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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033868
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】コイル部品、回路基板および電子機器
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/32 20060101AFI20240306BHJP
   H01F 27/06 20060101ALI20240306BHJP
   H01F 27/29 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
H01F27/32 140
H01F27/06 103
H01F27/29 F
H01F27/29 123
H01F27/32 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137751
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 重幸
(72)【発明者】
【氏名】荒井 泰弘
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 利昌
【テーマコード(参考)】
5E044
5E070
【Fターム(参考)】
5E044CA03
5E044CB10
5E070AA01
5E070AB08
5E070BB03
5E070DA13
5E070DA15
5E070DB02
5E070EA01
5E070EB04
(57)【要約】
【課題】絶縁性確保と帯電抑制との両立を図る。
【解決手段】一態様に係るコイル部品は、金属磁性材料が用いられた磁性体部分を有する基体と、上記基体の内部に設けられた導体と、上記基体における上記磁性体部分の表面に設けられた、炭素粒子を含んだ樹脂材料の絶縁層と、上記基体の表面に沿って広がり、上記導体と接続された外部電極と、を備える。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属磁性材料が用いられた磁性体部分を有する基体と、
前記基体の内部に設けられた導体と、
前記基体における前記磁性体部分の表面に設けられた、炭素粒子を含んだ樹脂の絶縁層と、
前記基体の表面に沿って広がり、前記導体と接続された外部電極と、
を備えることを特徴とするコイル部品。
【請求項2】
前記絶縁層は、前記炭素粒子を0.01vol%より多く含むことを特徴とする請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記絶縁層は、絶縁性の無機フィラーを含むことを特徴とする請求項1に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記絶縁層は、前記無機フィラーとして、長軸と短軸とを有した第1無機フィラーを含むことを特徴とする請求項3に記載のコイル部品。
【請求項5】
前記絶縁層は、前記無機フィラーとして、球形の第2無機フィラーを含むことを特徴とする請求項3に記載のコイル部品。
【請求項6】
前記樹脂は、Tgが150℃より高いことを特徴とする請求項1に記載のコイル部品。
【請求項7】
前記基体は、互いに逆向きの第1面と第2面を有し、
前記絶縁層は、前記第1面に設けられ、
前記外部電極は、前記第2面に設けられることを特徴とする請求項1に記載のコイル部品。
【請求項8】
前記絶縁層は、前記第1面の全体を覆うことを特徴とする請求項7に記載のコイル部品。
【請求項9】
前記絶縁層は、前記第1面から、当該第1面に隣り合う面に至ることを特徴とする請求項7に記載のコイル部品。
【請求項10】
前記外部電極は、前記第2面から、当該第2面に隣り合う面に至ることを特徴とする請求項7に記載のコイル部品。
【請求項11】
前記絶縁層は、厚みが10μm未満であることを特徴とする請求項1に記載のコイル部品。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載の電子部品と、
前記電子部品がはんだ層を介して実装された基板と、
を備えることを特徴とする回路基板。
【請求項13】
請求項12に記載の回路基板を備えることを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル部品、回路基板および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
高性能な電子機器の代表的なものとして携帯電話があり、携帯電話に用いられる電子部品には、高い性能だけでなく小型化も求められる。また、電子部品の一例であるコイル部品は様々な種類のものが存在し、磁性材料が用いられるもの、非磁性材料が用いられるもの、両方が組み合わせられるものがある。
【0003】
更に、磁性材料が用いられるものの中でも、磁性材料が焼結されるもの、磁性材料と樹脂が混ぜられるもの、などが存在している。特に、金属磁性材料と樹脂の混合した材料で作成されるコイル部品は急激に小型化が進み、コイル部品が用いられる機器や用途も拡がっている。
【0004】
コイル部品は、高性能化や小型化に対応すると共に、基本的に守らなければならないことがあり、このひとつに絶縁性の確保がある。例えば、金属磁性材料が用いられる場合は、金属磁性材料と絶縁物が組み合わされて磁性体が作られることで絶縁性を有した磁性体が得られる。また、絶縁性確保のためには、絶縁の大きさより確実性が求められる。
【0005】
例えば特許文献1には、圧粉コアの表面を絶縁コートで覆う技術が開示されている。これは、圧粉コアが高温環境において、コアロスに変化を生じることがあるためである。つまり、コアロスの変化は、高温環境に曝されることで、絶縁低下につながってしまうためである。このため絶縁コートは、圧粉コアの絶縁の安定化を図る場合に用いられる。
【0006】
また、圧粉コアタイプとは異なるタイプのコイル部品として、金属磁性材料と樹脂の複合磁性材料でコイルを包み込むメタルコンポジットタイプのものがある。このタイプのコイル部品においても絶縁の確保は必要なことであり、高い圧力が掛けられて金属磁性材料の充填率が高められる場合、絶縁の確保のために、特許文献1に記載されているような絶縁コートが設けられる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2016/117201号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
金属磁性材料が用いられるコイル部品は、耐圧性が低い部品でもあり、高い電圧が掛かると金属磁性材料の間では絶縁破壊が生じ易いため、金属磁性材料が用いられるコイル部品に絶縁コートが設けられることがある。
この場合、絶縁コートにより耐圧性を得るためには、部品全体を覆うこと、また欠陥などのないように完全に覆うことが必要となる。このため、絶縁コートは、厚みを非常に大きく設けることが行われ、これにより部品サイズの制限や小型化に対応しにくいなど、ある制限の中で用いられることになる。
【0009】
また、絶縁コートは、コイル部品の絶縁は高くなる一方で、摩擦などにより帯電し易くなるとも言える。このため、コイル部品の製造過程およびコイル部品のハンドリングなどにおいて静電気の対策も重要となっている。
そこで、本発明は、絶縁性確保と帯電抑制との両立を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係るコイル部品は、金属磁性材料が用いられた磁性体部分を有する基体と、上記基体の内部に設けられた導体と、上記基体における上記磁性体部分の表面に設けられた、炭素粒子を含んだ樹脂の絶縁層と、上記基体の表面に沿って広がり、上記導体と接続された外部電極と、を備える。
【0011】
本発明の一態様に係るコイル部品において、上記絶縁層は、上記炭素粒子を0.01vol%より多く含む。
また、本発明の一態様に係るコイル部品において、上記絶縁層は、絶縁性の無機フィラーを含む。
【0012】
また、本発明の一態様に係るコイル部品において、上記絶縁層は、上記無機フィラーとして、長軸と短軸とを有した第1無機フィラーを含む。
また、本発明の一態様に係るコイル部品において、上記絶縁層は、上記無機フィラーとして、球形の第2無機フィラーを含む。
【0013】
また、本発明の一態様に係るコイル部品において、上記樹脂は、Tgが150℃より高い。
また、本発明の一態様に係るコイル部品において、上記基体は、互いに逆向きの第1面と第2面を有し、上記絶縁層は、上記第1面に設けられ、上記外部電極は、上記第2面に設けられる。
【0014】
また、本発明の一態様に係るコイル部品において、上記絶縁層は、上記第1面の全体を覆う。
また、本発明の一態様に係るコイル部品において、上記絶縁層は、上記第1面から、当該第1面に隣り合う面に至る。
【0015】
また、本発明の一態様に係るコイル部品において、上記外部電極は、上記第2面から、当該第2面に隣り合う面に至る。
また、本発明の一態様に係るコイル部品において、上記絶縁層は、厚みが10μm未満である。
【0016】
また、本発明の一態様に係る回路基板は、いずれかの上記コイル部品と、上記コイル部品が実装された基板と、を備える。
また、本発明の一態様に係る電子機器は、上記回路基板を備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、絶縁性確保と帯電抑制とを両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1実施形態に係るコイル部品を示す斜視図である。
図2図1に示すコイル部品の側面図である。
図3図1に示すコイル部品の断面図である。
図4】絶縁層における微視的構造を概念的に示した拡大図である。
図5】樹脂成分中の凝集体を示す図である。
図6】コイル部品の製造方法の一例を示す図である。
図7】コイル部品の製造方法の別例を示す図である。
図8】第2実施形態のコイル部品を示す断面図である。
図9】第2実施形態のコイル部品の製造方法を示す図である。
図10】第3実施形態のコイル部品を示す断面図である。
図11】第3実施形態のコイル部品の製造方法を示す図である。
図12】第4実施形態のコイル部品を示す断面図である。
図13】第4実施形態のコイル部品の製造方法を示す図である。
図14】第5実施形態のコイル部品を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下の実施形態は本発明を限定するものではなく、実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の構成に必須のものとは限らない。実施形態の構成は、本発明が適用される装置の仕様や各種条件(使用条件、使用環境等)によって適宜修正または変更され得る。
【0020】
本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲によって画定され、以下の個別の実施形態によって限定されない。以下の説明に用いる図面は、各構成を分かり易くするため、実際の構造と縮尺および形状などを異ならせることがある。先に説明した図面に示された構成要素については、後の図面の説明で適宜に参照する場合がある。
【0021】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係るコイル部品を示す斜視図である。
コイル部品1は、基板2aに実装されている。基板2aには、例えば2つのランド部3が設けられている。コイル部品1は、1つの基体11と2つの外部電極12とを有する。コイル部品1は各外部電極12とランド部3とがはんだで接合されることで基板2aに実装される。本発明の一実施形態による回路基板2は、コイル部品1と、このコイル部品1が実装された基板2aと、を備える。回路基板2は、様々な電子機器に備えられる。回路基板2を備えた電子機器としては、自動車の電装品、サーバ、ボードコンピュータおよびこれら以外の様々な電子機器が想定される。
【0022】
本明細書においては、文脈上別に解される場合を除き、方向の説明は、図1の「L軸」方向、「W軸」方向および「H軸」方向を基準に用い、それぞれ、「長さ」方向、「幅」方向および「高さ」方向と称する。「高さ」方向については「厚さ」方向と呼ぶ場合もある。
【0023】
コイル部品1は、直方体形状の外形を有する。即ちコイル部品1は、長さ方向Lの両端に第1の端面1aおよび第2の端面1bを有し、高さ方向Hの両端に第1の主面1c(上面1c)および第2の主面1d(底面1d)を有し、幅方向Wの両端に前面1eおよび後面1fを有する。
【0024】
直方体形状のコイル部品1における各辺の寸法は、長さ方向Lが例えば1~5mmの範囲にあり、幅方向Wが例えば0.5~3.5mmの範囲にあり、高さ方向Hが例えば0.5~2.5mmの範囲にある。また、高さ方向Hが長さ方向Lより小さく、更には高さ方向Hが幅方向Wより小さくなっている。
【0025】
コイル部品1の第1の端面1a、第2の端面1b、第1の主面1c、第2の主面1d、前面1eおよび後面1fはいずれも、平坦な平面であってもよいし湾曲した湾曲面であってもよい。また、コイル部品1の8つの角部および12の稜線部は、丸みを有していてもよい。
【0026】
本明細書においては、コイル部品1の第1の端面1a、第2の端面1b、第1の主面1c、第2の主面1d、前面1eおよび後面1fの一部が湾曲している場合や、コイル部品1の角部や稜線部が丸みを有している場合にも、かかる形状を「直方体形状」と称することがある。つまり、本明細書において「直方体」又は「直方体形状」という場合には、数学的に厳密な意味での「直方体」を意味するものではない。
【0027】
<コイル部品の構造>
図2は、図1に示すコイル部品1の側面図であり、図3は、図1に示すコイル部品1の断面図である。図3には、図1に示すA-A線に沿った断面が示されている。以下、図1図3を参照して説明する。
【0028】
本発明の第1実施形態におけるコイル部品1は、基体11と外部電極12と絶縁層13を有し、基体11の内部に導体14を有する。ここで基体11としては、内部に導体が配置される磁性体であってもよく、表面に導体が巻き付けられる鍔と軸を持つTコアやドラムコアと称される磁性体と導体を覆った外装体とを併せたものであってもよい。
【0029】
本実施形態における基体11は、金属磁性材料と結合材とから形成される磁性体であり、図3の例においては外装部を有さない。結合材は、金属磁性材料の相互間を結合させるものであり、また電気的な導通を防ぐため、絶縁性の高いものでもある。結合材は、磁性基体の比抵抗が10Ωcm以上となるものが用いられる。例えば、結合材としての比抵抗が10Ωcm以上であるものが選ばれ、また機械的強度を高める目的から、結合材としては、樹脂、ガラス、金属酸化物が選択され得る。
【0030】
結合材の樹脂としては、例えば、Tgが150℃より高いものが選ばれ、Tgが180℃より高いものでもよい。このような高いTgの樹脂であると、ガラス、金属酸化物と同様に、高温の用途においても、環境変化に対応できる。
基体11は、内部の比抵抗が非常に高く、また表面でも同様であり、表面にも結合材が存在している。金属磁性材料は、Fe、Ni、Coのうちの1以上の金属磁性粒子を含む。また、金属磁性材料は金属磁性粒子以外に、Mg、Mn、Niのうちの1以上のセラミックの磁性粒子やシリカなどの非磁性粒子を含んでもよい。金属磁性粒子としては、Fe、Ni、Coの成分以外にSi、Cr、Al、B、Pのうちの1以上の成分を含んでもよく、また複数種の金属磁性粒子が組み合わされてもよい。
【0031】
金属磁性粒子は、粒径が平均で1~30μmの粒子であり、粒径分布を含めて0.1~50μmの範囲の粒径を有する。金属磁性粒子は絶縁処理が施されたものでもよく、樹脂の存在により絶縁が担保されてもよい。
金属磁性材料が金属磁性粒子以外に、金属微粒子、金属酸化物、セラミック材料などの他の材料を更に含む場合、当該他の材料の粒径は平均で0.01~1μmであり、金属磁性粒子より粒径が小さい。金属磁性粒子以外の材料を含む場合は、磁性としての機能を高めることよりも、例えば空隙を減らす、または機械的強度を補うことができる。
【0032】
基体11を成す磁性体は、体積に占める磁性材料の割合が85vol%以上、望ましくは88vol%以上であり、残部が金属磁性材料以外のものであり、絶縁物または空隙を含んでいる。
基体11は直方体形状を有し、高さ方向Hの一端に上面101を有し、高さ方向Hの他端に底面102を有し、長さ方向Lの両端それぞれに端面103を有し、幅方向Wの両端に前面104および後面105を有する。底面102は、コイル部品1が基板2aに実装される際に基板2aと対向する面である。
【0033】
導体14は、導電性に優れた金属材料から成る。導体14用の金属材料としては、例えば、Cu、Al、Ni、もしくはAgのうちの1以上の金属、又はこれらの金属のいずれかを含む合金が用いられ得る。導体14は、表面に絶縁物の皮膜が設けられた金属の導線が巻回されたものでもよいし、基板やシートなどの表面にめっきや印刷などによって形成されたものでもよい。
【0034】
本実施形態の導体14は、1ターン以上周回した周回部402を有する。但し、導体14は、周回部を持たない直線状や階段状の構造でもよい。周回部402の形状は平面状でもよく螺旋状でもよい。導体14は、外部との電気的な導通を取るための引き出し部401を有する。引き出し部401は、外部電極12を導体14と接続するものである。
【0035】
導体14は、1つの基体11に対して1つ設けられてもよいし、あるいは導体14は、1つの基体11に対して複数設けられてもよい。図3には、導線が基体11の底面102と上面101に沿って周回した、いわゆる水平巻きの周回部402が例示されている。導体14は、導線が基体11の端面103に沿って周回した、いわゆる垂直巻きの周回部を有してもよい。
【0036】
コイル部品1は、底面1dに2つの外部電極12を備え、一例として外部電極12は、基体11の表面のうちの底面102部分に設けられている。また、外部電極12は、コイル部品1の第1の端面1a側と第2の端面1b側とに分かれている。
外部電極12は、Ag、Cu、Ti、Ni、Snのうちの1以上の金属からなる金属層を有する。金属層は、例えば厚みが1~5μmの層である。外部電極12は複数の金属層が組み合わされたものでもよく、合計の厚みは例えば5~10μmとなる。また、外部電極12は、一部に樹脂を含んだ金属層が組み合わされてもよく、合計の厚みは例えば10~20μmとなる。
【0037】
図3に示す例の場合、外部電極12は、下地層201とめっき層202とを有する。下地層201には、Ag、Cu、Ti、Niなどの金属材料が用いられる。下地層201は、めっき、金属材料の塗布、スパッタリング法、あるいは蒸着法により基体11の表面に設けられる。また、下地層201は、厚みが1μm以下であり、一部分が他の部分から離間して存在していてもよい。下地層201は、磁性基体11の表面および導体14の引き出し部401と密着することで、外部電極12を基体11と一体化させるとともに外部電極12と導体14との導通を得る。
【0038】
めっき層202は、導電性に優れた金属材料から成る。金属材料としては、例えばCu、Agが用いられ、更にNi、Pd、Snが用いられる。めっき層202は、それぞれの金属材料を主成分とする層、または一部で合金化した層が重なり、層状に形成される。
絶縁層13は、基体11の表面のうち、外部電極12が設けられた底面102とは反対側の上面101に設けられている。本実施形態では絶縁層13は上面101全体を覆っている。
【0039】
<絶縁層の構造>
図4は、絶縁層13における微視的構造を概念的に示した拡大図である。
絶縁層13は、樹脂成分301と、炭素粒子の凝集体302と、第1フィラー303と、第2フィラー304とを有し、基体11の上面101に設けられている。上面101には、微視的構造として、金属磁性粒子に起因した凹凸構造が存在し、絶縁層13は、その凹凸構造の上に設けられる。絶縁層13の表面は、絶縁層13が設けられる基体11の上面101よりも表面粗さが小さい。例えば、絶縁層13の表面の表面粗さは、絶縁層13が設けられる基体11の表面粗さの半分以下である。
【0040】
絶縁層13は、厚みとして平均で10μm以下である。絶縁層13は、絶縁層13が設けられる基体11の上面101よりも反射率が小さく、絶縁層13の反射率は例えば20%より小さい。絶縁層13の厚みは平均で5μm以下でもよく、この場合の反射率は10%より小さい。
【0041】
絶縁層13の樹脂成分301としては、例えば熱硬化性の樹脂が用いられ、Tgが150℃より高いことが好ましい。樹脂成分301としては、耐熱性以外に、耐湿性、耐食性、また耐衝撃性の高い樹脂が選ばれる。これらを考慮すると、樹脂成分301としては、例えば、アクリル系、エポキシ系、フェノール系の樹脂が好ましい。樹脂成分301の好ましい一例としては、ジアリルフタレート樹脂、ビスフェノールA型のエポキシ樹脂、また3官能以上の多官能エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0042】
樹脂成分301は、絶縁層13を構成した全要素に対して30vol%より多い。また、樹脂成分301として2種以上の樹脂が組み合わされることで、機械的強度や耐熱性などの異なる要求に応えることもできる。
絶縁層13は、樹脂成分301の中に炭素粒子の凝集体302を含んでいる。
【0043】
図5は、樹脂成分301中の凝集体302を示す図である。
樹脂成分301中で炭素粒子305は、不定形の凝集体302を形成している。炭素粒子305は、粒子が単独で存在するものではなく、複数の粒子がつながり、一部は鎖のように長さを持つものである。更に、樹脂成分301においては、複数の凝集体302がつながっている。この凝集体302の状態は、TEM(透過電子顕微鏡)の断面観察により炭素粒子305のコントラストの違いから粒子が重なりあっていることで確認される。
【0044】
凝集体302を形成する炭素粒子305としては、例えば、カーボンブラック、グラファイト等が用いられる。炭素粒子305としては、ファーネスブラック、アセチレンブラックが用いられてもよい。炭素粒子305は導電性を有し、また凝集体302として存在するため、絶縁層13内に、樹脂成分301よりも電気的に抵抗の低い部分が形成される。
【0045】
また、絶縁層13は、樹脂成分301の中に炭素粒子305の凝集体302を含んでいても、低い導電性の炭素粒子305より高い絶縁性の樹脂成分301などの存在によって絶縁性が確保され、通常状態では絶縁体である。このため、絶縁層13の存在によってコイル部品1の絶縁性が確保される。一方、静電気などが生じた場合には、炭素粒子305の導電性によって帯電が抑制される。
【0046】
絶縁層13に含まれる炭素粒子305は粒径が小さい方が好ましく、例えば50nmより小さい粒径を有する。また、炭素粒子305は、樹脂成分301中で凝集体302を形成していても分散していてもよく、凝集体302のサイズは500nmより小さい。図5に示す例では、炭素粒子305の粒径が約20nmであり、凝集体302のサイズが200~300nmである。複数の凝集体302がつながったものは、例えば、長さとして400~3000nmになる。
【0047】
絶縁層13における炭素粒子305の含有量は、絶縁層13を構成した成分に対し、0.01vol%より多く、2vol%より少ない。凝集体302が分散している場合、炭素粒子305の含有量は1vol%以上に多く、凝集体302が凝集している場合、炭素粒子305の含有量は1vol%より少なくてもよい。絶縁層の断面から見た炭素粒子305の存在割合は、面積として0.01%より多く、2%より少ない範囲になり、更に1%以上に多い範囲と、1%より少ない範囲に分けられる。
【0048】
炭素粒子305の含有量が1vol%以上となると、凝集体302が更に緩くつながった鎖状のストラクチャーが形成され、長距離の導電パス(パーコレーションパス)が形成される。その場合、絶縁層13の抵抗値が急激に下がり、渦電流損失や電極間の並列伝導パスによる回路損失の虞がある。また、炭素粒子305の含有量が1vol%以上となると高比表面積の炭素粒子305により塗液が高粘度化し、薄層化が難しくなる。逆に炭素粒子305の含有量が0.01vol%より少なくなると炭素粒子305の凝集体302間の絶縁距離が長くなり、静電気による伝導パスの形成が困難となり、帯電抑制効果が得られ難い。
【0049】
例えば、炭素粒子305の含有量が、2vol%以上の場合、炭素粒子305の凝集の大きなものが存在し易くなり、絶縁性の低下につながることがある。例えば、炭素粒子305は含有量が少ない方がよく、炭素粒子305が少ないことで他の成分の比率が高められ、機械的強度が高められたり、線膨張係数が小さくされたりというように、他の機能が高められる。絶縁層13は、通常の状態では電気的な絶縁は高い方がよく、所定の電位差が生じた場合には放電の効果が現れる。
【0050】
図1図3に示すように絶縁層13が基体11の上面101を覆うことで、基体11の表面が保護され、上面101からコイル部品1に帯電した電気が放電され易く、コイル部品1の基体11への電気的な影響が緩和される。例えば、コイル部品1以外の金属などが絶縁層13と接触することにより、コイル部品1に溜まった電荷は、絶縁層13からコイル部品1以外の金属へと放電され、特に基体11に掛かる電圧が抑制される。従って、基体11に含まれる金属磁性粒子の間を電流が通過してしまうことで生じる電気的な欠陥である絶縁破壊が抑制される。コイル部品1に接触して電荷を溜めるものとしては、金属などの電気抵抗の低いものや人の指などが想定される。
【0051】
金属磁性粒子が用いられたコイル部品1において、静電気は特に注意が必要なこととなっている。静電気は目に見えず、異常と気付かれないままで欠陥が生じる原因のひとつだからである。絶縁層13が設けられることで静電気の影響が抑制されるため、コイル部品1の安全性が高まる。
【0052】
このため、コイル部品1は、絶縁層13を接触面とした搬送が可能となる。つまり、搬送時の摩擦や振動によるダメージが低減されるとともに、接触の摩擦によって静電気が発生しても基体11での影響が緩和されるからである。特に、絶縁層13が基体11の上面101を全体に亘って覆うことで、基体11の上面101の全体が保護され、絶縁層13において欠陥が生じることを防ぐことができ、絶縁層13以外の部分からの放電を防止できる。
【0053】
また、絶縁層13は表面粗さが小さいことで、絶縁層13の設けられた上面1cが使われてコイル部品1が搬送される場合に摩擦が抑制され、搬送が容易となる。また、絶縁層13が帯電を抑制することで静電気によるコイル部品1同士の吸着などが抑制され、コイル部品1が小型であっても搬送が容易となる。
【0054】
絶縁層13の反射率が小さいことで、基体11との識別や、外部電極12との識別が容易となり、絶縁層13を使った方向識別などに利用可能である。絶縁層13の反射率が小さいことで、目視によるコイル部品1の識別も容易となる。
【0055】
図4に示すように、本実施形態では、絶縁層13は、無機フィラーである第1フィラー303と第2フィラー304を含んでいる。
第1フィラー303は、マグネシウム、カルシウム、チタン、ジルコニウムのうち1以上の絶縁性化合物を含んでいる。第1フィラー303の絶縁性化合物としては、例えば、珪酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、ジルコニア等が挙げられる。また、第1フィラー303は、外形形状として長軸と短軸を有する。第1フィラー303の具体的な外形形状としては、例えば、扁平状、楕円状、板状、針状などに見える形状が挙げられる。
【0056】
第2フィラー304は、ケイ素、アルミニウム、マグネシウムのうち1以上の絶縁性化合物を含んでいる。第2フィラー304の絶縁性化合物としては、例えば、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム等が挙げられる。また、第2フィラー304の外形形状としては、球形状である。
【0057】
第1フィラー303は、第2フィラー304より大きい。例えば、第1フィラー303の長軸は、第2フィラー304の粒径より大きく、第1フィラー303の短軸は、第2フィラー304の粒径より大きい。第1フィラー303は、長軸が1~10μmであり、短軸が100nm~1μmである。第2フィラー304は、長軸が50~500nmであり、短軸が長軸の80%より大きい。第1フィラー303、第2フィラー304の存在割合は、第1フィラー303より第2フィラー304が多く含まれ、第1フィラー303、第2フィラー304を合わせた存在割合は、絶縁層13の30~50vol%である。例えば、第1フィラー303、第2フィラー304を合わせた存在割合は、樹脂成分301より少ない範囲である。無機フィラー303、304の大きさの組み合わせが調整されることで、目的の機能が確保されるとともに、絶縁層13の厚みが薄くなる。また、第1フィラー303の存在により絶縁層13のエッジ部分などの形状安定性が得られ、第2フィラー304の存在により絶縁層13中の分散状態がよくなり、絶縁層13の厚みが薄くできる。また、無機フィラー303、304がシリカなどの光を透過するものである場合、絶縁層の厚み方向で見た無機フィラー303、304の大きさは、100~300nmである。この無機フィラー303、304は、光の隠ぺい性を持たせることができ、光の透過や反射を抑えることができる。このため、絶縁層13の厚みが薄くても、基体11が見えてしまうようなことがない。
【0058】
絶縁層13が無機フィラー303、304を含むことで、静電気などのない通常の状態では、絶縁性が高められる。つまり、絶縁層13は、コイル部品1の正常な使い方においては高い絶縁を得ることができ、例えば、電圧が100Vより低い範囲では、絶縁層13が絶縁体であることを意味する。各要素の抵抗値の大小で表すと、電圧が100Vより低い場合には、導体<基体≦絶縁層となり、電圧が10万Vより高い場合には、導体<絶縁層<基体となる。
【0059】
絶縁層13における無機フィラー303、304の存在は、線膨張係数を下げることに寄与する。また、第1フィラー303と第2フィラー304との2種の無機フィラーが含まれることで、分散性により無機フィラーの均一性が高まって機械的強度が高まる。特に第1フィラー303が含まれることで絶縁層13の表面と平行な方向の線膨張係数が小さくなる。
【0060】
絶縁層13に含まれる各要素については、絶縁層13の断面が例えばTEM(透過電子顕微鏡)、SEM(走査型電子顕微鏡)や光学顕微鏡などで観察されることで確認可能である。炭素粒子305、無機フィラー303、304および空隙は、絶縁層13の断面の光学的観察において、コントランストの違いから存在が判断される。同様に、フィラーの存在や大きさについても、断面から見ての判断が可能である。樹脂成分301は、炭素粒子305、無機フィラー303、304および空隙が除かれた他の部分になり、樹脂成分301の存在割合が求められる。
【0061】
<コイル部品の製造方法>
図6は、コイル部品1の製造方法の一例を示す図である。
ステップS101では、導体14が形成される。導体14は、金属導線が巻き回されて形成されてもよいし、基板やシートなどの表面にめっきや印刷などによって形成されてもよい。
【0062】
ステップS102では、導体14を内包した状態で基体11が形成される。但し、図6に示す製造方法の場合には、複数の基体11が繋がった部品集合体として形成される。基体11は、たとえばメタルコンポジットタイプのコイル部品1の場合は、金属磁性粒子と樹脂を含む複合磁性材料に、圧力、温度が掛けられることで成形体に成形される。この成形段階で、導体14は基体11と一体化される。
【0063】
成形における具体的な圧力および温度は、例えば、圧力としては、10~100MPaであり、温度としては、100~200℃である。成形体は、150~200℃に加熱され、複合磁性材料の樹脂の硬化が進められることで磁性体の基体11となる。
なお、基体11は、シート状の磁性材料が積層されて成形されてもよいし、モールド成形によって成形されてもよい。
【0064】
ステップS103では、成形体の表面のうち基体11の上面101に相当する1つの面に、炭素粒子305を含む樹脂材料が塗布され、樹脂が硬化されて絶縁層13が形成される。樹脂材料は例えば印刷によって塗布され、上記1つの面の全面に亘って塗布される。この結果、基体11の上面101の全面を覆う絶縁層13が形成される。
【0065】
樹脂材料の塗布方法としては、印刷、浸漬、含侵などの方法が採用可能であるが、絶縁層13の厚みを薄くする場合や、絶縁層13を設ける位置精度が求められる場合などは、印刷による方法が好ましい。印刷によって樹脂材料が塗布される場合、基体11となる成形体の表面における凹凸の凹部を埋めて凹凸を吸収するように樹脂材料が塗布されることで、絶縁層13の厚み自体が薄くなる。また、絶縁層13の表面の表面粗さを小さくする場合、印刷による方法が好ましい。なお、基体11に樹脂が含まれる場合、絶縁層13を作る樹脂よりTgが高い樹脂が含まれることで、製造過程での樹脂の劣化が抑制される。
【0066】
ステップS104では、金属材料が成形体の底面側にスクリーン印刷や転写、ディップ等により塗布されて外部電極12の下地層201が形成される。
ステップS105では、部品集合体が個々の部品にカットされる。
ステップS106では、個々の部品に対してめっきが施されて外部電極12のめっき層202が形成される。
【0067】
例えば、この製造方法では、部品集合体の段階で絶縁層13の形成が行われるため、コイル部品個々の絶縁層13の厚みを均一に設けることができる。
図7は、コイル部品1の製造方法の別例を示す図である。
別例の製造方法でも、ステップS101からステップS104まで、上記と同様に実行される。但し、ステップS102では、上記で部品集合体が成形されたのに対し、図7の別例では、個々の部品として成形されるため、ステップS105は存在しない。
【0068】
従って図7の別例では、ステップS104で外部電極12の下地層201が形成された後、ステップS106に進んで外部電極12のめっき層202が形成される。
例えば、この製造方法では、基体11の上面101の一部に選択的に絶縁層13を設けることができる。
【0069】
以上説明した製造方法により、コイル部品1が製造される。
<第2実施形態>
以下、本発明の第2実施形態について説明する。但し、第1実施形態との相違点に着目して説明し、重複説明は省略する。
【0070】
図8は、第2実施形態のコイル部品501を示す断面図である。
第2実施形態のコイル部品501は、絶縁層13が、上面101から、上面101に隣り合う端面103に亘って設けられている。絶縁層13は、上面101に隣り合う前面104および後面105に至ってもよい。
【0071】
第2実施形態では、絶縁層13が上面101以外の面にまで設けられることで電気的な通り道が第1実施形態よりも広がっている。このため、第2実施形態では第1実施形態より静電気が散逸しやすく、安全性が高い。
また、第2実施形態では、絶縁層13が基体11の表面を第1実施形態より広い範囲に亘って覆うため、基体11の表面がより保護される。特に、加重や衝撃などの負荷に対して弱い稜線部分のダメージが防がれ、例えば、金属磁性材料の脱落、また脱粒に伴う絶縁低下などが防止される。
【0072】
図9は、第2実施形態のコイル部品501の製造方法を示す図である。
第2実施形態のコイル部品501の製造方法でも、図6に示す製造方法と同様にステップS101、S102、S104、S105が実行される。第2実施形態では、ステップS103は実行されない。第2実施形態では、ステップS105の後、ステップS201が実行される。
【0073】
そして、ステップS201では、個別の部品にカットされた成形体に対し、上面101および端面103の合計3面に亘って炭素粒子305を含む樹脂材料が塗布され、樹脂が硬化されて絶縁層13が形成される。
その後、ステップS106に進んで外部電極12のめっき層202が形成される。なお、図7の別例と同様に、第2実施形態でも部品が個別に形成されてもよい。
【0074】
例えば、この製造方法では、コイル部品の複数の面に絶縁層13を設けることができる。また、複数の塗布方法を組み合わせることで、面による厚みの差を設けることが容易にできる。
【0075】
<第3実施形態>
以下、本発明の第3実施形態について説明する。但し、第1実施形態との相違点に着目して説明し、重複説明は省略する。
【0076】
図10は、第3実施形態のコイル部品502を示す断面図である。
第3実施形態のコイル部品502は、絶縁層13が、上面101、底面102、端面103、前面104および後面105の全6面に設けられている。但し、底面102では、外部電極12の箇所以外に設けられている。
【0077】
第3実施形態では絶縁層13が外部電極12に接して設けられているため、静電気などの電荷が外部電極12に流れて速やかに散逸される。従って、第3実施形態のコイル部品502は、第1実施形態および第2実施形態よりも静電気などに対する安全性が高い。また、絶縁層13が基体11のほぼ全体を覆うため基体11の全面が保護される。また、導体14と外部電極12の接続が行われる面に設けられる絶縁層13は、最も厚みが大きい。これは、導体14と外部電極12の接続部分の周囲では絶縁層13に欠陥を生じないようにするためである。
【0078】
図11は、第3実施形態のコイル部品502の製造方法を示す図である。
第3実施形態のコイル部品502の製造方法でも、図6に示す製造方法と同様にステップS101、S102、S104、S105が実行される。第3実施形態では、ステップS105の後、ステップS301が実行される。
【0079】
そして、ステップS301では、個別の部品にカットされた成形体に対し、6面全部に炭素粒子305を含む樹脂材料が塗布され、樹脂が硬化されて絶縁層13が形成される。また、ステップS302では、ステップS301で形成された絶縁層13のうち、外部電極12の下地層201上に形成された部分が剥離される。
【0080】
その後、ステップS106に進んで外部電極12のめっき層202が下地層201上に形成される。なお、図7の別例と同様に、第3実施形態でも部品が個別に形成されてもよい。
例えば、この製造方法では、外部電極12の下地層201を露出させる樹脂材料の剥離は、下地層201以外の箇所における絶縁層13の厚みの調整に転用されてもよい。
【0081】
<第4実施形態>
以下、本発明の第4実施形態について説明する。但し、第3実施形態との相違点に着目して説明し、重複説明は省略する。
【0082】
図12は、第4実施形態のコイル部品503を示す断面図である。
第4実施形態のコイル部品503は、底面102から端面103に至り一部が上面101に達する外部電極12を備えている。外部電極12のうち、端面103および上面101に沿って広がる部分については、絶縁層13の上に設けられている。
【0083】
第4実施形態では、絶縁層13と外部電極12とが広い面積で接しているため、第3実施形態よりも更に静電気などの電荷が外部電極12に流れて速やかに散逸される。従って、第4実施形態のコイル部品503は、第1実施形態~第3実施形態よりも静電気などに対する安全性が高い。また、端面103や上面101に達する外部電極12は、コイル部品503を保護する役割も果たす。
【0084】
図13は、第4実施形態のコイル部品503の製造方法を示す図である。
第4実施形態のコイル部品503の製造方法でも、図6に示す製造方法と同様にステップS101、S102、S104、S105が実行される。その後、第3実施形態の製造方法と同様に、ステップS301、S302が実行される。第4実施形態では、ステップS302の後、ステップS401が実行される。
【0085】
図13のステップS401では、成形体の端面103や上面101に形成された絶縁層13上に、金属材料がスクリーン印刷や転写、ディップ等により塗布されて外部電極12の下地層201が形成される。ステップS401で形成される下地層201は、一部が底面102に達し、既に底面102に形成されている下地層201と接続される。
【0086】
その後、ステップS106に進んで外部電極12のめっき層202が、底面102から端面103を経て上面101に達する下地層201上に形成される。なお、図7の別例と同様に、第4実施形態でも部品が個別に形成されてもよい。また、ステップS301では、成形体の表面のうち基体11の上面101のみに絶縁層13が設けられてもよい。これは、絶縁層13と外部電極12とが接していればよく、この方が基体11を最大化させることができるからである。
【0087】
<第5実施形態>
以下、本発明の第5実施形態について説明する。但し、第1実施形態との相違点に着目して説明し、重複説明は省略する。
【0088】
図14は、第5実施形態のコイル部品504を示す断面図である。
第5実施形態のコイル部品504では、基体11が、表面に導体14が巻き付けられる鍔と軸を持つTコア、ドラムコアの磁性体16と、導体14の外側を覆う外装体15との組み合わせとなっている。絶縁層13は、第1実施形態と同様に上面101に設けられている。
【0089】
絶縁層13は、磁性体16のみの表面に設けられてもよいし、磁性体16と外装体15の表面に設けられてもよいし、外装体15のみの表面に設けられてもよい。いずれの面に設けられた場合であっても、第1実施形態~第4実施形態で説明した絶縁層13の効果が得られる。
【0090】
第5実施形態のコイル部品504の製造方法としては、第1実施形態のコイル部品1の製造方法と同様の製造方法が採用可能である。また、第5実施形態のコイル部品504の製造方法としては、第1実施形態のコイル部品1の製造方法におけるステップS102とステップS101の実行順が変わった製造方法でもよい。
【0091】
なお、第1実施形態~第5実施形態の製造方法については上記例に限定されるものではなく、構造上の矛盾を生じない範囲において、上述した各ステップの実行順は自由に変更可能である。
【符号の説明】
【0092】
1、501、502、503、504 コイル部品
2 回路基板
2a 基板
3 ランド部
4 はんだ
11 基体
12 外部電極
13 絶縁層
14 導体
15 外装体
101 上面
102 底面
103 端面
104 前面
105 後面
301 樹脂材料
302 炭素粒子の凝集体
303 第1フィラー
304 第2フィラー
305 炭素粒子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14