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  • 特開-冷凍サイクル装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033890
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
   F24F 1/56 20110101AFI20240306BHJP
   F24F 1/36 20110101ALI20240306BHJP
   F24F 1/16 20110101ALI20240306BHJP
   F28F 1/32 20060101ALI20240306BHJP
   F28F 17/00 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
F24F1/56
F24F1/36
F24F1/16
F28F1/32 Y
F28F17/00 501A
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137797
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】316011466
【氏名又は名称】日立ジョンソンコントロールズ空調株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000660
【氏名又は名称】Knowledge Partners弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小栗 誠
(72)【発明者】
【氏名】粟野 真和
(72)【発明者】
【氏名】島田 幸恵
(72)【発明者】
【氏名】陳 懐瑞
【テーマコード(参考)】
3L054
【Fターム(参考)】
3L054BA01
3L054BA05
3L054BB01
3L054BB02
3L054BB03
(57)【要約】
【課題】異種金属接触腐食によるフィンやアルミパイプの腐食を防ぎつつ、排水性が低下するのを防ぐことを目的とする。
【解決手段】冷凍サイクル装置であって、室外機の底部に排水孔を有し、外周に立上部を有する、導電性の底板と、立上部から排水孔に至る排水経路を覆う絶縁性のカバー部材と、底板の上方に配置される複数のフィンとを備え、立上部は、傾斜面を有し、フィンの下方端点が傾斜面上でカバー部材に接する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
室外機の底部に排水孔を有し、外周に立上部を有する、導電性の底板と、
前記立上部から前記排水孔に至る排水経路を覆う絶縁性のカバー部材と、
前記底板の上方に配置される複数のフィンと
を備え、
前記立上部は、傾斜面を有し、
前記フィンの下方端点が前記傾斜面上で前記カバー部材に接する、冷凍サイクル装置。
【請求項2】
前記フィンは、アルミニウムを含み、
前記底板は、アルミニウムに比べてイオン化傾向の小さい金属を含む、請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項3】
前記カバー部材は、前記立上部の上端部を覆う、請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項4】
前記カバー部材は、前記立上部の前記上端部から外側に延びる、請求項3に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項5】
前記カバー部材は、前記排水孔に対応しない位置に配置される、請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項6】
前記カバー部材は、熱交換器の伝熱管露出部に対応する位置に配置される、請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項7】
前記カバー部材と前記底板の成形構造の間に、0.5mm以上2mm以下の隙間が形成される、請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項8】
前記カバー部材は、熱交換器のフィンの前記下方端点と前記底板で挟まれることで固定される、請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項9】
前記カバー部材には、ファンの架台に対応した開口部が設けられ、
前記開口部に前記架台が貫通した状態で固定される、請求項8に記載の冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アルミニウムが用いられた熱交換器が知られているが、室外機の鉄製の底板との間で異種金属接触腐食(ガルバニック腐食)を起こし、熱交換器のフィンが溶け出すという問題があった。さらに、塩害環境下においては、経年劣化により腐食が進行すると、フィンに加えて、アルミパイプの腐食も懸念される。これに対し、特許文献1には、樹脂成形部品を用いて熱交換器を持ち上げることで、フィンとCベース上面の距離を確保し、異種金属接触腐食を防ぐ技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5401685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来技術のように、フィンとベースの間を空けて配置した場合には、例えば、暖房時の除霜運転により生じた水がフィンの下端に溜まり、排水性が悪いという問題があった。
【0005】
本発明は、このような問題点に鑑みなされたもので、異種金属接触腐食によるフィンやアルミパイプの腐食を防ぎつつ、排水性が低下するのを防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、冷凍サイクル装置であって、室外機の底部に排水孔を有し、外周に立上部を有する、導電性の底板と、前記立上部から前記排水孔に至る排水経路を覆う絶縁性のカバー部材と、前記底板の上方に配置される複数のフィンとを備え、前記立上部は、傾斜面を有し、前記フィンの下方端点が前記傾斜面上で前記カバー部材に接する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、異種金属接触腐食によるフィンやアルミパイプの腐食を防ぎつつ、排水性が低下するのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】空気調和機の外観構成図である。
図2】冷媒回路を示す図である。
図3】室外熱交換器、カバー部材及び底板を示す図である。
図4】室外熱交換器、カバー部材及び底板を上から見た図である。
図5】A-A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、実施形態に係る空気調和機1を示す外観構成図である。空気調和機1は、冷凍サイクル(ヒートポンプサイクル)で冷媒を循環させることによって、空調を行う装置であり、冷凍サイクル装置の一例である。図1に示すように、空気調和機1は、室内(被空調空間)に設置される室内機10と、屋外(室外)に設置される室外機20と、ユーザによって操作されるリモコン30と、を備えている。
【0010】
室内機10は、リモコン通信部11を備えている。リモコン通信部11は、赤外線通信等によって、リモコン30との間で所定の信号を送受信する。図1では省略しているが、室内機10と室外機20とは、冷媒配管を介して接続されるとともに、通信線を介して接続されている。
【0011】
図2は、実施形態に係る空気調和機1の冷媒回路Qを示す図である。図2に示す実線矢印は、暖房運転時における冷媒の流れを示している。また、図2に示す破線矢印は、冷房運転時における冷媒の流れを示している。
【0012】
室内機10は、リモコン通信部11のほかに、室内熱交換器12と、室内ファン14と、を備えている。室内熱交換器12において、その伝熱管を通流する冷媒と、室内ファン14から送り込まれる室内空気と、の間で熱交換が行われる。室内熱交換器12は、後述の四方弁25の切り替えにより凝縮器または蒸発器として動作する。室内ファン14は、室内熱交換器12の付近に設置されている。室内ファン14は、室内ファンモータ14aの駆動によって、室内熱交換器12に室内空気を送り込む。
【0013】
室外機20は、圧縮機21と、室外熱交換器22と、室外ファン23と、室外膨張弁24(膨張弁)と、四方弁25と、を備えている。圧縮機21は、圧縮機モータ21aの駆動によって、低温低圧のガス冷媒を圧縮し、高温高圧のガス冷媒として吐出する。室外熱交換器22において、その伝熱管を通流する冷媒と、室外ファン23から送り込まれる外気と、の間で熱交換が行われる。室外熱交換器22は、四方弁25の切り替えにより凝縮器または蒸発器として動作する。
【0014】
室外ファン23は、図1に示すように、室外熱交換器22の付近に設置されている。室外ファン23は、室外ファンモータ23aの駆動によって、室外熱交換器22に外気を送り込む。室外膨張弁24は、「凝縮器」(室外熱交換器22及び室内熱交換器12の一方)で凝縮した冷媒を減圧する機能を有している。なお、室外膨張弁24において減圧された冷媒は、「蒸発器」(室外熱交換器22及び室内熱交換器12の他方)に導かれる。
【0015】
四方弁25は、空気調和機1の運転モードに応じて、冷媒の流路を切り替える弁である。四方弁25の切り替えにより、冷房運転時には、破線矢印で示すように、圧縮機21、室外熱交換器22(凝縮器)、室外膨張弁24、及び室内熱交換器12(蒸発器)の順に冷媒が循環する冷凍サイクルとなる。また、四方弁25の切り替えにより、暖房運転時には、実線矢印で示すように、圧縮機21、室内熱交換器12(凝縮器)、室外膨張弁24、及び室外熱交換器22(蒸発器)の順に冷媒が循環する冷凍サイクルとなる。すなわち、圧縮機21、「凝縮器」、室外膨張弁24、及び「蒸発器」を順次に介して、冷凍サイクルで冷媒が循環する冷媒回路Qにおいて、前記した「凝縮器」及び「蒸発器」の一方は室外熱交換器22であり、他方は室内熱交換器12である。
【0016】
図3の左側は、室外熱交換器22、カバー部材27及び底板26の分解斜視図である。図3の右側は、室外熱交換器22、カバー部材27及び底板26が組み立てられた状態を示す構成図である。図3において、室外機20の横方向をX軸、奥行方向をY軸、高さ方向をZ方向とする。図4は、組み立てられた状態の、室外熱交換器22、カバー部材27及び底板26を上から見た図である。
【0017】
室外熱交換器22は、アルミニウムで形成された伝熱管221と、アルミニウムで形成されたフィン222とを有している。底板26は、室外機20の底に設けられた、鉄製の板状部材である。底板26は、底部261と、底部261の端において高さ方向に立ち上がる立上部(フランジ)262とを有している。立上部262は、室外熱交換器22に対応して室外熱交換器22の側面から裏面に渡り、L字状に形成されている。底部261には、複数の排水孔263a~263cが設けられている。排水孔263a~263cは、例えば、暖房運転時の除霜運転により生じた水を室外機20の外に排出する。底板26のうち、室外熱交換器22に対応する位置には、排水孔263a~263cに水が流れるように、わずかに傾斜する排水経路が形成されている。カバー部材27は、例えば樹脂など、絶縁性の部材で形成されている。カバー部材27は、排水経路を覆うように形成されている。室外熱交換器22は、カバー部材27を介して、底板26に接続する。
【0018】
カバー部材27には、排水孔263a~263cそれぞれに対応する位置に、開口部271a~271cが設けられている。このように、カバー部材27は、排水孔263a~263cに対応しない位置に配置されるように成形されている。また、伝熱管221のうち端に設けられた伝熱管露出部221aは、フィン222から露出している。この部分の下側にもカバー部材27が配置される。カバー部材27にはまた、室外ファン23の架台28に対応した開口部272が設けられている。開口部272には、架台28が貫通した状態で固定される。
【0019】
図5は、図4に示すA-A線断面図である。図5に示すように、底板26の外周に立上部262が形成されている。立上部262は、底部261からフィン222の外側まで延びている。さらに、立上部262は、高さ方向に延びる辺から底部261に向かう傾斜面264を有しており、カバー部材27は、この傾斜面264に沿った傾斜面273を有している。そして、フィン222は、その下方端部223が傾斜面264上でカバー部材27の傾斜面273に接するように配置されている。
【0020】
このように、フィン222は、その一端でカバー部材27と接触するので、フィン222に付着した水が表面張力によりフィン222の下方に留まることなく、底板26まで排水される。
【0021】
また、図5に示すように、カバー部材27の端部274は、底板26の立上部262の上端部265を覆い、その外側まで延びている。これにより、立上部262においてサビが発生、成長してカバー部材27の内側、すなわちフィン222側に流れ込むのを防ぐことができる。
【0022】
また、カバー部材27は、底板26と、フィン222の下方端部223がカバー部材27と、その傾斜面273において1点で接触する。したがって、複数のフィン222が配列されたL字状の各位置において、カバー部材27は、底板26の高さ方向において所定の位置に固定される。また、カバー部材27の端部274が立上部262に被さり、室外ファン23の架台28が開口部272を貫通することで、XY方向の位置決めが行われる。このように、カバー部材27は、3次元に固定されるので、ネジ締結や接着剤の塗布を不要とすることができる。また、架台28に対応した領域までカバー部材27が設けられている。このように、カバー部材27は、比較的大きいサイズに形成されている。これにより、カバー部材27の剛性を確保することができる。
【0023】
カバー部材27は、底板26に対して、0.5~2mmの隙間(遊び、ガタ)が生じるように成形されているものとする。これにより、底板26にカバー部材27を取り付ける際の作業性を向上させることができる。
【0024】
室外熱交換器22にアルミニウムが用いられ、底板26に鉄が用いられているため、これらが接触した場合には、異種金属接触腐食が問題となる。これに対し、本実施形態の空気調和機1においては、室外熱交換器22と底板26の間に絶縁性のカバー部材27が設けられている。これにより、アルミニウムと鉄が接触するのを防ぐことができる。したがって、アルミニウムで形成されたフィン222や、伝熱管221の腐食を防ぐことができる。さらに、フィン222は、カバー部材27と接触しているので、排水性が低下するのを防ぐことができる。
【0025】
なお、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、例えばある実施形態の変形例を他の実施形態に適用するなど、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0026】
冷凍サイクル装置は、空気調和機に限定されるものではなく、冷凍機や空冷式チラーであってもよい。
【0027】
また、底板は、鉄製であるものとしたが、底板は、導電性の物質で形成されていればよい。また、底板は、アルミニウムに比べてイオン化傾向の小さい金属であるものとする。このように、アルミニウムに比べてイオン化傾向の小さい金属とアルミニウムが接触する場合に、異種金属接触腐食が生じ得る。
【符号の説明】
【0028】
1 空気調和機
10 室内機
12 室内熱交換器
14 室内ファン
20 室外機
21 圧縮機
22 室外熱交換器
23 室外ファン
24 室外膨張弁
25 四方弁
26 底板
27 カバー部材
28 架台
221 伝熱管
221a 伝熱管露出部
222 フィン
223 下方端部
261 底部
262 立上部
263a~263c 排水孔
264 傾斜面
265 上端部
271a~271c、272 開口部
273 傾斜面
274 端部
図1
図2
図3
図4
図5