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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033898
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】発電装置
(51)【国際特許分類】
   F03D 15/00 20160101AFI20240306BHJP
   F16H 37/08 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
F03D15/00
F16H37/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137814
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】518148618
【氏名又は名称】小川 亨
(74)【代理人】
【識別番号】100139206
【弁理士】
【氏名又は名称】戸塚 朋之
(72)【発明者】
【氏名】小川 亨
【テーマコード(参考)】
3H178
3J062
【Fターム(参考)】
3H178AA13
3H178AA40
3H178AA43
3H178BB77
3H178DD03X
3H178DD04Z
3H178DD12Z
3H178DD70X
3J062AA60
3J062AB03
3J062AC01
3J062BA12
3J062BA22
3J062CG17
3J062CG66
(57)【要約】
【課題】簡易に設置可能であり、設置および保守に必要な労力が少なく、設置可能場所の制約も少ない発電装置を提供。
【解決手段】本発明に係る発電装置(10)は、柱状体(C)に対し固定して取付可能であり、力学的エネルギーを取得するエネルギー取得装置(12)と、エネルギー取得装置で取得された力学的エネルギーを電気エネルギーに変換するエネルギー変換装置(22)と、エネルギー取得装置(12)から力学的エネルギーの伝達を受けてこれをさらにエネルギー変換装置(22)に伝動する伝動装置(18)を含み、エネルギー取得装置(12)が力学的エネルギーを取得するとき、エネルギー取得装置(12)の一部分が柱状体(C)に対して回転し、伝動装置(18)はエネルギー取得装置(12)から回転に基づいて力学的エネルギーの伝達を受ける。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
力学的エネルギーを取得するエネルギー取得装置と、
該エネルギー取得装置で取得された前記力学的エネルギーを電気エネルギーに変換するエネルギー変換装置とを含み、
柱状体に対し固定して取付可能な発電装置であって、該発電装置はさらに、
前記エネルギー取得装置から前記力学的エネルギーの伝達を受け、該伝達を受けた力学的エネルギーをさらに前記エネルギー変換装置に伝動する伝動装置を含み、
前記エネルギー取得装置が前記力学的エネルギーを取得するとき、前記エネルギー取得装置の一部分が前記柱状体に対して回転し、
前記伝動装置は、前記エネルギー取得装置から前記回転に基づいて前記力学的エネルギーの伝達を受けることを特徴とする発電装置。
【請求項2】
請求項1に記載の発電装置において、
該発電装置は互いに平行に配置される1組の盤体を有し、
該1組の盤体はそれぞれ軸受を含んで構成され、これによって、該1組の盤体が前記エネルギー取得装置の一部分として前記力学的エネルギーを取得したときには、前記各盤体の周縁部が前記柱状体に対して回転し、
前記1組の盤体はさらに、前記周縁部で前記伝動装置を挟設して、前記回転に基づいて前記力学的エネルギーを前記伝動装置に伝達することを特徴とする発電装置。
【請求項3】
請求項2に記載の発電装置において、
前記1組の盤体にそれぞれ含まれている軸受は、内軌道輪、前記盤体の周縁部に配設され前記内軌道輪に対して回転可能な外軌道輪、ならびに該内軌道輪および該外軌道輪の間で転動する複数の転動体を含み、
前記1組の盤体の周縁部に狭設される前記伝動装置の構成要素は歯車であり、
該歯車を挟設する前記外軌道輪は、前記挟設する歯車の歯部と噛合する歯部を有し、これによって、前記盤体が前記力学的エネルギーを取得したときには該盤体の周縁部が前記柱状体に対して回転することを特徴とする発電装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の発電装置において、前記エネルギー変換装置は、該発電装置の内部領域に配置されることを特徴とする発電装置。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の発電装置において、前記エネルギー取得装置には、該エネルギー取得装置を補強する補強部材が取り付けられていることを特徴とする発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電装置に関するものである。より具体的には、本発明は力学的エネルギーを利用して電気を発生させる発電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現代社会において、電気は人間の生活に欠かせないものである。発電方法には火力発電、原子力発電など様々な方法がある。しかしながら、火力発電には二酸化炭素の排出による地球温暖化や化石燃料の枯渇の問題がある。そして、原子力発電には高レベル放射性廃棄物の処理の問題や原子力発電所で一度事故が発生した場合に周囲環境に耐える影響の深刻性の問題がある。
そのため、環境負荷の小さな発電方法に対する社会的な要請が強まっている。環境負荷の小さな発電方法の一例としては、例えば、枯渇の心配がなく、有害な物質を使用または副次的に生成してしまうこともない風の運動エネルギーを最終的に電気エネルギーに変換する風力発電が挙げられる。その他、水の位置エネルギーを利用する水力発電、海の潮汐流が有する運動エネルギーを利用する潮力発電なども、風力発電と同様に自然エネルギーを利用するため環境負荷の小さな発電方法に挙げることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような環境負荷の小さな発電方法、例えば風力発電は、構造が複雑になりやすい、設置および保守に必要な金銭的負担も大きくなりやすい、設置場所の制約が多い等という課題を有する。
そのため、簡易に設置可能であり、設置および保守に必要な労力も少なくて済み、設置可能場所の制約も少ない発電装置が求められている。
本発明はこのような課題に鑑み、簡易に設置可能であり、設置および保守に必要な労力が少なく、設置可能場所の制約も少ない発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は上述の課題を解決するために、力学的エネルギーを取得するエネルギー取得装置と、エネルギー取得装置で取得された力学的エネルギーを電気エネルギーに変換するエネルギー変換装置と、エネルギー取得装置から力学的エネルギーの伝達を受けて伝達を受けた力学的エネルギーをさらにエネルギー変換装置に伝動する伝動装置を含み、エネルギー取得装置が力学的エネルギーを取得するとき、エネルギー取得装置の一部分が柱状体に対して回転し、伝動装置はエネルギー取得装置から回転に基づいて力学的エネルギーの伝達を受ける、柱状体に対して固定して取付可能な発電装置を提供する。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、簡易に設置可能であり、設置および保守に必要な労力が少なく、設置可能場所の制約も少ない発電装置を提供できるという特有の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明に係る発電装置の一実施形態の斜視図である。
図2】本発明に係る発電装置の代表的な実施態様の構成を概略的に示すブロック図である。
図3図1で示す発電装置の正面図(側面図)である。
図4図1で示す発電装置の上面図である。
図5図1で示す発電装置に含まれる上部盤体の上面断面図および側面断面図である。
図6図1で示す発電装置に含まれる上側盤体の下面図である。
図7図1の発電装置を構成する下側盤体の盤面上に設置されたエネルギー処理装置の配置例を示す下側盤体の上面図である。
図8】エネルギー処理装置の別の配置例を示す下側盤体の上面図である。
図9】本発明に係る発電装置において、補強部材の取付例を示す上部盤体の上面図である。
図10】本発明に係る発電装置において、補強部材の別の取付例を示す受力体の部分側面図である。
図11】本発明に係る発電装置において、補強部材のさらに別の取付例を示す上部盤体の上面図である。
図12】本発明に係る発電装置において、補強部材の変形構成例を示す受力体の部分側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
次に、添付図面を参照して本発明による発電装置の実施態様を詳細に説明する。本発明による発電装置10の実施態様は、立設している柱状体Cの周縁部を囲繞するように柱状体Cに対して固定的に設置することが可能である。図1で示すように柱状体Cの周縁部の外側に取り付けられた発電装置10は、柱状体Cの立設地周囲で風が吹いている場合、吹いている風から風力エネルギーを取得して、最終的には電気エネルギーに変換することができる。なお、本発明に係る発電装置は、実施形態を適宜設計することによって、風力エネルギーに代えて水力、潮力などの各種の力学的エネルギーを取得して最終的には電気エネルギーに変換することも可能である。
【0008】
発電装置10の周囲環境から得られた力に基づいて取得した力学的エネルギーから電気エネルギーへの変換を実現する発電装置10の構成について以下に述べる。発電装置10は、風力エネルギーなどの力学的エネルギーを効率的に取得するエネルギー取得装置12として働く盤体14、16、および、エネルギー取得装置12で取得した力学的エネルギーを他の装置に伝達する用に供する伝動装置18を有する。伝動装置18は、例えば1または複数の歯車である伝動要素を含んで構成され、エネルギー取得装置12から機械エネルギーの態様で供給を受けたエネルギーを後段の装置、例えば後述する増速器20またはエネルギー変換装置22に伝達する。いずれにせよ、エネルギー取得装置12で取得した力学的エネルギーは、他の装置を介してまたは直接的に、最終的にはエネルギー変換装置22に伝達されることとなる。
【0009】
発電装置10はさらに、任意で設置可能な構成要素として、伝動装置18の出力部に接続され、伝動装置18から伝達を受けた機械エネルギーを増幅して後段の装置、例えば後述するエネルギー変換装置22に出力する増速器20を備えてもよい。
【0010】
発電装置10はさらに、伝動装置18の出力部と直接的に、または増速器20などの機器を介して間接的に接続され、伝動装置18から供給を受けた力学的エネルギー、特に機械エネルギーを変換して電気エネルギーを生成するエネルギー変換装置22(狭義の「発電機」)を有する。本発明に係る発電装置10が採り得る概略的な構成は、図1の斜視図の他、図2のブロック図でも示している。さらに、図1の実施態様を採る発電装置10の正面図を図3で、上面図を図4で示している。
【0011】
図1で示す発電装置10の実施形態では、エネルギー取得装置12の構成要素としての2つの盤体14および16は、ともに円盤状の形状を採り、各盤体の面が互いに平行になるように配置される。盤体14、16の周縁部分は、風力などの力を受け取ったときに柱状体Cの長手軸を中心にして自在に回転可能である。すなわち、エネルギー取得装置12が力学的エネルギーを取得するとき、エネルギー取得装置12の一部分が柱状体Cに対して回転するといえる。
【0012】
本実施形態の場合、発電装置10は、図1で示すように、エネルギー取得装置12の回転軸の方向が地面Gに対して垂直になるように設置するいわゆる垂直軸型風車の態様を採っている。そのため、本態様では、相互に平行に配置される盤体14および16は、高さを異ならせて上下に設置されることとなる。そのため、本実施形態の説明では以後、盤体の配置高さの関係で相対的に上側に配置された盤体を上部盤体14、相対的に下側に配置された盤体を下部盤体16と称することとする。
【0013】
垂直軸型風車の態様を採った場合には、特に、エネルギー取得装置12は風向きにかかわらず風の力を受け取って風力エネルギーを取得することができる等の点で利点を有する。もっとも、本発明に係る発電装置は、本実施形態のような垂直軸型風車の態様に限定されず、水平軸型風車の態様を採って形成しても構わない。
【0014】
エネルギー取得装置12は、盤体14、16の少なくとも一方に、風の力を直接的に受ける受力体を有する。添付図面においては、上部盤体14に設けられている受力体を参照符号24で、下部盤体16に設けられている受力体を参照符号26で示している。本願明細書でも以後、これらの参照符号に基づいて本発明の実施形態の説明を行なう。
【0015】
各図に示されている本実施形態では、受力体24、26として、パドル型の形状を採るものをエネルギー取得装置12の盤体14、16に取り付けている。しかしながら、受力体24、26の形状はこれに限定されず、発電装置10の周囲に存するエネルギーを取得可能な形状であれば、任意の形状を採るものを受力体として使用可能である。採り得る受力体24の態様としては、本実施形態で用いられる受力体24のように風の力を受け止めることで回転する抗力型のもの、または、受力体の表面と裏面で空気の流速を異ならせる形状として、それによって生じる揚力を利用して回転する、すなわち揚力型のものが挙げられる。たとえば、プロペラファン形状、ターボファン形状、斜琉ファン形状などがある。
【0016】
本実施形態では、上部盤体14および下部盤体16ともに3つずつの受力体24、26が、各盤体の周縁部側面上に均等な間隔をとって備え付けられている。もっとも、盤体14、16上での配置場所や各盤体への取付数量等に関する受力体24、26の具体的な配置は、発電装置10の態様(例えば、垂直軸型風車であるか、水平軸型風車であるか)の他、発電装置10の設置場所の周囲環境、受力体24、26および発電装置10の形状、寸法および重量等に応じて、任意に決定することができる。
【0017】
受力体24、26は、本実施形態のようにパドル型の形状を採る場合、添付図面に示すように、その基端部が盤体14、16の周縁部側面上に連結され、周縁部側面からその外側方向に延伸している柄部28と、柄部28の先端部に連結され風の力を受け止める風杯30を含んで構成されている。なお、本願においては、上部盤体14に取り付けられた受力体24の柄部28および風杯30をそれぞれ参照符号28aおよび30aで、他方、下部盤体16に取り付けられた受力体26の柄部28および風杯30をそれぞれ参照符号28bおよび30bで示す。
風杯30の形状は、風を受け止める用に供する窪みを有する半球状または半円柱状などであることが好ましいが、これらの形状には限定されない。
【0018】
なお、所定の方向から風が吹く場合における、上部盤体14、下部盤体16およびこれらに挟持されるように配設される歯車のそれぞれの想定される回転方向に鑑みて、上部盤体14に連結された受力体24および下部盤体16に連結された受力体26がともに効率的に風力を捕捉できるよう、風杯30a、30bの配設方向、より具体的には風を捕捉する風杯の窪み部分の配設方向を考慮して設計ができると好ましい。
【0019】
受力体24の柄部28および風杯30を構成する材料は、発電装置10の設置環境などに応じて材料特性を考慮して、合成樹脂や金属など1または複数の任意の材料を用いることができる。
エネルギー取得装置12の構成要素としての盤体の構造は、図5を参酌して行なう以下の説明によって、さらに具体的に理解できるはずである。図5は、上部盤体14を高さ方向の中間地点で上下の盤面に対して平行に切断してその断面を上方向から見た上面断面図(図5上図)と、上部盤体14をその直径に沿って垂直に切断してその断面を正面すなわち上部盤体14の周縁部側面の方向から見た側面断面図(図5下図)を示している。
なお、下部盤体16については断面の図示を省略するが、頂面と底面の構造の一部分が逆であることを除いては上部盤体14の構造と本質的に同様である。
【0020】
図5で示すように、本実施形態で用いられる上部盤体14は、その頂面から底面を貫通するように中心部が開口している環状の円盤体である。なお、本実施形態では、発電装置10を円柱体Cに固着することを想定して、開口部を形成する空間の形状を円柱体Cの外形に適合するような寸法の円柱状に形成している。しかしながら、発電装置10を固着する柱状体の外形に応じて、開口部の形状は任意に設計可能である。例えば、柱体の外形が四角柱状である場合には、これに応じて発電装置の開口部の空間形状も、これに適合する四角柱状に形成することとなる。
【0021】
上部盤体14は、盤体の少なくとも一部にいわゆる軸受(ベアリング)のような構造体を含む構成を採ることによって、発電装置10の周辺に吹く風を捕らえて風力エネルギーの効率的な取得を実現することができる。
上部盤体14は、上部盤体14の周縁部を構成し、受力体24の柄部28の基端部と連結され、受力体24が捕らえた風の力に基づいて発電装置10が固着された円柱体Cに対して自在に回転する外軌道輪32を有する。外軌道輪32の回転可能な方向については、図5の両方向矢印D1で示している。
【0022】
上部盤体14はさらに、外軌道輪32の内壁と当接し外軌道輪32の円滑な回転を支援する用に供する、玉またはころ等の転動体34を複数個有する。
これに加えて、上部盤体14は、柱状体Cに対して固定的に連結され上部盤体14の全体を支持するとともに、それぞれの転動体34と当接する内軌道輪36を有する。内軌道輪36が各転動体34と当接することは、風力を受けた外軌道輪32の円滑な回転の確保に貢献していると言うことができる。換言すれば、内軌道輪36が柱状体Cに対して固定的に連結されているとき、複数の転動体34が内軌道輪36および外軌道輪32の間にある空間内で転動することによって、内軌道輪36に対する位置関係において外軌道輪32が回転するということである。
【0023】
上述した外軌道輪32、転動体34および内軌道輪36はいずれも、上部盤体14の本体部分の主要な構成要素となる。下部盤体16の本体部分の構成についても同様であってよい。なお、軸受の構成要素32、34および36の構成材料は、一般的な軸受の軌道輪や転動体に使用されるもので構わない。
上部盤体14の本体頂部および底部には、ベアリング構造の保護を主要な目的として、好ましくは盤体の内部を被覆する頂板38および底板40が配設されている。頂板38および底板40を構成する材料は、発電装置10の設置環境などに応じて材料特性を考慮して、合成樹脂や金属など1または複数の任意の材料を用いることができる。
なお、本願の添付図面では図示を省略したが、外軌道輪32の内側壁および内軌道輪36の外側壁の間には、各転動体34の安定した円滑な回転を確保する保持器を設けておくとより好適である。上部盤体14に保持器を設けることにより、各転動体34の配置間隔を一定に保ち、転動体34同士の接触を防ぐことができる。
【0024】
上部盤体14の底面側周縁部に相当する位置に配置される、外軌道輪32の底面上には、図6で示すように、伝動装置18の一部分の構成要素に相当する歯車の歯部42が周縁部全体にわたって設けられている。すなわち、本実施形態の場合、上部盤体14は全体として歯車を構成するといえることとなる。そのため、上部盤体14はエネルギー取得装置12の一部分であるとともに、伝動装置18の一部分でもあることとなる。
なお、下部盤体16についても頂面と底面の構造の一部分が逆であることを除いては上部盤体14の構造と本質的に同様である旨は上述したが、下部盤体16の場合には、上部盤体14とは異なりその底面ではなく頂面に歯車の歯部44が設けられている。すなわち、本実施形態の場合、下部盤体16も全体として歯車を構成しているといえる点や、下部盤体16もまたエネルギー取得装置12の一部分であるとともに伝動装置18の一部分でもあるとみなすことができる点については、上部盤体14と同様である。
【0025】
本実施形態に係る発電装置10は、相互の面に対し平行に配置されている上部盤体14と下部盤体16の間に挟設すなわち挟持され各盤体の歯部42、44に噛合している歯車、すなわちかさ歯車46を有する。かさ歯車46は、伝動装置18の一部分を構成する要素である。
すなわち、各盤体の外軌道輪32には、かさ歯車46の歯部と噛合する歯部42、44が設けられ、これによって、エネルギー取得装置12が力学的エネルギーを取得したときには、同装置12の盤体14、16の周縁部が柱状体Cに対して回転することとなる。
【0026】
かさ歯車46は、上部盤体14および下部盤体16に対して所定の角度、図1ないし7などで図示している実施形態の場合では90度の角度をつけて配設されている。しかしながら、盤体14、16に対するかさ歯車46の配設角度は90度に限定されず、盤体14、16もしくはその歯部42、44または歯車46の寸法、種類などに応じて任意の角度を採り得る。また、相互に噛合し合う盤体の歯部42、44およびかさ歯車46の歯すじは、直歯でも曲歯でも任意の形状を採り得る。
【0027】
各盤体の歯部42、44に噛合する歯車46の型式種類もまた、かさ歯車には限定されない。盤体14、16の少なくとも一方から機械エネルギーを受け取り、これを後段の装置に伝達可能なものでさえあれば、歯車46はいかなる型の歯車でも構わない。例えば、騒音軽減のために、製造が容易でコストパフォーマンスの点では優れるすぐばかさ歯車に代えてまがりばかさ歯車を歯車46として用いて、これに適合させるべく盤体の歯部42、44をまがりばかさ歯車46の歯部と噛合するように構成してもよい。
言わば、伝動装置18は、エネルギー取得装置12の回転に基づき力学的エネルギーの伝達を受けることになる。
【0028】
伝動装置18では、歯車以外の要素を用いて後段装置への力の伝達を実現しても構わない。例えば、伝動装置18として、無段変速機すなわち連続可変トランスミッションを用いてもよい。あるいは、上部盤体14の底面周縁部および下部盤体16の頂面周縁部上には、上述の実施形態のように歯部を設ける代わりにゴムなどの高摩擦材料で形成された面を設けてもよい。この場合、上部盤体14と下部盤体16の間に挟持される構成要素は、かさ歯車の代わりに、形状が円錐台状でありその側面上がゴムなどの高摩擦材料で覆われた円錐台状体を用いてもよい。あるいは、少なくとも周縁部が高摩擦材料で形成されているタイヤ状の構成要素を盤体14、16に挟持してもよい。
このように、ゴムなどの高摩擦材料を用いて後段装置への力の伝達を実現する構成によれば、本発明に係る発電装置を、風力以外に起因する力学的エネルギーを捕捉可能な装置にすることができる。例えば、本発明に係る発電装置を水中または水流の移動径路上に設置して、水流や潮汐力など水の移動エネルギーを捕捉して電気エネルギーに変換する、いわゆる水力発電装置として構成することも可能となる。
【0029】
伝動装置18は、エネルギー取得装置12から受け取った機械エネルギーを増速器20、エネルギー変換装置22などの伝動装置18の後段に接続された装置に伝達する出力伝達軸48を有する。本実施形態の場合、出力伝達軸48は機械的回転エネルギーを後段の装置へ出力伝達する。
出力伝達軸48は、盤体14、16の歯部42、44に直接噛合されたかさ歯車46の面中心部に直接固定され当該面の外側に向けて延伸している回転軸をそのまま伝動装置18の出力伝達軸48として適用してもよい。あるいは、かさ歯車46から延伸している回転軸をさらにギアボックスなどの補助伝動装置50と接続し、補助伝動装置50の出力軸を出力伝達軸48として適用してもよい。
【0030】
伝動装置18とその後段に接続される増速器20やエネルギー変換装置22、いわば一連のエネルギー処理装置の配置関係については、図7を参照して説明する。増速器20やエネルギー変換装置22は、任意の位置に設置することが可能である。もっとも、発電装置10の内部領域、例えば上部盤体14と下部盤体16の間に挟まれている空間領域内に設置することが、特に空間の有効利用の観点から好ましい。また、発電装置10の内部空間に増速器20やエネルギー変換装置22の配置領域を確保できれば、既存の柱状体Cにさらなる加工を加える必要なく、発電装置10をそのまま柱状体Cに取付可能になる点でも発電装置10は利点を有する。
【0031】
図7には、かさ歯車46および出力伝達軸48の他、補助伝動装置50を含んで構成されている伝動装置18の構成の一例が示されている。かさ歯車48を直接的に増速器20またはエネルギー変換装置22と接続するのではなく、補助伝動装置50を介して接続すれば、増速器20またはエネルギー変換装置22の設置場所はかさ歯車48の出力軸上周辺に限定されることはなくなり、発電装置10の構造設計の自由度が増すという利点を有する。
もっとも、エネルギー変換装置22等の装置の配置場所が確保されていて、取得した風力エネルギーの損失をできるだけ抑えるという観点を重視したい場合には、図1、3および7で示す実施形態に拘らずに、補助伝動装置を介さず直接に出力伝達軸48としてのかさ歯車46の出力軸を後段の装置に接続しても構わない。
【0032】
図7では、補助伝動装置50がギアボックスである場合の一例を図示している。同図では補助伝動装置50の外枠すなわち補助伝動歯車の保護ケース部を破線で示して、補助伝動装置50の内部構造、ひいては伝動装置18の全体構造をより具体的に理解しやすいような描写にしている。
図7で示す実施形態の補助伝動装置50の場合、かさ歯車46は、その出力軸に円筒状の小歯車46sが固着されている。そして小歯車46sは、補助伝動歯車52に噛合され、補助伝動歯車52はさらに、出力伝達軸48が取り付けられている別の補助伝動歯車54に噛合されている。もちろん、図示している補助伝動装置50の構造は一例にすぎず、任意の構成により後段の装置に機械エネルギーを供給可能である。
なお、補助伝動装置50の伝動要素も、上部盤体14の底面周縁部、下部盤体16の頂面周縁部やこれらの両盤体に挟持されている円錐台形要素の側面と同様、歯車に限らず他の力伝達構成要素を用いて力の伝動を実現しても構わない。例えば、上述した本発明の変形例のように、ゴムなどの高摩擦材料で上部盤体14の底面周縁部、下部盤体16の頂面周縁部や円錐台形要素の側面を覆うことが挙げられる。
【0033】
増速器20やエネルギー変換装置22の、出力伝達軸48との接続や配置場所に関する構成態様は、図7の例示図を参酌して説明したように発電装置10の内部に配置することが好ましいものの、この限りではない。例えば、受力体24、26との接触を避けられるような構成である限りで、エネルギー変換装置22を発電装置10の外部空間に配置しても構わない。このような配置構造によれば、発電装置10の構造はより簡易なもので済むようになり、さらには、発電装置10を容易に柱状体Cに設置することができる。
【0034】
また、図8で示す発電装置10の実施態様の例では、柱状体Cの内部に増速器20やエネルギー変換装置22用の設置スペースSを設ける加工処理が予め行なわれている。そして、かさ歯車46の出力伝達軸48と直接的に接続されたエネルギー変換装置22は、設置スペースS内に配置されている。このような配置構造によれば、発電装置10の内部および周辺外部の空間を有効活用することができる。本態様は、発電装置10の設計と併せて柱状体Cを設計できる場合、または、既存の柱状体Cを自由に加工できる状況下にある場合などに特に有利な態様である。
【0035】
あるいは、柱状体Cに伝動装置18の出力伝達軸48が挿入可能な貫通孔を設けておいてもよい。この態様の場合には、貫通孔の一端側に伝動装置18を配置して出力伝達軸48を貫通孔に挿入する。貫通孔の他端側にはエネルギー変換装置22などの装置を配置して、貫通孔の他端側から突き出ている出力伝達軸48とエネルギー変換装置22などの装置を接続する。かかる構成によれば、発電装置10や柱状体Cの内部空間の有効利用を図ることができる。
【0036】
上述したとおり、増速器20は、発電装置10の構成要素として設置するか否かは任意である。発電装置10に増速器20を設置する場合には、機能的な観点からは、公知の風力発電装置に設置され得る増速器と同様のものでよい。
増速器20は機械的回転エネルギーを出力する出力回転軸56を有し、出力回転軸56はエネルギー変換装置22の入力に接続される。かかる接続構造により、増速器20は、伝動装置18の出力伝達軸48から受け取った機械的回転エネルギーを増幅して、増速器20への入力時と比較して増幅した回転エネルギーを後段の接続装置に伝送することができるようになる。
【0037】
エネルギー変換装置22もまた、機能的な観点からは、公知の風力発電装置に設置されるエネルギー変換装置と同様のものでよい。すなわち、エネルギー変換装置22は、伝送装置18から直接的に、または増速器20を介して間接的に受け取った、当初は風力エネルギーであった機械的回転エネルギーを電気エネルギーに変換することができる。
【0038】
エネルギー変換装置22は、電力ケーブル(不図示)を介して外部の変圧器と接続して、発電装置10を電力系統の一部分に組み入れることができる。あるいは、エネルギー変換装置22は、電力ケーブルを介して外部のバッテリーと接続して電気エネルギーをバッテリーに蓄電することもできる。この場合、発電装置10は独立電源として使用されることとなる。
なお、上下の盤体14、16に挟まれるように配置される伝動装置18は、発電装置10毎に1つずつというような限定はなく、複数個、例えば盤体の両側周縁部に1つずつ配設されてもよい。この場合には、各伝動装置18の出力伝達軸48ごとに別々のエネルギー変換装置22などの装置が接続されるが、例えば、あるエネルギー変換装置22を発電装置10の内部空間に配置する一方で、別のエネルギー変換装置22を発電装置10の外部または柱状体内部の設置スペースSに設置するというように、後段接続装置ごとに配置態様を適宜に変えた構成にしてもかまわない。
【0039】
本発明に係る発電装置10には、発電装置10の実施態様に応じて、ここまで説明してきた構成要素の他にも様々な補助装置を取り付けることができる。図示は省略するが、例えば、エネルギー取得装置12に設けられている受力体24、26がより効率的に風力を捕捉できるように、風が吹く方向などに応じて受力体24、26の風杯30a、30bの配置方向を自在に調整可能にする制御機構を確立しておくと好ましい。
なお、柱状体Cへの発電装置10の設置は、柱状体Cが既設の設置物である場合にも自在に取付可能になるよう、例えば、盤体の一部を分離および結合可能な構造にしておくと好ましい。また、発電装置10が比較的小型に形成され、既設の柱状体Cの高さが比較的低いような場合には、柱状体Cの上方から、発電装置10の中心部に形成されている孔状空間内に柱状体を潜らせ、任意の位置で発電装置10を柱状体Cに対して固定してもよい。あるいは、柱状体Cの新規設置と同時期に発電装置10の設置作業を行なえば、発電装置10およびこれを支持する柱状体Cを含んで構成される発電設備を一体的に形成することができる。このような設置例の他にも、任意の方法で発電装置10を柱状体Cに取り付けることが可能である。
【0040】
ここまで述べてきたような構成を有する発電装置10が発電を実現するための動作は、概略的に説明すると以下のとおりである。発電装置10は、エネルギー取得装置12で風力を受け取り、受け取った力を伝動装置18で機械的回転エネルギーとして処理し、機械的回転エネルギーを後段に接続された装置、すなわち必要に応じて設けられた増速器20や、エネルギー変換装置22に伝達する。エネルギー変換装置22では、供給を受けた機械的回転エネルギーに基づいて電気エネルギーを生成し、エネルギー変換装置22の出力部に接続された電力ケーブルを介して、発電した電気を外部の電力系統やバッテリーに提供する。
【0041】
ところで、エネルギー取得装置12に設けられている受力体24、26は、風の力を捕捉するために極めて重要な構成要素である。受力体24、26が風力エネルギーなどの外力を捕捉するためには、発電装置10の本体部分から径方向外側に突き出た構成を採ることが最も効率的な設計態様であるといえる。
しかしながら、受力体24、26が発電装置10の本体部分から径方向外側に突き出ていると、受力体は外部物体と衝突する可能性もあり、または、風速が速いときには過度に大きな風力エネルギーを直接受けることに起因して受力体が破損する可能性もある。
【0042】
そこで、エネルギー取得装置12、特に受力体24、26の破損を未然に防ぐべく、これを補強可能な何らかの補強部材をエネルギー取得装置12、特にその盤体に設けるとより好ましい。以下においては、補強部材を取り付けたエネルギー取得装置12のいくつかの実施態様を、添付の図9ないし12を参照しながら説明する。
【0043】
図9は、上部盤体14に設けられた複数の風杯30aに補強部材60を取り付けた発電装置10の実施形態例を示したものである。なお、本図では図示を省略しているが、下部盤体16に設けられた複数の風杯30bに対しても同様に補強部材を取り付けることができる。
図9の実施形態では、上部盤体14の周側面からそれぞれ盤体の径方向外方に延びている複数の風杯30aを1つに繋ぐように長尺環状の補強部材60が取り付けられている。この構造によれば、受力体24が1つの集合体として構成されることとなる。補強部材60は、上部盤体14から柄部28を介して延びている各風杯30aの外端部に取り付けられ、各風杯30aひいては発電装置10全体の側方を覆ういわば外枠として、強風に対する各風杯30aの耐久力の向上や、風による飛来物などの風杯30aへの衝突に対する耐性の向上などに資する。
【0044】
長尺環状の補強部材60は、ワイヤ状の長尺体から形成してもよく、あるいは、補強部材60が風杯30aに対して線状または面状に連結できるよう、板状体を風杯の外径に対応するように適宜加工することによって補強部材60を形成しても構わない。
【0045】
図10の実施形態では、上部盤体14または下部盤体16に取り付けられる各風杯30の外端部同士を連ね結ぶ補強部材60に加えて、各風杯30の上下面を覆うように補強部材62を取り付けることによって、1つの集合体としての受力体24を実現する構成を採っている。この実施形態においては、補強部材62は、風杯30の上方を覆う上部補強部材62aと、風杯30の下方を覆う下部補強部材62bとを含んで構成されている。また、本実施形態において上部補強部材62aおよび下部補強部材62bは板状体の形状を採り、風杯30の形状は、補強部材62a、62bに対して面状に連結可能になるよう、その頂部および底部が平板状に形成されている。
【0046】
上部補強部材62aは、各風杯30の頂部に取り付けられ、各風杯30の上方を覆ういわば上枠として、風による飛来物などが風杯30や発電装置10の本体部分に上方から直接衝突しないように保護する役割を果たす。同様に、下部補強部材62bは、各風杯30の底部に取り付けられ、各風杯30の下方を覆ういわば下枠として、風による飛来物などが風杯30や発電装置10の本体部分に下方から直接衝突しないように保護する役割を果たす。
【0047】
また、図11の実施形態では、長尺環状の補強部材64は、上述の補強部材60、62のように各風杯30aの窪みを形成する外壁部分を外から覆うのではなく、各風杯30aの窪み部分を貫通して各風杯を連ね結ぶように取り付けられる。かかる構造によっても1つの集合体としての受力体24が形成され、強風に対する各風杯30aの耐久力の向上などが図られる。
【0048】
上述した補強部材60、62、64は、これらの一部またはすべてを適宜に組み合わせて発電装置10の保護を図っても構わない。例えば、図12で示すように、各風杯30の上部から下面を一体的に覆うように形成され上述の補強部材60および62(62a、62b)の機能を併せもつ一体型の補強部材66を形成しても構わない。同図に示す例に限らず、補強部材の設計態様、とりわけ寸法や形状などは、本発明に係る発電装置を風力発電装置、水力発電装置または潮力発電装置のいずれの態様に具現化するかに応じて適宜定めることができる。
【0049】
これらの補強部材60、62、64、66に用いる材料は、発電装置の設置環境や、耐衝撃性、軽量性、加工容易性、耐腐食性などの材料特質を総合的に参酌して任意に選択してよい。
なお、ここまで本発明の実施態様として説明してきた構成例はいずれも、上部盤体14の径の寸法と下部盤体16の径の寸法は実質的に一致していた。しかしながら、1組の盤体の寸法を一致させる必要は必ずしもなく、一方の盤体の寸法が他方の盤体の寸法よりも大きくても構わない。この場合、盤体14、16に対するかさ歯車46の配設角度は90度に限定されず任意の角度を採り得る。また、上部盤体14または下部盤体16に連結される受力体の寸法や形状を、盤体毎に変形させても構わない。
【0050】
さらに、ここまで本発明の実施態様として説明してきた構成例はいずれも、上部盤体14および下部盤体16の面の形状は実質的に真円状の盤体であった。しかしながら、1組の盤体の一方または両方の面形状を、伝動装置の構造に応じて楕円形など別の形状にしても構わない。
本発明において、添付の特許請求の範囲およびその要旨を逸脱することなく、様々な変更、置換が可能であり、または上述の実施例と本質的な構成が同等に構成され得ることは当業者にとって明らかである。
【符号の説明】
【0051】
10 発電装置
12 エネルギー取得装置
14 上部盤体
16 下部盤体
18 伝動装置
20 増速器
22 エネルギー変換装置
24、26 受力体
30a、30b 風杯
32 外軌道輪
34 転動体
36 内軌道輪
42、44 盤体歯部
46 歯車
48 出力伝達軸
50 補助伝動装置
60、62、64、66 補強部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12