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特開2024-33899熱電変換モジュール、電子部品、発電用モジュール、温調用モジュールおよび熱電変換モジュールの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024033899
(43)【公開日】2024-03-13
(54)【発明の名称】熱電変換モジュール、電子部品、発電用モジュール、温調用モジュールおよび熱電変換モジュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H10N 10/17 20230101AFI20240306BHJP
   H10N 10/01 20230101ALI20240306BHJP
【FI】
H01L35/32 A
H01L35/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022137815
(22)【出願日】2022-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100157277
【弁理士】
【氏名又は名称】板倉 幸恵
(74)【代理人】
【識別番号】100182718
【弁理士】
【氏名又は名称】木崎 誠司
(72)【発明者】
【氏名】大森 恒嗣
(72)【発明者】
【氏名】加藤 達哉
(57)【要約】
【課題】熱電素子の破壊を抑制した上で、ゼーベック効果またはペルチェ効果をより得られる熱電変換モジュールを提供する。
【解決手段】熱電変換モジュールは、第1の導体パターンが形成された第1主面を有し、絶縁性材料で形成された第1の基板と、第2の導体パターンが形成された第2主面を有し、絶縁性材料で形成され、第2主面が第1主面と対向して配置された第2の基板と、第1の導体パターンと第2の導体パターンとを電気的に接続する複数の熱電素子と、絶縁性材料で形成され、第1の基板と第2の基板との間に配置された素子収容体と、を備え、素子収容体には、熱電素子の数よりも多く、第1の基板に対向する面と、第2の基板に対向する面とを貫通する複数の貫通孔が形成されており、複数の貫通孔のうち、一部には、内側に熱電素子がそれぞれ充填されており、残余の貫通孔には、熱電素子が収容されていない。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱電変換モジュールであって、
第1の導体パターンが形成された第1主面を有し、絶縁性材料で形成された第1の基板と、
第2の導体パターンが形成された第2主面を有し、絶縁性材料で形成された第2の基板であって、前記第2主面が前記第1主面と対向して配置された第2の基板と、
前記第1の導体パターンと前記第2の導体パターンとを電気的に接続する複数の熱電素子と、
絶縁性材料で形成され、前記第1の基板と前記第2の基板との間に配置された素子収容体と、
を備え、
前記素子収容体には、前記熱電素子の数よりも多い複数の貫通孔であって、前記素子収容体のうち、前記第1の基板に対向する面と、前記第2の基板に対向する面とを貫通する複数の貫通孔が形成されており、
前記素子収容体の前記複数の貫通孔のうち、
一部の前記貫通孔には、内側に前記熱電素子がそれぞれ充填されており、
残余の前記貫通孔には、前記熱電素子が収容されていないことを特徴とする、熱電変換モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の熱電変換モジュールであって、
前記素子収容体を形成する絶縁性材料の熱伝導率は、前記第1の基板を形成する絶縁性材料の熱伝導率よりも小さく、かつ、前記第2の基板を形成する絶縁性材料の熱伝導率よりも小さいことを特徴とする、熱電変換モジュール。
【請求項3】
電子部品であって、
請求項1または請求項2に記載の熱電変換モジュールを備える、電子部品。
【請求項4】
発電用モジュールであって、
請求項1または請求項2に記載の熱電変換モジュールを備える、発電用モジュール。
【請求項5】
温調用モジュールであって、
請求項1または請求項2に記載の熱電変換モジュールを備える、温調用モジュール。
【請求項6】
熱電変換モジュールの製造方法であって、
絶縁性材料で形成された第1の基板及び第2の基板であって、第1の導体パターンが形成された第1の基板と、第2の導体パターンが形成された第2の基板と、を準備する準備工程と、
絶縁性材料で形成されたグリーンシートに、厚さ方向に貫通する複数の貫通孔を形成する孔形成工程と、
形成された前記複数の貫通孔の一部に、熱電材料粉末のペーストを充填するペースト充填工程と、
前記ペーストが充填された前記グリーンシートに対して、一方の面に前記第1の基板を前記第1の導体パターンが前記グリーンシートに対向するように配置し、他方の面に前記第2の基板を前記第2の導体パターンが前記グリーンシートに対向するように配置した状態で熱圧着する熱圧着工程と、
前記熱圧着工程により積層された積層体を焼成する焼成工程と、
を備える、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電変換モジュール、電子部品、発電用モジュール、ペルチェモジュールおよび熱電変換モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ゼーベック効果またはペルチェ効果を利用した熱電変換素子(熱電素子)を使い、発電や電子機器等の温調に用いる熱電変換モジュールが知られている(例えば、特許文献1,2参照)。特許文献1に記載された熱電変換モジュールでは、熱電材料で形成された円柱状の熱電素子本体部の側面が、導電性粒子と絶縁材料とから構成される被覆層に覆われている。被覆層により、外部から熱電素子本体部への水分の付着が防止されている。
【0003】
特許文献2に記載された熱電変換モジュールでは、複数の熱電素子間に絶縁性樹脂が充填され、熱電素子同士が絶縁性樹脂で固着されることにより、脆弱な熱電素子の破壊を抑制している。充填された絶縁性樹脂として、熱伝導率を下げるために、微細な気泡を含むエポキシ樹脂が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5638329号公報
【特許文献2】特許第4200256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、熱電変換モジュールにおいては、熱電素子の腐食や破壊を抑制し、かつ、熱電素子間に配置される空間または樹脂等の物質の熱伝導率を低下させることが好ましい。しかしながら、特許文献1に記載された技術では、熱電素子間が機械的に補強されないために、熱電変換モジュールの耐衝撃性が低いことや、部材間の熱膨張差による破壊により耐久性に課題があった。一方で、特許文献2に記載された技術では、熱電素子間がエポキシ樹脂で充填されているため、熱伝導率が十分に低下しないという課題があった。
【0006】
本発明は、上述した課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、熱電素子の破壊を抑制した上で、ゼーベック効果またはペルチェ効果をより得られる熱電変換モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述した課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現できる。
【0008】
(1)本発明の一形態によれば、熱電変換モジュールが提供される。この熱電変換モジュールは、第1の導体パターンが形成された第1主面を有し、絶縁性材料で形成された第1の基板と、第2の導体パターンが形成された第2主面を有し、絶縁性材料で形成された第2の基板であって、前記第2主面が前記第1主面と対向して配置された第2の基板と、前記第1の導体パターンと前記第2の導体パターンとを電気的に接続する複数の熱電素子と、絶縁性材料で形成され、前記第1の基板と前記第2の基板との間に配置された素子収容体と、を備え、前記素子収容体には、前記熱電素子の数よりも多い複数の貫通孔であって、前記素子収容体のうち、前記第1の基板に対向する面と、前記第2の基板に対向する面とを貫通する複数の貫通孔が形成されており、前記素子収容体の前記複数の貫通孔のうち、一部の前記貫通孔には、内側に前記熱電素子がそれぞれ充填されており、残余の前記貫通孔には、前記熱電素子が収容されていない。
【0009】
この構成によれば、第1の導体パターンが形成された第1の基板と、第2の導体パターンが形成された第2の基板との間に、複数の熱電素子が充填された貫通孔を有する素子収容体が配置される。素子収容体には、熱電素子が充填される貫通孔とは別に、熱電素子が収容されずに空隙を形成している貫通孔が含まれている。そのため、本構成では、素子収容体が空隙を形成している貫通孔を含まない場合と比較して、素子収容体の熱伝達率を低下させることができる。また、素子収容体は、貫通孔が形成されていない部分が、熱電素子が配列された配列方向に沿って熱電素子の表面を覆っている。そのため、熱電素子が外部環境を原因とする水分が付着することによって、熱電素子における腐食等の破壊が進行することを抑制できる。さらに、素子収容体は、配列方向に沿って、隣接する熱電素子間を接続している。そのため、配列方向に直交する方向の機械的強度を向上させることができる。すなわち、本構成では、熱電素子の破壊を抑制した上で、素子収容体の熱伝達率を低下させることによりゼーベック効果またはペルチェ効果をより効果的に得ることができる。
【0010】
(2)上記形態の熱電変換モジュールにおいて、前記素子収容体を形成する絶縁性材料の熱伝導率は、前記第1の基板を形成する絶縁性材料の熱伝導率よりも小さく、かつ、前記第2の基板を形成する絶縁性材料の熱伝導率よりも小さくてもよい。
この構成によれば、素子収容体の熱伝導率が、第1の基板および第2の基板の熱伝導率よりも小さい。そのため、第1の基板と第2の基板との間における熱移動がさらに抑制され、ゼーベック効果またはペルチェ効果をより効果的に得ることができる。
【0011】
(3)本発明の他の一形態によれば、熱電変換モジュールの製造方法が提供される。この製造方法は、絶縁性材料で形成された第1の基板及び第2の基板であって、第1の導体パターンが形成された第1の基板と、第2の導体パターンが形成された第2の基板と、を準備する準備工程と、絶縁性材料で形成されたグリーンシートに、厚さ方向に貫通する複数の貫通孔を形成する孔形成工程と、形成された前記複数の貫通孔の一部に、熱電材料粉末のペーストを充填するペースト充填工程と、前記ペーストが充填された前記グリーンシートに対して、一方の面に前記第1の基板を前記第1の導体パターンが前記グリーンシートに対向するように配置し、他方の面に前記第2の基板を前記第2の導体パターンが前記グリーンシートに対向するように配置した状態で熱圧着する熱圧着工程と、前記熱圧着工程により積層された積層体を焼成する焼成工程と、を備える。
この構成によれば、孔形成工程により、グリーンシートに対して、熱電素子が配置される貫通孔と、加工後に空隙として機能する貫通孔との両方が形成される。ペースト充填工程において、所定の貫通孔に熱電素子の元となる熱電材料粉末のペーストが充填される。そのため、熱電素子の配置後に、第1の基板と第2の基板との間に絶縁性材料を流し込む方法と比較して、簡単に、空隙としての貫通孔を形成できる。また、熱電素子の周りが絶縁性材料に覆われた熱電変換モジュールを製造できる。
【0012】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、熱電変換モジュール、ペルチェモジュール、熱電素子を備える装置、電子部品、発電用モジュール、熱電変換モジュールの製造方法およびこれらを備えるシステム等の形態で実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態の熱電変換モジュールの概略斜視図である。
図2】熱電変換モジュールの分解斜視図である。
図3】熱電素子の説明図である。
図4図2における熱電変換モジュールのA-A断面の概略図である。
図5】熱電変換モジュールの製造方法のフローチャートである。
図6】比較例1の熱電変換モジュールの説明図である。
図7】比較例2の熱電変換モジュールの説明図である。
図8】変形例1の素子収容体の説明図である。
図9】変形例2の素子収容体の説明図である。
図10】変形例3の熱電変換モジュールを備える電子部品の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施形態>
図1は、本発明の実施形態の熱電変換モジュール100の概略斜視図である。本実施形態の熱電変換モジュール100では、第1の基板10と第2の基板20との間に配置された素子収容体30が、熱電素子を覆うと共に、積層方向に貫通している貫通孔を有している。本実施形態では、熱電素子が素子収容体30に覆われることにより熱電素子に水分が付着することによる熱電素子の破壊の進行を抑制できる。また、素子収容体30が空隙としての貫通孔を有することにより、素子収容体30の熱伝達率を低下させ、熱電変換モジュール100のゼーベック効果またはペルチェ効果をより得ることができる。
【0015】
図1に示されるように、熱電変換モジュール100は、平板状の第1の基板10と、第1の基板10と対向するように配置された平板状の第2の基板20と、第1の基板10と第2の基板20との間に配置された素子収容体30と、図示されていない複数の熱電素子と、リード線LN1,LN2と、を備えている。第1の基板10および第2の基板20は、第1の基板10と、素子収容体30と、第2の基板20とが積層された積層方向(厚さ方向)に直交する面方向に沿う矩形状の平面を有している。なお、本実施形態では、図1に示されるように、X軸、Y軸、およびZ軸で構成される直交座標系CSが定義されている。直交座標系CSでは、Z軸が積層方向に平行な軸として定義され、矩形状の第1の基板10および第2の基板20の各辺に平行なX軸と、Y軸とが定義されている。なお、直交座標系CSは、図2以降に示される直交座標系CSと対応している。
【0016】
リード線LN1,LN2は、後述する第2の基板20に形成された第2の導体パターンを介して、電気的に接続されている。熱電変換モジュール100をペルチェモジュールとして利用する場合、リード線LN1,LN2間に電流が流れると、素子収容体30が充填されている複数の熱電素子によるペルチェ効果により、第1の基板10と、第2の基板20とに温度差が生じる。または、発電用モジュールとして利用する場合は第1の基板10と第2の基板20の間に温度差が生じた際に、リード線LN1とリード線LN2とを通して発電した電力を取り出すことができる。
【0017】
図2は、熱電変換モジュール100の分解斜視図である。なお、図2では、リード線LN1,LN2の図示が省略されている。図2に示されるように、第1の基板10は、平板状のセラミック基板13と、セラミック基板13が第2の基板20に対向する第1主面11に形成された第1の導体パターン12と、を備えている。本実施形態では、セラミック基板13は、絶縁性材料のアルミナで形成されている。本実施形態の第1の導体パターン12は、後述する複数の熱電素子40を電気的に直列で接続されるように、離間した8個の金属層で構成されている。
【0018】
第2の基板20は、平板状のセラミック基板23と、セラミック基板23が第1の基板10に対向する第2主面21に形成された第2の導体パターン22と、を備えている。セラミック基板23は、第1の基板10が備えるセラミック基板13と同じ基板である。本実施形態の第2の導体パターン22は、第1の導体パターン12により電気的に直列で接続された複数の熱電素子40を電気的に直列で接続するように、離間した9個の金属層で構成されている。9個の金属層のうち、金属層221,222は、セラミック基板23におけるX軸軸正方向側のYZ平面に平行な端面23Fまで延びている。金属層221は、リード線LN1に接続している。金属層222は、リード線LN2に接続している。
【0019】
素子収容体30は、図2に示されるように、Z軸方向に所定の厚さを有する略直方体形状を有している。素子収容体30は、絶縁性材料であるアルミナ等酸化物で形成されている。本実施形態では、素子収容体30を形成する絶縁性材料の熱伝導率は、第1の基板10を形成する絶縁性材料の熱伝導率よりも小さく、かつ、第2の基板20を形成する絶縁性材料の熱伝導率よりも小さい。素子収容体30には、第1の基板10に対向する第1面31と、第2の基板20に対向する第2面32とを貫通する25個の貫通孔33が形成されている。貫通孔33は、断面が円形状で、厚さ方向に沿って素子収容体30を貫通している孔である。
【0020】
図3は、熱電素子40の説明図である。図3には、素子収容体30および熱電素子40の概略上面図が示されている。図2,3に示されるように、熱電素子40は、素子収容体30に形成された25個の貫通孔33のうち、16個の貫通孔33の内側にそれぞれ充填されている。一方で、25個の貫通孔33のうち、熱電素子40が収容されていない残余の9個の貫通孔33は、空隙を形成している。換言すると、素子収容体30には、計16個の熱電素子40の数よりも多い25個の貫通孔が形成されている。
【0021】
熱電素子40は、8個のN型熱電変換素子(N型素子)41と、8個のP型熱電変換素子(P型素子)42とで構成されている。図2では、N型素子41が一種類の斜線のハッチングで表されている。P型素子42は、二種類の斜線のクロスハッチングで表されている。本実施形態のN型素子41およびP型素子42は、ビスマステルル系の材料で形成されている。
【0022】
図2に示されるように、N型素子41とP型素子42とは、それぞれ交互に配置されている。N型素子41およびP型素子42のそれぞれの厚さ方向に直交する側面は、素子収容体30により覆われている。換言すると、厚さ方向に直交する面方向(熱電素子40の配列方向)に沿って、各N型素子41の側面を覆う素子収容体30と、各P型素子42の側面を覆う素子収容体30とは、分断されずに接続されている。
【0023】
図4は、図2における熱電変換モジュール100のA-A断面の概略図である。図4に示されるように、第1の基板10に形成された第1の導体パターン12と、第2の基板20に形成された第2の導体パターン22とが、交互に配置されたN型素子41とP型素子42とを電気的に直列で接続する。これにより、リード線LN1,LN2間に電流が流れることで、熱電変換モジュール100がペルチェ機構として機能する。
【0024】
図5は、熱電変換モジュール100の製造方法のフローチャートである。図5に示される製造フローのように、初めに、第1の導体パターン12が形成された第1の基板10と、第2の導体パターン22が形成された第2の基板20とを準備する準備工程が行われる(ステップS1)。次に、絶縁性材料であるアルミナ等酸化物で形成されたグリーンシートに対して、厚さ方向に貫通する複数の貫通孔33をパンチングにより形成する孔形成工程が行われる(ステップS2)。
【0025】
グリーンシートに形成された複数の貫通孔33の一部に、熱電素子40の材料である粉末のペーストが充填されるペースト充填工程が行われる(ステップS3)。ペーストが充填されたグリーンシートの両面に、第1の基板10と、第2の基板20とを積層して配置した状態で熱圧着する熱圧着工程が行われる(ステップS4)。熱圧着工程では、グリーンシートの一方の面に、第1の導体パターン12が対向するように第1の基板10が配置されると共に、グリーンシートの他方の面に、第2の導体パターン22が対向するように第2の基板20が配置される。熱圧着工程により第1の基板10と、グリーンシートと、第2の基板20とが積層された積層体を焼成する焼成工程が行う(ステップS5)。最後に焼成後の第2の導体パターン22のうち、金属層221と222にリード線LN1,LN2を溶接にて取り付け製造フローが終了する。
【0026】
図6は、比較例1の熱電変換モジュール100xの説明図である。図6には、比較例1の熱電変換モジュール100xにおいて、実施形態の図3に対応する素子収容体30xおよび熱電素子40の概略上面図が示されている。図6に示される比較例1の熱電変換モジュール100xは、上記実施形態の熱電変換モジュール100と比較して、素子収容体30xに空隙として機能する貫通孔33が形成されていない。換言すると、比較例1では、第1の基板10と、第2の基板20との間で熱電素子40が存在しない部分の全てに、素子収容体30xが存在している。
【0027】
図7は、比較例2の熱電変換モジュール100yの説明図である。図7には、比較例2の熱電変換モジュール100yにおいて、実施形態の図3に対応する被覆層30yおよび熱電素子40の概略上面図が示されている。図7に示される比較例2の熱電変換モジュール100yは、上記実施形態の熱電変換モジュール100と比較して、素子収容体30の代わりに各熱電素子40の側面を被覆する被覆層30yを備えている。比較例2における熱電素子40の被覆層30yのそれぞれは、その他の熱電素子40の被覆層30yと接続されずに離間している。なお、図7には、比較のために、上記実施形態が備える素子収容体30の矩形状の外枠OBが破線で示されている。
【0028】
以上説明したように、本実施形態の熱電変換モジュール100が備える素子収容体30は、第1の基板10と第2の基板20との間に配置されている。素子収容体30には、計16個の熱電素子40の数よりも多い25個の貫通孔が形成されている。素子収容体30に形成された25個の貫通孔33のうち、9個の貫通孔33の内側に熱電素子40がそれぞれ充填されている。25個の貫通孔33のうち、熱電素子40が収容されていない残余の9個の貫通孔33は、空隙を形成している。そのため、本実施形態では、素子収容体30が空隙を形成している貫通孔33を含まない比較例1(図6)の熱電変換モジュール100xと比較して、素子収容体30の熱伝達率を低下させることができる。また、本実施形態では、気泡を含む樹脂により形成される素子収容体と比較して、素子収容体30の空隙率を貫通孔33の大きさや個数により調整できる。また、本実施形態の素子収容体30は、貫通孔33が形成されていない部分が、熱電素子40が配列された面方向に沿って熱電素子40の側面を覆っている。そのため、熱電素子40が外部環境を原因とする水分が付着することによって、熱電素子40における腐食等の破壊が進行することを抑制できる。さらに、素子収容体30は、面方向に沿って、比較例2(図7)の熱電変換モジュール100yと異なり、隣接する熱電素子40間を接続している。そのため、面方向に直交する積層方向(厚さ方向)の機械的強度を向上させることができる。これにより、強度が弱い熱電素子40が用いられても、機械強度が向上した素子収容体30によって熱電変換モジュール100の破壊を抑制できる。すなわち、本実施形態では、熱電素子40の破壊を抑制した上で、素子収容体30の熱伝達率を低下させることによりゼーベック効果またはペルチェ効果をより効果的に得ることができる。
【0029】
また、本実施形態では、素子収容体30を形成する絶縁性材料の熱伝導率は、第1の基板10を形成する絶縁性材料の熱伝導率よりも小さく、かつ、第2の基板20を形成する絶縁性材料の熱伝導率よりも小さい。そのため、第1の基板10と第2の基板20の面内での熱の移動は早く、且つ第1の基板10と第2の基板20との間における熱移動は抑制され、ゼーベック効果またはペルチェ効果をより効果的に得ることができる。
【0030】
また、本実施形態の熱電変換モジュール100の製造方法では、図5の製造フローに示されるように、絶縁性材料であるアルミナ等酸化物で形成されたグリーンシートに対して、厚さ方向に貫通する複数の貫通孔をパンチングにより形成する孔形成工程が行われる(ステップS2)。グリーンシートに形成された複数の貫通孔33の一部に、熱電素子40の材料である粉末のペーストが充填されるペースト充填工程が行われる(ステップS3)。ペーストが充填されたグリーンシートの両面に、第1の基板10と、第2の基板20とを配置した状態で熱圧着する熱圧着工程が行われる(ステップS4)。すなわち、本実施形態では、孔形成工程により、グリーンシートに対して、熱電素子40が配置される貫通孔33と、加工後に空隙として機能する貫通孔33との両方が形成される。ペースト充填工程において、複数の貫通孔33の一部に熱電素子40の元となる熱電材料の粉末ペーストが充填される。そのため、熱電素子40の配置後に、第1の基板10と第2の基板20との間に絶縁性材料を流し込む方法と比較して、簡単に、空隙としての貫通孔33を形成できる。また、熱電素子40の周りが絶縁性材料に覆われた熱電変換モジュール100を製造できる。
【0031】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0032】
<変形例1>
上記実施形態の熱電変換モジュール100は一例であって、熱電変換モジュールが備える構成や形状については変形可能である。熱電変換モジュールは、第1の基板10と、第2の基板20と、第1の導体パターン12と第2の導体パターン22とを電気的に接続する複数の熱電素子40と、熱電素子40が収容されていない貫通孔33と、を備える範囲で変形可能である。例えば、熱電変換モジュール100は、リード線LN1,LN2を備えていなくてもよい。第1の基板10と、第2の基板20とは、異なる形状を有しており、面方向に沿う矩形形状を有していなくてもよい。熱電素子40が充填されない貫通孔33の空隙には、大気やその他のガスが充填されてもよいし、真空であってもよい。
【0033】
貫通孔33が形成された素子収容体30の形状についても変形可能である。図8は、変形例1の素子収容体30aの説明図である。図8には、上記実施形態の図3に対応する変形例1の素子収容体30aおよび熱電素子40の概略上面図が示されている。変形例1の熱電変換モジュールでは、上記実施形態の熱電変換モジュール100と比較して、素子収容体30aに形成されている貫通孔33aが異なる。図8に示されるように、変形例1の貫通孔33aは、熱電素子40が充填される8個の素子充填用貫通孔33Aと、空隙である33個の空隙用貫通孔33Bとで構成されている。空隙用貫通孔33Bは、素子充填用貫通孔33Aよりも断面積が小さく、素子収容体30aを厚さ方向に貫通する孔である。
【0034】
<変形例2>
図9は、変形例2の素子収容体30bの説明図である。図9には、上記実施形態の図3に対応する変形例2の素子収容体30bおよび熱電素子40の概略上面図が示されている。変形例2の熱電変換モジュールでは、上記実施形態の熱電変換モジュール100と比較して、素子収容体30bの形状が異なる。図9に示されるように、変形例2の素子収容体30bは、熱電素子40のそれぞれの側面を被覆している被覆層34と、各被覆層34を接続している接続部35とを備えている。換言すると、被覆層34と、接続部35とで囲まれている領域が、変形例2における貫通孔33bである。被覆層34および接続部35は、第1の基板10と第2の基板20との間で厚さ方向に沿って延びている。図9に示される変形例2のように、貫通孔33bの断面形状は円以外の多角形などでもよい。
【0035】
素子収容体30の材質は、アルミナ等酸化物以外の絶縁性材料で形成されていてもよい。例えば、素子収容体30は、ガラス、ガラスを含むセラミック、および樹脂などで形成されていてもよい。素子収容体30の熱伝導率は、第1の基板10のセラミック基板13の熱伝導率と、第2の基板20のセラミック基板23の熱伝導率とのいずれよりも低いことが好ましい。一方で、素子収容体30の熱伝導率は、セラミック基板13の熱伝導率以上であってもよいし、セラミック基板23の熱伝導率以上であってもよい。
【0036】
熱電素子40の形状についても変形可能であり、例えば、P型素子42の形状と、N型素子41の形状とが異なっていてもよい。例えば、熱電素子40は、円柱状ではなく、直方体形状を有していてもよい。熱電素子40の材質として、例えばビスマステルル系以外で、スクッテルダイト系、マグネシウムシリサイド系、および酸化物系が用いられてもよい。第1の基板10のセラミック基板13および第2の基板20のセラミック基板23の材質として、アルミナ以外で、アルミナ等酸化物、ガラス、窒化アルミニウム、ガラスセラミック、および窒化珪素等が用いられてもよい。
【0037】
<変形例3>
図10は、変形例3の熱電変換モジュール100cを備える電子部品(セラミックパッケージ)200の概略断面図である。図10に示される電子部品200は、熱電変換モジュール100cと、光モジュールとしての素子収納パッケージ150とを備えている。熱電変換モジュール100cは、上記実施形態の熱電変換モジュール100に対して、第1の基板10の代わりにベース基板153を備える。図10に示される電子部品200では、ベース基板153が、熱電変換モジュール100cの構成の一部であると共に、素子収納パッケージ150の構成の一部である。これにより、熱電変換モジュール100cと素子収納パッケージ150とが一体化されて作製されることにより、電子部品200の小型化と、電子部品200の製造コストの抑制とが可能になる。熱電変換モジュール100cは、光モジュール用の素子収納パッケージ150の冷却機構として機能する。
【0038】
図10に示されるように、素子収納パッケージ150は、ベース基板153と、発光素子60が収納される収納空間SPを形成する枠体155および蓋体154と、を備えている。枠体155および蓋体154は、ベース基板153と同じ絶縁性材料で形成されている。枠体155の下面(Z軸負方向側の面)は、ベース基板153の上面(Z軸正方向側の面)に接合されている。図10には図示されていないが、枠体155は、矩形状のベース基板153の外枠に沿って収納空間SPを形成する直方体の内側がくり抜かれた形状を有している。蓋体154の下面のうち、枠体155の上面と対向する面は、枠体155の上面に接合されている。なお、図10では、ベース基板153と枠体155との接合層、および、枠体155と蓋体154との接合層の図示が省略されている。
【0039】
熱電変換モジュール100cは、第1の基板10と、素子収容体30と、第2の基板として機能するベース基板153と、第1の基板10に接合された金属製の接合部材50と、接合部材50を介して第1の基板10上に配置された発光素子60と、を備えている。接合部材50は、第1の基板10と発光素子60とを接合しており、第1の基板10に配線パターンを形成し、はんだ等で発光素子60を取り付けることで、部品の固定と電気的接続とを両立させることが出来る。接合部材50は、発光素子60の発熱による熱を第1の基板10へと伝達する。接合部材50は、金属製の材料であってもよいし、金属製以外の材料でもよい。電子部品200では、発光素子60の発熱が、第1の基板10、接合部材50、およびベース基板153を介して、熱電変換モジュール100cにより制御される。また、接合部材50を介して第1の基板10上に配置される部品としては、発光素子60に限らず、温度調整されることが好ましいような電子部品を用いても良い。
【0040】
なお、図10に示される電子部品200における素子収納パッケージ150の発光素子60代わりに発熱装置を備え、発熱装置の発熱を利用して熱電変換モジュール100cにより発電する発電用モジュールとして機能することも可能である。
【0041】
図5に示される製造フローは一例であり、他の製造方法により熱電変換モジュール100が製造されてもよい。例えば、比較的大型である熱電変換を利用した発電用モジュールに熱電変換モジュールを適用する場合に、パンチングにより複数の貫通孔が形成された絶縁性材料のグリーンシートを先に焼成する。焼成後のグリーンシートの所定の貫通孔に熱電素子の材料である粉末のペーストが充填された後に再度焼成し、素子収容体および熱電素子が作製される。その後、素子収容体および熱電素子の両面に、第1の導体パターンと、第2の導体パターンとが印刷等で形成され、最後に第1の基板および第2の基板が接合されてもよい。
【0042】
上記実施形態の熱電変換モジュール100は、ゼーベック効果を利用した温調用モジュールと、ペルチェ効果を利用した発電用モジュールとの両方として機能したが、熱電変換モジュール100は、温調用モジュールと、発電用モジュールとの一方として機能してもよい。
【0043】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【0044】
本発明は、以下の形態としても実現することが可能である。
[適用例1]
熱電変換モジュールであって、
第1の導体パターンが形成された第1主面を有し、絶縁性材料で形成された第1の基板と、
第2の導体パターンが形成された第2主面を有し、絶縁性材料で形成された第2の基板であって、前記第2主面が前記第1主面と対向して配置された第2の基板と、
前記第1の導体パターンと前記第2の導体パターンとを電気的に接続する複数の熱電素子と、
絶縁性材料で形成され、前記第1の基板と前記第2の基板との間に配置された素子収容体と、
を備え、
前記素子収容体には、前記熱電素子の数よりも多い複数の貫通孔であって、前記素子収容体のうち、前記第1の基板に対向する面と、前記第2の基板に対向する面とを貫通する複数の貫通孔が形成されており、
前記素子収容体の前記複数の貫通孔のうち、
一部の前記貫通孔には、内側に前記熱電素子がそれぞれ充填されており、
残余の前記貫通孔には、前記熱電素子が収容されていないことを特徴とする、熱電変換モジュール。
[適用例2]
適用例1に記載の熱電変換モジュールであって、
前記素子収容体を形成する絶縁性材料の熱伝導率は、前記第1の基板を形成する絶縁性材料の熱伝導率よりも小さく、かつ、前記第2の基板を形成する絶縁性材料の熱伝導率よりも小さいことを特徴とする、熱電変換モジュール。
[適用例3]
電子部品であって、
適用例1または適用例2に記載の熱電変換モジュールを備える、電子部品。
[適用例4]
発電用モジュールであって、
適用例1から適用例3までのいずれか一項に記載の熱電変換モジュールを備える、発電用モジュール。
[適用例5]
温調用モジュールであって、
適用例1から適用例4までのいずれか一項に記載の熱電変換モジュールを備える、温調用モジュール。
[適用例6]
熱電変換モジュールの製造方法であって、
絶縁性材料で形成された第1の基板及び第2の基板であって、第1の導体パターンが形成された第1の基板と、第2の導体パターンが形成された第2の基板と、を準備する準備工程と、
絶縁性材料で形成されたグリーンシートに、厚さ方向に貫通する複数の貫通孔を形成する孔形成工程と、
形成された前記複数の貫通孔の一部に、熱電材料粉末のペーストを充填するペースト充填工程と、
前記ペーストが充填された前記グリーンシートに対して、一方の面に前記第1の基板を前記第1の導体パターンが前記グリーンシートに対向するように配置し、他方の面に前記第2の基板を前記第2の導体パターンが前記グリーンシートに対向するように配置した状態で熱圧着する熱圧着工程と、
前記熱圧着工程により積層された積層体を焼成する焼成工程と、
を備える、製造方法。
【符号の説明】
【0045】
10…第1の基板
11…第1主面
12…第1の導体パターン
13,23…セラミック基板
20…第2の基板
21…第2主面
22…第2の導体パターン
23F…セラミック基板の端面
30,30a,30b,30x…素子収容体
30y…被覆層
31…素子収容体の第1面
32…素子収容体の第2面
33,33a,33b…貫通孔
33A…素子充填用貫通孔
33B…空隙用貫通孔
34…被覆層
35…接続部
40…熱電素子
41…N型素子
42…P型素子
50…接合部材
60…発光素子
100,100c,100x,100y…熱電変換モジュール
150…素子収納パッケージ
153…ベース基板(第2の基板)
154…蓋体
155…枠体
200…電子部品
221,222…金属層
CS…直交座標系
LN1,LN2…リード線
OB…外枠
SP…収納空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10