(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033886
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】電動車両用冷却装置
(51)【国際特許分類】
B60K 11/04 20060101AFI20240306BHJP
B60L 15/00 20060101ALI20240306BHJP
B60K 1/00 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
B60K11/04 H
B60L15/00 Z
B60K1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137787
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】521537852
【氏名又は名称】ダイムラー トラック エージー
(74)【代理人】
【識別番号】100187322
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 直輝
(72)【発明者】
【氏名】阿久津 浩一
【テーマコード(参考)】
3D038
3D235
5H125
【Fターム(参考)】
3D038AA10
3D038AB01
3D235AA01
3D235BB25
3D235BB45
3D235CC12
3D235CC13
3D235DD19
3D235FF43
3D235HH02
3D235HH05
3D235HH31
5H125AA01
5H125FF22
5H125FF23
(57)【要約】
【課題】eコンポーネントの信頼性を確保することができる電動車両用冷却装置を提供する。
【解決手段】この電動車両用冷却装置1は、電動車両の動力源となる電動駆動部Eを冷却するためのものであって、冷媒循環回路10と、ラジエータ20と、バイパス経路Rと、第1オリフィス60と、第2オリフィス100と、開閉部90と、第1オリフィス60及び第2オリフィス100のいずれの径よりも細い径である接続管110と、検出手段150と、検出手段150からの検出結果に応じ開閉部90を制御する制御部160と、を含み、制御部160は、検出手段150が冷媒ありと検出したとき、開閉部90を開状態とすることにより、冷媒循環回路10と第2オリフィス100とを連結させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動車両の動力源となる電動駆動部を冷却するための電動車両用冷却装置であって、
前記電動駆動部と熱交換する冷媒が循環する冷媒循環回路と、
前記冷媒を冷却するラジエータと、
前記冷媒循環回路に設けられ、前記電動駆動部をバイパスして前記冷媒を前記ラジエータへ戻すバイパス経路と、
前記バイパス経路に設けられる第1オリフィスと、
前記バイパス経路に設けられ、前記第1オリフィスと並行に設けられた第2オリフィスと、
前記第2オリフィスの冷媒入口側を開閉する開閉部と、
前記開閉部下流側において前記第1オリフィスと前記第2オリフィスとを接続し、前記第1オリフィス及び前記第2オリフィスのいずれの径よりも細い径である接続管と、
前記第2オリフィスの冷媒出口側に設けられ、前記冷媒の有無を検出する検出手段と、
前記検出手段からの検出結果に応じ前記開閉部を制御する制御部と、
を含み、
前記制御部は、前記検出手段が冷媒ありと検出したとき、前記開閉部を開状態とすることにより、前記冷媒循環回路と前記第2オリフィスとを連結させることを特徴とする、電動車両用冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両用冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境負荷の観点から、トラックなどの商用車の分野においても電動車両(例えば、電気自動車)の開発が行われている。このような、電気自動車等のモータを駆動源とする車両(電動車両)において、モータと複数のギアからなる減速機構とを備え、駆動輪が連結するディファレンシャルギアに、モータの駆動力を伝達することができる車両用の駆動ユニットが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2014/148410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような電気自動車の駆動ユニットに搭載されるモータを、より効率的に冷却する手段として、オイル等の冷媒を循環させる冷却回路により、当該モータを冷却する液冷式のモータ冷却装置を挙げることができる。ただし、これらの液冷式モータやインバータ等のeコンポーネントと呼ばれる部材については、内部の熱交換用フィン等の冷却構造の耐久性確保の観点より、内部を通過させることができる冷媒の流量に制限がある。
【0005】
そのため、冷却回路にeコンポーネントをバイパスするバイパス経路を設け、所定量以上の冷媒がeコンポーネントに流れないように制限するとともに冷媒をラジエータ側へ戻し、ラジエータでの冷却を高める構成が用いられることがある。
【0006】
しかし仮に、このバイパス経路に塵などの異物が混入した場合、eコンポーネントに所定以上の冷却水が流れ込んでしまい、eコンポーネントの耐久性を低下させてしまう虞がある。
【0007】
そこで、本願の解決すべき課題は、eコンポーネントの信頼性を確保することができる電動車両用冷却装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は前述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様又は適用例として実現することができる。
【0009】
本適用例に係る電動車両用冷却装置は、電動車両の動力源となる電動駆動部を冷却するための電動車両用冷却装置であって、前記電動駆動部と熱交換する冷媒が循環する冷媒循環回路と、前記冷媒を冷却するラジエータと、前記冷媒循環回路に設けられ、前記電動駆動部をバイパスして前記冷媒を前記ラジエータへ戻すバイパス経路と、前記バイパス経路に設けられる第1オリフィスと、前記バイパス経路に設けられ、前記第1オリフィスと並行に設けられた第2オリフィスと、前記第2オリフィスの冷媒入口側を開閉する開閉部と、前記開閉部下流側において前記第1オリフィスと前記第2オリフィスとを接続し、前記第1オリフィス及び前記第2オリフィスのいずれの径よりも細い径である接続管と、前記第2オリフィスの冷媒出口側に設けられ、前記冷媒の有無を検出する検出手段と、前記検出手段からの検出結果に応じ前記開閉部を制御する制御部と、を含み、前記制御部は、前記検出手段が冷媒ありと検出したとき、前記開閉部を開状態とすることにより、前記冷媒循環回路と前記第2オリフィスとを連結させることを特徴とするものである。
【0010】
本適用例によれば、第1オリフィスにおける内部に異物が詰まったとしても、冷媒循環回路を流れる冷媒を、第1オリフィスにおける冷媒出口からラジエータに戻すことに代えて、第1オリフィスから接続管を経由して第2オリフィスにおける冷媒出口からラジエータに戻すことができる。さらに、第2オリフィスにおける冷媒出口での冷媒の流れが検出手段により検出されると、この検出結果が検出手段から制御部に伝達され、制御部からの指令により開閉部が第2オリフィスにおける冷媒入口側を開状態にするため、冷媒循環回路を流れる冷媒を、第2オリフィスにおける冷媒入口及び冷媒出口を介してラジエータに戻すこともできる。
【0011】
さらに、本適用例によれば、接続管の径が第1オリフィスの径及び第2オリフィスの径よりも細くなっており、第1オリフィスの内部及び第2オリフィスの内部に比較して接続管の内部には異物が入りにくくなっているため、第1オリフィスから接続管を経由した第2オリフィスへの冷媒流路を安定して確保することができる。
【0012】
このように、本適用例によれば、第1オリフィスにおける内部に異物が詰まったとしても、冷媒を電動駆動部に供給することなくラジエータに戻す流路を確保することができるため、電動駆動部に供給される冷媒の流量を継続して制限することができる。
【0013】
以上により、本適用例に係る電動車両用冷却装置によれば、eコンポーネント(電動駆動部)の信頼性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る電動車両用冷却装置における一実施形態の正常運転時を示す全体構成図である。
【
図2】本発明に係る電動車両用冷却装置における一実施形態の異常発生直後を示す全体構成図である。
【
図3】本発明に係る電動車両用冷却装置における一実施形態の異常対応時を示す全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(電動車両用冷却装置の構成)
本発明に係る電動車両用冷却装置の一実施形態について説明する。
図1~
図3に示すように、電動車両用冷却装置1は、電動車両の動力源となる電動駆動部E(eコンポーネント)を冷媒Fにより冷却するものである。電動駆動部Eは、モータ及びインバータを備えている。冷媒Fとしては、例えば、冷却オイル及び冷却水のうちの少なくとも1つを使用することができる。電動車両としては、例えば、電気自動車、ハイブリッド自動車などが挙げられる。なお、図面における各部の寸法は、実際の寸法ではなく簡略化して示している。特にバイパス経路Rの構成は、発明を理解しやすくするために拡大して示している。
【0016】
電動車両用冷却装置1は、冷媒循環回路10と、ラジエータ20と、電動ファン30と、電動ポンプ40と、第1バイパス入口部50と、第1オリフィス60と、第2バイパス入口部70と、ばね80と、開閉弁90と、第2オリフィス100と、接続管110と、バイパス出口部120と、蓋130と、保持部材140と、スイッチ150と、制御部160とを備えている。
【0017】
バイパス経路Rは、第1バイパス入口部50と、第1オリフィス60と、第2バイパス入口部70と、ばね80と、開閉弁90と、第2オリフィス100と、接続管110と、バイパス出口部120と、蓋130と、保持部材140と、スイッチ150とにより構成されている。バイパス経路Rは、冷媒循環回路10に設けられ、電動駆動部Eをバイパスして冷媒Fをラジエータ20へ戻すものである。バイパス経路Rは、過剰な量の冷媒Fが電動駆動部Eに供給されることを抑制するためのものである。
【0018】
冷媒循環回路10は、電動駆動部Eと熱交換する(具体的には、電動駆動部Eを冷却する)ための冷媒Fが循環する回路である。
【0019】
ラジエータ20は、冷媒循環回路10を流れる冷媒Fを外気により冷却するものである。冷媒循環回路10を流れる冷媒Fは、ラジエータ20の内部に流入して外気により冷却される。
【0020】
電動ファン30は、ラジエータ20に取り付けられており、ラジエータ20の内部に外気を取り入れるものである。
【0021】
電動ポンプ40は、ラジエータ20から電動駆動部Eへ冷媒Fを圧送するものであり、冷媒循環回路10を流れる冷媒Fの流量を制御することも可能である。
【0022】
第1バイパス入口部50は、概略直方体の流路構成部材であり、冷媒循環回路10に接合されている。第1バイパス入口部50と冷媒循環回路10との接合面C1は、例えば接合面C1に複数の細孔が形成されていることにより、第1バイパス入口部50と冷媒循環回路10との内部空間同士を連通している。これにより、冷媒循環回路10の内部を流れている冷媒Fの一部は、接合面C1を介して第1バイパス入口部50の内部に流入可能になっている。接合面C1は、冷媒循環回路10における冷媒Fの流れ方向において、電動ポンプ40と電動駆動部Eとの間に設けられている。
【0023】
第1オリフィス60は、バイパス経路Rに設けられ、第1バイパス入口部50とバイパス出口部120とを連結するように設けられている。第1オリフィス60の内部における冷媒入口e1は、第1バイパス入口部50の内部と連通していることにより、冷媒循環回路10の内部から第1バイパス入口部50の内部に流入した冷媒Fが流入するようになっている。また、第1オリフィス60の冷媒入口e1は、第1バイパス入口部50との接続部分から冷媒Fの流れ方向下流に向けて徐々に流路断面積が小さくなるようにテーパ状に形成されたテーパ領域を有している。第1オリフィス60の内部における冷媒出口о1は、バイパス出口部120の内部と連通していることにより、冷媒入口e1から流入した冷媒Fをバイパス出口部120の内部に流出するようになっている。
【0024】
第2バイパス入口部70は、概略直方体の流路構成部材であり、第1バイパス入口部50に隣接して冷媒循環回路10に接合されている。第2バイパス入口部70と冷媒循環回路10との接合面C2は、
図3に示す貫通孔Hが接合面C2に形成されていることにより、第2バイパス入口部70と冷媒循環回路10との内部空間同士を連通している。これにより、冷媒循環回路10の内部を流れている冷媒Fの一部は、接合面C2の貫通孔Hを介して第2バイパス入口部70の内部に流入可能になっている。接合面C2は、冷媒循環回路10における冷媒Fの流れ方向において、電動ポンプ40と接合面C1との間に設けられている。
【0025】
ばね80は、第2バイパス入口部70の内部に設けられている。ばね80の一端は、第2バイパス入口部70の内壁に取り付けられている。ばね80の他端は、開閉弁90に取り付けられている。
【0026】
開閉弁90は、接合面C2における貫通孔H(第2オリフィス100の冷媒入口e2側)を開閉するための電磁弁である。開閉弁90は、制御部160からの制御信号S2により、ばね80の伸縮力を利用して開閉動作を実行するように構成されている。
【0027】
第2オリフィス100は、バイパス経路Rにおいて第1オリフィス60と並行に設けられ、第2バイパス入口部70とバイパス出口部120とを連結するように設けられている。第2オリフィス100の内部における冷媒入口e2は、第2バイパス入口部70の内部と連通していることにより、冷媒循環回路10の内部から第2バイパス入口部70の内部に流入した冷媒Fが流入するようになっている。第2オリフィス70の内部における冷媒出口о2は、バイパス出口部120の内部と連通していることにより、冷媒入口e2から流入した冷媒Fをバイパス出口部120の内部に流出するようになっている。
【0028】
接続管110は、冷媒Fの流れ方向における開閉弁90の下流側において、第1オリフィス60と第2オリフィス100とを連結(接続)している。接続管110の内部は、第1オリフィス60の内部と第2オリフィス100の内部とそれぞれ連通している。特に接続管110は、第1オリフィス60の冷媒入口e1におけるテーパ領域内にて接続されている。これにより、第1オリフィス60の冷媒入口e1において、接続管110の接続部分より上流側が異物により塞がれるのを抑制することができる。また、接続管110の内径は、第1オリフィス60の内径(テーパ領域下流端の内径)と第2オリフィス100の内径とのいずれよりも細くなっている。
図2及び
図3に示すように、第1オリフィス60の内部に異物Mが混入するとテーパ領域の下流端に詰まり、異物Mの上流側に滞留した冷媒Fは、第1オリフィス60の内部から、接続管110の内部を介して、第2オリフィス100の内部に流入するようになっている。
【0029】
接続管110は、
図1に示す正常運転時における冷媒Fが第1オリフィス60の内部から接続管110の内部に流入しないように、配置されている。具体的には、接続管110は、第1オリフィス60の長手方向に直交する仮想平面に対し、冷媒出口о1から冷媒入口e1に向かう方向に傾斜するように設けられている。つまり、接続管110は、第1オリフィス60の冷媒Fの流れ方向に対して鈍角をなして接続されている。さらに好ましくは、接続管110は、電動車両用冷却装置1が電動駆動部Eに取り付けられた状態において、水平面に対して上方側に傾斜するように設けられる。
【0030】
バイパス出口部120は、概略直方体の流路構成部材であり、冷媒循環回路10に接合されている。バイパス出口部120と冷媒循環回路10との接合面C3は、例えば接合面C3に複数の細孔が形成されていることにより、バイパス出口部120と冷媒循環回路10との内部空間同士を連通している。これにより、冷媒出口о1及び冷媒出口о2からバイパス出口部120の内部に流入した冷媒Fは、接合面C3を介して冷媒循環回路10の内部に流出可能になっている。接合面C3は、冷媒循環回路10における冷媒Fの流れ方向において、電動駆動部Eとラジエータ20との間に設けられている。
【0031】
蓋130は、バイパス出口部120の内部において、第2オリフィス100の冷媒出口о2を塞ぐように配置されている。蓋130は、第2オリフィス100の冷媒出口о2から流出する冷媒Fにより押動されるように配置されている。
【0032】
保持部材140は、蓋130を保持するためのものである。保持部材140の一端は蓋130に取り付けられており、保持部材140の他端はバイパス出口部120の内壁に取り付けられている。また、保持部材140の一部分(支持点)は、バイパス出口部120の内壁により支持されており、保持部材140は、この支持点を軸として回動可能に構成されている。
【0033】
スイッチ150は、第2オリフィス100の冷媒出口о2側に設けられ、冷媒出口о2における冷媒Fの流れの有無を検出する検出手段である。スイッチ150は、
図1に示す正常運転時にはOFFに設定されており、
図2に示す異常発生直後において保持部材140の回動により押されると、ONになるように構成されている。スイッチ150は、ONにされると、
図2に示すように、その旨の検出信号S1を制御部160に送信するように構成されている。
【0034】
制御部160は、スイッチ150からの検出結果に応じて開閉弁90を制御するものである。具体的には、制御部160は、
図2に示すように、スイッチ150がONになったことを示す検出信号S1をスイッチ150から受信すると、
図3に示す貫通孔Hを開くための制御信号S2を開閉弁90に送信する。このようにして、制御部160は、スイッチ150が冷媒ありと検出したとき、開閉弁90を開状態にすることにより、冷媒循環回路10の内部と第2オリフィス100の内部とを第2バイパス入口部70の内部を介して連通(連結)させる。制御部160としては、例えば、電動車両に搭載するECUを用いることができる。
【0035】
(電動車両用冷却装置の動作)
次に、
図1~
図3に示す電動車両用冷却装置1の動作について説明する。
図1に示す正常運転時においては、冷媒Fは、冷媒循環回路10の内部において循環する。循環している冷媒Fは、ラジエータ20の内部においては、電動ファン30により取り込まれた外気と熱交換することにより冷却され、電動駆動部Eの内部においては、電動駆動部Eを構成する部品であるインバータ及びモータを冷却する。
【0036】
冷媒循環回路10の内部を流れる冷媒Fの一部は、接合面C1を介して冷媒循環回路10の内部に流入し、第1バイパス入口部50の内部、第1オリフィス60の冷媒入口e1、冷媒出口о1、及びバイパス出口部120の内部を経由して、接合面C3から冷媒循環回路10の内部に戻される。
【0037】
しかし、
図2に示す異常発生直後、すなわち、第1オリフィス60の内部に異物Mが詰まった場合には、第1オリフィス60の冷媒入口e1に流入した冷媒Fは、第1オリフィス60の上流側内部において滞留し、滞留した冷媒Fは、第1オリフィス60の内部から接続管110の内部を経由して第2オリフィス100の内部に流入する。さらに、第2オリフィス100の内部に流入した冷媒Fは、第2オリフィス100の冷媒出口о2から、蓋130を押動しつつバイパス出口部120の内部に流入する。また、バイパス出口部120の内部に流入した冷媒Fは、接合面C3を介して冷媒循環回路10の内部に戻される。
【0038】
ここで、蓋130が押動されたことにより、蓋130を保持している保持部材140が回動し、回動した保持部材140によりスイッチ150がONにされる。すると、スイッチ150から検出信号S1が制御部160に送信され、制御部160が制御信号S2を開閉弁90に送信する。
【0039】
すると、
図3に示すように、開閉弁90は、ばね80の伸縮力を利用して貫通孔Hを開状態にする。これにより、ラジエータ20から排出された冷媒Fの一部は、接合面C2の貫通孔Hから第2バイパス入口部70の内部に流入し、第2オリフィス100の冷媒入口e2から冷媒出口о2を経由してバイパス出口部120の内部に流入するようになる。バイパス出口部120の内部に流入した冷媒Fは、接合面C3を介して冷媒循環回路10の内部に戻される。
【0040】
(電動車両用冷却装置の効果)
本実施形態に係る電動車両用冷却装置1によれば、第1オリフィス60における内部に異物Mが詰まったとしても、冷媒循環回路10を流れる冷媒Fを、第1オリフィス60における冷媒出口о1から冷媒循環回路10を介してラジエータ20に戻すことに代えて、第1オリフィス60から接続管110を経由して、第2オリフィス100における冷媒出口о2から冷媒循環回路10を介してラジエータ20に戻すことができる。すなわち、第1オリフィス60における内部に異物Mが詰まったとしても、冷媒Fのバイパス経路(つまり、冷媒Fを電動駆動部Eに供給することなく循環させる経路)を確保することができる。
【0041】
また、第2オリフィス100における冷媒出口о2での冷媒Fの流れがスイッチ150(検出手段)により検出されると、この検出結果がスイッチ150から制御部160に検出信号S1として伝達され、制御部160からの制御信号S2により開閉弁90が貫通孔Hを開状態にする。これにより、冷媒循環回路10を流れる冷媒Fを、第2オリフィス100における冷媒入口e2及び冷媒出口о2を介してラジエータ20に戻すこともできる。つまり、第1オリフィス60における内部に異物Mが詰まったとしても、冷媒Fのバイパス経路をさらに確実に確保することができる。
【0042】
さらに、本実施形態に係る電動車両用冷却装置1によれば、接続管110の内径が第1オリフィス60の内径及び第2オリフィス100の内径よりも細くなっており、第1オリフィス60の内部及び第2オリフィス100の内部に比較して接続管110の内部には異物が入りにくくなっているため、第1オリフィス60から接続管110を経由した第2オリフィス100への冷媒流路を安定して確保することができる。
【0043】
よって、本実施形態に係る電動車両用冷却装置1によれば、電動駆動部E(eコンポーネント)の信頼性を確保することができる。ここでの信頼性とは、電動駆動部Eに過剰な量の冷媒Fを供給することを抑制することにより、電動駆動部Eにおける異常の発生を防止し、さらには、電動駆動部Eを継続的かつ安定的に動作させることをいう。
【0044】
(その他)
なお、本実施形態における検出信号S1は、本実施形態に係る電動車両用冷却装置1を搭載する電動車両の警告部(図示せず)に送信されてもよい。この場合、この警告部は、赤色等に点灯したり、警報を発したりすることにより、この電動車両のドライバーに異常を通知する。これにより、このドライバーは、近隣の整備工場に立ち寄り、第1オリフィス60の内部に詰まった異物Mを取り除いてもらうことができる。また、この整備工場においては、電動駆動部Eを新品に交換する必要はなく、電動車両用冷却装置1を新品に交換するだけで上記異常に対応することができるため、低コストの整備で上記異常を解消することができる。
【0045】
以上で本発明に係る電動車両用冷却装置1の実施形態についての説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。上記実施形態では、第1オリフィス60の冷媒入口e1がテーパ領域を有しているが、テーパ状でない他の形状で第1オリフィス60の冷媒入口e1の流路断面積を小さくしてもよい。例えば、他の形状としては段階的に内径を小さくした管状としてもよい。
【0046】
これまで説明してきた実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0047】
1 電動車両用冷却装置
10 冷媒循環回路
20 ラジエータ
30 電動ファン
40 電動ポンプ
50 第1バイパス入口部
60 第1オリフィス
70 第2バイパス入口部
80 ばね
90 開閉弁
100 第2オリフィス
110 接続管
120 バイパス出口部
130 蓋
140 保持部材
150 スイッチ(検出手段)
160 制御部
C1~C3 接合面
e1、e2 冷媒入口
F 冷媒
H 貫通孔
M 異物
о1、о2 冷媒出口
R バイパス経路