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特開2024-33874車両用灯具および車両用灯具の製造方法
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  • 特開-車両用灯具および車両用灯具の製造方法 図1
  • 特開-車両用灯具および車両用灯具の製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033874
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】車両用灯具および車両用灯具の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F21S 45/00 20180101AFI20240306BHJP
   F21S 41/148 20180101ALI20240306BHJP
   F21W 102/00 20180101ALN20240306BHJP
   F21W 103/00 20180101ALN20240306BHJP
   F21W 103/20 20180101ALN20240306BHJP
   F21W 102/30 20180101ALN20240306BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20240306BHJP
【FI】
F21S45/00
F21S41/148
F21W102:00
F21W103:00
F21W103:20
F21W102:30
F21Y115:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137765
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉村 剛直
(57)【要約】
【課題】
強度を低い樹脂を部分的に用いた場合であっても、全体に必要な強度を確保することができる車両用灯具および車両用灯具の製造方法を提供する。
【解決手段】
アウタレンズ(1)と、前記アウタレンズ(1)とともに灯室を形成するランプボディ(30)と、を有し、前記ランプボディ(30)は、第一の樹脂で構成された第一部(41)と、前記第一の樹脂よりも曲げ弾性率が低い第二の樹脂で構成された第二部(42)とを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウタレンズと、
前記アウタレンズとともに灯室を形成するランプボディと、を有し、
前記ランプボディは、第一の樹脂で構成された第一部と、前記第一の樹脂よりも曲げ弾性率が低い第二の樹脂で構成された第二部とを含む、車両用灯具。
【請求項2】
前記第一部の少なくとも一部は、前記アウタレンズが取り付けられるアウタレンズ取付部、前記ランプボディを車体に取り付ける車体取付部、前記灯室内に配置される内部部材を支持する内部支持部、前記灯室内に配置される電子装置から延びる電線を外部に挿通させるための貫通孔を形成する孔形成部、のうちの少なくとも一つの少なくとも一部をなしている、
請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記第一部の少なくとも一部は、前記アウタレンズが取り付けられるアウタレンズ取付部、前記ランプボディを車体に取り付ける車体取付部、前記灯室内に配置される内部部材を支持する内部支持部、前記灯室内に配置される電子装置から延びる電線を外部に挿通させるための貫通孔を形成する孔形成部、のうちの少なくとも2以上の少なくとも一部をなしており、
前記第二部は、前記第一部のなす前記車体取付部、前記内部支持部、前記孔形成部のうちの2以上の部位の間の領域を埋める部位の少なくとも一部をなしている、
請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記第一部は、その断面形状が円弧状であり、トラス状に延びている部分を含む、
請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記第二部は、トラス状に延びた前記第一部の間の領域に、曲面として形成されている、
請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項6】
前記第二部は、熱可塑性樹脂を含み、
前記第一部は、タルクと強化繊維の少なくとも一方と、熱可塑性樹脂を含む、
請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項7】
前記第一部および前記第二部は、熱可塑性樹脂を含み、
前記第一部を構成する熱可塑性樹脂の曲げ弾性率は、前記第二部を構成する熱可塑性樹脂の曲げ弾性率よりも高い、
請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項8】
前記第二部は、廃プラスチック製品を粉砕、溶融した材料を含む、請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の前記ランプボディを、前記第一の樹脂と前記第二の樹脂を含む二色成形により製造する、車両用灯具の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具および車両用灯具の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両取付部の強度を確保しつつ、軽量化を可能とするために、発泡性樹脂を備える車両用灯体部品が開示されている。
【0003】
特許文献2には、環境負荷に対応するために、ランプボディがベース樹脂と表面処理された植物繊維とを含有する樹脂組成物から形成された車両用灯具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-41625号公報
【特許文献2】国際公開第2013/187257号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
環境負荷を低減するために、車両用灯具のランプボディを形成する樹脂にリサイクル材を採用することが検討されている。しかしながら、リサイクル材は、新品の素材だけを使用して製造されるバージン材と比較して品質が不均一となりやすく、強度が低下するおそれがある。
【0006】
本発明の課題は、強度の低い樹脂を部分的に用いた場合であっても、全体に必要な強度を確保することができる車両用灯具および車両用灯具の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の車両用灯具は、アウタレンズと、前記アウタレンズとともに灯室を形成するランプボディと、を有し、前記ランプボディは、第一の樹脂で構成された第一部と、前記第一の樹脂よりも曲げ弾性率が低い第二の樹脂で構成された第二部とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、強度を低い樹脂を部分的に用いた場合であっても、車両用灯具全体に必要な強度を確保することができるる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】車両用前照灯の側断面図である。
図2】ハウジング30を前方から見た正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
本開示に係る車両用灯具として、車両用前照灯を説明する。図1は、車両用前照灯の側断面図である。図1に示すように、車両用前照灯は、アウタレンズ1と、光源ユニット10と、エイミング機構20と、ハウジング30(ランプボディ)と、を有している。
【0012】
アウタレンズ1とハウジング30は灯室を形成している。灯室の中に、光源ユニット10が配置されている。アウタレンズ1は透明樹脂により構成されている。アウタレンズ1は、光源ユニット10から出射された光を透過する。
【0013】
光源ユニット10は、光源11と、リフレクタ12と、インナレンズ13と、電力ケーブル14と、光源台15を備えている。光源11から出射された光は、リフレクタ12で反射され、インナレンズ13に入射し、アウタレンズ1を透過して車両用前照灯の前方に出射される。光源11およびリフレクタ12は光源台15に取り付けられている。インナレンズ13は、図示せぬレンズホルダを介して光源台15に取り付けられている。
光源ユニット10は、灯室内に配置される電子装置の例である。
【0014】
エイミング機構20は、矩形状で板状のホルダ21と、アジャスタスクリュー22と、エイミングアクチュエータ23とを有している。矩形状のホルダ21の上部の二つの角部は各々支持軸部(図示せず)とアジャスタスクリュー22を介してハウジング30に取り付けられている。矩形状のホルダ21の下部の一つの角部はエイミングアクチュエータ23を介してハウジング30に取り付けられている。
ホルダ21は灯室内に配置される内部部材の例である。アジャスタスクリュー22は内部部材の例である。
【0015】
アジャスタスクリュー22は、ホルダ21の上部にねじ込まれている。アジャスタスクリュー22の頭部はハウジング30のアジャスタスクリュー取付部36を貫通して外部に露出されている。アジャスタスクリュー22の頭部を回転させることにより、アジャスタスクリュー22を回転させることができる。アジャスタスクリュー22が回転すると、ホルダ21の上部を前後方向に移動させることができる。
光源ユニット10の搭載後、出荷前や車検時などにアジャスタスクリュー22を操作して光源ユニット10の光軸の方向を調整することができる。
【0016】
エイミングアクチュエータ23は、モータ24とエイミングスクリュー25を有している。エイミングスクリュー25はホルダ21の下部にねじ込まれている。モータ24はハウジング30のモータ取付部37に取り付けられている。モータ24が作動するとエイミングスクリュー25が回転し、ホルダ21の下部を前後方向に移動させる。
車両の走行時に、車両の重心が前後方向に移動するなどして光源ユニット10の光軸を調整する必要がある場合には、エイミングアクチュエータ23を動作させて光源ユニット10の光軸を調整する。
エイミングアクチュエータ23は、灯室内に配置される電子装置の例である。
【0017】
図2は、ハウジング30を前方から見た正面図である。図2に示したように、ハウジング30は、アウタレンズ取付部31と、電力ケーブル挿通部33と、車体取付部35と、アジャスタスクリュー取付部36と、モータ取付部37と、支持軸部取付部38と、を有している。
【0018】
アウタレンズ取付部31は、ハウジング30の前縁に設けられている。アウタレンズ取付部31には、前方に開口する取付溝32が設けられている。アウタレンズ1の後縁がこの取付溝32に挿入された状態で、アウタレンズ1がハウジング30に固定される。
【0019】
電力ケーブル挿通部33は、電力ケーブル14が挿通される挿通穴34を有する。電力ケーブル挿通部33は、灯室内に配置される電子装置から延びる電線を外部に挿通させるための貫通孔を形成する孔形成部の一例である。
車体取付部35は、ハウジング30を車体に取り付ける部分である。
アジャスタスクリュー取付部36は、アジャスタスクリュー22をハウジング30へ取り付ける部分である。アジャスタスクリュー取付部36は、内部部材を支持する内部支持部の例である。
モータ取付部37は、モータ24をハウジング30へ取り付ける部分である。モータ取付部37は、内部部材を支持する内部支持部の例である。
支持軸部取付部38は、支持軸部を取り付ける部分である。支持軸部取付部38は、内部部材を支持する内部支持部の例である。
【0020】
本実施形態におけるハウジング30は、第一の樹脂で構成された第一部と、第一の樹脂よりも曲げ弾性率が低い第二の樹脂で構成された第二部とを含む。
【0021】
第一部の少なくとも一部は、アウタレンズ取付部31、電力ケーブル挿通部33、車体取付部35、アジャスタスクリュー取付部36、モータ取付部37、支持軸部取付部38のうちの少なくとも一つの少なくとも一部をなしていることが好ましい。アウタレンズ取付部31、電力ケーブル挿通部33、車体取付部35、アジャスタスクリュー取付部36、モータ取付部37、支持軸部取付部38は、ハウジング30の中でも強度が要求される部分であるため、第二部よりも曲げ弾性率が高い第一部で形成されていることが好ましい。
【0022】
第一部の少なくとも一部は、アウタレンズ取付部31、電力ケーブル挿通部33、車体取付部35、アジャスタスクリュー取付部36、モータ取付部37、支持軸部取付部38のうちの少なくとも2以上の少なくとも一部をなしていることが好ましい。また、第二部は、第一部のなす2以上の部位の間の領域を埋める部位の少なくとも一部をなしていることが好ましい。
【0023】
第一部は、その断面形状が円弧状のハーフパイプ状であり、トラス状に延びている部分を含むことが好ましい。
例えば、図2に破線で示すように、アウタレンズ取付部31、電力ケーブル挿通部33、車体取付部35、アジャスタスクリュー取付部36、モータ取付部37、支持軸部取付部38のうちの少なくとも2つの間を接続する部分が、トラス状に延びる第一部41である。第一部41の断面形状は、円弧状であることが好ましい。
【0024】
第二部42は、トラス状に延びる第一部41の間の領域に、曲面として形成されていることが好ましい。第二部42の厚さは、第一部41の厚さよりも薄くてもよい。第二部42は、ハウジング30を部分的に構成している複数の第一部の相互の隙間の領域を埋めるように設けられていることが好ましい。また、本実施形態においては、図1に示したように第二部42はハウジング30の全ての内面を構成する層として存在している。第一部41は、このハウジング30の内側の層として設けられた第二部42の外側に部分的に設けられている。
【0025】
本実施形態におけるハウジング30は、第一の樹脂と第二の樹脂を含む二色成形により製造することができる。例えば、ハウジング30の内側の層である第二部42を先に成形し、その後に第一部41を成形する。あるいは、第一部41を先に形成し、その後に第二部42を成形してもよい。
【0026】
第一の樹脂および第二の樹脂は、熱可塑性樹脂を含む。第一の樹脂に含まれる熱可塑性樹脂の曲げ弾性率は、第二の樹脂に含まれる熱可塑性樹脂の曲げ弾性率よりも高い。
熱可塑性樹脂として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン等を用いることができる。
【0027】
ここで、曲げ弾性率とは、JIS K7171に規定する曲げ弾性率である。曲げ弾性率は、例えば、以下のように測定することができる。
測定したい第一部41や第二部42の一部を切り取り、幅b=10mm、高さh=4mmの試験片を用意する。この試験片を距離L=6.4cmの支点間に渡し、25℃の環境で、圧子により試験片の中央部を試験速度=5mm/minで押圧したときの荷重Pおよびたわみwを測定し、応力σおよびひずみεを算出する。
ここで、σ=3PL/2bhであり、ε=6hw/Lである。
ひずみε=0.05%となるたわみwのときに測定器にかかっている荷重Pから応力σ=3PL/2bhを算出し、ひずみε=0.25%となるたわみwのときに測定器にかかっている荷重Pから応力σ=3PL/2bhを算出する。
曲げ弾性率Eは、得られた値から以下のように算出することができる。
E=(σ-σ)/(ε-ε
【0028】
第一の樹脂の曲げ弾性率を第二の樹脂よりも曲げ弾性率を高くする方法として、例えば、以下の方法がある。
【0029】
(1)第一の樹脂の結晶化度を第二の樹脂の結晶化度よりも高くする。例えば、第一部の成形時の金型温度を第二部の成形時の金型温度よりも高くすることで、第一の樹脂の結晶化度を第二の樹脂の結晶化度よりも高くすることができる。例えば、ハウジング30を二色成形により製造する場合、第一の樹脂により第一部を製造するときの金型の温度T1を高くしておき、その後、第二の樹脂により第二部を製造するときの金型の温度をT1よりも低い温度T2にすることにより、第一の樹脂の結晶化度を第二の樹脂の結晶化度よりも高くすることができる。
【0030】
(2)第一の樹脂に強化材を添加する。例えば、タルクおよび/または強化繊維を第一の樹脂に添加する。
【0031】
(3)第一の樹脂に、新品の素材だけを使用して製造されるバージン材を用いるとともに、第二の樹脂にリサイクル材を用いる。
ここで、「リサイクル材」とは、例えば、廃プラスチック製品を粉砕、溶融した材料である。一般に、廃プラスチック製品を粉砕、溶融して再利用をするリサイクル材の場合、バージン材と比較して、曲げ弾性率などの強度が低下する傾向がある。
【0032】
なお、リサイクル材には、熱可塑性樹脂に加えて、セルロースナノファイバー、木粉等の植物由来の材料を添加してもよい。
【0033】
本実施形態では、ハウジング30の中でも強度が要求される部分が第一の樹脂により形成されることで、強度が低い第二の樹脂を用いた場合であっても、ハウジング30の強度を確保することができる。
【0034】
なお、車両用灯具として車両用前照灯を説明したが、本発明はこれに限られない。車両用灯具として、リアコンビネーションランプ、ターンシグナルランプ、フォグランプなどに本発明を適用することができる。
【0035】
また、エイミング機構を有する車両用灯具を説明したが、エイミング機構を有さない車両用灯具にも本発明を適用できる。また、機械的なエイミング機構を説明したが、マイクロLEDを多数搭載し、LEDの点消灯を制御することで電子的にエイミング機能を奏するような車両用前照灯にも本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0036】
1 アウタレンズ
10 光源ユニット
11 光源
12 リフレクタ
13 インナレンズ
14 電力ケーブル
15 光源台
20 エイミング機構
21 ホルダ
22 アジャスタスクリュー
23 エイミングアクチュエータ
24 モータ
25 エイミングスクリュー
30 ハウジング(ランプボディ)
31 アウタレンズ取付部
32 取付溝
33 電力ケーブル挿通部
35 車体取付部
36 アジャスタスクリュー取付部
37 モータ取付部
38 支持軸部取付部
41 第一部
42 第二部
図1
図2