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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033895
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】合成繊維用処理剤及び合成繊維
(51)【国際特許分類】
   D06M 13/256 20060101AFI20240306BHJP
   D06M 13/224 20060101ALI20240306BHJP
   D06M 13/325 20060101ALI20240306BHJP
   D06M 13/17 20060101ALI20240306BHJP
   D06M 13/148 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
D06M13/256
D06M13/224
D06M13/325
D06M13/17
D06M13/148
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137811
(22)【出願日】2022-08-31
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】000210654
【氏名又は名称】竹本油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】石川 文義
【テーマコード(参考)】
4L033
【Fターム(参考)】
4L033AA07
4L033AB01
4L033AC09
4L033BA12
4L033BA14
4L033BA21
4L033BA28
4L033BA45
(57)【要約】
【課題】使用時においてローラー上に付着するタールの洗浄性を向上できる合成繊維用処理剤等を提供する。
【解決手段】本発明は、平滑剤(A)と、非イオン性界面活性剤(B)と、分子中にスルホ基を1つ有する有機スルホン酸化合物(C1)、及び分子中にスルホ基を2つ以上有する有機スルホン酸化合物(C2)を含むイオン性界面活性剤(C)と、を含有する合成繊維用処理剤であって、前記有機スルホン酸化合物(C1)、及び前記有機スルホン酸化合物(C2)の質量比が、C1/C2=99/1~80/20であり、ICP発光分析法により前記合成繊維用処理剤の不揮発分から検出されるカリウム含有量が、0.1ppm以上300ppm以下であることを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平滑剤(A)と、非イオン性界面活性剤(B)と、分子中にスルホ基を1つ有する有機スルホン酸化合物(C1)、及び分子中にスルホ基を2つ以上有する有機スルホン酸化合物(C2)を含むイオン性界面活性剤(C)と、を含有する合成繊維用処理剤であって、
前記有機スルホン酸化合物(C1)、及び前記有機スルホン酸化合物(C2)の質量比が、C1/C2=99/1~80/20であり、
ICP発光分析法により前記合成繊維用処理剤の不揮発分から検出されるカリウム含有量が、0.1ppm以上300ppm以下であることを特徴とする合成繊維用処理剤。
【請求項2】
前記平滑剤(A)が、更に下記の完全エステル化合物(A1)を含有する請求項1に記載の合成繊維用処理剤。
完全エステル化合物(A1):多価アルコールと、1価脂肪酸との完全エステル化合物。
【請求項3】
前記平滑剤(A)が、更に含硫黄エステル化合物(A2)を含有する請求項1に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項4】
前記非イオン性界面活性剤(B)が、更に含窒素非イオン性界面活性剤(B1)を含有する請求項1に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項5】
更に、ジオール化合物(D)を含有する請求項1に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項6】
更に、酸化防止剤(E)を含有する請求項1に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤が、付着していることを特徴とする合成繊維。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ローラー上に付着するタールの洗浄性を向上できる合成繊維用処理剤及び該合成繊維用処理剤が付与された合成繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
合成繊維の紡糸延伸工程等において、平滑性、制電性等の向上の観点から、合成繊維の表面に合成繊維用処理剤を付着させる処理が行われることがある。
従来、特許文献1に開示の合成繊維用処理剤が知られている。特許文献1は、有機スルホン酸化合物を含む合成繊維用処理剤について開示する。有機スルホン酸化合物として、スルホン酸基を2つ有する炭化水素基を有するスルホン酸化合物と、スルホン酸基を1つ有するアルケンスルホン酸化合物を使用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6777349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の合成繊維用処理剤において、使用時においてローラー上に付着するタールの洗浄に時間を要するという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記の課題を解決するべく研究した結果、合成繊維用処理剤において、特に分子中にスルホ基を1つ有する有機スルホン酸化合物(C1)と分子中にスルホ基を2つ以上有する有機スルホン酸化合物(C2)を所定の比率で含み、所定のカリウム含有量とした構成が好適であることを見出した。
【0006】
上記課題を解決する各態様を記載する。
態様1の合成繊維用処理剤は、平滑剤(A)と、非イオン性界面活性剤(B)と、分子中にスルホ基を1つ有する有機スルホン酸化合物(C1)、及び分子中にスルホ基を2つ以上有する有機スルホン酸化合物(C2)を含むイオン性界面活性剤(C)と、を含有する合成繊維用処理剤であって、前記有機スルホン酸化合物(C1)、及び前記有機スルホン酸化合物(C2)の質量比が、C1/C2=99/1~80/20であり、ICP発光分析法により前記合成繊維用処理剤の不揮発分から検出されるカリウム含有量が、0.1ppm以上300ppm以下であることを特徴とする。
【0007】
態様2は、態様1に記載の合成繊維用処理剤において、前記平滑剤(A)が、更に下記の完全エステル化合物(A1)を含有する。
完全エステル化合物(A1):多価アルコールと、1価脂肪酸との完全エステル化合物。
【0008】
態様3は、態様1又は2に記載の合成繊維用処理剤において、前記平滑剤(A)が、更に含硫黄エステル化合物(A2)を含有する。
態様4は、態様1~3のいずれか一態様に記載の合成繊維用処理剤において、前記非イオン性界面活性剤(B)が、更に含窒素非イオン性界面活性剤(B1)を含有する。
【0009】
態様5は、態様1~4のいずれか一態様に記載の合成繊維用処理剤において、更に、ジオール化合物(D)を含有する。
態様6は、態様1~5のいずれか一態様に記載の合成繊維用処理剤において、更に、酸化防止剤(E)を含有する。
【0010】
態様7の合成繊維は、態様1~6のいずれか一態様に記載の合成繊維用処理剤が、付着していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば使用時においてローラー上に付着するタールの洗浄性を向上できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1実施形態>
以下、本発明の合成繊維用処理剤(以下、処理剤ともいう)を具体化した第1実施形態を説明する。本実施形態の処理剤は、平滑剤(A)、非イオン性界面活性剤(B)、及びイオン性界面活性剤(C)を含有する。処理剤は、さらにジオール化合物(D)及び酸化防止剤(E)を含有してもよい。
【0013】
(平滑剤(A))
本実施形態の処理剤に供される平滑剤(A)としては、例えばエステル油、鉱物油等が挙げられる。
【0014】
エステル油としては、特に制限はないが、脂肪酸とアルコールとから製造されるエステル油が挙げられる。エステル油としては、例えば後述する奇数又は偶数の炭化水素基を有する脂肪酸とアルコールとから製造されるエステル油が例示される。
【0015】
エステル油の原料である脂肪酸は、その炭素数、分岐の有無、価数等について特に制限はなく、また、例えば高級脂肪酸であってもよく、環状のシクロ環を有する脂肪酸であってもよく、芳香族環を有する脂肪酸であってもよい。エステル油の原料であるアルコールは、その炭素数、分岐の有無、価数等について特に制限はなく、また、例えば高級アルコールであっても、環状のシクロ環を有するアルコールであっても、芳香族環を有するアルコールであってもよい。
【0016】
エステル油としては、下記の完全エステル化合物(A1)を含むものであることが好ましい。かかる構成により繊維に平滑性を付与しながら、各装置中におけるタールの蓄積を低減できる。また、エステル油としては、含硫黄エステル化合物(A2)を含むものであることが好ましい。かかる構成により繊維に平滑性を付与しながら、使用時においてローラー上に付着するタールの洗浄性をより向上できる。
【0017】
完全エステル化合物(A1)は、多価アルコールと1価脂肪酸との完全エステル化合物である。完全エステル化合物(A1)は、好ましくは炭素数3以上6以下の鎖状構造を有する多価アルコールと炭素数8以上24以下の1価脂肪酸との完全エステル化合物である。完全エステル化合物(A1)は、より好ましくは、炭素数3以上5以下の鎖状構造を有する多価アルコールと炭素数12以上18以下の1価脂肪酸との完全エステル化合物である。処理剤の保存時の安定性を高める観点から、多価アルコールには異なる炭素数の1価脂肪酸が結合していることが好ましく、不飽和脂肪酸が含まれることがより好ましい。
【0018】
多価アルコールとしては、環状構造を有しない多価アルコールが挙げられ、鎖状構造としては、直鎖状のものであっても、分岐鎖構造を有するものであってもよい。多価アルコールの具体例としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,2-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチル-2,3-ブタンジオール、グリセリン、ジグリセリン、2-メチル-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等が挙げられる。これらの中でも、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが好ましい。
【0019】
1価脂肪酸としては、公知のものを適宜採用でき、飽和脂肪酸であっても、不飽和脂肪酸であってもよい。また、直鎖状のものであっても、分岐鎖構造を有するものであってもよい。
【0020】
1価脂肪酸の具体例としては、例えば、(1)ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ヘキサン酸(カプロン酸)、オクタン酸(カプリル酸)、ノナン酸、デカン酸(カプリン酸)、ドデカン酸(ラウリン酸)、テトラデカン酸(ミリスチン酸)、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、オクタデカン酸(ステアリン酸)、エイコサン酸(アラキジン酸)、ドコサン酸(ベヘン酸)、テトラコサン酸等の直鎖の飽和脂肪酸、(2)2-エチルヘキサン酸、イソドデカン酸、イソトリデカン酸、イソテトラデカン酸、イソヘキサデカン酸、イソオクタデカン酸等の分岐の飽和脂肪酸、(3)クロトン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、バクセン酸、エイコセン酸、リノール酸、αリノレン酸、γリノレン酸、アラキドン酸等の直鎖の不飽和脂肪酸、(4)リシノール酸等のヒドロキシ脂肪酸等が挙げられる。
【0021】
完全エステル化合物(A1)の具体例としては、例えばトリメチロールプロパントリオレアート、トリメチロールプロパンとヤシ脂肪酸とのトリエステル、グリセリンとオレイン酸とのトリエステル、及びヤシ油、ナタネ油、ヒマワリ油、大豆油、ヒマシ油、ゴマ油、パーム油、魚油等の天然油脂等が挙げられる。
【0022】
含硫黄エステル化合物(A2)の具体例としては、例えばジオクチルチオジプロピオナート、ジイソラウリルチオジプロピオナート、ジラウリルチオジプロピオナート、ジイソセチルチオジプロピオナート、ジイソパルミチルチオジプロピオナート、ジイソテトラコシルチオジプロピオナート、ジイソステアリルチオジプロピオナート、ジオレイルチオジプロピオナート、オクチルチオジプロピオナート、イソラウリルチオジプロピオナート、ラウリルチオジプロピオナート、イソセチルチオジプロピオナート、イソステアリルチオジプロピオナート、オレイルチオジプロピオナート、オクチルメルカプトプロピオナート、ステアリルメルカプトプロピオナート、トリメチロールプロパントリス(メルカプトプロピオナート)等が挙げられる。これらの中でも、チオジプロピオン酸と分岐アルコールのエステル化合物が処理剤の安定性を向上させる観点から好ましい。
【0023】
その他のエステル油の具体例としては、例えば(1)オクチルパルミタート、オレイルラウラート、オレイルオレアート、イソトリデシルステアラート、イソテトラコシルオレアート、イソステアリルエルシナート等の、脂肪族モノアルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル化合物、(2)ジイソステアリルアジパート、ジオレイルアジパート、ジオレイルアゼラート等の、脂肪族モノアルコールと脂肪族多価カルボン酸との完全エステル化合物、(3)ベンジルオレアート、ベンジルラウラート等の、芳香族モノアルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル化合物、(4)ビスフェノールAジラウラート等の、芳香族多価アルコールと脂肪族モノカルボン酸との完全エステル化合物、(5)ビス2-エチルヘキシルフタラート、ジイソステアリルイソフタラート、トリオクチルトリメリタート等の、脂肪族モノアルコールと芳香族多価カルボン酸との完全エステル化合物等が挙げられる。
【0024】
鉱物油としては、動粘度が40℃で5mm/s以上のものが用いられる。鉱物油としては、例えば芳香族系炭化水素、パラフィン系炭化水素、ナフテン系炭化水素等が挙げられる。より具体的には、例えばスピンドル油、流動パラフィン等が挙げられる。これらの鉱物油は、市販品を適宜採用することができる。
【0025】
これらの平滑剤(A)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
処理剤中において、完全エステル化合物(A1)の含有割合の下限は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上である。かかる完全エステル化合物(A1)の含有割合の上限は、好ましくは75質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。かかる含有割合の範囲に規定することにより、繊維に平滑性を付与しながらタールの蓄積を低減できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0026】
処理剤中において、含硫黄エステル化合物(A2)の含有割合の下限は、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上である。かかる含硫黄エステル化合物(A2)の含有割合の上限は、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下である。かかる含有割合の範囲に規定することにより、繊維に平滑性を付与しながら、使用時においてローラー上に付着するタールの洗浄性をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0027】
処理剤中において、平滑剤(A)の含有割合の下限は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上である。かかる平滑剤(A)の含有割合の上限は、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。かかる含有割合の範囲に規定することにより、繊維に平滑性を付与しながら、本発明の効果をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0028】
(非イオン性界面活性剤(B))
本実施形態の処理剤に供される非イオン性界面活性剤(B)としては、公知のものを適宜採用できる。非イオン性界面活性剤(B)としては、含窒素非イオン性界面活性剤(B1)を含むことが好ましい。処理剤が含窒素非イオン性界面活性剤(B1)を含むことにより、使用時においてローラー上に付着するタールの洗浄性をより向上できる。含窒素非イオン性界面活性剤(B1)としては、アミン化合物として例えば一級有機アミンにアルキレンオキサイドを付加させた(ポリ)オキシアルキレン構造を有する化合物、アミン化合物とカルボン酸類とを縮合させたアミド化合物、脂肪酸アミド類にアルキレンオキサイドを付加させた(ポリ)オキシアルキレン構造を有する化合物等が挙げられる。これらの中でも、一級有機アミンにアルキレンオキサイドを付加させた(ポリ)オキシアルキレン構造を有する化合物が好ましい。
【0029】
含窒素非イオン性界面活性剤(B1)の原料として用いられる脂肪族アミン又は一級有機アミンの具体例として、例えばメチルアミン、エチルアミン、ブチルアミン、オクチルアミン、ラウリルアミン、オクタデシルアミン(ステアリルアミン)、オクタデセニルアミン、ヤシアミン等が挙げられる。
【0030】
(ポリ)オキシアルキレン構造を形成する原料として用いられるアルキレンオキサイドとしては、炭素数2以上4以下のアルキレンオキサイドが好ましい。アルキレンオキサイドの具体例としては、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等が挙げられる。アルキレンオキサイドの付加モル数は、適宜設定されるが、好ましくは0.1モル以上250モル以下、より好ましくは1モル以上200モル以下、さらに好ましくは2モル以上150モル以下、特に好ましくは3モル以上40モル以下である。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。なお、アルキレンオキサイドの付加モル数は、仕込み原料中における付加対象化合物1モルに対するアルキレンオキサイドのモル数を示す。アルキレンオキサイドは、一種類のアルキレンオキサイドを単独で使用してもよいし、又は二種以上のアルキレンオキサイドを適宜組み合わせて使用してもよい。アルキレンオキサイドが二種類以上適用される場合、それらの付加形態は、ブロック付加、ランダム付加、及びブロック付加とランダム付加の組み合わせのいずれでもよく、特に制限はない。
【0031】
含窒素非イオン性界面活性剤(B1)の原料として用いられるカルボン酸類の具体例としては、例えば、(1)オクチル酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸、エイコサン酸、ヘンエイコサン酸、ドコサン酸等の直鎖アルキルカルボン酸、(2)2-エチルヘキサン酸、イソドデカン酸、イソトリデカン酸、イソテトラデカン酸、イソヘキサデカン酸、イソオクタデカン酸等の分岐アルキルカルボン酸、(3)オクタデセン酸、オクタデカジエン酸、オクタデカトリエン酸等の直鎖アルケニルカルボン酸、(4)安息香酸等の芳香族系カルボン酸、(5)リシノール酸等のヒドロキシカルボン酸等が挙げられる。
【0032】
含窒素非イオン性界面活性剤(B1)の原料として用いられる脂肪酸アミドの具体例としては、例えばオクチル酸アミド、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、ベヘン酸アミド、リグノセリン酸アミド、脂肪酸とジエタノールアミンとのアミド、脂肪酸とエチレンアミンとのアミド等が挙げられる。
【0033】
含窒素非イオン性界面活性剤(B1)の具体例としては、例えばラウリルアミンに対してアルキレンオキサイドを付加した化合物、ステアリルアミンに対してアルキレンオキサイドを付加した化合物等が挙げられる。
【0034】
非イオン性界面活性剤(B)として上述した含窒素非イオン性界面活性剤(B1)以外のその他の非イオン性界面活性剤を使用してもよい。
その他の非イオン性界面活性剤としては、例えば、アルコール類又はカルボン酸類にアルキレンオキサイドを付加させた(ポリ)オキシアルキレン構造を有する化合物、カルボン酸類と多価アルコールとのエステル化合物にアルキレンオキサイドを付加させた(ポリ)オキシアルキレン構造を有するエーテル・エステル化合物、カルボン酸類と多価アルコール等との部分エステル化合物、ポリオキシエチレン鎖とポリオキシプロピレン鎖とを有するブロック共重合体等のポリオキシアルキレン構造を有する化合物等が挙げられる。
【0035】
非イオン性界面活性剤の原料として用いられるアルコール類の具体例としては、例えば、(1)メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ノナデカノール、エイコサノール、ヘンエイコサノール、ドコサノール、トリコサノール、テトラコサノール、ペンタコサノール、ヘキサコサノール、ヘプタコサノール、オクタコサノール、ノナコサノール、トリアコンタノール等の直鎖アルキルアルコール、(2)イソプロパノール、イソブタノール、イソヘキサノール、2-エチルヘキサノール、イソノナノール、イソデカノール、イソドデカノール、イソトリデカノール、イソテトラデカノール、イソトリアコンタノール、イソヘキサデカノール、イソヘプタデカノール、イソオクタデカノール、イソノナデカノール、イソエイコサノール、イソヘンエイコサノール、イソドコサノール、イソトリコサノール、イソテトラコサノール、イソペンタコサノール、イソヘキサコサノール、イソヘプタコサノール、イソオクタコサノール、イソノナコサノール、イソペンタデカノール等の分岐アルキルアルコール、(3)テトラデセノール、ヘキサデセノール、ヘプタデセノール、オクタデセノール、ノナデセノール等の直鎖アルケニルアルコール、(4)イソヘキサデセノール、イソオクタデセノール等の分岐アルケニルアルコール、(5)シクロペンタノール、シクロヘキサノール等の環状アルキルアルコール、(6)フェノール、ノニルフェノール、ベンジルアルコール、モノスチレン化フェノール、ジスチレン化フェノール、トリスチレン化フェノール等の芳香族系アルコール等が挙げられる。
【0036】
非イオン性界面活性剤の原料として用いられるカルボン酸類の具体例としては、含窒素非イオン性界面活性剤(B1)の原料として列挙したものが適用できる。
非イオン性界面活性剤の(ポリ)オキシアルキレン構造を形成する原料として用いられるアルキレンオキサイドとしては、含窒素非イオン性界面活性剤(B1)の原料において説明した(ポリ)オキシアルキレン構造の説明と同様である。
【0037】
非イオン性界面活性剤の原料として用いられる多価アルコールの具体例としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,2-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチル-2,3-ブタンジオール、グリセリン、2-メチル-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、トリメチロールプロパン、ソルビタン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等が挙げられる。
【0038】
非イオン性界面活性剤の原料として用いられるカルボン酸類と多価アルコールとのエステル化合物の具体例としては、例えばソルビタンモノオレアート、ソルビタンジオレアート、ソルビタントリオレアート、グリセリンジオレート、ショ糖脂肪酸エステル等の合成エステル、ヤシ油、ナタネ油、ヒマワリ油、大豆油、ヒマシ油、ゴマ油、パーム油、魚油等の天然油脂、それらの誘導体等が挙げられる。
【0039】
ポリオキシアルキレン構造を有する化合物としては、後述するジオール化合物(D)以外のポリオキシアルキレン構造を有する化合物が挙げられる。例えばポリオキシエチレン鎖とポリオキシプロピレン鎖とを有するブロック共重合体が挙げられる。かかるブロック共重合体は、親水性の低いポリオキシプロピレン鎖及び親水性の高いポリオキシエチレン鎖を有し、界面活性作用を有するものであれば特に限定されない。分子中におけるポリオキシエチレン鎖とポリオキシプロピレン鎖の数は特に限定されず、例えば1つのポリオキシプロピレン鎖と1つのポリオキシエチレン鎖からなるブロック共重合体であってもよく、ポリオキシプロピレン鎖とそれを挟む2つのポリオキシエチレン鎖からなるポロキサマー系界面活性剤であってもよい。また、多価アルコールにポリオキシエチレン鎖とポリオキシプロピレン鎖を付加させたエーテル化合物であってもよい。
【0040】
その他の非イオン性界面活性剤の具体例としては、例えばヤシ脂肪酸に対してアルキレンオキサイドを付加した化合物、オレイルアルコールに対してアルキレンオキサイドを付加した化合物、イソステアリルアルコールに対してアルキレンオキサイドを付加した化合物、ポリアルキレングリコールとオレイン酸とのエステル化合物、ソルビタンモノオレアート、硬化ひまし油に対してアルキレンオキサイドを付加した化合物とラウリン酸とのエステル化物、硬化ひまし油に対してアルキレンオキサイドを付加した化合物とアジピン酸とステアリン酸重縮合物、ひまし油又は硬化ひまし油に対してアルキレンオキサイドを付加した化合物、ひまし油又は硬化ひまし油に対してアルキレンオキサイドを付加した化合物とオレイン酸とのエステル化物等が挙げられる。
【0041】
これらの非イオン性界面活性剤(B)は、一種類を単独で使用してもよいし、又は二種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
処理剤中において、含窒素非イオン性界面活性剤(B1)の含有割合の下限は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上である。かかる含窒素非イオン性界面活性剤(B1)の含有割合の上限は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。かかる含有割合の範囲に規定することにより、使用時においてローラー上に付着するタールの洗浄性をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0042】
処理剤中において、非イオン性界面活性剤(B)の含有割合の下限は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは25質量%以上である。かかる非イオン性界面活性剤(B)の含有割合の上限は、好ましくは70質量%以下、より好ましくは65質量%以下である。かかる含有割合の範囲に規定することにより、処理剤に安定性を付与しながら、本発明の効果をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0043】
(イオン性界面活性剤(C))
本実施形態の処理剤に供されるイオン性界面活性剤(C)は、分子中にスルホ基を1つ有する有機スルホン酸化合物(C1)、及び分子中にスルホ基を2つ以上有する有機スルホン酸化合物(C2)を含んで構成される。
【0044】
有機スルホン酸化合物(C1)又は有機スルホン酸化合物(C2)としては、例えばアルカンスルホン酸、アルケンスルホン酸、ヒドロキシアルカンスルホン酸等の脂肪族系有機スルホン酸、ジフェニルエーテルスルホン酸、アルキルアリールスルホン酸等の芳香族系有機スルホン酸、アルキルスルホコハク酸、それらの塩等が挙げられる。有機スルホン酸化合物が炭化水素基を含む場合、炭化水素としては、直鎖状であっても分岐状であってもよい。
【0045】
有機スルホン酸化合物(C1)又は有機スルホン酸化合物(C2)を構成する塩としては、金属塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、有機アミン塩等が挙げられる。
金属塩としては、例えばアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩が挙げられる。アルカリ金属塩を構成するアルカリ金属の具体例としては、例えばナトリウム、カリウム、リチウム等が挙げられる。アルカリ土類金属塩を構成するアルカリ土類金属としては、第2族元素に該当する金属、例えばカルシウム、マグネシウム、ベリリウム、ストロンチウム、バリウム等が挙げられる。
【0046】
ホスホニウム塩を構成するホスホニウムの具体例としては、例えばテトラメチルホスホニウム、テトラエチルホスホニウム、テトラブチルホスホニウム、テトラオクチルホスホニウム、ジブチルジヘキシルホスホニウム、トリヘキシルテトラデシルホスホニウム、トリエチルオクチルホスホニウム、トリオクチルメチルホスホニウム、トリフェニルメチルホスホニウム等の4級ホスホニウムが挙げられる。
【0047】
有機アミン塩を構成するアミンは、一級アミン、二級アミン、及び三級アミンのいずれであってもよい。アミン塩を構成するアミンの具体例としては、例えば、(1)メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、N-N-ジイソプロピルエチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、2-メチルブチルアミン、トリブチルアミン、オクチルアミン、ジメチルラウリルアミン等の脂肪族アミン、(2)アニリン、N-メチルベンジルアミン、ピリジン、モルホリン、ピペラジン、これらの誘導体等の芳香族アミン類又は複素環アミン、(3)モノエタノールアミン、N-メチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジブチルエタノールアミン、ブチルジエタノールアミン、オクチルジエタノールアミン、ラウリルジエタノールアミン等のアルカノールアミン、(4)N-メチルベンジルアミン等のアリールアミン、(5)ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンステリルアミノエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル等が挙げられる。
【0048】
これらの塩の中で本発明の効果により優れる観点からナトリウム塩が好ましい。
有機スルホン酸化合物(C1)としては、下記一般式(1)、一般式(3)、一般式(4)に示される化合物が好ましい。
【0049】
有機スルホン酸化合物(C2)としては、下記一般式(2)、一般式(5)に示される化合物が好ましい。
【0050】
【化1】
(式(1)中、a及びbは、それぞれ0以上の整数であって、a+b=5以上17以下を満たす整数を示す。Mは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、ホスホニウム又は有機アミン塩を示す。)
一般式(1)に示される化合物の具体例としては、例えばa+bの値が11以上14以下、MがNaである二級アルキルスルホン酸塩(モノスルホン酸塩)、a+bの値が9以上12以下、MがNaである二級アルキルスルホン酸塩(モノスルホン酸塩)、a+bの値が11以上14以下、Mがテトラブチルホスホニウムである二級アルキルスルホン酸塩(モノスルホン酸塩)等が挙げられる。
【0051】
【化2】
(式(2)中、c、d及びeは、それぞれ0以上の整数であって、c+d+e=4以上16以下を満たす整数を示す。M,Mは、それぞれ水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、ホスホニウム又は有機アミン塩を示す。)
一般式(2)に示される化合物の具体例としては、例えばc+d+eの値が10以上13以下、M,MがそれぞれNaである二級アルキルスルホン酸塩(ジスルホン酸塩)、c+d+eの値が8以上11以下、M,MがそれぞれNaである二級アルキルスルホン酸塩(ジスルホン酸塩)、c+d+eの値が10以上13以下、M,Mがそれぞれテトラブチルホスホニウムである二級アルキルスルホン酸塩(ジスルホン酸塩)等が挙げられる。
【0052】
【化3】
(R:炭素数6以上24以下のアルケニル基を示す。
【0053】
:水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、ホスホニウム又は有機アミン塩を示す。)
一般式(3)に示される化合物の具体例としては、例えばRの炭素数が14、MがNaであるアルケニルスルホン酸塩(モノスルホン酸塩)、Rの炭素数が14、MがKであるアルケニルスルホン酸塩(モノスルホン酸塩)、Rの炭素数が14以上18以下、MがNaであるアルケニルスルホン酸塩(モノスルホン酸塩)等が挙げられる。
【0054】
【化4】
(R:炭素数6以上24以下のヒドロキシアルキル基を示す。
【0055】
:水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、ホスホニウム又は有機アミン塩を示す。)
一般式(4)に示される化合物の具体例としては、例えばRの炭素数が14、MがNaであるヒドロキシアルキルスルホン酸塩(モノスルホン酸塩)、Rの炭素数が14、MがKであるヒドロキシアルキルスルホン酸塩(モノスルホン酸塩)、Rの炭素数が14以上18以下、MがNaであるヒドロキシアルキルスルホン酸塩(モノスルホン酸塩)等が挙げられる。
【0056】
【化5】
(R:スルホ基(-SO)を少なくとも1つ有する炭素数6以上24以下の炭化水素基を示す。
【0057】
,M:それぞれ水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、ホスホニウム又は有機アミン塩を示す。)
一般式(5)に示される化合物の具体例としては、例えばRの炭素数が14、M,MがそれぞれNaであるアルキルスルホン酸塩(ジスルホン酸塩)、Rの炭素数が14、M,MがそれぞれKであるアルキルスルホン酸塩(ジスルホン酸塩)、Rの炭素数が14以上18以下、M,MがそれぞれNaであるアルキルスルホン酸塩(ジスルホン酸塩)等が挙げられる。
【0058】
上記以外の脂肪族系有機スルホン酸の具体例としては、例えばヘプタンスルホン酸、2-エチルヘキサンスルホン酸、オクタンスルホン酸、ノナンスルホン酸、デカンスルホン酸、ウンデカンスルホン酸、ドデカンスルホン酸、トリデカンスルホン酸、テトラデカンスルホン酸、ペンタデカンスルホン酸、ヘキサデカンスルホン酸、ヘプタデカンスルホン酸、オクタデカンスルホン酸、イソオクタンスルホン酸、イソデカンスルホン酸、イソウンデカンスルホン酸、イソドデカンスルホン酸、イソトリデカンスルホン酸、イソテトラデカンスルホン酸、イソペンタデカンスルホン酸、イソヘキサデカンスルホン酸、イソヘプタデカンスルホン酸、イソオクタデカンスルホン酸等の脂肪族モノスルホン酸又は脂肪族ジスルホン酸、それらの塩等が挙げられる。
【0059】
芳香族系有機スルホン酸の具体例としては、例えばp-トルエンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、デシルベンゼンスルホン酸、ウンデシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、トリデシルベンゼンスルホン酸、テトラデシルベンゼンスルホン酸、ペンタデシルベンゼンスルホン酸、ヘキサデシルベンゼンスルホン酸、ジブチルナフタレンスルホン酸、ヘキサデシルジフェニルエーテルジスルホン酸等が挙げられる。
【0060】
アルキルスルホコハク酸の具体例としては、例えばジオクチルスルホコハク酸エステル、ジブチルスルホコハク酸エステル、ジラウリルスルホコハク酸エステル、ポリオキシエチレンラウリルエーテルスルホコハク酸エステル等が挙げられる。
【0061】
これらの有機スルホン酸化合物(C1)又は有機スルホン酸化合物(C2)は、それぞれ一種類を単独で使用してもよいし、又は二種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
有機スルホン酸化合物(C1)及び有機スルホン酸化合物(C2)の質量比は、C1/C2=99/1~80/20、好ましくは98/2~81/19である。かかる含有割合の範囲に規定することにより、本発明の効果を向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0062】
処理剤中において、有機スルホン酸化合物(C1)の含有割合の下限は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上である。かかる有機スルホン酸化合物(C1)の含有割合の上限は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4.5質量%以下である。かかる含有割合の範囲に規定することにより、本発明の効果をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0063】
処理剤中において、有機スルホン酸化合物(C2)の含有割合の下限は、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上である。かかる有機スルホン酸化合物(C2)の含有割合の上限は、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.7質量%以下である。かかる含有割合の範囲に規定することにより、本発明の効果をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0064】
処理剤中において、有機スルホン酸化合物(C1)及び有機スルホン酸化合物(C2)の含有割合の合計の下限は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上である。かかる有機スルホン酸化合物の含有割合の合計の上限は、好ましくは6質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。かかる含有割合の範囲に規定することにより、本発明の効果をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0065】
イオン性界面活性剤(C)として上述した有機スルホン酸化合物(C1)及び有機スルホン酸化合物(C2)以外のその他のイオン性界面活性剤を使用してもよい。
その他のイオン性界面活性剤としては、公知のものを適宜採用できる。イオン性界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。
【0066】
アニオン界面活性剤としては、公知のものを適宜採用できる。アニオン界面活性剤の具体例としては、例えば(1)ラウリルリン酸エステル塩、セチルリン酸エステル塩、オクチルリン酸エステル塩、2-エチルヘキシルリン酸エステル塩、オレイルリン酸エステル塩、ステアリルリン酸エステル塩、イソステアリルリン酸エステル塩、イソセチルリン酸エステル塩等の脂肪族アルコールのリン酸エステル塩、(2)ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸エステル塩等の脂肪族アルコールにエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも一種のアルキレンオキサイドを付加したもののリン酸エステル塩、(3)ラウリル硫酸エステル塩、オレイル硫酸エステル塩、ステアリル硫酸エステル塩等の脂肪族アルコールの硫酸エステル塩、(4)ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレン(ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン)ラウリルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンオレイルエーテル硫酸エステル塩等の脂肪族アルコールにエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも一種のアルキレンオキサイドを付加したものの硫酸エステル塩、(5)ひまし油脂肪酸硫酸エステル塩、ごま油脂肪酸硫酸エステル塩、トール油脂肪酸硫酸エステル塩、大豆油脂肪酸硫酸エステル塩、なたね油脂肪酸硫酸エステル塩、パーム油脂肪酸硫酸エステル塩等の天然由来の脂肪酸の硫酸エステル塩、(6)ひまし油の硫酸エステル塩、ごま油の硫酸エステル塩、トール油の硫酸エステル塩、大豆油の硫酸エステル塩、菜種油の硫酸エステル塩、パーム油の硫酸エステル塩等の天然油脂の硫酸エステル塩、(7)2-エチルヘキサン酸塩、ラウリン酸塩、オレイン酸塩、ステアリン酸塩、リシノール酸塩等の脂肪酸塩、(8)オレオイルサルコシン塩等のN-アシルサルコシン塩が挙げられる。アニオン界面活性剤の対イオンとしては、例えばカリウム塩、ナトリウム塩等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、トリエタノールアミン塩、(ポリ)オキシアルキレンアルキルアミノエーテル塩、ジブチルエタノールアミン塩等のアルカノールアミン塩等が挙げられる。
【0067】
カチオン界面活性剤の具体例としては、例えばラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
【0068】
両性界面活性剤の具体例としては、例えばベタイン型両性界面活性剤等が挙げられる。これらのイオン性界面活性剤(C)は、一種類を単独で使用してもよいし、又は二種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0069】
処理剤中において、全イオン性界面活性剤(C)の含有割合の下限は、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは0.6質量%以上である。かかる全イオン性界面活性剤(C)の含有割合の上限は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは7質量%以下である。かかる含有割合の範囲に規定することにより、本発明の効果をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0070】
(ジオール化合物(D))
本実施形態の処理剤は、ジオール化合物(D)を配合してもよい。ジオール化合物(D)により、処理剤を繊維に付着した後、各装置中におけるタールの蓄積を低減できる。
【0071】
ジオール化合物(D)の具体例としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,2-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチル-2,3-ブタンジオール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールの共重合体等が挙げられる。これらジオール化合物(D)は、一種類を単独で使用してもよいし、又は二種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0072】
ジオール化合物(D)として(ポリ)オキシアルキレングリコールが用いられる場合、分子量1000g/mol以下の(ポリ)オキシアルキレングリコールが適用される。分子量1000g/mol以下の(ポリ)オキシアルキレングリコールの具体例としては、例えばエチレングリコール(分子量62)、ジエチレングリコール(分子量106)、トリエチレングリコール(分子量150)、ポリエチレングリコール(質量平均分子量200)、ポリエチレングリコール(質量平均分子量400)、ポリエチレングリコール(質量平均分子量800)、プロピレングリコール(分子量76)、ジプロピレングリコール(分子量134)、トリプロピレングリコール(分子量192)、ポリプロピレングリコール(質量平均分子量400)、ポリプロピレングリコール(質量平均分子量800)等が挙げられる。
【0073】
処理剤中において、ジオール化合物(D)の含有割合の下限は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上である。かかるジオール化合物(D)の含有割合の上限は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは2質量%以下である。かかる含有割合の範囲に規定することにより、タールの蓄積をより低減できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。なお、質量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーで標準物質をポリエチレングリコールとして求めたものである(以下、同じ)。
【0074】
(酸化防止剤(E))
本実施形態の処理剤は、酸化防止剤(E)を配合してもよい。酸化防止剤(E)により使用時においてローラー上に付着するタールの洗浄性を向上できる。また、処理剤を繊維に付着した後、各装置中におけるタールの蓄積を低減できる。
【0075】
本実施形態に供される酸化防止剤(E)としては、公知のものを適宜採用できる。酸化防止剤(E)としては、例えばフェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、有機硫黄系酸化防止剤等が挙げられる。
【0076】
酸化防止剤(E)の具体例としては、例えば(1)1,3,5-トリス(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシベンジル)-s-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)トリオン、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)イソシアヌル酸、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2,2’-メチレン-ビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、テトラキス[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]メタン等のフェノール系酸化防止剤、(2)オクチルジフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、テトラトリデシル-4,4’-ブチリデン-ビス-(2-t-ブチル-5-メチルフェノール)ジホスファイト等のホスファイト系酸化防止剤、(3)モノオクチルジフェニルアミン、モノノニルジフェニルアミン等のモノアルキルジフェニルアミン系化合物;4,4’-ジブチルジフェニルアミン、4,4’-ジペンチルジフェニルアミン、4,4’-ジヘキシルジフェニルアミン、4,4’-ジヘプチルジフェニルアミン、4,4’-ジオクチルジフェニルアミン、4,4’-ジノニルジフェニルアミン、N-ジノニルジフェニルアミン等のジアルキルジフェニルアミン系化合物;テトラブチルジフェニルアミン、テトラヘキシルジフェニルアミン、テトラオクチルジフェニルアミン、テトラノニルジフェニルアミン等のポリアルキルジフェニルアミン系化合物等のアミン系酸化防止剤、(4)4,4’-チオビス-(6-t-ブチル-3-メチルフェノール)、6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルアニリノ)-2,4-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン等の硫黄系酸化防止剤等が挙げられる。なお、硫黄系酸化防止剤には、平滑剤(A)である含硫黄エステル化合物(A2)は含まれないものとする。また、フェノール類であっても構造中に硫黄原子を持つものは、硫黄系酸化防止剤とする。
【0077】
これらの酸化防止剤(E)は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
処理剤中において、酸化防止剤(E)の含有割合の下限は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上である。かかる酸化防止剤(E)の含有割合の上限は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは2質量%以下である。かかる含有割合の範囲に規定することにより、本発明の効果をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0078】
(その他)
ICP発光分析法(誘導結合プラズマ発光分析法)により処理剤の不揮発分から検出されるカリウム含有量が、0.1ppm以上300ppm以下に規定される。かかる範囲に規定することにより、特に使用時においてローラー上に付着するタールの洗浄性を向上できる。さらには、タール洗浄に用いるアルカリを低濃度のものとすることもできる。
【0079】
なお、ICP発光分析法を用いた濃度測定は、まず既知の金属イオン濃度溶液を調製し、ICP発光分析装置に供して検量線を作成し、試料の検出値より濃度を求めることができる。また、不揮発分とは、処理剤を105℃で2時間熱処理して揮発性成分を十分に除去したものをいう。以下、不揮発分の定義は、同じ条件を採用するものとする。
【0080】
処理剤に含まれるカリウムは、脂肪酸カリウム塩、スルホン酸カリウム塩、リン酸エステルカリウム塩、乳酸カリウム塩、リン酸カリウム塩等の塩であっても、水酸化カリウム、カリウムメトキシド等の塩基であってもよい。処理剤の調製の際にカリウムを含む化合物を添加してもよく、処理剤を構成する平滑剤、非イオン性界面活性剤、イオン性界面活性剤の各原料から不純物としてカリウムが持ち込まれてもよい。
【0081】
<第2実施形態>
次に、本発明による合成繊維を具体化した第2実施形態を説明する。本実施形態の合成繊維は、第1実施形態の処理剤が付着している合成繊維である。処理剤を合成繊維に付着させる際の形態としては、希釈溶媒で希釈した希釈液、例えば有機溶媒溶液、水性液等として付与してもよい。希釈溶媒には、処理剤の繊維への付着性と経済性の観点から炭素数10以上15以下の炭化水素及び/又は水を使用することが好ましい。処理剤と希釈溶媒の混合割合は、処理剤の質量:希釈溶媒の質量=99:1~10:90であることが好ましい。合成繊維は、水性液等の希釈液を、例えば紡糸又は延伸工程等において合成繊維に付着させる工程を経て得られる。合成繊維に付着した希釈液は、延伸工程、乾燥工程により希釈溶媒を蒸発させてもよい。付着させる工程も紡糸工程であれば特に制限はない。延伸もしくは熱処理工程において、150℃以上のローラーを通過させる工程を有する製造設備、工程での使用により、発明の効果がより期待できる。
【0082】
本実施形態の処理剤が付与される合成繊維の具体例としては、特に制限はなく、例えば(1)ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリトリメチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタラート、ポリ乳酸、これらのポリエステル系樹脂を含有して成る複合繊維等のポリエステル系繊維、(2)ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系繊維、(3)ポリアクリル、モダアクリル等のポリアクリル系繊維、(4)ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系繊維等が挙げられる。これらの中でポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維に適用されることが好ましい。製造する合成繊維の繊度としては、特に制限はないが、好ましくは150デシテックス以上であり、より好ましくは500デシテックス以上であり、さらに好ましいのは1000デシテックス以上である。また、製造する合成繊維の強度としては、特に制限はないが、好ましくは5.0cN/dtex以上であり、より好ましくは6.0cN/dtex以上、さらに好ましくは7.0cN/dtex以上である。
【0083】
処理剤を合成繊維に付着させる割合に特に制限はないが、処理剤を合成繊維に対し0.1質量%以上5質量%以下の割合(水等の溶媒を含まない割合)となるよう付着させることが好ましい。かかる構成により、本発明の効果をより向上させる。また、処理剤を付着させる方法は、特に制限はなく、例えばローラー給油法、計量ポンプを用いたガイド給油法、浸漬給油法、スプレー給油法等の公知の方法を採用できる。
【0084】
本発明において、合成繊維の用途としては、特に限定されないが、産業資材に用いられる合成繊維が好ましい。例えばエアバッグ用繊維、シートベルト用繊維、タイヤコード用繊維、カーペット用繊維、テント用繊維、広告布用繊維、漁網用繊維、コンベアベルト用繊維、ロープ用繊維等の自動車、建築、商業、農業・水産業、土木等の分野で使用される合成繊維がより好ましい。
【0085】
上記実施形態の処理剤及び合成繊維の効果について説明する。
(1)上記実施形態の処理剤では、平滑剤(A)と、非イオン性界面活性剤(B)と、分子中にスルホ基を1つ有する有機スルホン酸化合物(C1)、及び分子中にスルホ基を2つ以上有する有機スルホン酸化合物(C2)を含むイオン性界面活性剤(C)を配合して構成した。また、有機スルホン酸化合物(C1)、及び有機スルホン酸化合物(C2)の質量比をC1/C2=99/1~80/20に規定した。また、ICP発光分析法により処理剤の不揮発分から検出されるカリウム含有量を0.1ppm以上300ppm以下に規定した。したがって、使用時においてローラー上に付着するタールの洗浄性を向上できる。また、タールの洗浄液を低濃度のアルカリにできる。また、処理剤を繊維に付着した後、各装置中におけるタールの蓄積を低減できる。
【0086】
産業資材用の処理剤には、断糸・毛羽が少なく、製糸性が良好であること、ゴデットローラー上に堆積したタールの洗浄性が良好であることが求められている。例えば、産業資材用合成繊維を製造する際のゴデットローラーの温度は200℃を超えることがあり、繊維に付与された処理剤は、徐々にタール化して堆積する。堆積したタールは断糸や毛羽を発生させ、製糸性を著しく損なうため、定期的な洗浄が実施されている。タールの洗浄は例えば24~72時間に1回、機台を止めて数十分かけて実施される。その間ポリマーの吐出を止めることはできず、原料ポリマーのロスとなっている。本発明の処理剤により良好な製糸性と、タール洗浄性により、製造効率を向上できる。
【0087】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
・上記実施形態の処理剤には、本発明の効果を阻害しない範囲内において、処理剤の製造途中又は製造後に、処理剤の品質保持のための上記以外の安定化剤、制電剤、つなぎ剤、紫外線吸収剤、消泡剤、防腐剤、防錆剤等の通常処理剤に用いられる成分をさらに配合してもよい。
【0088】
・保管時の処理剤の外観の安定性等を高める観点から、処理剤と水を予め混合させてもよく、その場合、処理剤と水の混合比率は、処理剤の質量:水の質量=85:15~99.9:0.1であることが好ましい。
【実施例0089】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、特に限定のない限り、部は質量部を、また%は質量%を意味する。
【0090】
試験区分1(処理剤の調製)
(実施例1)
表1に示されるように、平滑剤(A)としてトリメチロールプロパントリオレアート(A1-1)を50部(%)、ジ(イソステアリル)チオジプロピオナート(A2-1)を5部(%)、非イオン性界面活性剤(B)としてラウリルアミン1モルに対しエチレンオキサイド(以下、EOという)を3モル付加した化合物(B1-1)を3部(%)、ヤシ脂肪酸1モルに対しEOを12モル付加した化合物(B2-1)を7部(%)、オレイルアルコール1モルに対しEOを15モル付加した化合物(B2-2)を8部(%)、ソルビタンモノオレアート(B2-5)を10部(%)、硬化ひまし油1モルに対しEOを25モル付加した化合物1モルと、ラウリン酸2モルとのエステル化物(B2-6)を10部(%)、イオン性界面活性剤(C)として有機スルホン酸化合物(C1-1)を1部(%)、有機スルホン酸化合物(C2-1)を0.1部(%)、リシノール酸カリウム塩(C3-1)を0.25部(%)、2-エチルヘキシルホスフェートジブチルエタノールアミン塩(C3-5)を2部(%)、ジオール化合物(D)としてエチレングリコール(D-1)を1.8部(%)、酸化防止剤(E)として1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン(E-1)を1.85部(%)含む実施例1の処理剤を調製した。
【0091】
(実施例2~20、比較例1~5)
実施例2~20、比較例1~5の処理剤は、実施例1の処理剤と同様にして、平滑剤(A)、非イオン性界面活性剤(B)、イオン性界面活性剤(C)、ジオール化合物(D)、酸化防止剤(E)、及びその他成分(F)を表1に示した割合で含むように調製した。
【0092】
平滑剤(A)の種類と含有量、非イオン性界面活性剤(B)の種類と含有量、イオン性界面活性剤(C)の種類と含有量、ジオール化合物(D)の種類と含有量、酸化防止剤(E)の種類と含有量、及びその他成分(F)の種類と含有量を、表1の「平滑剤(A)」欄、「非イオン性界面活性剤(B)」欄、「イオン性界面活性剤(C)」欄、「ジオール化合物(D)」欄、「酸化防止剤(E)」欄、及び「その他成分(F)」欄にそれぞれ示す。また、各処理剤中に含有される有機スルホン酸化合物(C1)と有機スルホン酸化合物(C2)との質量比を表2の「質量比C1/C2」欄に示す。
【0093】
・ICP発光分析法
まず、処理剤を不揮発分濃度が1%となるように蒸留水を用いて希釈する。Kの標準溶液として、それぞれ濃度既知の0.5ppm、1ppm、5ppm、10ppmの溶液を用意する。上記を用いた測定で、10ppm以上の値が出る場合、再度10ppm、50ppm、100ppm、500ppmの溶液を標準溶液として測定する。また、0ppmの標準溶液として、サンプル希釈に使用した蒸留水を使用する。上記を用いた測定で、検量線の上限を外れる場合は、サンプルを蒸留水で更に10倍希釈して測定を実施する。ICP発光分析装置(島津製作所社製ICPE-9000)にて測定した。処理剤の不揮発分中のカリウム含有量を表2の「処理剤の不揮発分中のカリウム含有量」欄に示す。
【0094】
【表1】
【0095】
【表2】
表1に記載する平滑剤(A)、非イオン性界面活性剤(B)、イオン性界面活性剤(C)、ジオール化合物(D)、酸化防止剤(E)、及びその他成分(F)の詳細は以下のとおりである。
【0096】
<平滑剤(A)>
(完全エステル化合物(A1))
A1-1:トリメチロールプロパントリオレアート
A1-2:トリメチロールプロパンとヤシ脂肪酸とのトリエステル
A1-3:グリセリンとオレイン酸とのトリエステル
(含硫黄エステル化合物(A2))
A2-1:ジ(イソステアリル)チオジプロピオナート
A2-2:ジ(イソパルミチル)チオジプロピオナート
A2-3:ジ(イソテトラコシル)チオジプロピオナート
(その他の平滑剤(A3))
A3-1:イソステアリルエルシナート
A3-2:オレイルオレアート
A3-3:ジオレイルアジパート
<非イオン性界面活性剤(B)>
(含窒素非イオン性界面活性剤(B1))
B1-1:ラウリルアミン1モルに対しEOを3モル付加した化合物
B1-2:ラウリルアミン1モルに対しEOを10モル付加した化合物
B1-3:ステアリルアミン1モルに対しEOを10モル付加した化合物
(その他の非イオン性界面活性剤(B2))
B2-1:ヤシ脂肪酸1モルに対しEOを12モル付加した化合物
B2-2:オレイルアルコール1モルに対しEOを15モル付加した化合物
B2-3:イソステアリルアルコール1モルに対しEOを8モル、プロピレンオキサイド(以下、POという)を10モル付加した化合物(ランダム付加)
B2-4:ポリエチレングリコール(質量平均分子量600)とオレイン酸とのジエステル
B2-5:ソルビタンモノオレアート
B2-6:硬化ひまし油1モルに対しEOを25モル付加した化合物1モルと、ラウリン酸2モルとのエステル化物
B2-7:硬化ひまし油1モルに対しEOを15モル付加した化合物とアジピン酸とステアリン酸の重縮合物(質量平均分子量6000)
B2-8:ひまし油1モルに対しEOを8モル付加した化合物
B2-9:硬化ひまし油1モルに対しEOを12モル付加した化合物
B2-10:硬化ひまし油1モルに対しEOを10モルとPOを15モル付加した化合物(ランダム付加)
B2-11:ひまし油1モルに対しEOを20モル付加した化合物1モルと、オレイン酸3モルとのエステル化物
<イオン性界面活性剤(C)>
(有機スルホン酸化合物(C1))
C1-1:一般式(1)において、a+bの値が11以上14以下、MがNaである化合物(混合物)
C1-2:一般式(1)において、a+bの値が9以上12以下、MがNaである化合物(混合物)
C1-3-a:一般式(3)において、Rの炭素数が14、MがNaである化合物
C1-3-b:一般式(4)において、Rの炭素数が14、MがNaである化合物
C1-3-c:一般式(3)において、Rの炭素数が14、MがKである化合物
C1-3-d:一般式(4)において、Rの炭素数が14、MがKである化合物
C1-4-a:一般式(3)において、Rの炭素数が14以上18以下、MがNaである化合物(混合物)
C1-4-b:一般式(4)において、Rの炭素数が14以上18以下、MがNaである化合物(混合物)
C1-5:一般式(1)において、a+bの値が11以上14以下、Mがテトラブチルホスホニウムである化合物(混合物)
C1-6:1-デカンスルホン酸ナトリウム塩
(有機スルホン酸化合物(C2))
C2-1:一般式(2)において、c+d+eの値が10以上13以下、M,MがNaである化合物(混合物)
C2-2:一般式(2)において、c+d+eの値が8以上11以下、M,MがNaである化合物(混合物)
C2-3-a:一般式(5)において、Rの炭素数が14、M,MがNaである化合物
C2-3-b:一般式(5)において、Rの炭素数が14、M,MがKである化合物
C2-4:一般式(5)において、Rの炭素数が14以上18以下、M,MがNaである化合物
C2-5:一般式(2)において、c+d+eの値が10以上13以下、M,Mがテトラブチルホスホニウムである化合物(混合物)
(その他のイオン性界面活性剤(C3))
C3-1:リシノール酸カリウム塩
C3-2:オレイン酸カリウム塩
C3-3:オレオイルザルコシンカリウム塩
C3-4:イソセチルホスフェート-カリウム塩
C3-5:2-エチルヘキシルホスフェート-ジブチルエタノールアミン塩
C3-6:オレイルホスフェート-ラウリルアミノエーテル(EO5モル)塩
C3-7:イソセチルホスフェート-ラウリルアミノエーテル(EO10モル)塩
<ジオール化合物(D)>
D-1:エチレングリコール
D-2:ポリエチレングリコール(質量平均分子量200)
D-3:ポリエチレングリコール(質量平均分子量400)
<酸化防止剤(E)>
E-1:1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン
E-2:1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン
E-3:N-ジノニルジフェニルアミン
<その他成分(F)>
F-1:乳酸カリウム
F-2:リン酸三カリウム
なお、質量平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィーで求めた。標準物質として、上記B2-7はポリスチレン、ポリエチレングリコールはポリエチレングリコールを使用した。
【0097】
試験区分2(評価1:張力のStick Slip)
調製直後の各処理剤を、有機溶剤(n-ヘキサンとエタノールの混合溶媒)の希釈溶媒にて希釈し、処理剤15%の希釈液とした。1000デシテックス、126フィラメント、固有粘度0.93の無給油のポリエチレンテレフタラート繊維に、前記の希釈液を、ガイド給油法にて不揮発分として付与量5.0%となるように付与し、評価糸とした。
【0098】
評価糸を、初期張力2kg、糸速度0.1m/分で、表面温度240℃の梨地クロムピンに接触させ、その梨地クロムピン擦過後の張力を測定した。張力のstick slipが発生するまでの時間を次の基準で評価した。なお、stick slipは張力の急激な上昇と減少が連続して交互に起きることで観測される。タールの蓄積に伴って張力が徐々に上昇する現象とは異なり、stick slipは走行糸が静止するような強力な摩擦を生み出すタールの蓄積を評価する。結果を表2の「評価1」欄に示す。
【0099】
・張力のStick Slipの評価基準
◎◎◎(特に優れる):10時間以上
◎◎(優れる):6時間以上10時間未満
◎(良好):3時間以上6時間未満
○(可):1時間以上3時間未満
×(不可):1時間未満
試験区分3(評価2:タール洗浄性)
試験区分2と同様の方法にて作成した処理剤の希釈液を、ガイド給油法にて不揮発分として付与量5.0%となるように付与し、評価糸とした。
【0100】
評価糸を、初期張力1.5kg、糸速度0.1m/分で、表面温度240℃の梨地クロムピンに接触させて12時間)走行させた。繊維の走行箇所及びその周辺に付着した茶色のタールを、1%NaOHとなるよう調製したグリセリン溶液を含浸させた綿棒を用いて180℃で擦り、茶色のタールが消えるまでの擦過回数(往復回数)を測定した。タール洗浄性は次の基準で評価した。結果を表2の「評価2」欄に示す。
【0101】
・タール洗浄性の評価基準
◎◎◎(特に優れる):50回未満
◎◎(優れる):50回以上100回未満
◎(良好):100回以上150回未満
○(可):150回以上200回未満
×(不可):200回以上
表2の結果からも明らかなように、各実施例の処理剤は、張力のStick Slip及びタール洗浄性の評価がいずれも可以上であった。本発明によれば、使用時においてローラー上に付着するタールの洗浄性を向上できる。また、処理剤を繊維に付着した後、各装置中におけるタールの蓄積を低減できる。