、Wi-Fiルーターが提供するSSID(2.4GHz帯)に接続した。ノートパソコンおよびWi-Fiルーターで用いたWi-Fi(登録商標)の接続種類は、「IEEE802.11b/g/n」の自動設定である。
【0042】
実施例1では、マイクロ波熟成装置1による掃引照射を以下のように行った。具体的には、2421MHzから2480MHzまでの59MHzの周波数帯域を、2421MHzから掃引周期250ミリ秒、変化量9MHzで高い周波数に連続変化させ(掃引速度9MHz/250ミリ秒)、上限周波数値である2480MHzを超える場合には、下限周波数値である2421MHzに上限周波数値を超えた分の値を足した周波数を開始周波数として設定し(たとえば2周目は2425MHz)、再度、掃引周期250ミリ秒、変化量9MHzで高い周波数に変化させる方法で、掃引照射を行った。そして、当該掃引照射中に、無線通信装置で1KBのpingコマンドを10回発信し、無線通信が成功するか否かを観察した。この結果、実施例1では、10回すべてのpingコマンドの無線通信が成功した。なお、pingはICMP(Internet Control Message Protocol)のエコー要求(echo request)パケットを宛先ホストに送信し、宛先ホストからエコー応答(echo reply)が返って来ることで通信の到達性を確認することができるコマンドである。
【0043】
(比較例1)
比較例1では、Wi-Fi(登録商標)ルーター、ノートパソコンおよびマイクロ波熟成装置1は、実施例1と同じものを用い、2421MHzから2480MHzまでの周波数帯域において、2421MHzから掃引周期1秒、変化量1MHzで高い周波数に変化させ(掃引速度1MHz/秒)、2480MHzを超える場合には、2421MHzに戻し、再度、2421MHzから掃引周期1秒、変化量1MHzで高い周波数に変化させる方法で、掃引照射を行った。そして、当該掃引照射中に、無線通信装置で1KBのpingコマンドを10回発信し、無線通信が成功するか否かを観察した。この結果、比較例1では、10回すべてのpingコマンドの無線通信が失敗した。
【0044】
また、図7に、実施例1および比較例1の試験結果と、それ以外の周波数の変化量および周波数の掃引周期でのpingでの無線通信の試験結果を示す。図7に示す例では、周波数の変化量をそれぞれ1,2,3,5,7,9,12,20MHzとし、掃引周期をそれぞれ10,50,100,200,250,300,1000ミリ秒とすること以外は、実施例1および比較例1と同様に掃引照射を行った。そして、実施例1および比較例1と同様に、掃引照射中に、無線通信装置で1KBのpingコマンドを10回発信し、無線通信が成功するか否かを観察した。なお、図7に示す例では、「○」は10回pingコマンドを実行し10回とも通信に成功した場合を示し、「△」は10回pingコマンドを実行し10回のうち何回か通信に成功した場合を示し、「×」は10回pingコマンドを実行し10回とも通信に失敗した場合を示す。また、「-」は試験を行っていない組み合わせを示す。
【0045】
図7に示すように、周波数の掃引周期を1000ミリ秒とした場合、無線通信装置は無線通信に失敗する傾向が高くなり、マイクロ波熟成装置1のマイクロ波の照射が、無線通信装置の無線通信に干渉してしまうことがわかった。一方、周波数の掃引周期を10~300ミリ秒の範囲内とした場合、無線通信への干渉は改善される傾向にあることがわかった。また、周波数の変化量を1または2MHzとした場合は、周波数の掃引周期を100ミリ秒とした場合でもpingコマンドの通信に失敗しており、周波数の変化量は3~20MHz以上とすることが好ましいことがわかった。
【0046】
以上のように、実施例1,比較例2、および図7の例から、周波数の掃引周期を10~300ミリ秒の範囲内とし、開始周波数を前回と異なる周波数として掃引照射を行うことで、無線通信の干渉を低減することができることがわかった。また、掃引照射における1ステップあたりの周波数の変化量を3~20MHz以上とすることで、無線通信への干渉をより低減することができることがわかった。特に、図7に示す波線よりも上側の条件、具体的には掃引速度を20MHz/秒以上とすることで、無線通信の干渉を大幅に低減することができ、無線通信装置の無線通信を良好に行うことができる。
【0047】
(実施例2)
実施例2では、2421MHzから2480MHzまでの59MHzの周波数帯域を、2421MHzから掃引周期250ミリ秒、変化量10MHzで高い周波数に変化させて(掃引速度10MHz/250ミリ秒)、上限周波数値である2480MHzを超える場合には、下限周波数値である2421MHzに、上限周波数値を超えた分の周波数を足した周波数を開始周波数として設定し(たとえば2周目は2426MHz)、再度、掃引周期250ミリ秒、変化量10MHzで高い周波数に変化させる方法で掃引照射を行った。そして、当該掃引照射中に、無線通信装置で2MBのファイルをTCP/IPプロトコルで送信し、無線通信できるか否かを観察した。この結果、実施例2では2MBのファイルを問題なく通信することができ、Wi-Fi通信への影響を大幅に低減することが確認できた。なお、実施例2のハードウェア環境は、実施例1と同じである。
【0048】
(実施例3)
また、実施例3では、2421MHzから2480MHzまでの59MHzの周波数帯域を、2421MHzから掃引周期4ミリ秒、変化量1MHzで高い周波数に変化させて(掃引速度1MHz/4ミリ秒で掃引させて)、上限周波数値である2480MHzを超える場合には、下限周波数値である2421MHzに戻り、再度、掃引周期4ミリ秒、変化量1MHzで高い周波数に変化させる方法で掃引照射を行った。そして、当該掃引照射中に、無線通信装置で1MBおよび2MBのファイルをTCP/IP通信でそれぞれ送信し、無線通信できるか否かを観察した。この結果、実施例3では、掃引周期を、実施例2の掃引周期250ミリ秒よりも短い4ミリ秒まで短縮しても、1MBおよび2MBのファイルを通信することができ、WiFi通信への影響を低減することができることが確認できた。なお、実施例3のハードウェア環境は、実施例1と同じである。
【0049】
以上のように、本実施形態に係るマイクロ波熟成装置1は、マイクロ波を照射するマイクロ波発振部30と、マイクロ波発振部30の動作を制御する制御部70と、を備え、制御部70は、設定された上限周波数値から下限周波数値の範囲内で、マイクロ波発振部30の発振周波数を開始周波数から高い周波数に経時的に変化させながらマイクロ波を照射させる掃引照射機能を備え、掃引照射機能は、発振周波数の経時変化を10~300ミリ秒の範囲内の周期で行うとともに、発振周波数を経時的に変化させることにより上限周波数値を超えることになる場合に、前回とは異なる開始周波数を設定する機能を含む。これにより、本実施形態に係るマイクロ波熟成装置1では、掃引照射において、発振周波数を、同一の通信チャネルとなる周波数帯域に長時間滞在させることを防止することができ、また、周回ごとに、同じ発振周波数でマイクロ波が繰り返し照射されてしまうことを防止することができるため、無線通信装置の通信の干渉を低減することができる。さらに、本実施形態に係るマイクロ波熟成装置1では、周回ごとに同じ発振周波数でマイクロ波が繰り返し照射されないため、マイクロ波を照射している周波数が偏らず、食材の均一加熱にも寄与することができる。
【0050】
以上、本発明の好ましい実施形態例について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態の記載に限定されるものではない。上記実施形態例には様々な変更・改良を加えることが可能であり、そのような変更または改良を加えた形態のものも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0051】
たとえば、上述した実施形態では、掃引照射機能により、開始周波数からマイクロ波発振部30の発振周波数を高い周波数に経時的に変化させながらマイクロ波を照射する構成を例示したが、この構成に限定されず、掃引照射機能により、開始周波数からマイクロ波発振部30の発振周波数を低い周波数に経時的に変化させながらマイクロ波を照射する構成とすることができる。この場合、変化後のマイクロ波の周波数が下限周波数値を超えることになる場合には、上限周波数値付近の開始周波数に戻し、再度、マイクロ波発振部30の発振周波数を下限周波数側に経時的に変化させる構成とすることができる。
【0052】
また、上述した実施形態では、図8に示すように、制御部70は、開始周波数から変化量9MHzで発振周波数を経時的に高くし、発振周波数が上限周波数値を超えることになる場合には、上限周波数値を超えた分の周波数を、下限周波数値に加えた周波数を、2周目以降の開始周波数に設定する構成を例示したが、この掃引方法に限定されず、図8に示すように、掃引照射を行う構成とすることができる。
すなわち、図8に示すように、制御部70は、1周目は、下限周波数値である2421MHzを開始周波数として設定する。そして、制御部70は、掃引周期250ミリ秒、変化量9MHzで発振周波数を周波数が増加する方向に変化させる。そして、1周目において、発振周波数を2475MHzに変化させた後に、2475MHzに9MHzを追加した2484MHzに変更させてしまうと、上限周波数値である2480MHzを4MHz超えてしまうこととなる。そのため、この場合、制御部70は、2周目における開始周波数を設定し、設定した開始周波数から2周目の掃引照射を開始する。
【0053】
ここで、図8に示す例において、制御部70は、上限周波数値である2480MHzから、上限周波数値である2480MHzを超えた分の4MHzを引いた、2476MHzを、2周目の開始周波数に設定する。そして、制御部70は、2周目において、開始周波数である2476MHzから開始して、掃引周期250ミリ秒、変化量9MHzで発振周波数を周波数が減少する方向に変化させる。たとえば図8に示す例において、制御部70は、2周目において、掃引周期250ミリ秒で、2476MHz、2467MHz、2458MHz、2449MHz、2440MHz、2431MHz、2422MHzに発振周波数を経時的に変化させる。そして、制御部70は、下限周波数値である2421MHzを超えてしまう場合には、下限周波数値2421MHzに、下限周波数値を超えた分の周波数である8MHzを加えた周波数2429MHzを、3周目の開始周波数に設定し、3周目として、発振周波数を開始周波数2429MHzから周波数の増加方向に経時的に変化させる。このように、図8に示す例では、制御部70は、9周目まで異なる開始周波数で掃引照射を行うことができる。また、制御部70は、10周目においては、1周目に戻る構成としてもよいし、2480MHz(9周目の最後の周波数2480MHz+9周目において上限周波数値を超えた分の周波数0MHz)を10周目の開始周波数とし、9周目から1周目までの周波数を今までと反対方向に掃引する構成とすることもできる。
【0054】
また、図8に示す例では、発振周波数を周波数の増加方向に経時的に変化させることにより上限周波数値の範囲内を超えることになる場合に、上限周波数値から、上限周波数値を超えた分の周波数を引いた周波数を開始周波数に設定し、発振周波数を開始周波数から周波数の減少方向に経時的に変化させる第1掃引(図8に示す2,4,6,8週目の掃引)を行い、第1掃引を行った後に、発振周波数を周波数の減少方向に経時的に変化させることにより下限周波数値の範囲内を超えることになる場合に、下限周波数値に、下限周波数値を超えた分の周波数を加えた周波数を開始周波数に設定し、発振周波数を開始周波数から周波数の増加方向に経時的に変化させる第2掃引(図8に示す1,3,5,7週目の掃引)を行う構成を例示したが、この構成に限定されず、発振周波数を周波数の増加方向に経時的に変化させることにより上限周波数値の範囲内を超えることになる場合に、単に、前回または所定の周回前までに更新した周波数と重複しない周波数を開始周波数として設定し、発振周波数を開始周波数から周波数の減少方向に経時的に変化させる第1掃引を行い、第1掃引を行った後に、下限周波数値の範囲内を超えることになる場合に、前回または所定の周回前までに更新した周波数と重複しない周波数を開始周波数として設定し、発振周波数を開始周波数から周波数の増加方向に経時的に変化させる第2掃引を行う構成とすることができる。たとえば、この場合、2周目においては、1周目で発振周波数として更新していない周波数であればどの周波数でも開始周波数として設定することができるため、たとえば図8に示す例で1周目を行った場合、2467MHzや2477MHzなどを2周目の開始周波数として設定することができる。また、3周目においても、1周目および2周目で照射していない周波数であればどの周波数でも開始周波数として設定することができる。
【0055】
また、上述した実施形態では、発振周波数を経時的に変化させることにより上限周波数値の範囲内を超えることになる場合に、上限周波数値を超えた分の周波数を、下限周波数値に加えることで、前回とは異なる開始周波数を設定する構成を例示したが、この構成に限定されず、制御部70がホッピングテーブルを記憶しており、当該ホッピングテーブルに基づいて、マイクロ波発振部により発振させるマイクロ波の周波数を経時的に変化させる構成とすることもできる。ホッピングテーブルは、疑似乱数により周波数をランダムに設定した周波数テーブルであり、ホッピングテーブルを用いることで、一定間隔ではなく、不特定の間隔で周波数掃引ができるため、発振周波数により大きなバラツキを持たせることができ、無線通信装置の無線通信への干渉を低減させ、また、均一な加熱を行うこともできる。なお、制御部70は、ホッピングテーブルに登録されている周波数を降順、昇順またはランダムに選んで発振する構成とすることができる。また、ホッピングテーブルにおいては、登録する周波数の数を30,60などと適宜設定することができ、また、同じホッピングテーブルを使いまわす構成としてもよいし、ホッピングテーブルに登録された全ての周波数を選択した後は、異なるホッピングテーブルを新規に作成する構成としてもよい。
【0056】
さらに、上述した実施形態では、発振周波数を変化させた場合の周波数が上限周波数値を超える場合には、下限周波数値に上限周波数値を超える分の周波数を加えた周波数を次周の開始周波数に設定する構成を例示したが、この構成に限定されず、発振周波数を変化させた場合の周波数が上限周波数値を超える場合には、下限周波数値に周回数(あるいは周回数-1)を加えた周波数を次周の開始周波数として設定する構成とすることができる。この場合、1周目においては、下限周波数値の2421MHzが開始周波数となり、2週目においては、下限周波数値2421MHzに1(2周目-1)を加えた2422MHzが開始周波数として設定されることとなる。また、10周目以降については、1の位の数を周回数として用いることができる。
【符号の説明】
【0057】
1…マイクロ波熟成装置
10…冷却器
20…冷媒流路
30…マイクロ波発振部
31…ケーブル
40…熟成室
41…壁部
42…照射口
43…ファン
50…断熱部
60…内部温度センサ
70…制御部
80…UVランプ
90…表面温度センサ
図1
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図8